最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、従業員を雇用する中小企業の経営者・人事労務ご担当者向けに、2026年(令和8年)の人事労務に関する最新情報をまとめました。最低賃金の改定見通し、106万円の壁撤廃、2026年に集中する法改正カレンダー、人件費と資金繰りの考え方を、税理士の目線で整理しています。制度は今も動いているため、最新情報は本ページとあわせてご確認ください。
- 人件費は確実に増える:2026年10月に106万円の壁(賃金要件)が撤廃され、カスハラ対策も義務化されます。最低賃金の改定も10月頃に控えています。
- 最低賃金は7月27日時点で未確定:現行は全国加重平均1,121円・北海道1,075円。目安は8月に答申、10月頃発効の見込みです。
- 助成金で原資を確保:業務改善助成金は賃金引き上げ額に応じ最大600万円。設備投資とあわせて活用できます。
- 取適法は施行済み:2026年1月から手形払いが禁止され、価格協議に応じる義務が生じています。
- 社会保険料は損金になる:会社負担分は法人税・所得税の計算上の経費です。実質負担で資金計画を立てましょう。
1. 労務環境の今|2026年の動向
ひとことで言うと賃上げも人件費も社会保険料も上がる年です。上がる前提で資金と価格を組み直した会社ほど楽になります。
2026年の労務環境は、これまでにない密度で制度が動いています。最低賃金は上がり続け、社会保険の加入対象も広がります。
106万円の壁(賃金月8.8万円要件)は、2026年10月に撤廃される予定です。週20時間以上働くパートは社会保険加入の対象になります。
2026年春闘の賃上げ率は連合の最終集計で平均5.01%でした。中小企業(組合員300人未満)でも4.69%と高水準です。
これらはどれも「人件費が上がり続ける」方向を示しています。価格転嫁と生産性向上を組み合わせ、資金繰りを守ることが今年最大のテーマです。
倒産件数も増えています。2025年度の全国企業倒産は10,505件で、前年度比3.5%増、2年連続で1万件を超えました。
人手不足倒産も2025年に427件と過去最多です。人が採用できないまま制度対応も求められる、板挟みの状況が2026年の実情です。
北海道内の中小企業も、全国の動きとほぼ同じ流れです。道内一律の最低賃金1,075円は、全国加重平均との差が縮小傾向にあります。人手不足倒産は建設業・運送業で目立っており、道内特有の事情も踏まえた対応が必要です。
2. 最低賃金の最新動向と業務改善助成金
ひとことで言うと令和8年度の最低賃金額は7月27日時点でまだ決まっていません。答申は8月、発効は10月頃と見込んで準備してください。
2-1. 令和7年度の実績と令和8年度の見通し
令和7年度(現行)の最低賃金は、全国加重平均1,121円、北海道1,075円(令和7年10月4日発効)です。東京都は1,226円でした。
令和8年度の目安は、中央最低賃金審議会で審議中です。労働者側は+75円(6.6%)を要求し、経営者側は具体額を示さず慎重な姿勢です。
7月27日の会合でも結論は持ち越されました。決着は7月中を目指すとみられ、8月に都道府県ごとの答申、10月頃の発効が例年の流れです。
2-2. 業務改善助成金でカバーする
最低賃金の引き上げに対応する代表策が業務改善助成金です。令和8年度は賃金引き上げ額に応じて50円・70円・90円の3コースがあります。
設備投資(POSレジ・券売機・厨房機器・業務システムなど)とあわせて活用すると、最大600万円の助成を受けられます。
2-3. 地域間の最低賃金差と実務上の注意
最低賃金は都道府県ごとに決まります。複数拠点がある会社や、近隣の道県から通勤する従業員がいる会社は、地域差を踏まえた賃金設計が必要です。
札幌圏の企業は、令和8年度の改定幅を先取りして採用計画・価格設定を検討しておくと、急な人件費上昇に慌てずに済みます。
3. 社会保険適用拡大|106万円の壁撤廃の実務
ひとことで言うと10月から「週20時間働けば社会保険加入」が基準になります。対象者への説明を今から準備してください。
令和8年10月1日から、社会保険加入の基準だった「賃金月8.8万円(年収106万円)」の要件が撤廃されます。
撤廃後は「週の所定労働時間20時間以上」が実質的な加入基準です。厚生労働省の試算では新たに約200万人が加入対象になる見込みです。
企業規模要件(現行51人以上)も段階的に撤廃されます。令和9年10月から縮小が始まり、令和17年10月に全企業が対象になります。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 賃金要件の撤廃 | 月8.8万円要件を廃止し、週20時間以上が基準に | 対象従業員の洗い出し、本人への説明・意向確認 |
| 企業規模要件 | 51人以上→令和9年10月から段階的縮小→令和17年10月に全企業へ | 自社の対象時期を確認し、負担増の時期を試算 |
| 社会保険料負担 | 労使折半(協会けんぽ・厚生年金合計で概ね給与の28%前後) | 人件費予算・資金繰り表への織り込み |
試算例です。月収9万円のパート従業員1人が新たに加入すると、会社負担は月1万数千円、年間では十数万円規模になります。
対象が10人・20人規模なら、年間で百万円単位の負担増になることもあります。早めのシミュレーションが欠かせません。
従業員への説明と同意のポイント
労働時間を増やして手取りを確保したい人と、扶養の範囲を保ちたい人に分かれます。手取りシミュレーションを用意して説明しましょう。
将来の年金額が増える、傷病手当金の対象になるといった給付面のメリットも、あわせて伝えると納得感が高まります。
4. 2026年施行の法改正カレンダー
ひとことで言うと2026年は法改正が集中します。施行日が近いものから順に、就業規則と相談窓口を整えましょう。
2026年は労務まわりの複数の法改正が集中して施行される年です。対応部署・期限が異なるため、時系列で把握しましょう。
| 施行時期 | 法改正 | 影響 |
|---|---|---|
| 令和7年6月1日(施行済) | 熱中症対策の罰則付き義務化 | WBGT28℃等での作業内容の見直しと体制整備 |
| 令和8年1月1日(施行済) | 取適法(旧下請法) | 手形払い禁止、代金決定の一方的な取り決め禁止 |
| 令和8年4月1日 | 改正労働安全衛生法 | ストレスチェック関連の拡大、就業規則の見直し |
| 令和8年10月1日 | 106万円の壁撤廃 | 対象パートの洗い出しと社会保険料負担への備え |
| 令和8年10月1日 | カスハラ対策の義務化 | 相談窓口の整備、対応マニュアル・研修の実施 |
取適法では「親事業者・下請事業者」の呼び方が「委託事業者・中小受託事業者」に変わりました。取引条件を記録した書面を整えましょう。
カスハラ対策は相談窓口の設置だけでなく、相談後の対応フローが問われます。求職者へのセクハラ対策も同時に義務化されます。
- 2026年1月1日取適法が施行。手形払い禁止、価格協議の応諾義務が発生
- 2026年4月1日改正労働安全衛生法が施行。ストレスチェック関連が拡大
- 2026年7月下旬〜8月令和8年度最低賃金の目安・答申
- 2026年10月1日106万円の壁撤廃、カスタマーハラスメント対策が義務化
5. 人件費と資金繰り|税理士の視点
ひとことで言うと人件費の増加は税負担も減らします。増える負担と減る税金を両方計算してから資金計画を立てましょう。
最低賃金の上昇、社会保険適用拡大、賃上げ促進税制の活用は、人事の問題であると同時に資金繰りの問題です。
社会保険料の会社負担分は法人税・所得税の計算上、損金・必要経費になります。実質負担で資金計画を立てることが重要です。
資金繰りは3ステップで考えます。①翌期の人件費総額を試算する②使える助成金・税制を洗い出す③価格転嫁で原資をどこまで確保できるか検証する、の順です。
具体例です。従業員20名(パート8名)の会社で、最低賃金改定により時給が60円上昇し、パート5名が新たに社会保険に加入したとします。
賃上げ分の人件費増加はおおよそ年150万円前後、社会保険料の会社負担分は5名で年70万〜100万円程度になります。合計で年250万円規模です。
原資を確保できないまま賃上げだけが先行すると、利益とキャッシュを同時に圧迫します。試算表で影響額を可視化しておきましょう。
賃上げ促進税制の使い方
| 給与総額の増加率 | 税額控除率 | 備考 |
|---|---|---|
| +1.5%以上 | 15% | 教育訓練費等の上乗せ要件を満たすとさらに控除率が上がる |
| +2.5%以上 | 30% | 上乗せ要件を満たすと控除率がさらに拡大する場合がある |
控除しきれない金額は5年間繰り越せます。期中の給与総額を月次でモニタリングしておくと、期末の判断がしやすくなります。
業務改善助成金(現金の助成)と賃上げ促進税制(税額控除)は、財源も所管も異なるため、要件を満たせば同時に活用できます。
6. 数値・期限の早見表(2026年後半〜2027年)
ひとことで言うと制度変更が2026年後半に集中します。自社の従業員構成に関係する行だけ確認すれば十分です。
本文で取り上げた制度の数値と時期を1つの表にまとめました。全部を覚える必要はありません。関係する行だけ確認してください。
| 項目 | 内容 | 時期 |
|---|---|---|
| 取適法(手形払い禁止等) | 資本金・従業員数基準で対象拡大 | 2026年1月1日施行済 |
| 改正労働安全衛生法 | ストレスチェック関連の拡大 | 2026年4月1日 |
| 最低賃金の改定 | 現行は全国加重平均1,121円・北海道1,075円。目安審議中 | 2026年8月頃答申、10月頃発効見込み |
| 106万円の壁の撤廃 | 賃金要件(月8.8万円)を撤廃。週20時間要件は残存 | 2026年10月1日 |
| カスハラ対策の義務化 | 相談窓口の整備、対応マニュアルの作成 | 2026年10月1日 |
| 業務改善助成金 | 賃金引き上げ額別の50/70/90円コース、最大600万円 | 令和8年度受付中 |
| 社会保険適用拡大(企業規模要件) | 51人以上→段階的縮小 | 2027年10月から縮小開始 |
最低賃金は7月27日時点で確定していません。中央最低賃金審議会が引き上げ額を審議中で、8月の答申後に確定します。
7. 経営者からよくある質問(人事労務)
ひとことで言うと最低賃金・壁・カスハラ・就業規則の悩みは、どれも「早く知って、早く従業員に説明する」ことで解決できます。
Q. 最低賃金の引き上げに、今のうちから備えるにはどうすればよいですか。
A. 目安の答申は例年7月下旬〜8月、発効は10月頃です。最低賃金を下回りそうな従業員を、今のうちに洗い出しておくと安心です。
Q. 106万円の壁が撤廃されると、パートの手取りは実際どう変わりますか。
A. 社会保険料が天引きされるため、額面が同じでも手取りは一時的に減ります。一方で将来の年金や傷病手当金の対象になるメリットもあります。
Q. カスタマーハラスメント対策として、最低限何をやっておけばよいですか。
A. 相談窓口の担当者を決めて周知することと、悪質なクレームは従業員だけで対応させず上長に引き継ぐ基準を決めることが最優先です。
Q. 就業規則の見直しは、何を優先すればよいですか。
A. 施行日が近いカスハラ対策と106万円の壁対応を優先し、そのあと熱中症対策や安全衛生関連の規定を整備する順番が現実的です。
Q. 社会保険料の会社負担を軽減する方法はありますか。
A. 保険料率自体は下げられませんが、賃上げ促進税制の税額控除で実質負担を圧縮する方法があります。労働時間の恣意的な調整は避けてください。
Q. 従業員から「なぜ社会保険に入るのか」と聞かれたら、どう説明すればよいですか。
A. 制度上の基準に該当したことを伝えたうえで、将来の年金額が増える、病気やケガで働けない間の傷病手当金が受けられるといった給付面のメリットもあわせて説明すると納得感が高まります。
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|人事労務・社会保険
ひとことで言うと制度改正を先取りして説明した会社と、現場任せで放置した会社とで、離職や未払い賃金という結果に差が出ています。
実際の現場で繰り返し見られるパターンを、守秘義務に配慮して一般化したモデルケースとして紹介します。
成功事例
失敗事例
※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後12か月のアクションチェックリスト
ひとことで言うと最低賃金・106万円の壁・カスハラ対策は時期がずれてきます。四半期ごとに1つずつ片づければ間に合います。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 最低賃金の答申・発効日を確認し賃金台帳を見直す、業務改善助成金の申請準備 | 最低賃金改定、業務改善助成金 |
| 2026年10〜12月 | 106万円の壁撤廃・カスハラ対策義務化にあわせ対象従業員の洗い出しと相談窓口整備 | 社会保険適用拡大、カスハラ対策 |
| 2027年1〜3月 | 年末調整・法定調書とあわせ人件費増加を反映した次年度予算を作成 | 賃上げ促進税制、資金繰り計画 |
| 2027年4〜6月 | 春闘・最低賃金改定を見据えた賃金制度の点検、助成金活用実績の棚卸し | キャリアアップ助成金、業務改善助成金 |
このスケジュールはあくまで目安です。業種・拠点数・従業員構成に応じて、自社の給与データにもとづく個別の確認をおすすめします。
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと人事労務の制度は、定着策・補助金・経営全般のページとつながっています。あわせて確認すると理解が深まります。
人事労務・社会保険まわりの資金繰りは、実務に強い税理士へ
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