リサイクルショップの開業では、税務署への開業届などの届出より先に、警察署を窓口とする古物商許可の取得が大前提です。許可を取ったうえで、開業から1か月以内の開業届と、開業から2か月以内が目安の青色申告承認申請書を提出し、個人からの買取りに使える消費税の古物商特例に合わせて帳簿を整えます。
この記事の結論
手続きは「古物商許可→開業届・青色申告承認申請→人を雇うなら給与と源泉の届出」の順に進めます。リサイクルショップ特有の論点は、個人からの現金買取りの記録、消費税の古物商特例、1点ごとに仕入価格が違う在庫の管理です。
- 中古品の買取り・販売には、営業所を管轄する警察署を通じて申請する古物商許可が必要
- 開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は開業の日から2か月以内(1月15日までの開業はその年の3月15日まで)
- 個人からの買取りは、帳簿に一定の事項を書けばインボイスがなくても仕入税額控除ができる(古物商特例)
- 店舗の内装や陳列棚・レジは「開業費」ではなく、取得価額に応じて固定資産として処理する
- 販売先が主に消費者ならインボイス登録は必須ではなく、事業者への販売の多さで判断する
開業前に必要な許認可は?古物商許可が大前提
中古品を買い取って販売する営業は古物営業にあたり、都道府県公安委員会の古物商許可が必要です。申請の窓口は営業所の所在地を管轄する警察署で、許可が下りるまでには一定の審査期間がかかります。
無許可で営業すると罰則があるため、店舗の契約が見えた段階で早めに動きましょう。申請書類や手数料、審査期間の最新情報は、北海道警察の公式サイトや警察署で確認してください。
許可を取った後も、標識(許可プレート)の掲示、買取りの際の相手方の本人確認、取引を記録する帳簿(古物台帳)の備付けと保存といった義務が続きます。古物台帳は、消費税の古物商特例や税務調査への備えとも深く関わる帳簿です。
扱う商品・販路によって手続きが増えることがある
- 自社のホームページで古物の取引をする場合は、そのURLの届出が必要になるなど、販路によって手続きが増えることがあります。申請の段階で警察署に確認しておくと安心です。
- 未開封のお酒を買い取って販売するなら、税務署の酒類販売業免許が別に必要です。
- 売れない不用品を引き取って処分する場合は、廃棄物の収集運搬の許可が必要になることがあります。
税務署などへの届出は何をいつまでに出す?
個人でリサイクルショップを開業する場合、納税地(原則として住所地)を所轄する税務署に、次の書類を提出します。給与や消費税の届出は、該当する人だけが対象です。
| 届出書 | 提出する人 | 期限 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 開業するすべての人 | 開業の日から1か月以内 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 青色申告をする人 | その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 家族に給与を支払う人 | 給与を支払う年の3月15日まで(1月16日以後の開業などは2か月以内) |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | スタッフを雇う人 | 開設の日から1か月以内 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 給与の支払いを受ける人が常時10人未満で、納付を年2回にまとめたい人 | 提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から適用 |
| 棚卸資産の評価方法の届出書 | 最終仕入原価法以外の評価方法を選ぶ人 | 開業した年分の確定申告期限まで |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 課税事業者で簡易課税を選ぶ人 | 適用を受ける課税期間の初日の前日まで(開業した課税期間は、その課税期間中) |
特に期限を意識したいのが青色申告承認申請書です。提出が遅れると初年度は白色申告となり、青色申告特別控除(令和8年分は最大65万円)や赤字の繰越しといった特典が使えません。納期の特例の承認を受けると、源泉所得税は1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日に納めればよくなります。
国税のほかに、個人事業税のため北海道(道税事務所など)にも事業開始の申告をします。リサイクルショップは物品販売業として個人事業税の対象になり、税率は5%、事業主控除は290万円です。
法人で開業する場合は、法人設立届出書(設立の日以後2か月以内)や、青色申告承認申請書(設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日まで)など、法人向けの届出一式が別に必要です。
札幌市内で開業する場合
届出の提出先は区ごとに決まっています(名称はいずれも「札幌○○税務署」)。北区・東区は北、豊平区・南区・清田区は南、白石区・厚別区は東、西区・手稲区は西、中央区はおおむね西10丁目以東が中、大通西11丁目以西や円山・宮の森などが西です。2026年7月10日からは札幌業務センターが内部事務を集約しており、書面で郵送する場合は同センターあて、e-Taxや窓口への持参は所轄の税務署です。
会社を設立して開業するなら、札幌中小企業支援センターや札幌商工会議所の特定創業支援等事業(1か月以上・4回以上の支援)を受けて証明書をもらうと、市内での設立の登録免許税が半分になります(株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円。証明書の有効期限は2027年3月31日)。
個人からの買取りに使える消費税の古物商特例とは?
リサイクルショップの仕入れの中心は、個人のお客様からの買取りです。インボイス制度のもとでは、仕入税額控除に原則としてインボイスの保存が必要ですが、消費者はインボイスを発行できません。
そこで、古物商が適格請求書発行事業者以外の者から古物を買い取る場合は、帳簿に一定の事項を記載すれば、インボイスがなくても仕入税額控除が認められます(古物商特例)。帳簿には、通常の記載事項に加えて、古物商特例の対象である旨と、古物営業法で相手方の確認が求められる取引では相手方の住所または所在地を記載します。
特例が使えない仕入れもある
相手が適格請求書発行事業者(登録事業者)の場合は、古物の買取りでもインボイスの保存が必要です。また、店舗の清掃や修理を免税事業者に頼んだときなど、古物以外の仕入れには古物商特例は使えず、経過措置で一部だけを控除します。控除できる割合は、2026年10月1日〜2028年9月30日の仕入れが70%、2028年10月1日〜2030年9月30日が50%です。
古物台帳と会計帳簿をきちんと付けることが、そのまま消費税の要件を満たすことにつながります。現金取引が多い業種のため、買取票・古物台帳と帳簿の仕入計上をいつでも突き合わせられる状態にしておくことが、税務調査への備えとしても重要です。
インボイス登録は必要?販売先が消費者か事業者かで判断
インボイス(適格請求書)が必要になるのは、買い手が仕入税額控除をしたい事業者の場合です。店頭のお客様が主に消費者なら、インボイスを求められる場面は多くありません。一方、古物を同業者や法人にまとめて販売する機会が多い場合は、登録を検討します。
開業した当初は、基準期間(個人は前々年)の課税売上高がないため、原則として消費税の納税義務はありません。ただし、前年1〜6月の特定期間の課税売上高と給与の支払額がいずれも1,000万円を超えると、翌年から課税事業者になります。インボイスの登録をすると、この免税の状態を手放して課税事業者として申告することになります。
無料ツール消費税の課税事業者かどうかを判定する基準期間と特定期間の売上・給与を入れると、納税義務の有無を確認できます。判定する
登録しなければ免税事業者になる個人が登録した場合は、令和8年分までは納付税額を売上税額の2割とする2割特例を、令和9・10年分は売上税額の3割とする3割特例(個人のみ・届出不要)を使えます。期中でも、申請書の提出日から15日以降の希望日から登録できます(2029年9月30日を含む課税期間まで)。
計算例:小売中心のリサイクルショップの消費税
例えば、インボイス登録をした個人のリサイクルショップで、1年間の税込売上が880万円、古物商特例による買取りを含む税込の課税仕入れが440万円の場合です。
- 売上税額:880万円×10/110=80万円
- 本則課税:仕入税額 440万円×10/110=40万円、納付税額 80万円−40万円=40万円
- 簡易課税(第2種・みなし仕入率80%):仕入控除税額 80万円×80%=64万円、納付税額 80万円−64万円=16万円
- 2割特例(令和8年分まで):80万円×20%=16万円
- 3割特例(令和9・10年分):80万円×30%=24万円
小売業(第2種)の簡易課税は売上税額の2割の納付で済むため、3割特例より納税額が少なくなります。本則課税と比べると、課税仕入れが売上の8割を下回る限り簡易課税が有利です。店舗の改装など大きな設備投資をする年は、本則課税のほうが有利になることもあります。
ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比べる売上と仕入れの金額を入れると、方式ごとの納税額を比較できます。計算する
簡易課税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が事前に届出をして選ぶ方式で、選ぶと2年間は続けて適用されます。2割特例や3割特例を使った課税期間の翌課税期間から簡易課税に移る場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに届出をすれば間に合います。同業者などへの卸売は第1種(みなし仕入率90%)になるため、販路が混ざる場合は売上を事業区分ごとに分けて記録します。制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドで登録から申告まで確認できます。
開業前の支出は経費になる?開業費と固定資産の分け方
開業前に支払った費用のうち、チラシなどの広告宣伝費、開業準備のための交通費や打合せの費用、古物商許可の申請手数料などは「開業費」として資産に計上し、開業後に任意の時期に経費にできます。レシートや請求書は、開業準備の段階から保管しておきましょう。
一方、店舗の内装工事や陳列棚、レジ、査定に使うパソコンなどは開業費ではなく、固定資産として取得価額に応じて処理します。開業前に買い取った商品も、開業費ではなく商品(棚卸資産)の仕入れです。
| 取得価額(1つあたり) | 処理 | リサイクルショップでの例 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費などとして全額をその年の経費にする | 値札の発行機、小型の陳列用品 |
| 20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等に経費にすることも選べる | 査定用のパソコン、レジ |
| 40万円未満 | 青色申告の中小事業者は、少額減価償却資産の特例で全額を経費にできる(年300万円まで) | 大型の陳列棚、防犯カメラ一式 |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて減価償却する | 店舗の内装工事、配送用のトラック |
最初の1年の記帳と資金管理で押さえることは?
現金での買取りが多い業種のため、記帳の仕組みは開業初日から整えておくのが近道です。次の点を習慣にしておくと、決算と税務調査の両方で説明しやすくなります。
- 買取りのたびに買取票を作成し、古物台帳と帳簿の仕入れを日付・品目・金額で一致させる
- レジの売上現金と、買取りに使う現金(準備金)を分けて管理する
- 店頭・フリマアプリ・ネット通販・業者への販売など、販路ごとに売上と手数料を分けて記録する
- 期末に在庫を数え、品目ごとの仕入価格(買取価格)で評価する
- 破損品・売れ残り品の処分は、日付と内容を記録しておく
- 事業用の口座とクレジットカードを、生活用と分ける
中古品は1点ごとに仕入価格が違うため、期末の在庫は品目ごとの買取価格の記録が土台になります。長く売れ残った商品も、原則として仕入価格のまま在庫に計上します。評価を下げられるのは、破損や型落ちで通常の価格では売れなくなった場合など一定の場合に限られ、青色申告者は届出により低価法を選ぶこともできます。
買取りは仕入れが先、売れるのが後になるため、在庫が増えるほど手元の現金は減ります。売上が伸びている時期ほど資金が不足しやすい点に注意し、月ごとの入出金の見通しを立てておきます。ネット販売を本格的に始めるなら、ECショップの開業時の届出もあわせて確認しておくと漏れを防げます。開業後の申告・納税の時期は、個人事業主の年間スケジュールで一覧できます。
手続きは自分でできる?税理士に頼むべきところ
開業届や青色申告承認申請書は、様式に沿って書けば自分でも提出できます。一方、インボイスの登録をするか、簡易課税を選ぶかは、買取先と販売先の構成によって有利不利が変わるため、開業前に専門家へ相談する価値があります。
規模が小さいうちは記帳を自分で行い、税理士には顧問契約で月々のチェックと申告・消費税の判断を任せる形もあります。当事務所は決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしておらず、継続的な顧問契約の中で、記帳の仕組みづくりから申告までを支援しています。買取量が増え、在庫管理や人の雇用が始まったタイミングで顧問契約を検討すると、費用対効果のバランスが取りやすくなります。
インボイス登録や簡易課税の選択は、買取先と販売先の構成で有利不利が変わります。開業前の段階から初回無料で確認できます。
無料で相談するよくある質問
古物商許可が下りる前に開業届を出してもよいですか?
古物の買取りや販売は許可が下りてからでないとできないため、開業日は許可を受けて営業を始める日とするのが自然です。許可を待つ間に支払った準備の費用は、開業費として処理できます。
フリマアプリで仕入れた中古品を店で売る場合も、古物商許可は必要ですか?
中古品を仕入れて販売する営業であれば、仕入れ先がフリマアプリでも古物商許可が必要です。自分で使っていた不用品を売るだけなら古物営業には当たりません。判断に迷うときは、営業所を管轄する警察署で確認してください。
古物台帳と会計帳簿は、別々に付ける必要がありますか?
古物台帳は古物営業法、会計帳簿は税法のための帳簿で目的が違うため、どちらも必要です。買取票に番号を振って両方に記載すると、突き合わせが簡単になり、二重入力の手間も減らせます。
個人で始めるか、会社を作るか迷っています。
所得の水準、社会保険の負担、取引先からの信用、消費税の扱いを合わせて判断します。最初は個人で始め、利益が安定してから法人化する進め方もあります。判断の目安はリサイクルショップの法人化のタイミングと判断基準で整理しています。
まとめ
リサイクルショップの開業は、古物商許可を取ってから、開業届・青色申告承認申請書を期限内に出す流れが基本です。個人からの買取りには古物商特例があり、古物台帳と帳簿を整えることが消費税の要件と税務調査への備えを兼ねます。インボイス登録と簡易課税の選択は販売先と仕入れの構成で有利不利が変わるため、開業前に一度確認しておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
リサイクルショップの開業・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
- 国税庁 インボイス制度の令和8年度改正に関するページ
- 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度
- 札幌市「特定創業支援等事業」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
