警備業の会計・税務は人件費の比率が高く、隊員への支払いの区分、社会保険と最低賃金への対応、消費税の計算方法の選択が利益と納税額を左右します。税理士に頼むなら、給与計算と一体で人件費を管理し、現場別の損益と資金繰りまで見られるかで選び、顧問料は任せる範囲で比べましょう。
この記事の結論
警備業は売上の多くを人件費が占めるため、隊員への支払いの区分、社会保険・最低賃金への対応、消費税の計算方法が、利益と納税額を大きく左右します。税理士は、給与計算や社会保険と一体で人件費を管理し、現場別の損益と資金繰りまで支援できるかで選びます。
- 隊員への支払いは給与が基本。警備業務を事業として請け負うには認定が必要なため、個人への「外注」扱いは税務と法令の両面でリスクがある
- 北海道の最低賃金は2026年10月1日から1,131円。日給制の隊員は時給に換算して確認する
- 短時間の隊員の社会保険は、2026年10月1日に賃金要件が撤廃。週20時間以上・企業規模51人以上などの要件で加入の対象になる
- 給与は消費税の仕入税額控除の対象外。人件費率が高いほど、簡易課税(第5種・50%)との比較が大切
- 顧問料は隊員数と任せる範囲で決まる。当事務所は継続的な顧問契約で支援し、決算だけのスポット依頼は受けていない
警備業の税務・経理はなぜ難しいのか
警備業の損益計算書は、売上のうち人件費が大きな割合を占めるのが特徴です。深夜手当や残業代、法定の新任教育・現任教育にかかる費用、制服・装備品など、人に紐づくコストが多岐にわたります。
また、官公庁や建設会社からの受注は入金までの期間が長くなりがちで、給与は先に出ていくため資金繰りの管理が欠かせません。冬期の交通誘導や除排雪に伴う警備のように、季節によって売上が膨らむ地域では、季節変動を踏まえた資金計画も必要です。税理士に確認したい論点は、次の5つに整理できます。
| 論点 | 主な内容 | 影響する税・手続き |
|---|---|---|
| 1. 隊員への支払いの区分 | 給与か外注費か、日払い・日雇いの源泉徴収 | 源泉所得税・消費税・社会保険 |
| 2. 社会保険と最低賃金 | 短時間の隊員への適用拡大、日給の時給換算、賃上げ | 社会保険料・労務・賃上げ促進税制 |
| 3. 消費税の計算方法 | 本則課税と簡易課税(第5種)の比較、協力会社の経過措置 | 消費税・インボイス |
| 4. 締め日と決算 | 未請求の売上・未払給与の計上、現場別の損益 | 法人税・所得税 |
| 5. 資金繰り | 入金と給与のずれ、季節変動、納税資金 | 融資・中間申告 |
業界の動きは警備業の経営に役立つ最新情報でもまとめています。
論点1:隊員への支払いは給与か外注費か
協力会社や隊員へ支払う報酬を「外注費」とするか「給与」とするかは、消費税と源泉所得税の両方に影響し得る重要な論点で、税務調査でも繰り返し確認される項目です。
判断では、会社の指揮命令を受けて働くか、勤務の時間や場所が拘束されるか、本人の代わりを立てられるか、制服や装備を会社が用意するかといった実態を総合的に見ます。現場の配置や勤務時間を会社が決める隊員は、雇用契約による給与として扱うのが基本です。
警備業法の認定にも注意
警備業務を事業として請け負うには、都道府県公安委員会の認定が必要です。認定を受けていない個人の隊員を「外注」として扱うと、税務だけでなく警備業法の面でも問題になりかねません。外注費として処理するのは、認定を受けた協力会社への支払いが中心になります。
| 項目 | 給与(隊員) | 外注費(協力会社) |
|---|---|---|
| 源泉徴収 | 必要(源泉徴収税額表に沿って計算) | 不要 |
| 消費税 | 仕入税額控除の対象外 | 課税仕入れ(インボイスの保存が必要) |
| 社会保険・労働保険 | 要件を満たせば加入 | 対象外 |
| 年末調整 | 扶養控除等申告書を出している隊員は対象 | 対象外 |
日々雇い入れる隊員の給与には、源泉徴収税額表の日額表(丙欄)を使う場合があります。日払いの現金支給は、源泉徴収の漏れや記録の不備が起きやすい部分です。出勤簿・配置表と給与台帳を照合できるようにしておきましょう。
論点2:社会保険・最低賃金・賃上げへの対応
法人の事業所は、役員1人だけでも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。短時間の隊員も、2026年10月1日に賃金要件(月8.8万円)が撤廃され、週20時間以上・企業規模51人以上・学生でないことなどの要件を満たせば加入の対象になります。企業規模の要件は、2027年10月に36人以上へ広がります。
北海道の最低賃金は、2026年10月1日から1,131円です(前年は1,075円)。日給制や月給制の隊員も、時間あたりに換算して下回っていないかを確認します。深夜割増や時間外の割増賃金は、最低賃金との比較には含めません。
計算例:日給の時給換算
例えば日給9,000円・1日の所定労働時間8時間の隊員なら、時給換算は 9,000円÷8時間=1,125円 で、2026年10月1日以降の北海道の最低賃金1,131円を下回ります。最低賃金を満たすには、1,131円×8時間=9,048円 以上の日給が必要です。
保険料の負担も資金計画に入れておきます。協会けんぽ北海道の保険料率は令和8年3月分から健康保険10.28%・介護保険1.62%で、令和8年4月分からは子ども・子育て支援金0.23%が加わります。雇用保険料率は2026年4月1日〜2027年3月31日は一般の事業で13.5/1000です。
賃上げをする場合は、中小企業向けの賃上げ促進税制を検討できます。給与等の支給額が前年度より1.5%以上増えれば増加額の15%、2.5%以上なら30%を法人税から控除でき、法人は2024年4月1日〜2027年3月31日に開始する事業年度が対象です。法定の教育が多い警備業でも、教育訓練費による上乗せは2026年4月1日以後に開始する事業年度からは使えない点に注意しましょう。
論点3:消費税は人件費が多いほど計算方法の選択が大切
隊員に支払う給与は、消費税の仕入税額控除の対象になりません。売上の大半が人件費に回る警備業では、本則課税(実際の仕入れにかかった消費税を差し引く方法)だと控除できる消費税が少なく、納税額が大きくなりがちです。基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら、簡易課税(警備業はサービス業として第5種・みなし仕入率50%)を選べます。
計算例:本則課税と簡易課税の比較
例えば税抜の課税売上高が4,000万円、課税仕入れ(協力会社への外注費・装備品など、税抜)が800万円の会社を考えます。売上税額は 4,000万円×10%=400万円、仕入税額は 800万円×10%=80万円 です(地方消費税を含む概算)。
本則課税の納付額は 400万円−80万円=320万円、簡易課税なら 400万円×50%=200万円 です。給与は差し引けないため、人件費の割合が高いほど簡易課税の方が有利になりやすい構造です。
簡易課税を選ぶには、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに届出が必要で、選ぶと2年間は続けなければなりません。協力会社への外注が多い年や設備投資が大きい年は、本則課税の方が有利になることもあるため、毎期試算して判断します。
無料ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比較する売上と課税仕入れの金額から、計算方法ごとの消費税の納付額を並べて比較できます。計算する
インボイスは、取引先の多くが建設会社や施設の管理会社など事業者のため、登録を前提に考えるのが一般的です。協力会社が免税事業者の場合、その外注費の消費税は2026年10月1日〜2028年9月30日は70%、2028年10月1日〜2030年9月30日は50%しか控除できません。直前の課税期間の消費税額(国税)が48万円を超えると中間申告も必要になり、400万円超で年3回、4,800万円超で年11回に増えます。制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドで確認できます。
本則課税と簡易課税のどちらが有利かは、外注の比率と設備投資の予定で変わります。初回無料で試算をお手伝いします。
無料で相談する論点4・5:締め日のずれ、現場別の損益、資金繰り
取引先ごとに請求の締め日が違う場合、決算日までに提供した警備の売上は、請求前でも未請求の売上として計上します。給与の締め日が月末でない場合も、決算日までの勤務分は未払給与として計上します。これらを漏らすと、利益が期ごとにずれてしまいます。
現場別・契約別の損益を見える化すると、単価の見直しや人員配置の判断がしやすくなります。次の手順で仕組みを作ると、月次で採算を確認できます。
- 現場コードを決める契約ごとに番号を付け、請求書と勤務実績に同じ番号を使います。
- 人件費を現場に割り当てる配置表の勤務時間をもとに、給与と社会保険料の会社負担分を現場ごとに配分します。
- 直接かかる経費を集める交通費・駐車場代・装備品など、現場に直接かかる費用を集計します。
- 月次で比べる現場ごとの粗利を毎月確認し、単価の交渉や配置の見直しにつなげます。
資金繰りでは、入金より先に給与が出ていく構造を前提に、資金繰り表で数か月先の残高を確認します。賞与・社会保険料・消費税の納付が重なる月や、冬期の除排雪・交通誘導で隊員の稼働が増え、給与の支払いが入金より先行する時期には、運転資金の確保を早めに検討しましょう。地元の金融機関に提出する資金繰り表や試算表の作り方は、中小企業の財務コンサルティングガイドでも紹介しています。
警備業に強い税理士を見極める質問
税理士選びでは、警備業の実務をどこまで理解しているかを面談で確かめることが大切です。次の質問をすると、経験の有無が見えやすくなります。
- 外注費と給与の区分について、判断基準を具体的に説明できるか
- 現場別・契約別の損益管理の仕組みを提案してくれるか
- 給与計算や社会保険の手続きと連携できる体制があるか
- 最低賃金の改定や社会保険の適用拡大に合わせて、給与の見直しを相談できるか
- 本則課税と簡易課税の有利不利を、毎期試算してくれるか
- 金融機関に提出する資金繰り表や試算表づくりを支援してくれるか
取引先が建設会社やイベント運営、施設管理など幅広い場合は、業界をまたいだ知見がある事務所だと話が早く進みやすくなります。返信の速さや、月次の数字をいつ受け取れるかも、人件費の管理を左右するため確認しておきましょう。
顧問料はどう決まる?任せる範囲の決め方
顧問料は一律ではなく、主に「会社の規模」「記帳を自社で行うか任せるか」「給与計算や年末調整まで依頼するか」「面談の頻度」で決まります。例えば年商8,000万円・隊員20名の会社が記帳代行と給与計算まで依頼する場合と、年商2,000万円で記帳を自社で行う場合とでは、必要な作業量が異なるため料金にも差が出ます。
| 業務 | 自社で行いやすい場合 | 税理士に任せたい場合 |
|---|---|---|
| 記帳 | 会計ソフトに入力できる経理担当者がいる | 取引が多く、月次の数字の確定が遅れがち |
| 給与計算 | 勤怠システムと給与ソフトで回せている | 日払い・日給の隊員が多く、源泉徴収や社会保険の計算が複雑 |
| 年末調整 | 隊員数が少なく、入退社も少ない | 入退社が多く、扶養の確認や書類の回収に手間がかかる |
| 申告・決算 | - | 法人税・消費税の申告と、税務上の判断 |
| 資金繰り・融資 | 資金繰り表を自社で更新できる | 融資の相談や現場別損益の分析まで支援を受けたい |
安さだけで選ぶと、外注費の区分や現場別損益といった警備業特有の論点まで手が回らない場合があります。金額と業務範囲をセットで比較し、自社に必要な支援が含まれているかを確認しましょう。
当事務所の対応
当事務所は、月次の試算表のチェックと税務相談を基本に、記帳代行、給与計算、年末調整、資金繰り表の作成、融資のサポートまでを、継続的な顧問契約で支援しています。決算だけのスポットのご依頼はお受けしていません。隊員が少ない創業期は任せる範囲を絞り、事務負担が増えた段階で広げることもご相談いただけます。
すでに顧問税理士がいて乗り換えを検討する場合は、決算をまたがない時期に引き継ぐとスムーズです。過去の申告書や固定資産台帳のデータを引き継げば、空白期間なく移行しやすくなります。
よくある質問
隊員に貸与する制服や装備品は経費になりますか?
経費になります。1点10万円未満ならその年の経費に、20万円未満なら3年で均等に経費にする一括償却資産も選べます。青色申告の中小企業者は、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年300万円まで一括で経費にできる特例もあります(2029年3月31日まで)。
日雇いの隊員にも年末調整は必要ですか?
年末調整は、原則として年末まで在職し、扶養控除等申告書を提出している人が対象です。日額表の丙欄で源泉徴収している日雇いの隊員は年末調整の対象外で、必要に応じて本人が確定申告をします。
個人で警備業をしていて法人化する場合、何に注意すべきですか?
税金や社会保険に加え、警備業の認定は事業を営む者ごとに受けるため、法人として改めて認定を受ける手続きが必要です。法人住民税の均等割は、資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら北海道2万円と札幌市5万円の計7万円で、赤字でもかかります。判断の軸は警備業の法人化のタイミングと判断基準で整理しています。
税務調査ではどこが見られやすいですか?
外注費と給与の区分、日払い給与の源泉徴収、勤務実績と給与台帳の対応、交際費などが確認されやすい項目です。調査を受けて修正申告をすることになると、原則として新たに納める税額の10%の過少申告加算税がかかるため、日頃から出勤簿や配置表を保存しておきましょう。
まとめ
警備業の会計・税務は、隊員への支払いの区分、社会保険と最低賃金への対応、消費税の計算方法、締め日と現場別損益、資金繰りの5つを押さえることが出発点です。税理士は給与計算や社会保険と一体で人件費を見られるかで選び、顧問料は任せる範囲をそろえて比べましょう。札幌で警備業の税務顧問をお探しの方は、お気軽にご相談ください。
札幌の公認会計士・税理士事務所
警備業の税務・顧問契約のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年6月 公開/2026年10月 全面改訂(北海道の最低賃金、社会保険の適用拡大、インボイスの経過措置を反映)
