最終更新:2026年7月11日(令和8年度対応)
この記事は、資産管理会社・持株会社を経営するオーナー・後継者の方向けに、2026年(令和8年)時点の事業承継・株価対策・税務の「経営判断に直結する最新情報」を税理士事務所の目線で整理したものです。事業承継税制の期限、持株会社化のメリット・留意点、株価評価の考え方などを中心にまとめています。札幌・北海道エリアはもちろん、全国どこからでもオンラインでご相談いただけます。
1. 業界の今|2026年の事業承継動向
帝国データバンクの2025年調査によると、全国企業の後継者不在率は50.1%と7年連続で改善しましたが、依然として2社に1社が後継者未定の状態です。注目すべきは承継方法の内訳で、「内部昇格」が36.1%となり、「同族承継」32.3%を初めて上回りました。血縁に頼らない承継が主流になりつつある一方、株式や資産管理会社の持分をどう引き継ぐかという税務・資金面の課題は変わらず残ります。特に持株会社を経由した株式承継では、後継者個人の資金負担が生じにくい一方、グループ全体のガバナンス設計を誤ると経営の意思決定が遅れるリスクもあるため、承継後の体制まで見据えた準備が欠かせません。
令和8年度税制改正では、法人版事業承継税制(特例措置)を利用するための「特例承継計画」の提出期限が1年6か月延長され、法人版は2027年9月30日、個人版は2028年9月30日となりました。ただし、納税猶予の対象となる株式等の贈与・相続そのものの実行期限は延長されておらず、2027年12月31日までに行う必要がある点には注意が必要です。計画提出の余裕はできましたが、実際の株式移転はこれまでどおり計画的に進める必要があります。特例承継計画は認定経営革新等支援機関(税理士等)の指導・助言を受けたうえで都道府県に提出する書類であるため、計画提出の段階から専門家と連携しておくことで、その後の認定申請や年次報告もスムーズに進められます。
資産管理会社・持株会社ならではの税務論点も見逃せません。総資産に占める株式等の割合が50%以上になると「株式保有特定会社」に該当し株価評価が上がりやすいほか、資本金1億円超の特定同族会社(全国でおおむね4,500社程度)には、利益を過度に社内留保すると通常の法人税に上乗せして課税される「留保金課税」のリスクもあります。承継の主役が「内部昇格」に移る中でも、株価と税務の設計は所有者自身が主導すべきテーマです。
後継者不在への対応としては、親族内承継や内部昇格だけでなく、第三者への株式譲渡(M&A)も現実的な選択肢として広がっています。持株会社を活用している場合は、事業会社株式を譲渡するか持株会社株式そのものを譲渡するかによって、譲渡益への課税関係や手続きの複雑さが変わるため、複数のシナリオを比較検討しておくことが望まれます。地方の中小企業でも、同業者や取引先による事業承継型M&Aの件数は年々増加しています。
2. 経営のポイント|資産管理会社・持株会社が今やるべきこと
2-1. 持株会社化のメリットと留意点
事業会社の株式を持株会社に集約する持株会社化には、受取配当等の益金不算入制度を活用した資金の還流、グループ法人税制による資産移転時の譲渡損益の繰延べ、後継者への株式集中による議決権の分散防止といったメリットがあります。一方で、持株会社自体の株価が上昇しやすい、設立・移転コストがかかる、グループ内の資金管理・内部統制の仕組みが必要になるといった留意点もあります。持株会社化はゴールではなく手段であるため、承継後の経営体制や資金繰りまで見据えた設計が欠かせません。特にグループ内の資金を持株会社に集約しすぎると、事業会社側の設備投資や運転資金が不足するケースもあるため、資金配分のルールをあらかじめ取り決めておくことが望まれます。
2-2. 株価評価と株特外しの検討
非上場株式の相続税評価は、類似業種比準方式・純資産価額方式(またはその併用)によって行われますが、資産管理会社は株式等や不動産の保有割合が高く、評価方式によって株価が大きく変動しやすい特徴があります。株式保有特定会社に該当すると原則として純資産価額方式に近い評価となり株価が高くなりやすいため、資産構成の見直し(株特外し)や、役員退職金の支給による純資産圧縮など、複数の対策を組み合わせて検討することが一般的です。いずれも実行後の株価への影響を試算したうえで、計画的に進める必要があります。株価対策は一度実行すれば終わりではなく、業績や資産構成の変化によって毎期評価額が変動するため、決算のたびに株価を試算し、対策の効果と副作用を継続的に確認しておくことが重要です。
2-3. 不動産管理方式の選択
資産管理会社が保有する不動産をどう活用するかは、管理料方式・一括借上げ(サブリース)方式・不動産所有方式の3つに大別されます。管理料方式は個人所有の不動産の管理業務のみを会社が受託する形で、所得移転効果は限定的です。一括借上げ方式は会社が家賃保証をして転貸することで、より多くの所得を会社側に移転できますが、賃貸住宅管理業法上のサブリース規制(重要事項の説明義務等)への対応が必要です。不動産所有方式は会社が不動産そのものを所有する形で、所得移転効果は最も大きい一方、不動産取得税・登録免許税等の移転コストがかかります。自社の承継計画・資金状況に応じた選択が重要です。不動産所有方式を選択する場合は、個人から法人への売買時に譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税が発生するため、複数年に分けて売却する、収益力の高い物件から優先するなど、税負担を平準化する工夫も検討されます。
2-4. 経営者保証・種類株式の活用
金融機関からの借入に経営者保証を付けている場合、事業承継のタイミングで後継者に保証も引き継がれることが多く、これが承継をためらう一因になります。「経営者保証に関するガイドライン」の特則では、事業承継時に前経営者・後継者の双方から二重に保証を徴求することを原則禁止するなど、保証解除に向けた見直しが進められています。あわせて、株式を後継者以外の親族にも分散させたい場合は、議決権制限株式や拒否権付株式(いわゆる黄金株)などの種類株式を活用し、経営権と財産権を切り分けて設計する方法も検討の余地があります。種類株式の設計は登記事項や定款変更の手続きを伴うため、発行前に司法書士・税理士と連携し、将来の相続・売却まで見据えたシミュレーションをしておくことをおすすめします。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
持株会社・資産管理会社が特に留意すべきなのが「特定同族会社の留保金課税」です。株主の3人以下(同族関係者を含む)で発行済株式の50%超を保有する「特定同族会社」が、利益を必要以上に社内留保すると、通常の法人税に加えて特別税率による追加課税が課されます。ただし資本金1億円以下の中小法人には原則として不適用の特例があるため、実務で対象となるのは資本金1億円超の特定同族会社に限られ、該当法人数はおおむね4,500社程度とされています。持株会社を資本金1億円超で設立・増資する場合は、留保金課税の対象になり得る点を事前に確認しておく必要があります。留保金課税の計算では配当金支出や役員賞与など社外流出額を留保金額から控除できるため、無理のない範囲で配当や役員報酬に振り向けることも有効な対策の一つです。
令和8年度税制改正で新設される防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から、基準法人税額から500万円を控除した金額に4%を乗じて課税されます。持株会社は事業実態の小さい会社も多く、基準法人税額自体が小さいケースでは実質的な負担は限定的ですが、グループ内で配当収入や不動産所得が多い持株会社では課税対象となる可能性があるため、事業年度ごとの試算をおすすめします。あわせて、受取配当等の益金不算入制度は、完全子法人株式等・関連法人株式等・その他株式等で益金不算入の割合が異なるため、グループ内の株式保有比率を正しく把握しておくことが節税効果を最大化するポイントです。特にグループ法人税制の適用対象となる完全支配関係(100%グループ)内では、資産の譲渡損益が繰り延べられる一方、寄附金は全額損金不算入・受贈益は全額益金不算入となる特有のルールもあるため、グループ内取引を行う前に影響を確認しておくことが欠かせません。
法人版事業承継税制(特例措置)は、非上場株式にかかる贈与税・相続税の納税を100%猶予できる制度ですが、資産管理会社は「資産保有型会社」「資産運用型会社」に該当すると原則として対象外となります。ただし常時使用従業員が5人以上いる、事務所・店舗等を所有または賃借しているなど、一定の事業実態要件を満たせば例外的に適用対象となる場合もあります。持株会社が事業承継税制の適用を検討する場合は、事業実態の要件を満たしているかを早い段階で確認しておくことが不可欠です。
創業から年数が経過した会社では、設立時の出資者やその相続人が、実態のない「名義株」として株主名簿に残っているケースも少なくありません。名義株や少数株主が放置されたままだと株主総会の招集や意思決定に支障が出るだけでなく、事業承継税制の認定申請にも影響することがあるため、株主名簿と実際の権利関係を早めに突き合わせ、必要に応じて買い取り等により整理しておくことをおすすめします。
特例措置によらない株式の生前贈与を検討する場合は、相続時精算課税制度(累計2,500万円までの特別控除、超過部分は一律20%課税)の活用も選択肢になります。令和6年以降は相続時精算課税を選択した場合でも年110万円の基礎控除が別途認められるようになったため、暦年贈与との使い分けを含めて毎年の贈与額を試算しておくとよいでしょう。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 特定同族会社の留保金課税 | 資本金1億円超の特定同族会社が対象。超過留保金に特別税率で追加課税 | 資本金水準・利益留保方針を確認し、配当や役員報酬で調整 |
| 防衛特別法人税(R8.4.1以後開始) | (基準法人税額-500万円)×4% | 配当収入等が多い持株会社は事業年度ごとに試算 |
| 事業承継税制と資産保有型会社 | 資産管理会社は原則対象外(事業実態要件を満たせば例外) | 常時使用従業員数・事務所実態等を事前に確認 |
| 受取配当等の益金不算入 | 株式区分により益金不算入割合が異なる | グループ内の株式保有比率を整理し区分を確認 |
| グループ法人税制(完全支配関係) | 資産譲渡損益の繰延べ、寄附金は全額損金不算入 | グループ内取引の前に対象資産・金額を確認 |
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
資産管理会社・持株会社では、大型の設備投資を伴う補助金よりも、事業承継・M&Aや専門家活用に関する支援策との相性がよい点が特徴です。以下はいずれも税理士が要件整理や資金計画づくりの面からサポートできる制度です。
| 制度・支援策 | 内容 | 直近スケジュール | 資産管理会社・持株会社での使い方 |
|---|---|---|---|
| 事業承継・M&A補助金 | 最大2,000万円。小規模売り手支援類型が新設、採択率は約6割 | 15次公募:R8.5.22要領公開、受付6月中旬〜7月下旬 | グループ内M&A・株式取得資金の一部、専門家活用費用への充当 |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 公的機関による事業承継・M&Aの無料相談窓口 | 通年相談受付 | 後継者マッチング、株式承継スキームの初期相談 |
| 認定支援機関(税理士等)の活用 | 経営革新等支援機関による経営改善計画策定支援 | 通年 | 持株会社化・組織再編計画の策定、金融機関との調整 |
| 早期経営改善計画策定支援事業 | 専門家活用費用の一部を国が補助 | 通年受付(金融機関経由) | 持株会社化・組織再編前の資金計画策定費用への活用 |
5. 労務・人材の最新論点
持株会社・資産管理会社では従業員を雇用しないケースも多く、労務管理の中心は役員報酬・退職金の設計になります。役員退職金は、最終月額報酬×役員在任年数×功績倍率で計算されるのが一般的で、支給額が過大と認定されると損金不算入となるリスクがあるため、功績倍率の目安(社長は3.0倍程度が実務上の目線とされる例が多い)や類似法人比較を踏まえた金額設定が重要です。あわせて、退職金支給は持株会社の純資産を圧縮し株価を引き下げる効果もあるため、事業承継のタイミングと合わせて検討する事例が多く見られます。役員報酬の改定やみなし配当が生じる自己株式の取得などを行う際は、株主総会・取締役会の議事録を必ず作成し、決議の日付と内容を明確に残しておくことが、税務調査や金融機関の与信審査への備えにもなります。
従業員を雇用する事業会社を傘下に持つグループの場合、2026年10月施行の「106万円の壁」撤廃や、2026年10月からのカスタマーハラスメント対策義務化など、事業会社側の労務対応は持株会社の連結的な経営判断にも影響します。また、2026年の春闘では中小企業(組合員300人未満)でも平均4.69%の賃上げが実現しており、グループ全体の人件費計画と役員報酬とのバランスを踏まえた資金計画が必要です。役員報酬は株主総会の決議事項でもあるため、株価対策・納税資金確保の観点から、顧問税理士と毎期の水準を確認することをおすすめします。特に急激な役員報酬の増減は、過大役員給与として損金不算入となるリスクや、社会保険料の等級変更への影響もあるため、複数年単位でバランスの取れた設計をしておくことが望まれます。
6. 今後12か月のアクションチェックリスト
以下は、資産管理会社・持株会社が2026年7月から2027年6月にかけて優先的に取り組みたい実務対応の目安です。株式の承継スケジュールに合わせて時期を調整してください。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 特例承継計画の提出要否判断、株式保有特定会社の判定・株特外しの検討 | 事業承継税制(特例措置) |
| 2026年10〜12月 | 防衛特別法人税・留保金課税の試算、役員退職金支給による株価圧縮効果の検証 | 防衛特別法人税/留保金課税 |
| 2027年1〜3月 | 受取配当等の益金不算入・グループ法人税制を踏まえたグループ内資金移動の点検 | グループ法人税制 |
| 2027年4〜6月 | 株式贈与・相続の実行(2027年12月末期限)に向けた資金計画・認定申請スケジュールの最終確認 | 事業承継税制の適用手続き |
7. 関連情報・よくある質問
資産管理会社・持株会社の経営・税務は、実務に強い税理士へ
株価対策・事業承継税制・留保金課税まで、御社の株主構成に即した具体策をご提案します。持株会社化の是非を含めた中長期のグループ設計から、毎期の株価試算・申告実務まで一貫してサポートします。
対象:資産管理会社・持株会社のオーナーの方(オンライン対応可・初回相談無料)
無料相談を申し込む 料金・契約の流れを見る※本ページは2026年7月時点の公表情報に基づく一般的な情報提供です。制度・金額・期限は今後の改正等により変更される場合があります。個別の適用可否や税務判断については、顧問税理士または当事務所にご確認ください。
