部門別損益・店舗別損益の配賦ルールは、本社家賃や管理部門の人件費などの共通費を、費用の性質に合った基準(配賦キー)で各部門に割り振る決まりです。実務では精密さより、毎月ぶれずに使えて現場が納得できることを優先して決めます。店舗の存続や評価は、配賦前の貢献利益とあわせて判断します。
この記事の結論
配賦ルールは「直接費と共通費を分ける→共通費ごとに配賦キーを選ぶ→一度決めたら期中は変えない」の順で決めます。店舗や部門の存続は、配賦後の利益だけでなく、配賦前の貢献利益で判断します。
- どの部門で発生したか分かる費用(直接費)はそのまま計上し、共通費だけを配賦する
- 家賃・光熱費は面積、総務・人事は人数、経理は取引件数、全社の販促は売上高など、費用ごとにキーを選ぶ
- 配賦後に赤字でも、貢献利益が黒字の店舗を閉めると全社の利益は減る
- 店長や部門長の評価は、本人が管理できる費用までを差し引いた利益で行う
- ルールは文書にして合意し、見直しは期の変わり目にまとめて行う
部門別損益の配賦とは?直接費と共通費の分け方
複数店舗や複数事業部を持つ会社では、「全社は黒字なのに、どの店舗・部門が儲かっているのか分からない」という悩みがよく聞かれます。部門別損益を作るときに最初につまずくのが、どの部門にも共通してかかる費用をどう配分するかという配賦ルールです。
出発点は、費用を「直接費」と「共通費」に分けることです。直接費は、どの部門で発生したかが直接わかる費用で、配賦の必要はありません。共通費は複数の部門にまたがって発生する費用で、何らかのルールで各部門に配分しないと、部門ごとの損益が正しく見えません。
| 区分 | 費用の例 | 扱い |
|---|---|---|
| 直接費 | その部門の売上原価、部門専属のスタッフの人件費、店舗の家賃・水道光熱費 | その部門にそのまま計上する |
| 共通費 | 本社の家賃、経理・総務など管理部門の人件費、全社共通のシステム利用料、役員報酬 | 配賦キーで各部門に割り振る(配賦せず本部として表示する方法もある) |
線引きで迷う費用は、まず直接費として部門に付けられないかを考えます。共通費が多いほど配賦の影響が大きくなり、部門の数字が実態から離れるためです。会計ソフトの部門機能を使い、仕訳を入力する時点で部門を付け、共通費は「本部(共通)」の部門に集めておくと、月末の配賦が楽になります。帳簿の整え方は中小企業の経理・会計処理ガイドで確認できます。
配賦キーはどう選ぶ?費用ごとの基準
共通費をどの基準で按分するかは、費用の性質に応じて選びます。すべての共通費に同じキーを使う必要はなく、費用が生じる原因に近いキーを選ぶほど、部門の損益が実感に近い数字になります。
| 共通費 | 配賦キーの例 | 相性がよい理由 |
|---|---|---|
| 本社の家賃・光熱費 | 使用面積の比率 | 場所を使う量に比例しやすい |
| 総務・人事の人件費 | 人員数の比率 | 人の数に応じて手間が増える |
| 経理の事務費 | 伝票枚数・取引件数の比率 | 処理する件数に比例しやすい |
| 全社の広告・販促費 | 売上高の比率 | 売上を生む活動との関係が強い |
| システムの利用料 | 利用者数・アカウント数の比率 | 使う人の数に比例しやすい |
| 共用倉庫・配送の費用 | 出荷件数・物量の比率 | 物の動きに比例しやすい |
| 共用駐車場の除雪費 | 駐車台数・面積の比率 | 冬に増える費用を、使う量に応じて分けられる |
キーを選ぶときは、因果関係の近さに加えて、基礎データが毎月手間なく取れるか、部門長に説明しやすいかも確かめます。精密なキーでも、データを集めるのに時間がかかれば運用が続きません。
売上高だけで配ると「頑張るほど負担が増える」
すべての共通費を売上高の比率で配る方法は簡単ですが、売上が大きい店舗ほど本部費の負担も大きくなります。売上を伸ばした店舗の利益が本部費で削られ、不満が出やすい点に注意が必要です。費用の中身を分けられるなら、例えば経理処理の手間に当たる部分だけを取引件数の比率で配るなど、キーを使い分けます。
3店舗の本部費を売上高比率で配賦するとどうなる?
飲食店を3店舗運営する会社を例に、売上高比率で本部費を配賦した場合の数字を見てみます。単純に「店舗の粗利」だけを見ていたときとは、異なる店舗別の営業利益が見えてきます。
計算例:本部費300万円を売上高比率で配賦する
例えば、本社家賃・本部人件費が月300万円で、月間の売上がA店2,000万円、B店1,500万円、C店500万円(合計4,000万円)の場合です。
- A店の売上構成比:2,000万円÷4,000万円=50%、配賦額:300万円×50%=150万円
- B店の売上構成比:1,500万円÷4,000万円=37.5%、配賦額:300万円×37.5%=112.5万円
- C店の売上構成比:500万円÷4,000万円=12.5%、配賦額:300万円×12.5%=37.5万円
仮に、C店の配賦前の店舗利益(貢献利益)が月25万円だとすると、配賦後は25万円から37.5万円を差し引いて12.5万円の赤字になります。
それでもC店を閉めると、全社の利益は月25万円減ります。本部費300万円はそのまま残り、A店とB店で負担することになるためです。
この例のように、配賦後の赤字は「その店舗が本部費を賄えていない」ことを示すだけで、「閉めれば全社の利益が増える」ことを意味しません。配賦後の数字だけで撤退を決めると、かえって全社の利益を減らすことがあります。
赤字店舗は閉めるべき?配賦後の利益と貢献利益の使い分け
部門別損益は、利益を段階に分けて見ると判断を誤りにくくなります。限界利益は売上から材料費などの変動費を引いた利益、貢献利益は限界利益からその店舗の固定費を引いた利益です。それぞれ使い道が異なります。
| 利益の段階 | 計算 | 主な使い道 |
|---|---|---|
| 限界利益 | 売上−変動費(材料費など) | 値引きや販促の効果、売上が増えたときの利益の増え方を見る |
| 貢献利益(店舗利益) | 限界利益−その店舗の固定費(家賃・店舗の人件費など) | 店舗や部門の存続・撤退を判断する |
| 配賦後の営業利益 | 貢献利益−本部費の配賦額 | 全社の費用を賄えているかを見る、価格設定や出店の目安にする |
店舗の撤退を考えるときは、貢献利益が赤字かどうか、閉店すると本当に減らせる費用は何かを確かめます。貢献利益が黒字で配賦後が赤字の店舗は、閉めるより、売上や店舗の固定費の改善を優先するのが基本です。店舗別の隠れた赤字の見つけ方は店舗別・部門別の収益性の検証でも解説しています。
評価は「管理できる費用まで」の利益で
店長や部門長の業績評価に、本人が増減できない本部費の配賦額を含めると、努力が数字に表れず不満が生まれます。評価は貢献利益など、本人が管理できる費用までを差し引いた利益で行い、配賦後の利益は全社の採算を確認する目的で使い分けます。
どの費用を共通費にし、どのキーで配るかは、業種や組織の形で答えが変わります。今の試算表をもとに、初回無料で配賦の案を一緒に検討できます。
無料で相談する配賦ルールを決める手順は?
- 目的を決める業績評価、撤退の判断、価格設定、賞与の配分など、何に使う数字かを決めます。目的によって、配賦する範囲や見るべき利益の段階が変わります。
- 直接費と共通費を線引きする勘定科目ごとに、部門に直接付ける費用と共通費を一覧にします。
- 共通費ごとに配賦キーを選ぶ費用が生じる原因に近く、毎月データが取れるキーを選びます。
- 基礎データの更新担当を決める売上・人員数・面積などの基礎データを、誰が毎月いつまでに更新するかを決めます。
- 過去の数字で試算する直近3か月ほどの数字で配賦してみて、部門長の実感と大きくずれていないかを確かめます。
- 文書にして社内で合意する線引き・キー・更新担当・使う会議を1枚にまとめ、部門長と合意してから運用を始めます。
- 期中は変えず、期の変わり目に見直す明らかに実態とずれている場合だけ、期首などのタイミングでまとめて見直します。
一度決めたルールを安易に途中で変えないことが特に重要です。配賦ルールを毎月変えると前月との比較ができなくなり、部門ごとの改善が数字に表れているのか判断できなくなります。原価の把握から進めたい場合は原価管理の進め方5ステップもあわせて参考になります。
本部の無駄を部門に押し付けない「予定配賦」
期初に本部費の予算額で配賦率を決め、毎月その額で各部門に配賦し、実際の本部費との差は本部に残す方法を予定配賦といいます。部門の数字が本部の費用の増減に左右されないため、部門は自分の努力に集中でき、本部は予算との差に責任を持つ形になります。
運用でつまずきやすい点と防ぎ方
| よくあるつまずき | 原因 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 前月と比べられない | 配賦キーや線引きを月ごとに変えている | 期中はルールを固定し、変更は期首にまとめる |
| 部門長が数字に納得しない | 本人が管理できない費用で評価している | 評価は貢献利益などで行い、配賦後の利益と使い分ける |
| 配賦の作業に時間がかかる | 基礎データを毎月一から集め直している | 会計ソフトの部門機能や、決まった形式の配賦シートを使う |
| 部門の合計が全社の数字と合わない | 配賦の漏れや二重計上 | 配賦後の部門合計と全社の損益が一致するかを毎月確認する |
| 共通費が膨らむ | 部門に付けられる費用まで共通費にしている | 仕訳の入力時に部門を付けるルールを決める |
配賦後の部門別損益は、毎月の会議で使ってはじめて意味を持ちます。どの会議で、誰が、どの利益の段階を見て何を決めるのかを、ルールと一緒に決めておきましょう。
よくある質問
本部費は、すべての部門に配賦しないといけませんか?
部門別損益は社内の管理のための数字なので、配賦するかどうかは会社が決められます。本部を独立した部門として表示し、各部門は貢献利益までを見る方法もあります。全社の費用を賄えているかを確認したい場合に、配賦後の利益をあわせて作ります。
複数の店舗を掛け持ちするスタッフの人件費はどう分けますか?
勤務時間の比率で分けるのが一般的です。シフト表や勤怠データから店舗ごとの勤務時間を集計し、毎月同じ方法で按分します。掛け持ちが少ない場合は、主に勤務する店舗に全額を付けるなど、手間とのバランスで決めます。
配賦の方法で法人税の額は変わりますか?
変わりません。法人税は会社全体の所得で計算するため、社内で費用を部門にどう割り振っても税額は同じです。なお、個人事業主が事業所得と不動産所得など複数の所得を持つ場合、共通の経費をどう分けるかは所得の計算に影響するため、合理的な基準での按分が求められます。
店舗が2つだけの小さな会社でも、部門別損益を作る意味はありますか?
あります。店舗が少ないほど、1店舗の不振が全社に与える影響は大きくなります。最初は配賦をせず、直接費だけで店舗ごとの貢献利益を出すところから始め、慣れてから共通費の配賦を加える進め方が現実的です。
まとめ
部門別・店舗別損益の配賦ルールは、直接費と共通費を分け、共通費ごとに面積・人数・取引件数・売上高などのキーを選んで決めます。配賦後の利益は全社の費用を賄えているかの確認に、貢献利益は撤退や評価の判断に使い分けると、数字を誤って読むことを防げます。ルールは文書にして期中はぶれさせず、見直しは期の変わり目にまとめて行いましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
