測量業の開業届は開業の日から1か月以内に税務署へ出し、青色申告承認申請書もあわせて提出します。公共測量などを請けるなら、測量法の測量業者登録も必要です。測量業ならではの注意点は、高額な測量機器の処理、測量士への支払いの源泉徴収と外注・給与の区分、年をまたぐ業務の売上の時期です。
この記事の結論
税務署への届出は開業届と青色申告承認申請書が基本で、人を雇うなら給与関係の届出を加えます。事業面では、基本測量・公共測量を請け負うなら測量業者登録が前提です。
- 開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は原則その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)
- トータルステーションやGNSS受信機などの機器は、取得価額によって経費か減価償却かが分かれる
- 個人の測量士に業務の報酬を払う場合は、源泉徴収が必要になることがある
- 年をまたぐ業務は成果品を引き渡した年の売上とし、途中で払った外注費などは翌年に繰り越す
- インボイス登録は、発注者が民間の元請・官公庁・個人のどれが中心かで判断する
測量業の開業でまず確認すること:測量業者登録と事業の形
基本測量・公共測量を請け負うには、測量法に基づく測量業者の登録が必要です。登録には、営業所ごとに測量士を置くことなどの要件があります。登録が不要な範囲の業務もあるため、自分が請ける仕事に登録が必要かをまず確認します。要件と申請の手続きは、国土交通省(国土地理院)の案内で最新の内容を確認してください。
ドローンで空中写真の撮影や測量をする場合は、航空法による機体の登録や、飛行の方法によっては許可・承認が必要です。公共測量で使うときは、発注者が求める作業の規程や機器の条件も確かめておきます。業界の動向は測量業の経営最新情報でまとめています。
あわせて、個人事業で始めるか法人を設立するかを決めます。公共測量の受注を目指すなら、発注者からの信用の面で法人が有利に働く場面もあります。初年度の利益の見込みや社会保険の負担も含めて判断するのが現実的です。
| 項目 | 個人事業 | 法人 |
|---|---|---|
| 始めるときの手続き | 開業届など。登記は不要 | 設立登記が必要。登録免許税は株式会社で最低15万円、合同会社で最低6万円 |
| 赤字でもかかる税金 | 原則としてない | 法人住民税の均等割(札幌市内の資本金1,000万円以下・従業者50人以下の法人は年7万円) |
| 社会保険 | 法定の業種で常時5人以上を使用する場合に強制適用 | 役員1人だけでも強制適用 |
| 消費税の特例 | 2割特例は令和8年分まで、3割特例は令和9・10年分 | 2割特例は2026年9月30日を含む課税期間まで。3割特例はない |
税務署と北海道に出す届出一覧と期限
個人で開業する場合、税務署への主な届出は次のとおりです。開業届と青色申告承認申請書は同時に出すのが基本です。
| 届出書 | 期限 | 出す人 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 開業の日から1か月以内 | 全員 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内) | 青色申告をしたい人 |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 給与を経費にしたい年の3月15日まで(1月16日以後の開業や、新たに専従者ができた場合はその日から2か月以内) | 家族に給与を払う人 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の日から1か月以内 | 補助者や事務員を雇う人 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 提出した月の翌月末日までに承認・却下の通知がなければ、翌々月の納付分から特例を適用 | 給与の支払を受ける人が常時10人未満で、納付を年2回にしたい人 |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | 免税事業者が年の途中で登録する場合は、提出日から15日以後の希望日から登録できる(2029年9月30日を含む課税期間まで) | インボイスを発行する人 |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 適用したい課税期間の初日の前日まで(事業を始めた課税期間は、その課税期間中) | 簡易課税を選ぶ課税事業者 |
特に重要なのが青色申告承認申請書です。期限を逃すと初年度は白色申告となり、青色申告特別控除や赤字の繰越しが使えません。機材への投資で初年度が赤字になりやすい測量業では、青色申告を早めに確保しておくことが大切です。
青色申告特別控除は、令和8年分までは正規の簿記で期限内に申告し、e-Taxによる申告か電子帳簿保存をすれば65万円です。令和9年分からは、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件に沿って電磁的記録で保存するなどの要件を満たすと75万円になります。源泉所得税の納期の特例が承認されると、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日にまとめて納付します。
税務署とは別に、個人事業税の関係で北海道の道税事務所へ事業開始の申告をします。様式と期限は道税事務所で確認してください。個人事業税は多くの業種で税率5%で、事業の所得から事業主控除290万円を差し引いて計算します。
法人で始める場合の届出
法人を設立した場合は、設立の日以後2か月以内に法人設立届出書を出します。青色申告承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日までが期限です。北海道と市町村にも法人設立の届出をします。
役員報酬は原則として事業年度の開始から3か月以内に決め、毎月同額で支給します。途中で金額を変えると、経費(損金)にならない部分が出るため注意します。
測量機器・ドローン・ソフトの費用はどう処理する?
測量業は機材への投資が大きい業種です。トータルステーション、GNSS受信機、ドローン、3Dレーザースキャナー、CAD用のワークステーションなど、1台数十万円から数百万円の資産を複数抱えることになります。処理は取得価額によって次のように分かれます。
| 取得価額(1台・1組あたり) | 処理 | 測量業での例 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費などとして、その年の経費 | 三脚、ポール、プリズム、野帳、小型の工具 |
| 20万円未満 | 一括償却資産として、3年で均等に経費にすることも選べる | タブレット端末、小型の計測機器 |
| 40万円未満(青色申告の中小事業者) | 少額減価償却資産の特例で、年300万円まで一度に経費にできる。2026年4月1日以後の取得が対象(それまでは30万円未満) | パソコン、小型のドローン |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて減価償却 | トータルステーション、GNSS受信機、3Dレーザースキャナー |
取得価額は、通常1単位として取引される単位(1台・1組・1そろい)ごとに判定します。本体と付属品をセットで買う機器は、セットの合計額で判定することが多い点に注意します。
買い切りのCADソフトや点群処理ソフトは、無形固定資産(ソフトウエア)として減価償却します。月額・年額で払う利用料は、利用する期間に応じて経費にします。
無料ツール少額資産の処理方法を3択で比較する即時の経費化・一括償却・少額減価償却資産の特例のどれが有利か、金額を入れて比較できます。計算する
償却資産の申告も忘れずに
資産に計上した測量機器やドローンは、固定資産税(償却資産)の申告の対象で、毎年1月31日までに市町村へ申告します。少額減価償却資産の特例で経費にした資産も申告の対象ですが、一括償却資産として処理したものは対象外です。
償却資産の免税点(課税標準額の合計)は150万円で、令和9年度分(2027年1月1日が賦課期日)から180万円に上がります。
応援の測量士や補助者への支払いは外注費?給与?源泉徴収は?
人手が足りない現場で他の測量士や補助者に手伝いを頼む場合は、「外注費か給与か」の区分が論点になります。指揮命令の下で時間単価により働いてもらう実態なら給与と判定されやすく、源泉徴収や社会保険の問題が生じる場合があります。
| 判断の要素 | 外注費に近い | 給与に近い |
|---|---|---|
| 仕事の進め方 | 作業の手順や時間を本人が決める | こちらが作業内容や時間を細かく指示する |
| 代わりの人 | 本人の判断で他の人に任せられる | 本人が作業しなければならない |
| 報酬の決め方 | 成果品に対して支払う | 作業した時間や日数で支払う |
| 機材の負担 | 自分の測量機器を持ち込む | 機材をこちらが用意する |
| 成果の責任 | 成果品に誤りがあれば本人がやり直す | 誤りがあっても作業した分の報酬を受け取れる |
契約書の形式だけを外注にすると、実態との食い違いによるリスクが生じ得ます。給与と判断されると、源泉所得税の納付漏れに加えて、外注費として控除していた消費税も認められなくなります。給与は消費税がかからない支払いだからです。
測量士への報酬は源泉徴収の対象になる
個人の測量士に、測量士としての業務の報酬を外注費として払う場合は、報酬・料金として源泉徴収が必要です。税率は、1回の支払額のうち100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です。支払先が法人なら源泉徴収はいりません。
ただし、給与を払っていない個人事業主は源泉徴収義務者に当たらないため、報酬を払っても源泉徴収はしません。人を雇って給与を払い始めた後は、報酬の支払いでも源泉徴収が必要になります。
反対に、自分が個人の測量士として法人などから報酬を受け取る場合は、源泉徴収された額が入金されることがあります。差し引かれた所得税は確定申告で精算するため、請求額と入金額の差を記録しておきます。
応援への支払いが外注費か給与か、源泉徴収が必要かは、働き方と支払先で変わります。契約書や支払いの記録を見ながら、初回無料で整理します。
無料で相談する測量業の売上はいつ計上する?年をまたぐ業務と前受金
測量の業務は、成果品を引き渡した日に売上を計上するのが原則です。引渡しの日は、検収が終わった日など合理的な基準を決め、毎年同じように使います。前払金を受け取っても、その時点では売上ではなく前受金として記帳します。
公共測量は年度末に納期が集中しやすく、個人事業の決算日である12月31日の時点で進行中の業務が残ることがあります。その業務のために年内に支払った外注費などは、その年の経費にせず、未成業務支出金(仕掛品)として翌年に繰り越し、成果品を引き渡した年の売上に対応させます。
具体例:年をまたぐ測量業務の処理
例えば、11月に受注した契約金額300万円の測量業務で、成果品の引渡しが翌年2月、年内に外注費80万円を支払った場合です。
- 売上の300万円は、引き渡した翌年の売上になる
- 年内に払った外注費80万円は、その年の経費にせず、未成業務支出金として資産に計上する
- 翌年、引渡しの時点で80万円を経費(売上原価)に振り替える
- 年内に前払金を受け取っていれば、年末時点では前受金として負債に計上する
契約で工程ごとに成果品の引渡しと代金の受取りが決まっている場合は、引き渡した部分ごとに売上を計上します。逆に、引渡しが終わっているのに請求書を出していない業務は、請求前でも売上の計上漏れになるため、年末に業務の一覧で確認します。
インボイス登録と消費税はどう判断する?
インボイス(適格請求書)が必要かどうかは、発注者の顔ぶれで変わります。主な発注者ごとの考え方は次のとおりです。
| 発注者 | インボイスの必要性 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 建設コンサルタント・建設会社など民間の元請(課税事業者) | 高い | 元請は仕入税額控除にインボイスが必要。登録しないと取引条件の見直しを求められることがある |
| 国・地方公共団体の一般会計 | 低い | 一般会計は、消費税の計算で売上と仕入の税額が同額とみなされる特例があり、インボイスの有無で発注者の税額は変わらない。特別会計や公営企業の発注は事情が異なるため個別に確認する |
| 土地の所有者など個人のお客様 | 低い | 消費者は仕入税額控除をしないため、インボイスは求められない |
登録しない場合でも、課税事業者の元請は2026年10月1日〜2028年9月30日の取引なら、免税事業者への支払いに含まれる消費税相当額の70%を控除できます。とはいえ取引条件の交渉材料になりやすいため、主要な取引先の顔ぶれと手取りへの影響を試算して判断します。制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドで確認できます。
登録しなければ免税事業者になる個人は、令和8年分までは2割特例、令和9年分・令和10年分は3割特例(納付税額=売上の消費税額×3割、届出不要)を使えます。3割特例は個人事業者だけの制度で、法人には後継の特例がありません。簡易課税を選ぶ場合、測量業はサービス業として第5種(みなし仕入率50%)です。
計算例:売上が税抜600万円の場合の納付税額
例えば、インボイス登録をした個人の測量業者で、売上が税抜600万円の場合です。売上の消費税は600万円×10%=60万円です(地方消費税を含む概算)。
- 2割特例(令和8年分まで):60万円×20%=12万円
- 3割特例(令和9・10年分):60万円×30%=18万円
- 簡易課税(第5種):60万円×50%=30万円
特例を使える年分は、簡易課税より納付税額が小さくなります。本則課税では、実際に払った経費の消費税で計算します。
ツールインボイスの2割特例で納付税額を計算する売上の金額を入れて、2割特例を使ったときの消費税の納付額を確認できます。計算する
高額な機器を買った年は、本則課税なら仕入れの消費税が売上の消費税を上回り、還付を受けられる場合があります。ただし、課税事業者を選ぶ届出の時期や、高額な資産を買ったときの「調整対象固定資産」の制限があるため、購入の前に確認が必要です。
開業資金と資金繰り、最初の1年の経理をどう整える?
公共測量は入金までのサイトが長くなりがちで、現場が動きにくい冬季を抱える北海道では、売上の季節変動も大きくなります。例えば年商1,500万円の個人事業でも、入金時期が偏れば数か月分の運転資金が必要になる場合があります。
開業資金は、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(開業前からおおむね7年以内、限度7,200万円)などの創業融資で確保する方法があります。返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内(据置5年以内)で、自己資金は審査の重要な要素とされています(2026年10月3日時点)。
札幌市内で開業・設立する場合
市内で会社を設立する場合は、特定創業支援等事業の証明書があれば、登録免許税が株式会社は15万円から7.5万円、合同会社は6万円から3万円に軽くなります。証明書は、札幌中小企業支援センターや札幌商工会議所で1か月以上・4回以上の支援を受けて取得し、有効期限は2027年3月31日です。公庫の利率の引下げや、創業関連保証を開業6か月前から使えるといった効果もあります。
市や北海道の制度融資も選択肢ですが、市の融資は2026年10月1日以降の実行分から利率が0.3%上がっています。条件は窓口で確認してください。個人の開業届などは、区ごとに所轄の税務署が分かれます。書面を郵送する場合の送付先は、2026年7月10日から札幌業務センターです(e-Taxや窓口への持参は所轄の税務署)。
開業時にクラウド会計で月次の数字を見られる体制を作っておくと、2年目以降の資金計画を立てやすくなります。令和8年分の確定申告は2027年2月16日〜3月15日、個人の消費税の申告・納付は3月31日までで、冬の閑散期と重なります。繁忙期の入金から納税資金を取り分けておくのが基本です。年間の納税の流れは個人事業主の年間スケジュールで確認できます。
よくある質問
測量士の資格がなくても、測量業者として開業できますか?
測量業者の登録は、営業所ごとに測量士を置くことが要件の一つです。経営者本人が測量士でなくても、営業所に測量士を置けば要件を満たせる場合があります。そのほかの要件は国土地理院の案内で確認してください。
開業前に買った測量機器は経費になりますか?
機器は事業に使い始めた時点から減価償却の対象になります。開業準備のための広告費や打合せの費用などは「開業費」として資産に計上し、開業後に任意の時期に経費にできます。
中古の測量機器を買った場合、耐用年数はどうなりますか?
中古の資産は、残りの使用可能期間を見積もるか、簡便法で計算した短い耐用年数を使えます。新品より早く経費にできる分、毎年の税金と資金繰りへの影響が変わります。
青色申告承認申請書の期限を過ぎてしまったら、どうなりますか?
その年は白色申告になり、青色申告特別控除や赤字の繰越しは使えません。翌年分から青色申告にするには、翌年の3月15日までに申請書を出します。
現場への移動に使う車の費用は経費になりますか?
測量機器を積んで現場に向かう車の燃料代・車検・保険料・減価償却費は、事業に使った割合に応じて経費にできます。私用と兼ねる場合は、走行距離などの合理的な基準で按分し、根拠を記録しておきます。
まとめ
測量業の開業では、開業届と青色申告承認申請書を軸に届出をそろえ、公共測量などを請けるなら測量業者登録も確認します。高額な機器は取得価額で処理を選び、償却資産の申告も忘れないようにします。測量士への支払いの源泉徴収、年をまたぐ業務の売上の時期、発注者の顔ぶれに合ったインボイスの判断を開業時に整理しておくと、最初の決算で慌てずに済みます。
札幌の公認会計士・税理士事務所
測量業の開業・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
- 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度
- 札幌国税局「税務署の所在地・管轄区域」
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
