経営コンサルタントの税理士選びは、源泉徴収された報酬の精算、利益率の高さからくる所得税・消費税の負担、法人成りの判断を、具体的な数字で示せるかどうかが基準です。顧問料は金額だけでなく業務範囲とセットで比べ、所得が伸びる前から継続して相談できる相手を選びます。
この記事の結論
経営コンサルタントの税理士は、源泉徴収の精算・消費税・法人成りを「数字で」説明できるかで選びます。経費が少なく利益率が高い業種なので、税負担の見通しを早めに立てられる相手かどうかが重要です。
- 企業の診断や経営改善の指導の報酬は、個人が法人などから受け取ると源泉徴収の対象。売上は請求額で計上し、源泉税は確定申告で精算する
- 取引先が法人中心ならインボイス登録が前提になりやすい。課税仕入れが少ないため、簡易課税(第5種50%)が有利になりやすい
- 法人成りは、所得の水準だけでなく社会保険料・均等割・消費税まで含めて試算する
- 顧問料は記帳の分担・面談の頻度・相談の範囲で決まる。金額ではなく業務範囲とセットで比べる
- 当事務所は継続的な顧問契約で支援しており、申告だけのスポット依頼は受けていない
経営コンサルタントの税務はここが独特
コンサルタント業は仕入も在庫もないため、売上の大半がそのまま利益になります。例えば年商1,500万円・経費250万円なら、所得は1,250万円です。所得税は累進税率のため、この水準になると負担は急に重く感じられます。
報酬の源泉徴収
個人のコンサルタントが、企業の状況の調査・診断や経営改善の指導を行い、法人などの源泉徴収義務者から受け取る報酬は、所得税と復興特別所得税を源泉徴収されます。所得税の通達では、中小企業診断士の登録がなくても、経営コンサルタントなどと称して企業の診断・指導を行う人を企業診断員に含めています。
源泉徴収税額は、1回の支払額が100万円以下なら支払額×10.21%、100万円を超える部分は20.42%です。消費税を区分して請求していれば、税抜の報酬額で計算できます。講演やセミナーの講師料も、講演料として源泉徴収の対象です。
収入の種類と売上の計上時期
| 収入の種類 | 源泉徴収 | 売上に計上する時期の考え方 |
|---|---|---|
| 月額の顧問契約 | 法人などからの支払いは対象 | 役務を提供した月ごと。数か月分の前払いは前受金とし、該当する月に売上にする |
| プロジェクト型の報酬 | 診断・指導の内容なら対象 | 成果物の引渡しや役務の完了の時 |
| 成果報酬 | 診断・指導の内容なら対象 | 成果の条件を満たし、請求できることが確定した時 |
| 講演・セミナーの講師料 | 法人などからの支払いは対象(講演料) | 講演を行った時 |
| 個人向けのオンライン講座・教材の販売 | 対象外 | 提供・販売した時 |
コンサルタント業は個人事業税の対象で、税率は5%、事業主控除は年290万円です。所得税の予定納税(前年の基準額が15万円以上の場合。令和8年分は第1期が2026年7月31日、第2期が11月30日)もあり、確定申告の時期以外にも納税資金が必要になります。
消費税とインボイスはどう判断する?
取引先が法人中心のコンサルタント業では、インボイス登録が事実上の前提になりやすい点を見逃せません。免税事業者に支払った取引先は、経過措置の範囲(2026年10月1日〜2028年9月30日は70%)でしか控除できず、残りが取引先の負担になるためです。
基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超える場合は、登録の有無にかかわらず課税事業者で、2割特例や3割特例は使えません。状況ごとに選べる計算方法は次のとおりです。
| 基準期間の課税売上高 | 選べる計算方法 |
|---|---|
| 1,000万円以下で、登録により課税事業者になった個人 | 令和8年分は2割特例、令和9年分・令和10年分は3割特例。ほかに簡易課税・本則課税 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 簡易課税(事前の届出が必要)か本則課税 |
| 5,000万円超 | 本則課税 |
計算例:課税売上高が税抜1,500万円の場合
例えば、税抜の課税売上高が1,500万円、経費のうち消費税がかかる課税仕入れが税抜200万円の個人のコンサルタントの場合です(地方消費税を含めた10%で単純化した概算)。
- 売上の消費税額:1,500万円×10%=150万円
- 簡易課税(第5種・みなし仕入率50%):150万円×50%=75万円
- 本則課税:仕入れの消費税額は200万円×10%=20万円なので、150万円−20万円=130万円
コンサルタント業は課税仕入れが少ないため、簡易課税のほうが納税額は小さくなりやすい業種です。
簡易課税は、適用を受けたい課税期間の初日の前日まで、個人なら前年の12月31日までに届出が必要です。2割特例や3割特例を使った翌年から簡易課税に移る場合は、その年の確定申告期限までの届出で間に合います。インボイス制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドで整理しています。
無料ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比べる売上と仕入れの金額から、計算方法ごとの消費税の納税額を比較できます。計算する
コンサルタント業に強い税理士を見分ける基準
第一の基準は、法人成りのシミュレーションを具体的な数字で出せるかどうかです。役員報酬の設定、小規模企業共済や経営セーフティ共済の活用、社会保険料まで含めた手取りの比較を示せる事務所なら、コンサルタント業の高収益の構造を理解していると判断できます。
第二に、クラウド会計とオンライン対応の有無です。コンサルタントは打ち合わせと移動が多く、記帳の自動化とチャット・オンライン面談に対応していれば、道外への出張が続く時期でも顧問関係が途切れません。面談では、次の点を具体的に質問してみましょう。
- 源泉徴収された報酬を、どのように集計して確定申告で精算するか
- 消費税の計算方法(簡易課税・本則課税・特例)を、毎年比較してもらえるか
- 法人成りの試算に、社会保険料・均等割・消費税まで含めるか
- 役員報酬の決め方と、改定できる時期(期首から3か月以内)の説明があるか
- 予定納税や納税資金の見通しを、申告の前に示してもらえるか
- クラウド会計・チャット・オンライン面談で、資料のやり取りを完結できるか
顧問料はどう決まる?金額より業務範囲で比べる
顧問料は、記帳代行の有無、面談の頻度、税務相談の範囲などによって大きく変わるため、金額だけを並べて比べるのは危険です。安さだけで選ぶと、「申告のときしか連絡がない」という不満につながりがちです。
| 顧問料を左右する要素 | 見積りで確認すること |
|---|---|
| 事業の形態 | 個人事業か法人か。法人なら決算書と法人税・地方税の申告が加わる |
| 記帳の分担 | 自分でクラウド会計に入力するか、記帳代行を頼むか |
| 取引量 | 顧問先の数、月の請求と経費の件数 |
| 面談の頻度・方法 | 毎月か四半期ごとか、オンラインか訪問か |
| 消費税 | 課税事業者として申告が必要か、計算方法の比較を含むか |
| 相談の範囲 | 法人成りの試算、役員報酬の設計、融資の資料作成、税務調査の立会いを含むか |
料金と業務範囲をセットで公開している事務所を基準に、同じ範囲の見積りどうしを年間の総額で比べましょう。当事務所の料金は料金・契約の流れで、何が含まれるかとあわせて公開しています。
当事務所のご支援の形
当事務所は、日々の記帳の確認から決算・申告、法人成りの試算までを継続して支援する顧問契約でお手伝いしています。確定申告や決算だけのスポットのご依頼はお受けしていません。
法人成りを検討する目安
所得がおおむね800万〜1,000万円を超えてくると、法人化による税負担の差が出やすいと言われます。ただしこれは目安にすぎず、社会保険料の負担増、消費税の課税関係、設立や維持のコストまで含めた総合判断が必要です。損益の分かれ目は、家族構成や働き方によっても変わります。
| 項目 | 個人事業 | 法人 |
|---|---|---|
| 所得・利益にかかる国税 | 所得税5〜45%の累進税率(ほかに復興特別所得税) | 法人税:中小法人は年800万円以下の部分15%(2027年3月31日までに開始する事業年度)、超える部分23.2%。ほかに地方法人税など |
| 地方税 | 住民税10%、個人事業税5%(事業主控除290万円) | 法人住民税(法人税割と均等割)、法人事業税(所得400万円以下の部分3.5%など) |
| 赤字でもかかる税金 | 所得がなければ、所得税や住民税の所得割はかからない | 均等割(札幌市内で資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら、年7万円) |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 健康保険・厚生年金(役員1人でも強制適用) |
| 設立の費用 | 開業届の提出のみ | 登録免許税(株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円)など |
計算例:所得1,250万円の個人のコンサルタントの税負担
例えば、年商1,500万円・経費250万円(所得1,250万円)で、青色申告特別控除65万円を引いた後の所得から、所得控除を仮に185万円差し引いて、課税所得が1,000万円になったとします(住民税は同じ課税所得で計算した概算)。
- 所得税:1,000万円×33%−1,536,000円=1,764,000円
- 復興特別所得税:1,764,000円×2.1%=37,044円
- 住民税(所得割):1,000万円×10%=100万円
- 個人事業税:1,250万円−290万円=960万円、960万円×5%=48万円
- 合計:1,764,000円+37,044円+1,000,000円+480,000円=3,281,044円
課税所得のうち900万円を超える部分には所得税33%がかかり、住民税・個人事業税を加えると負担は大きくなります。法人化した場合の比較は、役員報酬の額と社会保険料を決めたうえで試算します。
法人にすると、役員報酬は原則として事業年度の途中で変えられず、改定は期首から3か月以内に限られます。報酬を受け取る形になるため給与所得控除が使える一方、法人と個人の両方に社会保険料がかかります。判断の基準は経営コンサルタントの法人化のタイミングと判断基準で詳しく整理しています。
法人成りの損得は、役員報酬の設定や家族構成で結論が変わります。所得が増え始めた段階で、初回無料で試算できます。
無料で相談する源泉徴収された報酬は年間でどう精算する?
源泉徴収された税額は、所得税の前払いです。確定申告で計算した税額から年間の源泉徴収税額を差し引き、不足していれば納付、多すぎれば還付になります。入金額だけを見て資金繰りを組んでいると、申告の時期に慌てることになります。
具体例:月額55万円の顧問報酬の年間精算
例えば、法人の顧問先から毎月、報酬50万円と消費税5万円の合計55万円を受け取る契約の場合です。
- 毎月の源泉徴収税額:500,000円×10.21%=51,050円
- 毎月の入金額:550,000円−51,050円=498,950円
- 年間の源泉徴収税額:51,050円×12=612,600円
- 入金額ベースの年間合計は498,950円×12=5,987,400円で、実際の報酬の500,000円×12=6,000,000円より少なく見える
確定申告で算出した所得税と復興特別所得税の合計から612,600円を差し引いて精算します。所得の水準が高いと、源泉徴収税額だけでは足りず、追加の納付になることが多くなります。
源泉徴収された税額は、取引先から届く支払調書に頼らず、自分の請求データで集計しておくのが確実な方法です。支払調書は税務署への提出書類で、受け取る側への交付は義務ではありません。
見落としやすいポイント
| ポイント | 起きやすいこと | 対策 |
|---|---|---|
| 経費にできる範囲の線引き | セミナー参加費・書籍代・交通費は経費にしやすい一方、私的な飲食や旅行と混同しやすい | 目的と相手先を記録しておく |
| 複数の顧問契約が重なる時期の管理 | 稼働時間の記録や請求書の発行が後回しになる | 案件ごとの進捗と請求状況を一覧で管理する |
| オンライン活動の収入 | セミナーやコンテンツ配信の収入の性質があいまいになる | 源泉徴収の有無と計上時期を、収入の種類ごとに税理士と確認する |
| 自宅兼事務所の費用 | 家賃や光熱費を全額経費にしてしまう | 面積や使用時間など合理的な基準で按分する |
| 道外への出張旅費 | 私的な観光と同じ日程になり、区分があいまいになる | 業務の日程と私的な日程を分け、業務部分だけを経費にする |
記帳と請求を効率化する仕組み
コンサルタント業は打ち合わせや資料作成に追われ、請求書の発行や記帳が後回しになりがちです。クラウド請求書と会計ソフトを連携させ、報酬の入金・源泉徴収額・経費を案件ごとに整理できる仕組みを整えておくと、確定申告の直前にまとめて作業する負担を大きく減らせます。
- 請求書の様式をそろえる報酬・消費税・源泉徴収税額・差引の請求額を分けて記載し、インボイスの登録番号を入れます。
- 入金を消し込む差引の請求額と入金額を照合し、源泉徴収税額を取引先ごとに記録します。
- 経費の明細を取り込む事業用の口座とカードを分け、明細を会計ソフトに自動で取り込みます。
- 電子データで保存するメールやネットで受け取った請求書・領収書は、2024年1月1日以後は電子データのまま保存します。
- 月次で数字を確かめる利益・源泉徴収税額・予定納税を毎月確認し、確定申告の納税額を早めに見通します。
源泉徴収のある報酬や前受金の仕訳は、士業・コンサルの仕訳事例集で設例つきで確認できます。税理士を選ぶ際は、オンライン完結での対応に慣れているかも確認しておくと安心です。
よくある質問
法人成りした後も、個人のときの顧問契約を続けられますか?
契約の当事者が個人から法人に変わるため、取引先と契約を結び直し、請求書の発行者・振込先・インボイスの登録番号も法人のものに切り替えます。法人が受け取る報酬は、源泉徴収の対象になりません。
クライアントとの会食費は、個人事業でも経費になりますか?
事業の遂行に必要な接待であれば必要経費になります。個人事業には法人のような交際費の損金算入の上限はありませんが、日付・相手・目的を記録し、事業との関係を説明できるようにしておきます。
自宅を事務所にしている場合、どこまで経費にできますか?
事業に使っている部分を、面積や使用時間など合理的な基準で按分すれば経費にできます。持ち家の場合は家賃の代わりに、減価償却費・固定資産税・住宅ローンの利息(元本は除く)などを按分します。
小規模企業共済やiDeCoは、税負担を軽くできますか?
どちらも掛金の全額が所得控除の対象です。iDeCoの国民年金第1号被保険者の上限は月6.8万円(国民年金基金と合算)で、2026年12月拠出分から月7.5万円になります。受取りのときにも課税があり、資金が長く拘束されるため、手元資金の計画と合わせて検討します。
まとめ
経営コンサルタントは経費が少なく利益率が高いぶん、税負担が重くなりやすい仕事です。源泉徴収の精算と売上の計上時期を押さえ、消費税の計算方法と法人成りの時期を数字で比べられる税理士を、業務範囲とセットの顧問料で選ぶことが、手元にお金を残す近道になります。
札幌の公認会計士・税理士事務所
経営コンサルタントの税務・会計のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)」
- 国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除
- 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度
- 国税庁「インボイス制度(令和8年度改正)特集」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
