離職率防止・人材定着の最新情報【2026年版】|1〜20名規模の会社向け

最終更新:2026年7月11日(令和8年度対応)

このページは、従業員1〜20名規模の会社の経営者・人事担当の方向けに、2026年(令和8年)時点の離職率・人材定着に関する「経営判断に直結する最新情報」を税理士事務所の目線で整理したものです。人手不足倒産の実態、小さな会社ならではの離職の構造、明日から実践できる定着策、賃上げ原資のつくり方、使える支援策までをまとめて確認できます。人手不足が深刻化する中、限られた人員で事業を続ける従業員1〜20名規模の会社ほど、1人の離職がもたらす影響は大きく、定着策への投資対効果は年々高まっています。

✓ 2026年の業界動向 ✓ R8年度税制のポイント ✓ 使える補助金・助成金 ✓ 労務・人材の新ルール ✓ 12か月アクション表

まずは、2026年時点で従業員1〜20名規模の会社がどのような状況に置かれているのか、統計データから確認していきましょう。

1. 人材流出の今|2026年の動向

427人手不足倒産(2025年・過去最多)
124うち「従業員退職型」倒産(前年比約4割増)
37.9%新規高卒就職者の3年以内離職率

2025年の人手不足倒産は427件で、3年連続で過去最多を更新しました。このうち、従業員や幹部の退職が直接・間接の引き金になった「従業員退職型」は124件と、前年から約4割増加し、初めて100件を超えました。さらに注目すべきは、人手不足倒産全体の77.0%が「従業員10人未満」の小規模企業で発生している点です。新規学卒就職者の3年以内離職率も、高卒37.9%・大卒33.8%と依然として高水準で、事業所規模別に見ると5〜29人規模では高卒54.6%・大卒52.0%、5人未満では高卒63.2%・大卒57.5%と、規模が小さいほど離職率が高くなる傾向がはっきり出ています。

つまり、離職・退職による経営リスクは、大企業よりも従業員1〜20名規模の会社に集中して表れているのが2026年の実態です。1人が辞めるだけで現場が回らなくなる規模だからこそ、定着への投資は「福利厚生」ではなく「事業継続のための経営課題」として位置づける必要があります。

ポイント人手不足倒産の8割近くが従業員10人未満の会社で起きています。従業員1〜20名規模の会社にとって、人材定着は成長戦略である以前に、倒産・廃業を避けるための守りの経営課題です。

人手不足倒産を業種別に見ると、建設業113件、物流業52件といずれも過去最多となっており、2024年4月からの時間外労働の上限規制強化(いわゆる物流・建設の2024年問題)の影響を受けた業種で特に顕著です。従業員数が少ない事業者ほど、残業時間の上限管理と限られた人員での受注量確保の両立が難しく、無理な体制のまま受注を続けた結果、主力社員の退職をきっかけに事業継続が困難になるケースが増えています。

もう一つ見逃せないのが、業務knowledgeの属人化リスクです。従業員数が少ない会社ほど、特定の従業員しかできない業務が生まれやすく、その従業員が退職すると、引き継ぎが間に合わないまま業務が止まってしまうことがあります。人手不足倒産の「従業員退職型」が急増している背景には、こうした属人化した業務が抜け落ちることで、事業継続そのものが困難になるケースが含まれていると考えられます。

本章では、なぜ従業員1〜20名規模の会社で離職が起きやすいのか、その構造を4つの視点から整理します。原因が分かれば、打ち手も具体的に見えてきます。

2. 小さな会社で離職が起きる構造

2-1. 採用時の期待値と実際の仕事のギャップ

従業員数が少ない会社では、求人票や面接で伝えられる情報量が限られ、入社後に「聞いていた仕事内容や裁量と違った」というギャップが離職の引き金になりやすい傾向があります。大企業のように配属先を選べる余地が少なく、1人が複数の役割を兼務することも多いため、期待値のすり合わせ不足がそのまま早期離職に直結します。

2-2. 評価・賃金の不透明さ

専任の人事担当を置けない規模の会社では、評価基準や昇給ルールが経営者の頭の中にしかなく、従業員から見て「何をすれば給与が上がるのか分からない」状態になりがちです。この不透明さは、待遇そのものへの不満以上に、将来への見通しが立たない不安として離職意向を高めます。

2-3. オンボーディング(受け入れ体制)の不足

入社後数週間〜数か月のフォロー体制が手薄になりやすいのも、小規模な会社に共通する課題です。教育担当を専任で置けず、現場のOJT任せになることで、新人が孤立感を抱えたまま早期に離職してしまうケースが少なくありません。特に入社後3か月・6か月の壁を越えられるかどうかが、定着率を大きく左右します。

2-4. 求人費用対効果の低さ

従業員1〜20名規模の会社では、大手求人媒体に継続的に広告費をかける余裕が乏しく、採用活動自体が場当たり的になりがちです。欠員が出てから採用活動を始める「後追い型」の採用になると、選考を急ぐあまり見極めが甘くなり、結果として早期離職を招くという悪循環に陥りやすくなります。日頃から自社のホームページやSNSで働く様子を発信し、欠員の有無にかかわらず応募を集められる状態をつくっておくことが、中長期的には採用コストの削減にもつながります。

構造的要因よくある症状対応の方向性
期待値のギャップ入社後すぐの「聞いていた話と違う」という不満求人票・面接での実態説明を具体化する
評価・賃金の不透明さ昇給・昇格の見通しが立たず将来に不安評価項目を3〜5個に絞って見える化する
オンボーディング不足入社後3か月・6か月時点での孤立感定期面談と簡単なマニュアル整備
求人費用対効果の低さ欠員が出てからの後追い型採用日常的な情報発信で応募母集団を確保

次に、明日から着手できる具体的な定着策を見ていきましょう。

3. 明日からできる定着策

大がかりな制度改革をしなくても、従業員1〜20名規模の会社でも今日から着手できる定着策があります。

3-1. 評価と賃金の見える化

評価項目を3〜5個程度に絞り、「何ができれば昇給・昇格するか」を簡単な一覧表にして共有するだけでも、従業員の納得感は大きく変わります。等級や号俸まで作り込む必要はなく、まずは評価の「軸」を言語化することが第一歩です。

3-2. 定期的な1on1面談

月1回・15分程度でも、業務の進み具合だけでなく「困っていること」「今後やりたいこと」を聞く時間を設けることで、不満やギャップの芽を早期に把握できます。5〜10人規模の会社では、経営者自身が全員と定期的に話す体制をつくることが最も効果的な離職予防策になるケースが多く見られます。

3-3. 柔軟な働き方・福利厚生

時差出勤や半日単位の有給取得、繁忙期以外のリモート対応など、大きなコストをかけずに導入できる柔軟な働き方は、育児・介護と両立する従業員の定着に直結します。健康診断のオプション拡充や食事補助など、小さな福利厚生の積み重ねも「大切にされている」という実感につながります。

3-4. 5〜10人規模での具体例

例えば従業員8名の会社で、月1回の全員面談と評価基準の見える化を半年続けた結果、離職の予兆(相談件数の増加や勤怠の乱れ)を早期に察知し、待遇改善や配置転換で離職を防げた、という改善パターンは珍しくありません。小規模だからこそ、経営者の意思決定一つで施策をすぐ実行に移せる機動力を強みにできます。

3-5. 小さな成功体験の共有

新人が最初の1〜2週間で小さな成功体験を積めるよう、達成しやすい業務から任せ、そのつど声をかけてフィードバックすることも効果的です。「できた」という実感を早期に持てるかどうかは、その後の定着率に大きく影響します。先輩社員が業務を教える際は、簡単なマニュアルの整備と口頭説明を組み合わせることで、教える側の負担を減らしながら教育の質を安定させられます。

3-5. 感謝・承認の可視化

小規模な会社ほど、日々の頑張りが「言わなくても伝わっているはず」という空気になりがちですが、実際には言葉にして伝えないと従業員には届きません。朝礼やチャットツールで具体的な行動を名指しで褒める、月に一度「ありがとうカード」のような簡単な仕組みで感謝を可視化するなど、コストをかけずにできる工夫は数多くあります。承認される機会が増えるほど、従業員は自分の仕事の意味を実感しやすくなり、定着につながります。

定着策と並行して避けて通れないのが、賃上げの原資をどう確保するかという問題です。

4. 賃上げ原資のつくり方

定着策の中でも従業員の関心が高いのは、やはり賃金です。しかし、原資のない賃上げは長続きしません。2026年3月の中小企業庁の調査では、価格転嫁率は54.2%にとどまり、労務費の転嫁率は50.0%、原材料費は55.7%、エネルギーは48.9%という状況です。

費用区分価格転嫁率(2026年3月・中小企業庁調査)
全体平均54.2%
労務費50.0%
原材料費55.7%
エネルギー費48.9%

価格転嫁が進む会社ほど賃上げ原資を確保しやすく、逆に転嫁できない会社は、賃上げが利益を直接圧迫する構造になっています。税理士の視点で見た損益分岐の考え方はシンプルです。(1)現在の粗利率・固定費・人件費から損益分岐点売上高を把握する、(2)賃上げ額を人件費に織り込んだ場合の新しい損益分岐点を試算する、(3)その差額を価格転嫁・生産性向上(業務効率化、単価の高い仕事への集中)のどちらで埋めるかを決める、という順番です。生産性が上がっている業種ほど賃金上昇率も高い傾向があり、賃上げと生産性向上は切り離せない関係にあります。値上げの根拠を具体的な数字で示せる会社ほど、価格交渉と定着の両方で有利に立てます。

具体例で考えてみましょう。従業員10名の会社が全員に月5,000円のベースアップ(年間60万円)を実施する場合、社会保険料の会社負担分も含めるとおおよそ年間70万円前後の追加コストになります。一方、1人の早期離職・再採用にかかる採用コスト・教育コストは、求人広告費や研修期間中の生産性低下などを含めると50万〜100万円規模になるとされ、定着率が改善すれば数年で投資を回収できる計算になります。賃上げは「コスト」であると同時に、離職コストを避けるための「投資」でもあるという視点を持つことが大切です。

2026年は最低賃金の再引き上げが見込まれるため、定着策としての賃上げと、法令順守としての最低賃金対応が同時並行で進む年でもあります。両者を別々に考えるのではなく、最低賃金の改定幅を上回る昇給を計画的に行うことで、法令対応と定着策を一体で進める会社が増えています。

5. 使える支援策|助成金と専門家の役割

制度内容1〜20名規模での使い方
キャリアアップ助成金(令和8年度)正社員化コースを拡充。情報開示加算(1事業所20万円)新設、短時間正社員制度などの新規定+転換で40万円加算等有期・パート従業員の正社員転換で定着と待遇改善を両立
業務改善助成金(令和8年度)賃金引き上げ額別の50円・70円・90円の3コース。最大600万円最低賃金引き上げと設備投資をあわせて実施し、賃上げ原資を補う

制度活用の順序としては、まず自社の賃金・雇用形態の現状を整理し、正社員転換や賃上げの計画を立てたうえで、要件に合う助成金を後から当てはめる進め方が現実的です。助成金ありきで制度を先に決めてしまうと、本来必要な定着策の優先順位とずれてしまうことがあるため注意しましょう。

ご注意|専門家の業務分野について雇用関係助成金(キャリアアップ助成金・業務改善助成金など)の申請代行は社会保険労務士の独占業務分野です。当事務所(税理士)は、賃上げ後の人件費シミュレーション・資金繰り計画・助成金入金時の会計処理まで税務会計面からサポートし、申請書類の作成・提出そのものは提携の社会保険労務士と連携してご案内します。

助成金以外にも、定着策の原資という意味では日々の資金繰り管理が土台になります。毎月の試算表で人件費率(人件費÷売上高)の推移を確認し、賃上げや採用投資を行う前に自社の適正水準からどれだけ余裕があるかを把握しておくと、思いつきの施策で資金繰りを悪化させるリスクを避けられます。

ここまでの内容を踏まえ、今後12か月で何をいつ行うべきかを一覧にまとめました。自社の決算期や採用スケジュールにあわせて調整してご活用ください。

6. 今後12か月のアクションチェックリスト

時期やること関連制度
2026年7〜9月評価基準の見える化と1on1面談の運用を開始し、離職の予兆を把握できる体制をつくる定着策の内製化
2026年10〜12月正社員転換・待遇改善を検討し、キャリアアップ助成金の活用可否を確認キャリアアップ助成金
2027年1〜3月次年度の賃上げ原資を試算し、価格転嫁・生産性向上の計画に反映賃上げ促進税制、価格転嫁
2027年4〜6月入社半年〜1年の従業員向けフォロー面談を実施し、定着策の効果を振り返るオンボーディング体制の見直し

人材の定着は一度取り組んで終わりではなく、事業のフェーズや従業員構成の変化にあわせて継続的に見直す必要があります。上記のスケジュールを土台にしつつ、四半期に一度は評価制度・賃金・面談運用の状況を振り返り、必要に応じて内容を更新していきましょう。

7. 関連情報・よくある質問

最後によくいただく質問をまとめました。

よくある質問

Q1. 離職率はどう計算すればよいですか。

A. 一般的には「一定期間内の離職者数÷期首の在籍者数×100」で算出します。従業員数の少ない会社では1人の離職でも数値が大きく動くため、離職率だけでなく、誰が・いつ・どのような理由で辞めたのかを記録し、傾向を把握することが重要です。

Q2. 面談で本音を引き出すコツはありますか。

A. 評価や査定と切り離した「雑談に近い1on1」を別途設けると、従業員が本音を話しやすくなります。改善提案よりもまず「聞く」ことに徹し、出てきた課題は次回までに検討結果を必ずフィードバックすることで、話しても無駄という空気を防げます。

Q3. 賃上げの原資が本当にない場合はどうすればよいですか。

A. まずは値上げ・価格転嫁の余地がないかを見直すとともに、業務改善助成金など設備投資とセットで生産性を上げる制度の活用を検討します。原資がないまま無理に賃上げをすると資金繰りが悪化するため、税理士とともに損益分岐点を確認しながら、実行可能な範囲で計画することが大切です。

Q4. キャリアアップ助成金と業務改善助成金は同時に使えますか。

A. 制度の目的(正社員化・処遇改善と、賃上げ・生産性向上)が異なるため、要件を満たせば併用できる場合があります。対象経費や対象労働者の重複には注意が必要なため、活用を検討する際は提携の社会保険労務士にご確認いただくことをおすすめします。

Q5. 定着率が改善したかどうかは、何で判断すればよいですか。

A. 半年・1年単位の離職率の推移に加え、入社半年時点での在籍率、面談での満足度の変化などをあわせて見ると実態をつかみやすくなります。数値だけでなく、現場からの「辞めたいという相談が減った」といった定性的な変化も重要な判断材料です。

Q6. 経営者1人ですべての定着策を回すのは負担が大きいのですが。

A. 最初からすべてを完璧に行う必要はありません。評価の見える化と月1回の面談など、優先度の高い1〜2つの施策に絞って半年続け、効果を見ながら少しずつ広げていく進め方でも十分効果があります。無理のない範囲で継続できる仕組みにすることが、結果的に長続きのコツです。

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※本ページは2026年7月時点の公表情報に基づく一般的な情報提供です。制度・金額・期限は今後の改正等により変更される場合があります。個別の適用可否や税務判断については、顧問税理士または当事務所にご確認ください。