「銀行からの借入も含めて、会社全体としてきちんと利益を生み出せているのか」を確認したいとき、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)だけでは見えにくい部分があります。そこで使われるのがROIC(投下資本利益率)です。ROICは、株主資本と有利子負債の両方、つまり事業に実際に投じられた資金全体に対するリターンを測る指標です。結論として、ROICは借入コストを踏まえたうえで、事業が本当に利益を生んでいるかを判断するための指標といえます。
ROIC(投下資本利益率)とは何か
ROIC(Return On Invested Capital)とは、事業に投じられた資本全体(株主資本+有利子負債)に対して、税引後の営業利益がどれだけの割合を占めるかを示す指標です。ROEが株主資本のみを分母にするのに対し、ROICは借入金も含めた「事業に投下された資金全体」を分母にする点が大きな違いです。借入への依存度が高い会社でも、ROICを見ることで、資金調達方法にかかわらない事業そのものの収益力を確認できます。
計算式と具体例
簡便的な計算式の一例は次のとおりです。
ROIC(%)= 税引後営業利益(NOPAT)÷ 投下資本(株主資本+有利子負債)× 100
仮に、税引後営業利益が400万円、株主資本4,000万円、有利子負債2,000万円(投下資本合計6,000万円)の会社を考えます。この場合、400万円 ÷ 6,000万円 × 100 = 約6.7% がROICです。この数値を、借入金の金利など資金調達コストと比較することで、事業が資金コストを上回るリターンを生んでいるかを確認できます。
ROICと資金調達コストの関係
ROICを活用する際に重要なのが、①②③の視点です。
- ①資金調達コストとの比較 借入金利や株主が期待するリターン(資本コスト)とROICを比べ、ROICが上回っていれば、投下した資本以上のリターンを事業が生んでいると判断できます。
- ②事業部門・案件ごとの比較 複数の事業や設備投資案件がある場合、ROICを比較することで、どこに資金を重点的に投じるべきかの判断材料になります。
- ③ROAとの使い分け ROAは総資産(現金や売掛金なども含む)を分母にするのに対し、ROICは投下資本に絞るため、事業に直接使われている資金の効率をより明確に把握できます。
中小企業がROICを見る意味
上場企業に比べ、中小企業では厳密なROIC管理を行う場面は多くありませんが、設備投資や新規事業の是非を検討する際の考え方として活用できます。以下は、同じ税引後営業利益でも借入依存度が異なる場合にROICがどう変わるかを示す仮設例です。
| 項目 | 借入少なめ(仮設) | 借入多め(仮設) |
|---|---|---|
| 税引後営業利益 | 400万円 | 400万円 |
| 株主資本 | 5,000万円 | 2,000万円 |
| 有利子負債 | 1,000万円 | 4,000万円 |
| 投下資本合計 | 6,000万円 | 6,000万円 |
| ROIC | 約6.7% | 約6.7% |
この仮設例のように、投下資本の合計額が同じであればROICは借入依存度に関わらず同じ数値になります。これがROEとの大きな違いであり、事業そのものの収益力を、資金調達の方法から切り離して評価できる点がROICの特徴です。
まとめ
- ROICは「税引後営業利益÷投下資本(株主資本+有利子負債)×100」で計算します。
- 借入金も含めた投下資本全体に対するリターンを示す点がROEとの違いです。
- 資金調達コスト(借入金利など)と比較することで、事業の収益力を判断できます。
- 複数事業や投資案件の比較にも活用できる考え方です。
- 資金調達方法から切り離して事業そのものの効率を評価できる点が特徴です。
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※本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。
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