- 全30項目を網羅
- 実務対応は各3ステップ
- 読者別の影響早見表つき
- 出典は財務省・国税庁など官公庁の一次情報
3分でわかる令和8年度税制改正|まずはこの5つ
令和8年度税制改正は、2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」に基づき、2026年3月末に関連法が成立したものです。物価高への対応(基礎控除の引上げ)、防衛財源の確保(付加税の創設)、インボイス経過措置の組み替えという「家計・会社・消費税」の3方向が同時に動く、実務への影響が大きい改正になりました。本ページでは、令和7年度以前の改正で決定済みで2026年に施行される項目(防衛特別法人税・免税リファンド方式・宿泊税など)もあわせて扱います。
まず、中小企業への実務インパクトが大きい順に5つだけ挙げます。この5つを押さえれば、今年の対応の大半をカバーできます。
※重要度(★)は「中小企業の実務への影響の大きさ」の目安として当事務所が付したものです。
あなたへの影響 早見表
立場ごとに「どの改正が効くか」を一覧にしました。◎=ほぼ全員に影響、○=該当すれば影響、-=原則関係なし、の3段階です。
| 改正項目(カード番号) | 法人 | 個人事業主 | 給与計算の担当者 | 会社員・パート |
|---|---|---|---|---|
| 01 防衛特別法人税 | ◎ | - | - | - |
| 02 少額減価償却資産 40万円未満 | ◎ | ○ | - | - |
| 03 賃上げ促進税制の見直し | ◎ | ○ | - | - |
| 04 大胆な設備投資促進税制(新設) | ○ | - | - | - |
| 05 研究開発税制の強化 | ○ | - | - | - |
| 06 経営強化税制等の器具備品40万円以上 | ◎ | ○ | - | - |
| 07 外形標準課税の対象拡大 | ○ | - | - | - |
| 08 インボイス 8割控除→7割控除 | ◎ | ◎ | - | - |
| 09 2割特例の終了と「3割特例」 | ○ | ◎ | - | - |
| 10 免税販売のリファンド方式 | ○ | ○ | - | - |
| 11 越境EC・プラットフォーム課税 | ○ | ○ | - | - |
| 12 基礎控除104万円・178万円の壁 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 13 扶養の所得要件 62万円に | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
| 14 通勤手当の非課税枠 拡大 | ○ | - | ◎ | ○ |
| 15 食事支給の非課税枠 月7,500円 | ○ | - | ◎ | ○ |
| 16 防衛特別所得税1%(2027年1月〜) | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 17 ひとり親控除 38万円 | - | ○ | ◎ | ○ |
| 18 青色申告特別控除 65万・75万円 | - | ◎ | - | - |
| 19 住宅ローン控除の延長・拡充 | - | ○ | ○ | ◎ |
| 20 NISAの年齢下限撤廃 | - | ○ | - | ◎ |
| 21 ミニマムタックスの強化 | ○ | ○ | - | - |
| 22 働くシニアの年金控除調整 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 23 セルフメディケーション・ふるさと納税 | - | ○ | - | ◎ |
| 24 教育資金一括贈与の終了 | - | ○ | - | ○ |
| 25 事業承継税制 計画提出の延長 | ○ | ○ | - | - |
| 26 ガソリン・軽油の暫定税率廃止 | ◎ | ◎ | - | ◎ |
| 27 エコカー減税の見直し | ○ | ○ | - | ○ |
| 28 国際観光旅客税 3,000円 | ○ | ○ | - | ○ |
| 29 宿泊税(北海道・札幌市) | ○ | ○ | - | ○ |
| 30 暗号資産の申告分離課税(施行待ち) | ○ | ○ | - | ○ |
タイムライン:いつから何が変わるのか
令和8年度税制改正は「4月に一斉スタート」ではありません。2025年12月から2027年1月まで、時期をずらして順番に施行されます。「済」はすでに始まっているもの、「これから」はこれから対応が必要なものです。
- ガソリン(揮発油税等)の暫定税率25.1円/Lを廃止(令和7年12月成立の法律による)
- グローバル・ミニマム課税の見直し(2026年1月1日以後に開始する会計年度から。対象は連結売上高7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループ)
- 教育資金の一括贈与の非課税措置が終了(延長されずに期限到来)
- 賃上げ促進税制の「大企業向け」と「教育訓練費の上乗せ」が令和7年度末で廃止
- 軽油引取税の暫定税率17.1円/Lを廃止
- 防衛特別法人税:令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用
- 少額減価償却資産の特例が「40万円未満」に拡大(4月1日以後の取得分から)
- 中小企業経営強化税制・投資促進税制の工具器具備品の下限が40万円以上に
- 食事支給の非課税枠が月7,500円に・深夜勤務の夜食代は650円に
- マイカー通勤の非課税枠拡大(片道65km以上の区分新設・駐車場代の加算):4月1日以後に支払う通勤手当から
- 外形標準課税の対象拡大(資本金+資本剰余金50億円超の親法人の100%子法人):令和8年4月1日以後開始事業年度から
- 宿泊税:北海道と札幌市で4月1日宿泊分から課税開始(地方税条例)
- 自動車重量税のエコカー減税:燃費基準の達成度を引き上げたうえで2年延長(2027年5月にさらに引上げ)
- 国際観光旅客税が出国1回1,000円→3,000円に(7月1日以後の出国から。海外出張の旅費精算に影響)
- インボイスの8割控除が「7割控除」に縮小(免税事業者からの仕入れに係る経過措置。2026年10月〜2028年9月は70%)
- 経過措置の適用上限を新設:1免税事業者ごとの仕入れにつき年1億円(令和8年10月1日以後に開始する課税期間から)
- 2割特例は「令和8年9月30日を含む課税期間」の分で終了(個人事業主は令和8年分の申告が最後)
- 外国人旅行者向けの免税販売が「リファンド方式」へ移行(11月1日購入分から。販売時は税込で受け取り、税関確認後に返金。※令和7年度改正で決定済みの制度がこのタイミングで施行)
- 基礎控除の引上げ(最大104万円)と給与所得控除の最低保障74万円が施行。令和8年分の所得税に遡って適用され、2026年12月の年末調整で精算する(毎月の源泉徴収税額表の改定は2027年1月から)
- 防衛特別所得税1%が創設・復興特別所得税は2.1%→1.1%に引下げ(課税期間は10年延長)。給与の源泉徴収税額表も改定
- 個人事業主向けの「3割特例」スタート(令和9年分・10年分の消費税申告で利用可能)
- 青色申告特別控除が65万円(e-Tax等)・75万円(優良な電子帳簿)に(令和9年分から)
- ミニマムタックスの強化(特別控除1億6,500万円・税率30%。令和9年分から)
- ひとり親控除38万円へ引上げ(令和9年分から)
- 公的年金等控除の調整措置(給与所得控除との合計が280万円を超える場合。令和9年分から)
- 研究開発税制の一般型:控除率カーブ・控除上限の見直し(令和9年4月1日以後開始事業年度)
- 2028年4月1日〜:越境ECの少額免税見直し・プラットフォーム課税(令和10年4月1日から)
※「済」の項目も、経理処理や社内規程がまだ旧ルールのままになっていないかの確認が必要です(チェックリスト参照)。
業種別・まず見るべきカードはこれ
「全部読む時間がない」という方のために、業種ごとに影響の大きいカードを3つずつ挙げます。
| 業種 | 最優先で読むカード | 理由 |
|---|---|---|
| 建設業 | 26 軽油/08 インボイス/02 40万円特例 | 重機の燃料コスト減と一人親方への外注(免税事業者)の控除縮小が直撃 |
| 運送業 | 26 軽油/03 賃上げ税制/14 通勤手当 | 燃料減税を原資にドライバーの賃上げ・手当拡充を設計できる |
| 飲食業 | 15 食事支給/09 2割特例終了/08 インボイス | まかない・従業員食の非課税枠倍増と、小規模店の消費税負担増への備え |
| 小売・EC | 10 リファンド方式/11 越境EC/02 40万円特例 | 免税販売の店頭オペ刷新と海外勢との競争条件の変化 |
| 宿泊・観光 | 29 宿泊税/10 リファンド方式/28 出国税 | 特別徴収の申告納入が新たな月次業務になる |
| 医療・介護 | 15 夜食・食事/03 賃上げ税制/13 扶養の壁 | 夜勤の食事支給と、パート職員の就業調整緩和が人手不足対策に効く |
| IT・士業・コンサル | 09 3割特例/18 青色75万円/05 研究開発 | フリーランスの消費税と電子帳簿、自社開発の税額控除 |
| 農業・水産 | 26 燃料/08 インボイス/02 40万円特例 | 燃料コストと直売所・仕入先の免税事業者対応 |
法人税編|会社の税金はここが変わる(カード01〜07)
法人税関係は「新しい税金の開始(防衛特別法人税)」と「中小企業の投資減税の拡充(40万円未満の即時経費化など)」、そして「賃上げ税制のスリム化」が柱です。決算期をまたいで適用時期が異なるので、自社の事業年度がいつ始まるかを意識して読んでください。
防衛特別法人税がスタート|税額ゼロでも申告が必要
いつから:令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から。3月決算なら2027年3月期、12月決算なら2027年12月期が最初の対象です。
計算式はシンプルです。基礎控除が年500万円あるため、法人税額が500万円以下の会社は納税額が出ません。
法人税額500万円は、軽減税率を使う中小法人でいえば課税所得およそ2,440万円に相当します(所得800万円×15%=120万円、残り約1,638万円×23.2%=約380万円)。つまり所得約2,400万円以下の会社は納税ゼロ。ただし「納税ゼロ=何もしなくてよい」ではなく、法人税の申告義務がある法人は防衛特別法人税の申告書(法人税申告書とあわせて提出)が必要です。
- 自社の直近の法人税額を確認する(500万円超なら超過分×4%を納税予測に織り込む)。
- 会計事務所・申告ソフトが新様式(防衛特別法人税の別表)に対応しているか確認する。
- 納税が出る会社は、中間申告・納付資金のスケジュールに上乗せ分を反映する。
注意:「うちは小さいから関係ない」と申告書の添付を漏らすのが今年いちばん起きやすいミスです。税額ゼロでも申告対象である点を、決算チェックリストに追加しておきましょう。
少額減価償却資産の特例が「40万円未満」に拡大
いつから:令和8年(2026年)4月1日以後に取得した資産から。適用期限は令和11年(2029年)3月31日まで延長されました。対象は青色申告の中小企業者等で、従業員要件は500人以下→400人以下に変わっています。
取得価額ごとの取扱いは次の4区分になります。「39万円台のパソコンや厨房機器が即時経費化できる」ようになったのが実務上の変化です。
| 取得価額(1単位) | 処理方法 | 対象 | 償却資産税(固定資産税) |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額をその年の経費に | すべての事業者 | 対象外 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却(3年で均等に経費化)も選択可 | すべての事業者 | 一括償却を選べば対象外 |
| 20万円以上40万円未満 | 少額減価償却資産の特例で全額経費(年間合計300万円まで) | 青色申告の中小企業者等(従業員400人以下) | 課税対象になる |
| 40万円以上 | 通常の減価償却(税額控除・特別償却の検討へ→カード06) | すべての事業者 | 課税対象 |
- 2026年4月1日以後の取得分から、経費化の判定ラインを「40万円未満」に更新する(社内の購買基準・経理マニュアルも修正)。
- 年間300万円の枠を意識して、期末の設備購入は取得日と合計額を管理する。
- 特例を使った資産は償却資産申告(1月末)の対象になるため、資産台帳に忘れず登録する。
注意:「40万円未満」は税込経理なら税込金額、税抜経理なら税抜金額で判定します。判定単位は「1台・1組」ごとです。詳しい仕訳例は中小企業の経理ガイドもご覧ください。
賃上げ促進税制の見直し|中小向けは維持、教育訓練の上乗せは廃止
いつから:大企業向けの措置と教育訓練費の上乗せは令和7年度末(2026年3月31日)で廃止。令和8年4月1日以後に開始する事業年度は新しい体系で計算します。中小向け措置の適用期限は令和9年3月31日までに開始する事業年度です。
| 区分 | 改正前(〜令和7年度) | 改正後(令和8年度〜) |
|---|---|---|
| 中小企業向け(本体) | 全雇用者の給与総額+1.5%→15%控除/+2.5%→30%控除 | 変更なし(維持) |
| 教育訓練費の上乗せ | +10% | 廃止 |
| くるみん・えるぼし等の上乗せ | +5% | 維持(最大35%) |
| 赤字年度の繰越控除 | 5年間 | 維持 |
| 大企業向け | +3%〜で最大35% | 廃止(令和7年度末まで) |
| 中堅企業向け | +3%〜 | 要件を見直したうえで、期限到来時に廃止予定 |
- 令和8年4月以後に開始する事業年度の節税試算から、教育訓練費の上乗せを外す(最大35%で再計算)。
- 控除の判定に使う「全雇用者の給与総額」を月次で把握できるよう、給与データの集計方法を決めておく。
- 赤字でも諦めない:中小は控除しきれない額を5年間繰り越せるため、賃上げした年は忘れずに明細書を添付する(繰越分を使う年は、その年も給与総額が前年を上回っていることが要件)。
注意:最低賃金の引上げ(令和8年度の目安は全国加重平均1,176円、北海道は1,131円見込み)で給与総額は自然に増えます。「気づいたら要件を満たしていた」ケースが多いので、決算前に必ず判定を。賃上げ原資の考え方は節税一覧もあわせてどうぞ。
「大胆な設備投資」促進税制の創設|即時償却または7%控除
いつから:産業競争力強化法の改正法の施行日から令和11年(2029年)3月31日までに投資計画の確認を受け、確認日から5年以内に取得・事業供用した設備が対象です。
対象は全業種で、機械装置・工具器具備品・建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアが含まれます。投資利益率(ROI)15%以上の計画であることが条件で、控除上限は法人税額の20%です。輸出入環境の急変への対応計画の認定を受けた場合は最大3年の繰越もできます。
- 5億円以上の設備投資(工場新設・大型機械の入替え・基幹システム刷新など)の計画があるなら、この税制の適用可否をまず検討する。
- 計画期間中は中小企業経営強化税制など他の投資税制と併用できないため、どちらが有利かを試算して選ぶ。
- 産業競争力強化法の「確認」手続きが入口になるので、着工前に専門家へ相談する(事後適用はできません)。
注意:一般的な中小企業の設備投資(数百万〜数千万円)には、引き続き中小企業経営強化税制(即時償却/10%控除)が主力です(→カード06)。
研究開発税制の強化|中小の優遇は延長+3年繰越が可能に
いつから:戦略技術領域型は産業技術力強化法の改正法施行日〜令和11年3月31日の認定計画分。一般型の控除率カーブ見直しは令和9年(2027年)4月1日以後開始事業年度からです。
「研究開発」というと大企業のイメージがありますが、新製品の試作、製造工程の改良、自社システムの開発なども試験研究費に該当する余地があります。中小企業は税額控除率12%〜17%で、控除上限は法人税額の25%〜。赤字や税額不足で使い切れなかった年の分を3年繰り越せるようになったのは、業績の波が大きい中小企業には大きな改善です。
- 開発・試作・改良の人件費や材料費を「試験研究費」として区分集計する勘定科目・プロジェクト管理を整える。
- 税額控除を使い切れなかった年も、繰越のために申告書へ明細書を添付しておく。
- AI・半導体・バイオ等の6分野に関わる開発は、戦略技術領域型(認定制・控除率40%〜)の対象になるか確認する。
中小企業経営強化税制など|対象となる器具備品は「40万円以上」に
いつから:令和8年(2026年)4月1日以後の取得分から。中小企業経営強化税制そのものは令和9年3月31日まで(令和7年度改正で延長済み)です。
| 設備の金額 | 使う制度 | 効果 |
|---|---|---|
| 40万円未満 | 少額減価償却資産の特例(カード02) | その年に全額経費(年300万円まで) |
| 40万円以上の器具備品・160万円以上の機械装置など | 中小企業経営強化税制(経営力向上計画の認定が必要) | 即時償却 または 税額控除10%(資本金3,000万円超は7%) |
- 2026年4月以後の設備投資は「40万円」を境に使う制度を整理する(両方は使えないので有利判定)。
- 経営強化税制を使うなら、取得前に経営力向上計画の認定を受けるスケジュールを組む。
- 投資促進税制の測定工具・検査工具は「1台120万円以上、または1台40万円以上かつ合計120万円以上」に変わった点を確認する。
注意:経営力向上計画は原則「取得前」の認定が必要です。例外的な事後手続きには期限があるため、見積書が出た段階でご相談ください。
外形標準課税の対象拡大|大企業の100%子会社は要確認
いつから:令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から(令和6年度改正で決定済みの措置がこのタイミングで施行されるものです)。新たに対象となる法人には、負担増を段階的に緩和する経過措置が設けられています。なお「減資による外形外し」への対応(前年度に外形対象だった資本金1億円以下・資本金+資本剰余金10億円超の法人を対象に含める措置)は令和7年4月1日以後開始事業年度からすでに始まっています。
- 親会社の「資本金+資本剰余金」が50億円を超えるグループの子会社は、自社の資本金+資本剰余金が2億円超かを確認する。
- 対象になる場合、外形標準課税(所得以外に給与・純資産等へ課税)で税負担がどう変わるかを試算する。
- 赤字でも納税が発生する税目のため、資金繰り計画に反映する。
注意:判定基準は「資本金50億円超」ではなく「資本金+資本剰余金50億円超」です。持株会社の下にある事業子会社は特に確認してください。
消費税・インボイス編|2026年10月が節目(カード08〜11)
消費税は今回の改正でいちばん「うっかり」が起きやすい分野です。2026年10月1日にインボイスの経過措置が2段階で動くため、期の途中で経理処理の切替えが必要になります。個人事業主には「2割特例の次」の制度も用意されました。
免税事業者からの仕入れ|8割控除が「7割控除」へ・年1億円の上限も新設
いつから:2026年(令和8年)10月1日以後に行う課税仕入れから70%控除。年1億円の上限は令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
もともとは「2026年10月に50%へ縮小→2029年9月で終了」の予定でしたが、令和8年度改正で段階を細かくし、終了を2年延長する形に組み替えられました。改正後のスケジュールは次のとおりです。
- インボイスのない仕入先(外注先・仕入先・家賃など)をリストアップし、年間の取引額と消費税影響額(10月からは仕入税額の30%が控除不可)を把握する。
- 会計ソフトの税区分を9月30日までの仕入れは「控除80%」、10月1日以後は「控除70%」で入力するよう、経理担当者と記帳ルールを共有する(期の途中で切替えが必要)。
- 影響が大きい取引先とは、課税事業者への転換や価格の見直しを話し合う。その際、一方的な値下げ要求は独占禁止法や中小受託取引適正化法(旧下請法・2026年1月改称)上問題になり得るため、協議の記録を残す。
注意:同じ免税事業者からの仕入れが年1億円を超える部分は経過措置の対象外になります(上限は今後さらなる引下げも検討と明記されています)。経過措置の適用には帳簿への記載要件(「80%控除対象」「70%控除対象」等の記載)がある点も従来どおりです。会計ソフト別の設定方法はインボイス制度 完全ガイドの第25章で解説しています。
2割特例は2026年で見納め|個人事業主には「3割特例」を新設
いつから:2割特例は「令和8年9月30日を含む課税期間」まで。個人事業主は令和8年分(2026年分・2027年3月申告)が最後です。3割特例は令和9年分・令和10年分の申告で使えます。
| 対象者 | 〜令和8年分 | 令和9年分・10年分 | 令和11年分〜 |
|---|---|---|---|
| 個人事業主(インボイス登録で課税事業者になった人) | 2割特例 | 3割特例(新設)または簡易課税・本則 | 簡易課税または本則 |
| 法人(同上) | 2割特例(令和8年9月30日を含む課税期間まで) | 簡易課税または本則 | 簡易課税または本則 |
3割特例も2割特例と同じく事前届出は不要で、申告時に選択できます。また、2割特例・3割特例から簡易課税に移行する場合は、簡易課税を適用しようとする課税期間の確定申告期限までに届出をすればよいという緩和措置も設けられました(通常は課税期間の開始前が届出期限)。
- 個人事業主:令和9年分からは納税額が「売上税額の2割→3割」に増える前提で、毎月の納税積立額を1.5倍に見直す。
- 法人:2割特例が使える最後の課税期間を確認し、その翌期から簡易課税と本則課税のどちらが有利かを試算する(業種のみなし仕入率と実際の課税仕入れ割合を比較)。
- 簡易課税を選ぶ場合の届出期限(確定申告期限までの特例が使えるケースか)をカレンダーに登録する。
注意:基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるなど、インボイスと関係なく課税事業者になる年は2割特例・3割特例とも使えません。有利判定のシミュレーションは税務計算ツール集の消費税ツールでも試算できます。
外国人旅行者への免税販売が「リファンド方式」に|2026年11月から
いつから:2026年(令和8年)11月1日の購入分から。旅行者は購入日から90日以内に出国し、空港等の端末で税関確認を受ける流れになります。
不正転売対策のための改正で、免税店側は「販売時に免税」から「販売後に返金」へオペレーションが根本から変わります。消耗品の特殊包装といった販売時の現行ルールも見直される一方、購入記録情報に加えて税関確認情報の保存が免税適用の条件になります。
- 免税販売システム(承認送信事業者のサービスやPOS)がリファンド方式に対応するか、改修スケジュールを確認する。
- 返金の方法(クレジットカードへの払戻し・キャッシュレス送金など)と手数料負担を決め、店頭の案内・多言語表示を差し替える。
- 10月31日までの販売分(旧方式)と11月1日以後の販売分が混在する切替期の在庫・レジ運用を決めておく。
注意:返金前に旅行者が帰国してしまった等のトラブルに備え、返金条件を購入時に書面・画面で明示しておくことが重要です。観光庁・国税庁が事業者向け説明資料を公開しています(→出典)。
越境ECの消費税が適正化|1万円以下の輸入品も課税・プラットフォーム課税へ
いつから:2028年(令和10年)4月1日から。対象となるプラットフォーム事業者は、対象取引の合計額が50億円超の事業者です。
国内の小売・EC事業者にとっては、海外セラーとの「税負担の不公平」が解消される方向の改正です。一方、海外仕入れ・輸入販売を行う事業者は、輸入時課税や販売プラットフォームからの徴収の仕組みが変わるため、2027年以降に公表される実務指針を追う必要があります。
- 海外プラットフォーム経由の販売・仕入れがある場合、2028年4月に向けて取引フロー(誰が納税者になるか)を整理する。
- 少額輸入品を扱うビジネスは、仕入原価に消費税分を織り込んだ価格設定を再検討する。
- 国内ECは競争環境の変化(海外勢の実質値上げ)を踏まえた価格戦略を考える。
給与・年末調整編|2026年12月の年調がヤマ場(カード12〜17)
給与関係は「基礎控除の引上げ」「扶養の壁の拡大」「通勤手当・食事の非課税枠拡大」と、従業員の手取りが増える改正がそろいました。その分、給与計算担当者は2026年12月の年末調整と2027年1月の税額表改定という2回の山を越えることになります。
基礎控除が最大104万円に|「178万円の壁」は12月の年末調整で反映
いつから:令和8年分(2026年分)の所得税から。施行は2026年12月1日で、12月の年末調整で1年分をまとめて精算します。毎月の源泉徴収税額表の改定は2027年1月からです。
今回の改正には「2年ごとに物価上昇へ連動して基礎控除等を見直す」という仕組みの導入も含まれます。令和8・9年分の控除額は次のとおりです。
| 合計所得金額(給与収入の目安) | 基礎控除(令和8・9年分) | 改正前(令和7年分) |
|---|---|---|
| 489万円以下(給与収入 約665万円以下) | 104万円(62万円+上乗せ42万円) | 68万〜95万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 67万円(62万円+上乗せ5万円) | 63万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 62万円 | 58万円 |
| 2,350万円超 | 従来どおり段階的に縮小 | 同左 |
- 年末調整ソフト・給与ソフトが令和8年分の新様式(基礎控除申告書の区分変更)に対応しているか、11月までにアップデートを確認する。
- 今年の年末調整は例年より還付額が大きくなる(1〜11月は旧税額表で徴収しているため)。12月給与の資金繰りと、従業員への「還付が増える理由」の説明文を準備する。
- 個人事業主・経営者本人も令和8年分の確定申告から基礎控除が変わるため、予定納税や納税予測を更新する。
注意:個人住民税は所得税と控除額の体系が異なります(今回の上乗せ特例は所得税の措置)。「所得税はゼロでも住民税はかかる」ケースが引き続きあるため、従業員説明では税目を分けて伝えましょう。
扶養の所得要件が62万円に|パート・学生バイトの「壁」がさらに緩和
いつから:令和8年分(2026年分)から。2026年12月の年末調整・扶養控除等申告書の確認で実務に登場します。
| 年 | 扶養に入れる給与収入のライン | 内訳 |
|---|---|---|
| 令和6年分まで | 103万円以下 | 所得要件48万円+給与所得控除55万円 |
| 令和7年分 | 123万円以下 | 所得要件58万円+給与所得控除65万円 |
| 令和8年分〜 | 136万円以下 | 所得要件62万円+給与所得控除74万円 |
大学生年代(19〜22歳)の子については、令和7年分から「特定親族特別控除」があり、給与収入が136万円を超えても一定額までは親の控除が段階的に続きます。「子のバイト代が増えたら親の税金が一気に増える」という崖は、かなり緩やかになりました。
- 年末調整の前に、扶養控除等申告書の記載(見積所得)を新しい基準(62万円・給与収入136万円)で点検する。
- 「もっと働きたい」パート・アルバイトに新しい壁の水準を案内し、シフト・採用計画に反映する(人手不足対策としても有効)。
- 社会保険の壁(106万円・130万円)は今回の税制改正では変わっていないことを必ずセットで説明する(ここの混同が最多トラブルです。なお年金制度改正により短時間労働者への社会保険の適用拡大が別途段階的に進む予定のため、シフト設計はそちらの動向も確認)。
注意:配偶者手当など社内の家族手当の支給基準を「103万円」「123万円」のまま放置していると、税の壁とズレて不公平が生じます。賃金規程の基準額もあわせて見直しを。
マイカー通勤の非課税枠が拡大|65km以上の区分新設・駐車場代も加算OK
いつから:2026年(令和8年)4月1日以後に支払う通勤手当から適用されています。
| 片道の通勤距離 | 非課税限度額(月額) |
|---|---|
| 2km以上55km未満の各区分 | 変更なし(4,200円〜32,300円) |
| 55km以上65km未満 | 38,700円(変更なし) |
| 65km以上75km未満(新設) | 45,700円 |
| 75km以上85km未満(新設) | 52,700円 |
| 85km以上95km未満(新設) | 59,600円 |
| 95km以上(新設) | 66,400円 |
広い北海道では片道65km超の通勤も珍しくありません。これまで課税扱いだった遠距離通勤手当の一部が非課税にできるため、従業員の手取りと会社の源泉事務の両方に効く改正です(社会保険料の算定では通勤手当は引き続き報酬に含まれる点は変わりません)。
- 車通勤者の通勤距離を最新の住所で洗い直し、給与ソフトの非課税限度額マスタを新区分に更新する(4月に未対応だった場合は年末調整までに精算)。
- 通勤用駐車場を従業員が契約している場合、料金相当額(上限5,000円)の加算要件を国税庁Q&Aで確認し、手当規程に反映する。
- 通勤手当規程・車両管理規程の金額表を差し替え、就業規則の届出が必要か確認する。
食事支給の非課税枠が月7,500円に倍増|夜食代は650円に
いつから:2026年(令和8年)4月1日以後の支給分から。
非課税になる条件は従来と同じ2つセットです:①従業員が食事代の半分以上を負担していること、②会社負担額(食事代-従業員負担)が月7,500円以下であること。たとえば月15,000円の仕出し弁当なら、従業員7,500円・会社7,500円の折半で全額非課税にできます。物価高のなか、実質的な手取り支援策として使いやすくなりました。
- 現在の食事補助の会社負担額を確認し、7,500円までの拡大を福利厚生の選択肢として検討する(求人でもアピールできます)。
- 「半額以上を従業員負担」の要件を満たす徴収方法(給与天引き等)を設計する。現金で食事代を渡す方式は原則課税のまま。
- 深夜勤務がある事業所(飲食・介護・運送など)は、夜食の現物支給または650円以内の金銭支給のルールを整える。
防衛特別所得税1%が創設|復興特別所得税は1.1%に引下げ(2027年1月〜)
いつから:2027年(令和9年)1月1日から。給与の源泉徴収、報酬・料金の源泉徴収、預金利息などすべての所得税に関係します。
負担率の合計が変わらないため「手取りが減る改正」ではありませんが、税金の名目と内訳が変わるため、給与明細・納付書・申告書の様式対応が必要です。たとえば税理士や司法書士などへの報酬の源泉徴収税率10.21%は、内訳が「所得税10%+復興0.21%」から「所得税10%+復興・防衛分」に変わるものの、率としては同水準が維持される見込みです。
- 2027年1月の給与計算前に、給与ソフト・年調ソフトのアップデート(新しい源泉徴収税額表)を適用する。
- 源泉所得税の納付書(所得税徴収高計算書)の書き方・e-Taxでの納付手続に変更がないか、税務署からの案内を確認する(電子納税の手順ガイド参照)。
- 2027年分以降の役員報酬・配当の手取り計算にも税目追加を反映する。
ひとり親控除が38万円に引上げ(2027年分から)
いつから:所得税は2027年(令和9年)分から。2027年12月の年末調整で反映します。
要件は従来どおり、①婚姻していない(または配偶者の生死不明)、②生計を一にする子(総所得金額等62万円以下)がいる、③本人の合計所得金額500万円以下、④事実婚の相手がいない、の4つです。子の所得要件が62万円に連動して見直されている点も押さえておきましょう。
- 令和9年分の扶養控除等申告書から新しい控除額で処理する(令和8年分の年調では従来額のまま)。
- 該当従業員には所得税と住民税で適用開始が1年ずれることを伝える。
- 給与ソフトの控除マスタが自動更新されるか確認する。
個人事業主・経営者個人編(カード18〜23)
個人の税金では、フリーランス・個人事業主に直結する青色申告特別控除の引上げと、株式売却・M&Aに関わるミニマムタックスの強化が要注目です。住宅ローン控除・NISAなど、従業員からの質問が増えるテーマもここでまとめます。
青色申告特別控除が65万円・75万円に|電子帳簿がカギ(2027年分から)
いつから:令和9年分(2027年分)の所得税から。いま準備している令和8年分(2027年3月申告)までは現行の55万・65万円のままです。
| 要件 | 令和8年分まで | 令和9年分から |
|---|---|---|
| 複式簿記で記帳+e-Tax申告または電子帳簿保存 | 65万円 | 65万円 |
| 複式簿記で記帳(e-Tax等なし) | 55万円 | 要件が見直されるため、e-Tax申告への切替えを前提に準備するのが確実 |
| 優良な電子帳簿(訂正削除履歴の残るソフト等+届出) | 65万円 | 75万円 |
| 簡易な記帳(前々年の収入1,000万円超の場合) | 10万円 | 10万円の対象外(複式簿記への移行が必要) |
ポイントは「紙とエクセルの帳簿からの卒業」を促す設計になっていることです。会計ソフトで記帳しe-Taxで申告するだけで65万円、優良な電子帳簿の届出まで進めば75万円。控除75万円そのものの効果は(控除がない場合と比べ)年20万円前後になる方も多く、今回の上乗せ10万円分だけでも年3万円程度の負担減です(下の具体例参照)。
- 2026年中に会計ソフトでの記帳とe-Tax申告の体制を整える(2027年分からの適用にスムーズに乗るため)。
- 「優良な電子帳簿」の要件(訂正・削除の履歴が残る、相互関連性、検索性など)を満たすソフト設定と、適用を受ける旨の届出を確認する。
- 収入1,000万円超で簡易記帳の方は、複式簿記への移行を会計ソフト導入とセットで進める。
注意:65万円控除には申告期限内の提出が必須です。期限後申告になると控除が減るルールは従来どおりなので、申告スケジュール管理もセットで。
住宅ローン控除が5年延長|既存住宅の枠を再編(2030年入居分まで)
いつから:令和8年(2026年)以後の入居分から新しい枠組みが適用されます。
| 住宅の区分 | 新築・買取再販 | 既存住宅(中古) |
|---|---|---|
| 認定住宅(長期優良・低炭素) | 4,500万円(子育て世帯等 5,000万円) | 3,500万円(子育て世帯等 4,500万円) |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円(同 4,500万円) | 3,500万円(同 4,500万円) |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円(同 3,000万円) | 2,000万円(同 3,000万円) |
| その他の住宅 | 原則対象外(経過措置あり) | 2,000万円・控除期間10年 |
既存住宅の省エネ基準適合住宅は改正前の3,000万円から2,000万円へ縮小されている点には注意が必要です。控除期間は新築13年・既存10年、所得要件は合計所得2,000万円以下、床面積は50㎡以上(合計所得1,000万円以下なら40㎡以上も可)です。令和10年(2028年)以降は、災害レッドゾーンでの新築が対象外になるなど立地要件も加わります。
- 住宅購入を検討中の方は、省エネ性能(認定・ZEH・省エネ基準)で借入限度額が大きく変わるため、物件の性能証明書類を購入前に確認する。
- 給与担当者は、初年度は確定申告・2年目以降は年末調整で控除する流れと、従業員から預かる残高証明書類を再確認する。
- 「子育て世帯等」(19歳未満の子がいる、または夫婦いずれかが40歳未満)の上乗せに該当するかをチェックする。
NISAが0歳から使えるように|子ども版つみたて枠を新設(2027年から)
いつから:令和9年(2027年)以後の口座開設・投資分から。
ジュニアNISA廃止(2023年)以来なくなっていた「子ども名義の非課税投資」が復活する形です。教育資金の一括贈与の非課税措置が2026年3月で終了した(→カード24)ため、子・孫への資金移転の受け皿としても位置づけられます。12歳以降は子の同意を条件に払出しができ、大学進学などのライフイベントに備えられます。
- 子・孫への贈与を考えている場合、暦年贈与(年110万円)+子ども版NISAという組み合わせを検討する。
- 2027年の制度開始に向けて、金融機関の対応スケジュール(口座開設の受付時期)を確認する。
- 経営者・従業員向けのマネー教育や福利厚生(職場つみたて等)の話題として押さえておく。
超高所得への「ミニマムタックス」強化|株式・M&Aの大型譲渡は要注意(2027年分から)
いつから:令和9年分(2027年分)の所得から。
この制度は「(基準所得金額-特別控除)×30%」が通常の所得税額を上回る場合に、その差額を追加で納めるものです(基準所得金額=各種所得の合計からNISAの非課税分など一定のものを除いた金額)。株式譲渡益は分離課税15%(所得税分)のため、M&Aで数億円規模の譲渡益が出るケースでは追加負担が生じやすくなります。株式譲渡益が中心の場合、改正前はおおむね10億円超からだった影響ラインが約3.4億円超まで下がり、これまで対象外だった層にも網がかかる点が実務上のポイントです。
- 会社売却・事業譲渡・大口の株式譲渡を検討中なら、譲渡年が2026年(改正前)か2027年以後(改正後)かで税負担がどう変わるか試算する。
- 役員退職金との組み合わせ、譲渡年の分散などスキーム全体で最適化を検討する(→事業承継税制ガイド)。
- NISA内の利益やスタートアップ再投資の非課税分は対象外なので、対象所得の範囲を正しく把握する。
働くシニアの年金控除を調整|給与+年金の控除合計に280万円の目安(2027年分から)
いつから:令和9年分(2027年分)から。
「働きながら年金を受け取る」人が控除を二重に厚く受けられる状態を適正化する改正です。フルタイム勤務で給与収入が高めのシニアに影響が出る一方、パート程度の給与+年金という一般的なケースでは影響が限定的です。
- 継続雇用しているシニア従業員のうち、給与収入が多い方(目安として年850万円超で給与所得控除が上限195万円)への影響を確認する。
- 2027年分からの手取り変化を、再雇用契約の更新面談で説明できるようにしておく。
- 年金を受け取りながら役員報酬を得ている経営者は、報酬設計の再試算を行う。
セルフメディケーション税制の恒久化・ふるさと納税の上限見直し
いつから:セルフメディケーションは恒久化(それ以外の対象医薬品は5年延長)。ふるさと納税の上限は令和10年度分の住民税(令和9年の寄附)から。指定基準の見直し(寄附金の活用可能額6割以上)は令和8年10月からです。
- 医療費控除(10万円基準)に届かない年は、レシートを集めてセルフメディケーション税制(1.2万円超の部分・上限8.8万円)と比較する。
- 上限は寄附額ではなく住民税の特例控除額(合計約193万円)に対するもので、寄附額換算ではおおむね数百万円規模から影響します。大口の寄附をしている高所得の経営者は令和9年の寄附から要確認。
- どちらもワンストップ特例・確定申告の要否をあわせて確認する。
相続・贈与・事業承継編(カード24〜25)
資産税分野は要点を2つに絞ります。「教育資金の一括贈与が終了した」ことと「事業承継税制の計画提出は延長されたが、実行期限は延びていない」こと。どちらも期限を勘違いすると取り返しがつきません。
教育資金の一括贈与は終了|結婚・子育て資金も2027年3月まで
いつから:教育資金は令和8年3月31日の信託等をもって終了(既存契約は従来どおり続きます)。結婚・子育て資金は令和9年3月31日が期限です。
「まとめて渡す」枠は閉じられますが、祖父母や親が教育費・生活費をその都度出すことは、もともと贈与税がかかりません(扶養義務者間の通常必要な範囲)。学費の振込を都度行う、暦年贈与(年110万円)を積み重ねる、2027年からは子ども版NISA(→カード20)を使う、といった組み合わせで十分代替できるケースが大半です。
- 既存の教育資金口座がある家庭は、残高と使途証憑(領収書提出)の管理を続け、30歳到達時の残額課税に注意する。
- 結婚・子育て資金の一括贈与を検討しているなら、2027年3月までに金融機関で契約する(要件と使い勝手は事前確認を)。
- 今後の資金援助は「都度払い+暦年贈与+子ども版NISA」の組み合わせで設計し直す。
事業承継税制|計画の提出は2027年9月まで延長、でも実行期限は延びていない
いつから:計画の提出期限の延長は施行済み。個人版事業承継税制の計画は令和10年(2028年)9月30日までです。
| 手続 | 期限 | 今回の改正 |
|---|---|---|
| 特例承継計画の提出(法人版) | 令和9年9月30日 | 延長された |
| 贈与・相続の実行(法人版・特例措置) | 令和9年12月31日 | 延長なし(要注意) |
| 個人版の承継計画の提出 | 令和10年9月30日 | 延長された |
つまり「計画はまだ間に合うが、実際の株の移転は2027年内に完了させる必要がある」という時間割です。後継者の役員就任、株価の把握、贈与の実行、翌年の申告・担保提供までを逆算すると、2026年中に動き出すのが実質的なデッドラインです。計画の提出だけなら贈与の義務は生じないため、「迷っているならまず提出」が定石です。
- 後継者候補がいる会社は、特例承継計画を提出済みか確認し、未提出なら2027年9月までに都道府県へ提出する(提出だけならデメリットはほぼありません)。
- 適用を本気で考えるなら、2026年中に株価算定と贈与スケジュールを固め、2027年内に贈与を実行する。
- 納税猶予を使わない選択肢(暦年贈与・持株会社・種類株式など)との比較検討も行う(→事業承継税制 完全ガイド)。
注意:制度適用後は雇用・保有継続などの事後要件が長期間続きます。「税金ゼロ」だけで飛びつかず、取消リスクまで含めた設計が必須です。
車・燃料・出張・地域編(カード26〜29)
最後は日々のコストに直結する分野です。ガソリン・軽油の減税はすでに施行済み。一方で出張関係は「出国税の引上げ」「北海道・札幌市の宿泊税」と負担が増える方向の変化が続きます。
ガソリン・軽油の暫定税率が廃止|燃料コスト管理を更新しよう
いつから:ガソリン(揮発油税等)は2025年12月31日から、軽油(軽油引取税)は2026年4月1日から施行済みです。
なお、店頭価格は2025年秋から補助金の拡充で先行して引き下げられ、廃止日に「補助金から減税へ」切り替えられた経緯があります。注意したいのは「税金が下がった=店頭価格がさらに下がる」ではないことです。店頭価格は原油市況や為替で動くため、税引下げ分と市況変動を分けて把握しないと、価格転嫁や燃料サーチャージの交渉で不利になります。運送業・建設業では、燃料単価の前提を旧税率のまま置いている見積書・原価表の更新が急務です。
- 車両費・燃料費の予算単価と見積原価表を、暫定税率廃止後の水準に更新する(ガソリン▲25.1円/L・軽油▲17.1円/L)。
- 運送契約の燃料サーチャージや燃料調整条項を見直し、荷主・元請と改定時期を協議する。
- 2026年3月以前の軽油の在庫・請求書は旧税率が混在するため、単価の切替日を仕入先に確認して検収する。
注意:ガソリン税の廃止に伴う道路財源の代替は今後の税制改正の論点として残っています(→これから決まる改正)。
エコカー減税の基準が厳しく|社用車の入替えは減免区分を確認
いつから:2026年(令和8年)5月1日から新基準。EV・PHVなどの電動車は引き続き2回免税です。
ガソリン車・ディーゼル車は「2030年度燃費基準をどれだけ達成しているか」で免税・軽減の区分が決まります。同じ車種でもグレードや駆動方式で達成度が変わるため、見積書の「重量税」欄の金額確認が実務のポイントです。
- 社用車の入替え計画がある場合、候補車の燃費基準達成度と重量税額をディーラー見積で確認する。
- EV・PHVは車両価格が高い分、免税や補助金・充電設備も含めた総コストで比較する。
- 車検のタイミング(継続検査時の重量税)にも減免が関係するため、保有台数が多い会社は台帳で管理する。
出国1回3,000円に|国際観光旅客税が3倍(2026年7月〜)
いつから:2026年(令和8年)7月1日以後の出国から施行済み(7月1日より前に締結した一定の運送契約に基づく出国は旧税率)。
- 海外出張の旅費予算を1回あたり+2,000円で更新する(頻繁に渡航する会社は年間影響を試算)。
- 経理処理を確認する:出国税は消費税の課税対象外(不課税)。航空券の明細で区分し、租税公課または旅費交通費として一貫した処理にする。
- 2026年6月以前発券・7月以後出国のチケットは経過措置の対象か、精算時に領収書で確認する。
宿泊税が北海道・札幌市でスタート|2026年4月1日宿泊分から
いつから:2026年(令和8年)4月1日の宿泊分から施行済みです。
宿泊事業者(ホテル・旅館・簡易宿所・民泊)は、宿泊者から税を預かって申告・納入する特別徴収義務者になります。出張の多い会社側でも、宿泊費の領収書に宿泊税が別建てで記載されることが多くなり、消費税の課税対象外(不課税)として区分する経理処理が必要です。
- 宿泊事業者:毎月の申告・納入スケジュールと帳簿様式を整える(手順は電子納税ガイドの宿泊税の章で図解しています)。
- 出張精算:宿泊税は消費税不課税のため、領収書の税区分を分けて入力するよう経理ルールを更新する。
- 旅費規程が「宿泊料実費(上限あり)」の場合、宿泊税を実費精算の範囲に含めるかを明文化する。
注意:税額区分や免除対象(修学旅行等)の詳細は北海道・札幌市の公式ページで最新情報を確認してください(→出典)。ニセコエリア(倶知安町)など独自の宿泊税がある自治体もあります。
これから決まる改正・令和9年度の動向(カード30)
暗号資産は「申告分離課税20%」へ|施行日はこれから確定
いつから:金商法改正法の施行日の属する年の「翌年1月1日」以後の譲渡から。関連法の成立・施行スケジュール次第のため、最短でも2027年以降になる見込みです。それまでは従来どおり雑所得(総合課税・最高55%)です。
- 現時点の売却益は総合課税のままなので、「もう20%になった」と誤解して売却しない(適用開始前の売却は従来ルール)。
- 取引所ごとの年間損益データを毎年保存し、移行後の取得価額・損失繰越の証拠を残す。
- 対象になる暗号資産の範囲(金商法の規制対象)が政令等で示されるため、保有銘柄が含まれるか続報を確認する。
令和9年度税制改正はどうなる?(2026年8月時点の見通し)
税制改正は毎年、8月末に各省庁の要望が出そろい→12月中旬に与党・政府の「大綱」→翌年3月末に法律成立という流れで進みます。いまはちょうど令和9年度改正の要望が出はじめた段階です。現時点で報道・大綱の検討事項ベースで挙がっている主な論点は次のとおりです(いずれも未確定です)。
| 論点 | 中小企業への意味 |
|---|---|
| ガソリン暫定税率廃止に伴う道路財源の代替(車体課税全体の見直し) | 自動車税・重量税の体系が変わる可能性。車両保有コストに直結 |
| 基礎控除等の物価連動の運用(令和10・11年分の控除額改定) | 2年ごとの見直しルールに基づき、次回改定額が令和9年末に示される見込み |
| 暗号資産の分離課税の施行時期(カード30) | 金商法改正との同時進行を注視 |
| 年金課税・退職金課税など働き方に中立な税制の議論 | 役員退職金の設計に将来影響し得るため動向確認 |
| インボイス経過措置の上限(年1億円)の更なる引下げ検討 | 大綱に「今後、更なる引下げについて検討」と明記済み |
12月の大綱公表後、このページを更新します。速報段階の情報で動くと空振りになりやすいので、「大綱に載ってから準備、法律成立後に実行」が原則です。
実務対応カレンダー|2026年8月〜2027年5月
ここまでの30項目を「いつ・何をするか」に落とし込んだカレンダーです。自社に関係する行だけ拾って、そのまま社内のToDoにしてください。
- 10月1日以後の仕入れから税区分を「控除70%」に切り替える(判定は仕入日ベース。9月30日までに行った仕入れは80%のまま)
- 年1億円の上限は「令和8年10月1日以後に開始する課税期間」から適用される。自社の適用開始期(3月決算なら2027年4月開始の期・個人は令和9年分)を確認し、該当しそうな仕入先の集計方法を決めておく
- 簡易課税・本則課税の有利判定を行い、必要な届出の期限を確認する
- 基礎控除の引上げを反映した年末調整を実施(例年より還付が大きくなるため、12月給与の資金繰りを確認)
- 従業員向けに「なぜ今年は還付が多いのか」の説明メモを配る(178万円の壁・手取り増の周知)
- 賃上げ促進税制の判定用に、年間の給与総額集計を締める(カード03)
- 給与計算を新しい源泉徴収税額表に切替え(基礎控除引上げ+防衛特別所得税1%・復興1.1%/カード16)
- 償却資産申告(1月末):40万円未満の特例を使った資産を申告に含める
- 法定調書・給与支払報告書の提出(新しい控除体系で作成されているか確認)
- 個人事業主:令和9年分から「3割特例」で納税額が変わるため、消費税の積立額を見直す
- 令和8年分の確定申告:基礎控除104万円(所得489万円以下)・2割特例の最後の申告(個人)
- 贈与税の申告(3月15日):教育資金・結婚子育て資金の既存契約の管理を確認
- 結婚・子育て資金の一括贈与は3月31日で終了(利用するなら駆け込み契約)
- 令和9年分から青色申告特別控除65万・75万円の要件(e-Tax・優良電子帳簿)を整える(カード18)
- 3月決算法人:2027年3月期の申告(5月末)から防衛特別法人税の申告書を添付(税額ゼロでも提出/カード01)
- 賃上げ促進税制(教育訓練上乗せなしの新体系)で控除額を計算する
- 特例承継計画の提出期限(9月30日)まで残り半年。株の移転実行(12月31日期限)から逆算して着手
自社チェックリスト(20問)|チェックした状態はこの端末に保存されます
ここまでの内容を「自社でやるべきこと」に変換したチェックリストです。すべてにチェックが付けば、令和8年度改正の主要な実務対応はひととおりカバーできています。判断に迷う項目は、リンク先のカードに戻って確認してください。
チェック済み:0 / 20
法人税の対応(5問)
消費税・インボイスの対応(5問)
給与・年末調整の対応(5問)
個人・その他の対応(5問)
よくある質問(FAQ)
赤字の会社でも防衛特別法人税の申告は必要ですか?
9月に納品を受けて、支払いが10月の仕入れは80%と70%のどちらですか?
免税事業者の外注先に「課税事業者になってほしい」とお願いしても大丈夫ですか?
3月決算の法人ですが、2割特例はいつの期まで使えますか?
年収178万円までなら本当に税金がかかりませんか?
従業員の手取りはいつから増えますか?
38万円のパソコンを買うなら、いつ買えば全額経費にできますか?
パートの時給アップでも賃上げ促進税制は使えますか?
特例承継計画を提出したら、必ず贈与を実行しないといけませんか?
宿泊税やレンタカーで払った軽油代は、消費税の計算でどう扱いますか?
ガソリンの税金が下がったはずなのに、店頭価格があまり下がらないのはなぜですか?
暗号資産の利益は、もう20%の税率で申告してよいのですか?
防衛特別法人税は損金(経費)になりますか?
40万円未満の特例は個人事業主でも使えますか?
基礎控除が104万円になると、住民税も同じように下がりますか?
インボイス経過措置の「年1億円」の上限はどう数えますか?
用語ミニ辞典|これだけ分かれば読み切れる
- 税制改正大綱(たいこう)
- 毎年12月に政府・与党がまとめる翌年度の税制改正の設計図。翌年3月末の法律成立を経て正式に決まります。
- 基準法人税額
- 防衛特別法人税の計算のもとになる金額で、所得税額控除や外国税額控除などを適用する前の法人税額。ここから500万円を引いた残りに4%をかけます。
- 合計所得金額
- 給与・事業・不動産などすべての所得を合計した金額。基礎控除の上乗せ(489万円以下)や扶養の判定(62万円以下)はこの金額で行います。給与収入そのものではない点に注意。
- 課税最低限
- 税金がかかり始める収入のライン。給与だけなら基礎控除104万円+給与所得控除74万円=178万円が令和8年分の所得税の課税最低限です。
- 経過措置
- 制度変更の影響をやわらげるための期間限定ルール。インボイスの「8割控除→7割控除」や「2割特例・3割特例」がその代表です。
- 2割特例・3割特例
- インボイス登録のために課税事業者になった小規模事業者が、納める消費税を「売上で預かった消費税の2割(個人は令和8年分、法人は令和8年9月30日を含む課税期間まで)・3割(個人の令和9・10年分)」に簡略化できる特例。
- 簡易課税・みなし仕入率
- 実際の仕入れを集計せず、業種ごとに決まった率(卸90%〜不動産40%)で仕入控除を計算する方式。基準期間の課税売上高5,000万円以下で選択できます。
- 即時償却・税額控除
- 設備投資の優遇の2類型。即時償却は「購入年に全額経費」で課税の繰延べ、税額控除は「設備の取得価額の7〜10%相当額を税金から直接差し引く」買い切りの減税。黒字が続く会社は税額控除が有利なことが多いです。
- 年末調整
- 毎月概算で天引きした所得税を、12月に正しい年税額へ精算する手続き。令和8年分は基礎控除の引上げをここで一括反映するため、例年より還付が大きくなります。
- 特別徴収義務者
- 税金を本人に代わって預かり、自治体・国に納める事業者のこと。宿泊税ではホテル・旅館・民泊運営者がこれにあたります。
出典・免責・関連ページ
主な出典(一次情報) ※すべて2026年8月8日時点で確認
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定) https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/index.html
- 財務省 パンフレット「令和8年度の税制改正」(令和8年4月発行) https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei2026_pdf/zeisei26_all.pdf
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」(令和8年4月) https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026tsukin/index.htm
- 国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/menzei/201805/format/002.htm
- 観光庁 消費税免税店サイト「新制度(リファンド方式)に関する情報(免税店向け)」 https://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/page01_000001_00019.html
- 資源エネルギー庁「ガソリンの暫定税率(当分の間税率)の廃止」特集ページ https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/zanteizeiritsu.html
- 経済産業省「令和8年度税制改正について」 https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2026/zeisei_k/index.html
- 中小企業庁「事業承継の支援策(事業承継税制)」 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html
- 札幌市「宿泊税」 https://www.city.sapporo.jp/citytax/shukuhakuzei/index.html
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