2026年度(令和8年度)税制改正は、中小企業と個人事業主の実務に直結する改正が揃った年です。結論から言うと、押さえるべき柱は5つ——①基礎控除の引上げ(課税最低限178万円へ)、②青色申告特別控除の75万円区分の新設、③少額減価償却資産の特例の40万円未満への拡充、④インボイス「2割特例」終了と「3割特例」の創設、⑤賃上げ・投資関連の見直し——です。本記事はこの5つの全体像と適用時期を整理するまとめ記事です。各論点の詳細は、それぞれの個別解説記事へのリンクからご覧ください。札幌の税理士・公認会計士事務所が、実務への影響と「いつまでに何をすべきか」の視点で解説します。
5つの改正の全体像と適用時期

| 改正項目 | 内容の要点 | 主な適用時期 |
|---|---|---|
| ① 基礎控除の引上げ | 基礎控除と給与所得控除の見直しで課税最低限が178万円に | 令和7年分から段階的(恒久化は令和9年分〜) |
| ② 青色申告特別控除 | 優良な電子帳簿+e-Taxで最高75万円の区分を新設 | 令和9年分以後の所得税 |
| ③ 少額減価償却資産の特例 | 対象が30万円未満→40万円未満に拡充(中小企業者等) | 令和8年4月1日以後の取得 |
| ④ インボイス経過措置 | 2割特例終了。個人事業者に3割特例(2年間)を創設 | 2割特例は令和8年9月30日の属する課税期間まで |
| ⑤ 賃上げ・投資関連ほか | 賃上げ促進税制の中小重点化、自動車関係諸税の見直し等 | 項目により異なる |
※2026年6月12日時点。施行日・金額は今後の政省令で詳細が確定するものを含みます。
① 基礎控除の引上げ:手取りと年末調整が変わる
所得税の基礎控除と給与所得控除の見直しにより、いわゆる「年収の壁」が178万円へ引き上げられる方向の改正です。令和7年分では所得に応じて基礎控除が最大95万円となり、給与所得控除の最低保障額も65万円に引き上げられています(国税庁)。パート・アルバイトの働き方、扶養の判定、源泉徴収と年末調整の実務に広く影響するため、給与を支払うすべての事業者に関係します。詳細は基礎控除の引上げと課税最低限178万円の解説記事をご覧ください。
② 青色申告特別控除:75万円区分の新設
個人事業主の青色申告特別控除に、優良な電子帳簿の保存とe-Tax申告を要件とする最高75万円の区分が新設されます(適用は令和9年分以後)。紙の帳簿・書面申告では高い控除を受けにくくなる、デジタル化を促す設計です。会計ソフトの設定変更で対応できるケースが多いため、令和9年に慌てないよう、いまの帳簿体制を点検しておくのが得策です。要件と準備の手順は青色申告特別控除75万円の解説記事で詳しく解説しています。
③ 少額減価償却資産:40万円未満まで一括経費に
中小企業者等が取得した減価償却資産を一括で経費にできる特例の対象が、取得価額30万円未満から40万円未満に拡充されます(令和8年4月1日以後の取得、年間合計300万円まで)。パソコン・備品・小型機械の買い替えを予定している会社は、取得のタイミングで税負担が変わります。判定の流れと注意点(償却資産税の扱いなど)は少額減価償却資産の特例の解説記事をご覧ください。
④ インボイス:2割特例の終了と3割特例
免税事業者からインボイス発行事業者になった方の「2割特例」は、令和8年9月30日の属する課税期間(個人は令和8年分)で終了します。その後、個人事業者に限り、納税額を売上税額の3割で計算できる「3割特例」が令和9年分・令和10年分の2年間設けられます。法人にはこの特例がないため、簡易課税・本則課税の選択を早めに試算する必要があります。免税事業者からの仕入れに係る8割控除の経過措置も縮小が続きます。詳細は2割特例終了後の3割特例の解説記事をご覧ください。
⑤ 賃上げ・投資・暮らしの改正
事業者向けでは、賃上げ促進税制が中小企業向けに重点化される方向の見直しが行われ、防衛特別所得税(所得税額への1%付加・令和9年1月〜、復興特別所得税は1.1%へ引下げで源泉徴収の合計2.1%は不変)が創設されます。暮らしの面では、自動車税の環境性能割の廃止(令和8年3月末)、住宅ローン控除の5年延長、ひとり親控除の引上げ、NISAのつみたて投資枠の年齢下限撤廃などが含まれます。これらはそのほかの注目点まとめ記事で一覧にしています。
実務への落とし込み:いつまでに何をするか
| 時期 | やること |
|---|---|
| いま〜2026年9月 | 2割特例の最終期間を確認し、終了後の消費税の方式(3割・簡易・本則)を試算 |
| 2026年4月以後の投資 | 30万〜40万円未満の備品は取得時期で経費化の扱いが変わる点を購入計画に反映 |
| 2026年中 | 給与計算・年末調整の設定を新しい控除額に対応させる |
| 2026年〜2027年 | 優良な電子帳簿の要件を確認し、会計ソフトの設定を整備(75万円控除の準備) |
※2026年6月12日時点の整理。改正項目の多くは「知っていれば取れる選択肢」であり、決算期・投資計画・働き方に合わせた個別の設計で効果が変わります。制度の確認までは本記事と各解説記事で可能ですが、自社にどれが・いくら効くかの試算からは専門家の領域です。当事務所は税務顧問にとどまらず、改正対応の試算からAIを使った経理体制の整備まで実務で伴走しています。
当事務所での実例
実例:複数の顧問先に対して、改正項目との関係を一覧化した「影響チェック表」を提供しました。改正内容の整理と各社の状況への当てはめ素案はAI(Claude)が下準備し、適用判断と試算は有資格者が担当。設備購入の時期を令和8年4月以後にずらす、消費税の方式選択を前倒しで決めるなど、具体的な打ち手につながっています。
自社への影響を確認したい方は、お問い合わせからご相談ください。状況を伺ったうえで、対応範囲と概算をご提示します。
よくある質問
改正はすべて確定しているのですか?
大枠は税制改正法令で固まっていますが、細部が政省令で確定するものも残ります。本記事と各解説記事は2026年6月12日時点の情報で、適用前には最新情報の確認をおすすめします。
自分(自社)に関係する改正だけ知りたいのですが
給与を払っていれば①、個人事業なら①②④、設備投資の予定があれば③、インボイス登録済みの元免税事業者なら④が最低限の確認対象です。迷う場合は状況を伺って関係箇所だけご案内します。
対応を顧問税理士に任せている場合、自分では何もしなくてよいですか?
申告側の対応は任せられますが、投資の時期や働き方(扶養内の調整)など、経営判断・家計判断が絡む項目はご自身の意思決定が必要です。判断材料の整理はこの記事群をご活用ください。
相談はどう進めればよいですか?
業種・規模と気になる改正項目をお問い合わせフォームからお知らせください。料金・契約・業務フローも事前にご確認いただけます。
まとめ
- 2026年度改正の柱は基礎控除・青色75万円・少額40万円・インボイス・賃上げ関連の5つ
- 適用時期がバラバラ。「いつから」を取り違えないことが実務の肝
- 2割特例の終了(2026年9月30日の属する課税期間)への備えが最優先
- 設備購入は令和8年4月1日以後の40万円未満拡充を購入計画に織り込む
- 各論点の詳細は個別解説記事へ。自社への当てはめは専門家と
当事務所(札幌市)は、税制改正への対応を税務顧問・経理のAI化とあわせて支援しています。貴社の状況を伺ったうえで対応範囲と概算をご提示しますので、料金・契約・業務フローをご確認のうえお問い合わせください。
個別解説:①基礎控除178万円/②青色申告75万円/③少額減価償却40万円/④インボイス3割特例/⑤そのほかの注目点/会計・税務顧問サービスのご案内
※本記事は2026年6月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。
