整形外科クリニックの税理士選び|労災・自賠責の収入区分と医療法人化の論点

  • URLをコピーしました!

整形外科クリニックの税理士選びでは、顧問料の安さより、労災・自賠責・自費が混在する収入区分と、レントゲンやリハビリ機器などの設備投資、医療法人化の判断を扱えるかが要になります。整形外科に特有の会計・税務の論点と、任せる範囲・顧問料が決まる要素、面談で確認したいことを整理します。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

整形外科は収入の種類と職員数が多く、設備投資も大きい診療科です。税理士には、収入区分ごとの消費税と概算経費の特例の判定、設備投資と医療法人化の試算まで相談できるかを確認しましょう。

  • 労災・自賠責の診療は消費税は非課税だが、概算経費の特例の「社会保険診療」には含まれない
  • 保険診療・労災・自賠責は入金が遅れるため、期末の未収入金の計上と管理が要になる
  • レントゲン・MRI・リハビリ機器は、取得価額とリースか購入かで処理と資金繰りが変わる
  • 顧問料は収入規模・記帳の範囲・訪問頻度・給与計算などの付随業務で決まる
  • 医療法人化は所得水準と退職金・承継の計画で判断し、試算を毎年更新する
目次

整形外科の会計・税務はなぜ複雑?3つの特徴

整形外科はクリニックの中でも患者数と職員数が多く、リハビリ部門を持てば人件費の管理も複雑になります。収入も保険診療のほか、労災、交通事故の自賠責、自費、装具関連と多岐にわたり、税理士の力量差が出やすい診療科です。

収入の区分が多い

  • 保険診療・労災・自賠責・自費・文書料・装具
  • 区分ごとに消費税と概算経費の特例の扱いが違う
  • 請求先ごとに入金の時期がずれる

設備投資が大きい

  • レントゲン・MRI・リハビリ機器・物理療法機器
  • リースか購入かの判断が日常的に発生
  • 更新時期と資金繰りの計画が必要

職員が多い

  • 看護師・放射線技師・リハビリ職員・受付
  • 給与計算・年末調整・社会保険の事務
  • パート職員の時給と最低賃金の確認

この3つは、毎月の記帳から決算・申告、医療法人化の判断まで影響します。税理士を選ぶときは、これらに具体的な答えを返せるかどうかが見極めの軸になります。

収入区分で何が変わる?消費税・概算経費の特例・未収入金

消費税の課税・非課税の判定も、概算経費の特例(租税特別措置法第26条)の対象となる収入の範囲も、収入を正確に区分できて初めて計算できます。特に労災と自賠責は、消費税と概算経費の特例で扱いが一致しない点に注意が必要です。

収入の種類消費税概算経費の特例の社会保険診療実務の注意
保険診療(健康保険・国民健康保険など)非課税含まれる診療月の収入として計上し、入金までは未収入金で管理する
労災保険の診療非課税含まれない請求先と入金時期が保険診療と異なるため、別に管理する
自賠責保険の対象となる交通事故の診療非課税含まれない損害保険会社への請求分を管理する。健康保険を使って診療した場合は保険診療として扱う
自費診療・診断書などの文書料課税含まれない課税売上高が1,000万円を超えると、原則として2年後から消費税の納税義務が生じる
コルセットなどの装具取引の形で判定取引の形で判定院内で仕入れて販売するのか、装具業者が患者に直接販売するのかで、収入に含めるかが変わる
整形外科の主な収入区分と税務上の扱い(2026年10月時点の法令に基づく一般的な整理)

概算経費の特例は収入の区分が前提

個人開業の場合、社会保険診療の収入が一定額以下なら、実際の経費の代わりに法定の割合で計算した概算経費を使える特例があります。労災・自賠責・自費の収入はこの特例の対象外のため、その部分に対応する経費は実額で計算し、収入と経費を区分して集計しなければなりません。

実額の経費と概算経費のどちらが有利かは、収入の構成と経費の水準で毎年変わります。特例を使うには確定申告書への記載が必要なため、決算前に両方を試算しておくのが基本です。

レセプトの入金のずれと窓口の現金

保険診療の報酬は、診療した月から入金までに時間差があります。期末までの診療分は、入金が翌期でも未収入金として計上する必要があり、ここを入金ベースで処理していると収入の計上漏れになります。

具体例:12月診療分の保険診療報酬

例えば個人開業の整形外科で、12月診療分として社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会に請求した額が合計600万円、入金が翌年2月の場合です。

  • 12月までの収入として未収入金600万円を計上する
  • 翌年に査定で2万円減額された場合は、通知を受けた時点で収入を減らす
  • 実際の入金額:600万円-2万円=598万円

返戻(差し戻し)されたレセプトは、再請求して入金されるまで未収入金として残高を管理します。

窓口で受け取る一部負担金は現金の扱いが多く、レセコンの日計表と現金の入金額が毎日一致しているかの確認が欠かせません。未収の患者負担金も一覧で管理しておくと、決算と税務調査の両方で説明しやすくなります。

無料
ツール
消費税の課税事業者になるかを判定する自費診療や文書料などの課税売上高から、消費税の納税義務が生じるかを確認できます。計算する

レントゲン・MRI・リハビリ機器の設備投資はどう判断する?

レントゲンやMRI、リハビリ機器、物理療法機器などは金額が大きく、減価償却の方法やリースか購入かの判断が日常的に発生します。取得価額(本体価格に据付費などを含めた金額)によって、その年に経費にできる範囲が変わります。

取得価額処理ポイント
10万円未満消耗品費などとして全額をその年の経費にする使用可能期間が1年未満のものも同様
20万円未満一括償却資産として3年で均等に経費にすることも選べる償却資産税(固定資産税)の申告の対象外
40万円未満少額減価償却資産の特例で全額をその年の経費にできる(年300万円まで)青色申告の中小事業者が対象。2026年4月1日以後の取得から(それ以前は30万円未満)。2029年3月31日までの取得、従業員400人超の法人は対象外。償却資産税の申告の対象
上記以外耐用年数に応じて減価償却する医療機器・建物附属設備など、資産の種類で耐用年数が異なる
取得価額による処理の違い(2026年10月時点)

リースは初期の資金負担を抑えられる一方、中途解約が難しく、総支払額は購入より多くなりやすい方法です。購入の場合は融資の返済期間と機器を使う期間を合わせ、更新時期をあらかじめ計画に入れておくと資金繰りが安定します。高額な機器ほど、導入前に診療報酬の見込みと返済の試算をしておく価値があります。

無料
ツール
少額の機器の処理方法を3択で比較する即時の経費化・一括償却・少額減価償却資産の特例のどれが有利か、金額を入れて比べられます。計算する

職員が多い整形外科の給与・社会保険で確認したいことは?

受付・看護師・放射線技師に加え、リハビリ部門を持てば理学療法士などの職員も増えます。職員が10人を超えれば、給与計算と社会保険の事務負担も無視できません。院内で行うか任せるかを決める前に、次の点を押さえておきます。

  • 個人の診療所でも、常時5人以上の従業員を使用すると健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になる。医師国民健康保険組合の加入者は、健康保険の適用除外の承認を受けて厚生年金保険だけに加入する方法もある
  • 令和8年分の年末調整は基礎控除・給与所得控除の改正があり、2026年中の毎月の源泉徴収は従来の税額表のまま、12月の年末調整で精算する
  • 受付や助手のパート職員の時給が、北海道の最低賃金(2026年10月1日から1,131円)を下回っていないか
  • 家族を職員にする場合は、青色事業専従者給与の届出と、勤務の実態に見合った金額になっているか

医療法人化はいつ検討する?個人との違いと判断の軸

整形外科は収益性が高く、所得が一定水準を超えると医療法人化による税負担の平準化や事業承継の検討が現実味を帯びます。個人の診療所と医療法人の主な違いは次のとおりです。

項目個人の診療所医療法人
所得にかかる税院長の事業所得に所得税(5%〜45%の累進)と住民税10%法人の所得に法人税。院長は役員報酬を受け取り、給与所得として課税
法人税の税率なし中小法人に当たる場合、年800万円以下の部分15%(2027年3月31日までに開始する事業年度)、超える部分23.2%
概算経費の特例要件を満たせば使える使えない
退職金院長本人には支給できない役員退職金を支給でき、退職所得として課税される
利益の分配院長個人の所得になる剰余金の配当は禁止
社会保険常時5人以上で強制適用院長1人でも強制適用
手続き開業届などの届出都道府県知事の設立認可、毎会計年度の事業報告書等の届出
個人の診療所と医療法人の主な違い(2026年10月時点の法令に基づく)

新たに設立できるのは出資持分のない医療法人で、解散したときの残余財産は院長個人には戻りません。法人化の損益分岐は所得水準や退職金の計画によって変わるため、毎年シミュレーションを更新し、判断のタイミングを逃さないことが大切です。判断の手順は整形外科クリニックの法人化のタイミングと判断基準で詳しく解説しています。

医療法人化の損益分岐は、所得水準や退職金の計画で変わります。現在の数字をもとに、初回無料で試算の進め方をご案内します。

無料で相談する

税理士にどこまで任せる?任せる範囲と顧問料が決まる要素

任せる範囲は、院内の事務体制と院長が数字に割ける時間で決めます。整形外科で判断が分かれやすい業務は次のとおりです。

業務判断のポイント
記帳院内で入力するなら、レセコンの集計と会計ソフトの連携で手間を減らす。収入区分ごとの集計まで任せるかを決める
給与計算・年末調整職員やパートが多い、リハビリ職員の勤務形態が多様といった場合は、任せると院内の負担が大きく減る
決算・確定申告月次の数字をもとに作成すると、概算経費の特例の有利判定や納税額の見通しを早く立てられる
資金繰り・設備投資機器の更新時期と融資の返済を、月次の数字と合わせて検討する
医療法人化・承継毎年の試算の更新と、設立認可の段取りまで相談できるか
整形外科で任せる範囲を決めるときのポイント

顧問料に一律の相場表があるわけではなく、おおむね年商規模と取引量、記帳代行まで任せるか院内で入力するか、訪問や面談の頻度、給与計算・年末調整・法人化検討といった付随業務の範囲で決まります。整形外科では、これに収入区分の多さと、個人か医療法人かの違いが加わります。

例えば年商8,000万円で職員8人、記帳は院内で行い隔月訪問という整形外科と、年商2億円でリハビリ職員20人、記帳も給与計算も任せたい整形外科では、必要な作業量がまったく違います。見積もりを依頼する前に任せたい業務を整理し、総額だけでなく、訪問の回数、記帳代行の有無、決算料・年末調整料が別建てかどうかを内訳で確認しましょう。

初回面談で何を確認する?準備するものと当事務所の対応

初回面談で次の点を質問すれば、医科への理解度と、契約後の進め方はおおよそ判断できます。

  • 医科クリニックの関与経験があり、レセプト入金のずれ(未収入金の計上)を当然に処理できるか
  • 労災・自賠責・自費の収入区分と、消費税・概算経費の特例の扱いについて質問に即答できるか
  • 医療法人化のシミュレーションを数字で示せるか
  • クラウド会計やレセコンとのデータ連携に対応しているか
  • 診療時間に配慮した訪問やオンライン面談など、柔軟に対応できるか
  • 契約の範囲外の相談(設備投資の判断や法人化の試算など)の扱いと、担当者が交代するときの引き継ぎ体制

面談には直近の確定申告書や試算表を持参すると、収入区分や設備投資の状況を具体的に把握してもらえます。資金繰り、申告の正確性、法人化の検討など、困っていることを事前にメモしておくと、限られた時間で聞き漏らしを防げます。

当事務所は、継続的な顧問契約の中で、月次の数字の確認から決算・申告、設備投資や医療法人化の試算までご相談いただく形で支援しています。決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。料金の考え方は料金・契約の流れでご案内しています。

札幌・北海道の場合

雪の季節に患者数が変動する札幌では、月次の数字を早く締めて資金繰りを確認できる体制づくりが重要です。冬季の暖房費や患者用駐車場の除雪費は、診療所の運営に必要な支出であれば経費として扱うのが一般的で、自宅と兼用している場合は事業に使った部分を合理的に按分します。

診療報酬の改定や医療機関向けの制度の動きは、医療・歯科クリニックの経営に役立つ最新情報でまとめています。

よくある質問

整形外科の開業前から税理士に相談した方がよいですか?

開業前からの相談をおすすめします。開業準備の支出は開業費として扱えるものがあり、機器をリースにするか購入にするかで資金計画も変わります。青色申告承認申請書は、1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内、給与支払事務所等の開設届出書は開設の日から1か月以内に提出が必要です。

自費診療を始めるとき、税務で何が変わりますか?

自費診療は消費税の課税売上になるため、課税売上高の推移を毎年確認する必要があります。患者は一般の消費者のため、インボイスの登録が必要になる場面は多くありません。課税事業者になった場合は、料金を消費税込みの総額で表示する必要があります。自費の収入は概算経費の特例の対象外なので、対応する経費の区分も必要です。

医療法人化した後、院長個人の土地・建物を法人に貸すときの注意点は?

周辺の相場に照らして相当な賃料を設定し、院長個人は不動産所得として確定申告します。相続の場面では、出資持分のない医療法人は株式を持つ同族会社に当たりません。そのため、その土地の小規模宅地等の特例は、特定同族会社事業用(400㎡・80%)ではなく貸付事業用(200㎡・50%)で判定します。

税理士を途中で変更するときは何を準備すればよいですか?

会計データ、過去の申告書と決算書、税務署に提出した届出書の控え、固定資産台帳、未収入金の明細をそろえます。決算が終わった直後は区切りがよく、引き継ぎの漏れも起きにくい時期です。

まとめ

整形外科は、労災・自賠責・自費を含む収入区分、レントゲンやリハビリ機器の設備投資、職員の多さと医療法人化の判断が、会計・税務の要になります。税理士を選ぶときは、これらに具体的に答えられるかを面談で確かめ、任せたい範囲を整理してから見積もりを依頼しましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

整形外科クリニックの会計・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ

  • 初回相談は無料(オンライン対応可)
  • フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
  • その場でご契約を迫ることはありません

対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次