司法書士事務所の税理士選び|源泉徴収の精算・預り金の論点と顧問料

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司法書士事務所の税務は、登録免許税などの預り金・立替金を報酬と分けることと、報酬から差し引かれる源泉徴収を確定申告で精算することが土台です。税理士は、この2つの実務を具体的に説明できるかと、登記の繁忙期への配慮で選び、顧問料は任せる範囲をそろえて比べます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

司法書士事務所の経理は「預り金・立替金の区分」と「源泉徴収の精算」が土台です。税理士はこの実務を具体的に説明でき、登記の繁忙期に合わせて段取りしてくれるかで選びましょう。

  • 登録免許税・収入印紙などの実費は報酬と分けて請求・記帳し、売上にも消費税にも含めない
  • 法人や給与を払う事業者からの報酬は(支払額−1万円)×10.21%が源泉徴収され、確定申告で精算する
  • 一般の個人からの報酬は源泉徴収されないため、相続登記などが多い事務所は納税資金の確保が必要
  • 支払調書は届かないこともあるため、源泉徴収額は自分の帳簿で管理する
  • 顧問料は金額だけでなく、源泉精算・預り金処理・法人化の相談まで含めた範囲で比べる
目次

預り金・立替金の区分が経理の土台

登記や相続のプロである司法書士も、自分の事務所の税務となると勝手が違います。請求書には報酬のほかに、登録免許税や収入印紙、登記事項証明書の手数料といった実費が並びます。依頼者から預かって役所などへ納めるお金は、売上ではなく預り金・立替金です。

区分例売上・消費税源泉徴収
報酬登記手続きの報酬、相談料売上。消費税の課税売上支払者が法人などなら対象
預り金登録免許税に充てるため事前に預かったお金売上にしない。消費税もかけない報酬と明確に分けていれば対象外が一般的
立替金先に支払った収入印紙代・証明書の手数料売上にしない。消費税もかけない報酬と明確に分けていれば対象外が一般的
交通費・日当法務局や現地への出張の実費業務の対価の一部として課税売上報酬に含めて対象
司法書士の請求書に並ぶ項目の扱い(2026年10月時点の一般的な整理)

ここを報酬と混ぜて処理すると、売上高が実態より膨らみ、消費税の課税売上の判定まで狂ってしまいます。請求書の段階で報酬と実費を区分し、立替金には消費税をかけない。証憑を案件ごとに保存する。この型を最初に作れるかどうかが、司法書士事務所の経理の出来を左右します。

なお、出張の交通費や日当は「実費」として請求しても、業務の対価の一部として扱われるのが一般的です。立替金と同じ扱いにしないよう、請求書の項目名を分けておきましょう。開業時の届出や勘定科目の準備は司法書士事務所の開業時の税務手続きと届出一覧でまとめています。

報酬の源泉徴収と確定申告での精算

個人の司法書士への報酬には、特有の源泉徴収のルールがあります。1回の支払ごとに1万円を差し引いた残額の10.21%が源泉徴収されます。消費税を請求書で区分して記載していれば、税抜の金額で計算できます。

計算例:登記報酬8万円の源泉徴収と入金額

例えば、登記報酬が税抜80,000円の場合、1万円を差し引いた70,000円に税率をかけます。源泉徴収税額は 70,000円×10.21%=7,147円 です。

  • 消費税を考えない場合の入金額は 80,000円−7,147円=72,853円
  • 消費税8,000円を区分して請求した場合は 80,000円+8,000円=88,000円 から差し引き、入金額は 88,000円−7,147円=80,853円

源泉徴収をするのは、法人や給与を支払っている事業者などです。相続登記を依頼する一般の個人のように、給与を支払っていない個人からの報酬は源泉徴収されません。依頼者の種類によって入金額が変わるため、帳簿でも分けて管理します。

依頼者報酬の源泉徴収帳簿で管理すること
法人(不動産会社・金融機関など)される案件ごとの源泉徴収額を記録し、年間の合計を確定申告に記載する
給与を支払っている個人事業主される同上
一般の個人(相続登記など)されない税金分を差し引かれずに入金されるため、納税資金を別に確保する
司法書士法人として受け取る場合されない(法人への支払は対象外)法人の決算・申告と、法人税の中間申告などの資金計画
依頼者の種類と源泉徴収の関係(2026年10月時点)

年間に源泉徴収された税額は、確定申告で本来の税額と精算し、多く差し引かれていれば還付されます。取引先が税務署に出す支払調書は、受け取る側への交付が法律上の義務ではないため、届かないこともあります。支払調書に頼らず、入金明細と請求書の控えから源泉徴収額を自分で集計できるようにしておくと、申告時のやり取りが格段に速くなります。

源泉徴収されない個人からの依頼が多いと、確定申告で納める税額が大きくなりがちです。前年分をもとに計算した予定納税基準額が15万円以上なら、7月と11月に予定納税もあります。また、司法書士業は個人事業税(事業主控除290万円を超える所得に5%)の対象です。

消費税とインボイスは依頼者の構成で考える

不動産会社や金融機関など事業者からの依頼が多い事務所は、依頼者が仕入税額控除のためにインボイスを求めることがあり、登録の必要性が高くなります。相続登記など個人からの依頼が中心なら、登録しなくても影響が小さい場合があります。なお、登録免許税や収入印紙代はもともと消費税の対象外のため、立替金の部分にインボイスは関係しません。

免税事業者から登録した個人の司法書士は、令和8年分まで2割特例、令和9・10年分は3割特例(届出不要。基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは使えない)を使えます。その後は、簡易課税(司法書士業は第5種・みなし仕入率50%)か本則課税を選びます。

計算例:課税売上高800万円の司法書士の納税額

例えば、立替金を除いた課税売上高が税抜800万円の場合、売上税額は 800万円×10%=80万円 です(地方消費税を含む概算)。納付税額の目安は、2割特例なら 80万円×20%=16万円、3割特例なら 80万円×30%=24万円、簡易課税なら 80万円×50%=40万円 です。

3割特例のあとに簡易課税に切り替える届出は、翌課税期間の確定申告期限まで出せます。登録の有無や方式の選び方はインボイス制度の実務ガイドで全体像を確認できます。

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簡易課税・本則課税・2割特例を比較する売上と経費の金額から、計算方法ごとの消費税の納付額を並べて比較できます。計算する

源泉徴収の管理方法や消費税の方式は、依頼者の構成と売上で変わります。初回無料で現状の確認からお手伝いします。

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司法書士業務に詳しい税理士を見極めるポイント

一般の事業とは経理の型が異なるため、税理士選びで日々の効率が大きく変わる業種です。面談では、次の点を具体的に質問してみてください。

  • 司法書士・弁護士など士業の顧問経験があるか
  • 預り金・立替金の区分と、源泉精算の実務を具体的に説明できるか
  • 依頼者ごとの源泉徴収の有無を、帳簿でどう管理するか提案できるか
  • 司法書士法人化について、損益や社会保険まで含めた試算ができるか
  • 登記の繁忙期を避けた打合せ日程に、柔軟に対応できるか
  • 料金に含まれる業務の範囲と、追加料金がかかる条件

年度末は不動産取引に伴う登記が集中しやすく、相続登記の義務化で相続案件の波もあります。一方、個人の確定申告の期間(令和8年分は2027年2月16日〜3月15日)は年度末の繁忙期と重なります。決算や申告の対応が重ならないよう、1月中に資料をそろえる段取りを組んでくれるかどうかは、資格や肩書以上に日々の負担を左右するポイントです。

顧問料はどう決まる?料金の見方と任せる範囲

顧問料は事務所ごとに異なり、記帳代行まで任せるか自分で入力するか、職員の年末調整や法定調書の作成を含むかどうかで、年間の総額が大きく変わります。司法書士事務所で範囲を決めるときは、次の業務ごとに「自分で行うか、任せるか」を整理しておくと見積りを比べやすくなります。

業務自分で行う場合のポイント任せる場合に確認すること
日々の記帳報酬・立替金・源泉徴収額を分けて入力する案件数や入金件数で料金が変わるか
源泉徴収額の集計入金明細と請求書の控えから年間の合計を出す依頼者別の管理表を作ってもらえるか
決算・確定申告青色申告特別控除の要件を満たす帳簿の保存消費税の申告と方式の選択が含まれるか
職員の給与・年末調整人数が少なければソフトで対応できる源泉徴収票・給与支払報告書の作成が含まれるか
法人化・資金繰りの相談判断材料を自分で集めるのは負担が大きい試算が顧問料に含まれるか
任せる範囲の整理(見積りの比較用)

金額の安さだけで選ぶより、源泉精算・預り金処理・法人化の相談まで含めた業務範囲で比べるのが失敗しないコツです。月額顧問料の12か月分に決算料やオプション料金を加えた年間総額で並べ、正確な金額は各事務所の料金表や見積りで確認しましょう。

当事務所の対応

当事務所は、記帳の確認から決算・確定申告、源泉徴収額の管理、消費税の方式選択、職員の給与計算までを、継続的な顧問契約で支援しています。確定申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。料金は、任せる範囲と取引量を伺ったうえでお見積りします。

具体例|複数案件の実費と源泉をまとめて管理する

同じ月に複数の登記案件を抱えると、実費の立替えと入金が入り乱れます。案件ごとに実費と報酬を分けて記録しておけば、依頼者への請求時に内訳をすぐ示せます。月末に立替金の残高を一覧で確認すれば、請求漏れや入金の遅れにも早く気づけます。

具体例:報酬・消費税・立替金・源泉徴収を1回で受け取った場合

例えば、法人の依頼者に報酬80,000円、消費税8,000円、立替えた登録免許税40,000円を請求したとします。源泉徴収税額7,147円を差し引いて振り込まれると、入金額は 80,000円+8,000円+40,000円−7,147円=120,853円 です。

  • 借方:普通預金 120,853円、事業主貸(源泉徴収された所得税)7,147円
  • 貸方:売上高 80,000円、仮受消費税 8,000円、立替金 40,000円

源泉徴収された所得税は事業の経費ではなく、本人の所得税の前払いとして扱い、確定申告で精算します。

  1. 案件番号を付ける受任時に番号を決め、実費の領収書・請求書・入金記録のすべてに同じ番号を入れます。
  2. 実費は立替金で記帳する登録免許税や証明書の手数料を支払ったら、案件番号を付けて立替金の科目に記録します。
  3. 入金時に4つに分けて消し込む報酬・消費税・立替金・源泉徴収額に分けて記帳し、源泉徴収額は依頼者別の集計表にも転記します。
  4. 月末に立替金の残高を確認する残っている立替金を案件別に一覧にし、未請求・未入金の案件を洗い出します。

見落としやすいポイント

  • 法人形態による違い/司法書士法人として業務を行う場合、法人への報酬は源泉徴収の対象外になり、入金額や請求書の作り方が個人事務所と変わります。法人化を考え始めたら、請求書の様式と資金計画もあわせて見直します。判断の軸は司法書士事務所の法人化のタイミングと判断基準で説明しています。
  • 消費税の課税売上の判定/立替金を報酬に含めて計上すると、課税売上高が実態より大きくなり、免税事業者かどうかを決める1,000万円の判定を誤る原因になります。
  • 繁忙期の資料提出/年度末や相続登記が集中する時期は税理士側の繁忙期とも重なるため、決算・申告に必要な資料は早めにまとめて渡しておくと対応がスムーズです。
  • 職員がいる場合の届出と社会保険/補助者や事務職員を雇う場合は、給与支払事務所等の開設届出(開設から1か月以内)や年末調整の準備が必要です。士業の個人事務所も、常時5人以上を雇うと健康保険・厚生年金の強制適用になります。
  • 他の士業への支払/職員に給与を払っている事務所が、土地家屋調査士や税理士などに報酬を払うときは、自らも源泉徴収をして納付する義務があります。

実務ワンポイント:会計と請求のシステムをつなぐ

登記や相続の相談対応に追われていると、実費の精算や源泉徴収額の管理は後回しになりがちです。クラウド会計と請求書発行のシステムを連携させておくと、報酬・実費・源泉徴収額を案件ごとに分けて記録でき、月次の締め作業も短時間で終えられます。

法務局の手続きや取引先とのやり取りで電子データとして受け取った領収書・請求書は、2024年1月1日以後、電子データのまま保存する必要があります。帳簿を電子で保存できる設定にしておくと、青色申告特別控除(令和8年分まで最高65万円、令和9年分からは要件を満たすと75万円)の準備にもなります。

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青色申告と白色申告の節税効果を比べる所得の金額から、青色申告特別控除による税額の違いの目安を計算できます。計算する

よくある質問

源泉徴収された税金は戻ってきますか?

年間に差し引かれた源泉徴収税額は、確定申告で計算した本来の所得税と精算します。差し引かれた額のほうが多ければ還付され、少なければ差額を納めます。経費が多い年や、事業を始めたばかりの年は還付になることがあります。

支払調書が届かない取引先があります。申告はできますか?

支払調書がなくても申告できます。入金明細と請求書の控えから源泉徴収額を集計し、依頼者ごとに記録しておけば十分です。取引先に源泉徴収額を確認したい場合は、金額の照会をお願いする方法もあります。

職員の給与から預かった所得税と、報酬から差し引かれた所得税は相殺できますか?

相殺はできません。職員の給与から預かった所得税は、事業者として期限までに納付する税金です。報酬から差し引かれた所得税は本人の所得税の前払いで、確定申告で精算します。性質が違うため、帳簿でも別々に管理します。

年の途中で司法書士法人にした場合、申告はどうなりますか?

個人事業は法人化の前日までの分を、翌年の確定申告で申告します。廃業の届出は事業をやめた日から1か月以内です。法人は事業年度ごとに決算を行い、事業年度の終了から2か月以内に法人税などを申告します。

まとめ

司法書士事務所の経理は、預り金・立替金を報酬と区分する型づくりが土台です。法人などからの報酬は(支払額−1万円)×10.21%が源泉徴収され、確定申告で精算します。源泉徴収のない個人の依頼や支払調書が届かない取引もあるため、源泉徴収額は自分の帳簿で管理しましょう。税理士は士業顧問の経験と繁忙期への柔軟さで選び、顧問料は業務範囲とセットで比べます。札幌で司法書士事務所の税務顧問をお探しの方は、お気軽にご相談ください。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年8月 公開/2026年10月 改訂(インボイスの2割特例終了と3割特例、令和8年度税制改正を反映)

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