介護・福祉事業の経営に役立つ最新情報【2026年版】

最終更新:2026年7月11日(令和8年度対応)

このページは、デイサービス・訪問介護・グループホーム・障害福祉サービスなど介護・福祉事業を経営する法人・個人事業主の方、施設長やケアマネジャー、経理・労務のご担当者向けに、2026年(令和8年)時点の介護報酬改定・税制・補助金・労務に関する「経営判断に直結する最新情報」を税理士事務所の目線で整理したものです。令和8年度は3年に1度の通常改定の年ではありませんが、処遇改善を中心とした期中(臨時)改定が実施され、加算体系や食費の基準費用額が見直されています。制度変更の全体像をつかみ、収支シミュレーションと資金繰りの見直しにお役立てください。制度は複雑で改正も頻繁ですが、自事業所にとって関係があるか、優先度が高いかを見極めることが実務では何より重要です。ページ内の各章は独立してお読みいただけますので、関心のある項目から確認してください。

✓ 2026年の業界動向 ✓ R8年度税制のポイント ✓ 使える補助金・助成金 ✓ 労務・人材の新ルール ✓ 12か月アクション表

1. 業界の今|2026年の介護・福祉事業動向

54.2%価格転嫁率(2026年3月・全業種)
+2.03%令和8年度介護報酬改定率(期中改定)
27.0%訪問介護 処遇改善加算Ⅰイ(令和8年度改定後)

介護報酬改定は原則3年に1回行われ、直近の通常改定は令和6年度(2024年度)でした。次の通常改定は令和9年度(2027年度)に予定されており、社会保障審議会では「介護事業経営実態調査」等を踏まえた物価・賃金上昇の反映が検討されています。令和8年度(2026年度)は通常改定の年ではないものの、処遇改善を中心とした期中(臨時)改定が実施され、改定率は+2.03%となりました。処遇改善に関する見直しは2026年6月に、食費の基準費用額の見直しは2026年8月に、それぞれ施行されています。

今回の期中改定では、処遇改善加算の対象がこれまでの「介護職員」から、看護職員・ケアマネジャー・生活相談員・事務職員等を含む「介護従事者全体」へと拡大され、訪問看護・訪問リハビリテーションも新たに加算の対象に加わりました。訪問介護では処遇改善加算Ⅰイの加算率が24.5%から27.0%へ引き上げられ、生産性向上・ICT活用に取り組む事業所向けの加算Ⅰロも新設されています。物価高や人件費上昇が続くなかで、介護保険サービスは公定価格であるため価格転嫁がしにくく、加算の取りこぼしを防ぐことが収支改善に直結します。

介護保険制度は3年ごとに要介護認定者数や給付費の見通しを踏まえて見直されており、高齢化の進展に伴って介護サービスの需要そのものは今後も拡大が見込まれます。一方で、報酬は公定価格である以上、物価高や最低賃金の上昇を価格に転嫁する余地が乏しく、全業種平均の価格転嫁率54.2%と比較しても、介護・福祉事業は加算の獲得と生産性向上によってしか収益を改善しにくいという特有の事情があります。事業所数の増加により地域によっては利用者獲得の競争も激しくなっており、稼働率と稼働単価の管理、加算の算定漏れ防止が経営の生命線になっています。

ポイント令和8年度は「通常改定」ではなく「期中改定」の年です。処遇改善加算の対象拡大・区分見直しへの届出対応、食費の基準費用額変更に伴う利用者説明・契約書類の更新を早めに済ませ、令和9年度の次期通常改定に向けた経営体制の整備を並行して進めることが重要です。

2. 経営のポイント|介護・福祉事業が今やるべきこと

令和8年度は制度変更が集中する年です。処遇改善加算への対応、人手不足への対応、そして令和9年度の次期通常改定への備えという3つの視点から、優先順位をつけて取り組むことをおすすめします。それぞれの具体的なポイントを見ていきましょう。

2-1. 処遇改善加算の見直し・取得区分の再確認

令和8年度の期中改定で処遇改善加算の対象と加算率が変わったことに伴い、現在取得している加算区分が最新の基準に対応しているかどうかの再確認が必要です。加算区分を誤ったまま請求を続けると、後日の返還につながるおそれがあります。賃金改善計画書・実績報告書の様式変更にも注意し、対象職種の拡大に合わせて就業規則や賃金規程、労使協定の見直しも合わせて行うことをおすすめします。加算による増収分は、賃金改善に確実に充当したうえで、資金繰り表に反映させておくと、年度途中の資金ショートを防げます。あわせて、加算取得の根拠となる研修受講記録・会議議事録・実施記録などのエビデンスを日頃から整備しておくと、後日の運営指導(実地指導)にもスムーズに対応でき、返還リスクを抑えられます。

2-2. 人手不足への対応と介護テクノロジーの活用

介護分野では有効求人倍率が全産業平均の3倍超という高い水準で推移しており、採用難が慢性化しています。一方で離職率は近年低下傾向にあり、採用力の強化と同じくらい「定着」への投資が経営上の優先課題になっています。見守りセンサーや介護記録ソフト、インカムなどの介護テクノロジーは、記録・申し送り・巡視といった間接業務の負担を軽減し、限られた人員でのサービス提供を可能にする手段として重要度が増しています。令和8年度は導入支援の補助率が引き上げられており、設備投資のタイミングとして検討する価値があります(詳しくは4章)。職員1人ひとりの負担軽減は離職の抑制にもつながるため、導入効果は採用コストの削減という形でも表れます。機器選定にあたっては現場職員の意見を聞きながら「本当に業務時間が減る機器」を優先し、補助金ありきで導入した機器が使われずに終わることのないよう、運用体制もあわせて整えることが重要です。

2-3. 令和9年度の次期通常改定への備え

次の通常改定である令和9年度改定に向けては、介護事業経営実態調査の結果や物価・賃金動向を踏まえた議論が社会保障審議会で進められています。処遇改善加算の一本化や、経営の大規模化・協働化を促す方向性が継続して議論されており、単独の小規模事業所には運営統合や共同購買、法人間連携の検討を求める流れが強まる可能性があります。今のうちに月次の部門別収支を「見える化」し、どのサービス・拠点が採算に乗っているかを把握しておくことが、次期改定への対応力を左右します。また、複数の介護・福祉事業所が法人単位で連携し、経理・採用・研修などの間接部門を共通化する動きも広がりつつあります。自法人の強み・弱みを数字で把握しておくことが、連携や統合の話が持ち上がった際の判断材料にもなります。

3. 税務・会計の留意点(令和8年度)

介護保険サービスの多くは消費税が非課税とされる一方、送迎車両の購入や施設の建設・改修、消耗品の仕入れなどにかかる消費税は控除できず、いわゆる「損税」が発生しやすい構造になっています。自費サービスや物品販売、居宅介護支援以外の一部サービスなど課税売上が混在する事業所では、課税・非課税の区分経理を正確に行うことが申告の前提になります。また、社会福祉法人・医療法人・株式会社・NPO法人など運営主体によって適用される会計基準が異なるため、法人形態を踏まえた決算書の作成と、資金収支計算書や事業活動計算書との整合確認も欠かせません。令和8年度税制改正では、次の項目が介護・福祉事業に関係します。

社会福祉法人は「社会福祉法人会計基準」、NPO法人は「NPO法人会計基準」に基づく計算書類の作成が義務付けられており、株式会社・合同会社形態の事業所とは決算書のフォーマットや作成すべき書類が異なります。社会福祉法人と株式会社を併設して運営するなど、運営主体の異なる複数法人が関わるケースでは、資金や人員の付け替えについて特に慎重な整理が必要です。補助金や加算による収入を、正しい会計年度・正しい勘定科目で計上できているかは、決算時にまとめて確認するのではなく、月次でのチェックを習慣化することをおすすめします。顧問税理士がいる場合は、加算の変更点を都度共有しておくと、申告時の手戻りを防げます。

項目内容実務対応
少額減価償却資産の特例R8.4.1以後取得分は40万円未満に拡充(従来30万円未満)。年合計300万円まで、R11.3.31まで延長見守りセンサー・介護記録用タブレット・簡易リフト等の少額設備投資をまとめて損金算入できるか確認。償却資産税の対象になる点に注意
賃上げ促進税制R8改正で中小企業向けに重点化。給与総額+1.5%で税額控除15%、+2.5%で30%(教育訓練費等の上乗せあり・繰越控除5年)処遇改善加算による賃上げ実績を賃上げ促進税制の適用要件の算定にも反映できないか、年度末に試算
インボイス2割特例の終了2割特例はR8.9.30を含む課税期間で終了。個人事業者のみ「3割特例」(R9・R10年分)、法人は対象外法人でインボイス登録している事業所は簡易課税(売上5,000万円以下・事前届出)への切替を早めに検討
免税事業者からの仕入税額控除の経過措置令和8年度改正で経過措置の控除割合が70%へ移行(R8.10.1以後、従来80%)個人事業主の送迎ドライバーや訪問系の外部委託先が免税事業者の場合、控除額の減少を仕入価格・委託料に織り込めているか確認
防衛特別法人税R8.4.1以後開始事業年度から課税。基準法人税額500万円以下の中小法人は負担ゼロが多い株式会社・NPO法人形態のデイサービス等は対象法人か試算。社会福祉法人・医療法人は課税関係を個別に確認
消費税の区分経理介護保険サービスの多くは非課税売上。自費サービス・物品販売・レンタル等の一部は課税売上として混在しやすい課税・非課税の判定基準を整理した一覧表を整備し、会計ソフトの補助科目で区分。課税売上割合の把握を徹底する

4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)

介護・福祉事業でも、要件を満たせば一般の中小企業向け補助金・助成金の対象になります。介護テクノロジー導入支援事業のように介護分野に特化した制度に加え、業種を問わず使える省力化投資・賃上げ関連の制度もあわせて検討することで、活用できる支援策の幅が広がります。代表的な制度を整理すると、次のとおりです。

制度上限・補助率直近スケジュール介護・福祉事業での使い方
介護テクノロジー導入支援事業(都道府県)介護記録ソフト100万〜250万円等・パッケージ型上限400万〜1,000万円。補助率は要件充足で最大4/5令和8年度実施要綱は2026年4月に発出。都道府県ごとに要領公表・受付時期が異なり順次公募見守り機器・介護記録ソフト・インカム等を対象に、業務時間削減効果の高い機器から優先導入
中小企業省力化投資補助金【カタログ注文型】最大1,500万円。補助率は中小1/2(賃上げで2/3)・小規模2/3随時受付(おおむね2027年3月末頃まで)見守りセンサー・清掃ロボット等、カタログ掲載の汎用省力化製品を選んで導入
デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)通常枠最大450万円、補助率1/22026年から制度名称を変更して実施シフト管理・請求(国保連伝送)・記録ソフトなど介護テクノロジー導入支援事業の対象外のITツール導入に活用
業務改善助成金賃上げ額別3コース(50円・70円・90円)、最大600万円R8年度は受付R8.9.1開始(予算大幅増額)最低賃金引上げに対応した賃上げ原資と、あわせて行う省力化設備投資の費用に充当
キャリアアップ助成金正社員化コース拡充、情報開示加算(1事業所20万円)新設キャリアアップ計画書は「届出のみ」に簡素化非正規雇用が多い介護職員の正社員転換・処遇改善による定着率向上に活用
事業承継・M&A補助金最大2,000万円、採択率は約6割15次公募はR8.5.22要領公開、受付6月中旬〜7月下旬後継者不在の介護・福祉事業所の第三者承継や、複数拠点運営を目指すM&Aの費用に活用
小規模事業者持続化補助金通常枠上限50万円+賃金引上げ特例150万円等で最大250万円、補助率2/3(赤字事業者3/4)第20回公募は受付R8.11.5〜12.15小規模なデイサービス・訪問介護事業所のホームページ制作や販路開拓、備品導入に活用
ご注意|専門家の業務分野について補助金の申請書類作成・提出の代行は行政書士等の業務分野、雇用関係助成金(キャリアアップ助成金・業務改善助成金など)の申請代行は社会保険労務士の独占業務分野です。当事務所(税理士)は、要件の事前整理・事業計画の数値づくり・資金繰り計画・採択後の会計処理(圧縮記帳・収益計上時期)まで税務会計面からサポートし、必要に応じて提携専門家と連携します。

5. 労務・人材の最新論点

介護関係職種の有効求人倍率は4倍前後で推移し、全産業平均の3倍超という高い水準が続いています。一方で、介護労働安定センターの令和6年度調査によれば、訪問介護員・介護職員の離職率は12.4%(訪問介護員11.4%、介護職員12.8%)と過去最低水準まで低下しており、「採用が難しい一方で、定着は進んでいる」という二極化が鮮明になっています。処遇改善加算の対象拡大や賃上げの実績づくりは、採用広告よりも費用対効果の高い定着策になり得ます。

労務面では、令和8年10月1日に「106万円の壁」(賃金月8.8万円要件)が撤廃され、新たに約200万人が社会保険の加入対象になる見込みです。以後は「週20時間」が実質的な加入基準となるため、パート・非常勤比率が高い介護・福祉事業所ほど、社会保険料の事業主負担増と、扶養の範囲内で働く職員の働き方見直しへの対応が必要です。あわせて、北海道の最低賃金は令和7年10月4日発効で1,075円となっており、令和8年度改定でさらに引き上げられる見込みです。介護報酬は公定価格のため価格転嫁が難しく、最低賃金の上昇分を処遇改善加算や介護報酬改定でどこまで吸収できるか、資金繰りへの影響を試算しておく必要があります。賞与・昇給のタイミングと処遇改善加算の支給時期がずれると、職員への説明に苦慮するケースもあるため、支給スケジュールの設計もあわせて検討しておきましょう。

令和8年10月1日からは、カスタマーハラスメント対策の義務化も始まります。利用者やその家族からの著しい迷惑行為への対応方針の整備・周知は、介護現場において特に重要性が高い論点です。相談窓口の設置や対応マニュアルの整備を、就業規則の見直しとあわせて進めることをおすすめします。また、実地指導(現在の名称は運営指導)は原則として指定の有効期間(6年)内に少なくとも1回、施設・居住系サービスについては3年に1回以上の頻度で実施することが望ましいとされ、確認内容によってはオンラインでも実施されます。加算の算定要件や記録の整備状況は日頃から点検しておくと安心です。

人材確保の観点では、特定技能・技能実習・EPA(経済連携協定)など外国人材の受け入れも選択肢の一つです。在留資格ごとに要件や支援体制が異なるため、監理団体や登録支援機関との連携、日本語学習・生活支援の体制整備をあらかじめ検討しておく必要があります。あわせて、初任者研修や実務者研修、介護福祉士資格の取得を支援するキャリアパス制度を整えることは、既存職員の定着と処遇改善加算の要件充足の両面で効果が期待できます。

6. 今後12か月のアクションチェックリスト

介護・福祉事業は、介護報酬改定・税制改正・補助金・労務のルール変更が同時並行で進むため、対応の抜け漏れが起きやすい分野です。時期ごとにやるべきことを一覧化しておくことで、届出や申請の期限超過を防ぎやすくなります。自法人の決算期や指定更新時期に合わせて、この表をカスタマイズしてご活用ください。

時期やること関連制度
2026年7〜9月処遇改善加算の新区分への対応・賃金改善計画の見直し、介護テクノロジー導入支援事業の都道府県要領を確認令和8年度介護報酬期中改定、介護テクノロジー導入支援事業
2026年10〜12月106万円の壁撤廃・カスハラ対策義務化への対応開始、食費の基準費用額変更の利用者説明、インボイス簡易課税の検討社会保険適用拡大、労働施策総合推進法改正、インボイス制度
2027年1〜3月決算・確定申告の準備、少額減価償却資産の特例を使った設備投資の年内実行状況の確認、賃上げ促進税制の適用可否試算令和8年度税制改正、賃上げ促進税制
2027年4〜6月次年度の資金繰り計画・部門別収支の見直し、令和9年度次期通常改定に向けた情報収集の本格化令和9年度介護報酬改定(予定)

7. 関連情報・よくある質問

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※本ページは2026年7月時点の公表情報に基づく一般的な情報提供です。制度・金額・期限は今後の改正等により変更される場合があります。個別の適用可否や税務判断については、顧問税理士または当事務所にご確認ください。