北海道の最低賃金は、2026年10月1日から時間額1,131円です。前年の1,075円から56円(5.21%)の引上げで、パート・アルバイトを含む道内のすべての労働者に適用されます。令和8年度の業務改善助成金は、北海道では計算上9月30日で申請期間が終わっています。
この記事の結論
北海道最低賃金1,131円は2026年10月1日に発効しています。月給制の人も含めて全員の時間単価を点検し、人件費の増加分を価格・生産性・税制や補助金でどう吸収するかを決めましょう。
- 1,131円を下回る賃金の定めは無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされる(最低賃金法)
- 時給1,075円・月100時間のパートなら、月5,600円・年67,200円の増加(社会保険料の会社負担は別)
- 業務改善助成金(令和8年度)の北海道の申請期間は、発効日の前日(計算上2026年9月30日)まで
- 10月以降は、賃上げ促進税制や省力化・デジタル化の補助金が検討の中心になる
何が決まり、いつから適用されている?
- 北海道最低賃金を56円引き上げて1,131円とすることが、2026年9月1日に官報公示されました(答申は2026年8月5日)。
- 2026年10月1日に発効し、パート・アルバイトを含む道内すべての労働者に適用されています。
- 業務改善助成金(令和8年度)は2026年9月1日に申請受付が始まり、北海道の申請期間は発効日の前日(計算上2026年9月30日)までで終わっています。
北海道最低賃金1,131円の中身と対象
北海道労働局の報道発表資料によると、改正は2026年8月5日に開催された第3回北海道地方最低賃金審議会で答申されました。北海道最低賃金額を56円引き上げ、1,131円(対前年引上率5.21%)とする内容です。その後の手続を経て、2026年9月1日に北海道労働局長が官報公示し、2026年10月1日に発効しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改正後の時間額 | 1,131円 |
| 引上げ額 | 56円 |
| 対前年引上率 | 5.21% |
| 答申日 | 2026年8月5日 |
| 官報公示 | 2026年9月1日 |
| 発効日 | 2026年10月1日 |
| (参考)全国加重平均 | 1,177円(前年1,121円) |
最低賃金は、パート・アルバイト・嘱託を含め、北海道内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。正社員だけの話ではありません。本社が道外にある会社でも、道内の事業場で働く人には北海道の最低賃金が適用され、派遣労働者には派遣先の事業場がある地域の最低賃金が適用されます。
最低賃金を下回る定めは無効になる
最低賃金額に達しない賃金を定めた労働契約は、その部分が無効となり、最低賃金額と同じ定めをしたものとみなされます(最低賃金法)。下回っていた分の差額を支払う必要があるほか、罰則の対象にもなります。
最低賃金と比べる賃金・比べない賃金
最低賃金と比べるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。次の賃金は除いて計算します。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
月給制の人は、月給(上の賃金を除いた額)を1か月平均の所定労働時間で割って時間単価にします。日給制の人は、日給を1日の所定労働時間で割ります。時給制の人だけでなく、月給制の正社員が下回っていないかも、改定のたびに確認が必要です。
計算例:月給制の人の確認
例えば、月給180,000円(最低賃金の計算から除く手当を除いた額)、1か月平均の所定労働時間が160時間の場合です。
180,000円÷160時間=1,125円
時間単価は1,125円で1,131円を下回るため、月給を1,131円×160時間=180,960円以上に引き上げる必要があります。
北海道には、一部の製造業を対象とした特定(産業別)最低賃金もあります。地域別最低賃金と両方が適用される場合は、高いほうの金額が適用されます。
人件費はいくら増えるか
影響を数字で見ておきます。賃金そのものの増加に加えて、社会保険料の会社負担と、ほかの従業員への波及まで含めて考えるのがポイントです。
計算例:時給1,075円のパートが1,131円になる場合
例えば、月100時間勤務するパートの場合です。
- 1か月の増加額:56円×100時間=5,600円
- 1年間の増加額:5,600円×12か月=67,200円
- 同じ条件のパートが5人いる場合:67,200円×5人=336,000円
社会保険に加入しているパートであれば、会社負担の保険料も増えます。協会けんぽ北海道の健康保険料率と厚生年金保険料率、子ども・子育て支援金率を合計すると10.28%+18.3%+0.23%=28.81%で、会社負担はその半分の14.405%です。月5,600円の賃金増なら、目安として5,600円×14.405%=約807円が加わります(標準報酬月額は等級で決まるため、実際の増加額は等級の変わり方で前後します)。
実際の負担はこれだけではありません。雇用保険料(事業主負担8.5/1000)も賃金に比例して増えます。また、時給1,131円をすでに上回っている従業員との賃金差が縮まるため、その上の層の賃金も見直しが必要になる場合があります。いわゆる賃金の「玉突き」です。10月からの増加額を見積もるときは、この波及分まで含めて計算してください。
無料ツール社会保険料を等級表から計算する時給改定後の報酬月額から、標準報酬月額の等級と会社負担の保険料を試算できます。計算する
社会保険の加入要件と「年収の壁」もあわせて確認する
2026年10月1日からは、短時間労働者の社会保険の加入要件のうち、月8.8万円の賃金要件が撤廃されました。残る要件は、週20時間以上・企業規模51人以上・学生でないことです。時給の改定とあわせて、加入対象となる人の範囲も確認しておきましょう。
時給が上がると、同じ勤務時間でも年収が増え、いわゆる年収の壁に早く届きます。社会保険の扶養(原則として年収130万円未満)は、2026年4月1日から労働契約上の見込み年収で判定されます。そのため、時給の改定にあわせて契約上の勤務時間を見直したいという申し出が出ることがあります。シフトを組む前に、扶養の範囲で働きたい人の希望を確認しておくと安心です。
業務改善助成金(令和8年度)の仕組みと北海道の期限
業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資などを行った中小企業・小規模事業者に、その費用の一部を助成する制度です。令和8年度は2026年9月1日に申請受付が始まりました。
令和8年度の枠組み
| 項目 | 令和8年度の内容 |
|---|---|
| コース | 賃金の引上げ額により、50円・70円・90円の3コース |
| 助成率 | 引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4 |
| 対象 | 中小企業・小規模事業者で、申請時点の事業場内最低賃金が改定後の地域別最低賃金を下回っていること。解雇・賃金引下げなどの不交付事由がないこと |
| 申請期間 | 2026年9月1日から、事業場がある都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日か、2026年11月30日のいずれか早い日まで |
| 賃金の引上げ | 地域別最低賃金の発効日の前日までに行う |
| 事業完了期限 | 交付決定を受けた年度の1月31日 |
| 助成上限額 | 引上げ額や引き上げる労働者の数などで異なる(最新のリーフレットで確認) |
北海道は9月30日で申請期間が終了(計算上)
北海道の発効日は2026年10月1日です。申請期間の終わりは「発効日の前日」と「11月30日」の早いほうなので、道内の事業場の申請期限は計算上2026年9月30日でした。11月30日は、発効日が12月以降になる地域で意味を持つ期限で、北海道には関係しません。
期限までに申請した事業者は、交付決定の内容を確認し、設備投資などの事業を交付決定年度の1月31日までに完了させます。申請期間と事業完了期限は別の日付なので、混同しないよう注意してください。
これから検討する事業者は、令和8年度の北海道分には間に合いません。令和9年度の制度内容は2026年10月時点で公表されていないため、発表後に要件を確認します。令和8年度と同じく、申請と賃金の引上げを発効日の前日までに行う仕組みが続く場合は、答申(令和8年度は8月5日)から発効(10月1日)までの短い期間で準備を終える必要があります。賃上げの計画と設備投資の見積りは、早めにそろえておくのが現実的です。
実際に申請する場合は、厚生労働省のページに案内されている業務改善助成金コールセンターや、最新のリーフレットで日程と要件を確認してください。
中小企業・個人事業主への影響と、10月以降に使える支援策
最低賃金の引上げは、避けようのないコスト増です。ただし、対応の仕方には幅があります。
ひとつは、価格転嫁です。人件費が5%上がるとき、売上が変わらなければ利益はその分削られます。取引先との価格交渉を先送りにすると、引上げ分がそのまま自社の負担として固定されます。
もうひとつは、労働時間あたりの生産性です。時給が上がる以上、同じ作業を同じ時間で続けるかぎり収益は悪化します。設備投資やシステム化で作業時間そのものを減らせれば、時給上昇の影響を吸収できます。
飲食・小売・宿泊・介護など、最低賃金近辺の時給で人を雇う業種ほど影響は大きくなります。札幌市内の店舗型ビジネスなどは、10月からの月次損益がどう変わるかを早めに把握しておきましょう。
10月以降に検討できる税制・補助金
| 制度 | 内容 | 時期・注意点 |
|---|---|---|
| 賃上げ促進税制(中小企業向け) | 給与等の支給額が前年度より1.5%以上増えれば15%、2.5%以上増えれば30%を税額から控除。上限は税額の20%で、控除しきれない額は5年間繰り越せる | 法人は2024年4月1日〜2027年3月31日に開始する事業年度、個人は令和7〜9年分 |
| 少額減価償却資産の特例 | 取得価額40万円未満の資産を、年300万円まで一度に損金(必要経費)にできる | 2026年4月1日以後の取得から40万円未満(それまでは30万円未満)。2029年3月31日まで。青色申告の中小企業者等が対象 |
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 人手不足に対応する省力化の設備投資を支援 | 第8回の受付は2026年10月16日17時まで |
| デジタル化・AI導入補助金2026 | 業務の効率化につながるITツールの導入を支援(通常枠5万〜450万円・補助率1/2) | 第6次の締切は2026年10月30日17時 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓などの取組みを支援(通常枠50万円・補助率2/3。賃上げ特例などで上限の上乗せあり) | 一般型・通常枠第20回の受付は2026年11月5日〜12月15日17時 |
省力化の設備を買う場合は、補助金と少額減価償却資産の特例などの税制をどう組み合わせるかで、手元に残る資金が変わります。補助金は原則として後払いのため、入金までのつなぎ資金も含めて計画します。公募の動きは補助金・助成金・資金調達の最新情報でまとめています。
無料ツール少額減価償却資産の特例で経費にできる額を計算する設備の取得価額を入れると、40万円未満の特例で一度に経費にできるかを確認できます。計算する
賃上げ促進税制や補助金のどれが使えるかは、決算期や投資の内容で変わります。人件費の試算とあわせて、初回無料で確認できます。
無料で相談する10月以降にやるべきこと
- 全従業員の賃金を洗い出し、1,131円を下回る人がいないかを確認する(月給制・日給制の人も時間単価に換算する)
- 10月分の給与で新しい賃金が反映されているかを確認する(給与の締日の途中で発効した場合も、10月1日以後の労働分は1,131円以上で計算する)
- 10月以降の人件費の増加額を、社会保険料の会社負担と賃金の波及分まで含めて試算する
- 増加分を吸収する手段(価格改定、シフトの組み直し、設備投資)を決めて着手する
- 業務改善助成金の交付決定を受けた場合は、交付決定年度の1月31日までに事業を完了させる
- 就業規則・雇用契約書・求人票の賃金額の記載を、改定に合わせて見直す
- 扶養の範囲で働きたいパートの希望を確認し、シフトと採用の計画に反映する
よくある質問
試用期間中や研修中の人にも1,131円が適用されますか?
原則として適用されます。試用期間中の人などについて最低賃金を減額できるのは、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限られます。
最低賃金を下回っていたことに後から気づいた場合は?
下回っていた期間の差額を支払います。最低賃金を下回る部分の定めは無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされるためです。あわせて給与計算の設定を直し、同じ誤りが続かないようにします。
令和9年度も業務改善助成金は使えますか?
2026年10月時点で、令和9年度の制度内容は公表されていません。令和8年度は、対象となる事業場・コース・申請期間が前年度から大きく変わったため、発表後のリーフレットで要件と日程を確認してください。
最低賃金に合わせた賃上げでも、賃上げ促進税制の対象になりますか?
対象になり得ます。中小企業向けの制度は、雇用者全体の給与等の支給額が前年度より一定割合以上増えたかで判定するため、最低賃金への対応による賃上げも含めて計算します。適用を受けるには、申告書への記載などの手続きが必要です。
まとめ
北海道最低賃金は2026年10月1日から1,131円になり、パート・アルバイトを含む道内すべての労働者に適用されています。月給制の人も含めて時間単価を点検し、社会保険料や賃金の波及分まで含めた人件費の増加を見積もったうえで、価格改定・省力化・税制や補助金の活用を組み合わせて吸収しましょう。令和8年度の業務改善助成金は北海道では計算上9月30日で申請期間が終わっているため、次の年度に向けて賃上げと設備投資の計画を早めに準備しておくことが大切です。
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年9月 公開/2026年10月 全面改訂(最低賃金の発効を反映し、業務改善助成金の申請期間・事業完了期限の記載を修正)
