札幌市の制度融資は、市・取扱金融機関・信用保証協会が連携する中小企業向けの融資で、運転・設備・創業など目的別の資金がそろっています。2026年10月1日以降に実行される融資は利率が0.3%上がっているため、4月1日時点の利率表記のまま比べないことが大切です。
この記事の結論
市が利率の上限などの条件を定め、信用保証協会の保証を付けて金融機関が貸し出すのが制度融資です。創業期なら「創業・雇用創出支援資金」(限度額5,000万円、信用保証料の4分の1以内を市が補給)が中心になります。
- 資金は「マル札資金」と「特別資金」の2系統。申込みは取扱金融機関の窓口で行う
- 2026年10月1日以降の実行分は、4月1日時点の表記より利率が0.3%高い(利率はいずれも「以内」の上限)
- 設備資金は市内の設備投資に限られる
- 公庫・北海道の制度融資とは、限度額・保証の条件・返済期間で比べて選ぶ
- 市内で創業するなら、特定創業支援等事業の証明もあわせて取っておく
札幌市の制度融資とは?仕組みと民間融資との違い
制度融資とは、自治体・取扱金融機関・信用保証協会の3者が連携して行う中小企業向けの融資です。この制度では、市が取扱金融機関に資金を預託し、金融機関の資金と合わせて融資枠を設け、市が定めた条件(限度額や利率の上限など)で貸し出します。
融資を実行するのは金融機関で、審査は金融機関と信用保証協会(北海道信用保証協会)が行います。市が直接お金を貸すわけではないため、条件に当てはまっていても、審査の結果によっては希望どおりにならないことがあります。
制度融資
- 利率に上限(「以内」)が定められている
- 信用保証協会の保証が付き、保証料がかかる(市が一部を補給する資金もある)
- 創業・運転・設備・経営安定など目的別のメニューがある
- 資金使途や事業の場所などの要件がある
金融機関の独自融資(プロパー融資)
- 利率・期間は金融機関との個別の交渉で決まる
- 保証協会を通さず、金融機関が直接リスクを負う
- 取引の実績と決算内容が重視される
- 創業直後は利用が難しい場合がある
保証協会付きの融資とプロパー融資をどう組み合わせるかは、制度融資・プロパー・保証協会付き融資の使い分けで詳しく整理しています。
資金メニューと金利・限度額の一覧(2026年10月時点)
資金は、通常の事業資金を扱う「一般中小企業振興資金(マル札資金)」と、創業や事業革新など政策目的の「特別資金」の2系統に分かれます。代表的な資金の条件は次のとおりです。
| 資金名 | 区分 | 主な対象・使途 | 限度額 | 利率(2026年4月1日時点の表記) |
|---|---|---|---|---|
| 産業振興資金 | マル札資金 | 通常の運転資金・設備資金 | 2億円 | 年2.60%以内 |
| 札幌みらい資金 | マル札資金 | 観光・食・ITなどの重点分野の事業者や、各種の認定・認証を受けた企業 | 2億円 | 年2.10%以内 |
| 景気対策支援資金 | マル札資金 | セーフティネット保証を利用する場合(原油・原材料高騰等の特別枠あり) | 5,000万円 | 年1.90%/2.10%以内(期間による) |
| 創業・雇用創出支援資金 | 特別資金 | 市内で創業する方、創業後5年未満の方など | 5,000万円 | 年1.70%以内 |
| 事業革新支援資金 | 特別資金 | 事業再構築や海外への販路拡大など | 2億円 | 年1.60%以内 |
このほか、目的に応じて次の資金も用意されています。
- 短期サポート特別枠:融資期間1年以内の運転資金
- 小規模事業資金・小口資金:小規模事業者向けの運転資金・設備資金
- 大型設備投資支援資金:設備投資額5,000万円以上の大型投資
- カーボンニュートラル推進資金:省エネ・再エネ設備などの導入
利率は2026年に2回引き上げられている
2026年4月1日に基準金利の上昇に伴って0.2%ずつ、さらに10月1日以降に実行される融資で0.3%ずつ引き上げられました。資金ごとの案内ページの利率が改定前の表記のままの場合もあるため、申込み前に一覧ページと取扱金融機関で、実際に適用される利率を確認しましょう。
創業するなら「創業・雇用創出支援資金」:条件と使い方
市内で開業する予定の方や、創業から5年未満の方が主な対象です。融資の申請日前6か月以内に従業員を1名以上新たに雇用した場合なども利用できます。通常の事業資金である産業振興資金と比べると、条件の違いがよくわかります。
| 項目 | 産業振興資金 | 創業・雇用創出支援資金 |
|---|---|---|
| 対象 | 中小企業者等 | 市内で創業する方、創業後5年未満の方など |
| 融資限度額 | 2億円 | 5,000万円(創業する方は必要額の9割以内) |
| 資金使途 | 運転資金・設備資金(設備は市内の設備投資に限る) | 運転資金・設備資金(設備は市内の設備投資に限る) |
| 融資期間 | 運転7年以内・設備12年以内(据置は各2年以内) | 10年以内(うち据置2年以内) |
| 融資利率(2026年4月1日時点の表記) | 年2.60%以内 | 年1.70%以内 |
| 保証料の補給 | なし | 信用保証料の4分の1以内を市が補給 |
計算例:創業時に借りられる上限の目安
例えば開業に必要な資金が1,000万円の場合、創業する方の上限は1,000万円×90%=900万円です。残りの100万円以上は、自己資金などで用意する設計になります。
据置期間(元金の返済を猶予してもらう期間)は2年以内で設定できます。開業直後は売上が安定しにくいため、据置を使うかどうかで資金繰りが大きく変わります。ただし、据置中も利息は支払い、据置が終わると元金の返済が始まって月々の返済額が増える点に注意が必要です。
公庫の創業融資と組み合わせる選択肢
必要額が大きい場合などは、日本政策金融公庫の創業融資と組み合わせて資金をそろえる方法もあります。どちらを主にするかは、必要額・据置期間・保証料の負担を並べて比べます。
公庫の創業融資の申込みの流れと面談の準備は、日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)の流れと面談対策で紹介しています。
公庫・北海道の制度融資とどう使い分ける?
創業時の主な選択肢は、市の創業・雇用創出支援資金、北海道の創業貸付、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の3つです。限度額・期間・保証の条件を並べると、次のようになります。
| 項目 | 札幌市 創業・雇用創出支援資金 | 北海道 創業貸付(1)〜(3) | 公庫 新規開業・スタートアップ支援資金 |
|---|---|---|---|
| 限度額 | 5,000万円 | 3,500万円 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 10年以内(うち据置2年以内) | 1〜10年 | 設備資金20年以内・運転資金10年以内(うち据置5年以内) |
| 利率 | 年1.70%以内(4月1日時点の表記。10月1日以降の実行分は0.3%引上げ) | 固定金利1.8〜2.4%(2026年10月1日現在) | 創業融資は原則0.65%(雇用を拡大する場合は0.9%)の利率引下げ |
| 保証・担保 | 信用保証協会の保証付き。保証料の4分の1以内を市が補給 | 信用保証協会の保証付き。【スタートアップ】は経営者の個人保証が不要 | 税務申告を2期終えていない方は原則として無担保・無保証人 |
| 申込み先 | 取扱金融機関 | 取扱金融機関 | 公庫の支店 |
選び方の目安として、必要額が大きい場合や据置期間を長く取りたい場合は公庫、保証料の補給を受けながら市内で事業を始める場合は市の資金が候補になります。経営者保証を付けたくない場合は、北海道の創業貸付【スタートアップ】や、上乗せ利率のない公庫の経営者保証免除特例も検討します。
創業前後の借入れで使われる信用保証協会の保証には「創業関連保証」があり、北海道の協会では限度額3,500万円・保証料率0.86%です。特定創業支援等事業の証明があれば、開業6か月前から利用できます。創業時の資金計画全体の考え方は、創業時の資金計画と日本政策金融公庫の融資もあわせてご覧ください。
公庫・市・道のどれを使うか、併用するかは、必要額と事業計画によって変わります。初回無料で一緒に整理できます。
無料で相談する申込みの流れと準備する書類
申込みの窓口は、制度融資を取り扱う金融機関です。市役所に直接申し込むのではない点に注意しましょう。ただし、景気対策支援資金でセーフティネット保証を使う場合は、別に市の認定を受ける手続きがあります。おおまかな流れは次のとおりです。
- 使いみちと必要額を整理する設備の見積書や、運転資金が何か月分必要かの根拠をそろえます。
- 資金メニューを選ぶ創業・運転・設備など目的と要件に合う資金を選びます。
- 取扱金融機関に申し込む申込書とあわせて、決算書・試算表・資金繰り表・事業計画書を提出します。
- 審査・面談を受ける金融機関と信用保証協会が審査します。計画の数字の根拠を説明できるようにしておきます。
- 融資実行・返済開始契約と信用保証料の支払いを経て融資が実行され、据置期間の後に元金の返済が始まります。
- 決算書と直近の試算表(開業前の方は不要)
- 資金繰り表(月ごとの入金・出金の見込み)
- 事業計画書(創業の場合は創業計画書)
- 設備資金の場合は見積書や契約書
- 自己資金を確認できる通帳
- 特定創業支援等事業の証明書(受けている場合)と、許認可が必要な業種の許可証など
必要な書類は資金や金融機関によって異なるため、上の一覧は一般的な例です。月次の数字が整理されているほど、審査はスムーズに進みやすくなります。開業前の方は、売上計画の根拠と自己資金を貯めてきた経緯を説明できるようにしておきましょう。依頼から融資実行までの進め方は、創業融資サポートの依頼から完了までの流れで紹介しています。
利用前に確認したい注意点(利率・地域・保証料・会計処理)
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 利率は見直される | 2026年4月1日に0.2%、10月1日以降の実行分でさらに0.3%引き上げられた。表記はいずれも「以内」の上限で、実際の利率は審査で決まる |
| 設備資金は市内に限る | 設備資金は市内の設備投資に限られる。市外の店舗や設備の資金には使えない |
| 据置期間の設計 | 開業直後の資金繰りを左右する。据置後の返済額まで試算してから決める |
| 信用保証料の扱い | 保証料は融資の実行時にまとめて支払うことが多い。会計上は保証期間に応じて按分して経費にする(前払費用) |
| 借入後の管理 | 返済原資(利益に減価償却費を足した額)を月次の数字で確認する体制をつくる |
設備資金で買った資産も、通常どおり減価償却の対象です。青色申告をしている中小企業者や個人事業主は、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を年300万円まで一括で経費にできる特例(少額減価償却資産の特例、2029年3月31日まで。従業員400人超の法人は対象外)を使えます。
無料ツール少額資産の処理方法を3択で比較する設備資金で買う資産について、即時の経費化・一括償却・少額減価償却資産の特例のどれが有利かを比べられます。計算する
補助金と組み合わせるとき
補助金は、事業を実施して報告した後に支払われる後払いです。採択されても入金までは立替えが必要なため、その間の資金を制度融資で用意する方法があります。2026年10月3日時点では、小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠の第20回、創業型の第4回)の受付が2026年11月5日〜12月15日17:00と案内されています。日程は変わることがあるため、最新の公募要領で確認してください。
設備など固定資産の取得に充てた補助金は、法人なら圧縮記帳、個人なら総収入金額不算入の対象になる場合があります。
市内で創業するなら一緒に確認したい支援制度
市内で会社を設立して創業する場合は、制度融資とあわせて特定創業支援等事業を確認しておくと、創業時のコストを抑えられます。市内の支援機関で1か月以上にわたり4回以上、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野の支援を受けると、市から証明書が発行される制度です。
| 証明書の効果 | 内容 |
|---|---|
| 登録免許税の軽減 | 会社設立の登録免許税が資本金の0.7%から0.35%に(最低額は株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円)。市内での設立に限る |
| 公庫の利率引下げ | 新規開業・スタートアップ支援資金の利率が引き下げられる |
| 創業関連保証の特例 | 信用保証協会の創業関連保証を、開業6か月前から利用できる |
| 持続化補助金〈創業型〉 | 申請の要件を満たす |
| さっぽろ新規創業促進補助金 | 軽減後の登録免許税に当たる額(株式会社75,000円、合同会社30,000円)を補助。会社設立日から90日以内か2027年3月31日の早い日までに申請(募集は2026年4月1日〜2027年3月31日) |
支援を受けられる機関や創業の相談窓口として、市の案内(2025年12月25日現在)では次の窓口が紹介されています。
- さっぽろ創業支援プラザ(札幌中小企業支援センター):011-200-5511
- 札幌商工会議所:011-231-1768
- よろず支援拠点:011-232-2402
よくある質問
個人事業主でも利用できますか?
利用できます。制度融資の対象となる中小企業者等には、法人だけでなく個人事業主も含まれます。資金ごとに業種や市内での事業の実態などの要件があるため、取扱金融機関で確認してください。
借りた資金を、申込みと違う用途に使ってもよいですか?
制度融資は、申込み時に示した資金使途(運転資金・設備資金など)に使うことが前提です。設備資金を運転資金に回すなど目的と違う使い方をすると、契約違反として一括返済を求められるおそれがあります。設備資金は見積書どおりに支払って領収書を保管し、使い道が変わりそうなときは事前に金融機関へ相談しましょう。
審査に通らなかった場合、公庫に申し込めますか?
申し込むことはできます。ただし、自己資金の不足や売上計画の根拠の弱さなど、通らなかった理由を見直さないまま申し込んでも、結果は変わりにくいものです。計画の数字を組み立て直してから相談しましょう。
すでに借りている制度融資の利率も上がりますか?
2026年10月1日からの引上げは、同日以降に実行される融資が対象です。すでに借りている融資の利率は契約内容によるため、固定か変動かを含めて取扱金融機関に確認してください。
まとめ
市の制度融資は、利率の上限と信用保証協会の保証が付いた、創業期や中小企業でも使いやすい融資です。2026年10月1日以降の実行分は利率が0.3%上がっているため、適用利率は取扱金融機関で確認しましょう。創業するなら、創業・雇用創出支援資金と公庫・北海道の制度を比べ、特定創業支援等事業の証明もあわせて準備するのが効果的です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(2026年10月1日以降の利率引上げを反映)
