節税一覧【令和8年度税制改正対応】法人・個人・相続まで140項目

「節税」と「租税回避」を分けるものは、条文上の根拠と経済的合理性、そして事実関係の裏づけです。このページは、法人税・所得税・消費税・相続税・贈与税・社会保険料までを対象に、税法上の根拠条文が明確な節税策だけを140項目に整理した一覧です。

各項目は「根拠条文要件効果注意点否認リスク具体例」の6点セットで記載しています。金額を伴う具体例には前提となる税率・条件を明記しました。裏を返せば、要件を1つでも外せば全額否認されるということでもあります。節税は「やること」より「要件を証拠で固めること」が本体です。

数値は令和8年度税制改正(令和7年12月26日閣議決定・令和8年3月成立)を反映した令和8年(2026年)8月時点のものです。金額を伴う判断の前に、必ず末尾の出典と最新の国税庁公表資料をご確認ください。

この一覧の使い方 ── 国税庁も納得する節税の3原則

税務調査で否認される「節税」には共通点があります。①条文の要件を満たしていない ②取引に事業目的がない ③書類が後から作られている——この3つです。逆に言えば、次の3原則を守った節税策は、調査官の前で堂々と説明できます。

PRINCIPLE 01条文の要件を1つも外さない

節税策の多くは租税特別措置法の期限つき優遇です。対象資産・金額・従業員数・届出期限のどれか1つでも外れれば、効果はゼロになります。「だいたい該当」は該当しません。

PRINCIPLE 02事業目的が先、節税は結果

税負担の減少だけを目的とした行為は、同族会社の行為計算否認(法法132)や包括的否認規定の対象になり得ます。まず事業上の必要性があり、その結果として税負担が下がる——この順序を崩さないことです。

PRINCIPLE 03証拠は「その時点」で残す

議事録・契約書・通知書・稟議書は、日付が実態と合っていて初めて証拠になります。調査で最も痛いのは、金額の誤りではなく「後から作った書類」が見つかることです。

本ページの表記ルール/「根拠」=法令・通達の条番号。法法=法人税法、法令=法人税法施行令、法基通=法人税基本通達、所法=所得税法、所基通=所得税基本通達、措法=租税特別措置法、相法=相続税法、消法=消費税法。「否認」=実務上その項目が税務調査で問題になりやすい典型パターン。「具体例」=制度を使ったときの金額イメージで、法人税等の実効税率は30%、個人の所得税・住民税は各例に記載した限界税率、社会保険料は労使合計で約30%として概算しています。実際の税額は所得水準・自治体・適用年分により変わります。

【早見表】立場別・あなたに効く節税策インデックス

まず自分の立場から入り、該当セクションへ飛んでください。金額シミュレーションが必要な項目には、各カードから税務計算ツール集(全168式・無料)の該当ツールへ直接リンクしています。

立場効果が大きい節税策(優先順)該当セクション
中小企業オーナー
(法人)
役員報酬と社会保険料の最適点/役員退職金/少額減価償却資産40万円特例/中小企業経営強化税制(即時償却)/賃上げ促進税制/経営セーフティ共済/決算賞与/短期前払費用法人①法人⑧
個人事業主
フリーランス
青色申告特別控除65万円/青色事業専従者給与/小規模企業共済/iDeCo/経営セーフティ共済/少額減価償却資産/法人成りの判定個人①個人②
会社員・役員個人iDeCo(令和8年12月に限度額拡大)/ふるさと納税/医療費控除/住宅ローン控除/特定支出控除/退職金の受取方法個人③個人②
不動産オーナー青色申告(事業的規模)/減価償却の最適化/中古物件の簡便法耐用年数/修繕費と資本的支出の区分/法人化/小規模宅地等の特例個人④相続・贈与
相続対策を考える方小規模宅地等の特例/生命保険金の非課税枠/暦年贈与と精算課税の使い分け/配偶者の税額軽減と二次相続/自社株評価の引下げ相続・贈与事業承継
消費税で悩む方簡易課税と本則の有利判定/2割特例(令和8年9月末で終了)/個人の3割特例(令和9・10年分)/課税事業者選択と3年縛り消費税
令和8年に絶対に外せない期限が3つあります。①インボイスの2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間が最後(個人は令和8年分が最終)。②教育資金の一括贈与の非課税は令和8年3月31日で終了(延長されませんでした)。③防衛特別法人税が令和8年4月1日以後開始事業年度から課税開始(税額0円でも申告義務あり)。詳細は令和8年度税制改正で変わった点へ。

法人①|役員報酬・役員退職金の節税

役員給与は、法人の利益調整に使えないよう法人税法34条で「損金にできる3つの型」だけが限定列挙されています。この型を外れた瞬間、その支給額は全額が損金不算入です。中小企業で最も金額インパクトが大きく、かつ最も否認が多い領域でもあります。

001

定期同額給与 ── 役員報酬の基本形

法人
根拠
法人税法34条1項1号、法人税法施行令69条1項
要件
①支給時期が1か月以下の一定期間ごと、②各支給時期の支給額(または手取額)が同額。改定できるのは(a)事業年度開始の日から3か月を経過する日までの通常改定、(b)役職変更等による臨時改定事由、(c)経営状況の著しい悪化による業績悪化改定事由の3つのみ。
効果
支給額の全額が損金算入。法人所得を圧縮しつつ、個人側では給与所得控除(最低保障74万円・上限195万円)を使えるため、法人・個人の合計税負担を最適化できる。
注意
3月経過日を1日でも過ぎた増額改定は、増額差額部分のみが全期間にわたり損金不算入。減額改定の場合は減額後の金額を超える部分が不算入となる。定時株主総会議事録に改定日と新報酬額を必ず記載する。
否認
期中に資金繰りを理由に自由に増減させるケース。「業績悪化改定事由」は単に業績が悪いだけでは足りず、第三者である利害関係者との関係上、減額せざるを得ない客観的事情(法基通9-2-13)が必要。
具体例
税引前利益(役員報酬控除前)2,000万円の会社。役員報酬を月80万円(年960万円)から月100万円(年1,200万円)へ増額すると、法人は損金が240万円増えて法人税等が約72万円減(実効税率30%で計算)。一方で個人側は課税所得が約240万円増えて所得税・住民税が約72万円増(限界税率30%)、さらに社会保険料が労使合計で年約72万円増(標準報酬月額の上限未満の場合、料率約30%)。この前提では合計負担はむしろ約72万円増える。「上げれば得」ではないことがわかる。

▶ 役員報酬の最適化シミュレーション▶ 社会保険料の詳細計算

002

事前確定届出給与 ── 役員に賞与を出す唯一の方法

法人
根拠
法人税法34条1項2号、法人税法施行令69条4項
要件
所轄税務署へ①株主総会等の決議日から1か月を経過する日②会計期間開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日までに届出。新設法人は設立日以後2か月以内。届出どおりの支給日・支給額で1円の狂いもなく支給すること。
効果
役員賞与を損金算入できる。社会保険料の賞与分は健康保険が年度累計573万円、厚生年金が1か月あたり150万円で頭打ちになるため、報酬を賞与に寄せることで社会保険料負担を圧縮できる設計余地がある。
注意
複数回の支給を届け出た場合、1回でも届出と異なればその事業年度の同給与の全額が損金不算入となる取扱いが原則。支給しないと決めた場合も、届出額との差異として問題になる。
否認
「業績が悪かったので賞与を出さなかった」「1万円だけ減らして支給した」が典型。届出後に支給しないなら、支給日前に事前確定届出給与に関する定めを廃止する決議と届出(変更届)が必要。
具体例
年間の役員報酬総額960万円を、①月80万円×12か月 と ②月50万円×12か月+事前確定届出給与360万円 で比較。②では厚生年金の標準賞与額の上限が1か月あたり150万円のため、賞与360万円のうち210万円は厚生年金保険料の対象外。厚生年金料率18.3%として労使合計で約38万円の圧縮。ただし健康保険は年度累計573万円まで対象のため、健保料は圧縮されない。

▶ 賞与の源泉徴収の計算▶ 賞与の社会保険料

003

業績連動給与

法人
根拠
法人税法34条1項3号、法人税法施行令69条10項以下
要件
業務執行役員に対し、利益・株価・売上高等の客観的な指標を基礎として算定。算定方法を報酬委員会の決定等の適正な手続で決め、有価証券報告書等で開示すること。同族会社は原則として適用不可(非同族法人の完全子法人等を除く)。
効果
成果連動型の役員報酬を損金算入できる。
注意
オーナー系の中小企業(同族会社)ではまず使えない制度。中小企業は001・002の2本立てで設計するのが現実的。
否認
同族会社が「業績連動」と称して期末に利益調整の賞与を出すケース。全額損金不算入。
具体例
オーナーが株式の100%を保有する会社は同族会社に該当するため、この制度は使えない。中小企業の役員報酬は001(定期同額給与)と002(事前確定届出給与)の2本立てで設計するのが現実解。
004

役員報酬と社会保険料の最適バランス(法人・個人トータル最小化)

法人社保
根拠
法人税法34条、所得税法28条、健康保険法40条、厚生年金保険法20条
要件
定期同額給与の要件を満たしたうえで、事業年度開始3か月以内に金額を決定すること。
効果
役員報酬を上げると法人税は減るが、所得税・住民税・社会保険料(労使合計で報酬の約30%)が増える。両者の合計が最小になる点が存在し、法人所得と役員報酬の配分で年間数十万〜数百万円が動く。
注意
厚生年金の標準報酬月額の上限は現在65万円だが、令和9年9月に68万円、令和10年9月に71万円、令和11年9月に75万円へ段階的に引き上げられる。高額報酬の役員は今後の保険料増を織り込んだ設計が必要。
否認
報酬を極端に下げて法人に利益を残すと、特定同族会社の留保金課税(措法67条/資本金1億円超が対象)や、役員貸付金の認定利息の問題が生じることがある。
具体例
月額報酬65万円の役員は、厚生年金の標準報酬月額が現行の上限65万円に張り付いている。令和9年9月に上限が68万円へ上がると、増える3万円分について厚生年金18.3%=月5,490円(労使合計)、年間約6.6万円の負担増。令和11年9月に75万円まで上がると、65万円時点と比べて年間約22万円の負担増になる。

▶ 役員報酬の最適化シミュレーション▶ 法人税等の実効負担の計算

005

役員退職金 ── 中小企業で最大級の節税効果

法人個人
根拠
法人税法34条2項、法人税法施行令70条2号、所得税法30条・31条
要件
株主総会決議により支給額を確定させ、原則としてその決議日の属する事業年度に損金算入(実際に支払った事業年度に損金経理した場合も認められる)。適正額の実務判断は功績倍率法=最終月額報酬×勤続年数×功績倍率(社長で2.0〜3.0倍が一つの目安)。
効果
法人側は適正額を全額損金算入。個人側は退職所得控除(20年以下は年40万円、20年超は800万円+70万円×超過年数)を控除した後、さらに2分の1課税・分離課税となり、給与で受け取るより税負担が圧倒的に軽い。
注意
功績倍率法は法定基準ではなく裁判実務上の算定手法。「不相当に高額な部分」は損金不算入(法令70条2号)。同業類似法人の支給状況との比較で判断されるため、根拠資料を残す。
否認
①退職の事実がない(実質的に経営を続けている)②功績倍率が過大③退職金支給のために直前に役員報酬を引き上げた——この3つが代表的な否認パターン。
具体例
最終月額報酬100万円・勤続30年・功績倍率3.0の社長。役員退職金=100万円×30年×3.0=9,000万円。法人は全額損金で法人税等が約2,700万円減(実効30%)。個人側は退職所得控除が800万円+70万円×10年=1,500万円、課税退職所得=(9,000万円-1,500万円)×1/2=3,750万円、所得税・住民税・復興特別所得税は合計約1,620万円(実効約18%)。同じ9,000万円を役員報酬で受け取ると個人負担は4,000万円規模になるため、差は2,000万円以上

▶ 役員退職金(功績倍率法)の計算▶ 退職金の手取り完全計算▶ 退職金でもらうvs給与でもらう

006

分掌変更による役員退職金(代表退任・非常勤化)

法人
根拠
法人税基本通達9-2-32
要件
実質的に退職したと同様の事情がある場合に限る。例示は①常勤役員が非常勤役員になったこと、②取締役が監査役になったこと、③分掌変更後の給与がおおむね50%以上減少したこと。いずれの場合も経営上の主要な地位を占めていないことが前提。
効果
完全に引退しなくても、退職給与として損金算入し、個人側で退職所得課税を受けられる。事業承継の過渡期に有効。
注意
通達本文は「未払金等に計上した場合の当該未払金等の額を除く」としており、原則として実際に支払ったものが対象。分割支給する場合は資金繰りと損金算入時期の整理が必要。
否認
代表を退いたが実印・銀行印を握り、重要な意思決定を続けている場合は「経営上の主要な地位」ありとして全額否認された裁決・裁判例が複数存在する。報酬を50%減らしただけでは足りません。
具体例
代表取締役を退任し非常勤の取締役に。報酬を月100万円→月30万円(70%減)に引き下げ、実印・銀行印を後継者に引き渡し、取締役会での議決にも関与しない体制に変更。この状態なら退職給与として損金算入できる余地がある。逆に、報酬だけ50%減らして経営会議を主宰し続けているケースは否認される。
007

使用人兼務役員への賞与

法人
根拠
法人税法34条6項、法人税法施行令71条
要件
部長・工場長等の使用人としての職制上の地位を持ち、常時使用人として職務に従事していること。代表取締役・副社長・専務・常務等、監査役、同族会社の特定株主(持株割合の判定に該当する役員)は使用人兼務役員になれない
効果
使用人分の賞与は、他の使用人と同時期の支給であれば事前確定届出なしに損金算入できる。
注意
使用人分の給与・賞与が「他の使用人に対する支給状況に照らして相当」である必要がある。役員分と使用人分の区分を給与規程で明確にしておく。
否認
同族会社のオーナー一族が「取締役営業部長」として賞与を受けるケース。持株要件(法令71条1項5号)に触れて使用人兼務役員に該当せず、全額損金不算入となる例が多い。
具体例
「取締役営業部長」に賞与300万円を支給。使用人兼務役員に該当すれば損金算入できるが、その人物がオーナー一族で持株割合の要件(法令71条1項5号)に該当すると使用人兼務役員になれず、300万円が全額損金不算入。法人税等で約90万円の追徴になる。
008

役員社宅(小規模住宅)── 家賃の8〜9割を会社負担にする

法人個人
根拠
所得税基本通達36-40・36-41・36-45、36-45の2
要件
小規模住宅=法定耐用年数30年以下の建物は床面積132㎡以下、30年超の建物は99㎡以下。役員から次の合計額(賃貸料相当額)以上を徴収すること。
①建物の固定資産税課税標準額×0.2%
②12円×建物の総床面積(㎡)÷3.3
③敷地の固定資産税課税標準額×0.22%
効果
会社が支払う家賃は全額損金。役員から徴収する賃貸料相当額は実際の家賃の1〜2割程度にとどまることが多く、差額分だけ実質的な可処分所得が増える。給与と違い所得税・社会保険料もかからない。
注意
固定資産税の課税標準額は、貸主または市区町村(固定資産課税台帳の閲覧)で確認する。賃貸借契約は必ず法人名義で締結し、法人が家主に直接支払うこと。
否認
①個人名義の契約のまま会社が家賃を負担している②徴収額がゼロまたは名目的③豪華社宅(床面積240㎡超等で内外装・設備が社会通念上一般的でないもの)は通常の賃貸料相当額での計算が認められない。
具体例
家賃20万円のマンション(木造以外・床面積100㎡)を社宅に。建物の固定資産税課税標準額600万円、敷地1,200万円とすると、賃貸料相当額=600万円×0.2%+12円×100㎡÷3.3+1,200万円×0.22%=1.2万円+約364円+2.64万円=月約4万円。役員から4万円を徴収すれば、会社負担16万円は非課税。同額を給与で払うと年192万円が課税対象になるので、所得税・住民税・社会保険料で年60万円前後の差

▶ 役員社宅(小規模)の賃貸料相当額を計算▶ 現物給与の判定

009

役員社宅(小規模以外・自社所有/借上げ)

法人
根拠
所得税基本通達36-40
要件
自社所有の場合の賃貸料相当額={建物の固定資産税課税標準額×12%(法定耐用年数30年超の建物は10%)+敷地の固定資産税課税標準額×6%}÷12。借上社宅の場合は、この算式による額と会社が家主に支払う家賃の50%のいずれか多い額
効果
小規模住宅ほど有利ではないが、家賃の50%相当を徴収すれば給与課税されない。
注意
床面積が小規模住宅の基準を超えるかどうかで算式が全く変わる。契約前に面積を確認すること。
否認
徴収額の計算根拠資料(固定資産税評価証明・課税明細)を保存していないと、調査時に再計算され差額が給与認定される。
具体例
家賃30万円・床面積150㎡(法定耐用年数47年のRC造)のため小規模住宅(99㎡以下)に該当しない。借上社宅なので、算式による額と会社が支払う家賃の50%=15万円のいずれか多い額を徴収する必要がある。008のような1〜2割負担にはならない。

▶ 役員社宅(小規模以外・通常)の計算

010

出張旅費規程による日当

法人個人
根拠
所得税法9条1項4号、所得税基本通達9-3、消費税法基本通達11-6-4
要件
①旅費規程を整備し役員・使用人を通じて適正なバランスであること、②同業種・同規模の他社と比較して相当と認められる金額であること、③出張報告書等で出張の事実を記録すること。
効果
法人は日当を全額損金算入。受け取る役員・従業員側は所得税が非課税で、社会保険料の対象にもならない。さらに国内出張の日当は課税仕入れとなり消費税の仕入税額控除も取れる(海外出張分は不課税)。
注意
金額の「相当性」に法定基準はない。役職別に段階を設け、日帰りと宿泊で区分するなど、規程として合理的な体系にすること。実費精算と日当の二重取りは不可。
否認
①規程がない、②社長だけが極端に高額、③出張の事実を裏づける記録がない、④近距離の得意先訪問まで出張扱いにしている——いずれも給与認定(源泉徴収漏れ)のリスク。
具体例
旅費規程で社長の宿泊出張日当を1日8,000円、従業員を5,000円と定め、社長が年30日出張。日当24万円は法人で全額損金・個人で全額非課税・社会保険料の対象外。さらに国内出張分は課税仕入れとなり、消費税で約2.2万円の仕入税額控除(24万円×10/110)。同額を役員報酬で払うと個人側で約7万円の税負担が生じる。
011

通勤手当の非課税枠の活用

法人個人
根拠
所得税法9条1項5号、所得税法施行令20条の2
要件
電車・バス通勤は最も経済的かつ合理的な経路の運賃等で月15万円まで非課税。マイカー・自転車通勤は片道の通勤距離に応じた限度額(2km未満は全額課税、2km以上10km未満4,200円、10km以上15km未満7,300円、15km以上25km未満13,500円、25km以上35km未満19,700円、35km以上45km未満25,900円、45km以上55km未満32,300円、55km以上65km未満38,700円、65km以上75km未満45,700円、75km以上85km未満52,700円、85km以上95km未満59,600円、95km以上66,400円)。令和8年度税制改正により片道65km以上の区分が新設され、一定の要件を満たす駐車場等を利用する場合は駐車場料金相当額(上限5,000円)を加算できます。
効果
法人は全額損金、受給者は非課税。同額を基本給で払う場合と比べ所得税・住民税が軽くなる。
注意
通勤手当は社会保険料の算定基礎には含まれます(所得税の非課税とは扱いが異なる)。ここを混同すると標準報酬月額の届出誤りになる。
否認
実際には自宅から通勤していない役員に通勤手当を支給しているケース、テレワークで出社していないのに定期代を支給し続けているケース。
具体例
片道70kmをマイカー通勤する従業員。令和8年度改正前は片道55km以上で月38,700円が上限だったが、改正後は65km以上75km未満の区分が新設され月45,700円。さらに駅前駐車場を月5,000円で借りていれば合計50,700円まで非課税。従来より月12,000円分が非課税になり、年間の課税所得が14.4万円圧縮される。

▶ 通勤手当の非課税限度額を判定

012

役員貸付金・役員借入金の整理(隠れた税務コストの解消)

法人
根拠
法人税法22条2項、所得税基本通達36-49、相続税法22条
要件
役員貸付金には適正利率(会社が銀行等から借り入れて貸し付けた場合はその調達利率、それ以外は国税庁が定める特例基準割合による利率)による利息を計上する。役員借入金は金銭消費貸借契約書を整備する。
効果
役員貸付金を放置すると認定利息が毎期益金となり法人税が増えるうえ、金融機関の評価も下がる。整理することで無用な課税を止められる。役員借入金は返済・DES・債務免除等で計画的に圧縮する。
注意
役員借入金は相続時に額面で相続財産(貸付金債権)として評価される。回収見込みがなくても原則として減額されないため、生前の整理が相続対策として効く。
否認
債務免除益を計上せずに役員借入金を消すことはできない。免除する場合は法人に債務免除益が立ち、繰越欠損金との相殺可否を必ず先に検討する。
具体例
役員貸付金3,000万円を放置している会社。特例基準割合による利率を年1.0%とすると、毎期30万円の認定利息が益金となり法人税等が年約9万円増える。さらに金融機関の審査では実質的な資産控除項目として扱われる。逆に役員借入金3,000万円は、相続時に額面3,000万円の貸付金債権として相続財産に加算される。

法人②|給与・賞与・福利厚生の節税

福利厚生費は「全従業員を対象とし、社会通念上相当な金額であること」が共通の要件です。この2つを外すと、その瞬間に特定の個人への給与となり、源泉所得税の追徴に直結します。

013

決算賞与(未払賞与)── 当期の損金にする3要件

法人
根拠
法人税法施行令72条の3第2号、法人税基本通達9-2-43・9-2-44
要件
3要件すべてを満たすこと。①その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること。②通知した金額を、通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に全員に支払っていること。③その支給額につき通知をした日の属する事業年度において損金経理していること。
効果
期末に未払計上したまま当期の損金に算入できる。決算月に利益が出た場合の即効性ある対策。
注意
通知は各人別・金額入りで行い、書面(受領サイン付き)または記録の残るメールで実施する。「賞与を出します」という口頭の告知では要件を満たさない。
否認
「支給日に在籍する使用人のみに支給する」旨の定めがある場合、通知したことにならない(法基通9-2-43)。就業規則・賞与規程に在籍要件がある会社は、決算賞与についてその適用がないことを明示する必要がある。役員に対する決算賞与は事前確定届出給与でない限り損金不算入。
具体例
3月決算の会社が3月25日に、社員20名へ各人別に賞与額を書面通知(合計600万円)し、4月20日に全員へ支払い、3月期に未払費用として損金経理。3要件を満たすため600万円が当期の損金となり法人税等が約180万円減る。ただし就業規則に「支給日在籍者のみ」の定めが残っていると、通知したことにならず全額が翌期の損金になる。
014

中小企業向け賃上げ促進税制 ── 最大35%の税額控除

法人改正
根拠
租税特別措置法42条の12の5第2項(個人は措法10条の5の4)
要件
青色申告の中小企業者等(資本金1億円以下等)または常時使用従業員1,000人以下の個人事業主。雇用者給与等支給額が前年度比+1.5%以上で控除率15%、+2.5%以上で30%。さらにくるみん認定以上またはえるぼし認定(2段階目)以上で+5%の上乗せ(最大35%)。
効果
給与等支給増加額に控除率を乗じた金額を法人税額から直接控除。控除上限は調整前法人税額の20%。控除しきれなかった額は5年間繰り越せる(中小企業のみ。明細書の添付が必要で、繰越控除する年度も給与増加が条件)。
注意
令和8年度税制改正で、教育訓練費に係る上乗せ措置(従来+10%)は廃止されました。全法人向け(大企業向け)措置は令和8年3月31日をもって廃止、中堅企業向け措置も令和9年3月31日の期限到来をもって廃止されます。中小企業向け措置の適用期限は令和9年3月31日までに開始する事業年度です。
否認
雇用者給与等支給額の集計に、役員および役員の特殊関係者(親族等)への給与を含めてしまう誤り。これらは除外して計算する。
具体例
前年度の雇用者給与等支給額4,000万円、当年度4,120万円(+3.0%)の会社。増加額120万円×控除率30%=36万円の税額控除。くるみん認定を受けていれば控除率35%で42万円。法人税額が150万円なら控除上限は20%=30万円なので、まず30万円を控除し、残り6〜12万円は5年間繰り越せる

▶ 賃上げ促進税制の税額控除を計算

015

従業員社宅(借上げ)

法人
根拠
所得税基本通達36-45・36-47
要件
使用人から賃貸料相当額の50%以上を徴収していれば給与課税なし。賃貸料相当額は役員小規模住宅と同じ3つの算式(008参照)の合計額。
効果
家賃補助(住宅手当)として現金支給すると全額が給与課税・社会保険料の対象になるのに対し、社宅なら会社負担分が非課税。同じ人件費で従業員の手取りが増える
注意
賃貸借契約は法人名義。家賃は法人口座から支払い、徴収分は給与から控除する。
否認
住宅手当を名目だけ「社宅使用料の相殺」としているケース。実質判断で給与課税される。
具体例
家賃12万円の賃貸マンションを従業員社宅に。賃貸料相当額が月2.4万円と算定されたなら、その50%=1.2万円を給与から徴収すれば給与課税なし。会社負担10.8万円は福利厚生費。同額を住宅手当として現金支給すると全額が給与課税+社会保険料の対象になり、本人の手取りは年30万円前後少なくなる。
016

食事の支給(昼食・残業食事)

法人
根拠
所得税基本通達36-38・36-38の2・36-24
要件
昼食等:①役員・使用人が食事価額の半分以上を負担し、かつ②会社負担額が月7,500円(消費税抜き)以下であること(令和8年度税制改正で3,500円から引上げ)。残業・宿日直に伴う食事は、現物支給である限り全額非課税(金額基準なし)。
効果
福利厚生費として損金算入、受給者は非課税。
注意
2要件のどちらか一方でも外れると、会社負担額の全額が給与となる(超過部分だけではない)。現金での食事手当は原則として全額給与ですが、深夜勤務者に夜食を現物支給できないために支給する1食650円(税抜)以下の金銭は非課税です(令和8年度改正で300円から引上げ)。
否認
「昼食代補助」として現金を支給しているケースは全額給与課税(上記の深夜勤務者の夜食代を除く)。負担割合と月額の2要件は毎月判定します。
具体例
社員食堂で1食500円(材料費ベース)の昼食を月20回提供、本人負担250円。会社負担は月5,000円で、半額以上を本人が負担し、かつ会社負担が月7,500円以下のため非課税(令和8年4月から3,500円→7,500円に引上げ)。改正前の基準3,500円では超過していたため、従来は課税だったケースが非課税になる
017

慶弔見舞金規程(結婚・出産・傷病・弔慰・災害)

法人
根拠
所得税基本通達28-5、法人税基本通達9-4-1以下(福利厚生費の一般原則)
要件
①慶弔見舞金規程を整備し全社員に適用、②社会通念上相当と認められる金額、③支給事由を証する書類(婚姻届受理証明・会葬礼状等)を保存。
効果
法人は福利厚生費として損金算入、受給者は非課税・社会保険料の対象外。
注意
金額に法定基準はない。役職別に段階を設けるのは可だが、社長だけが突出する設計は避ける。取引先への慶弔金は交際費に該当。
否認
規程がなく社長の家族にだけ高額支給しているケース。役員賞与(損金不算入)+給与課税の二重ダメージになる。
具体例
慶弔見舞金規程で結婚祝金5万円・死亡弔慰金10万円・傷病見舞金3万円と定め、年間の支給総額が50万円。法人は50万円を福利厚生費として損金算入、受給者は非課税で社会保険料の対象外。同額を賞与で払えば、受給者側で約15万円の税・社会保険料が発生する。
018

健康診断・人間ドック費用

法人
根拠
所得税基本通達36-29(課税しない経済的利益)、労働安全衛生法66条
要件
①一定年齢以上の全員など客観的基準で対象者を定め希望者が受診できること、②検診内容が著しく高額でなく通常必要と認められる範囲、③会社が医療機関へ直接支払うこと。
効果
福利厚生費として損金算入、受診者は非課税。役員も対象にできる。
注意
従業員が立て替えて会社が現金精算する形は「現金支給」とみなされるリスクがあるため、会社名義での請求・支払いを徹底する。
否認
社長・役員のみを対象とした高額な人間ドック・脳ドック。給与認定される。
具体例
40歳以上の全社員30名を対象に人間ドック(1人5万円)を実施し、会社から医療機関へ直接支払い。150万円が全額損金・受診者は非課税。一方、社長だけ30万円の高度検診を受けたケースは給与認定され、源泉所得税と社会保険料の追徴対象になる。
019

社員旅行(レクリエーション旅行)

法人
根拠
所得税基本通達36-30、昭63直法6-9外
要件
①旅行期間が4泊5日以内(海外旅行は現地滞在日数で判定)、②参加人数が全社員の50%以上(工場・支店単位も可)、③会社負担額が社会通念上一般的な範囲であること。
効果
福利厚生費として損金算入、参加者は非課税。
注意
会社負担額に明文の上限金額はないが、国税庁の質疑応答では1人あたり十数万円程度の事例が「妥当」とされている。役員だけの旅行、取引先同伴の旅行は対象外。
否認
不参加者に金銭を支給すると、参加者・不参加者の全員についてその金額が給与課税される。
具体例
社員40名のうち25名(62.5%=50%以上)が参加する2泊3日の国内旅行。会社負担が1人10万円なら、参加者250万円分は福利厚生費として損金・参加者は非課税。ただし不参加の15名に「代わりに5万円」を支給すると、参加者・不参加者の全員について金銭相当額が給与課税される。
020

資格取得費用・研修費用の会社負担

法人
根拠
所得税基本通達36-29の2
要件
①職務に直接必要な技術・知識の習得、免許・資格の取得のための費用であること、②その費用として適正な金額であること。
効果
研修費として損金算入、受講者は非課税。
注意
「職務に直接必要」の判断がすべて。業務との関連を稟議書・研修規程で明示しておく。
否認
業務と無関係な趣味的講座、社長の子(社員でない)のための費用は給与・役員賞与認定。
具体例
経理担当者の簿記2級講座(8万円)と、営業担当者の宅地建物取引士講座(12万円)を会社負担。職務に直接必要であれば研修費として全額損金・本人は非課税。一方、社長の子(社員でない)の大学費用を負担すれば、社長への役員賞与として全額損金不算入+給与課税
021

永年勤続表彰・創業記念品

法人
根拠
所得税基本通達36-21(永年勤続者の記念品等)・36-22(創業記念品等)
要件
永年勤続:①勤続年数がおおむね10年以上、②同一人につきおおむね5年以上の間隔、③利益が勤続期間等に照らして相当。創業記念品:①処分見込価額が1万円以下、②おおむね5年以上の間隔。
効果
福利厚生費として損金算入、受領者は非課税。旅行券・カタログギフトも一定条件で可。
注意
現金・商品券での支給は全額給与課税。旅行券を支給する場合は、支給後おおむね1年以内に旅行を実施し、旅行の事実(旅程・領収書)を報告させる運用が必要。
否認
「永年勤続金」として現金を支給しているケース。
具体例
勤続20年の社員に10万円相当の旅行券を贈呈。勤続おおむね10年以上・前回から5年以上の間隔という要件を満たすため非課税。ただし同じ10万円を現金や商品券で渡すと全額が給与課税となり、所得税・住民税・社会保険料で約4万円が引かれる。
022

企業型DC・iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)・選択制DC

法人社保
根拠
確定拠出年金法、法人税法22条3項
要件
iDeCo+は従業員300人以下・企業年金未実施・労使合意が要件で、加入者掛金と事業主掛金の合計が月5,000〜23,000円。企業型DCは規約の承認が必要。
効果
事業主掛金は全額損金算入かつ給与ではないため、法人税・所得税・社会保険料のいずれも増えない。従業員の資産形成支援と人件費最適化を同時に実現できる。
注意
選択制DC(給与の一部を掛金に振り替える方式)は、将来の年金額や傷病手当金・失業給付の算定基礎も下がる。従業員への説明を尽くさないと後日トラブルになる。
否認
掛金の拠出根拠となる規約・労使合意がないまま損金算入しているケース。
具体例
従業員20名の会社がiDeCo+を導入し、事業主掛金を1人月5,000円拠出。年間120万円が全額損金かつ給与ではないため、法人税等が約36万円減り、社会保険料も増えない。同額を月5,000円のベースアップで支給すると、会社は社会保険料の会社負担分だけで年約18万円の追加負担になる。

▶ iDeCoの拠出限度額を判定

法人③|決算対策と費用の期ずれ

決算対策の本質は「いつかは払う費用を、今期に持ってくる」ことです。永久的に税金が消える施策はほとんどありません。課税の繰延べであることを理解したうえで、資金繰りと合わせて判断してください。

023

短期前払費用の特例 ── 1年分をまとめて損金に

法人個人
根拠
法人税基本通達2-2-14(個人は所得税基本通達37-30の2)
要件
①一定の契約に基づき継続的に等質・等量の役務提供を受けるための費用、②支払日から1年以内に役務提供を受けるもの、③継続して支払時の損金としていること、④実際に支払っていること。
効果
家賃・保険料・リース料・サブスク・顧問料等の1年分を、支払った事業年度の損金にできる。導入初年度は約2年分が損金となる。
注意
収益に対応する原価性のある費用は対象外(例:転売用不動産の借入金利子、外注費)。また「毎年3月に翌1年分を払う」など、支払時期の継続性が必要。1回だけの適用は認められない。
否認
①期末に慌てて数年分を前払い(1年超は不可)、②翌期に元の月次払いへ戻す(継続性なし)、③金額が期によって大きく変動する役務。
具体例
3月決算の会社が、毎年3月に翌1年分の家賃(月20万円×12=240万円)を前払いする方式へ変更。導入した期は当期分240万円+翌期分240万円で480万円が損金となり、法人税等が約72万円減る(実効30%)。ただし翌期以降は毎期240万円で、効果は初年度限り。翌期に月払いへ戻すと継続性を欠き否認される。
024

消耗品・貯蔵品の期末処理(毎期おおむね一定量なら購入時損金)

法人
根拠
法人税基本通達2-2-15
要件
事務用消耗品・作業用消耗品・包装材料・広告宣伝用印刷物等で、①各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、②経常的に消費するもの、③継続して取得時の損金としていること。
効果
期末の未使用分を貯蔵品として資産計上せず、購入時に損金算入できる。
注意
「おおむね一定数量」が前提。期末に大量まとめ買いすると要件を外れる
否認
決算直前に通常の数年分の消耗品を購入するケース。棚卸資産として資産計上を求められる。
具体例
事務用消耗品を毎期おおむね200万円取得し経常的に消費している会社は、期末の未使用分を貯蔵品に振り替えず取得時に損金にできる。一方、決算月に通常の3年分にあたる600万円をまとめ買いすると「おおむね一定数量」を外れ、未使用分は棚卸資産として資産計上を求められる。
025

未払費用・未払金の計上(債務確定基準の徹底)

法人
根拠
法人税法22条3項2号、法人税基本通達2-2-12(債務確定の判定)
要件
期末までに①債務が成立し、②その債務に基づく具体的な給付をすべき原因となる事実が発生し、③金額を合理的に算定できること。
効果
末締め翌月払いの社会保険料(法定福利費)、決算月の水道光熱費・通信費・外注費、確定した固定資産税・事業所税・労働保険料などを当期の損金にできる。取りこぼしが最も多い領域。
注意
賦課決定のあった固定資産税・自動車税は納期未到来でも全額を損金算入可(法基通9-5-1)。事業税は原則として申告書提出日の属する事業年度の損金。
否認
見積計上(引当的な処理)は債務確定基準を満たさず損金不算入。翌期に発注する予定の外注費を未払計上する等。
具体例
3月決算の会社の未払計上もれの典型。①3月分の社会保険料(4月末納付)120万円、②3月分の水道光熱費・通信費30万円、③賦課決定済みの固定資産税(納期未到来分を含む全額)80万円、④労働保険料の概算保険料のうち会社負担分50万円。合計280万円を当期の損金にでき、法人税等が約84万円減る
026

棚卸資産の評価損

法人
根拠
法人税法33条2項、法人税法施行令68条1項1号、法人税基本通達9-1-4〜9-1-5
要件
災害により著しく損傷、②著しく陳腐化(季節商品の売れ残りで通常の価額では販売できないことが既往の実績で明らか等)、③破損・型崩れ・品質変化等により通常の方法で販売できないこと。損金経理が必要。
効果
時価まで評価減した差額を損金算入できる。
注意
単なる物価変動・過剰生産・建値の変更による低価は評価損の計上事由に当たらない(法基通9-1-6)。ここが最大の落とし穴。
否認
「売れないから半額にした」だけでは不可。廃棄したなら廃棄証明・廃棄写真・産廃マニフェストを揃えて廃棄損として処理する方が確実。
具体例
型落ちで通常価額では販売できないことが実績から明らかな在庫(帳簿1,000万円)を時価300万円まで評価減すれば、700万円が損金。ただし「売れないから半額にした」だけでは評価損の計上事由に当たらない。実際に廃棄したなら、産廃マニフェストと廃棄前後の写真を残して廃棄損1,000万円とするほうが確実。
027

固定資産の除却損・有姿除却

法人
根拠
法人税基本通達7-7-2(有姿除却)、7-7-2の2(ソフトウエアの除却)
要件
有姿除却=現物を撤去していなくても、①その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産、②特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、その製品の生産中止により将来使用される可能性がほとんどないもの。帳簿価額から処分見込価額を控除した額を損金経理する。
効果
遊休設備・旧システムの帳簿価額を当期に一括で損金化できる。
注意
「稼働していない」だけでは足りず、再稼働の可能性がないことの立証が必要。使用廃止の稟議書、配線・配管の切断写真、生産中止の意思決定資料等を残す。
否認
一時的な休止(季節的・受注待ち)を有姿除却したケース。実際に撤去・スクラップ処分したなら、廃棄業者の作業報告書とマニフェストを保存すれば争いにならない。
具体例
3年前に導入したが2年前から稼働を止めている生産設備(帳簿価額800万円、処分見込価額50万円)。配線・配管を切断し、使用廃止の稟議書と写真を残したうえで750万円を有姿除却損として損金算入。法人税等で約225万円の効果。一時的な受注待ちによる休止では認められない。
028

貸倒損失の計上(3つの類型)

法人
根拠
法人税基本通達9-6-1(法律上の貸倒れ)・9-6-2(事実上の貸倒れ)・9-6-3(形式上の貸倒れ)
要件
①9-6-1:会社更生法等による切捨て、債権者集会の協議決定、書面による債務免除など(損金経理不要・当然に損金)。②9-6-2:債務者の資産状況・支払能力等からその全額が回収できないことが明らかとなった場合(担保物があるときは処分後)に損金経理。③9-6-3:継続的取引の停止から1年以上経過、または同一地域の債権総額が取立費用に満たない場合に、備忘価額1円を残して損金経理。
効果
回収不能債権を損金算入。あわせて消費税の貸倒れに係る税額控除(消法39条)も検討する。
注意
9-6-2は一部でも回収可能性があれば全額否認。9-6-3は「継続的な取引」が前提で、不動産取引等の一回限りの取引には適用されない。
否認
回収努力の記録(督促状・内容証明・訪問記録)がないまま貸倒処理するケース。関係会社・役員に対する債権の貸倒れは特に厳しく見られる。
具体例
取引を停止してから1年以上経過した得意先への売掛金50万円。備忘価額1円を残して49万9,999円を貸倒損失(法基通9-6-3)。あわせて消費税の貸倒れに係る税額控除で約4.5万円(税込50万円×10/110)も取り戻せる。ただし不動産売買のような一回限りの取引には9-6-3は使えない。

▶ 貸倒損失の判定

029

交際費の損金算入枠(定額控除800万円)と1人1万円基準

法人
根拠
租税特別措置法61条の4、同施行令37条の5、同施行規則21条の18の4
要件
期末資本金1億円以下の中小法人(資本金5億円以上の大法人の完全子会社等を除く)は、交際費等のうち年800万円まで全額損金算入(または接待飲食費の50%損金算入との選択)。飲食費のうち1人当たり1万円以下のものは交際費等から除外できる(令和6年4月1日以後支出分。それ以前は5,000円)。
効果
1万円以下の飲食は会議費等として交際費枠を消費せずに損金算入できるため、800万円枠を温存できる。
注意
1万円基準の適用には、①飲食年月日、②相手方の氏名・名称と関係、③参加者数、④金額と店名・所在地——を記載した書類の保存が必須。1つでも欠けると交際費に戻る。社内飲食費(社内の者だけの飲食)は基準の対象外。
否認
領収書の裏書きすらないケース、参加者数を水増しして1人1万円以下に見せかけるケース。適用期限は令和9年3月31日までに開始する事業年度。
具体例
1人1万円以下の飲食が年間200万円、それを超える接待飲食が年間700万円の会社。1万円以下の200万円は交際費等から除外できるため、交際費等は700万円で定額控除800万円の枠内に収まり全額損金。もし書類の記載(日付・相手方・人数・店名)が不備で200万円が交際費に戻ると、合計900万円となり100万円が損金不算入(法人税等で約30万円の増)。

▶ 交際費の損金不算入額を計算

030

決算期の変更(利益の平準化・特需の分散)

法人
根拠
法人税法15条、法人税法施行規則等(異動届出書の提出)
要件
株主総会(または取締役会)で定款変更を決議し、遅滞なく所轄税務署・都道府県・市町村へ異動届出書を提出。登記は不要。
効果
①突発的な大口利益が出た期を短くして、対策を打つ時間を確保する、②繁忙期と決算期をずらして実地棚卸・決算作業の負担を減らす、③軽減税率(年800万円以下15%)の月数按分を活かす、といった効果がある。
注意
1事業年度は1年を超えられない。変更した期は月数按分で各種限度額(交際費800万円、軽減税率800万円、少額減価償却資産300万円、防衛特別法人税の基礎控除500万円等)が縮小する。
否認
租税回避のみを目的とした頻繁な変更は、同族会社の行為計算否認(法法132)の検討対象になり得る。事業上の理由を議事録に残す。
具体例
12月に大口の譲渡益5,000万円が発生した3月決算の会社。決算期を12月に変更して事業年度を9か月とし、翌事業年度(1月〜12月)に対策を打つ時間を確保する、といった使い方ができる。ただし事業年度が9か月になると、交際費の定額控除は800万円×9/12=600万円、少額減価償却資産は300万円×9/12=225万円、防衛特別法人税の基礎控除も500万円×9/12=375万円に縮小する。
031

売上・仕入の計上基準の適正化(検収基準・出荷基準)

法人
根拠
法人税法22条の2、法人税基本通達2-1-1・2-1-2
要件
資産の販売等に係る収益は原則として引渡しがあった日に計上。出荷基準・着荷基準・検収基準・使用収益開始基準等のうち、その資産の種類・性質、契約内容に応じ合理的なものを継続適用すること。
効果
自社の取引実態に合った基準(例:据付・検収が必要な機械は検収基準)を選択することで、期末付近の売上計上時期が適正化される。
注意
節税目的で年度ごとに基準を変えることはできない。継続適用が大原則。
否認
期末売上の翌期繰延べは、税務調査で最初に見られる論点。出荷伝票・納品書・検収書の日付、翌期首の入金記録から容易に把握される。
具体例
据付・試運転を経て顧客の検収を受ける機械を販売する会社が、出荷基準から検収基準へ変更。3月28日出荷・4月10日検収の案件2,000万円は翌期の売上となる。ただし継続適用が前提で、年度ごとに基準を変えることはできない。出荷伝票と検収書の日付が食い違う処理は調査で最初に見られる論点
032

広告宣伝費・修繕の前倒し実施

法人
根拠
法人税法22条3項、法人税基本通達7-8-3〜7-8-5(修繕費の判定)
要件
期末までに役務の提供を受け終えていること(債務確定基準)。修繕は原状回復・維持管理の範囲であること。
効果
翌期に予定していた広告出稿や設備の修繕を当期に前倒しすることで、当期の損金を増やせる。
注意
広告料を前払いしただけ(掲載は翌期)では損金にならない。掲載期間に応じて期間按分するのが原則。
否認
実際には翌期に施工された工事を当期の未払金で計上するケース。工事写真・作業報告書の日付で判明する。
具体例
翌期に予定していた外壁の塗り替え(400万円)を当期の3月に施工完了させれば、原状回復の範囲であれば400万円が当期の修繕費となり法人税等が約120万円減る。逆に、契約と支払いだけ3月に済ませて実際の工事が5月なら債務は確定しておらず、当期の損金にはならない
033

寄附金の損金算入枠と特定公益増進法人への特別枠

法人
根拠
法人税法37条、法人税法施行令73条・77条の2
要件
一般寄附金の損金算入限度額=(資本金等の額×当期の月数/12×2.5/1000+所得金額×2.5/100)×1/4。特定公益増進法人・認定NPO法人等への寄附は、これとは別枠で(資本金等の額×月数/12×3.75/1000+所得金額×6.25/100)×1/2まで損金算入できる。国・地方公共団体への寄附金と指定寄附金は全額損金
効果
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)を使えば、損金算入に加えて最大約6割の税額控除が上乗せされ、実質負担が約1割まで下がる。
注意
寄附先が特定公益増進法人等に該当することを証する書類(証明書の写し)の保存が必要。
否認
取引先や政治団体への支出を寄附金と称するケース。実質が交際費・使途不明金と判断されることがある。
具体例
資本金1,000万円・当期所得2,000万円の会社の一般寄附金の損金算入限度額=(1,000万円×2.5/1000+2,000万円×2.5/100)×1/4=(2.5万円+50万円)×1/4=約13万円。一方、認定NPO法人等への寄附は別枠で(1,000万円×3.75/1000+2,000万円×6.25/100)×1/2=(3.75万円+125万円)×1/2=約64万円まで損金算入できる。

▶ 寄附金の損金算入限度額(一般)▶ 特定公益増進法人等への寄附(特別枠)

法人④|減価償却・少額資産・修繕費

令和8年度税制改正の目玉のひとつが少額減価償却資産の30万円→40万円への引上げです。パソコン・タブレット等の値上がりに対応した改正で、令和8年4月1日以後に取得する資産から適用されます。

034

少額減価償却資産の特例 ── 40万円未満を即時損金(令和8年度改正)

法人個人改正
根拠
租税特別措置法67条の5(個人は措法28条の2)
要件
青色申告の中小企業者等で、常時使用する従業員数が400人以下(改正前500人以下。適用除外事業者・特定法人は別途要件あり)。取得価額40万円未満(令和8年4月1日以後取得等。それ以前の取得は30万円未満)の減価償却資産を事業供用した場合、年間合計300万円を限度に全額損金算入。明細書の添付が必要。
効果
本来は数年に分けて償却する資産を、取得した期に一括で損金化できる。中小企業の決算対策で最も使用頻度が高い制度。
注意
適用期限は令和11年3月31日まで3年延長されました。「取得日ベース」の改正のため、同一事業年度内でも令和8年3月31日以前の取得は30万円未満、4月1日以後の取得は40万円未満と基準が二本立てになります。年300万円の限度額は事業年度が1年未満の場合は月数按分。
否認
取得価額の判定は1単位(1台・1組・1セット)ごと。応接セットや 加工機の部品をバラして単価を下げるのは不可。また、この特例で損金にした資産も償却資産税(固定資産税)の課税対象である点に注意(一括償却資産・10万円未満資産は対象外)。
具体例
38万円のノートPCを10台購入(合計380万円)。令和8年4月1日以後の取得なら40万円未満に該当するが、年間限度額300万円のため300万円を即時損金・残り80万円は通常の減価償却。300万円分で法人税等が約90万円減る。令和8年3月31日以前の取得だと30万円未満の基準に該当せず、10台とも通常償却になる。

▶ 少額減価償却資産の特例を計算▶ 少額資産の処理3択比較▶ 償却資産税の計算

035

一括償却資産(3年均等償却)── 償却資産税がかからない選択肢

法人個人
根拠
法人税法施行令133条の2(個人は所得税法施行令138条)
要件
取得価額10万円以上20万円未満の減価償却資産を一括し、事業供用した年度から3年間で均等償却(月割不要)。青色申告でなくても、資本金の大小を問わず適用できる。
効果
償却資産税の課税対象外となる(少額減価償却資産の特例との最大の違い)、②年300万円の枠を消費しない、③耐用年数が3年より長い資産(例:耐用年数15年の器具)でも3年で償却できる。
注意
途中で除却・売却しても3年間の均等償却を続ける(除却損は計上できない)。
否認
10万円以上20万円未満の資産について、少額減価償却資産の特例(40万円未満)と一括償却のどちらが有利かは、償却資産税(税率1.4%、課税標準150万円未満は免税)と資金繰りで判断する。大量購入時は一括償却の方が有利になることが多い
具体例
18万円のタブレット30台(合計540万円)。少額減価償却資産の特例は年300万円が上限だが、一括償却資産なら金額の上限なしで3年均等(毎期180万円)。さらに一括償却資産は償却資産税の課税対象外のため、540万円×1.4%=年約7.6万円の固定資産税も回避できる(免税点150万円未満の場合を除く)。

▶ 一括償却資産(3年均等)を計算

036

取得価額10万円未満の少額資産(即時損金)

法人個人
根拠
法人税法施行令133条
要件
取得価額10万円未満、または使用可能期間が1年未満の減価償却資産を、事業供用した年度に損金経理すること。
効果
全額を即時損金。金額・件数の上限なし。償却資産税も課されない。
注意
取得価額の判定は、税込経理なら税込金額、税抜経理なら税抜金額で行う。免税事業者は税込金額で判定するため不利になる。
否認
1組で機能する資産(応接セット、カーテン一式)を個別に分けて10万円未満にする処理。
具体例
9万8,000円のオフィスチェアを20脚(合計196万円)。1脚10万円未満なので全額を即時損金、件数・金額の上限なし、償却資産税も課されない。ただし税込経理を採用していると判定額は税込10万7,800円となり10万円以上になるため、税抜経理の会社だけが即時損金にできる
037

中古資産の耐用年数(簡便法)── 4年落ちの車で1年償却

法人個人
根拠
減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項2号
要件
①法定耐用年数の全部を経過:法定耐用年数×20%。②一部を経過:(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%。いずれも1年未満切捨て、2年未満は2年。ただし取得価額の50%超の資本的支出を行った場合は簡便法を使えない。
効果
普通自動車(法定6年)を4年10か月落ちで購入すると耐用年数2年、定率法償却率1.000となり、期首取得なら初年度で全額償却できる。
注意
期の途中で取得した場合は月割のため、期末近くに購入しても当期の償却額はわずかです。決算対策としては期首〜期中の取得が必要。
否認
事業に使っていない高級車(週末しか乗らない、走行距離が極端に少ない)は事業供用の事実を否認され、償却費が全額否認される例がある。運行記録を残すこと。
具体例
新車価格500万円の普通自動車(法定耐用年数6年)を、初度登録から4年10か月落ちで300万円で購入。簡便法の耐用年数=(6年-4年)+4年×20%=2.8年→2年。定率法の償却率1.000なので、期首に取得して事業供用すれば初年度に300万円を全額償却できる。ただし期の途中(たとえば決算3か月前)の取得だと月割で300万円×3/12=75万円しか落ちない。

▶ 中古資産の耐用年数(簡便法)を計算▶ 減価償却(定率法)

038

修繕費と資本的支出の区分(形式基準の活用)

法人個人
根拠
法人税基本通達7-8-1〜7-8-5
要件
次のいずれかに該当すれば修繕費として損金算入できる。①一の修理・改良等の金額が20万円未満(7-8-3)、②おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良等(7-8-3)、③区分が明らかでない金額のうち60万円未満またはその資産の前期末取得価額のおおむね10%以下(7-8-4)、④継続適用を条件に30%を修繕費・70%を資本的支出とする区分(7-8-5)。
効果
資本計上して長期償却するはずの支出を、当期の損金にできる。大規模修繕では数百万円規模の差になる。
注意
用途変更のための改造、避難階段の取付け、機械の効用を高める部品交換は明らかに資本的支出で、形式基準の前に実質判定が優先される(7-8-1)。
否認
1つの工事を意図的に複数の請求書に分割して20万円未満にする処理。「一の修理・改良等」は工事全体で判定される。
具体例
賃貸ビルの外壁補修に450万円。用途変更や機能向上を伴わず、区分が明らかでない場合は「前期末取得価額のおおむね10%以下」の形式基準が使える。前期末の建物取得価額が5,000万円なら10%=500万円なので、450万円を全額修繕費にでき、法人税等で約135万円の差。資本的支出にすると47年で償却するため初年度は約9.6万円しか落ちない。

▶ 修繕費・資本的支出の判定

039

償却方法の選定(定率法・定額法)と法人の任意償却

法人
根拠
法人税法31条、法人税法施行令48条の2・51条
要件
機械装置・器具備品・車両運搬具等は、届出により定率法(200%定率法)を選定できる(届出をしない法人の法定償却方法は定率法)。建物・建物附属設備・構築物は定額法のみ
効果
定率法は初期の償却費が大きく、早期に損金化できる。法人は償却限度額の範囲内で任意に償却額を決められるため、赤字の期は償却を見送り、黒字の期に多く償却して利益を平準化できる(個人事業は強制償却)。
注意
償却不足額は翌期以降に繰り越せるが、金融機関の決算書評価では減価償却不足を利益の水増しと見られる。銀行融資を予定している場合は慎重に。
否認
償却方法の変更は変更しようとする事業年度開始日の前日までに承認申請が必要。無届で変更すると法定償却方法で再計算される。
具体例
取得価額600万円・耐用年数10年の機械。定額法なら毎期60万円だが、200%定率法(償却率0.200)なら初年度120万円と2倍。さらに法人は償却限度額の範囲で任意に償却額を決められるため、赤字の期は0円、黒字の期に満額という調整もできる(個人事業は強制償却でこの調整はできない)。

▶ 減価償却(定額法)▶ 減価償却(定率法・200%)

法人⑤|設備投資・優遇税制(特別償却と税額控除)

設備投資減税には特別償却(課税の繰延べ)税額控除(税額の永久的な減少)があります。長期的に見れば税額控除が有利ですが、当期の資金繰りを優先するなら特別償却(即時償却)です。ほとんどの制度が事前の計画認定を必要とするため、設備を発注する前に確認してください。

040

中小企業経営強化税制 ── 即時償却または税額控除10%

法人改正
根拠
租税特別措置法42条の12の4(個人は措法10条の5の3)、中小企業等経営強化法
要件
青色申告の中小企業者等が、経営力向上計画の認定を受け、認定計画に記載された設備を取得・事業供用すること。対象資産の規模要件は機械装置160万円以上、工具・器具備品40万円以上(令和8年度改正で30万円以上から引上げ)、建物附属設備60万円以上、ソフトウエア70万円以上。
効果
即時償却(取得価額の全額を初年度に損金算入)または税額控除7%(資本金3,000万円以下の特定中小企業者等は10%)の選択適用。税額控除の上限は調整前法人税額の20%(中小企業投資促進税制等と合算)、1年間の繰越可。
注意
計画の認定は原則として設備取得前に受ける必要があります(例外的に取得後60日以内の申請が認められる類型もあるが、事業年度末までの認定が必須)。適用期限は令和9年3月31日。
否認
認定前に発注・納品してしまい、計画に記載できず不適用となるケースが最も多い。中古資産・貸付用資産は対象外。
具体例
経営力向上計画の認定を受け、1,200万円の機械装置を導入。即時償却なら初年度に1,200万円を損金算入して法人税等が約360万円減る。税額控除10%(資本金3,000万円以下)なら120万円の税額控除+通常の減価償却。長期の合計では税額控除が有利だが、初年度のキャッシュは即時償却が厚い。工具・器具備品は令和8年度改正で40万円以上が対象。

▶ 中小企業経営強化税制を計算▶ 即時償却vs税額控除の有利判定

041

中小企業投資促進税制 ── 計画認定なしで使える30%特別償却

法人改正
根拠
租税特別措置法42条の6(個人は措法10条の3)
要件
青色申告の中小企業者等が対象設備を取得・事業供用すること(計画認定は不要)。対象は機械装置160万円以上、測定工具・検査工具(1台120万円以上、または1台40万円以上かつ事業年度合計120万円以上/令和8年度改正で1台30万円以上から引上げ)、ソフトウエア70万円以上、車両総重量3.5トン以上の貨物自動車、内航船舶など。
効果
基準取得価額の30%の特別償却、または税額控除7%(税額控除は資本金3,000万円以下の法人・個人事業主に限る)。控除上限は調整前法人税額の20%、1年繰越可。
注意
適用期限は令和9年3月31日。器具備品は対象外(パソコン・複合機等は経営強化税制でなければ使えない)。
否認
貸付の用に供する資産は対象外。不動産業・物品賃貸業等の一部業種は指定事業から除かれる。
具体例
200万円の工作機械(1台160万円以上)を取得。計画認定なしで特別償却30%=60万円を上乗せ(普通償却と合わせて初年度の損金が大きくなる)、または税額控除7%=14万円を選択。測定工具・検査工具は「1台120万円以上」または「1台40万円以上かつ事業年度合計120万円以上」が対象で、令和8年度改正で1台の下限が30万円から40万円に上がった。

▶ 中小企業投資促進税制を計算

042

特定生産性向上設備等(令和8年度創設)── 大型投資の即時償却

法人新設
根拠
令和8年度税制改正により創設(租税特別措置法・産業競争力強化法)
要件
生産性向上設備等の導入に係る投資計画において、①取得価額の合計額が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)、②年平均の投資利益率が15%以上となる見込みであること等の基準に適合することについて経済産業大臣の確認を受け、確認日から5年を経過する日までに取得・事業供用すること。
効果
即時償却または取得価額の7%(建物・建物附属設備・構築物は4%)の税額控除の選択適用。税額控除の上限は当期法人税額の20%。予見し難い国際経済事情の急激な変化に対応するための計画の認定を受けた場合、控除限度超過額は3年間繰越可。
注意
確認の適用期限は令和11年3月31日まで。中小企業でも5億円以上の投資計画が必要なため、対象は限定的。工場新設・大型設備更新を検討している企業は経済産業局への早期相談を。
否認
投資利益率15%の見込みが計画上示せないと確認が下りない。事業計画の精度が制度適用の可否を分ける。
具体例
中小企業者が総額6億円の生産ライン刷新を計画(5億円以上の要件を満たす)。年平均の投資利益率15%以上が見込まれることについて経済産業大臣の確認を受ければ、即時償却で6億円を初年度に損金、または税額控除7%=4,200万円(建物部分は4%)。ただし税額控除は当期法人税額の20%が上限。
043

研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)

法人改正
根拠
租税特別措置法42条の4第4項(中小企業技術基盤強化税制)
要件
青色申告の中小企業者等が試験研究費を支出していること。試験研究費とは、製品の製造・技術の改良考案・発明に係る試験研究のために要する原材料費・人件費・経費、外部への委託費等。
効果
試験研究費の額に控除率(増減試験研究費割合に応じ12%〜、上乗せあり)を乗じた額を法人税額から控除。令和8年度改正で、控除しきれなかった額の3年間の繰越しが可能になりました。また「戦略技術領域型」が創設され、AI・量子・バイオ等に係る試験研究費は40%(重点産業技術共同研究開発機関との共同・委託研究は50%)の税額控除ができます(控除上限は当期法人税額の10%、3年繰越可)。
注意
ソフトウエア開発でも、新技術の開発要素があれば対象になり得る。試験研究費を区分経理し、研究テーマ・工数記録を残すことが適用の前提。
否認
受注制作のシステム開発(顧客仕様に沿った通常の制作)は試験研究に該当しない。工数記録がないと人件費の按分根拠を否認される。
具体例
試験研究費が年3,000万円の中小企業。中小企業技術基盤強化税制の控除率12%なら360万円の税額控除。法人税額が1,000万円なら控除上限は原則25%=250万円なので250万円を控除し、残り110万円は令和8年度改正で新設された3年繰越が使える。AI・量子・バイオ等の戦略技術領域型なら控除率40%(上限は当期法人税額の10%)。

▶ 研究開発税制(試験研究費)を計算

044

中小企業防災・減災投資促進税制

法人
根拠
租税特別措置法(中小企業等経営強化法の事業継続力強化計画の認定が前提)
要件
事業継続力強化計画(またはその連携版)の認定を受け、認定日から1年以内に対象設備(自家発電設備、排水ポンプ、制震・免震装置、貯水タンク、非常用電源、防火シャッター等)を取得・事業供用すること。
効果
取得価額の16%の特別償却(令和7年4月1日以後取得分。それ以前は18%)。
注意
計画の認定期限は令和9年3月31日。税額控除の設定はなく特別償却のみ。
否認
認定前に取得した設備は対象外。BCP策定と設備投資の順序を誤らないこと。
具体例
事業継続力強化計画の認定を受け、自家発電設備800万円を導入。特別償却16%=128万円を初年度に上乗せ計上でき、法人税等で約38万円の効果。認定前に取得した設備は対象外なので、BCP策定 → 認定 → 発注の順序を崩さないこと。
045

地域未来投資促進税制

法人
根拠
租税特別措置法42条の11の2、地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律
要件
都道府県知事による地域経済牽引事業計画の承認と、主務大臣の確認を受けること。対象設備の取得価額合計が1億円以上(上限80億円)。
効果
機械装置・器具備品は特別償却35〜50%または税額控除4〜6%、建物・附属設備・構築物は特別償却20%または税額控除2%。控除上限は法人税額の20%。
注意
指定期間は令和10年3月31日まで。地域や事業類型により上乗せ率が異なるため、所在地の都道府県に事前相談する。
否認
計画承認前の取得は対象外。
具体例
促進区域内で機械装置3億円を導入し計画承認を受けた場合、特別償却40%=1億2,000万円または税額控除5%=1,500万円(上乗せ率は地域・事業類型により35〜50%/4〜6%)。税額控除は法人税額の20%が上限。
046

中小企業事業再編投資損失準備金(M&Aの70%を損金に)

法人
根拠
租税特別措置法、中小企業等経営強化法(経営力向上計画・特別事業再編計画の認定)
要件
通常枠:事業承継等事前調査に関する事項を記載した経営力向上計画の認定を受け、株式取得価額10億円以下のM&Aを実施。拡充枠:過去5年以内にM&A実績のある中堅・中小企業が特別事業再編計画の認定を受けて実施。
効果
通常枠は取得価額等の70%を準備金として積み立て損金算入(据置期間5年、その後5年間で均等取崩し)。拡充枠は1回目90%、2回目以降100%(据置期間10年)。
注意
適用期限は令和9年(2027年)3月31日まで。株式取得後に簿外債務や偶発債務が判明した場合の損失に備える制度であり、取崩し時には益金となる課税の繰延べです。
否認
事前調査(デューデリジェンス)の実施と計画への記載が要件。DDを省略したM&Aは適用できません。
具体例
株式取得価額8億円のM&Aを、事業承継等事前調査を記載した経営力向上計画の認定を受けて実施。70%=5億6,000万円を準備金として積立て損金算入し、法人税等で約1億6,800万円の繰延べ効果。据置期間5年経過後に5年間で均等取崩し(益金)となるため、あくまで課税の繰延べ。DDを省略すると適用できない。

▶ 財務デューデリジェンス完全ガイド▶ 事業デューデリジェンス

047

オープンイノベーション促進税制

法人
根拠
租税特別措置法(特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例)
要件
国内事業会社またはCVCが、一定のスタートアップの株式を新規出資(中小企業者は1件1,000万円以上等の下限あり)またはM&A型で取得し、特別勘定を設けて経理すること。経済産業大臣の証明が必要。
効果
株式取得価額の25%を所得控除(損金算入)。
注意
令和8年度税制改正で適用期限が2年延長されるとともに、対象要件の見直し(新規出資型・M&A型の金額基準の引上げ等)が行われています。
否認
取得から5年以内に株式を売却・減資等した場合は、積み立てた特別勘定を取り崩して益金算入。
具体例
スタートアップに2億円を出資し、特別勘定を設けて経理。取得価額の25%=5,000万円を所得控除でき、法人税等で約1,500万円の効果。ただし取得から5年以内に売却・減資等があれば特別勘定を取り崩して益金算入される。
048

圧縮記帳(国庫補助金・保険差益・交換)

法人
根拠
法人税法42条(国庫補助金等)、47条(保険差益)、50条(交換)
要件
①補助金等の交付を受け、その目的に適合する固定資産を取得・改良したこと、②保険金等で代替資産を取得したこと、③1年以上有していた同一種類・同一用途の資産を交換したこと。いずれも損金経理により帳簿価額を減額する等の経理処理が必要。
効果
ものづくり補助金・事業再構築補助金等を受け取った期に一時に課税されるのを防ぎ、圧縮額だけ課税を将来へ繰り延べる
注意
圧縮記帳をすると取得価額が下がるため、その後の減価償却費が減り、特別償却・税額控除の計算基礎も小さくなる。補助金と設備投資減税を併用する場合の有利判定が必要。
否認
返還を要しないことが確定していない補助金は圧縮記帳の対象外(特別勘定を設定して処理)。
具体例
ものづくり補助金1,000万円を受けて2,000万円の機械を取得。圧縮記帳をしないと補助金1,000万円が全額益金となり法人税等が約300万円発生。圧縮記帳をすれば帳簿価額を1,000万円まで圧縮して課税を繰り延べられる。ただし取得価額が下がるためその後の減価償却費も半分になり、特別償却・税額控除の計算基礎も1,000万円になる点は要注意。

▶ 圧縮記帳(国庫補助金)▶ 圧縮記帳(保険差益)

049

特定資産の買換え特例(措法65条の7)

法人
根拠
租税特別措置法65条の7〜65条の9
要件
特定の譲渡資産(例:所有期間10年超の国内土地建物等)を譲渡し、譲渡日を含む事業年度の前年〜翌年中に特定の買換資産を取得して1年以内に事業供用すること。譲渡日・取得日のいずれか早い日を含む3月期間の末日の翌日から2か月以内に届出が必要。
効果
圧縮限度額=圧縮基礎取得価額×差益割合×80%(地域区分により70%・60%・90%の特例あり)。譲渡益の8割相当の課税を繰り延べられる。
注意
届出を失念すると適用できません。適用期限・買換類型は改正が頻繁なため、譲渡契約の前に最新の措置法条文を確認すること。
否認
あくまで課税の繰延べ。買換資産の取得価額が下がるため、将来売却時に繰り延べた分の課税が生じる。
具体例
所有期間15年の本社土地建物を1億円で譲渡(簿価2,000万円、譲渡益8,000万円)し、同年に1億2,000万円の物流倉庫を取得。圧縮限度額=1億円×差益割合0.8×80%=6,400万円を圧縮でき、当期の課税所得は8,000万円-6,400万円=1,600万円に圧縮。届出(3月期間の末日の翌日から2か月以内)を失念すると全額課税になる。

法人⑥|保険・共済・退職金制度

共済・保険を使った節税は「出口」で決まります。掛金を損金にしても、解約返戻金や共済金を受け取った期に一括で益金になれば、税負担は先送りされただけです。受取時期を役員退職金や大規模修繕とぶつける設計まで含めて初めて節税になります。

050

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

法人個人
根拠
中小企業倒産防止共済法、租税特別措置法66条の11・28条(掛金の損金・必要経費算入)
要件
1年以上継続して事業を行っている中小企業者。掛金は月額5,000円〜20万円(5,000円単位で変更可)、掛金総額800万円が上限。確定申告書に明細書(別表十(七)等)の添付が必要。
効果
掛金は全額損金(個人は必要経費)。1年以内の前納分も支払時の損金にできるため、期末に月額20万円×12か月=240万円を一括前納して当期の損金にする使い方が一般的。40か月以上納めれば解約手当金は掛金全額(100%)が戻る。
注意
令和6年10月1日以後に共済契約を解約した場合、その解約日から2年を経過する日までの間に支払う掛金は損金・必要経費に算入できません。「解約して益金を出し、すぐ再加入して損金を作る」という循環的な使い方は封じられています。
否認
解約手当金は全額が益金(個人は事業所得の収入金額)。受取時の出口対策なしに加入すると、単なる課税の先送りで終わります。個人事業主の場合、解約手当金は事業所得であり退職所得にはなりません。
具体例
3月決算の会社が、期末に月額20万円×12か月=240万円を一括前納。240万円が当期の損金となり法人税等が約72万円減る。掛金総額が上限800万円に達するのは約3年4か月後。解約時は解約手当金が全額益金となるため、役員退職金を支給する期に解約をぶつけるのが定石。なお令和6年10月以後に解約すると、解約日から2年間は掛金が損金にならない。

▶ 経営セーフティ共済の節税効果を計算

051

小規模企業共済 ── 役員・個人事業主の退職金づくり

個人
根拠
小規模企業共済法、所得税法75条(小規模企業共済等掛金控除)
要件
常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主・会社役員等。掛金は月額1,000円〜7万円(500円単位)。
効果
掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)。年間最大84万円。前納すれば当年分としてまとめて控除可能。受け取り時は一括なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得となり、いずれも優遇される。
注意
納付期間20年未満で任意解約すると元本割れします(掛金納付月数240か月未満)。長期継続が前提の制度。
否認
加入資格を満たさない(従業員数超過)状態での加入。共済金請求時に発覚するとトラブルになる。
具体例
月額7万円(年84万円)を拠出する役員。所得税・住民税の限界税率が33%なら年約28万円の減税。20年で掛金1,680万円・減税累計は約560万円。受取時は退職所得扱いで、勤続20年なら退職所得控除800万円が使えるため、税負担はさらに小さくなる。ただし240か月未満の任意解約は元本割れ。

▶ 退職金の手取り完全計算▶ 一時金vs年金受取の有利判定

052

中小企業退職金共済(中退共)

法人
根拠
中小企業退職金共済法、法人税基本通達9-3-1
要件
中小企業者が従業員を被共済者として加入。掛金は従業員1人あたり月額5,000円〜3万円(短時間労働者は2,000円・3,000円・4,000円の特例掛金あり)。原則として全従業員加入。
効果
掛金は全額損金算入(従業員に対する給与とはならない)。退職金は中退共から従業員へ直接支払われるため、支給時の会社の資金負担がない。新規加入時・掛金増額時には国の助成がある。
注意
役員は加入できません(使用人兼務役員の使用人部分は一定条件で可)。中途解約しても解約手当金は従業員に支払われ、会社には戻りません
否認
特定の従業員だけを加入させると、福利厚生としての普遍性を欠き給与課税の議論になり得る。
具体例
従業員10名を月1万円で加入。年120万円が全額損金かつ給与課税なしで法人税等が約36万円減る。新規加入時は国の助成もある。ただし役員は加入できず、中途解約しても解約手当金は従業員に支払われ会社には戻らない。
053

法人契約の生命保険 ── 最高解約返戻率による資産計上ルール

法人
根拠
法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2(令和元年6月28日改正)
要件
解約返戻金のある定期保険・第三分野保険の保険料は、最高解約返戻率に応じて次のとおり資産計上する。
・50%以下 → 全額損金
・50%超70%以下 → 当初4割期間は40%を資産計上(ただし1被保険者あたり年換算保険料30万円以下は全額損金)
・70%超85%以下 → 当初4割期間は60%を資産計上
・85%超 → 当初10年間は「最高解約返戻率×90%」、11年目以降は「最高解約返戻率×70%」を資産計上
効果
保障を確保しつつ、返戻率50%以下の商品や年30万円以下の枠を使えば保険料を全額損金にできる。事業保障・役員退職金の原資として活用する。
注意
かつての「全損保険」による節税は令和元年の通達改正で封じられました。解約返戻金を受け取る期に益金が立つため、役員退職金の支給時期と合わせる出口設計が必須。
否認
保険料の資産計上区分を誤ると、複数年にわたる修正申告が必要になる。契約時に必ず「最高解約返戻率」を設計書で確認すること。
具体例
年間保険料300万円の定期保険。最高解約返戻率が49%なら全額損金(300万円)。65%なら当初4割期間は40%=120万円を資産計上し180万円が損金(ただし1被保険者あたり年換算保険料30万円以下なら全額損金)。90%なら当初10年は90%×90%=81%=243万円を資産計上し57万円しか損金にならない。契約前に設計書で最高解約返戻率を必ず確認する。

▶ 法人保険の資産計上割合を判定

054

養老保険(ハーフタックスプラン)

法人
根拠
法人税基本通達9-3-4(3)
要件
①契約者=法人、②被保険者=役員・使用人、③満期保険金の受取人=法人、④死亡保険金の受取人=被保険者の遺族、⑤原則として全役員・全使用人が加入(普遍的加入)していること。
効果
支払保険料の2分の1を福利厚生費として損金算入、残り2分の1を保険料積立金として資産計上。従業員の死亡退職金・弔慰金の財源を確保しながら節税できる。
注意
普遍的加入が要件。役員・特定の従業員のみを加入させた場合、その者に対する給与となり、役員なら定期同額給与に該当せず損金不算入になります。
否認
加入条件を「勤続5年以上」等とすること自体は合理的な区分として認められる余地があるが、実質的に役員一族しか該当しない設計は否認される。
具体例
全役員・全使用人30名を被保険者とする養老保険に加入し、年間保険料600万円。300万円を福利厚生費として損金、300万円を保険料積立金として資産計上。普遍的加入が要件のため、役員一族5名だけを加入させるとその者への給与となり、役員分は定期同額給与に該当せず損金不算入になる。

法人⑦|欠損金・引当金・受取配当

055

青色欠損金の繰越控除 ── 中小法人は所得の100%まで

法人
根拠
法人税法57条
要件
欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出していること(青色でなくなっても連続提出していれば繰越控除は可能)。帳簿書類の保存も要件。
効果
欠損金を10年間繰り越して将来の所得と相殺できる。中小法人等(資本金1億円以下等)は所得金額の100%まで控除可能(それ以外の法人は50%)。
注意
平成30年4月1日前に開始した事業年度に生じた欠損金の繰越期間は9年。古い欠損金から順に控除される。
否認
期限内申告を1年でも怠ると、その後の繰越控除が使えなくなる。赤字でも必ず申告することが最大の節税。休眠会社も同様。
具体例
前期に3,000万円の欠損金が出た資本金1,000万円の会社が、当期2,500万円の所得を計上。中小法人等は所得の100%まで控除できるため課税所得は0円、法人税等の約750万円が丸ごと不要になる(資本金1億円超なら50%=1,250万円までしか控除できず、約375万円を納付)。残り500万円の欠損金は最長10年繰り越せる。

▶ 繰越欠損金の控除限度を計算

056

欠損金の繰戻し還付 ── 前期に納めた法人税を取り戻す

法人
根拠
法人税法80条、租税特別措置法66条の12
要件
①欠損事業年度の前事業年度から連続して青色申告書を提出、②欠損事業年度の確定申告書と同時に還付請求書を提出。適用できるのは中小企業者等(資本金1億円以下等)に限られます(大法人は原則停止中)。
効果
当期の欠損金を前期の所得と相殺し、前期に納付した法人税の還付を受けられる。繰越控除と違い、キャッシュが即座に戻る点が最大の利点。
注意
還付されるのは法人税(および地方法人税)のみで、法人住民税・事業税は還付されず、控除対象還付法人税額等として翌期以降の計算に反映される。還付請求を行うと税務調査が入りやすいと言われる点も実務上の判断材料。
否認
繰戻し還付と繰越控除は選択適用。将来の所得見込みが大きいなら繰越控除の方が有利な場合もある。
具体例
前期に所得1,000万円で法人税を約200万円納付した会社が、当期800万円の欠損。繰戻し還付を請求すると800万円分に対応する法人税約160万円が還付される。確定申告書と同時に還付請求書の提出が必要で、還付されるのは法人税・地方法人税のみ(住民税・事業税は繰越しでの調整)。

▶ 欠損金の繰戻し還付を計算

057

貸倒引当金(中小法人の法定繰入率)

法人
根拠
法人税法52条、租税特別措置法57条の9(中小企業者等の法定繰入率)
要件
資本金1億円以下の普通法人等が対象。一括評価金銭債権について、実績繰入率または法定繰入率のいずれか有利な方を選択できる。法定繰入率は卸売業・小売業(飲食店業含む)10/1000、製造業8/1000、金融・保険業3/1000、割賦販売小売業等13/1000、その他の事業6/1000
効果
実際には貸倒れが発生していなくても、売掛金・受取手形等の期末残高に対して引当金を繰り入れて損金算入できる。
注意
法定繰入率を使う場合、実質的に債権とみられない金額(同一の相手先に対する買掛金等)を控除して計算する。個別評価金銭債権は別枠。
否認
翌期に洗い替えて全額益金となるため、恒常的な節税ではなく初年度の一時的効果。適用除外事業者(前3年平均所得15億円超)は適用不可。
具体例
卸売業(法定繰入率10/1000)で期末の売掛金・受取手形が8,000万円、実質的に債権とみられない金額が500万円。繰入限度額=(8,000万円-500万円)×10/1000=75万円を損金算入でき、法人税等で約22万円の効果。ただし翌期に洗い替えて全額益金となるため、初年度限りの一時的な効果

▶ 貸倒引当金(法定繰入率)を計算

058

受取配当等の益金不算入

法人
根拠
法人税法23条、法人税法施行令22条以下
要件
株式等の区分に応じて益金不算入割合が異なる。完全子法人株式等(100%)=全額関連法人株式等(3分の1超)=全額(負債利子の控除あり)その他の株式等=50%非支配目的株式等(5%以下)=20%
効果
グループ内配当や政策保有株式の配当に係る二重課税を排除できる。持株会社化のメリットの中核。
注意
短期保有株式等(配当基準日前1か月以内に取得し、基準日後2か月以内に譲渡した株式)は益金不算入の対象外。
否認
配当の直前に持株比率を操作して区分を有利にする行為は、同族会社の行為計算否認の検討対象。
具体例
100%子会社から配当2,000万円を受領。完全子法人株式等として全額が益金不算入となり、法人税等が約600万円不要になる。保有割合5%以下の上場株式からの配当なら20%しか益金不算入にならず、2,000万円のうち1,600万円が課税対象になる。

▶ 受取配当等の益金不算入を計算

059

防衛特別法人税への備え(令和8年4月から課税開始)

法人新設
根拠
我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(防衛財源確保法)
要件
令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用。課税標準=基準法人税額-基礎控除額年500万円(事業年度が1年未満の場合は月数按分)。税率4%
効果
基準法人税額が500万円以下(=法人税額が500万円以下)であれば税額は発生しない。所得金額でいえばおおむね2,100万円前後までが目安(税率区分により変動)。
注意
税額が0円でも防衛特別法人税確定申告書の提出義務があります。法人税の確定申告書を提出すべきすべての法人が対象で、申告期限は法人税と同じ。申告漏れは無申告加算税の対象になり得ます。
否認
節税策ではなく増税項目ですが、決算期変更で事業年度が短くなると基礎控除500万円が月数按分で縮小する点に注意。
具体例
所得3,000万円の中小法人。法人税額はおおむね800万円×15%+2,200万円×23.2%=120万円+510万円=約630万円。基準法人税額630万円-基礎控除500万円=130万円×4%=防衛特別法人税は約5.2万円。所得がおおむね2,100万円前後までなら税額は発生しないが、0円でも申告書の提出が必要

法人⑧|資本政策・組織再編・法人化

ここは「毎年の経費を積む」のではなく、器そのものを設計し直す領域です。効果は最も大きい一方、一度動かすと後戻りできません。実行前に必ず複数年でのシミュレーションを行ってください。

060

法人成り(個人事業の法人化)

個人法人
根拠
法人税法、所得税法、会社法
要件
法人を設立し、事業を法人へ移転(棚卸資産・固定資産の売買または現物出資、賃貸借契約の切替え、許認可の取り直し)。個人事業の廃業届・青色申告の取りやめ届等を提出。
効果
①所得税の累進税率(最高45%+住民税10%)から法人税率(中小法人は年800万円以下15%、超過分23.2%)へ、②役員報酬に給与所得控除が使える、③家族への役員報酬で所得分散、④役員退職金・社会保険の活用、⑤欠損金の繰越期間が10年(個人は3年)。
注意
分岐点は事業の内容・家族構成・社会保険負担で変わりますが、実務上は課税所得800万〜1,000万円あたりが目安。社会保険の強制加入による法人負担(給与の約15%)を必ず織り込むこと。
否認
実態のない法人への売上付替えは否認されます。契約名義・請求書・入金口座・許認可をすべて法人へ移すこと。
具体例
個人事業の課税所得が1,200万円の場合、所得税・住民税・事業税で約400万円。法人化して役員報酬600万円・法人所得600万円に分けると、法人税等が約135万円、個人の所得税・住民税が約60万円、社会保険料が労使合計で約180万円。単純合計は約375万円で、税だけ見れば有利でも社会保険料の負担が効いてくる。分岐点は課税所得800万〜1,000万円が目安。

▶ 法人成りシミュレーション▶ 法人税等の実効負担を計算

061

資本金1,000万円未満での法人設立(消費税・均等割)

法人消費税
根拠
消費税法12条の2・12条の3、地方税法(均等割)
要件
設立時の資本金を1,000万円未満にすると、設立1期目は消費税の納税義務が免除される。2期目も、特定期間(前事業年度開始の日以後6か月)の課税売上高と給与等支払額のいずれかが1,000万円以下であれば免税。
効果
最大2期分の消費税が免除される。あわせて法人住民税の均等割も、資本金等の額1,000万円以下なら最低額(多くの自治体で年7万円)となる。
注意
特定新規設立法人(親族等が50%超を保有し、その判定対象者の基準期間相当期間の課税売上高が5億円超、または令和6年10月1日以後は総収入金額50億円超)に該当すると、資本金1,000万円未満でも初年度から課税事業者になります。インボイス登録をすると免税の恩恵は受けられません(登録=課税事業者)。
否認
設立直後に増資して1,000万円以上にすると、その事業年度から課税事業者になる。
具体例
設立時の資本金を999万円にすれば、原則として1期目・2期目の消費税が免除。課税売上3,300万円(税込)・課税仕入1,650万円(税込)の会社なら消費税は300万円-150万円=年150万円なので、2期で約300万円の効果。住民税均等割も最低額(多くの自治体で年7万円)。ただしインボイス登録をすると初日から課税事業者になるため、この免税は使えなくなる。

▶ 課税事業者の判定フロー▶ 法人住民税の計算

062

資本金1億円以下の維持(中小法人特例の全パッケージ)

法人
根拠
法人税法66条、租税特別措置法42条の3の2・61条の4・67条の5ほか、地方税法72条の2
要件
期末資本金1億円以下であること(資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人等を除く)。
効果
軽減税率(年800万円以下の所得に15%。ただし所得10億円超の事業年度は17%。令和9年3月31日までに開始する事業年度)、②交際費の定額控除800万円、③少額減価償却資産の40万円特例、④欠損金の100%控除、⑤欠損金の繰戻し還付、⑥貸倒引当金の法定繰入率、⑦外形標準課税の対象外——中小法人特例は1億円のラインでまとめて手に入ります
注意
令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、外形標準課税に「100%子法人等」の規定が適用されます。資本金1億円以下でも、資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人等の100%子法人(同一の親法人の100%子法人等を含む)で、かつ自社の資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超える場合は外形標準課税の対象となります。減資による対象外し(前事業年度に外形対象だった法人が資本金+資本剰余金10億円超の場合)も封じられています。
否認
資本金を1億円以下に減資する場合、無償減資(欠損填補)か有償減資かで会計・税務の取扱いが異なる。債権者保護手続も必要。
具体例
資本金を1億1,000万円から9,000万円へ減資すると、①年800万円以下の所得に軽減税率15%(差8.2%分で年約66万円)、②交際費800万円の定額控除、③少額減価償却資産40万円特例、④欠損金の100%控除、⑤外形標準課税の対象外——がまとめて手に入る。ただし令和8年4月1日以後開始事業年度からは、資本金+資本剰余金が50億円超の法人の100%子法人で、自社の資本金+資本剰余金が2億円超なら外形標準課税の対象になる。

▶ 外形標準課税・付加価値割を計算▶ 法人事業税の計算

063

不動産管理会社・不動産保有会社の設立

法人個人
根拠
所得税法12条(実質所得者課税)、法人税法132条(同族会社の行為計算否認)
要件
管理委託方式(法人が管理業務を受託し管理料を受領。管理料は実務上、賃料収入の5〜10%程度が一つの目安)、②サブリース方式(法人が一括借上げし転貸。相場の10〜20%程度の差益)、③不動産所有方式(建物を法人所有に移す)。効果が最も大きいのは③。
効果
家賃収入を法人に移し、家族への役員報酬で所得分散。将来の相続財産の増加を抑え、法人株式の形で承継できる。
注意
管理料の水準に法定基準はありませんが、実際に管理業務(清掃・集金・入居者対応・修繕手配)を行っている実態がなければ経費否認されます。業務日報・委託契約書を整備すること。
否認
実体のない管理会社に高率の管理料を支払い、必要経費を否認された裁決例が多数あります。建物を法人に移す場合は、譲渡所得課税・不動産取得税・登録免許税・借地権の認定課税(無償返還の届出)の検討が必須。
具体例
年間家賃収入3,000万円のオーナーが管理会社を設立し、管理料を賃料の8%=年240万円とする(管理委託方式)。240万円が個人の不動産所得から法人へ移り、個人の限界税率が43%なら約103万円の圧縮。ただし清掃・集金・入居者対応・修繕手配を実際に行い、委託契約書と業務報告書を残すことが前提。実体がなければ全額否認される。
064

持株会社(ホールディングス)化

法人
根拠
法人税法2条12号の16以下(適格組織再編)、法人税法23条(受取配当等の益金不算入)
要件
株式移転・株式交換・現物出資等により持株会社を設立。適格要件(支配関係の継続、対価が株式のみ、従業者引継ぎ、事業継続等)を満たせば、簿価による移転で課税が生じない。
効果
①子会社からの配当が全額益金不算入、②グループ内の損益通算(グループ通算制度)、③自社株評価の引下げ(株式保有特定会社に該当しない範囲で)、④事業承継の際に持株会社株式だけを移せばよい。
注意
持株会社の総資産に占める株式等の割合が50%以上になると株式保有特定会社と判定され、原則として純資産価額方式(またはS1+S2方式)で評価され、かえって株価が上がることがあります。
否認
非適格組織再編に該当すると時価取引として多額の課税が生じます。実行前に必ず適格要件を条文で確認すること。
具体例
事業会社の株価が1株5万円・発行済2,000株(評価額1億円)。株式移転で持株会社を設立し、子会社からの配当は全額益金不算入。ただし持株会社の総資産に占める株式等の割合が50%以上になると株式保有特定会社と判定され、原則として純資産価額方式で評価されるためかえって株価が上がることがある。

▶ S1+S2方式(株式保有特定会社)▶ 特定会社の判定

065

グループ通算制度

法人
根拠
法人税法64条の9以下
要件
内国法人である親法人と、その完全支配関係にある子法人が、国税庁長官の承認を受けて適用(原則として適用開始事業年度開始の日の3か月前の日までに申請)。
効果
グループ内の黒字法人と赤字法人の所得と欠損金を通算できる。連結納税と異なり各社が個別に申告するため、修正が生じても他社への影響(全体再計算)が原則生じない。
注意
適用開始・加入時に子法人の時価評価課税や欠損金の切捨てが生じる場合がある。中小企業にとっては事務負担も大きく、グループ全体の損益状況を見て判断する。
否認
一度適用すると原則として継続適用。取りやめには国税庁長官の承認が必要。
具体例
親会社が所得1億円、子会社Aが欠損4,000万円のグループ。グループ通算を適用すると4,000万円を通算でき、法人税等で約1,200万円の効果。ただし適用開始・加入時に子法人の時価評価課税や欠損金の切捨てが生じる場合があり、開始日の3か月前までの申請が必要。

▶ グループ通算(損益通算・プロラタ)を計算

066

特定同族会社の留保金課税への対応

法人
根拠
法人税法67条
要件
被支配会社(1株主グループで50%超保有)である特定同族会社が対象。資本金1億円以下の中小法人は原則として適用除外(資本金5億円以上の大法人の100%子法人等を除く)。
効果
留保控除額(所得基準額40%、定額基準額年2,000万円、積立金基準額のうち最も多い額)を超える留保金額に10〜20%の特別税率が課される。中小法人であればこの課税自体を回避できる。
注意
役員報酬・配当で社外流出させるか、設備投資で留保金額を圧縮するかの判断になる。
否認
資本金を1億円以下に維持することが、この課税を含む多くの中小法人特例の前提になる(062参照)。
具体例
資本金1億円以下の中小法人は留保金課税そのものが適用除外。仮に資本金3億円の特定同族会社が留保金額1億円、留保控除額(定額基準額2,000万円等のうち最も多い額)4,000万円なら、超過6,000万円に10〜20%の特別税率が課される。資本金1億円以下を維持することがそのまま対策になる。

▶ 特定同族会社の留保金課税を計算

個人①|個人事業主・フリーランスの節税

個人事業主の節税は「青色申告+所得控除型の共済」を土台に、必要経費の取りこぼしを潰していくのが基本です。法人と違い、減価償却は強制(任意償却不可)である点に注意してください。

067

青色申告特別控除65万円

個人
根拠
租税特別措置法25条の2
要件
65万円:①不動産所得(事業的規模)または事業所得、②正規の簿記の原則(複式簿記)による記帳、③貸借対照表・損益計算書を添付、④法定申告期限内に提出、かつ⑤e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿の保存
55万円:⑤を満たさない場合。10万円:上記以外の青色申告。
効果
所得税・住民税・国民健康保険料の算定基礎がまとめて65万円下がる。所得税率20%の人なら、住民税・国保も含めて年20万円前後の効果。
注意
1日でも期限に遅れると65万円→10万円になります。青色申告承認申請書は、原則としてその年の3月15日まで(新規開業は開業日から2か月以内)に提出。
【令和9年分以後の重要な改正】令和8年度税制改正により、①55万円控除はe-Taxによる期限内提出を要件に加えたうえで65万円に、②65万円控除は優良な電子帳簿等の保存を要件として75万円に引き上げられます。あわせて、③前々年分の不動産所得または事業所得の収入金額が1,000万円を超える者が簡易な簿記で記録している場合は、10万円控除の対象から除外されます。
否認
現金主義(簡易簿記)では10万円控除まで。帳簿は7年間(一部5年)保存が必要。
具体例
事業所得600万円の個人事業主。65万円控除を受けると、所得税・住民税の限界税率30%で約19.5万円の減税に加え、国民健康保険料も所得割分(料率約10%)で約6.5万円下がり、合計約26万円の効果。期限内申告を1日でも過ぎると10万円控除になり、効果は約4万円まで落ちる。なお令和9年分からはe-Tax要件を満たせば65万円、優良な電子帳簿なら75万円に引き上げられる。

▶ 青色申告の節税効果(白色との比較)

068

青色事業専従者給与 ── 家族への給与を全額必要経費に

個人
根拠
所得税法57条1項
要件
①青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族、②その年12月31日現在で15歳以上、③その年を通じて6か月を超える期間専ら事業に従事、④「青色事業専従者給与に関する届出書」をその年の3月15日まで(新たに専従者を有することとなった場合は2か月以内)に提出、⑤届出額の範囲内で労務の対価として相当な金額。
効果
届出の範囲内で全額を必要経費にできる(金額の上限なし)。所得を家族に分散することで累進税率を下げられる。
注意
専従者給与を支払うと、その家族について配偶者控除・扶養控除は適用できません。少額(年38万円程度)の支給なら控除を使った方が有利な場合があるため、必ず比較すること。
否認
①他に本業がある(専ら従事していない)、②労務の実態がない、③同業他社の同種の仕事の給与水準に照らして過大——のいずれかで否認されます。タイムカード・業務内容の記録を残すこと。
具体例
事業所得1,000万円の個人事業主が、経理を担当する配偶者に届出のうえ月20万円(年240万円)の専従者給与を支給。本人の所得は760万円に下がり、配偶者は給与所得控除74万円を差し引いて所得166万円。世帯合計の所得税・住民税は年50万円前後圧縮される。ただし配偶者控除(38万円)は使えなくなるため、支給額が年38万円程度なら控除を使ったほうが有利。
069

事業専従者控除(白色申告)

個人
根拠
所得税法57条3項
要件
生計を一にする15歳以上の親族で、6か月を超えて専ら事業に従事していること。届出は不要。
効果
配偶者は最高86万円、その他の親族は1人につき最高50万円を必要経費とみなす。ただし「事業所得等の金額÷(専従者数+1)」が上限。
注意
青色申告に切り替えれば金額の上限がなくなるため、専従者がいる事業者は青色申告が圧倒的に有利。
否認
専従者控除を受けた家族は、配偶者控除・扶養控除の対象外。
具体例
白色申告のまま配偶者を専従者にすると控除は最高86万円(事業所得等÷(専従者数+1)が上限)。青色に切り替えて月20万円=年240万円を支給すれば154万円分多く必要経費にでき、限界税率30%なら年約46万円の差。青色申告特別控除65万円と合わせると差はさらに広がる。
070

家事関連費の按分(自宅兼事務所・車両・通信費)

個人
根拠
所得税法45条1項1号、所得税法施行令96条、所得税基本通達45-2
要件
家事関連費のうち、業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分を必要経費にできる。青色申告者は「取引の記録等に基づいて業務遂行上必要であった部分を明らかに区分できる場合」に認められる(所令96条2号)。
効果
家賃・水道光熱費(床面積比)、自動車関連費(走行距離比・使用日数比)、通信費(使用時間比)、火災保険料などを合理的な基準で按分計上できる。
注意
按分基準を最初に決めて、毎年同じ基準で継続適用すること。根拠(間取り図と面積計算、走行記録、稼働日数のメモ)を残す。
否認
根拠なく「だいたい8割」とする処理。持家の場合、住宅ローンの元本部分は経費になりません(減価償却費と借入金利子の按分は可、ただし住宅ローン控除との調整に注意)。
具体例
自宅兼事務所(80㎡のうち事務所24㎡=30%)。家賃月12万円なら年144万円×30%=43.2万円、電気代年18万円×30%=5.4万円、通信費年12万円×50%=6万円で合計約55万円が必要経費。限界税率30%なら年約16万円の効果。間取り図・面積計算・稼働時間の記録を残し、毎年同じ基準で継続適用する。
071

純損失の繰越控除・繰戻し還付(個人)

個人
根拠
所得税法70条(繰越控除)、140条(繰戻し還付)
要件
青色申告者であること。損失が生じた年分の確定申告書を提出し、その後も連続して申告書を提出していること。
効果
純損失を翌年以後3年間繰り越して各年の所得と相殺できる。または前年分に繰り戻して前年に納付した所得税の還付を受けられる。
注意
法人の10年に比べて個人は3年と短い。継続的に赤字が見込まれる事業は法人化を検討する材料になる。
否認
白色申告では、変動所得の損失と被災事業用資産の損失を除き繰越しできません。
具体例
開業1年目に300万円の純損失。2年目に150万円、3年目に250万円の所得が出た場合、2年目は所得0円(150万円を控除)、3年目は残り150万円を控除して所得100万円。2年分で約90万円の税負担を回避(限界税率30%)。ただし個人の繰越期間は3年で、法人の10年より短い。
072

開業費・繰延資産の任意償却

個人
根拠
所得税法2条1項20号、所得税法施行令7条・137条
要件
開業のために特別に支出する費用(市場調査費、広告宣伝費、接待費、開業前の家賃・水道光熱費等)を開業費として資産計上する。
効果
開業費は繰延資産のうち任意償却が認められるものであり、5年均等償却のほか、好きな年に好きな額を償却できる。開業初年度が赤字なら償却せず、黒字化した年にまとめて必要経費にできる。
注意
10万円以上の備品は開業費でなく減価償却資産。仕入れた商品は棚卸資産。
否認
開業日を後ろにずらして生活費を開業費に含める処理。開業届の日付と支出の内容が整合している必要がある。
具体例
開業前に支出した市場調査費・広告費・研修費など180万円を開業費として資産計上。1年目が赤字なら償却せず、3年目に黒字化してから180万円を一括で必要経費にできる(任意償却)。5年均等(年36万円)に縛られない点が大きい。
073

事業所得と雑所得の区分(帳簿保存の重要性)

個人
根拠
所得税基本通達35-2(令和4年10月改正)
要件
その所得を得るための活動が社会通念上事業と称するに至る程度で行われているかで判定。記帳・帳簿書類の保存がある場合は、原則として事業所得と取り扱う。ただし収入金額が300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満の場合等は、個別に判断される。
効果
事業所得に該当すれば、青色申告特別控除・青色事業専従者給与・純損失の繰越控除・他の所得との損益通算が使える。
注意
帳簿保存は事業所得と主張するための最低条件であって、それだけで事業性が認められるわけではありません。
否認
副業を事業所得として赤字を給与所得と損益通算する手法は、事業性が否認されるケースが多発しています。営利性・継続性・反復性・人的物的設備の有無を客観的に説明できることが必要。
具体例
会社員が副業で年間200万円の収入・250万円の経費を計上し、50万円の赤字を給与所得と損益通算して還付を受けるケース。帳簿を保存していても、営利性・継続性・反復性や人的物的設備がなければ雑所得と判定され、損益通算も青色申告特別控除も認められない。近年もっとも否認が多い論点。

個人②|所得控除・税額控除の完全リスト(令和8年分対応)

令和8年分の所得税は12月1日施行の改正が適用されます。基礎控除・給与所得控除の引上げ、扶養親族等の所得要件の見直しは令和8年12月の年末調整から反映されます(令和8年11月までの源泉徴収事務に変更はありません)。
074

基礎控除 ── 令和8年分は最大104万円

個人改正
根拠
所得税法86条、租税特別措置法41条の16の2
要件
令和8年分の基礎控除額(本則62万円+特例加算)は次のとおり。
・合計所得金額489万円以下 → 104万円(62+42)
・489万円超655万円以下 → 67万円(62+5)
・655万円超2,350万円以下 → 62万円
・2,350万円超2,400万円以下 → 48万円/2,400万円超2,450万円以下 → 32万円/2,450万円超2,500万円以下 → 16万円/2,500万円超 → 0円
効果
給与所得控除の最低保障74万円と合わせ、給与収入178万円までは所得税がかかりません(いわゆる「178万円の壁」)。
注意
特例加算42万円は令和8年分・令和9年分の2年限り。令和10年分以後は、合計所得132万円以下の場合に37万円の加算(基礎控除99万円)に縮小されます。また今回の改正で、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組み(直近2年間の消費者物価指数の上昇率で調整)が創設されました。
否認
住民税の基礎控除は所得税と金額・タイミングが異なります。手取りの試算では住民税分を分けて考えること。
具体例
給与収入500万円(合計所得356万円)の会社員。令和7年分の基礎控除は58万円+加算だったが、令和8年分は489万円以下なので104万円。控除が大きく増えるため、所得税・住民税の限界税率が20%+10%なら年10万円前後の減税。給与収入178万円までは所得税がかからない(基礎控除104万円+給与所得控除74万円)。

▶ 基礎控除を計算▶ 総合課税の所得税額(フルセット)

075

給与所得控除 ── 最低保障額74万円(令和8年・9年分)

個人改正
根拠
所得税法28条3項
要件
最低保障額を本則65万円→69万円に引き上げたうえ、令和8年分・令和9年分はさらに5万円上乗せして74万円(個人住民税は令和9年度分・令和10年度分)。上限額195万円(給与収入850万円超)は据置き。
効果
給与収入74万1千円未満までは給与所得ゼロ。それを超える範囲では「収入-74万円」が給与所得となる。
注意
給与所得控除の最低保障額についても、物価連動の調整の仕組みが導入されました。
否認
複数の勤務先がある場合、給与所得控除は合算した収入に対して1回だけ適用されます(勤務先ごとではありません)。
具体例
給与収入150万円のパート。給与所得=150万円-74万円=76万円。基礎控除104万円を下回るため所得税は0円。改正前の最低保障65万円だと給与所得85万円だったので、課税所得ベースで9万円分有利になる。

▶ 給与所得を計算

076

配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除(所得要件が62万円へ)

個人改正
根拠
所得税法83条・83条の2・84条
要件
令和8年分から、同一生計配偶者・扶養親族の合計所得金額の要件が58万円以下 → 62万円以下(給与収入なら136万円以下)に引き上げられました。配偶者特別控除の対象は合計所得62万円超133万円以下(給与収入136万円超207万円以下)。控除額そのもの(配偶者控除38万円、一般扶養38万円、特定扶養63万円、老人扶養48万円/同居老親等58万円)に変更はありません。
効果
パート・アルバイトの就業調整のラインが緩和され、扶養に入りながら働ける収入が増えます。
注意
税金の壁と社会保険の壁は別物です。社会保険の被扶養者認定(年収130万円、特定適用事業所では106万円相当)は税制改正で変わりません。手取りが逆転するのは主に社会保険の壁です。
否認
年末調整で申告した見込額と実際の所得が異なると、扶養是正(会社経由の追徴)が生じます。
具体例
配偶者のパート収入が130万円の世帯。令和7年分までは合計所得58万円超(給与収入123万円超)で配偶者控除を外れたが、令和8年分は合計所得62万円以下=給与収入136万円以下なので配偶者控除38万円が引き続き使える。世帯主の限界税率30%なら年約11.4万円の差。ただし社会保険の130万円の壁は税制改正では動かない。

▶ 配偶者控除・配偶者特別控除▶ 扶養控除の合計

077

特定親族特別控除(19歳以上23歳未満の子の「150万円の壁」対応)

個人改正
根拠
所得税法2条1項34号の4、84条の2
要件
生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者・事業専従者を除く)で、令和8年分は合計所得62万円超123万円以下(給与収入136万円超188万円以下)であること。
効果
特定扶養控除(63万円)を外れても、所得に応じて63万円〜3万円の9段階で控除が受けられ、控除額が段階的に逓減する。学生アルバイトの収入増による親の税負担の急増を防ぐ制度。
注意
令和7年度税制改正で創設され、令和8年分は扶養親族の所得要件の引上げに連動して下限が62万円超になっています。
否認
子自身の合計所得が123万円(給与収入188万円)を超えると、この控除も受けられなくなります。
具体例
大学生(20歳)の子のアルバイト収入が160万円。特定扶養控除63万円は外れるが、合計所得は160万円-74万円=86万円で62万円超123万円以下のため特定親族特別控除の対象。所得85万円超90万円以下の区分で控除額はおおむね61万円前後となり、親の税負担の急増を防げる。収入188万円を超えると控除ゼロ。

▶ 特定親族特別控除を計算

078

社会保険料控除(家族分・前納の活用)

個人
根拠
所得税法74条
要件
納税者本人だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族が負担すべき社会保険料を本人が支払った場合も、その全額を控除できる。
効果
①学生の子や無職の親族の国民年金保険料を、所得の高い人が支払うことで税率差の分だけ有利になる。②国民年金保険料は最大2年分の前納が可能で、前納した年に全額を控除するか各年分に按分するかを選択できる(一括控除を選べば高所得の年に集中させられる)。
注意
国民年金の控除には日本年金機構が発行する社会保険料控除証明書の添付が必要。国民健康保険料は証明書不要だが支払額の集計が必要。
否認
実際に支払っていない家族分を控除することはできません。口座振替は名義人が支払者と扱われるため、他人分を控除したい場合は現金納付または本人名義口座からの支払いにする。
具体例
大学生の子の国民年金保険料(月額約1万7,000円=年約20万円)を、限界税率43%の親が支払って自分の社会保険料控除に含める。年約8.6万円の減税。子本人が払っても子の所得が低ければ控除の効果はほぼゼロなので、所得の高い人が払うのが正解。2年前納なら支払った年に全額控除するか各年分に按分するかを選べる。

▶ 社会保険料の詳細計算

079

小規模企業共済等掛金控除(iDeCo・小規模企業共済・企業型DC)

個人改正
根拠
所得税法75条、確定拠出年金法
要件
小規模企業共済の掛金、iDeCoの掛金、企業型DCのマッチング拠出分、心身障害者扶養共済の掛金を支払っていること。
効果
支払額の全額が所得控除。運用益も非課税、受取時も退職所得控除・公的年金等控除が使える三重の優遇。
令和8年12月1日から、iDeCoの拠出限度額が大幅に拡大されます。第1号被保険者(自営業者等)は国民年金基金等と合算で月6.8万円→月7.5万円、第2号被保険者は企業年金の有無にかかわらず企業年金等と合算で月6.2万円に統一(企業年金のない会社員は月2.3万円→6.2万円)。第3号被保険者は月2.3万円で据置き。あわせて60歳以上70歳未満の加入も可能になります。
注意
iDeCoは原則60歳まで引き出せません。生活防衛資金を確保したうえで拠出額を決めること。
否認
退職金とiDeCo一時金を両方受け取る場合、退職所得控除の重複を排除する判定期間が、令和8年1月1日以後の支払い分から「前年以前4年内」→「前年以前9年内」に拡大されています(先にiDeCoを受け取るケース)。受取順序と年齢の設計が重要です。
具体例
企業年金のない会社員(第2号)。令和8年12月1日から拠出限度額が月2.3万円→月6.2万円に拡大。年27.6万円→年74.4万円で、限界税率33%なら減税額は年約9.1万円→年約24.6万円に。自営業者(第1号)は国民年金基金等と合算で月6.8万円→7.5万円(年90万円)。

▶ iDeCoの拠出限度額を判定▶ 一時金vs年金受取の有利判定

080

生命保険料控除・地震保険料控除

個人改正
根拠
所得税法76条・77条
要件
新制度(平成24年1月1日以後の契約)は一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3区分で各4万円・合計12万円が上限(住民税は各2.8万円・合計7万円)。地震保険料控除は所得税5万円・住民税2.5万円が上限。
効果
23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除の所得税の上限が4万円→6万円に拡大されます(合計適用限度額12万円は変わりません)。この子育て世帯向けの上乗せは、令和8年度税制改正により令和9年分まで延長されました。
注意
旧制度(平成23年12月31日以前の契約)は一般・個人年金の2区分で各5万円・合計10万円。新旧を合わせる場合の合計上限は12万円。
否認
保険料控除証明書の添付(電子申告は記載)が必要。契約者が本人でも、保険金受取人が本人・配偶者・その他の親族でないと控除の対象外。
具体例
23歳未満の子がいる世帯で一般生命保険料を年10万円支払っている場合、通常は所得税の控除額4万円が上限だが、子育て世帯の上乗せで6万円まで。限界税率30%なら年6,000円の差。この上乗せは令和8年度改正で令和9年分まで1年延長された。

▶ 生命保険料控除を計算

081

医療費控除とセルフメディケーション税制

個人
根拠
所得税法73条、租税特別措置法41条の17の2
要件
医療費控除=(支払医療費-保険金等で補填される金額)-(10万円と総所得金額等の5%のいずれか少ない方)。上限200万円。セルフメディケーション税制=対象OTC医薬品の購入費のうち1万2,000円を超える部分(上限8万8,000円)。健康診断・予防接種等の一定の取組を行っていることが要件。
効果
生計を一にする家族の医療費を合算できるため、所得の高い人がまとめて申告するのが原則有利。総所得金額等が200万円未満の人は5%基準により10万円未満でも控除が受けられる。
注意
医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用(併用不可)。通院の交通費(公共交通機関)、市販の風邪薬、レーシック、歯科自由診療の一部は対象になる一方、健康診断・予防接種・美容目的は対象外です。
否認
医療費通知(健康保険組合の医療費のお知らせ)を使えば明細の記入を省略できるが、自由診療分は別途集計が必要。5年前まで遡って還付申告できます。
なお令和8年度税制改正により、セルフメディケーション税制のうちスイッチOTC医薬品の購入対価に係る部分は適用期限が撤廃(恒久化)され、それ以外の医薬品に係る部分は5年延長されました(対象医薬品の範囲も令和9年分から見直し)。
具体例
総所得400万円の世帯で、年間の医療費が30万円・保険金補填5万円。控除額=(30万円-5万円)-10万円=15万円で、限界税率30%なら約4.5万円の還付。総所得が180万円の人なら足切りは5%=9万円となり、控除額は16万円に増える。生計を一にする家族の分を所得の高い人がまとめて申告するのが基本。

▶ 医療費控除を計算▶ 医療費控除vsセルフメディケーション

082

ふるさと納税(寄附金控除・住民税特例控除)

個人
根拠
所得税法78条、地方税法37条の2・314条の7
要件
確定申告する場合は寄附金受領証明書を添付。確定申告が不要な給与所得者等で寄附先が5団体以内ならワンストップ特例が使える。
効果
寄附額から2,000円を除いた全額が、所得税・住民税から控除される(住民税所得割額の約20%が特例控除の上限)。実質2,000円の負担で返礼品を受け取れる。
注意
令和7年10月1日以降、仲介サイト等が寄附の募集に伴ってポイント等の経済的利益を付与することは禁止されています(通常のクレジットカード決済ポイント等は対象外)。
また、医療費控除や住宅ローン控除を併用すると控除上限額が下がります。ワンストップ特例を申請しても、確定申告をすると特例は無効になるため、申告時にふるさと納税分も必ず記載してください。
否認
上限を超えた寄附は単なる自己負担。年末の駆け込み寄附は、その年の所得が確定してから行うこと。
令和8年度税制改正により、令和10年度分以後の個人住民税から特例控除額に絶対額の上限(道府県民税77万2千円・市町村民税115万8千円。指定都市の住所地はそれぞれ38万6千円・154万4千円)が設けられます。また令和8年10月1日以後に効力を生ずる指定から、寄附金活用可能額が寄附金合計額の60%以上であること等が指定基準に加わります。
具体例
給与収入700万円・扶養なしの会社員なら、ふるさと納税の上限はおおむね10万円前後。10万円寄附すれば9万8,000円が所得税・住民税から控除され、実質負担2,000円で3万円相当の返礼品。ただし医療費控除や住宅ローン控除を併用すると上限が下がるため、年末に所得が確定してから寄附するのが安全。

▶ ふるさと納税の上限目安を計算▶ 寄附金控除(所得税分)

083

住宅ローン控除(令和8年度改正で5年延長・要件緩和)

個人改正
根拠
租税特別措置法41条
要件
控除率は年末残高の0.7%、合計所得2,000万円以下が要件。令和8年〜令和12年に居住した場合の借入限度額は次のとおり(カッコ内は特例対象個人=40歳未満で配偶者がいる人、配偶者が40歳未満の人、19歳未満の扶養親族がいる人)。
【新築等・認定住宅等】認定住宅4,500万円(5,000万円)/ZEH水準省エネ住宅3,500万円(4,500万円)/省エネ基準適合住宅2,000万円(3,000万円)※省エネ基準適合住宅は令和8・9年居住分。控除期間13年。
【既存住宅(認定住宅等)】認定住宅・ZEH水準3,500万円(4,500万円)/省エネ基準適合住宅2,000万円(3,000万円)。控除期間13年。
【上記以外(買取再販住宅・既存住宅の取得・増改築等)】2,000万円・控除期間10年。
床面積要件は原則40㎡以上(40㎡以上50㎡未満の場合、合計所得1,000万円を超える年は適用不可)。
効果
13年間で最大数百万円の税額控除。所得税から引ききれない分は住民税からも控除(上限あり)。
注意
令和8年度税制改正により、既存住宅のうち省エネ性能の高い認定住宅・ZEH水準省エネ住宅に係る借入限度額の引上げ、子育て世帯等への上乗せ措置の対象拡充、床面積要件の緩和が行われたうえで、適用期限が令和12年12月31日まで5年延長されました。なお令和10年1月1日以後に建築確認を受ける新築住宅は、ZEH水準省エネ基準を満たさないと適用できません。また令和10年1月1日以後に居住する場合、災害危険区域等内での新築は原則として適用対象外となります。
否認
初年度は必ず確定申告が必要(2年目以降は年末調整可)。繰上返済で返済期間が10年未満になると、その年以降は適用できません。
具体例
認定長期優良住宅を4,500万円の借入で取得した子育て世帯(特例対象個人)。借入限度額は5,000万円なので年末残高4,500万円×0.7%=初年度31.5万円の税額控除が13年間。省エネ基準適合住宅なら借入限度額は2,000万円(子育て世帯等3,000万円)と大きく下がる。令和10年1月以後の建築確認はZEH水準を満たさないと適用できない。

▶ 住宅ローン控除の完全版(限度額自動判定)

084

雑損控除・災害減免法(被災時の選択)

個人
根拠
所得税法72条、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律
要件
震災・風水害・火災・盗難・横領による生活用資産の損害。控除額は「差引損失額-総所得金額等×10%」と「差引損失額のうち災害関連支出-5万円」のいずれか多い方。
効果
控除しきれない金額は翌年以後3年間繰り越せる。災害の場合は災害減免法(合計所得1,000万円以下で住宅・家財の損害が時価の2分の1以上のとき、所得金額に応じ所得税を全額〜4分の1軽減)との有利な方を選択できる。
注意
詐欺・恐喝による損失は対象外。シロアリ駆除費用等は災害関連支出として認められる場合がある。
否認
損失額の算定には資産の取得時期・取得価額の資料が必要。り災証明書は必ず取得する。
具体例
総所得600万円の人が水害で家財800万円のうち500万円を損失、災害関連支出60万円。雑損控除=①500万円+60万円-600万円×10%=500万円、②60万円-5万円=55万円 のいずれか多い方で500万円。控除しきれない分は翌年以後3年間繰越。災害減免法(所得1,000万円以下で損害が時価の1/2以上なら所得税の全額〜1/4を軽減)との有利判定が必要。

▶ 雑損控除を計算

個人③|給与所得者・役員個人の節税

085

給与所得者の特定支出控除

個人
根拠
所得税法57条の2
要件
①通勤費、②職務上の旅費、③転居費、④研修費、⑤資格取得費(弁護士・公認会計士・税理士等の資格取得費用も対象)、⑥帰宅旅費、⑦勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等。合計65万円が上限)のうち、給与所得控除額の2分の1を超える部分を給与所得から控除できる。給与の支払者の証明書と確定申告が必要。
効果
自己負担で高額な研修・資格取得を行った年に効く。
注意
給与収入600万円なら給与所得控除は164万円、その2分の1の82万円を超えないと1円も控除されません。ハードルは高い制度です。
否認
会社の証明が得られない支出は対象外。会社が費用負担してくれるなら、020(研修費用の会社負担)の方が有利です。
具体例
給与収入600万円の会社員の給与所得控除は164万円。特定支出控除が使えるのはその1/2=82万円を超える部分のみ。資格取得費90万円を自己負担しても控除額は90万円-82万円=8万円にとどまる。会社が研修費として負担してくれるなら、そちらのほうが圧倒的に有利(020参照)。
086

退職金の受取方法(一時金/年金/併用)の最適化

個人
根拠
所得税法30条・31条・35条、所得税法施行令69条の2
要件
退職所得控除=勤続20年以下は40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超は800万円+70万円×(勤続年数-20年)。控除後の金額の2分の1が課税対象で、他の所得と分離課税。
効果
勤続30年なら退職所得控除は1,500万円。同額を給与で受け取る場合と比べて税負担は桁違いに軽い。年金受取(雑所得)にすると公的年金等控除が使えるが、社会保険料の算定対象になる点で不利になることもある。
注意
役員等としての勤続年数が5年以下の場合(特定役員退職手当等)は2分の1課税が適用されません。一般従業員でも勤続5年以下(短期退職手当等)は300万円を超える部分について2分の1課税が使えません。
否認
iDeCo一時金と退職金の受取順序に注意。令和8年1月1日以後に支払を受けるものから、退職所得控除の重複排除の判定期間が「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に拡大されました。先にiDeCoを一時金で受け取り、その後に退職金を受け取る場合、10年空けないと退職所得控除が圧縮されます。
具体例
勤続30年で退職金2,500万円。退職所得控除=800万円+70万円×10年=1,500万円。課税退職所得=(2,500万円-1,500万円)×1/2=500万円で、所得税・住民税は約110万円。同じ2,500万円を給与で受け取ると税・社会保険料で1,000万円超になるため、差は900万円規模。ただし役員等としての勤続5年以下なら1/2課税は使えない。

▶ 退職金の手取り完全計算▶ 一時金vs年金受取▶ 退職金vs給与

087

税制適格ストックオプション

個人
根拠
租税特別措置法29条の2
要件
①付与対象者が自社・子会社の取締役・執行役・使用人等(大口株主等を除く)、②権利行使期間が付与決議日後2年を経過した日から10年(一定の設立5年未満の会社は15年)を経過する日まで、③権利行使価額の年間合計額が原則1,200万円(設立5年未満の株式会社は2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場または上場後5年未満は3,600万円)を超えないこと、④権利行使価額が契約締結時の株式の時価以上、⑤譲渡禁止、⑥一定の保管委託または譲渡制限株式の管理。
効果
権利行使時の経済的利益に課税されず、株式売却時に譲渡所得(20.315%の分離課税)としてのみ課税される。非適格の場合は権利行使時に給与所得(最高55%)として課税されるため、税負担の差は極めて大きい。
注意
要件を1つでも外すと非適格となり、行使時に総合課税されます。設計段階で条文を逐条チェックすること。
否認
付与時の株価算定(特に非上場企業)の合理性が問われます。
具体例
権利行使価額1株1,000円で1万株のストックオプションを付与され、株価3,000円で行使、5,000円で売却。税制適格なら行使時は非課税で、売却時の(5,000円-1,000円)×1万株=4,000万円に20.315%=約813万円の課税。非適格だと行使時に(3,000円-1,000円)×1万株=2,000万円が給与所得となり最高55%=約1,100万円、加えて売却益2,000万円に約406万円で合計1,500万円規模。差は約690万円。
088

還付申告と5年の遡及(申告のし忘れを取り戻す)

個人
根拠
国税通則法74条、所得税法122条
要件
確定申告の義務がない人が還付を受けるための申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できる。
効果
医療費控除、寄附金控除、雑損控除、住宅ローン控除の初年度分、扶養控除の付け忘れなどを、過去5年分まとめて取り戻せる。
注意
すでに確定申告をしている年分については「更正の請求」(法定申告期限から5年以内)となり、手続が異なります。
否認
ふるさと納税のワンストップ特例を申請済みの年に還付申告をすると特例が無効になるため、寄附分も申告書に記載が必要です。
具体例
5年前に住宅ローン控除の初年度申告を忘れていた人が、還付申告で5年分を遡って請求。年30万円の控除なら最大150万円が戻る。医療費控除・扶養控除の付け忘れも同様。すでに確定申告済みの年分は「更正の請求」(法定申告期限から5年以内)になる。

個人④|不動産オーナーの節税

089

不動産所得の「事業的規模」(5棟10室基準)

個人
根拠
所得税基本通達26-9
要件
①独立家屋の貸付けはおおむね5棟以上、②アパート等は貸与できる独立した室数がおおむね10室以上であれば、原則として事業として行われているものとして取り扱う。
効果
事業的規模なら①青色申告特別控除65万円(非事業的規模は10万円)、②青色事業専従者給与が使える、③賃貸用固定資産の取壊し・除却損を全額必要経費にできる(非事業的規模は所得金額を限度)、④貸倒損失を回収不能となった年の必要経費にできる。
注意
駐車場はおおむね5台分を1室として換算するのが実務上の目安。共有物件は持分ではなく全体の室数で判定するのが原則。
否認
形式的に室数を満たしていても、実質的に賃貸事業と認められない場合(自己使用が大半など)は否認され得ます。
具体例
アパート1棟8室+戸建て1戸を所有。戸建て1戸=2室相当ではなく、独立家屋5棟またはアパート10室が基準なので、この規模では事業的規模に届かない可能性が高い。10室以上になれば青色申告特別控除が10万円→65万円に増え、配偶者への専従者給与も使えるようになる。駐車場はおおむね5台で1室相当が実務上の目安。
090

建物と建物附属設備の区分(減価償却の加速)

個人法人
根拠
減価償却資産の耐用年数等に関する省令、法人税基本通達7-1-1以下
要件
売買契約書や工事請負契約書、建築時の見積書等により、建物本体と建物附属設備(電気設備・給排水設備・冷暖房設備・昇降機等)を合理的に区分すること。
効果
建物本体の耐用年数(RC造の住宅用47年)に対し、建物附属設備は15年。取得価額の20〜30%を附属設備に区分できれば、初期の減価償却費が大きく増えます。
注意
平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物は定額法のみ(定率法は選択できません)。区分の根拠資料がないまま任意に按分するのは危険です。
否認
売主が一括金額しか示さない中古物件で、根拠なく「附属設備30%」と按分すると否認リスクがあります。固定資産税評価額比、建築費内訳明細、不動産鑑定等の客観的根拠を用意すること。
具体例
RC造の賃貸マンションを1億円(建物6,000万円・土地4,000万円)で取得。建物本体だけなら耐用年数47年で年約128万円の償却。建築時の内訳明細で建物附属設備を1,500万円(建物の25%)に区分できれば、附属設備は耐用年数15年で年100万円、本体4,500万円は年約96万円となり、初期の償却費は年約196万円と約68万円増える。根拠資料がないまま按分するのは危険。

▶ 減価償却(定額法)を計算▶ 中古資産の耐用年数

091

不動産所得の損益通算と「土地等の負債利子」の除外

個人
根拠
所得税法69条、租税特別措置法41条の4
要件
不動産所得の損失は原則として給与所得等と損益通算できるが、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の損失は損益通算の対象外
効果
建物部分の借入利子・減価償却費による損失は給与所得等と通算でき、源泉徴収された所得税の還付を受けられる。
注意
借入金が土地・建物のいずれに対応するか区分できない場合は、まず建物の取得に充てられたものとする取扱い(納税者有利)があります。
否認
国外中古建物の不動産所得の損失のうち、簡便法等による減価償却費に相当する部分は損益通算できません(措法41条の4の3)。海外不動産による節税スキームは令和3年分以後封じられています。
具体例
給与収入900万円の会社員が賃貸物件で不動産所得△200万円(うち土地取得に係る負債利子80万円)。80万円は損益通算の対象外のため、通算できるのは120万円。限界税率43%なら約51万円の還付(200万円全額なら約86万円)。国外中古建物の簡便法による償却費相当分は令和3年分以後まったく通算できない。
092

居住用財産の3,000万円特別控除と10年超軽減税率

個人
根拠
租税特別措置法35条(3,000万円特別控除)、31条の3(軽減税率)
要件
3,000万円特別控除は所有期間を問わず、自分が住んでいた家屋(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)を売却したとき。軽減税率は所有期間10年超が要件。配偶者・直系血族等の特別の関係にある者への譲渡は不可。前年・前々年に同特例を受けていないこと。
効果
譲渡所得から3,000万円を控除。さらに軽減税率により、課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分は所得税10%・住民税4%(本則は15%・5%)に軽減。両特例は併用できます
注意
この特例を使うと、入居した年とその前2年・後3年に住宅ローン控除が使えません。買換えを伴う場合は必ず有利判定を。
否認
控除の結果、税額がゼロでも確定申告が必要。売却直前だけ住民票を移すような「一時的な入居」は認められません。
具体例
取得費1,500万円(取得から15年)の自宅を6,000万円で売却(譲渡費用200万円)。譲渡益=6,000万円-1,500万円-200万円=4,300万円。3,000万円特別控除で課税長期譲渡所得は1,300万円。所有期間10年超なので軽減税率(所得税10%・住民税4%)が使え、税額は約182万円。特例なしの20%なら約860万円なので約680万円の差。ただし入居年とその前2年・後3年は住宅ローン控除が使えない。

▶ 土地建物の譲渡所得・税額を計算▶ 居住用財産の買換え特例

093

空き家(被相続人の居住用財産)の3,000万円特別控除

個人相続
根拠
租税特別措置法35条3項
要件
昭和56年5月31日以前に建築された家屋、②区分所有建物登記がされていないこと、③相続開始の直前に被相続人以外に居住者がいなかったこと(老人ホーム入所の場合の特例あり)、④売却代金が1億円以下、⑤耐震基準に適合するようリフォームする家屋を取り壊して売却すること(売買契約後・譲渡の翌年2月15日までの実施も可)、⑥相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却。
効果
譲渡所得から最高3,000万円を控除。相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡)。
注意
適用期限は令和9年12月31日までの譲渡。市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要で、取得に時間がかかるため早めに動くこと。
否認
相続後に賃貸に出した、事業に使った、他の親族が住んだ——いずれも適用不可。取得費加算の特例(096)とは選択適用です。
具体例
昭和55年築の実家を相続し、家屋を取り壊して土地を4,000万円で売却(取得費不明のため概算取得費5%=200万円、譲渡費用300万円)。譲渡益3,500万円から3,000万円を控除して課税所得500万円、税額は約101万円(長期20.315%)。特例なしなら約711万円で約610万円の差。相続人が3人以上なら控除は1人2,000万円。市区町村の確認書取得に時間がかかるので早めに動く。
094

相続財産を譲渡した場合の取得費加算

個人相続
根拠
租税特別措置法39条
要件
①相続・遺贈により財産を取得し相続税が課税されていること、②相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡すること。
効果
加算額=納付した相続税額×(譲渡した財産の相続税評価額÷その者の相続税の課税価格)。取得費が増えるため譲渡所得税が減ります。実質的に相続開始から約3年10か月が期限。
注意
譲渡所得の金額を超えて加算することはできません。事業所得・雑所得には適用されません。
否認
相続税が0円(基礎控除内・配偶者の税額軽減で0)の場合は加算額も0。空き家3,000万円控除との選択判定が必要です。
具体例
相続税を2,000万円納付し、課税価格1億円のうち相続税評価額3,000万円の土地を売却。取得費加算額=2,000万円×3,000万円÷1億円=600万円。譲渡益が2,000万円なら1,400万円まで圧縮され、約122万円の税負担減(長期20.315%)。期限は相続税の申告期限の翌日から3年=相続開始から約3年10か月

▶ 相続財産の取得費加算を計算

個人⑤|株式・金融所得・暗号資産

095

NISA(令和8年度改正で0〜17歳のつみたて枠を新設)

個人改正
根拠
租税特別措置法37条の14
要件
18歳以上:つみたて投資枠年120万円、成長投資枠年240万円、非課税保有限度額1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)。令和8年度税制改正により非課税口座の開設可能年齢の下限が撤廃され、令和9年以後の各年について、0〜17歳の居住者にはつみたて投資枠(未成年者特定累積投資勘定)として年間投資枠60万円・非課税保有限度額600万円が設けられます。
効果
運用益・配当が非課税。売却すれば翌年に非課税保有限度額が復活する。
注意
NISA口座内の損失は、他の口座の譲渡益・配当と損益通算できず、繰越控除もできません。損失が出ても税務上は無かったものとして扱われます。
否認
未成年者口座は、原則として3月31日時点で18歳となる年の前年12月31日までは払出しができません(12歳時点以降は学費・生活費等の特定事由による払出しは可)。取扱いに反する払出しをすると、その時点で譲渡・配当があったものとして20%が源泉徴収されます。詳細は政省令で定められるため、開設前に金融機関・金融庁の最新情報をご確認ください。
具体例
18歳以上はつみたて120万円+成長240万円で年360万円、生涯1,800万円。令和9年以後は0〜17歳の子にもつみたて枠(年60万円・生涯600万円)が使える。夫婦+子2人なら家族合計で生涯4,800万円を非課税で運用できる計算。ただしNISA口座の損失は他口座と損益通算できず繰越控除もできない。

▶ 新NISAの非課税枠管理

096

上場株式等の損益通算と3年繰越控除

個人
根拠
租税特別措置法37条の12の2
要件
上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得・利子所得と損益通算できる。控除しきれない金額は翌年以後3年間繰り越せるが、損失が生じた年およびその後の各年について連続して確定申告することが要件。
効果
年末に含み損のある銘柄を売却して利益と相殺すれば、その年の税負担(20.315%)を軽減できる。
注意
複数の証券会社の特定口座(源泉あり)を使っている場合、確定申告することで口座をまたいだ損益通算ができます。ただし申告すると合計所得金額が増え、国民健康保険料・扶養判定・各種控除に影響する点に注意。
否認
1年でも申告を飛ばすと繰越しが打ち切られます。損失の年も必ず申告してください。
具体例
A証券で譲渡益200万円、B証券で譲渡損150万円。特定口座(源泉あり)だとA証券で約40.6万円が源泉徴収されるが、確定申告して口座をまたいで通算すれば課税対象は50万円となり、約30.5万円が還付。損失が残る場合は3年繰越できるが、損失の年も含めて毎年申告し続けることが条件。

▶ 上場株式の譲渡損失の繰越控除▶ 上場株式等の譲渡(申告分離)

097

配当所得の課税方式の選択(総合課税・申告分離・申告不要)

個人
根拠
所得税法92条(配当控除)、租税特別措置法8条の4・8条の5
要件
上場株式等の配当は①申告不要(源泉20.315%で完結)、②申告分離課税(譲渡損失と通算可)、③総合課税(配当控除が使える)から選択。
効果
課税総所得金額が1,000万円以下なら配当控除(所得税10%・住民税2.8%)が大きく、課税所得が概ね695万円以下の人は総合課税が有利になるケースが多い。
注意
令和5年分以後、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することはできなくなりました。総合課税を選ぶと住民税も総合課税となり、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の算定にも影響します。
否認
非上場株式の配当(少額配当)は所得税では申告不要にできても、住民税では必ず申告が必要です。
具体例
課税所得500万円(限界税率20%+住民税10%)の人が上場株式の配当を100万円受領。①申告不要なら20.315%=約20.3万円。②総合課税なら所得税20%+住民税10%=30万円だが、配当控除(所得税10%・住民税2.8%)で12.8万円が控除され約17.2万円。この水準では総合課税が有利。ただし合計所得が増えるため国民健康保険料への影響も確認する。

▶ 配当の課税方式の有利判定▶ 配当控除を計算

098

極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(ミニマムタックス)

個人改正
根拠
租税特別措置法41条の19
要件
基準所得金額(申告不要制度を適用しない合計所得金額等)から特別控除額を差し引いた金額に一定税率を乗じた額が、通常の所得税額を超える場合、その差額を追加で納付する。
効果
—(増税措置)。令和8年度税制改正により、特別控除額が3億3,000万円から1億6,500万円に引き下げられ、税率が22.5%から30%に引き上げられます。
注意
株式譲渡益・土地建物の譲渡益など分離課税の所得が大きい年に発動します。事業売却・不動産売却・上場益がある年は必ず試算を。令和9年分以後に適用されるため、令和8年中の譲渡には従来の基準(特別控除3億3,000万円・税率22.5%)が適用されます。
否認
この見直しは令和9年分以後の所得税について適用されます。大口の譲渡を予定している場合、譲渡の年をまたぐ設計が有効な場合があります。
具体例
事業売却で株式譲渡益8億円が出た年。基準所得金額8億円-特別控除1億6,500万円=6億3,500万円×30%=1億9,050万円。通常の申告分離課税20.315%=1億6,252万円を上回るため、差額約2,798万円を追加納付。改正前(控除3億3,000万円・税率22.5%)なら追加納付は生じなかった。適用は令和9年分以後のため、令和8年中の譲渡には従来基準が適用される。

消費税|有利選択と令和8年の重要期限

令和8年は消費税の分岐点です。インボイスの2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間が最後(個人事業者は令和8年分が最終)。令和8年10月からは免税事業者からの仕入れの経過措置も8割控除から7割控除に下がります。次の課税期間に向けた選択届出の提出期限を今すぐ確認してください。
099

2割特例(令和8年9月末で終了)と個人事業者の3割特例

消費税改正
根拠
平成28年改正法附則51条の2(2割特例)、令和8年度税制改正(3割特例)
要件
2割特例=免税事業者がインボイス発行事業者となったことにより課税事業者となった者。適用できるのは令和8年9月30日を含む課税期間まで
3割特例(令和8年度改正で創設)=2割特例の終了後、個人事業者について、これまで2割特例の対象となっていた者も含め、納税額を売上税額の3割とすることができる措置を2年間(令和9年分・令和10年分)講じる。
効果
納付税額=売上に係る消費税額×20%(または30%)。仕入れの集計もインボイスの保存も不要で、事務負担が大幅に軽くなる。
注意
2割特例は事前届出不要で、申告書に付記するだけで課税期間ごとに選択できます。3割特例は法人には適用されないため、法人は令和8年10月以後、本則課税か簡易課税かの選択が必須になります。
否認
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた課税期間や、調整対象固定資産・高額特定資産を取得して納税義務が免除されない課税期間は2割特例を使えません。
具体例
課税売上1,000万円(消費税100万円)・課税仕入400万円(消費税40万円)の個人事業者。①本則課税なら納付60万円、②簡易課税(第5種50%)なら50万円、③2割特例なら20万円。ただし2割特例は令和8年分が最後。令和9年・10年分は個人事業者に限り3割特例(30万円)が使え、令和11年分からは簡易課税か本則課税を選ぶことになる。

▶ インボイス2割特例を計算▶ 簡易課税vs本則vs2割特例▶ インボイス制度 完全ガイド

100

簡易課税制度の選択(みなし仕入率6区分)

消費税
根拠
消費税法37条
要件
基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、原則として適用しようとする課税期間の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出。みなし仕入率は第1種(卸売業)90%、第2種(小売業等)80%、第3種(製造業・建設業等)70%、第4種(その他・飲食店業等)60%、第5種(サービス業等)50%、第6種(不動産業)40%。
効果
実際の仕入れにかかわらず、みなし仕入率で仕入税額控除を計算。仕入れが少ない業種(サービス業・不動産業でも実際の課税仕入割合が低い場合)は本則課税より有利になることが多い。
注意
いったん選択すると2年間は継続適用(2年縛り)。大規模な設備投資を予定している課税期間は還付を受けられないため、必ず先に投資計画を確認すること。2種類以上の事業を営む場合の加重平均計算にも注意。
否認
事業区分の判定誤りが調査で最も多い論点。同じ「製造」でも、材料支給を受けた加工賃は第4種になるなど、判定は細かい。
具体例
課税売上3,000万円のサービス業(第5種・みなし仕入率50%)。実際の課税仕入が800万円なら、①本則課税=300万円-80万円=220万円、②簡易課税=300万円×(1-50%)=150万円で簡易課税が70万円有利。逆に翌期に5,000万円の設備投資を予定しているなら本則課税なら還付が受けられるため、選択届出の前に投資計画を必ず確認する。

▶ 簡易課税(単一事業)▶ 簡易課税(加重平均・2事業)

101

免税事業者からの仕入れの経過措置(令和8年度改正で2年延長・7割へ)

消費税改正
根拠
平成28年改正法附則52条・53条、令和8年度税制改正
要件
インボイス発行事業者以外(免税事業者等)からの課税仕入れについて、一定割合を仕入税額とみなす経過措置。令和8年度改正により最終的な適用期限が2年延長され、引下げのペースが緩和されました。
・令和8年10月〜 → 7割控除
・令和10年10月〜 → 5割控除
・令和12年10月〜令和13年9月末 → 3割控除
・令和13年10月〜 → 控除不可
効果
免税事業者との取引を続けても、当面は仕入税額の一定割合を控除できる。
注意
1つの免税事業者ごとの年間適用上限仕入額が10億円から1億円に引き下げられます(令和8年10月1日以後開始課税期間から)。大口の免税事業者と取引がある場合は影響を試算してください。
否認
経過措置の適用には、区分記載請求書等と同様の記載事項がある請求書等の保存と、帳簿への経過措置の適用を受ける旨の記載が必要です。
具体例
免税事業者の外注先へ年間1,100万円(税込)を支払う会社。仕入税額100万円のうち、令和8年9月までは80%=80万円、令和8年10月からは70%=70万円が控除でき、控除できない30万円が実質コストになる。改正前の予定(令和8年10月から50%)より20万円分ゆるやかになった。年間の課税仕入が1億円を超える免税事業者との取引は超過部分がこの経過措置の対象外になる。

▶ インボイス経過措置を計算

102

少額特例(1万円未満)と少額な返還インボイス

消費税
根拠
平成28年改正法附則53条の2(少額特例)、消費税法57条の4第4項(返還インボイス)
要件
少額特例=基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存を要せず帳簿の保存のみで仕入税額控除ができる。令和11年9月30日まで
少額な返還インボイス=税込1万円未満の売上げに係る対価の返還等(振込手数料相当額の値引き等)は返還インボイスの交付義務が免除される(期限の定めなし=恒久措置)。
効果
少額経費の事務処理が劇的に軽くなる。振込手数料を売上値引き処理すれば、返還インボイスの発行が不要。
注意
1万円未満の判定は1回の取引の合計額で行います(1商品ごとではありません)。
否認
少額特例は期限つき。令和11年10月以後はすべての課税仕入れでインボイスの保存が必要になります。
具体例
基準期間の課税売上が8,000万円の会社。1万円未満の課税仕入はインボイス不要で帳簿保存のみで控除できるため、少額の交通費・書籍・備品の領収書管理が大幅に軽くなる(令和11年9月30日まで)。また振込手数料440円を売上値引きとして処理すれば、1万円未満の返還インボイスは交付義務が免除(こちらは期限なし)。
103

課税事業者選択による還付(設備投資・輸出)と2年・3年の縛り

消費税
根拠
消費税法9条4項〜7項、12条の4、37条3項
要件
免税事業者が「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、本則課税で申告すること。
効果
多額の設備投資(建物取得等)や輸出売上がある課税期間は、仕入税額が売上税額を上回り還付を受けられる。
注意
2年縛り=課税事業者を選択すると原則2年間は免税事業者に戻れない。3年縛り=その2年間に調整対象固定資産(税抜100万円以上の固定資産)を本則課税で取得すると、取得日の属する課税期間から3年間は免税事業者にも簡易課税にもなれない。また高額特定資産(税抜1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産)を取得した場合も、理由を問わず3年間の縛りがかかります。
否認
還付を受けた後すぐに免税や簡易課税へ戻ろうとして縛りに引っかかる失敗が非常に多い。3年間トータルでの有利判定が必須です。
具体例
免税事業者が5,000万円(税込5,500万円)の賃貸用建物を取得する期に課税事業者を選択し本則課税で申告すると、約500万円の還付。ただし調整対象固定資産に該当するため取得日の属する課税期間から3年間は免税にも簡易課税にも戻れない。その3年間の納付見込みが還付額を上回るなら、そもそも選択しないほうが有利になる。

▶ 消費税本則課税の納付税額▶ 課税事業者の判定フロー

104

個別対応方式と一括比例配分方式の有利選択

消費税
根拠
消費税法30条2項
要件
課税売上割合が95%未満、または課税売上高が5億円超の課税期間は、仕入税額控除の計算に個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかを適用する。一括比例配分方式を選択したら2年間は継続適用が必要。
効果
課税売上対応の課税仕入れが多い場合は個別対応方式が有利。区分経理の手間を惜しむと数十万〜数百万円の控除を失うことがある。
注意
個別対応方式には、課税仕入れを「課税売上対応」「非課税売上対応」「共通対応」の3つに区分する経理が必要。土地の譲渡・受取利息・社宅家賃がある事業者は要注意。
否認
区分が不明確な仕入れを「課税売上対応」に寄せると否認されます。区分の根拠を残すこと。
具体例
課税売上4億円・非課税売上(土地の譲渡)1億円で課税売上割合80%の会社。共通対応の課税仕入に係る税額が1,000万円、課税売上対応が3,000万円の場合、①個別対応方式=3,000万円+1,000万円×80%=3,800万円、②一括比例配分方式=4,000万円×80%=3,200万円個別対応方式のほうが600万円多く控除できる。区分経理の手間を惜しむと差がそのまま損になる。

▶ 個別対応方式vs一括比例配分方式▶ 課税売上割合を計算

105

免税事業者→課税事業者になるときの棚卸資産の調整

消費税
根拠
消費税法36条
要件
免税事業者が課税事業者になった場合、その課税期間の初日の前日において有する棚卸資産のうち、免税期間中の課税仕入れに係るものについて、その消費税額を仕入税額控除の対象にできる。明細書の保存が必要。
効果
在庫の多い小売業・卸売業では数十万円規模の控除になることがある。見落としが非常に多い規定。
注意
逆に課税事業者から免税事業者になる場合は、期末棚卸資産に係る消費税額を控除できなくなる調整が必要です。
否認
2割特例・簡易課税を適用する課税期間には、この調整は適用されません。
具体例
免税事業者だった小売業が課税事業者になった期の初日前日に、税込1,100万円の棚卸資産を保有。100万円を仕入税額控除の対象にできる。見落としが非常に多く、そのまま申告すると100万円多く納税することになる。ただし2割特例や簡易課税を適用する課税期間には使えない。

▶ 棚卸資産の調整を計算

社会保険料の適正化(税金より重い負担への対策)

中小企業の実質的な負担は、法人税より社会保険料の方が大きいことがよくあります。厚生年金18.3%+健康保険(協会けんぽ東京の令和8年度は9.85%、介護保険第2号該当者は11.47%)+子ども・子育て支援金0.23%を労使で折半——給与の約30%が保険料です。ここでの「適正化」は、脱法ではなく制度の仕組みに沿って設計することを意味します。

106

標準報酬月額の決定・改定の仕組みを踏まえた報酬設計

社保
根拠
健康保険法41条・43条、厚生年金保険法21条・23条
要件
定時決定=毎年4〜6月に支払われた報酬の平均で標準報酬月額を決定し、原則としてその年9月から翌年8月まで適用。随時改定=固定的賃金の変動があり、変動月以後3か月の報酬平均による標準報酬月額が従前と2等級以上の差が生じたときに改定。
効果
役員報酬の改定時期(事業年度開始から3か月以内)と定時決定の対象月(4〜6月)の関係を理解しておくことで、無理のない範囲で保険料の水準を設計できる。残業が集中する月が4〜6月に偏る場合は、業務の平準化自体が保険料対策になる。
注意
標準報酬月額が下がると、将来の老齢厚生年金・傷病手当金・出産手当金・遺族年金もすべて下がります。目先の保険料だけで判断しないこと。
否認
実態と異なる届出(4〜6月だけ意図的に報酬を下げる、届出をしない)は虚偽の届出として年金事務所の調査対象です。遡及して保険料を徴収されます。
具体例
4〜6月に繁忙期が重なり残業代が月10万円上乗せされる部署。基本給30万円でも定時決定の基礎は平均40万円となり、標準報酬月額が上がって9月から翌年8月まで保険料が高いまま固定される。労使合計の料率を約30%とすると、等級差が2等級で月6万円違えば年約21.6万円の差。業務の平準化そのものが保険料対策になる。

▶ 随時改定(月額変更届)の判定▶ 社会保険料の詳細計算

107

標準報酬月額の上限引上げへの備え(令和9年〜令和11年)

社保改正
根拠
令和7年6月成立の年金制度改正法(国民年金法等の一部を改正する等の法律)
要件
厚生年金保険の標準報酬月額の上限(現在65万円)が、令和9年9月に68万円、令和10年9月に71万円、令和11年9月に75万円へ3段階で引き上げられます。健康保険の上限は現在50等級139万円。
効果
—(負担増)。高額報酬の役員は保険料負担が増える一方、将来の年金額も増えます。
注意
報酬月額63.5万円以上の役員がいる法人は、令和9年9月以降の法人負担増を中期の資金計画に織り込むこと。役員報酬と役員退職金・企業年金の配分見直しの検討時期です。
否認
具体例
月額報酬70万円の役員。現在の厚生年金の標準報酬月額は上限65万円で頭打ちだが、令和9年9月に68万円、令和10年9月に71万円へ引き上げられる。65万円→71万円で6万円分×18.3%=月10,980円(労使合計)、年約13.2万円の負担増。役員が3名いれば年約40万円のコスト増を中期計画に織り込む必要がある。

▶ 老齢厚生年金の簡易試算

108

賞与に係る社会保険料の上限(報酬と賞与の配分)

社保
根拠
健康保険法45条、厚生年金保険法24条の4
要件
標準賞与額の上限は、健康保険が年度累計573万円厚生年金保険が1か月あたり150万円。役員賞与を損金にするには事前確定届出給与(002)の届出が必須。
効果
報酬の一部を事前確定届出給与として賞与で支給すると、上限を超える部分について社会保険料がかからない設計が理論上は可能。
注意
年4回以上支給される賞与は「報酬」として標準報酬月額に算入されます(年3回以下が賞与)。また将来の年金額が下がる点、届出どおり1円の狂いもなく支給しなければ全額損金不算入になる点(002)に注意。
否認
年金事務所は極端な「低月額報酬+高額賞与」の設計を実質的な報酬の分割と見て調査することがあります。合理的な報酬体系の説明ができることが前提です。
具体例
年間報酬1,800万円の役員を、①月150万円×12 と ②月50万円×12+事前確定届出給与1,200万円 で比較。②では厚生年金の標準賞与額が1か月150万円で頭打ちのため、賞与1,200万円のうち1,050万円が厚生年金の対象外で18.3%=約192万円の圧縮。ただし健康保険は年度累計573万円まで対象で、将来の年金額も下がる。年金事務所から実質的な報酬の分割と見られないよう、合理的な報酬体系の説明が必要。

▶ 賞与の社会保険料を計算

109

非課税・保険料対象外の手当への振替(社宅・日当・DC)

社保法人
根拠
健康保険法3条5項(報酬の定義)、所得税基本通達36-40以下
要件
①社宅(008・015)、②出張日当(010)、③企業型DC・iDeCo+の事業主掛金(022)は、いずれも所得税が非課税または給与でないため、社会保険料の算定基礎に含まれません
効果
同じ人件費でも、現金給与から上記へ振り替えることで、法人・従業員双方の社会保険料負担が下がる。
注意
通勤手当は所得税では非課税でも、社会保険では報酬に含まれます。ここを取り違えないこと。現物給与(社宅)は都道府県ごとの現物給与価額により報酬に算入される場合があります(本人から相当額を徴収していれば算入されません)。
否認
賃金規程を改定せずに手当だけ付け替える処理は、労務トラブルと社会保険の遡及徴収のリスクがあります。
具体例
月給50万円の従業員に、①そのまま5万円昇給 と ②社宅(会社負担5万円)を提供 で比較。①は年60万円が課税+社会保険料の対象となり、本人の手取り増は約36万円、会社は社会保険料の会社負担分で年約9万円の追加負担。②は会社負担分が非課税かつ保険料の対象外なので、本人は実質60万円分の効果、会社の追加負担はゼロ。通勤手当は所得税で非課税でも社会保険では報酬に含まれる点に注意。

相続税・贈与税の節税

相続対策は「①評価を下げる ②財産を移す ③納税資金を作る」の3本柱です。効果が最も大きいのは小規模宅地等の特例生命保険の非課税枠ですが、いずれも相続開始後には作れません。生前に手を打てるかどうかがすべてです。

110

相続税の基礎控除と法定相続人の数(養子の算入制限)

相続
根拠
相続税法15条・16条
要件
基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数。法定相続人の数に算入できる養子は、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで。相続放棄があっても放棄がなかったものとして数える。
効果
養子縁組により法定相続人が1人増えれば、基礎控除が600万円増え、生命保険金・死亡退職金の非課税枠も各500万円ずつ増える。さらに相続税の総額計算で法定相続分に応じた税率が下がるため、累進緩和の効果も大きい。
注意
孫を養子にすると相続税額が2割加算されます(代襲相続人である孫を除く)。また民法上の相続人が増えることで遺産分割が複雑化するリスクがあります。
否認
相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その養子は法定相続人の数に算入されません(相法63条)。縁組の目的・実態が問われます。
具体例
法定相続人が配偶者と子2人の計3人なら基礎控除=3,000万円+600万円×3=4,800万円。孫1人を養子にして4人になると5,400万円で600万円増え、生命保険金・死亡退職金の非課税枠も各500万円ずつ増える。ただし孫養子は相続税額が2割加算される。

▶ 相続税の基礎控除を計算▶ 相続税の一気通貫シミュレーション

111

配偶者の税額軽減と二次相続まで含めた分割設計

相続
根拠
相続税法19条の2
要件
配偶者が取得した遺産のうち、1億6,000万円配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからない。原則として申告期限までに遺産分割が確定していること(未分割の場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、分割確定後に更正の請求ができる)。
効果
一次相続の税額を大幅に、場合によってはゼロにできる。
注意
配偶者に寄せすぎると二次相続で税額が跳ね上がります。二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、法定相続人も1人減るため基礎控除も600万円減ります。一次・二次の合計税額が最小になる分割割合を必ず試算してください。
否認
仮装・隠蔽された財産には適用されません。税額が0円でも申告書の提出は必要です。
具体例
遺産1億6,000万円、相続人が配偶者と子1人。①配偶者が全額取得すると一次相続の税額は0円だが、配偶者に相続財産が丸ごと残るため二次相続で基礎控除3,600万円しか使えず、税額は約3,260万円。②法定相続分どおり8,000万円ずつなら一次で約1,070万円(配偶者分は軽減で0円)、二次は約680万円で合計約1,750万円。②のほうが1,500万円前後有利になる。

▶ 配偶者の税額軽減を計算▶ 二次相続まで含めた最適化シミュレーション

112

小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等・330㎡まで80%減)

相続
根拠
租税特別措置法69条の4
要件
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等を、①配偶者が取得(無条件)、②同居親族が取得し申告期限まで居住・所有を継続、③一定の別居親族(家なき子)が取得——のいずれか。
効果
330㎡まで評価額を80%減額。自宅の土地評価が1億円なら8,000万円の減額。相続税対策で最も効果が大きい制度。
注意
原則として申告期限までに遺産分割が確定していることが必要(未分割なら分割見込書を提出)。特定事業用(400㎡)とは完全併用(合計730㎡)できますが、貸付事業用と併用する場合は面積の調整計算が必要です。
否認
二世帯住宅は区分所有登記がされていると同居と認められません(共有登記なら可)。老人ホーム入居の場合は、要介護認定等を受けていること、自宅を賃貸に出していないこと等が条件。
具体例
路線価ベースで1億円の自宅土地(300㎡)を配偶者または同居の子が取得。330㎡まで80%減額されるため評価額は2,000万円になり、8,000万円の圧縮。相続税の限界税率が30%なら約2,400万円の節税。ただし申告期限までに遺産分割が確定していることが原則要件(未分割なら分割見込書を提出)。

▶ 小規模宅地等の特例を計算

113

小規模宅地等の特例(特定事業用400㎡80%・貸付事業用200㎡50%)

相続
根拠
租税特別措置法69条の4
要件
特定事業用宅地等=被相続人等の事業(不動産貸付業等を除く)用の宅地を親族が取得し、申告期限まで事業を継続・保有。特定同族会社事業用宅地等=被相続人等が50%超を保有する法人の事業用宅地。貸付事業用宅地等=不動産貸付業・駐車場業等の用に供されていた宅地。
効果
特定事業用・特定同族会社事業用は400㎡まで80%減額、貸付事業用は200㎡まで50%減額
注意
相続開始前3年以内に新たに事業(貸付事業)の用に供された宅地は原則として対象外(一定規模以上の事業を行っていた場合等の例外あり)。相続直前の駆け込みアパート建築は封じられています。
否認
特定同族会社事業用は、相続人が申告期限においてその法人の役員であることが要件。役員登記を忘れると適用できません。
具体例
賃貸アパートの敷地300㎡・評価額9,000万円。貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減額なので、9,000万円×200/300×50%=3,000万円の減額。ただし相続開始前3年以内に新たに貸付けを開始した宅地は原則対象外で、相続直前の駆け込みアパート建築は使えない
114

家なき子特例(別居親族が小規模宅地の特例を使う)

相続
根拠
租税特別措置法69条の4第3項2号ロ
要件
①被相続人に配偶者がいない、②被相続人と同居していた相続人がいない、③取得者が相続開始前3年以内に自己・自己の配偶者・三親等内の親族・特別の関係にある法人が所有する家屋に居住したことがない、④相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがない、⑤申告期限まで保有を継続、⑥日本国籍等の要件。
効果
実家を離れた子でも、330㎡まで80%減額が受けられる。
注意
平成30年度改正で、③④の要件が追加され、いわゆる「持ち家を親族の法人に売って賃貸に住む」対策は封じられました。
否認
親名義の家に住んでいる、自分がかつて所有していた家に住んでいる(売却して住み続けている)——いずれも不可。
具体例
父が亡くなり、母はすでに他界、同居の相続人もいない。長男は10年前から借家住まいで、自己・配偶者・三親等内の親族等が所有する家屋に住んだことがなく、現在住む家を過去に所有したこともない。この場合は家なき子として330㎡まで80%減額が使える。実家を法人に売って賃貸で住み続ける形は平成30年度改正で封じられた。
115

生命保険金・死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人)

相続
根拠
相続税法12条1項5号・6号
要件
被相続人が保険料を負担していた生命保険金を相続人が受け取った場合、および被相続人の死亡退職金を相続人が受け取った場合。それぞれ別枠で「500万円×法定相続人の数」まで非課税。
効果
法定相続人が3人なら、生命保険で1,500万円、死亡退職金で1,500万円、合計3,000万円が非課税。現預金のまま持っているより明らかに有利で、かつ受取人固有の財産として遺産分割の対象外となり、納税資金・代償分割資金として即座に使えます。
注意
相続放棄した人や相続人でない人(孫等)が受け取ると非課税枠は使えません。契約形態(契約者・被保険者・受取人)により相続税・所得税・贈与税のどれになるかが変わります。
否認
弔慰金は「業務上の死亡は月額報酬の3年分、業務外は6か月分」までが非課税で、超える部分は退職手当金等として扱われます(相基通3-20)。
具体例
相続人3人・遺産2億円のうち3,000万円を生命保険で準備。非課税枠=500万円×3人=1,500万円で、課税されるのは1,500万円のみ。現預金3,000万円のまま持っていた場合と比べ、相続税の限界税率30%なら約450万円の節税。加えて保険金は受取人固有の財産なので遺産分割を待たずに納税資金として使える。死亡退職金にも別枠で1,500万円の非課税枠がある。

▶ 生命保険金・死亡退職金の非課税を計算

116

暦年贈与(年110万円)と生前贈与加算7年ルールの経過措置

贈与
根拠
相続税法19条・21条の5、租税特別措置法70条の2の4、令和5年改正法附則19条
要件
贈与税の基礎控除は受贈者1人あたり年110万円。相続開始前の一定期間の贈与は相続財産に加算される。加算期間は相続開始日により段階的に変わります。
・相続開始が令和8年12月31日まで → 相続開始前3年
・相続開始が令和9年1月1日〜令和12年12月31日令和6年1月1日から相続開始日まで
・相続開始が令和13年1月1日以後 → 相続開始前7年
延長された4年分(3年超7年以内)の贈与については、総額100万円まで加算対象外
効果
相続人以外(孫・子の配偶者など)への贈与は原則として加算対象外。長期・多人数で行えば効果は大きい。
注意
「毎年110万円を10年間贈与する」と最初に約束していると、その約束をした年に定期金に関する権利の贈与があったものとして一括課税されます(国税庁タックスアンサーNo.4402)。
否認
①贈与契約書がない、②受贈者が口座を管理していない、③贈与者が通帳・印鑑を保管——これらは名義預金として相続財産に取り込まれます。贈与のたびに契約書を作り、受贈者名義の口座へ振込み、受贈者本人が管理してください。
具体例
子2人・孫2人の計4人へ毎年110万円ずつ10年間贈与すると総額4,400万円を無税で移転できる。相続財産が2億円で限界税率30%なら約1,320万円の節税。孫は相続人でないため生前贈与加算の対象外(遺贈や保険金の受取がある場合を除く)。「毎年110万円を10年間贈与する」と最初に約束すると、その年に定期金の贈与として一括課税されるので、毎年ごとに契約書を作る。

▶ 生前贈与加算(7年ルール)を計算▶ 生前贈与の有利判定(最適贈与額の探索)

117

相続時精算課税(年110万円の基礎控除つき)

贈与
根拠
相続税法21条の9〜21条の16、租税特別措置法70条の2の6
要件
60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与。「相続時精算課税選択届出書」を贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に提出。特別控除は累計2,500万円、超過部分は一律20%課税。
効果
令和6年1月1日以後の贈与から、毎年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以下の部分は相続財産に加算されず、申告も不要です。暦年贈与の生前贈与加算(116)が7年に延びたことで、相続が近い高齢者からの贈与は精算課税の方が有利になるケースが増えています。値上がりが見込まれる資産(自社株等)を低い評価額で移せる点も大きい。
注意
一度選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税に戻れません。贈与者ごとに選択できるため、「父からは精算課税、母からは暦年課税」という設計は可能です。
否認
精算課税で贈与した宅地は原則として小規模宅地等の特例が使えません。自宅の土地を精算課税で贈与すると、112の80%減額を失う可能性があります。
具体例
父(68歳)から子へ自社株3,000万円を相続時精算課税で贈与。基礎控除110万円+特別控除2,500万円で、課税されるのは390万円×20%=78万円。相続時には贈与時の評価額で加算されるため、株価が将来1億円になっても3,000万円-110万円で計算される。逆に暦年課税なら7年(経過措置あり)の生前贈与加算がかかる。ただし精算課税で贈与した宅地には小規模宅地等の特例が使えない

▶ 相続時精算課税を計算▶ 暦年贈与vs相続時精算課税

118

住宅取得等資金の贈与の非課税(令和8年12月31日まで)

贈与
根拠
租税特別措置法70条の2
要件
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け、贈与年の翌年3月15日までに住宅を取得して居住(見込み)すること。受贈者は18歳以上、合計所得金額2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)。
効果
非課税限度額は省エネ等住宅1,000万円、それ以外500万円。暦年課税の基礎控除110万円や相続時精算課税と併用できます。
注意
適用期限は令和8年(2026年)12月31日までの贈与。非課税枠を使った金額は生前贈与加算の対象外です。
否認
贈与を受けた資金で住宅ローンを返済しても対象外(あくまで取得資金)。税額が0円でも贈与税の申告が必須です。
具体例
父母から住宅取得資金として1,110万円の贈与を受け、省エネ等住宅を取得。非課税枠1,000万円+暦年課税の基礎控除110万円で贈与税は0円。同額を通常の贈与で受けると、基礎控除後1,000万円に特例税率30%・控除額90万円で210万円の贈与税。しかも非課税枠を使った分は生前贈与加算の対象外。適用期限は令和8年12月31日までの贈与。

▶ 住宅取得等資金の贈与を計算

119

教育資金・結婚子育て資金の一括贈与(教育資金は令和8年3月末で終了)

贈与改正
根拠
租税特別措置法70条の2の2(教育資金)・70条の2の3(結婚・子育て資金)
要件
教育資金の一括贈与:非課税枠1,500万円(学校等以外への支払いは500万円が内数)、受贈者は30歳未満。令和8年度税制改正により、適用期限(令和8年3月31日)は延長されず終了しました。令和8年3月31日までに拠出済みの信託受益権・金銭等については引き続き特例が適用されます。
結婚・子育て資金の一括贈与:非課税枠1,000万円(結婚関係は300万円が内数)、受贈者は18歳以上50歳未満、前年の合計所得1,000万円以下。適用期限は令和9年3月31日まで。
効果
まとまった資金を一括で非課税移転できる。
注意
教育資金は受贈者が30歳に達した時点の残額に贈与税が課されます(在学中等の例外あり)。また贈与者が死亡した場合、一定の残額は相続財産に加算されます。
否認
そもそも扶養義務者間で必要の都度支払う教育費・生活費は非課税(相法21条の3)です。孫の学費をその都度支払うだけなら、制度を使わなくても課税されません。
具体例
孫3人に教育資金1,500万円ずつ拠出したかったが、令和8年3月31日で制度は終了。ただし扶養義務者間で必要の都度支払う教育費はもともと非課税(相法21条の3)なので、孫の学費を毎年その都度支払えば制度がなくても課税されない。結婚・子育て資金の一括贈与(1,000万円)は令和9年3月31日まで利用できる。

▶ 教育資金・結婚子育て資金の一括贈与を計算

120

贈与税の配偶者控除(おしどり贈与・2,000万円)

贈与
根拠
相続税法21条の6
要件
婚姻期間20年以上の配偶者からの贈与、②居住用不動産またはその取得資金、③贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し、その後も引き続き居住する見込みであること、④贈与税の申告をすること。
効果
基礎控除110万円とは別に最高2,000万円を控除(合計2,110万円)。この贈与は生前贈与加算の対象外です。
注意
同一の配偶者からは一生に一度だけ。不動産取得税・登録免許税(相続より高い税率)がかかるため、相続で取得する場合とのトータルコスト比較が必要です。
否認
配偶者の税額軽減(111)で1億6,000万円まで非課税になることを考えると、財産が少ない家庭では実益が乏しいケースがあります。二次相続まで含めて判定してください。
具体例
婚姻30年の夫婦。夫が居住用不動産2,110万円分を妻に贈与すれば配偶者控除2,000万円+基礎控除110万円で贈与税0円、しかも生前贈与加算の対象外。ただし不動産取得税(評価額の3%)と登録免許税(2%)で数十万円かかり、相続で取得すれば登録免許税は0.4%・不動産取得税は非課税。財産が1億6,000万円以下なら配偶者の税額軽減で足りるケースが多い。
121

賃貸不動産による評価減(貸家建付地・貸家)

相続
根拠
財産評価基本通達26(貸家建付地)・93(貸家)
要件
貸家建付地=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)。貸家=固定資産税評価額×(1-借家権割合30%×賃貸割合)
効果
借地権割合60%の地域なら土地は18%減、建物は30%減。加えて建物の固定資産税評価額は建築費の50〜60%程度になるため、現金で持つより評価が大幅に下がる。貸付事業用宅地等の小規模宅地の特例(200㎡50%減)も併用できる。
注意
賃貸割合は課税時期において実際に賃貸されている床面積の割合。空室が多いと減額幅が小さくなります(一時的な空室と認められる場合を除く)。
否認
相続開始直前の借入によるアパート建築は、財産評価基本通達6項(総則6項)により否認されるリスクがあります。最高裁令和4年4月19日判決は、相続開始の約3年半前と2年半前に借入で購入した不動産について、通達評価額と鑑定評価額の著しい乖離を理由に、通達によらない評価(鑑定評価)を認めました。相続直前・高齢・多額の借入・相続後すぐ売却という要素が重なると危険です。
具体例
更地評価1億円(借地権割合60%)の土地に、建築費8,000万円で賃貸アパートを建て満室運営。土地は1億円×(1-60%×30%)=8,200万円で1,800万円減。建物は固定資産税評価額が建築費の約55%=4,400万円、さらに×(1-30%)=3,080万円。現金8,000万円が3,080万円の評価になるため、合計で約6,700万円の評価減。貸付事業用宅地の特例も併用できる。ただし相続直前の借入による取得は総則6項で否認されるリスクがある。

▶ 貸家建付地を計算▶ アパート建築の相続税評価効果

122

居住用の区分所有財産(マンション)の評価

相続
根拠
「居住用の区分所有財産の評価について」(令和5年9月28日課評2-74ほか)
要件
令和6年1月1日以後の相続・遺贈・贈与により取得した居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)について、築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度から求めた評価乖離率に基づき、区分所有補正率を適用して評価する。
効果
評価水準が市場価格の60%に満たない場合は補正により引き上げられ、逆に市場価格を上回る場合は引き下げられます。
注意
いわゆる「タワマン節税」は令和6年以後、大きく効果が縮小しました。ただし小規模宅地等の特例は引き続き適用でき、居住用としての実需があるマンション購入自体が否認されるわけではありません。
否認
2階建て以下の集合住宅、区分所有登記のない一棟所有の賃貸マンション、たな卸商品等は対象外です。
具体例
時価1億円・従来の通達評価3,000万円だったタワーマンション。令和6年1月1日以後は評価乖離率による補正が入り、評価水準が市場価格の60%に満たない場合は引き上げられるため、評価額はおおむね6,000万円前後に。従来の「7,000万円の圧縮」は4,000万円程度まで縮小する。ただし小規模宅地等の特例は引き続き使える。
123

名義預金・名義株の解消

相続
根拠
相続税法基本通達(財産の帰属の実質判定)、国税不服審判所の裁決事例
要件
財産の帰属は名義ではなく実質で判定される。判断要素は①原資の拠出者は誰か、②通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が管理していたか、③受贈者に贈与の認識があったか(贈与契約書・贈与税申告の有無)、④果実(利息・配当)を誰が受け取っていたか、⑤株式なら議決権を誰が行使していたか。
効果
—(否認されないための必須対策)。生前に実質を伴う贈与に切り替え、通帳・印鑑を受贈者に渡すことで、相続財産から確実に切り離せます。
注意
税務調査では被相続人と家族全員の10年分程度の預金取引が確認されます。多額の出金と使途不明金は必ず質問されます。
否認
名義預金と認定されると、相続財産への加算に加えて重加算税(35〜40%)の対象となることがあります。相続開始前の駆け込み解消はかえって危険です。
具体例
父が子名義の口座に毎年110万円を10年間入金(総額1,100万円)していたが、通帳と印鑑は父が保管し、子は口座の存在を知らなかった。この場合は1,100万円が父の相続財産に加算され、限界税率30%なら330万円の追徴。仮装・隠蔽と認定されれば重加算税35〜40%が上乗せされる。贈与契約書・子名義口座への振込・通帳と印鑑の引渡しが必須。

事業承継の節税(自社株対策)

令和8年度税制改正で、事業承継税制の特例承継計画の提出期限が延長されました。中小企業庁の公表によれば、法人版の特例承継計画は令和9年9月30日まで、個人版の個人事業承継計画は令和10年9月30日までとなっています。ただし贈与・相続の実行期限(令和9年12月31日)は延長されていません。計画だけ出しても、期限内に承継を実行しなければ特例措置は使えません。
124

法人版事業承継税制(特例措置)── 自社株の税額100%猶予

承継改正
根拠
租税特別措置法70条の7の5〜70条の7の8、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律
要件
①都道府県知事に特例承継計画を提出(令和9年9月30日まで)、②令和9年12月31日までに贈与・相続により非上場株式を承継、③先代経営者・後継者それぞれの要件(代表者であったこと、同族で過半数保有等)、④承継後5年間の事業継続報告(年次報告・継続届出)。
効果
全株式を対象に、贈与税・相続税の100%が納税猶予。後継者の死亡等により最終的に免除される。後継者は最大3人まで可、雇用確保要件も実質的に弾力化されている。
注意
猶予であって免除ではありません。途中で代表を辞任した、株式を譲渡した、資産保有型会社に該当した等の事由が生じると、猶予税額の全額と利子税を一括納付することになります。20年、30年にわたる管理が必要な制度です。
否認
年次報告・継続届出書の提出漏れが打切り事由になります。顧問税理士とのスケジュール管理が不可欠。「使うべきか」の判断自体を慎重に行ってください。
具体例
自社株評価3億円を後継者に贈与。通常なら贈与税は(3億円-110万円)×55%-640万円=約1億5,800万円だが、特例措置なら全額が納税猶予され当面の負担は0円。ただし猶予であって免除ではなく、途中で代表を辞任したり株式を譲渡すれば猶予税額と利子税を一括納付することになる。特例承継計画は令和9年9月30日まで、贈与・相続の実行は令和9年12月31日まで

▶ 事業承継税制 特設ページ(全46章)▶ 事業承継税制の納税猶予額を計算

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法人版事業承継税制(一般措置)

承継
根拠
租税特別措置法70条の7・70条の7の2
要件
特例承継計画の提出は不要。後継者は1人。
効果
対象株式は発行済株式総数の最大3分の2まで、猶予割合は贈与100%・相続80%適用期限の定めがない恒久措置のため、特例措置の期限(令和9年12月31日)に間に合わなかった場合の受け皿になります。
注意
雇用確保要件(承継後5年間平均で8割維持)が必須で、未達の場合は原則として猶予が打ち切られます(一定の理由を記載した報告書の提出等による救済あり)。
否認
特例措置と比べて条件が厳しいため、承継の時期が読めるなら特例措置の期限内実行を優先すべきです。
具体例
特例措置の期限(令和9年12月31日)に間に合わなかった場合の受け皿。自社株3億円のうち発行済株式の2/3までが対象で、贈与なら100%猶予(2億円分)、相続なら80%猶予。一般措置は適用期限がない恒久措置だが、雇用確保要件(5年平均8割維持)が必須。
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個人版事業承継税制

承継
根拠
租税特別措置法70条の6の8・70条の6の10
要件
青色申告の個人事業者が、個人事業承継計画を都道府県知事に提出(令和10年9月30日まで)し、特定事業用資産(宅地400㎡・建物800㎡・機械等)を後継者へ贈与・相続すること。
効果
特定事業用資産に係る贈与税・相続税の100%が納税猶予
注意
小規模宅地等の特例(特定事業用宅地等)とは選択適用です。どちらが有利かは事業規模と後継者の継続意思で判断してください。
否認
後継者が事業を廃止・譲渡した場合は猶予が打ち切られ、利子税とともに納付が必要です。
具体例
青色申告の個人事業者が、事業用の宅地400㎡(評価5,000万円)と建物・機械を後継者に贈与。特定事業用資産に係る贈与税が100%納税猶予される。ただし小規模宅地等の特例(特定事業用400㎡80%減)とは選択適用で、こちらを選ぶと4,000万円の評価減は使えない。個人事業承継計画の提出期限は令和10年9月30日。
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役員退職金の支給による自社株評価の引下げ

承継法人
根拠
財産評価基本通達178〜189-7(取引相場のない株式の評価)
要件
先代経営者の退任にあわせて適正額の役員退職金を支給する。支給額の適正性は功績倍率法等で説明できること(005参照)。
効果
類似業種比準価額は「配当・利益・簿価純資産」の3要素で計算されるため、多額の退職金により利益がゼロ・マイナスになれば比準要素が大きく下がる。純資産価額も退職金支給分だけ減少する。株価が下がったタイミングで後継者へ贈与・譲渡すれば、承継コストを大幅に圧縮できる。
注意
比準要素のうち直前期末の配当・利益・簿価純資産のいずれか2つがゼロだと「比準要素数1の会社」となり、原則として純資産価額方式(またはL=0.25の併用)で評価され、かえって株価が上がる場合があります。評価方式への影響を必ず事前に試算してください。
否認
退職の事実がない、功績倍率が過大——役員退職金そのものが否認されると、株価対策も崩れます。
具体例
最終月額報酬150万円・勤続35年・功績倍率3.0で役員退職金1億5,750万円を支給。純資産価額はその分だけ下がり、類似業種比準価額も利益がマイナスになれば利益要素がゼロになるため株価が大きく下がる。株価が3億円→1億円になったタイミングで後継者へ贈与すれば、承継コストは大幅に圧縮できる。ただし配当・利益・簿価純資産のうち2つがゼロになると「比準要素数1の会社」となり純資産価額方式で評価され、かえって株価が上がることがある。

▶ 類似業種比準価額の完全計算▶ 純資産価額の完全計算▶ 特定評価会社の判定

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経営承継円滑化法の民法特例(除外合意・固定合意)

承継
根拠
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律4条〜10条
要件
推定相続人全員の合意を得たうえで、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を受けること。
効果
除外合意=後継者が先代から贈与を受けた自社株を遺留分算定の基礎財産から除外する。固定合意=自社株の価額を合意時点の評価額に固定する(後継者の努力による株価上昇分が遺留分の対象にならない)。
注意
相続人全員の合意が前提のため、家族間の対話が最大のハードルです。
否認
遺留分侵害額請求が起きてからでは使えません。生前の準備が必須です。
具体例
推定相続人が長男・二男・長女の3人。父から長男へ自社株3億円を贈与するにあたり、全員の合意を得て除外合意を取れば、その3億円は遺留分算定の基礎財産から外れる。固定合意なら合意時の3億円で固定され、後継者の努力で株価が10億円になっても増加分7億円は遺留分の対象にならない。経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要。

▶ 遺留分侵害額を計算

見落とされやすい実務論点(法人・個人共通)

ここからは、金額は地味でも毎年確実に効く、そして実務で最も取りこぼされている論点です。

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少額の繰延資産(20万円未満)の一時損金

法人個人
根拠
法人税法施行令134条(個人は所得税法施行令139条の2)
要件
税法上の繰延資産(建物を賃借するための権利金・立退料、内装造作の負担金、同業者団体の加入金、公共的施設の負担金、ノウハウの頭金等)のうち、支出額が20万円未満のものは、支出した事業年度に全額を損金算入できる。
効果
本来は数年〜数十年で償却する支出を一時に損金化できる。店舗・事務所の移転が多い事業では効果が大きい。
注意
会社法上の繰延資産(創立費・開業費・開発費・株式交付費・社債発行費)は任意償却で、いつでも好きな額を損金にできます(072参照)。両者は別物です。
否認
返還されない権利金と、返還される敷金・保証金は区別が必要。返還される部分は資産計上のままです。
具体例
事務所移転で支払った権利金18万円と、同業者団体の加入金15万円。いずれも20万円未満なので支出時に全額損金。20万円以上(たとえば権利金50万円)だと繰延資産として5年で償却するため、初年度は10万円しか落ちない。返還される敷金・保証金は繰延資産ではなく資産計上のまま。
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ソフトウェアの資産計上・除却とクラウド利用料の処理

法人
根拠
法人税基本通達7-3-15の2・7-3-15の3、7-7-2の2、耐用年数省令別表第三
要件
自社利用ソフトウェアの耐用年数は5年(複写して販売するための原本は3年)。SaaS等のクラウドサービス利用料は資産計上せず、期間費用として処理する(自社が所有権を持たないため)。
効果
クラウド化により、システム投資を初年度に全額費用化できる(短期前払費用の特例=023との併用も可能)。導入時の初期設定費用のうち、自社の資産価値を高めないものは費用処理できる。
注意
ソフトウェアの研究開発費に該当する部分や、製造・販売の中止により今後使用しないことが明らかなものは除却損を計上できます(法基通7-7-2の2)。使用しなくなったソフトウェアの帳簿価額を放置していないか確認を。
否認
ソフトウェアの導入に伴うハードウェア・ライセンスは別資産。バージョンアップ費用は、新機能の追加なら資本的支出、不具合修正なら修繕費。
具体例
基幹システムを自社購入(1,200万円)からSaaS(月30万円=年360万円)へ切り替え。購入なら耐用年数5年で年240万円の償却だが、SaaS利用料は資産計上せず全額が期間費用。さらに年払い契約にして短期前払費用の特例(023)と組み合わせれば、切替年度に約2年分を損金にできる。使わなくなった旧システムの帳簿価額は除却損として落とす。
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租税公課の損金算入時期(事業税・固定資産税・労働保険料)

法人
根拠
法人税基本通達9-5-1・9-5-2
要件
固定資産税・自動車税・不動産取得税等の賦課課税方式の租税は、賦課決定のあった日の属する事業年度(納期未到来でも全額を損金算入できる)。②事業税・特別法人事業税は、原則として申告書を提出した日の属する事業年度(=前期分の事業税は当期の損金)。③労働保険料の概算保険料のうち、法人負担分は申告書提出時に損金算入可。
効果
納付前でも損金にできる項目を取りこぼさないだけで、毎期数十万円規模の差が生じます。
注意
法人税・地方法人税・法人住民税は損金不算入。延滞税・加算税・罰金も損金不算入です。
否認
「納付したときに費用」と機械的に処理していると、常に1期分遅れて損金算入することになります。
具体例
3月決算の会社の取りこぼしやすい項目。①4月に納税通知が来る固定資産税は前期の賦課決定分を確認、②前期分の事業税・特別法人事業税(申告書提出日の属する事業年度の損金)が200万円あれば当期の損金、③労働保険の概算保険料の会社負担分。②だけで法人税等が約60万円変わる。法人税・住民税・延滞税・加算税は損金にならない。

▶ 延滞税・加算税の概算▶ 固定資産税の計算

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税抜経理と税込経理の選択(少額判定への影響)

法人個人消費税
根拠
「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(平成元年3月1日直法2-1)
要件
課税事業者は税抜経理・税込経理のいずれも選択できる(免税事業者は税込経理のみ)。
効果
取得価額の判定(10万円未満・20万円未満・40万円未満・交際費の1人1万円基準など)は採用している経理方式による金額で行います。税抜経理なら、税込43万円の資産も税抜39万円台なら少額減価償却資産の特例が使えます。税込経理では判定額が実質的に約9%不利になります。
注意
課税売上割合が80%未満で、1資産あたりの控除対象外消費税額等が20万円以上の場合は、繰延消費税額等として60か月で均等償却します。
否認
期中で経理方式を混在させることはできません(一部の例外を除き、すべての取引について統一)。
具体例
税込43万7,800円(税抜39万8,000円)のノートPC。税抜経理なら40万円未満に該当して少額減価償却資産の特例で即時損金にできるが、税込経理だと43万7,800円で対象外となり耐用年数4年で償却(定率法0.5なら初年度約21万9,000円)。同じ買い物で初年度の損金が約18万円変わる。交際費の1人1万円基準も同様に経理方式で判定額が変わる。
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仮決算による中間申告(資金繰りの改善)

法人
根拠
法人税法71条・72条、消費税法43条
要件
前期の確定法人税額が20万円を超える法人は中間申告が必要。前期実績による予定申告のほか、事業年度開始から6か月を1事業年度とみなして仮決算を行い中間申告することができる。
効果
前期は好調でも当期が不調なら、仮決算により中間納付額を実態に合わせて減らせます。資金繰りの改善効果は大きい。消費税も同様に仮決算による中間申告が可能。
注意
仮決算による中間申告税額が前期実績基準額を超える場合は、仮決算による中間申告書を提出できません。また仮決算では欠損金の繰越控除等の一部の規定が適用されず、実質的な事務負担も生じます。
否認
中間申告書を提出しないと、前期実績による予定申告があったものとみなされます(みなし申告)。納付を忘れると延滞税が生じます。
具体例
前期の確定法人税額が600万円だったため予定申告額は300万円。しかし当期上半期は業績が落ち込み、仮決算による中間申告なら税額は80万円。仮決算を選べば納付は80万円で済み、220万円分の資金繰りが改善する。ただし仮決算の税額が前期実績基準額を上回る場合は仮決算による中間申告書を提出できない。

▶ 法人税の予定申告(中間)▶ 消費税の中間申告

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外国税額控除(国際的二重課税の排除)

法人個人
根拠
法人税法69条(個人は所得税法95条)
要件
外国で納付した法人税等がある場合、控除限度額(当期の法人税額×国外所得金額÷所得金額)の範囲内で税額控除できる。控除しきれない額は3年間繰越可。確定申告書への明細記載と証明書類の添付が必要。
効果
海外取引の源泉税(ロイヤリティ・技術指導料・配当等)の二重課税を排除できる。損金算入との選択適用ですが、通常は税額控除が有利。
注意
外国子会社(持株割合25%以上・保有6か月以上)からの配当は外国子会社配当益金不算入(95%益金不算入)となり、この場合の外国源泉税は損金・税額控除いずれも不可です。
否認
租税条約による限度税率を超えて源泉徴収された部分は控除の対象外。相手国での還付請求が必要です。
具体例
海外子会社からのロイヤリティ1,000万円に対し、現地で10%=100万円が源泉徴収された。控除限度額の範囲内なら100万円を日本の法人税額から直接控除できる。損金算入を選ぶと100万円×30%=30万円の効果しかないため、税額控除のほうが70万円有利。租税条約の限度税率を超えて徴収された分は控除対象外で、相手国での還付請求が必要。

▶ 外国税額控除の控除限度額

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予定納税額の減額申請(個人事業主)

個人
根拠
所得税法111条・113条
要件
前年分の予定納税基準額が15万円以上の人は、7月と11月に予定納税が必要。当年の所得が前年より減る見込みの場合、第1期・第2期分は7月15日まで、第2期分のみは11月15日までに「予定納税額の減額申請書」を提出できる。
効果
資金繰りの改善。廃業・休業・大幅な減収・災害・多額の医療費や寄附金がある年に有効です。
注意
申請には見積りの根拠となる書類(申告納税見積額の計算書)が必要。期限を過ぎると受け付けられません。
否認
見積りが著しく過小だと承認されないことがあります。
具体例
前年の所得が1,200万円で予定納税基準額が180万円の個人事業主。当年は取引先の撤退で所得が400万円に落ち込む見込み。7月15日までに減額申請をすれば、第1期・第2期あわせて100万円超の納付を回避できる。期限を過ぎると受け付けられず、翌年3月の確定申告まで資金が寝る。

▶ 予定納税(所得税)を計算

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消費税の積上げ計算と割戻し計算の選択

消費税
根拠
消費税法45条5項、消費税法施行令46条
要件
売上税額は割戻し計算が原則だが、適格請求書発行事業者は交付したインボイスに記載した消費税額等を積上げ計算することもできる。仕入税額は積上げ計算が原則で、売上税額を割戻し計算している場合に限り仕入税額も割戻し計算にできる。
効果
少額・多数の取引を扱う小売業・飲食業では、売上税額を積上げ計算、仕入税額も積上げ計算にすると端数処理の関係で納税額がわずかに有利になることがあります。
注意
売上税額を積上げ計算にした場合、仕入税額を割戻し計算にすることはできません。組合せの制限に注意してください。
否認
積上げ計算にはインボイスの適正な発行・保存が前提です。レジシステムの端数処理設定も確認を。
具体例
1個198円(税込)の商品を大量に扱う小売業。売上税額を割戻し計算するか、インボイスに記載した消費税額を積み上げるかで、端数処理の積み重ねにより納税額が変わる。売上税額を積上げ計算にした場合、仕入税額は必ず積上げ計算にしなければならない(割戻しとの併用不可)。レジシステムの端数処理設定とあわせて確認する。

▶ 積上げ計算vs割戻し計算

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付加年金・国民年金基金・保険料の前納(第1号被保険者)

個人
根拠
国民年金法87条の2・附則、所得税法74条
要件
付加年金=国民年金第1号被保険者が月額400円を上乗せ納付すると、老齢基礎年金に200円×納付月数が終身で上乗せされる(国民年金基金との併用不可)。前納=口座振替の2年前納等で保険料が割引される。
効果
付加年金は2年間受給すれば元が取れる極めて効率のよい制度で、掛金は全額が社会保険料控除。前納した保険料は、支払った年に全額を控除するか各年分に按分するかを選択できるため、所得が高い年に集中させられます。
注意
付加年金と国民年金基金は併用できません。小規模企業共済・iDeCoとは併用可能です(079参照)。
否認
控除には社会保険料控除証明書が必要。前納した場合は証明書の記載内容(当年分か全額か)を確認してください。
具体例
付加保険料を月400円×20年(240か月)納付すると、支払総額は9万6,000円。年金額の上乗せは200円×240か月=年4万8,000円で、2年受給すれば元が取れる終身の上乗せ。掛金は全額が社会保険料控除。ただし国民年金基金との併用はできない。
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人的控除の取りこぼし防止(障害者控除・寡婦控除・勤労学生控除)

個人
根拠
所得税法79条(障害者控除)・80条(寡婦控除)・81条(ひとり親控除)・82条(勤労学生控除)
要件
障害者控除=27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円。本人・同一生計配偶者・扶養親族が対象で、16歳未満の扶養親族でも適用できます寡婦控除=27万円(合計所得500万円以下)。勤労学生控除=27万円。
効果
障害者手帳がなくても、市町村長等から障害者に準ずるとの認定を受けている65歳以上の人(要介護認定だけでは不可。自治体の障害者控除対象者認定書が必要)は対象になります。同居の親が要介護状態にある場合は自治体に確認する価値があります。
注意
ひとり親控除は令和8年分は35万円で、所得税は令和9年分以後38万円個人住民税は令和10年度分以後33万円に引き上げられます(適用時期が国税と地方税でずれる点に注意)。あわせて、ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の要件も58万円以下→62万円以下に引き上げられます。
否認
過去分は5年間遡って還付申告できます(088参照)。
具体例
同居の母(80歳)が要介護3で、自治体から障害者控除対象者認定書の交付を受けられた場合、同居特別障害者に該当すれば控除額は75万円。限界税率30%なら年約22.5万円の減税。障害者手帳がなくても認定書で適用できるため、要介護認定を受けている家族がいるなら市区町村に確認する価値がある。過去5年分の還付申告も可能。

▶ 人的控除のまとめ計算

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相続税の延納・物納と納税資金対策

相続
根拠
相続税法38条(延納)・41条(物納)
要件
延納=相続税額が10万円を超え、金銭で一時に納付することが困難な場合に、担保を提供して年賦延納(原則5年、不動産等の割合により最長20年)。利子税がかかる。物納=延納によっても金銭で納付することが困難な場合に限り、一定の順位の財産で納付。いずれも申告期限(10か月)までに申請書を提出
効果
不動産・自社株が財産の大半を占める場合に、換価売却を避けられる。
注意
物納は要件が非常に厳しく、境界未確定の土地・貸地・共有物件などは管理処分不適格財産として却下されます。生前に測量・境界確定を済ませておくことが実質的な対策になります。
否認
最も確実な納税資金対策は生命保険(115)です。受取人固有の財産として遺産分割を待たずに受け取れます。
具体例
相続財産の9割が自社株と不動産で、相続税4,000万円に対し現預金が500万円しかないケース。延納なら担保提供のうえ最長20年の年賦(利子税あり)、物納は要件が厳しく、境界未確定の土地や貸地は管理処分不適格として却下される。最も確実なのは生命保険(115)で、保険金4,000万円を用意しておけば受取人固有の財産として即座に納税に充てられる。

▶ 相続税の延納と利子税

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準確定申告(4か月以内)と被相続人の還付

相続個人
根拠
所得税法124条・125条
要件
相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、被相続人のその年1月1日から死亡日までの所得について申告・納付する。
効果
年金・給与から源泉徴収されていた所得税や、死亡日までに支払った医療費の医療費控除により、還付になるケースが多い。還付金は相続財産に含まれます。
注意
準確定申告で納付した所得税・住民税(死亡年分の住民税を除く)は、相続税の債務控除の対象になります。一方、生命保険料控除・地震保険料控除・医療費控除は死亡日までに支払ったものだけが対象です。
否認
4か月の期限は相続税の10か月より早く到来します。相続開始直後に見落とされやすい手続です。
具体例
年金収入と不動産所得があった父が3月10日に死亡。相続人は7月10日までに準確定申告が必要。年金から源泉徴収されていた所得税と、死亡日までに支払った医療費の医療費控除により30万円が還付されるケースは珍しくない。この還付金は相続財産に含まれ、準確定申告で納付した所得税は債務控除の対象になる。相続税の10か月より先に期限が来る点に注意。

令和8年度税制改正で変わった点(節税に効く改正の全一覧)

令和8年度税制改正は令和7年12月26日に閣議決定され、令和8年3月に成立しました。節税実務に直結する改正点を一覧にまとめます。期限が切れるもの・新たに課税が始まるものを先に押さえてください。

項目改正前改正後適用時期
基礎控除本則58万円本則62万円/合計所得489万円以下は+42万円=104万円、489万円超655万円以下は+5万円=67万円令和8年分以後
(令和8年12月1日施行)
給与所得控除
最低保障額
65万円本則69万円+特例5万円=74万円(所得税は令和8・9年分)令和8年分以後
扶養親族等の所得要件合計所得58万円以下合計所得62万円以下(給与収入136万円以下)令和8年分以後
ひとり親控除所得税35万円・住民税30万円所得税38万円・住民税33万円所得税:令和9年分以後
住民税:令和10年度分以後
少額減価償却資産の特例30万円未満/従業員500人以下/令和8年3月31日まで40万円未満/従業員400人以下令和11年3月31日まで令和8年4月1日以後取得
中小企業経営強化税制・投資促進税制工具・器具備品は30万円以上工具・器具備品は40万円以上令和8年4月1日以後
賃上げ促進税制大企業・中堅・中小の3本立て/教育訓練費で+10%大企業向けは令和8年3月31日で廃止/中堅企業向けは令和9年3月31日で廃止/教育訓練費の上乗せは廃止(中小は最大35%)令和8年4月1日以後開始事業年度
特定生産性向上設備等新設。投資計画35億円以上(中小5億円以上)・投資利益率15%以上で即時償却または税額控除7%(建物等4%)令和11年3月31日まで
研究開発税制戦略技術領域型を創設(AI・量子・バイオ等で40%、共同・委託研究は50%)/控除限度超過額の3年繰越令和8年度〜
防衛特別法人税基準法人税額-年500万円に税率4%税額0円でも申告義務あり令和8年4月1日以後
開始事業年度
防衛特別所得税/復興特別所得税復興特別所得税2.1%防衛特別所得税1%を創設/復興特別所得税を1%引下げ・課税期間を令和29年まで延長令和9年1月〜
インボイス2割特例令和8年9月30日を含む課税期間で終了(個人事業者は令和8年分が最終)令和8年9月30日
個人事業者の3割特例新設。納税額を売上税額の3割にできる(個人事業者のみ・2年限り)令和9年分・令和10年分
免税事業者からの仕入れ
経過措置
令和8年10月から5割→令和11年10月終了/年間上限10億円令和8年10月〜7割/令和10年10月〜5割/令和12年10月〜令和13年9月末3割/年間上限1億円令和8年10月1日〜
教育資金の一括贈与令和8年3月31日まで延長されず終了(拠出済み分は引き続き適用)令和8年3月31日
住宅ローン控除既存住宅の借入限度額引上げ・子育て世帯上乗せ拡充・床面積要件緩和のうえ5年延長令和8年〜令和12年居住分
NISA口座開設可能年齢は18歳以上年齢下限を撤廃し0〜17歳のつみたて投資枠を新設(年60万円・非課税保有限度額600万円)令和9年以後の各年
ミニマムタックス特別控除3億3,000万円・税率22.5%特別控除1億6,500万円・税率30%令和9年分以後
事業承継税制特例承継計画は令和8年3月31日まで特例承継計画は令和9年9月30日まで(個人版は令和10年9月30日)。贈与・相続の実行期限(令和9年12月31日)は延長なし
自動車関係諸税自動車税等の環境性能割を令和8年3月31日で廃止/軽油引取税の当分の間税率を令和8年4月1日に廃止令和8年3〜4月
青色申告特別控除65万円/55万円/10万円55万円→65万円(e-Tax要件を追加)、65万円→75万円(優良な電子帳簿等)。前々年収入1,000万円超で簡易簿記の者は10万円控除の対象外令和9年分以後
食事の支給(非課税枠)会社負担が月3,500円以下会社負担が月7,500円以下/深夜勤務者の夜食代の金銭支給は1食650円以下(現行300円)令和8年4月1日〜
通勤手当(マイカー)片道55km以上は38,700円が上限片道65km以上の区分を新設(最高95km以上66,400円)/駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算可令和8年4月1日〜
セルフメディケーション税制令和8年12月31日までスイッチOTC医薬品分は期限撤廃(恒久化)、それ以外は5年延長/対象医薬品の範囲を見直し範囲の見直しは令和9年分以後
ふるさと納税特例控除は住民税所得割額の2割が上限2割に加えて絶対額の上限を新設(道府県民税77万2千円・市町村民税115万8千円等)/指定基準に寄附金活用可能額60%以上を追加上限は令和10年度分以後
指定基準は令和8年10月〜
公的年金等控除給与所得控除額と公的年金等控除額の合計が280万円を超える場合、超える部分を公的年金等控除額から控除令和9年分以後
暗号資産総合課税(雑所得)一定の暗号資産の譲渡等は申告分離課税20%(所得税15%・住民税5%)、損失の3年繰越控除を創設金融商品取引法改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後
国際観光旅客税出国1回1,000円出国1回3,000円改正法による

否認事例に学ぶ「やってはいけない節税」15選

ここからは実際に否認された(否認されやすい)典型パターンです。上の各項目の「否認」欄と併せてお読みください。重加算税(35〜40%)が課されると、節税どころか本来の税額を大きく上回る負担になります。

NG01|期末の大量まとめ買いで消耗品費を膨らませる

「おおむね一定数量を取得し経常的に消費するもの」という法基通2-2-15の要件を外れ、貯蔵品として資産計上を求められます。通常の使用量の数年分を決算月に購入した記録は、仕入先の請求書から一目でわかります。

根拠:法人税基本通達2-2-15

NG02|家族名義の預金に毎年送金しているが、通帳と印鑑は本人が管理

典型的な名義預金。贈与は「あげます・もらいます」という双方の意思表示があって初めて成立します。受贈者が口座の存在すら知らなければ贈与は成立せず、全額が相続財産に加算されます。重加算税の対象にもなり得ます。

対策:贈与契約書の作成、受贈者名義口座への振込、通帳・印鑑・カードを受贈者が保管

NG03|勤務実態のない配偶者・子への給与

青色事業専従者給与も、法人の役員給与も、労務の対価としての実態がなければ否認されます。他に本業がある、出勤記録がない、業務内容を説明できない——この3つが揃うと確実に問題になります。

根拠:所得税法57条、法人税法34条2項

NG04|4年落ちの高級車を買ったが、走行距離は年間1,000km

中古資産の簡便法(037)自体は正当な制度ですが、事業供用の事実がなければ減価償却費・維持費とも否認されます。役員個人の私的利用分は給与認定され、源泉所得税の追徴も生じます。運行記録・業務日報を残してください。

対策:使用実態の記録、私的利用分の按分または本人負担

NG05|分掌変更で退職金を出したが、実質的に経営を続けている

法基通9-2-32の「実質的に退職したと同様の事情」は、報酬を50%以上減らすだけでは満たされません。代表印・銀行印を握り、重要な意思決定を続けていると「経営上の主要な地位を占めている」と判断され、退職給与の全額が否認された事例が複数あります。

根拠:法人税基本通達9-2-32

NG06|事前確定届出給与を「業績が悪いので」減額して支給した

届出額と1円でも異なれば、その事業年度の当該給与の全額が損金不算入となるのが原則です。支給しないと決めた場合も、支給日前に定めを廃止する決議と変更届出が必要です。

根拠:法人税法34条1項2号

NG07|決算賞与を通知したが、就業規則に「支給日在籍要件」があった

「支給日に在籍する使用人のみに支給する」旨の定めがある場合、通知をしたことになりません(法基通9-2-43)。3要件のうち①が崩れるため全額が翌期の損金になります。決算賞与を実施する年は、その適用がないことを明示してください。

根拠:法人税基本通達9-2-43

NG08|相続直前に多額の借入をして賃貸不動産を購入した

最高裁令和4年4月19日判決は、相続開始の約3年半前・2年半前に借入で取得した不動産について、財産評価基本通達6項(総則6項)により通達評価額ではなく鑑定評価額による課税を適法としました。「相続直前・高齢・多額の借入・相続後すぐ売却・通達評価と時価の著しい乖離」が重なると危険です。

参考:最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決/財産評価基本通達6

NG09|実体のない不動産管理会社に高率の管理料を支払っている

清掃・集金・入居者対応・修繕手配などの管理業務を実際に行っていなければ、管理料は必要経費として否認されます。管理委託契約書・業務報告書・作業記録を整備し、料率も相場の範囲に収めてください。

根拠:所得税法12条、法人税法132条

NG10|副業を「事業所得」として赤字を給与所得と損益通算

所基通35-2の改正で帳簿保存があれば原則事業所得と扱われるようになりましたが、帳簿があれば何でも事業所得になるわけではありません。営利性・継続性・反復性・人的物的設備・その所得で生計を立てているかが実質的に判断されます。

根拠:所得税基本通達35-2

NG11|海外の中古不動産を買って減価償却で損益通算

令和3年分以後、国外中古建物の不動産所得の損失のうち、簡便法等による減価償却費に相当する部分は損益通算できません(措法41条の4の3)。かつて富裕層で流行したスキームは完全に封じられています。

根拠:租税特別措置法41条の4の3

NG12|同業他社の数倍の役員退職金を支給した

「不相当に高額な部分」は損金不算入(法令70条2号)。功績倍率が同業類似法人の水準を大きく超えると、超過部分が否認されます。支給前に功績倍率の根拠資料(同業他社水準の調査、株主総会議事録、退職金規程)を整備してください。

根拠:法人税法34条2項、法人税法施行令70条2号

NG13|経営セーフティ共済を解約して益金を出し、すぐ再加入した

令和6年10月1日以後に解約した場合、解約日から2年を経過する日までに支払う掛金は損金・必要経費に算入できません。「解約→再加入」の循環による節税は制度上封じられました。

根拠:租税特別措置法(令和6年度改正)

NG14|1人1万円以下の飲食費として処理したが、参加者の記録がない

1万円基準の適用には、①年月日、②相手方の氏名・名称と関係、③参加者数、④金額・店名・所在地の記載がある書類の保存が必須です。1つでも欠ければ交際費等に戻り、800万円の定額控除枠を消費します。

根拠:租税特別措置法施行規則21条の18の4

NG15|消費税の還付を受けた翌期に免税事業者へ戻ろうとした

調整対象固定資産(税抜100万円以上)を本則課税で取得すると3年間、高額特定資産(税抜1,000万円以上)を取得すると理由を問わず3年間、免税事業者にも簡易課税にもなれません。3年トータルの試算をせずに還付だけを狙うと、かえって不利になります。

根拠:消費税法9条7項、12条の4、37条3項

節税の実行カレンダー(いつ動くか)

節税は「決算日を過ぎたら何もできない」ものがほとんどです。逆算して動いてください。

期首〜3か月役員報酬の改定(定期同額給与の通常改定の期限)/事前確定届出給与の届出(株主総会決議日から1か月経過日と期首から4か月経過日の早い方)/設備投資計画の策定と各種計画認定の申請
期中(随時)経営力向上計画・事業継続力強化計画の認定取得(設備取得の前に)/経営セーフティ共済・小規模企業共済の加入/中退共の加入/賃上げ実施と教育訓練の記録
決算3か月前着地見込みの試算/短期前払費用の契約切替え/設備投資の発注時期の決定/不良在庫・遊休資産の洗い出し/貸倒れ検討先のリストアップ
決算1か月前決算賞与の意思決定と各人別の通知/30万円(令和8年4月以後取得は40万円)未満資産の取得と事業供用/修繕の実施/セーフティ共済の前納手続
決算月棚卸の実施と評価損・廃棄損の証拠固め(写真・マニフェスト)/有姿除却の意思決定書類/未払費用・未払金の計上漏れチェック/固定資産税・労働保険料の未払計上
決算日〜1か月決算賞与の支払い(通知日の属する事業年度終了日の翌日から1か月以内)
決算日〜2か月確定申告・納付/防衛特別法人税の申告(税額0円でも必要)/欠損金の繰戻し還付請求(確定申告書と同時)/特定資産の買換え特例の届出
個人:3月15日確定申告・青色申告承認申請・青色事業専従者給与に関する届出/相続時精算課税選択届出(贈与の翌年2月1日〜3月15日)
個人:12月31日ふるさと納税・医療費の支払い・小規模企業共済/iDeCoの拠出/年内の贈与実行(振込日ベースで判定されるため年末は余裕をもって)
消費税:課税期間開始の前日簡易課税選択届出書・課税事業者選択(不適用)届出書の提出期限/令和8年10月以後の課税期間に向けた選択の見直し
相続:10か月相続税の申告期限。配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例は原則として申告期限までの分割が要件(未分割なら「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず提出)

よくある質問

節税と脱税、租税回避は何が違うのですか?
節税は、税法が予定している制度を要件どおりに使って税負担を減らすこと。脱税は、売上除外や架空経費など事実を仮装・隠蔽して税を免れることで、犯罪です。租税回避は、形式的には合法だが税法が想定していない不自然な取引で税負担を減らすことを指し、同族会社の行為計算否認(法人税法132条)や財産評価基本通達6項などで否認され得ます。本ページは節税のみを扱っています。判断に迷ったら「この取引に、税負担の軽減以外の事業上の目的を説明できるか」を自問してください。
結局、いちばん効果が大きい節税策はどれですか?
立場によって異なります。法人なら①役員報酬と社会保険料のバランス最適化(004)、②役員退職金(005)、③少額減価償却資産40万円特例(034)と中小企業経営強化税制(040)。個人事業主なら①青色申告特別控除65万円(067)、②青色事業専従者給与(068)、③小規模企業共済とiDeCo(051・079)。相続なら①小規模宅地等の特例(112)、②生命保険金の非課税枠(115)。いずれも単発の経費づくりではなく、制度の枠組みを使うものであることが共通しています。
「経費を増やせば税金が減る」というのは正しいですか?
半分正しく、半分間違いです。法人税率が実効で約30%なら、100万円の経費を使って減る税金は約30万円。手元のお金は70万円減ります。もともと必要だった支出を前倒しするなら合理的ですが、不要なものを買うのは単なる浪費です。節税の優先順位は、①お金が出ていかない節税(制度選択・届出・特例適用)→②いずれ必要な支出の前倒し→③新規の支出、の順で検討してください。
令和8年に絶対に見逃してはいけない期限は何ですか?
3つあります。①インボイスの2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間が最後(個人事業者は令和8年分が最終)。法人は次の課税期間の開始日の前日までに簡易課税を選択するか判断が必要です。②教育資金の一括贈与の非課税は令和8年3月31日で終了しました。③防衛特別法人税が令和8年4月1日以後開始事業年度から課税開始。税額0円でも申告義務があります。加えて、事業承継税制の特例承継計画は令和9年9月30日まで、贈与・相続の実行は令和9年12月31日までです。
少額減価償却資産の40万円は、いつ買ったものから使えますか?
令和8年4月1日以後に取得等したものからです。令和8年3月31日以前に取得したものは従来どおり30万円未満が基準となるため、3月決算以外の法人は同一事業年度内に2つの基準が併存します。取得日で区分して管理してください。あわせて対象法人の従業員数要件が500人以下から400人以下に絞られた点、年間合計300万円の限度額は据え置きである点にも注意が必要です。
役員報酬はいくらに設定するのが最適ですか?
「法人税+所得税+住民税+社会保険料」の合計が最小になる点を探すことになります。目安として、法人に利益を残すと実効税率で約30%、役員報酬にすると所得税・住民税・社会保険料で30〜50%程度。所得の水準・家族構成・将来の役員退職金の設計・銀行融資の必要性で最適解は変わります。当事務所の役員報酬の最適化シミュレーションで概算を出したうえで、個別にご相談ください。
生命保険を使った節税はもうできないのですか?
「保険料を全額損金にして解約返戻金でほぼ全額戻ってくる」という商品は、令和元年6月の通達改正(法基通9-3-5の2)で事実上なくなりました。現在は最高解約返戻率に応じた資産計上が必要です(053)。ただし、事業保障・役員退職金の原資確保・従業員の死亡退職金の財源としての機能は残っており、返戻率50%以下の商品や年換算保険料30万円以下の枠を使えば全額損金にできます。「節税商品」ではなく「保障と資金準備の手段」として設計してください。
相続対策はいつから始めるべきですか?
遅くとも10年前です。理由は3つ。①暦年贈与の生前贈与加算は相続開始が令和13年1月1日以後なら7年に延びるため、短期間では効果が出にくい。②小規模宅地等の特例は相続開始前3年以内に貸付事業を開始した宅地が対象外など、直前対策を封じる規定が多い。③相続直前の借入不動産購入は総則6項で否認されるリスクがある(NG08)。健康なうちに、財産の棚卸しと分割方針の共有から始めてください。
税務調査で否認されないために、いちばん大事なことは何ですか?
「その時点で作られた書類」があることです。議事録・契約書・通知書・稟議書・業務日報は、日付と内容が実態と一致していて初めて証拠になります。調査で最も心証が悪いのは、金額の誤りではなく後から作った書類が見つかることです。節税策を実行したら、その日のうちに証拠を残す——これが最も費用対効果の高い「節税」です。
顧問税理士がいますが、セカンドオピニオンをお願いできますか?
はい、可能です。特に役員報酬の最適化、事業承継・自社株評価、組織再編、消費税の課税方式の選択、相続の分割方針は、判断を一度誤ると数百万円〜数千万円の差になります。当事務所は公認会計士・税理士として、既存の顧問関係を尊重したうえでの検証・助言も承っています。お問い合わせからご相談ください。

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本ページは、以下の一次情報に基づいて作成しています(令和8年8月時点)。
免責事項
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記載年月:令和8年8月/作成・監修:ジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士 菊地宏隆)

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