最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、中小企業の経営者様、経理・総務ご担当者様向けに、令和8年度(2026年度)税制改正のうち中小企業に関係が深い項目を、税理士事務所の目線で整理したものです。防衛特別法人税・賃上げ促進税制といった法人課税の改正から、インボイスの経過措置、少額減価償却資産の拡充、個人所得課税の「壁」まで、実務対応の順に確認できます。まずは全体像をつかみ、自社の決算期・業種に関係する部分から確認していきましょう。
- 結論を最初に:防衛特別法人税(基準法人税額500万円超の部分に4%)と賃上げ促進税制(+2.5%で控除30%)が令和8年4月から本格化します。
- インボイスは選択が必要:2割特例はR8.9.30を含む課税期間で終了。法人は簡易課税等、個人は3割特例(R9・R10年分)を検討します。
- 設備投資がしやすくなる:少額減価償却資産の特例は40万円未満(年300万円まで)に拡充されました。
- 家族の年収基準に変化:いわゆる160万円の壁は令和7・8年分の時限措置。令和9年分は基礎控除が58万円に戻ります。
- 仕入税額控除が縮小:免税事業者からの仕入について、控除できる割合が令和8年10月から70%に下がります。
1. 令和8年度改正の全体像
ひとことで言うと新税と拡充策が同時に来る年です。まず自社の決算期がいつ改正の影響を受け始めるかを確認してください。
令和8年度税制改正は、防衛力強化の財源確保と、中小企業の賃上げ・投資を後押しする措置が同時に進みます。影響が大きい項目は3つです。1つ目は令和8年4月1日以後開始事業年度からの「防衛特別法人税」。2つ目は中小企業向けに重点化された「賃上げ促進税制」。3つ目はインボイス2割特例の終了にともなう消費税の見直しです。
中小企業の経理・会計処理そのものは「中小企業の経理・会計処理 完全ガイド」で、決算月ごとの申告・納付期限は「法人の決算月別 年間スケジュール」で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
自社に関係するかを次のチェックリストで確認してください。1つでも当てはまれば、該当する章を読み進めることをおすすめします。
2. 法人課税|防衛特別法人税と賃上げ促進税制
ひとことで言うと防衛特別法人税は黒字企業だけの新たな負担、賃上げ促進税制は使えば得する制度です。両方を決算前に試算しましょう。
2-1. 防衛特別法人税の計算方法
防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から課税される新税です。計算式は「(基準法人税額−基礎控除500万円)×税率4%」です。基準法人税額が600万円なら、(600万円−500万円)×4%=4万円が税額になります。
基準法人税額が500万円以下であれば税額はゼロです。多くの中小企業は実質的に負担が生じません。ただし決算期が1年未満の場合は基礎控除額を月数按分する必要があり、グループ通算制度を使う企業は500万円の枠をグループで分け合う点に注意してください。
2-2. 賃上げ促進税制の使い方
中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告書を提出する中小企業者等が、前年度より給与総額を増やした場合に、増加額の一部を法人税額から控除できる制度です。+1.5%以上増加で控除15%、+2.5%以上増加で控除30%が適用されます。教育訓練費の増加や、くるみん・えるぼし等の認定取得で控除率がさらに上乗せされます。控除しきれなかった金額は5年間繰り越せます。
| 要件 | 税額控除率 | 備考 |
|---|---|---|
| 給与総額 前年度比+1.5%以上 | 15% | 基本要件(いずれか一方を選択) |
| 給与総額 前年度比+2.5%以上 | 30% | 基本要件(いずれか一方を選択) |
| 上乗せ要件(教育訓練費の増加等) | 控除率に加算 | 要件を満たすごとに加算。詳細は年度により見直しあり |
たとえば前年度の給与総額5,000万円が当期5,150万円(+3.0%)に増えた企業は、+2.5%要件を満たし控除率30%です。増加額150万円×30%=45万円が法人税額から控除されます。
ただし控除額には上限(法人税額の20%まで)があるため、赤字期や税額が小さい期は控除しきれない場合があります。その場合は明細書を添付して繰越控除の手続きを忘れずに行ってください。
2-3. 申告実務での留意点
いずれの制度も、確定申告書に明細書を添付することで適用されます。賃上げ促進税制は給与等の集計方法を誤ると控除額が変わるため、決算数か月前に人件費の集計方法を顧問税理士とすり合わせておくと安心です。防衛特別法人税は新しい申告書様式に対応する必要があるため、会計・申告ソフトのアップデート状況も確認しておきましょう。
3. 消費税・インボイス|2割特例の終了と経過措置
ひとことで言うと2割特例は2026年9月で終わります。法人は簡易課税か本則課税、個人は3割特例を今のうちに選んでおきましょう。
インボイス制度に関する消費税の実務は、令和8年から令和9年にかけて大きな節目を迎えます。免税事業者から課税事業者になった小規模事業者の負担を軽くする「2割特例」は、令和8年9月30日を含む課税期間で適用が終了します。
| 事業者区分 | 2割特例終了後の選択肢 |
|---|---|
| 個人事業者(適格請求書発行事業者) | 令和9年分・令和10年分に限り「3割特例」を選択可能。事前届出は不要 |
| 法人 | 3割特例の対象外。一般課税か簡易課税を選択。売上5,000万円以下は簡易課税を検討 |
簡易課税へ移行する場合、届出は原則「適用を受けたい課税期間の開始前」までですが、2割特例を適用していた事業者は、適用を受けた課税期間の翌課税期間の確定申告期限までの届出でも認められる経過的な扱いがあります。実額の仕入税額控除とみなし仕入率を比較したうえで、決算の数か月前には方向性を固めておきましょう。
あわせて、免税事業者からの仕入について仕入税額の一定割合を控除できる経過措置も見直されます。現行80%控除から、令和8年10月1日以後は70%控除に移行します。免税事業者と取引の多い企業ほど、原価・粗利への影響を試算しておくことが重要です。
- 2026年9月30日2割特例が適用できる最後の課税期間(この日を含む課税期間まで)
- 2026年10月1日免税事業者からの仕入税額控除が70%控除へ移行(現行80%控除)
- 2027年分・2028年分個人事業者は「3割特例」を選択可能(令和9年分・令和10年分)
2割特例が使えなくなることで、簡易な方法で消費税を計算していた個人事業者・小規模法人は、令和8年秋以降、原則的な計算方法への移行準備が必要です。特に法人は3割特例の対象外のため、早めに簡易課税の選択を検討することをおすすめします。
4. 減価償却・設備投資|少額40万円未満と経営強化税制
ひとことで言うと40万円未満なら即時に経費にできます。もっと大きな投資は経営力向上計画の認定で税額控除も選べます。
設備投資に関する税制は、少額な資産ほど判定を誤りやすい分野です。令和8年度改正では、中小企業者等の少額減価償却資産の特例が拡充され、即時償却できる上限が40万円未満(従来30万円未満)に引き上げられました。
少額減価償却資産の特例は償却資産税の対象になる点に留意してください。より大きな設備投資には、中小企業経営強化税制の活用も検討できます。経営力向上計画の認定を受けたうえで対象設備を取得すると、即時償却または取得価額の10%税額控除(資本金3,000万円超は7%)を選択できます。
2025年度改正で適用期限が2年延長され、令和8年度中の投資でも令和9年3月31日までに取得すれば対象です。従来のC類型(デジタル化設備)は廃止され、現在はA類型(生産性向上設備)・B類型(収益力強化設備)・D類型(経営規模拡大等設備)の3類型です。
少額減価償却資産の特例と違い、事前に経営力向上計画の認定を受ける必要があるため、設備の発注前から準備を始めてください。
たとえば対象設備を800万円で取得し、資本金3,000万円以下の法人が税額控除を選ぶ場合、800万円×10%=80万円が法人税額から控除されます。即時償却を選ぶと初年度の税負担を大きく抑えられますが、翌期以降は減価償却費を計上できなくなるため、複数年の利益計画とあわせて検討してください。
5. 個人所得課税|160万円の壁と基礎控除
ひとことで言うと家族従業員の年収160万円までは所得税がかかりません。ただしこの基準は令和8年分までの時限措置です。
中小企業の経営者にとって身近な論点が、家族従業員やパート従業員の年収に関する所得税の「壁」です。令和7年度改正による基礎控除の引き上げで、いわゆる「103万円の壁」は実質「160万円」に引き上げられました。給与収入200万円以下なら、基礎控除95万円と給与所得控除65万円をあわせて160万円まで所得税がかかりません。
基礎控除自体は、令和7年・令和8年分に限り、合計所得金額に応じて58万円に一定額(37万円・30万円・10万円・5万円)を加算する時限措置です。所得水準によって基礎控除額は95万円・88万円・68万円・63万円と段階的に変わります。令和9年分以降はこの時限措置が終了し、基礎控除は一律58万円に戻る予定です。
パート従業員を雇用する企業や、家族を専従者・従業員として雇用している個人事業主は、年末調整・給与計算の際にこの基準の変化を説明できるようにしておくと、従業員からの問い合わせにも対応しやすくなります。
たとえば、配偶者がパートで年間150万円の給与収入を得ている場合、160万円以下なら所得税は発生しません(住民税は自治体ごとの基準で別途課税される場合があります)。扶養控除・配偶者控除の年収基準は、この所得税の基礎控除・給与所得控除の基準とは別の制度のため、あわせて確認してください。
6. 数値・期限の早見表(2026年後半〜2027年)
ひとことで言うと本文で触れた改正を1つの表に凝縮しました。自社の決算期・取引条件に関係する行だけ確認すれば十分です。
| 改正項目 | 内容 | 適用・施行時期 |
|---|---|---|
| 防衛特別法人税 | (基準法人税額−500万円)×4% | R8.4.1以後開始事業年度から |
| 賃上げ促進税制 | +1.5%で控除15%・+2.5%で30%、5年繰越可 | 継続適用 |
| インボイス2割特例の終了 | 個人・法人とも適用が終了 | R8.9.30を含む課税期間まで |
| 個人事業者の3割特例 | 納付税額を売上に係る消費税額の3割とする経過措置 | R9年分・R10年分の2年間 |
| 免税事業者からの仕入税額控除 | 現行80%控除から70%控除へ縮小 | R8.10.1以後 |
| 少額減価償却資産の特例 | 上限40万円未満に拡充(年300万円まで) | R8.4.1以後取得・期限R11.3.31 |
| 基礎控除の上乗せ(160万円の壁) | 給与収入200万円以下で160万円まで非課税 | R7・R8年分の時限措置 |
| 特例事業承継税制 | 特例承継計画の提出期限が令和9年9月30日に延長 | 承継自体は令和9年12月31日までに実施 |
ガソリン税・軽油引取税の暫定税率廃止など、燃料コストに関わる改正も別途進んでいます。運送業・建設業など燃料使用量の多い業種は、当サイトの業種別ページもあわせてご確認ください。
7. 経営者からよくある質問(税制改正)
ひとことで言うと「対象になるか」「いつまでに何をするか」の2点さえ早めに確認すれば、税制改正への対応で慌てることはありません。
Q. 防衛特別法人税は、資金繰りにどう影響しますか。
A. 基準法人税額が500万円以下の期は税額がゼロのため、多くの中小企業は当面の影響は限定的です。500万円を超えると納税資金の上乗せが必要になるため、決算2〜3か月前に試算し、翌期の中間申告額への影響も確認しておくと安心です。複数の関連会社がある場合は基礎控除枠の按分も忘れずに確認してください。
Q. 2割特例が終わったあと、簡易課税を選ぶ場合はいつまでに何をすればよいですか。
A. 2割特例を適用していた事業者は、適用を受けた課税期間の翌課税期間の確定申告期限までの届出でも認められる経過的な扱いがあります。実額の仕入税額控除とみなし仕入率を比較したうえで、決算の数か月前には方向性を固めておくことをおすすめします。
Q. 少額減価償却資産の特例と一括償却資産は、どちらを選ぶべきですか。
A. 少額減価償却資産の特例(40万円未満)は当期に全額損金にできますが償却資産税の対象になります。一括償却資産(20万円未満)は3年均等償却ですが償却資産税の対象外です。当期の利益状況や資産の保有見込み期間によって有利な方法が変わります。年間300万円の上限を超えそうな場合は、決算期をまたいで購入時期を分散させる方法も検討してください。
Q. 賃上げ促進税制で控除しきれなかった金額は、繰り越すのに何が必要ですか。
A. 控除しきれなかった金額は5年間の繰越しが認められていますが、繰越控除を受けるには、その後も継続して確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書を添付し続ける必要があります。赤字の年でも要件を満たしていた記録を残しておかないと、黒字化した年に繰越控除が使えなくなるおそれがあります。
Q. 令和8年度改正は個人事業主にも関係しますか。
A. 賃上げ促進税制・少額減価償却資産の特例・インボイスの3割特例など、多くの制度が個人事業主にも適用されます。防衛特別法人税は法人税に上乗せされる税目のため、個人事業主(所得税)には課されません。
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|税務・税制対応
ひとことで言うと制度改正を早めに数字で試算した企業と、思い込みで放置した企業とで、納税額や資金繰りに大きな差が出ています。
実際の現場で繰り返し見られるパターンを、守秘義務に配慮して一般化したモデルケースとして紹介します。ご自身の経営判断の参考としてご活用ください。
成功事例
失敗事例
※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後の税務カレンダー
ひとことで言うと2026年7月から2027年6月までを4つの期間に分けました。今の時期の欄だけ確認すれば準備は十分です。
| 時期 | 制度・やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 2割特例が使える最後の課税期間の確認、簡易課税へ移行する場合は届出タイミングの確認 | インボイス2割特例 |
| 2026年10〜12月 | 免税事業者からの仕入税額控除が70%控除へ移行、106万円の壁撤廃、新税・新制度の初回試算に着手 | インボイス経過措置、防衛特別法人税 |
| 2027年1〜3月 | 令和8年4月以後開始事業年度の防衛特別法人税・賃上げ促進税制・少額減価償却資産の初回適用を確認、確定申告準備 | 防衛特別法人税、賃上げ促進税制 |
| 2027年4〜6月 | 個人事業者は3割特例の適用開始(令和9年分)、基礎控除の時限加算終了に向けた確認、特例承継計画の準備 | 3割特例、特例事業承継税制 |
決算月ごとの確定申告・中間申告の具体的な期限や、毎月の実務スケジュールは「法人の決算月別 年間スケジュール」で確認できます。あわせてご活用ください。
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと税制改正への対応は、経理の基本ルールや計算ツールと合わせて確認すると、実務にそのまま落とし込みやすくなります。
令和8年度税制改正への対応は、実務に強い税理士へ
防衛特別法人税・賃上げ促進税制・インボイスの経過措置など、自社に関係する改正だけを整理し、決算・申告への影響を数字にしてご説明します。
対象:中小企業・個人事業主の経営者の方(オンライン対応可・初回相談無料)
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