最終更新:2026年7月11日(令和8年度対応)
このページは、建設業・工事業を営む法人・一人親方の社長、経理担当の方向けに、2026年(令和8年)時点の業界動向・税務会計・補助金・労務の「経営判断に直結する最新情報」を税理士事務所の目線で整理したものです。資材高騰や取適法(旧下請法)への対応、CCUS・インボイス経過措置の見直しなど、建設業ならではの論点を中心にまとめています。日々の現場対応で後回しになりがちな経営数字の見直しに、ぜひお役立てください。
1. 業界の今|2026年の建設業・工事業動向
帝国データバンクの調査によると、2026年上半期の「物価高倒産」は建設業が151件と全業種で最も多く、半期ベースで過去最多を更新しました。前年同期比27.9%増で、原材料高(鋼材・木材・コンクリート等)を要因とする倒産が全体の約4割を占めています。総合工事が72件、うち木造建築工事が42件、左官工事は65件で半期ベースの過去最多となるなど、資材価格の上昇が体力の弱い企業から順に経営を圧迫している状況がうかがえます。北海道内でも公共工事への依存度が高い地域と民間工事が中心の都市部とで倒産リスクの現れ方は異なり、自社の受注構成を踏まえた資金繰り管理が欠かせません。
建設物価調査会の統計でも、2026年3月時点で建設資材物価指数は土木部門が28か月連続のプラスとなり、木造住宅は前年同月比+5.9%、鉄骨造の事務所・工場も+3.4%と、上昇に歯止めがかかっていません。人手不足・時間外労働の上限規制・円安という複合要因が重なっており、見積り時点と着工時点で資材価格が変わってしまう「原価割れ」のリスクは引き続き高い水準です。特に鉄骨造・RC造の非住宅建築では、着工から竣工までの期間中に複数回の資材価格改定が発生するケースも珍しくなく、契約時点での価格固定リスクをどう分散するかが工事採算を左右します。一方でCCUS(建設キャリアアップシステム)は技能者登録数が181万人を超え、建設業従事者の約半数が登録済みとなり、公共工事や大手元請の現場では実質的な標準インフラになりつつあります。
公共工事は景気変動の影響を受けにくい受注先である一方、入札参加には経営事項審査(経審)の点数が直結します。総合評定値(P点)は完成工事高・自己資本額・技術職員数・社会性等(W点)などから算出され、資材高騰で完成工事高が名目上増えても、利益率が伴わなければ評価が上がるとは限りません。名目の売上増加と実質的な収益力を切り分けて経審対策を検討することが、公共工事中心の企業にとって重要になっています。
2. 経営のポイント|建設業・工事業が今やるべきこと
2-1. 価格転嫁・原価管理の徹底
2026年1月1日、下請法に代わり「取適法(中小受託取引適正化法)」が施行されました。受注者(下請事業者)への手形交付による支払いは原則禁止となり、検収の有無にかかわらず、受領日から60日以内のできる限り短い期間内に現金で支払うことが義務化されています。あわせて、価格転嫁のための協議に応じず一方的に代金を据え置く行為も禁止対象です。元請・下請どちらの立場であっても、契約書・注文書の支払条件や、労務費・資材費の上昇分をどう転嫁するかを明文化しておくことが欠かせません。実行予算と実際原価のブレを月次で把握し、未成工事支出金の管理と合わせて原価意識を高めることが、資材高騰局面での利益確保につながります。国土交通省の公共工事標準請負契約約款には、資材価格の急激な変動に対応する「単品スライド条項」「全体スライド条項」が用意されており、民間工事でも同様の価格変動条項を契約書に盛り込む動きが広がっています。見積書は材料費・労務費・経費を分離して提示することで、価格転嫁の交渉根拠を示しやすくなります。
2-2. 人手不足対策と工程管理の両立
時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間が原則)は2024年4月の適用開始から2年以上が経過し、建設業は労働基準監督署の重点監督業種の一つとなっています。是正指導が入った場合、公共工事の入札にも影響しかねないため、日頃からの記録整備が重要です。工程管理と労務管理を切り離さず、週休2日を前提とした工期設定・人員配置を行う体制づくりが必要です。あわせてICT施工の活用も広がっており、現場管理アプリで日報・写真・工程を一元管理する取り組みも人手不足対策として定着しつつあります。2025年度から土工・浚渫工の一部で原則化が始まったICT施工は、2026年度は舗装工・地盤改良工にも対象が拡大されます。測量・出来形管理のICT化やドローン活用は、後述の省力化投資補助金の対象にもなりやすい分野です。特定技能制度による外国人材の受け入れも人手不足対策の選択肢となっており、技能実習からの移行や日本語教育体制の整備を含めた中長期の人員計画が求められます。週休2日を実現できている現場はまだ道半ばという指摘もあり、発注者・元請・下請が一体となった工期設定の見直しが引き続きの課題です。
2-3. CCUS活用と技能者の処遇改善
CCUSは法律上の義務ではないものの、公共工事の入札条件や大手元請・ハウスメーカー独自のルールで登録を求められるケースが増え、実質的に「登録していないと現場に入りにくい」状況が定着しつつあります。2027年4月には簡易型が廃止され詳細型に一本化される予定で、早めの移行準備が安心です。経営事項審査(経審)でも令和8年7月1日申請分から「建設技能者を大切にする企業の自主宣言(職人いきいき宣言)」がW点(社会性等)の加点対象に加わり、技能者の賃金・処遇改善に取り組む企業を評価する流れが強まっています。CCUSのレベル別評価を賃金体系に反映させることは、採用力の強化にも直結します。CCUSでは技能者の就業履歴や保有資格をもとに4段階のレベル分けが行われ、レベルに応じた年収の目安も公表されています。若手技能者に「頑張れば給料が上がる」道筋を示せることは、採用競争が激しい建設業界で人材を確保するうえでの強みになります。
建設業の経営環境は土木・建築・専門工事によって異なりますが、①資材高騰への価格転嫁、②取適法対応による支払条件の見直し、③CCUS・技能者育成という3つの対応軸はほぼ共通しています。以下では、これらを踏まえた税務・会計面の留意点を具体的に整理します。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
建設業は工事契約の期間が長く、収益認識の時期や未成工事支出金の管理が利益に直結する業種です。あわせて一人親方への外注が多い業界特有の事情から、インボイス制度の経過措置の見直しにも早めの対応が求められます。令和8年度税制改正の各種措置が自社の決算にどう影響するかを事前に把握しておくことも欠かせません。
資材価格の変動と取適法による支払サイトの短縮が同時に進むいま、月次の資金繰り表で入出金を先読みする体制が一段と重要になっています。特に材料の先行仕入れが必要な工事や、複数現場を並行して抱える時期は手元資金が薄くなりやすいタイミングです。試算表・資金繰り表を毎月更新し、金融機関との情報共有を欠かさないことが、資材高騰局面を乗り切るための基本になります。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 収益認識(工事契約) | 長期の請負工事は、履行義務の充足に応じて収益を計上する処理が原則。決算期をまたぐ工事の未成工事支出金・未成工事受入金の区分を要確認 | 工事台帳と実行予算を月次で突合し、期末の仕掛工事原価を過不足なく計上 |
| 一人親方への外注費とインボイス | 2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間で終了。免税事業者からの仕入税額控除の経過措置は令和8年10月1日以後、80%から70%控除へ縮小 | 一人親方の適格請求書発行事業者登録の有無を取引先ごとに確認し、外注費の消費税負担増を見積りに反映 |
| 簡易課税の検討 | 2割特例終了後、法人は対象外のため、売上5,000万円以下であれば簡易課税(第三種:みなし仕入率70%)の選択も選択肢 | 直近の課税売上高と本則課税・簡易課税の有利判定を早めにシミュレーション |
| 少額減価償却資産の特例 | 令和8年4月1日以後取得分は40万円未満に拡充(従来30万円未満)。年合計300万円まで、令和11年3月31日まで延長 | 建設機械・工具・測量機器の更新時期を見直し、償却資産税の対象になる点も踏まえて活用 |
| 賃上げ促進税制 | 中小企業向けに重点化。給与総額+1.5%で税額控除15%、+2.5%で30%(教育訓練費等の上乗せあり、繰越控除5年) | 技能者・現場職の賃上げ計画を給与集計と連動させ、適用可否を事前に試算 |
| 防衛特別法人税 | 令和8年4月1日以後開始事業年度から、基準法人税額から基礎控除500万円を控除した額に4%課税。中小企業の多くは負担ゼロ | 単体の基準法人税額を確認し、対象になる場合は納税予定に組み込む |
| 建設業許可の決算変更届 | 毎事業年度終了後4か月以内に決算報告(変更届出書)の提出が必要。経審を受ける場合はあわせて事業年度終了後4か月以内に申請 | 決算確定後のスケジュールを顧問税理士・行政書士と共有し、提出漏れを防止 |
| 電子帳簿保存法への対応 | 工事写真・請求書等の電子データはスキャナ保存・電子取引データ保存のルールに沿った保存が必要 | 現場写真・請求書のクラウド管理と保存要件(検索性・訂正削除履歴)を確認 |
資材高騰や取適法対応など、建設業を取り巻く制度は毎年のように変化しています。決算だけでなく、月次での資金繰り・原価管理を顧問税理士と共有しておくことで、制度変更が起きても慌てず対応できる体制を整えられます。
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
補助金の多くは、設備投資を実施し実績報告を行った後に交付される「後払い」が原則です。採択されてから入金までの資金繰りをあらかじめ見込んでおくことで、資材高騰局面でも安心して設備投資を進められます。
| 制度 | 上限・補助率 | 直近スケジュール | 建設業での使い方 |
|---|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金【一般型】 | 750万〜8,000万円(賃上げ特例で最大1億円)、補助率1/2〜2/3 | 第7回:令和8年6月5日要領公開→7月受付→採択11月頃 | ICT建機・3次元測量機器・遠隔臨場システムなど工程省力化設備の導入 |
| 中小企業省力化投資補助金【カタログ注文型】 | 最大1,500万円、補助率1/2〜2/3 | 随時受付(おおむね2027年3月末頃まで) | 警備・清掃ロボットや施工管理アプリなど汎用製品をカタログから選定 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 補助上限4,000万円級(旧ものづくり補助金と統合) | 第1回公募締切:令和8年9月30日18:00 | プレカット・新工法など新分野進出、設備投資による生産性向上 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 通常枠上限50万円+各種上乗せで最大250万円、補助率2/3 | 第20回:受付令和8年11月5日〜12月15日17:00 | 一人親方・小規模工務店のHP整備、営業ツール作成、CCUS登録関連費用 |
| 事業承継・M&A補助金 | 最大2,000万円 | 15次公募:令和8年5月22日要領公開、受付6月中旬〜7月下旬 | 後継者不在の工務店・専門工事業のM&Aや小規模売り手支援類型の活用 |
| 経営革新計画の承認 | 補助金ではなく、信用保証の別枠付与・低利融資等の資金調達支援 | 随時申請可能(都道府県知事等の承認) | 資材高騰による運転資金の増加に備えた資金調達枠の確保 |
補助金は建設業許可の業種区分や決算書の内容によって申請可否が変わることもあるため、公募要領の確認と並行して、自社の決算内容を早めに整理しておくことをおすすめします。
5. 労務・人材の最新論点
北海道の最低賃金は2025年10月に1,075円まで引き上げられ、令和8年度分は例年通り夏の目安答申を経て10月頃に発効する見込みです。日給制の技能者が多い建設業では、最低賃金の引上げが日当設定や下請単価の見直しに直結するため、早めのシミュレーションが欠かせません。また令和8年10月1日からはカスタマーハラスメント対策が事業主の義務となり、現場や事務所での施主・近隣からの過度なクレーム対応についても社内ルールの整備が求められます。「106万円の壁」(賃金月8.8万円要件)は令和8年10月1日に撤廃され、新たに約200万人が社会保険の加入対象となる見込みです。事務職員や配偶者パートの働き方・手取りへの影響を踏まえた説明が必要になります。人手不足倒産のうち「従業員退職型」は2025年に124件と前年比で約4割増え初めて100件を超えており、技能者の定着策としてCCUSのレベル別評価やキャリアアップ助成金(正社員化コース、情報開示加算1事業所20万円)を活用した処遇改善の検討価値は高まっています。
現場作業が中心の建設業では、熱中症対策の罰則付き義務化(令和7年6月1日施行、WBGT28度または気温31度以上での作業時に休憩等の措置が必要)にも実務対応が必要です。休憩場所の確保や作業時間の見直しは、労働安全衛生法改正(令和8年4月1日施行、高年齢労働者対策の強化等を含む)ともあわせて社内ルール化しておくと安心です。有効求人倍率が高水準で推移する建設関連職種では、賃金以外の魅力づけ(週休2日の実現、資格取得支援、CCUSを活用した公正な評価)が採用力を左右します。育児・介護休業法の改正(柔軟な働き方の措置、子の看護等休暇の拡大)も令和7年度に段階施行されており、現場職・事務職の両方で最新の制度を踏まえた就業規則の見直しが求められます。「資材高騰で見積りをどう作ればいいか分からない」「CCUSや補助金の相談先がない」といった経営全般のお悩みについても、税理士がワンストップで整理をお手伝いします。
6. 今後12か月のアクションチェックリスト
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 取適法対応で受発注契約書・支払条件を点検、省力化投資補助金一般型の申請準備、資材高騰を踏まえた見積り単価の改定 | 取適法、中小企業省力化投資補助金 |
| 2026年10〜12月 | 最低賃金改定・106万円の壁撤廃を踏まえた人件費と社会保険料の再試算、インボイス経過措置(70%控除)への移行確認、カスハラ対応ルールの周知 | 最低賃金、社会保険適用拡大、インボイス経過措置 |
| 2027年1〜3月 | 決算に向けて未成工事支出金・工事原価の総点検、少額減価償却資産特例の活用状況を確認、建設業許可の決算変更届を準備 | 収益認識、少額減価償却資産の特例 |
| 2027年4〜6月 | 賃上げ促進税制の適用判定、CCUS詳細型への移行・経審の職人いきいき宣言の申請準備、次期公共工事入札に向けた経審対策 | 賃上げ促進税制、CCUS、経営事項審査 |
7. 関連情報・よくある質問
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