予実管理の仕組み化|年度予算の作り方と差異分析・月次モニタリングの型

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予実管理は、年度予算を月別・部門別に組み、毎月の実績と比べて差異の原因を確かめ、着地見込みと対策まで決める一連の仕組みです。予算は「目標からの逆算」と「現場の積み上げ」を組み合わせて作り、月次では差異の大きい項目から確認する型を持つと、無理なく続けられます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

予算は経営者が目標を逆算で示し、各部門が積み上げで実行計画に落とし込みます。月次では試算表が固まり次第、予実対比表で差異の大きい項目から原因を切り分け、着地見込みを更新します。

  • 予算は月別・部門別まで配分して、はじめて期中の比較に使える
  • 必要な売上は「固定費+目標利益」を限界利益率で割って逆算できる
  • 差異は金額と率の両方で見て、一時的な要因か構造的な要因かを切り分ける
  • 減価償却費や賞与を月割りで計上し、月次の数字の精度を上げることが前提になる
  • 毎月同じフォーマット・同じ会議枠で続けることが定着の鍵
目次

予実管理とは?予算・実績・着地見込みの関係

予実管理とは、期首に立てた予算と毎月の実績を比べ、差異の原因を確かめて、残りの期間の打ち手を決める仕組みです。予算を作るだけでも、実績を記帳するだけでも予実管理にはなりません。「予算」「実績」「着地見込み」の三つを並べて見ることで、期の途中で軌道修正ができるようになります。

数字意味使い方
予算期首に決めた年間・月別の計画値原則として期中は変えず、比べる基準にする
実績月次試算表で確定した数字予算と同じ科目・同じ区分で集計する
差異実績と予算の差(金額)と、実績÷予算(率)差の大きい項目から原因を確かめる
着地見込み実績の累計に、残りの月の見込みを足したもの毎月更新し、決算・納税・資金繰りの準備に使う
予実管理で使う四つの数字

期中に予算そのものを作り直すと、どこで計画とずれたのかが分からなくなります。予算は比べる基準として固定し、見通しの変化は着地見込みの列で管理するのが基本です。

年度予算はどう作る?積み上げ方式と目標逆算方式

年度予算の作り方には、大きく分けて二つのアプローチがあります。一つは、各部門や各店舗が実現できる数字を積み上げて全社予算を作る「積み上げ方式」です。もう一つは、経営者が達成したい利益水準からさかのぼって必要な売上・経費の水準を決める「目標逆算方式」です。

積み上げ方式

  • 現場の実感に合い、行動計画に落としやすい
  • 保守的な数字になりがち
  • 前年並みの延長になりやすい

目標逆算方式

  • 必要な利益や返済額から逆算できる
  • 現場の実感と離れた数字になりがち
  • 根拠のない目標は形だけになる

実務では、まず目標逆算方式で会社としての大枠の目標を示し、それを各部門に配分したうえで、各部門が積み上げの視点で実行計画に落とし込む組み合わせ方がよく使われます。両者の差が大きいときは、その差を埋める具体策(新規の顧客、値上げ、経費の見直しなど)を予算の段階で話し合っておきます。

目標逆算では、限界利益(売上から材料費・仕入などの変動費を引いた利益)の考え方を使います。必要な売上高は「(固定費+目標利益)÷限界利益率」で求められます。目標利益は、借入金の元本返済や納税に必要な額から決めると、資金繰りとつながった予算になります。

計算例:目標利益から必要な売上を逆算する

例えば、年間の固定費が4,200万円、目標の営業利益が600万円、限界利益率が40%の会社を考えます。

必要な限界利益は4,200万円+600万円=4,800万円で、必要な売上高は4,800万円÷40%=12,000万円(1億2,000万円)です。

予算編成はどの順番で進める?5つのステップ

  1. 前年度の実績と環境の変化を確認する前年度の月別の実績を確かめ、価格改定・人員計画・取引先の動きなど、予算年度の変化を洗い出します。
  2. 全社の売上・利益目標を決める経営者が、返済や投資の計画も踏まえて目標を設定します。
  3. 部門別・月別に配分する季節変動があれば、月ごとの配分比率を前年の実績などから調整します。
  4. 部門ごとに行動計画と経費計画を作る配分された数字をもとに、具体的な行動と必要な経費を積み上げます。
  5. 全社で集計し、資金繰りへの影響を確かめて確定する借入金の返済、納税、賞与、設備投資の時期を資金繰り表に落とし、資金が足りるかを確認します。

特に③の月別配分を省くと、期中の実績比較ができなくなります。例えば年間売上目標が1億2,000万円の会社なら、繁忙期と閑散期の実態に応じて月ごとの配分を変えておきます。そうすれば「今月は予算に届いていないが、年間で見れば計画どおり」といった判断がしやすくなります。

計算例:前年の構成比で月別に配分する

例えば、前年の12月の売上が年間の12%を占めていた場合、年間目標1億2,000万円の12月分は12,000万円×12%=1,440万円です。

単純に12で割ると12,000万円÷12=1,000万円となり、12月は毎年「予算超過」、閑散期は毎年「未達」に見えてしまいます。

人件費の予算は法定福利費まで含める

人件費の予算では、給与だけでなく社会保険料の会社負担分(法定福利費)も見込みます。協会けんぽ(北海道)の健康保険料率は令和8年3月分から10.28%、厚生年金保険料率は18.3%で、いずれも会社と従業員で折半します。40歳以上65歳未満の人には介護保険料(1.62%)がかかり、令和8年4月分からは子ども・子育て支援金(0.23%、労使折半)も加わります。

計算例:月給30万円の従業員1人あたりの会社負担

例えば、標準報酬月額30万円で40歳未満の従業員の場合、会社負担は次のとおりです。健康保険は300,000円×10.28%÷2=15,420円、厚生年金は300,000円×18.3%÷2=27,450円、子ども・子育て支援金は300,000円×0.23%÷2=345円です。

雇用保険の事業主負担は、一般の事業で1,000分の8.5(2026年4月1日〜2027年3月31日)です。賃金30万円なら300,000円×8.5÷1,000=2,550円になります。

合計は15,420円+27,450円+345円+2,550円=45,765円で、給与の約15%が上乗せになります。労災保険料は業種によって異なるため、別に見込みます。

月次モニタリングはどう回す?予実対比の型

予算を作った後は、毎月の実績と突き合わせる「予実対比」を行います。効率よく運用するための型として、次の進め方があります。

  1. 対比表を作る月次試算表が固まり次第、予算と実績を並べた対比表を、単月と累計の両方で作ります。
  2. 確認する項目を絞る差異の金額と差異率の両方を見て、どちらかが大きい項目を優先します。
  3. 原因を切り分ける差異が出た項目は担当部門に聞き取り、一時的な要因か構造的な要因かを分けます。
  4. 着地見込みと対策を決める構造的な要因なら着地見込みを修正し、対応策と担当者・期限を決めます。

すべての勘定科目を毎月同じ深さで確認しようとすると、時間がかかりすぎてしまいます。差異が小さい項目は簡単な確認にとどめ、差異が大きい項目に時間をかけるメリハリをつけることが、月次モニタリングを続けるコツです。

具体例:会議で取り上げる項目の基準を決めておく

例えば「差異率が10%以上、または差異の金額が50万円以上の項目だけを会議で取り上げる」と決めておくと、確認する項目が絞られます。売上の小さい月は率が大きく振れやすいため、金額の基準と組み合わせるのがポイントです。

売上の差異は「単価」と「数量」に分ける

売上の差異は、単価の差(価格差異)と数量の差(数量差異)に分けると、原因が見えやすくなります。値引きが増えたのか、客数や受注件数が減ったのかで、打つべき対策が変わるからです。

計算例:売上の差異を単価と数量に分ける

例えば、予算が単価5,000円×1,000個=500万円、実績が単価4,800円×1,100個=528万円だったとします。差異は528万円−500万円=28万円の増加です。

数量差異は増えた100個に予算単価5,000円をかけて50万円の増加、価格差異は下がった単価200円に実績の1,100個をかけて22万円の減少です。50万円−22万円=28万円と一致し、数量は伸びた一方で値引きにより単価が下がっていることが分かります。

予実管理がうまくいかない原因は?月次の数字の精度

予実管理は、毎月の実績が正しく集計されていてはじめて機能します。年に1回の処理を決算月にまとめて計上していると、期中の月次利益が実態より大きく見え、決算月だけ大きく落ち込みます。次のような項目は、月次で按分して計上しておきましょう。

項目よくあるずれ月次での処理
減価償却費決算のときに1年分をまとめて計上する年間の見込み額を12で割って毎月計上する
賞与支給月だけ人件費が膨らむ支給見込み額を月割りで見積り計上する
在庫期末にしか棚卸をしない月末に棚卸するか、売上総利益率から推定する
年払いの費用固定資産税・保険料などが支払月に集中する対象の期間に合わせて月割りで計上する
未払い・前払いの費用支払った月に全額を費用にするその費用が対応する月に計上する
月次の数字をゆがめやすい項目

月次決算の締めが遅いと、差異に気づいても打てる手が限られます。試算表を早く固めるための経理の流れは、中小企業の経理・会計処理の基本を確認するページにまとめています。

予実管理を定着させるには?会議と資金繰りのつなぎ方

予実管理は一度仕組みを作って終わりではなく、毎月続けることで意味を持ちます。定着させるには、月次の経営会議のアジェンダに「予実対比の確認」を固定枠として組み込み、資料のフォーマットを毎月同じにしておくことが有効です。フォーマットが毎月変わると前月との比較がしづらくなり、確認そのものが負担に感じられてしまいます。

  • 単月と累計の予実対比(売上・限界利益・固定費・営業利益)
  • 差異の大きい項目の原因と、一時的か構造的かの判断
  • 着地見込みと、決算・納税の見通し
  • 資金繰り表で見た、数か月先までの資金残高
  • 前月に決めた対策の進み具合

利益の予算と資金の動きは一致しません。借入金の元本返済、納税、賞与、設備投資の支出は、予算の利益とは別に資金繰り表で管理します。作り方は資金繰り表の作り方と毎月の運用ルーティンで整理しています。

予算と月次の予実対比を説明できる会社は、融資の相談でも事業の見通しを具体的に示せます。金融機関に出す計画の組み立て方は、融資・補助金に強い経営計画の作り方も参考になります。

予算の組み方や月次の数字の作り方は、会社の規模や業種で変わります。今の試算表をもとに、予実管理の型を一緒に作れます。

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北海道の会社が予算に織り込みたい季節変動と最低賃金

冬のコストと、年度途中の賃金改定

北海道では、冬季に暖房費や除雪費が集中し、建設業や観光業などは季節によって売上が大きく動きます。年間の予算を12等分せず、前年の月別実績から配分すると、季節の山と谷を予実対比で正しく読めます。

北海道の最低賃金は2026年10月1日から1,131円で、前年の1,075円から56円引き上げられました。最低賃金は年度の途中で改定されるため、時給で働く人の人件費は、改定後の月から単価を見直して予算に入れておきます。

札幌市の制度融資(マル札資金・特別資金)は、2026年10月1日以降に実行される分から利率が0.3%上乗せされています。新たな借入れを予定している場合は、支払利息の予算にも反映させましょう。

よくある質問

予算は誰が作るべきですか?

全社の目標は経営者が決め、部門の数字は各部門の責任者が作るのが基本です。経理担当者や顧問税理士が前年実績の集計や資金繰りへの影響の確認を受け持つと、作業の負担が分散します。

小さな会社でも予実管理は必要ですか?

規模が小さいほど、一つの取引や一人の採用が利益に与える影響は大きくなります。部門別まで作らなくても、売上・限界利益・固定費・営業利益の4行だけの月次予算から始めれば、負担は小さく済みます。

会計ソフトだけで予実管理はできますか?

予算を登録して実績と比べる機能を持つ会計ソフトもあります。使っているソフトの機能を確認し、着地見込みや資金繰りの管理は表計算ソフトで補う方法もあります。

予算と実績の差が毎月大きく、予算が役に立ちません。どうすればよいですか?

予算の前提(単価・数量・人員)が実態と合っていない可能性があります。前年の月別実績と比べて配分を見直し、それでも差が続く項目は、翌期の予算の作り方そのものを変えます。

まとめ

予実管理は、目標逆算と積み上げを組み合わせた年度予算を月別・部門別に配分し、毎月の予実対比で差異の大きい項目から原因を確かめ、着地見込みと対策を更新する仕組みです。減価償却費や賞与を月割りで計上して月次の数字の精度を整え、毎月同じフォーマット・同じ会議枠で続けることが、定着への近道です。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度の社会保険料率・北海道最低賃金を反映)

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