清掃業の税理士選びは、外注費と給与の区分、協力業者のインボイス、現場別の採算管理という業種特有の論点に、具体的に答えられるかで判断します。人件費が売上の大半を占めるため、消費税の計算方法や最低賃金・社会保険の改定への対応も欠かせません。顧問料は任せる範囲をそろえ、年間総額で比べましょう。
この記事の結論
清掃業で最大の税務リスクは、外注費と給与の区分です。税理士は、この区分とインボイス、現場別の採算を具体的に説明できるかで見極め、顧問料は年間総額とサービス範囲で比べましょう。
- 協力業者への支払いが給与と認定されると、消費税の仕入税額控除の否認と源泉所得税の追徴が同時に起きる
- 免税の協力業者への外注費は、2026年10月1日〜2028年9月30日の課税仕入れなら70%しか控除できない
- 給与が中心の会社は簡易課税(第5種)が有利なことが多い。外注が中心なら本則課税と比べて選ぶ
- 北海道の最低賃金は2026年10月1日から1,131円。契約単価の見直しと社会保険の適用拡大に備える
- 当事務所は継続的な顧問契約で支援しており、決算・申告だけのスポット依頼は受けていない
清掃業の会計・税務はどこが特殊か
ビルメンテナンスやハウスクリーニング、日常清掃などの清掃業は、売上の大半を人件費と外注費が占める労働集約型のビジネスです。外注費の扱いひとつで消費税や源泉所得税の負担が大きく変わり、税務リスクの出方も業種特有のものになります。税理士に相談する際は、次の論点を軸にすると話が早く進みます。
| 論点 | 清掃業で起きること | 税理士に確認したいこと |
|---|---|---|
| 外注費と給与の区分 | 応援の一人親方や協力業者への支払いが、実態から給与と判断されることがある | 判定の基準と、契約書・請求書の整え方 |
| インボイス | 免税の協力業者への外注費は、控除が経過措置の割合に限られる | 協力業者の登録状況の管理と、取引条件の整理 |
| 消費税の計算方法 | 給与は課税仕入れにならず、外注の比率で有利な方法が変わる | 簡易課税(第5種)と本則課税の試算 |
| 人件費の改定 | 最低賃金の引上げや社会保険の適用拡大が原価に直結する | 契約単価の見直しと、給与・社会保険の手続きの分担 |
| 現場別の採算 | 契約ごとの採算が見えにくく、立替や資材、除雪の兼業で数字が混ざる | 現場(契約)別の集計と、部門の分け方 |
同じ清掃業でも、ビル管理・ハウスクリーニング・特殊清掃では、取引先も論点も異なります。自社の業態に合う論点を、面談で具体的に質問できるよう整理しておきましょう。
| 業態 | 主な取引先 | 特有の論点 |
|---|---|---|
| ビルメンテナンス・日常清掃 | ビルオーナー・管理会社などの事業者 | 年間契約の単価改定、多数のパート従業員の勤怠と給与、インボイスの登録が前提 |
| ハウスクリーニング | 個人の顧客、退去時の清掃を発注する不動産管理会社 | 現金・カード決済の売上管理、個人向けが中心ならインボイスの影響は小さい |
| 特殊清掃・遺品整理 | 個人の遺族、不動産会社など | 廃棄物の収集運搬の許可または許可業者への委託、買い取った品を販売する場合の古物商の許可と在庫の管理、処分費の立替 |
論点1:外注費か給与か、どう判定する?
最大の論点は、応援で入ってもらう一人親方や協力業者への支払いが「外注費」か「給与」かの判定です。契約書の名前ではなく、指揮命令を受けているか、道具や資材を誰が用意しているか、他社の仕事も自由に請けられるかといった実態で判断されます。
| 判断の目安 | 外注(請負)に近い | 給与(雇用)に近い |
|---|---|---|
| 作業の指示 | 清掃の手順や時間配分を本人が決める | 会社が手順・時間・持ち場を細かく指示する |
| 資機材・洗剤 | 本人が用意し、費用も負担する | 会社が用意し、費用も会社が負担する |
| 報酬の決め方 | 現場や作業の単位で決まる | 時給・日給で、作業の結果にかかわらず支払われる |
| 代わりの人 | 本人の判断で他の人に任せられる | 本人が作業しなければならない |
| 他社の仕事 | 他社からも自由に仕事を受けている | 実質的に自社の専属 |
外注費としていた支払いが給与と認定されると、消費税の仕入税額控除が否認され、源泉所得税の追徴も発生します。税務署が更正できる期間は、原則として法定申告期限から5年(偽りその他不正の行為があれば7年)です。数年分がまとまると、加算税や延滞税を含めて大きな金額になり得ます。
- 協力業者と、業務の範囲・報酬の決め方・資機材の負担を定めた業務委託(請負)契約書を交わしているか
- 請求書は協力業者から現場ごとに発行され、作業の内容が分かるか
- 勤務表やシフト表で、自社の従業員と同じように時間管理をしていないか
- 自社の従業員から外注に切り替えた人について、働き方が実際に変わっているか
外注費と給与の線引きは、現場ごとの働き方の実態で変わります。契約書や請求書の整え方を、初回無料で確認できます。
無料で相談する論点2:協力業者のインボイスと、消費税の計算方法をどう選ぶ?
免税事業者のままの協力業者へ支払う外注費は、仕入税額控除に制限があるため、単価や取引条件の整理が必要です。本則課税の場合、控除できるのは消費税相当額の一部です。2026年10月1日〜2028年9月30日の課税仕入れは70%、2028年10月1日〜2030年9月30日は50%と段階的に下がります。
計算例:免税の協力業者への外注費が月に税込44万円の場合
例えば、消費税相当額は 44万円×10/110=4万円 です。2026年10月1日〜2028年9月30日の課税仕入れなら、控除できるのは 4万円×70%=2.8万円 です。控除できない 4万円−2.8万円=1.2万円 が毎月の負担増で、年間では 1.2万円×12=14.4万円 になります。
ツールインボイスの経過措置で控除できる額を計算する免税の協力業者への外注費を入れると、時期ごとの控除額と負担増の目安がわかります。計算する
一方で、自社の計算方法によっては、協力業者の登録の有無が納税額に影響しません。基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら簡易課税を選べ、清掃業はサービス業として第5種(みなし仕入率50%)にあたります。給与は課税仕入れにならないため、自社の従業員が中心の会社では簡易課税が有利になりやすく、外注や資材の比率が高い会社では本則課税が有利になることがあります。
計算例:課税売上高3,000万円の清掃会社
例えば、課税売上高が税抜3,000万円の場合、売上税額は 3,000万円×10%=300万円 です。簡易課税(第5種)なら、納付税額の目安は 300万円×50%=150万円 です。
本則課税で、登録事業者への外注費と資材などの課税仕入れが税抜1,200万円なら、仕入税額は 1,200万円×10%=120万円 です。納付税額は 300万円−120万円=180万円 で、簡易課税のほうが有利です。
課税仕入れが税抜1,800万円なら、仕入税額は 1,800万円×10%=180万円 です。納付税額は 300万円−180万円=120万円 となり、本則課税のほうが少なくなります。
簡易課税を選ぶには、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに届出書を出し、原則2年間は続ける必要があります。売上側では、ビル管理会社などの事業者が取引先ならインボイスの登録が事実上の前提になり、個人宅のハウスクリーニングが中心なら影響は小さくなります。制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドで確認できます。
無料ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比較する売上と外注費・資材の金額から、計算方法ごとの消費税の納付額を並べて比べられます。計算する
論点3:最低賃金と社会保険の改定にどう備える?
清掃業は時給で働くパート従業員が多く、最低賃金や社会保険の改定がそのまま原価に響きます。年間契約で単価が固定されている現場では、改定の時期と契約更新の時期のずれにも注意が必要です。2026年10月時点で押さえておきたい改定は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 北海道の最低賃金 | 2026年10月1日から時間額1,131円(改定前は1,075円) |
| 短時間労働者の社会保険 | 月8.8万円の賃金要件は2026年10月1日に撤廃。週20時間以上・企業規模51人以上・学生でないことが要件で、企業規模は2027年10月から36人以上に広がる |
| 保険料調整制度 | 2026年10月1日から、新たに適用となった事業所などで、標準報酬月額12.6万円以下の短時間労働者の保険料の一部を事業主が追加で負担し、本人の負担を軽くする仕組み(通算3年。事業主の最終的な負担は増えない) |
| 協会けんぽ北海道・雇用保険 | 健康保険10.28%(令和8年度)、雇用保険料率は一般の事業で13.5/1000(2026年4月1日〜2027年3月31日) |
北海道の最低賃金の引上げと契約単価
北海道の最低賃金は、2026年10月1日に56円上がりました。時給を見直すと社会保険料の会社負担も連動して増えるため、現場ごとに改定前後の原価を試算し、取引先との単価の協議に使える資料を用意しておきましょう。賃上げした分は、給与等の支給額が一定以上増えた中小企業が使える賃上げ促進税制の対象になる場合もあります。
給与計算と社会保険の手続きは、税理士がどこまで受けるのか、社会保険労務士と連携するのかを、契約の前に確認しておきます。業界の動きは清掃業・ビルメンテナンスの経営に役立つ最新情報でも紹介しています。
論点4:現場別の採算と、立替・資材・季節変動をどう管理する?
清掃業の利益は、現場(契約)ごとの人件費と外注費のかけ方で決まります。定期清掃の月額契約とスポットの作業を分け、勤怠データから人件費を現場に割り振ると、赤字の現場や単価の見直しが必要な契約が見えてきます。
- 現場ごとの売上・人件費・外注費・資材費を集計し、月次で粗利を確認しているか
- 取引先に請求する駐車場代や資材の立替は、経費ではなく立替金として精算しているか
- 洗剤やワックスなどの資材を毎期の決まった扱い(購入時に経費にするか、期末の残りを貯蔵品にするか)で処理しているか
- 冬季の除雪業務を兼業している場合、清掃とは別の部門で売上と原価を管理しているか
洗剤などの消耗品は、毎期おおむね一定の量を買って経常的に使うものなら、継続して同じ処理をすることを条件に、購入した期の経費にできます。一方、期末に大量にまとめ買いした場合などは、使っていない分を貯蔵品として計上する必要がないか確認します。
除雪機などの事業用の資産を持っている場合、札幌市では毎年1月31日(休日は翌開庁日)までに償却資産の申告が必要です。償却資産の免税点は、令和9年度分(2027年1月1日の賦課期日)から150万円が180万円に引き上げられます。青色申告の中小事業者が2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産は、少額減価償却資産の特例で一度に経費にできますが、償却資産の申告の対象にはなります。
清掃業に詳しい税理士の探し方と見極め方
業種名と地域名を掛け合わせて検索するほか、ビルメンテナンス関係の業界のつながりや、同業の経営者からの紹介が有力なルートです。下請の構造や外注の使い方が建設業と似ているため、建設業の税務に強い事務所も候補になります。
面談では「外注費と給与の区分をどう判断するか」「現場別の利益をどう見える化するか」を質問してみてください。具体的な手順や経験を交えて即答できる税理士であれば、業種への理解は一定の水準以上と考えてよいでしょう。あわせて、次の点も確認しておくと安心です。
- 協力業者の登録状況の管理と、経過措置の記帳の方法を説明できるか
- 簡易課税と本則課税を、自社の外注の比率で試算してくれるか
- 最低賃金の改定に合わせた単価改定の判断を、数字で支えてくれるか
- 官公庁の清掃業務の入札に向けて、決算書や納税証明書の準備を相談できるか
- 給与計算・社会保険について、社会保険労務士と連携できるか
税理士に依頼する価値は、申告の代行だけではありません。外注費の否認のような大きな追徴を未然に防ぐ予防策として、価値が特に大きい業種です。料金改定の判断、処遇改善と利益のバランス、入札に向けた決算書の整備など、数字の面から経営を支える役割も期待できます。
顧問料はどう決まる?年間総額とサービス範囲で比べる
顧問料は、記帳代行や給与計算まで任せるか、従業員数や現場数がどの程度か、面談の頻度などで変わります。金額は事務所によって異なるため、条件をそろえて見積りを取り、含まれる業務を比べることが大切です。
| 顧問料が決まる要素 | 清掃業での考え方 | 見積りで伝えること |
|---|---|---|
| 記帳の方法 | 自社で入力するか、記帳代行に出すか | 使っている会計ソフトと入力の状況 |
| 従業員数・現場数 | パートの人数と現場の数が多いほど、集計と確認の手間が増える | 従業員数と、定期契約の現場数 |
| 給与計算・年末調整 | 税理士が受けるか、社会保険労務士と分担するか | 給与の締め日・支払日と、勤怠の管理方法 |
| 面談の頻度 | 毎月・隔月・決算時のみなど | 希望する頻度と方法 |
| 相談の範囲 | 外注費の判定、消費税の方式選択、単価改定の試算などが含まれるか | 追加料金がかかる条件 |
例えば、従業員5名・年商4,000万円の清掃会社が、記帳は自社で行い、給与計算と隔月の面談・決算申告を依頼するとします。この場合は、その条件を各事務所に同じように伝えて見積りを比べます。
比べるときは、月額の顧問料だけでなく、決算料・年末調整・法定調書などを含めた年間総額で見ることが大切です。外注費の判定のような業種特有の相談に、追加料金なく乗ってもらえるかも確認しておきましょう。
当事務所の対応
当事務所は、月次の数字の確認から決算・申告、消費税の方式の選択、外注費の判定のご相談までを、継続的な顧問契約で支援しています。AIを活用した資料の下準備と、税理士による最終確認を組み合わせています。決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。料金は、会社の規模とお任せいただく範囲を伺ったうえでお見積りします。
よくある質問
ハウスクリーニングで個人のお客様が中心です。インボイスの登録は必要ですか?
個人のお客様はインボイスを必要としないため、登録しなくても影響が小さい場合があります。ただし、賃貸物件の退去時の清掃を不動産管理会社から受けるなど、事業者からの依頼がある場合は、その割合と登録後の納税額を試算して判断しましょう。
パートの従業員から「年収の壁」を聞かれます。どう説明すればよいですか?
令和8・9年分は、給与だけの人なら年収178万円以下で本人の所得税がかかりません。配偶者控除は配偶者の給与が136万円以下、配偶者特別控除は207万円未満が対象です。社会保険は、月8.8万円の賃金要件が2026年10月1日に撤廃され、週20時間以上などの要件で加入が決まります。扶養の判定は原則130万円未満で、2026年4月1日からは労働契約の内容から見込まれる年収で判定します。働き方の相談は社会保険労務士とも連携して受けると安心です。
官公庁の清掃業務の入札に参加したいのですが、会計で準備することは?
入札に参加するには、発注機関ごとの競争入札参加資格の審査を受けるのが一般的で、決算書や納税証明書の提出を求められます。税金を期限内に納めていることと、決算書を正確に作っておくことが土台になるため、審査の時期から逆算して準備しましょう。
個人事業から法人にするタイミングは?
所得の水準に加え、法人は役員1人でも社会保険の加入が必要になる点、赤字でも法人住民税の均等割がかかる点を含めて判断します。取引先の信用や入札への参加も判断材料になります。詳しくは清掃業の法人化のタイミングと判断基準で整理しています。
まとめ
清掃業で最大の税務リスクは外注費と給与の区分で、インボイスは協力業者との取引条件まで含めて整理する必要があります。給与が中心か外注が中心かで有利な消費税の計算方法が変わり、最低賃金や社会保険の改定は現場の単価に直結します。税理士は面談での具体的な質問で業種への理解を見極め、顧問料は年間総額とサービス範囲で比べましょう。札幌で清掃業の税務顧問をお探しの方は、お気軽にご相談ください。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年7月 公開/2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正と最低賃金・社会保険の改定を反映)
