グループ会社間の資金融通は、契約書と金利・返済条件を整えれば一時的な支えになりますが、根本的な再生策にはなりません。無利息の貸付や債権放棄は寄附金として課税される場合があり、金融機関から融資目的外の資金使途と見られるおそれもあります。グループ全体の再編まで視野に入れて判断しましょう。
この記事の結論
グループ内の資金融通は「一時的な救済」にとどめ、契約書・金利・返済条件を整えたうえで、グループ全体の再生計画と切り分けて考えます。
- 貸し借りは金銭消費貸借契約書を交わし、金利と返済条件を明確にする
- 無利息・低利の貸付や債権放棄は、合理的な再建計画などの理由がなければ寄附金とされることがある
- 個人オーナーが株式を持つ兄弟会社の間では、グループ法人税制の寄附金の特例は使えない
- 借りた資金をグループ会社に回すと、融資目的外の資金使途と見られるおそれがある
- 支援する会社の資金繰りを守り、不採算会社の再編まで含めて検討する
グループ会社間の資金融通はなぜ起きる?主な形と背景
複数の事業を展開しているオーナー経営者の場合、業績の良い会社と厳しい会社が同時に存在することは珍しくありません。余剰資金のある会社が厳しい会社を支えるため、グループ内での資金の貸借や立替払いといった形で資金融通が行われます。
特に外部からの追加融資が難しい局面では、グループ内の資金でしのごうとする判断が取られやすくなります。ただし、資金融通の形によって、税務・法務・金融機関との関係で注意する点が異なります。
| 資金融通の形 | 内容 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 貸付金 | 余裕のある会社が資金を貸す(金銭消費貸借) | 契約書・金利・返済期日を定め、利息を実際に受け払いする |
| 立替払い | 仕入代金や経費を別の会社が代わりに支払う | 精算されないまま長引くと、実質は貸付になる |
| グループ内取引の支払条件の変更 | 入金を早める、支払を遅らせる | 取引条件の変更として記録し、価格の妥当性も確認する |
| 債務保証・担保の提供 | 別の会社の借入を保証し、資産を担保に差し入れる | 保証先が行き詰まると、支援した会社も弁済を求められる |
| 出資(増資) | 親会社が子会社に資本を入れる | 返済は不要だが、回収は配当や株式の売却に限られる |
資金を融通するときの基本ルール:契約書・金利・返済条件
グループ会社間で資金を融通する際は、まず貸し借りの実態を明確に記録しておくことが重要です。口約束のまま資金をやり取りすると、後になって金額や条件があいまいになり、税務上の取扱いや、どちらかの会社が法的な手続きに至った場合の処理で問題が生じることがあります。
資金を出す側も、貸付が回収できなくなるリスクを負います。自社の資金繰りに無理のない範囲で行い、支援する側まで共倒れにならないようにする必要があります。最低限、次の点を整えておきましょう。
- 金銭消費貸借契約書を取り交わし、金額・金利・返済期日・返済方法を定める(契約書には印紙税がかかる)
- 同じ人が両方の会社の代表者や取締役を兼ねている場合は、利益相反取引に当たり、取締役会や株主総会の承認が必要になることがある
- 利息は約定どおりに受け払いし、未収・未払の利息も帳簿に記録する
- 資金を出す側の会社の資金繰りに無理がないかを、事前に確認する
- 金融機関に対して、グループ内の資金の動きを隠さず説明できるようにしておく
- 資金融通はあくまで一時的な措置とし、根本原因の解決策と切り分けて考える
金利は、法令で一律の利率が決まっているわけではありません。貸す側が金融機関から借りた資金を回しているなら、その調達金利を下回らない水準が一つの目安です。決めた利率の根拠は、取締役会の議事録などに残しておきます。
無利息の貸付や債権放棄は税務上どうなる?
法人が別の法人に無利息や低い利率で資金を貸すと、通常受け取るべき利息との差額は、貸した側の寄附金とされることがあります。寄附金には損金に算入できる限度額があり、超えた部分は税務上の費用になりません。
計算例:無利息で貸した場合の寄附金
例えば、A社がグループのB社に1,000万円を1年間無利息で貸し、通常の利率を年2%と仮定した場合です。
- 通常受け取るべき利息:10,000,000円×2%=200,000円
- A社:20万円が寄附金とされる可能性がある(限度額を超える部分は損金にならない)
- B社:20万円の受贈益と同額の支払利息が両建てになり、通常は所得に影響しない
ただし、支援先の倒産を防ぐための合理的な再建計画に基づく無利息貸付や債権放棄などは、相当な理由があれば寄附金に当たらないとされています(法人税基本通達9-4-2)。支援の必要性、計画の合理性、支援額や負担割合の妥当性などを、資料で説明できることが前提です。
| 支援の方法 | 支援する会社 | 支援を受ける会社 |
|---|---|---|
| 無利息・低利の貸付 | 通常の利息との差額が寄附金とされることがある | 受贈益と同額の支払利息が両建てになり、通常は所得に影響しない |
| 貸付金の債権放棄 | 放棄した額が寄附金とされることがある(貸倒れに当たる場合を除く) | 債務免除益として益金になる(繰越欠損金と相殺できる場合がある) |
| 合理的な再建計画に基づく支援 | 相当な理由があれば寄附金に当たらない | 債務免除益は益金になる |
親会社と完全子会社(株式のすべてを親会社が持つ会社)のように、法人による完全支配関係がある会社の間の寄附には、グループ法人税制が適用されます。出した側では全額が損金不算入、受けた側では全額が益金不算入です。一方、オーナー個人が株式を持つ兄弟会社の間にはこの扱いがなく、寄附金の損金不算入と受贈益の課税が両方生じることがあります。グループ法人税制の完全支配関係の判定と寄附のルールもあわせて確認しておきましょう。
なお、受け取る利息は消費税の非課税売上です。貸付が大きくなると、貸す側の課税売上割合が下がり、仕入税額控除の計算に影響することがあります。
金融機関はグループ内の資金の動きをどう見る?
再生局面では金融機関との信頼関係が極めて重要ですが、グループ会社間の資金融通はこの関係に影響することがあります。借り入れた資金をその会社の事業ではなく、グループ内の別会社の資金繰りに充てると、融資目的と異なる使い方をしたとみなされ、関係が悪化するおそれがあります。
また、グループ内で資金が複雑に行き来していると、金融機関は個社の実態や返済能力を把握しづらくなります。決算書の「関係会社貸付金」などは回収の見込みで見直され、実態の純資産から差し引いて評価されることもあり、支援した側の会社の評価まで下がる場合があります。
借入金を別会社に回す前に、資金使途を確認する
設備資金や運転資金として借りたお金を別の会社に回すと、契約の定めによっては資金使途の違反とされることがあります。どうしても必要な場合は、事前に取引金融機関へ相談し、経緯を記録に残しておくことが大切です。
グループ内の資金の動きは隠すのではなく、説明できる状態にしておくことが望ましい姿勢です。会社ごとの資金繰り表に加えて、グループ内の貸付・立替・保証の一覧(相手先、残高、発生した理由、返済の予定)を用意しておくと、説明の土台になります。
支援する会社を守るには?共倒れを防ぐ線引き
支援が長引くほど、支援する会社の手元資金と信用は細っていきます。貸付だけでなく、借入の保証や担保の提供が重なっていると、支援先が行き詰まったときに連鎖的に負担を抱えることになります。支援を始める前に、どこまで出すのかの線を引いておきましょう。
- 支援額の上限と期間を決め、それを超える場合の判断の手順を定めている
- 支援した後の自社の資金繰りを、月ごとの資金繰り表で確認している
- 支援先の改善計画と、返済の原資になる数字の根拠を受け取っている
- グループ内の保証・担保の提供が、どの会社のどの借入に付いているかを把握している
- 回収できなかった場合に、自社の純資産や金融機関の評価がどう変わるかを試算している
支援する会社にオーナー以外の株主がいる場合、回収の見込みが乏しい貸付を続けることは、取締役の判断の妥当性を問われる原因にもなります。資金繰り表の作り方と毎月の運用を会社ごとに整え、支援の判断を数字で説明できるようにしておきましょう。
グループ内の貸付を続けるか、再建計画に切り替えるかは、会社ごとの資金繰りと税務の影響で判断が分かれます。初回無料で状況を整理できます。
無料で相談する再生局面で注意したい論点:法的整理・私的整理とグループ内の債権
支援先が民事再生や破産などの法的整理に入ると、グループ会社の貸付金も原則として他の債権者と同じ手続きの中で扱われ、回収は配当や弁済の割合に左右されます。再生計画では、親会社などの債権が他の債権者より不利に扱われることもあります。
手続きが始まる前に、グループ会社だけが先に返済を受けたり、担保の提供を受けたりすると、後で否認されて取り戻される場合があります。資金繰りが行き詰まりつつある段階では、グループ内の返済の順番も慎重に判断する必要があります。
私的整理は、金融機関の協力を得て裁判所の外で進める再生の手続きで、中小企業の事業再生等に関するガイドラインや、中小企業活性化協議会の支援を使う方法があります。この場合、グループ内の債権の返済を後回しにすることや、放棄・株式への振替え(DES)を求められることがあります。グループ内の債権は「いずれ返してもらえる資産」ではなく、再生計画の中で扱いが決まるものと考えておきましょう。
グループ全体で再生を考える視点
一社だけの資金繰りに注目するのではなく、グループ全体としてどのような事業構成が望ましいのかを考える視点も重要です。慢性的に資金繰りが厳しい会社を、他の会社からの資金融通で延命し続けることが、グループ全体にとって本当に望ましい選択なのかを見極める必要があります。
不採算の会社を切り離す、事業の一部を統合するといった再編を検討したほうが、長期的には資金繰りが安定することもあります。論点と対応の方向性を整理すると、次のとおりです。
| 論点 | 内容 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 契約・記録 | 口約束による貸し借りのあいまいさ | 契約書の整備と条件の明確化 |
| 資金負担 | 支援する側の会社の資金繰り悪化のリスク | 無理のない範囲での支援にとどめる |
| 税務 | 無利息貸付・債権放棄が寄附金とされるリスク | 金利の設定と、再建計画の合理性の説明 |
| 金融機関との関係 | 融資目的外の資金使途とみなされるリスク | 資金の動きを説明できる状態にしておく |
| グループ全体の設計 | 不採算会社の延命による長期的な負担 | 事業再編を含めた中長期の検討 |
再編の方法には、合併、事業譲渡、会社分割、清算などがあり、税務(適格要件や繰越欠損金の引継ぎの制限など)と金融機関への影響がそれぞれ異なります。次の順番で検討を進めると、目先の資金繰りを埋める発想から抜け出しやすくなります。
- 資金の流れを一覧にするグループ内の貸付・立替・保証と、その発生理由を会社ごとに書き出します。
- 会社・事業ごとの採算を分けるグループ内取引を除いた実力ベースの損益と資金繰りを把握します。
- 続ける事業とやめる事業を決める不採算の原因を特定し、改善できるものと撤退すべきものを分けます。
- 再編の方法を比べる統合・譲渡・清算などの選択肢ごとに、税務と金融機関への影響を試算します。
- 計画として合意する金融機関に説明し、グループ全体の再生計画として進めます。
再生の選択肢の全体像は事業再生の進め方と三つの選択肢で、計画づくりの支援内容は中小企業の財務コンサルティングガイドで紹介しています。
よくある質問
子会社への貸付金が回収できなくなったら、貸倒損失にできますか?
法的な手続きで切り捨てられた額や、相手の資産状況などから全額が回収できないことが明らかになった場合は、貸倒損失として損金にできます。単に返済が遅れている段階で放棄すると、寄附金とされることがあります。回収に向けた努力と、判断の根拠を記録しておくことが大切です。
オーナー個人が会社にお金を貸している場合も注意が必要ですか?
社長からの借入金は、金融機関から実質的に自己資本に近いものとみなされることがあります。一方で、社長が亡くなると会社への貸付金は相続財産になり、回収が難しい状態でも相続税の対象になることがあります。放棄すると会社に債務免除益が生じ、株式の価値が上がると他の株主への贈与とみなされる場合もあるため、早めに方針を決めておきましょう。
グループ会社を合併すると、会社間の貸付金はどうなりますか?
合併すると、貸付金と借入金は同じ会社の中の債権と債務になり、消滅します(混同)。税務では、適格合併に当たるかどうかや、繰越欠損金を引き継げるかで負担が変わるため、合併の前に試算しておくことが欠かせません。
利息を取らずに立て替えているだけでも問題になりますか?
短期間で精算する立替えであれば、通常は大きな問題になりにくいものです。ただし、精算されないまま残高が積み上がると、実質的には無利息の貸付と同じで、寄附金や資金使途の問題が生じます。期末に残高を確認し、精算の期限を決めておきましょう。
まとめ
グループ会社間の資金融通は一時的な救済にはなり得ますが、根本的な解決策ではありません。貸し借りは契約書と金利・返済条件で整え、無利息貸付や債権放棄の税務、金融機関から見た資金使途の問題を押さえておきましょう。支援する会社が共倒れにならないよう線を引き、グループ全体の再編まで含めた中長期の視点で再生を考えることが大切です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
グループ会社の資金繰り・再生のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
