事業承継の相談費用は、親族内承継・役員や従業員への承継・M&Aのどれを選ぶかで大きく変わります。株価算定や贈与税・相続税の申告、仲介手数料など、依頼する業務の範囲によっても金額が動きます。相場の金額を比べる前に、費用の内訳と金額を左右する要素を押さえておくと、見積りを正しく比較できます。
この記事の結論
事業承継の費用は「承継の方法」と「依頼する業務の範囲」で決まり、一律の相場はありません。専門家への報酬と、税金・登記などの実費を分けて見積りを取り、早めに計画することが費用を抑える近道です。
- 親族内承継は株価算定と贈与税・相続税の申告、M&Aは仲介・FAの報酬とデューデリジェンスが費用の中心
- M&Aの成功報酬は、料率だけでなく「何を基準に計算するか」で金額が大きく変わる
- 事業承継・引継ぎ支援センターの無料相談や、事業承継・M&A補助金で負担を軽くできる場合がある
- 事業承継税制(特例措置)の特例承継計画は2027年9月30日が提出期限。手続きの量も費用に影響する
- 当事務所は決算・申告だけのスポット依頼は受けておらず、顧問契約の中で承継を継続的に支援する
事業承継の方法によって費用はどう変わる?
事業承継の費用は、承継の方法によって大きく異なります。誰に引き継ぐかで、必要な手続きと関わる専門家が変わるためです。まずは主な方法と費用の傾向を整理します。
| 承継方法 | 概要 | 費用の傾向 | 主な依頼先 |
|---|---|---|---|
| 親族内承継 | 子や親族へ株式・事業を引き継ぐ | 相続・贈与税の申告費用が中心。相続税評価額による | 税理士(株価算定・申告)、司法書士(登記) |
| 役員・従業員承継(MBO等) | 社内の後継者に株式を譲渡 | 株価算定・資金調達支援が必要なケースも | 税理士・公認会計士(株価・資金計画)、金融機関 |
| M&A(第三者承継) | 外部の企業・個人に売却 | 仲介手数料・デューデリジェンス費用が大きくなりやすい | 仲介会社・FA、公認会計士(財務調査)、弁護士(契約) |
親族内承継では、株式を暦年贈与で少しずつ移すか、相続時精算課税や事業承継税制を使うかで、申告の回数や手続きの量が変わります。後継者以外の相続人との調整が必要なら、遺言の作成などで弁護士が関わることもあります。
役員・従業員承継では、後継者が株式を買い取る資金をどう用意するかが論点です。金融機関との調整や事業計画づくりが加わるほか、譲渡価格が税務上の時価より低すぎると贈与税などの課税関係が生じることがあるため、価格の決め方にも検討が要ります。
M&Aでは、相手探しから交渉、調査、契約までの期間が長く、関わる専門家も増えます。報酬の体系が複雑なため、費用の差が最も出やすい方法です。
費用の内訳:何にお金がかかるのか
事業承継の費用は、次のような項目から構成されます。どの項目が必要かは承継の方法と会社の状況で決まるため、見積りでは項目ごとに範囲を確認します。
| 費用項目 | 内容 | 主な依頼先 | 金額を左右する要素 |
|---|---|---|---|
| 相談・コンサルティング | 承継方法の比較、承継計画の作成、関係者との調整 | 税理士・公認会計士、中小企業診断士など | 相談の頻度と期間、関わる人数 |
| 株価算定(非上場株式の評価) | 国税庁の財産評価基本通達に基づく自社株の評価 | 税理士・公認会計士 | 会社の規模、不動産や子会社株式の有無、試算する時点の数 |
| 相続税・贈与税の申告 | 株式を贈与・相続したときの申告書の作成 | 税理士 | 財産の総額と種類、相続人の数、事業承継税制の適用の有無 |
| M&Aの仲介・FA報酬 | 相手探し、交渉、契約までの支援 | 仲介会社・FA | 着手金・中間金・成功報酬の組合せ、報酬の計算基準 |
| デューデリジェンス | 財務・税務・法務などの調査 | 公認会計士・税理士・弁護士 | 調査の範囲、会社の規模、資料の整備状況 |
| 登記・法務 | 役員変更・定款変更の登記、契約書の作成・確認 | 司法書士・弁護士 | 手続きの数、契約の複雑さ |
初回相談は無料の事務所もあり、継続的な助言は月額の顧問料や成功報酬の形で設定されるケースがあります。親族内承継の株価は相続税・贈与税のための評価で、M&Aの売却価格は交渉で決まる時価です。目的が違うため、親族内承継の株価がそのままM&Aの価格になるわけではありません。
報酬とは別に「税金・実費」がかかる
贈与税・相続税、株式を売った個人の譲渡所得にかかる税金、登記の登録免許税などは、専門家への報酬とは別に必要です。承継の方法によっては報酬より税金のほうが大きくなるため、報酬と税金をあわせた総額で比較します。
費用の目安はどう決まる?相場が一律でない理由
事業承継に関わる費用は、事業規模・方法・関与する専門家によって幅があります。インターネット上の相場は前提がそろっていないため、自社に当てはめると誤差が大きくなります。金額そのものより、何によって金額が決まるかを理解しておくほうが、見積りを比べるときに役立ちます。
税務が中心の承継(親族内承継など)
株価算定は、会社の規模や資産の内容に加え、何年分・何通りの試算をするかで手間が変わります。相続税の申告は、財産の総額や相続人の数を基準に料金を決める方法がよく見られます。事業承継税制を使う場合は、計画の作成・認定の申請・申告に加え、適用後も一定期間、都道府県への年次報告や税務署への継続届出が続くため、手続きの量が増えます。
M&Aの場合
仲介会社やFAの報酬は、着手金と成功報酬(レーマン方式など)の組合せが一般的で、中間金や最低報酬額を定めることもあります。レーマン方式は、取引金額が大きくなるほど料率が段階的に下がる計算方法です。同じ料率でも、計算の基準が株式の譲渡価額か、負債を含めた金額(移動総資産など)かで、報酬額は大きく変わります。
仲介は売り手と買い手の双方から報酬を受ける形、FAは一方だけを支援する形です。仲介では利益相反に注意が必要で、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」も報酬体系や契約内容の確認を促しています。M&Aの費用の詳細は「会社売却・M&Aの費用と料金の内訳」で整理しています。
公的支援を使う場合
中小企業庁の「事業承継・引継ぎ支援センター」(各都道府県に設置)では、初期の相談・マッチングを無料で受けられます。方向性が決まっていない段階で公的な相談を使い、具体的な株価算定や申告、契約の段階で専門家に依頼すると、費用をかける場面を絞れます。
どの方法が合うか、どの業務が必要かは会社の状況で変わります。初回無料で、必要な業務と見積りの前提を整理できます。
無料で相談する費用を抑えるためのポイント
事業承継の費用を無理のない範囲で抑えるために、次の点が参考になります。削るべきは「手戻り」と「急ぎの対応」で、必要な検討まで省くと、税金や後のトラブルでかえって負担が増えます。
- 公的機関(事業承継・引継ぎ支援センター)の無料相談を最初に活用する
- 早期から検討を始め、事業承継税制や生前贈与を計画的に使う
- 顧問税理士がいる場合は、承継の相談が顧問料の範囲内で対応できるか事前に確認する
- M&Aを検討する場合は、複数の仲介業者・FAの費用とサービス内容を比較する
- 使える補助金がないかを、依頼する前に確認する
承継完了まで数年かかることも多く、相続税・贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)を活用するには計画的な準備が必要です。特例措置を使うなら、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、贈与・相続の期限は2027年12月31日です。要件と手続きは「事業承継税制の要件と手続きのガイド」で確認できます。
無料ツール相続税を詳しくシミュレーションする財産の内容を入れると相続税の目安が分かり、承継対策にかける手間と費用が見合うかを判断する材料になります。計算する
専門家への費用そのものを補助する制度もあります。事業承継・M&A補助金は、M&Aの専門家費用や承継後の取り組みなどを対象に、枠ごとに補助上限額が決まっています。
| 枠 | 補助上限額 | 費用との関係 |
|---|---|---|
| 専門家活用 | 450万〜2,000万円 | M&Aの仲介・FA、デューデリジェンスなど専門家への費用 |
| 事業承継促進 | 800万〜1,000万円 | 承継をきっかけにした設備投資など |
| PMI | 150万〜1,000万円 | M&A後の統合作業 |
| 廃業・再チャレンジ | 150万〜300万円 | 事業をたたむ費用など |
補助金は後払い。採択されても入金は先
補助金は、採択後に事業を実施して実績を報告し、確定した額が後から支払われます。専門家への報酬はいったん全額を自社で支払う前提で、資金繰りを組んでおきます。
北海道で相談先を探す場合
事業承継・引継ぎ支援センターは北海道にも設置されています。所在地や相談の申込方法は、北海道経済産業局の公式情報で確認してください。道内の会社では、承継の相手が遠方の親族や道外の企業になることもあるため、オンラインで相談できるかも確認しておくと進めやすくなります。
見積りを依頼する前に準備すること・確認すること
そろえておきたい資料
資料がそろっているほど、専門家が状況を把握する時間が短くなり、見積りの精度も上がります。相続で早めに確認しておくことと、会社の資料をあわせて準備します。
- 財産の一覧(不動産・預貯金・有価証券・保険)
- 借入金・未払金などの債務
- 法定相続人の確認
- 遺言の有無
- 自社株がある場合の評価と承継方針(直近3期分の決算書・法人税申告書、株主名簿、定款)
見積りで確認する項目
- 業務の範囲(承継計画・株価算定・申告・登記のどこまでを含むか)
- 報酬の形(顧問料・着手金・中間金・成功報酬・最低報酬)と計算の基準
- 報酬に含まれない実費(登録免許税など)と、税金の見込み
- 支払いの時期と、途中で中止した場合の扱い
- M&Aの場合は仲介かFAか、国の「M&A支援機関登録制度」に登録しているか
- 担当者と、連携する他の専門家(司法書士・弁護士など)
当事務所では、決算・申告だけのスポット依頼はお受けしていません。事業承継は数年がかりになることも多いため、継続的な顧問契約の中で、株価の把握から承継計画、贈与・相続の申告まで一貫して支援します。M&Aでは、公認会計士として財務デューデリジェンスにも対応しています。
- 初回相談会社と株主の状況、承継の希望や時期をうかがいます。初回は無料です。
- 資料の確認と方法の比較決算書や株主名簿をもとに、承継方法ごとの手続きと税金の見通しを整理します。
- 業務範囲と見積りの提示必要な業務と、報酬・実費の内訳をお示しします。
- 契約と実行顧問契約を結び、承継計画の作成から株式の移転、申告まで進めます。
料金の決まり方と契約の流れは「料金・契約・業務フロー」でご確認いただけます。
よくある質問
事業承継の相談は、最初から費用がかかりますか?
当事務所の初回相談は無料です。事業承継・引継ぎ支援センターでも、初期の相談・マッチングを無料で受けられます。費用が発生するのは、株価算定や申告など具体的な業務を依頼する段階からです。
事業承継税制を使うと、専門家の費用は増えますか?
計画の作成・認定の申請・申告に加え、適用後の報告や届出が続くため、手続きの量は増えます。一方で、株式にかかる贈与税・相続税の納税が猶予されるため、猶予される税額と手続きの負担を比べて判断します。
M&Aでは、仲介手数料のほかにどんな費用がかかりますか?
買い手が行うデューデリジェンスへの対応、自社の価値の把握、契約書の確認、株式を売った個人の確定申告、役員変更の登記などがあります。売り手が事前に自社の財務を調べておくと、交渉中の手戻りを減らせます。
事業承継の費用は、会社の経費になりますか?
誰のための支出かで分かれます。会社の経営のための費用は会社の経費になりますが、株主個人の贈与税・相続税の申告費用は個人の負担です。株式を売った個人が払う仲介手数料は、譲渡所得の計算で差し引けます。
まとめ
事業承継の費用は、親族内承継・役員承継・M&Aのどれを選ぶかと、株価算定・申告・仲介などの業務の範囲で大きく変わり、一律の相場では比べられません。報酬と税金・実費を分けて見積りを取り、公的な無料相談や補助金、事業承継税制の期限も踏まえて早めに計画することが、費用全体を抑える近道です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
事業承継の費用と進め方のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(事業承継税制の計画提出期限の延長、事業承継・M&A補助金の情報を反映)
