税制改正・税務の最新情報【令和8年度・2026年版】

最終更新:2026年7月11日(令和8年度税制改正対応・全国の中小企業向け)

このページは、中小企業の経営者様、経理・総務ご担当者様向けに、令和8年度(2026年度)税制改正のうち中小企業に関係が深い項目を、税理士事務所の目線で整理したものです。防衛特別法人税・賃上げ促進税制といった法人課税の改正から、インボイスの経過措置、少額減価償却資産の拡充、個人所得課税の「壁」まで、実務対応の順に確認できます。税制改正は毎年少しずつ内容が変わるため、「昨年までの知識」のままだと思わぬ見落としにつながることがあります。まずは全体像をつかみ、自社の決算期・業種に関係する部分から確認していきましょう。

✓ 令和8年度改正の全体像 ✓ 防衛特別法人税・賃上げ税制 ✓ インボイス経過措置 ✓ 少額減価償却資産40万円 ✓ 税務カレンダー ✓ 個人所得課税の壁

1. 令和8年度改正の全体像

4%防衛特別法人税(基準法人税額−500万円に課税)
30%賃上げ促進税制の税額控除率(給与総額+2.5%時)
40万円未満少額減価償却資産の特例対象(令和8年4月以後取得)

令和8年度税制改正は、防衛力強化の財源確保と、中小企業の賃上げ・投資を後押しする措置が同時に進む改正です。中小企業への影響が大きい項目を大づかみに整理すると、次の3つに集約されます。1つ目は、令和8年4月1日以後開始事業年度から始まる「防衛特別法人税」。2つ目は、中小企業向けに重点化された「賃上げ促進税制」。3つ目は、インボイス2割特例の終了にともなう消費税の経過措置の見直しです。あわせて、少額減価償却資産の特例が40万円未満に拡充されるなど、設備投資への配慮も盛り込まれています。

中小企業の経理・会計処理そのものについては「中小企業の経理・会計処理 完全ガイド」で、決算月ごとの申告・納付期限については「法人の決算月別 年間スケジュール」で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

ポイント防衛特別法人税は基準法人税額が500万円以下の中小企業の多くにとって負担が生じない設計です。一方、賃上げ促進税制や少額減価償却資産の特例は「使わなければ恩恵がない」制度です。決算前に自社が対象になるかどうかを確認することが、令和8年度の税務対応の出発点になります。

令和8年度改正は、単発の増税・減税ではなく「防衛力強化の財源確保」「賃上げの後押し」「インボイス制度の定着」という3つの政策目的が同時に動いている点が特徴です。自社の決算期がいつであっても、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から順次影響を受けるため、次の決算がいつ到来するかを起点に、どの改正が最初に関係してくるかを確認しておくことをおすすめします。

自社に関係するかどうかのセルフチェック
・直近の法人税額(基準法人税額)が500万円を超えている→防衛特別法人税の試算が必要
・今期、給与総額を前年より増やす予定がある→賃上げ促進税制の対象になり得る
・免税事業者との取引が多い、または自社が免税事業者→インボイス経過措置の影響を確認
・40万円未満の備品・機械の購入を予定している→少額減価償却資産の特例の対象
・家族をパート・専従者として雇用している→160万円の壁の基準を年末調整前に確認

2. 法人課税|防衛特別法人税と賃上げ促進税制

2-1. 防衛特別法人税の計算方法

防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から課税される新税です。計算式は「(基準法人税額−基礎控除500万円)×税率4%」で、基準法人税額とは外国税額控除などを差し引く前の法人税額を指します。たとえば基準法人税額が600万円の場合、(600万円−500万円)×4%=4万円が防衛特別法人税額です。基準法人税額が500万円以下であれば税額はゼロになるため、多くの中小企業は実質的に負担が生じません。ただし、決算期が1年未満の場合は基礎控除額を月数按分する必要があり、グループ通算制度を適用している企業は、グループ全体で500万円の控除枠を分け合う点に注意が必要です。黒字が大きく伸びた期や、複数の関連会社を経営している場合は、決算前に試算しておくことをおすすめします。

2-2. 賃上げ促進税制の使い方

中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)が、前事業年度より給与総額を増加させた場合に、増加額の一部を法人税額(個人事業主は所得税額)から控除できる制度です。給与総額が前年度比+1.5%以上増加すれば税額控除15%、+2.5%以上増加すれば30%が適用されます。これに加えて、教育訓練費を一定以上増加させた場合や、くるみん認定・えるぼし認定など子育てとの両立支援・女性活躍推進の認定を取得した場合には、税額控除率がさらに上乗せされる仕組みも用意されています。控除しきれなかった金額は5年間の繰越しが可能です。

要件税額控除率備考
給与総額 前年度比+1.5%以上15%基本要件(いずれか一方を選択)
給与総額 前年度比+2.5%以上30%基本要件(いずれか一方を選択)
上乗せ要件(教育訓練費の増加等)控除率に加算要件を満たすごとに加算。詳細な要件は年度により見直しあり

たとえば前事業年度の給与総額が5,000万円、当期が5,150万円(+3.0%)に増加した企業では、+2.5%以上の要件を満たすため税額控除率30%が適用されます。控除対象となる増加額150万円×30%=45万円が法人税額から控除される計算です。ただし税額控除額には上限があり、法人税額(個人事業主は所得税額)の20%までとされていますので、赤字期や税額が小さい期は控除しきれない金額が生じることがあります。その場合は繰越控除の手続き(明細書の添付)を忘れずに行うことが重要です。

防衛特別法人税は、法人税の中間申告(予定申告)にもいずれ影響してくる可能性がある新しい税目です。中間申告の要否・金額は前期実績を基準に決まるため、初年度である令和8年4月以後開始事業年度の実績が、翌期以降の中間申告額に反映されていきます。資金繰り計画を立てる際は、法人税・地方法人税・消費税に加えて、防衛特別法人税の負担も含めて見込んでおくと安心です。

2-3. 申告実務での留意点

防衛特別法人税・賃上げ促進税制のいずれも、確定申告書に必要な明細書を添付することで適用を受ける仕組みです。特に賃上げ促進税制は、給与等の集計方法(雇用者給与等支給額の算定)を誤ると税額控除額が変わってしまうため、決算数か月前の段階で人件費の集計方法を顧問税理士とすり合わせておくと、申告直前になって慌てることを防げます。防衛特別法人税は令和8年4月以後開始事業年度からの新しい申告書様式に対応する必要があるため、会計ソフト・申告ソフトのアップデート状況もあわせて確認しておきましょう。

3. 消費税・インボイス|2割特例の終了と経過措置

インボイス制度に関する消費税の実務は、令和8年から令和9年にかけて大きな節目を迎えます。免税事業者から課税事業者になった小規模事業者の負担を軽くする「2割特例」は、令和8年9月30日を含む課税期間で適用が終了します。個人事業者・法人を問わず、その後の消費税額の計算方法をあらかじめ決めておく必要があります。

事業者区分2割特例終了後の選択肢実務対応
個人事業者(適格請求書発行事業者)令和9年分・令和10年分に限り「3割特例」(納付税額を売上に係る消費税額の3割とする経過措置)を選択可能事前届出は不要。簡易課税へ移行する場合は、適用を受けた課税期間の翌課税期間の確定申告期限までに届出をすれば認められる
法人3割特例の対象外。一般課税か簡易課税を選択売上5,000万円以下なら簡易課税の事前届出を早めに検討。仕入税額の実額とみなし仕入率を比較して有利な方を選ぶ

あわせて、免税事業者からの仕入れについて仕入税額の一定割合を控除できる経過措置も見直されます。現行80%控除から、令和8年10月1日以後は70%控除に移行します。免税事業者と取引の多い企業ほど、取引先のインボイス登録状況の確認と、仕入税額控除への影響の試算が必要です。2割特例が使えなくなることで、これまで簡易な方法で消費税を計算していた個人事業者・小規模法人は、令和8年秋以降、原則的な計算方法(一般課税または簡易課税)への移行準備を進める必要があります。特に法人は3割特例の対象外のため、早めに簡易課税の選択を検討することをおすすめします。

インボイスの経過措置は、免税事業者側・課税事業者側の双方に影響します。免税事業者のままでいる取引先が多い企業は、令和8年10月以降、仕入税額控除できる金額が減る(80%控除→70%控除)ため、原価・粗利への影響を試算しておくことが重要です。逆に、免税事業者の立場にある個人事業主・小規模法人は、取引先から登録要請を受けるケースが増える可能性があるため、インボイス登録の要否をあらためて検討する機会にもなります。

4. 減価償却・設備投資|少額40万円未満と経営強化税制

設備投資に関する税制は、少額な資産ほど判定を誤りやすい分野です。令和8年度改正では、中小企業者等の少額減価償却資産の特例が拡充され、即時償却できる金額の上限が40万円未満(従来30万円未満)に引き上げられました。

取得価額処理方法備考
10万円未満消耗品費等として全額損金資産計上は不要
20万円未満一括償却資産として3年均等償却償却資産税の対象外
40万円未満(令和8年4月1日以後取得。従来30万円未満)中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額即時損金年合計300万円まで。適用期限は令和11年3月31日まで延長。償却資産税の対象になる点に留意
それ以上固定資産として計上し、耐用年数にわたり減価償却通常の減価償却(定額法・定率法等)

より大きな設備投資には、中小企業経営強化税制の活用も検討できます。中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けたうえで対象設備を取得すると、即時償却または取得価額の10%税額控除(資本金3,000万円超の法人は7%)を選択適用できます。2025年度改正で適用期限が2年延長され、令和8年度中の投資でも令和9年3月31日までに取得すれば対象になります。従来はA・B・C・Dの4類型がありましたが、デジタル化設備を対象としたC類型は廃止され、現在はA類型(生産性向上設備)・B類型(収益力強化設備)・D類型(経営規模拡大等設備)の3類型です。少額減価償却資産の特例と異なり、事前に経営力向上計画の認定を受ける必要があるため、設備の発注前から準備を始めることが欠かせません。

たとえば、対象設備を800万円で取得し、経営力向上計画の認定を受けて税額控除を選択した場合、資本金3,000万円以下の法人であれば800万円×10%=80万円が法人税額から控除されます(即時償却を選ぶ場合は、取得価額の全額をその期の損金にできます)。即時償却は初年度の税負担を大きく抑えられる一方、翌期以降は減価償却費が計上できなくなるため、複数年の利益計画とあわせてどちらを選ぶか検討することをおすすめします。

5. 個人所得課税|160万円の壁と基礎控除

中小企業の経営者にとって身近な論点が、家族従業員やパート従業員の年収に関する所得税の「壁」です。令和7年度税制改正による基礎控除の引き上げにより、いわゆる「103万円の壁」は実質「160万円」に引き上げられました。給与収入200万円以下の場合、基礎控除95万円と給与所得控除65万円をあわせて160万円まで、所得税がかからない計算になります。この基準は令和7年分から適用が始まっており、令和8年分についても同じ基準が使われます。

基礎控除自体は、令和7年・令和8年分に限り、合計所得金額に応じて58万円に一定額(37万円・30万円・10万円・5万円)を加算する時限的な措置がとられており、所得水準によって基礎控除額が95万円・88万円・68万円・63万円と段階的に変わります。令和9年分以降は、この時限措置が終了し、基礎控除は一律58万円に戻る予定です。パート従業員を雇用する企業や、家族を専従者・従業員として雇用している個人事業主は、年末調整・給与計算の際にこの基準の変化を踏まえて説明できるようにしておくと、従業員からの問い合わせにも対応しやすくなります。

たとえば、個人事業主の配偶者がパートとして年間150万円の給与収入を得ている場合、給与収入が160万円以下であれば所得税は発生しません(住民税は別途、自治体ごとの基準で課税される場合があります)。扶養控除・配偶者控除など事業主側が受けられる控除の年収基準は、この所得税の基礎控除・給与所得控除の基準とは別の制度であるため、あわせて確認することをおすすめします。

6. 今後の税務カレンダー

時期制度・変更点
2026年7〜9月2割特例が適用できる最後の課税期間(令和8年9月30日を含む課税期間まで)。簡易課税への移行を検討する場合は届出のタイミングを確認
2026年10月免税事業者からの仕入税額控除の経過措置が70%控除へ移行。106万円の壁(社会保険加入要件の賃金基準)も撤廃
2027年1〜3月令和8年4月以後開始事業年度の防衛特別法人税・賃上げ促進税制・少額減価償却資産の特例(40万円未満)の初回適用が本格化。決算前に対象可否を試算
2027年分(令和9年分)個人事業者は「3割特例」の適用が可能に(令和9年分・令和10年分の2年間)。基礎控除の時限加算が終了し一律58万円へ
2029年3月31日中小企業経営強化税制の適用期限(令和8年度中に経営力向上計画の認定を受けて投資する場合は早めの準備を)

決算月ごとの確定申告・中間申告の具体的な期限や、毎月の実務スケジュールは「法人の決算月別 年間スケジュール(税務・社会保険カレンダー)」で確認できます。あわせてご活用ください。

Q. 自社が防衛特別法人税の対象になるか、どう確認すればよいですか。
A. 直近の決算で法人税額(税額控除前の基準法人税額)が500万円を超えているかどうかが目安になります。超えている場合は、令和8年4月以後開始事業年度の決算前に顧問税理士に試算を依頼することをおすすめします。

Q. 2割特例が終わったら消費税の負担は必ず増えますか。
A. 一般課税・簡易課税のどちらを選ぶか、業種区分やみなし仕入率によって結果が変わります。実額の仕入税額控除と簡易課税のみなし仕入率を比較したうえで、有利な方法を選ぶことが重要です。

Q. 少額減価償却資産の特例と一括償却資産は、どちらを選ぶべきですか。
A. 少額減価償却資産の特例(40万円未満)は当期に全額損金にできる一方、償却資産税の対象になります。一括償却資産(20万円未満)は3年均等償却ですが償却資産税の対象外です。当期の利益状況や資産の保有見込み期間によって有利な方法が変わるため、複数年の見通しをもとに選択することをおすすめします。

Q. 令和8年度改正は個人事業主にも関係しますか。
A. 賃上げ促進税制・少額減価償却資産の特例・インボイスの3割特例など、多くの制度が個人事業主にも適用されます。防衛特別法人税は法人税に上乗せされる税目のため、個人事業主(所得税)には課されません。

7. 関連情報・よくある質問

令和8年度税制改正への対応は、実務に強い税理士へ

防衛特別法人税・賃上げ促進税制・インボイスの経過措置など、自社に関係する改正だけを整理し、決算・申告への影響を数字にしてご説明します。

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※本ページは2026年7月時点の公表情報に基づく一般的な情報提供です。制度・金額・期限は今後の改正等により変更される場合があります。個別の適用可否や税務判断については、顧問税理士または当事務所にご確認ください。