最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、清掃業・ビルメンテナンス業を経営する社長・経理担当の方に向けて、2026年(令和8年)時点の制度動向を税理士事務所の視点で整理したものです。官公庁契約の改定率の官民差、特定建築物における資格者選任の義務、省力化投資による労働生産性の向上目標など、業界特有の実務論点を中心にまとめました。官公庁・民間のどちらの契約が中心の事業者にも役立つ内容です。パート従業員比率が高い経営者の方にもお読みいただきたい内容です。
- 結論を最初に:業者平均売上高は約19.4億円(2024年度・前年比4.7%増)。2025年度も全体平均6.3%増の見通しで、受注拡大局面にあります。
- 契約改定率の官民差に注意:2025年度の改定率は官公庁6.2%、民間10.0%です。官公庁契約中心の事業者は改定交渉の遅れに注意してください。
- 人件費が生産費の7割:最低賃金や社会保険適用拡大の影響を強く受けます。「106万円の壁」はR8.10に撤廃されます。
- 特定建築物は資格者選任が必須:延床3,000平方メートル以上(学校は8,000平方メートル以上)はビル管理士の選任が必要です。
- 省力化投資は2025〜2029年度が集中期間:政府は2029年度までに労働生産性を25%向上させる目標を掲げています。補助金を活用しましょう。
1. 業界の今|2026年の清掃業・ビルメンテナンス動向
ひとことで言うと官公庁契約の改定率は民間より低く出やすく、労働生産性を2029年度までに25%高める省力化投資が今後5年の経営課題になります。
全国ビルメンテナンス協会の実態調査によると、2024年度の業者平均売上高は約19.4億円でした。前年比では4.7%増です。
2025年度の売上高見通しは、全体平均で前年度比6.3%増です。官公庁・民間とも受注は底堅く推移しています。
ただし契約改定率には官民差があります。2025年度の改定率は官公庁6.2%、民間10.0%でした。
前回調査では官公庁2.7%・民間2.6%だったため、両者とも改定率は大きく上昇しています。官公庁は民間より改定が遅れやすい点に注意してください。
業務別では一般清掃業務の受注比率が94.6%と最も高く、清掃業務の中核を占めています。設備管理や警備との複合受注も広がっています。
生産年齢人口は2040年に現在より1,100万人減る見込みです。人手に頼る一般清掃は、担い手不足の影響を強く受けやすい業種です。
政府はビルメンテナンス業の労働生産性を2029年度までに25%高める目標を掲げました(2024年比)。2025〜2029年度を省力化投資の集中期間と位置付けています。
2. 経営のポイント|ビルメンテナンス業経営者が今やるべきこと
ひとことで言うと特定建築物の資格者選任、清掃ロボットによる省力化投資、官公庁入札の積算精度の3つを並行して整えることが、受注を安定させる近道です。
2-1. 特定建築物の資格者選任と清掃作業監督者の確保
延床面積3,000平方メートル以上(学校は8,000平方メートル以上)の建築物は「特定建築物」(=衛生的な維持管理が義務付けられる一定規模以上の建物)に該当します。
特定建築物では、建築物環境衛生管理技術者(=ビル管理士。建物の衛生環境を維持する国家資格者)の選任が義務付けられています。
清掃作業の現場でも、契約内容によっては清掃作業監督者に1級ビルクリーニング技能士(=清掃技能を認定する国家資格)等が求められる場合があります。
資格者の急な退職は契約解除リスクに直結します。後継者を計画的に育成し、資格者の年齢構成を日頃から把握しておきましょう。
2-2. 省力化投資で担い手不足を補う
一般清掃業務に従事する人の46.7%は60歳以上です。担い手の高齢化は多くの現場で進んでいます。
生産年齢人口も2040年には現在より1,100万人減る見込みです。人手だけに頼る体制は限界に近づいています。
政府は2025〜2029年度を省力化投資の集中期間と位置付け、労働生産性を2029年度までに25%高める目標を掲げました。
清掃ロボットや自動床洗浄機の導入は、夜間清掃など人手のかかる作業から始めると効果が出やすい取り組みです。
2-3. 官公庁入札の積算根拠を精緻化する
北海道内の庁舎等清掃業務は、低入札価格調査制度または最低制限価格制度(=安すぎる入札を排除し品質を確保する制度)が適用されます。
積算根拠があいまいなまま入札すると、落札できても人件費上昇に耐えられず契約を手放すことになりかねません。
最低賃金や社会保険料の上昇分を積算に織り込み、根拠資料を整えて入札に臨むことが受注の安定につながります。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
ひとことで言うと少額減価償却資産の特例拡充や106万円の壁撤廃など、令和8年度は税務・社会保険の制度変更が集中するため、早めの試算が欠かせません。
清掃業・ビルメンテナンス業の税務では、清掃機材やロボットの減価償却と、少額減価償却資産の特例の使い分けが実務のポイントです。
少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以後に取得する資産から上限が40万円未満に拡充されます(年300万円まで、青色申告の中小企業等が対象)。
清掃ロボットや高圧洗浄機など、取得価額が上がりやすい設備投資でも、この特例を使えば即時に経費計上できる範囲が広がります。
パート従業員の比率が高い業界特有の論点として、社会保険の適用拡大があります。「106万円の壁」(賃金要件)はR8.10に撤廃されます。
月8.8万円未満のパート従業員も、週20時間以上等の要件を満たせば新たに社会保険の対象になり得ます。人件費への影響を試算しておきましょう。
賃上げ促進税制は、税額控除しきれなかった金額を5年間繰り越せます。人件費比率が高い清掃業では活用余地の大きい制度です。
令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、防衛特別法人税も課税対象になります。課税標準は基準法人税額から500万円を控除した金額の4%です。
中小企業の多くは負担が生じないか、生じても軽微な水準にとどまる見込みです。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 官公庁入札の最低制限価格制度 | 低入札価格調査制度または最低制限価格制度を適用 | 積算根拠を明確化し人件費上昇分を織り込む |
| 特定建築物の資格者選任 | 延床3,000平方メートル以上(学校8,000平方メートル以上)はビル管理士の選任義務 | 資格者の年齢構成を把握し後継者を育成 |
| 清掃機材・ロボットの減価償却 | 通常の減価償却に加え少額資産の特例を活用可能 | 取得時期と金額を確認し特例適用の可否を判定 |
| 少額減価償却資産の特例 | R8.4.1以後取得分は40万円未満に拡充(年300万円まで) | 清掃ロボット等の取得タイミングを特例にあわせ調整 |
| パート従業員の社会保険適用拡大 | 106万円の壁(賃金要件)はR8.10に撤廃 | 対象人数と保険料負担増を試算し人員配置を検討 |
| 賃上げ促進税制 | 税額控除の未控除額を5年間繰越可能 | 毎期の賃上げ率を記録し繰越額を管理 |
| 防衛特別法人税 | R8.4.1以後開始事業年度から課税、基準法人税額-500万円×4% | 中小企業の多くは影響軽微だが試算しておく |
- 2026年4月1日以後開始事業年度防衛特別法人税の課税対象(基準法人税額500万円超の部分)、少額減価償却資産特例は40万円未満に拡充
- 2026年9月30日インボイス2割特例の対象課税期間が終了
- 2026年10月1日免税事業者からの仕入税額控除が70%に縮小、106万円の壁(賃金要件)が撤廃
- 2029年度政府目標のビルメンテナンス業の労働生産性25%向上(2024年比)の達成期限
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
ひとことで言うと清掃ロボットの導入から人材の処遇改善まで、清掃業・ビルメンテナンス業には投資の段階に応じて使える補助金・助成金がそろっています。
清掃業・ビルメンテナンス業では、清掃ロボットや自動床洗浄機の導入に使える省力化投資補助金の活用余地が大きく、要件整理や資金計画づくりを税理士がサポートできます。
| 制度 | 上限・補助率 | 直近スケジュール | 清掃業・ビルメンテナンスでの使い方 |
|---|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金【一般型】 | 750万〜8,000万円、補助率1/2〜2/3 | 第7回:R8.6.5要領公開→7月受付 | 清掃ロボット・自動床洗浄機の導入 |
| 同【カタログ注文型】 | 製品ごとに設定された上限額、補助率1/2程度 | 随時受付 | カタログ掲載の清掃ロボット等を短期間で導入 |
| 業務改善助成金 | 3コース、最大600万円 | R8.9.1受付開始 | 最低賃金引上げにあわせた省力化設備の導入 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 4,000万円級(最低賃金引上げ特例あり) | 第1回締切:R8.9.30 18:00 | 設備管理・警備等への複合受注拡大 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50万円(上乗せ最大250万円) | 第20回:R8.11.5〜12.15 | 営業体制強化・受注拡大の販路開拓費用 |
| キャリアアップ助成金 | 正社員化コース等、1人当たり数十万円規模 | 通年申請 | パート従業員の正社員転換・処遇改善 |
5. 労務・人材の最新論点
ひとことで言うと一般清掃業務の従事者は半数近くが60歳以上という高齢化が進んでおり、2026年10月に集中する制度変更への備えも欠かせません。
一般清掃業務に従事する人の46.7%は60歳以上です。他業種と比べても高齢化が進んでいる点が特徴です。
生産年齢人口は2040年までに現在から1,100万人減る見込みです。若年層の採用だけに頼る体制は難しくなっていきます。
「106万円の壁」はR8.10に賃金要件(月8.8万円)が撤廃されます。パート従業員が多い清掃業務では、社会保険加入者が急増する可能性があります。
最低賃金は北海道で1,075円(R7.10〜)です。令和8年度の改定は2026年8月に各都道府県が答申し、10月頃の発効が見込まれます。
清掃現場は屋内外を問わず夏場の作業も多く、熱中症対策(労働安全衛生規則、R7.6.1義務化)への対応も欠かせません。
賃上げ促進税制は人件費比率の高い清掃業と相性の良い制度です。毎期の賃上げ率を記録し、繰越控除も含めて活用しましょう。
高齢の従事者が多いからこそ、資格や経験を活かした短時間勤務やシフトの柔軟化が、定着率を高める工夫になります。
6. 資金繰り・銀行融資対策|清掃業・ビルメンテナンス
ひとことで言うと入札結果に左右されやすい売上の波と、毎月確実に発生する人件費支払いとの差を、資金繰り表であらかじめ先読みすることが安定経営の土台です。
6-1. 官公庁契約中心の受注構造と売上の波
官公庁契約中心の事業者は、入札結果によって受注の有無が左右されます。落札できなければ売上が一時的に落ち込むこともあります。
一方で従業員への給与は毎月確実に発生します。受注の波と支払いの安定性のギャップが、資金繰りを難しくする一因です。
6-2. 契約更新期・年度替わりの資金繰り
契約更新の時期や年度替わりには、資金繰りが厳しくなりがちです。新規契約の立ち上げ費用が先行することも一因です。
複数年契約や継続受注の比率を高めておくと、売上の波が小さくなり資金計画も立てやすくなります。
6-3. 融資制度・税制の組み合わせ活用
運転資金には、日本政策金融公庫の一般貸付・新規開業資金や、信用保証協会の保証付き融資が使いやすい選択肢です。
繁忙期に備えて当座貸越枠を確保しておくと、年末など人手需要が高まる時期の資金繰りに余裕が生まれます。
清掃ロボット等の設備投資は、中小企業経営強化税制の即時償却・税額控除と、日本政策金融公庫の設備資金を組み合わせると負担を抑えられます。
金融機関は、契約継続率や複数年契約の比率、官公庁・民間の契約構成比、パート従業員比率による今後のコスト増加見込みを重視して審査します。
7. 経営指標の目安(KPIベンチマーク)
ひとことで言うと清掃業は生産費に占める人件費比率が7割前後と高く、官民の契約改定率の差を踏まえて自社の水準を把握しておくことが欠かせません。
以下は全国ビルメンテナンス協会の実態調査(ビルメンテナンス情報年鑑2026・第56回実態調査結果)による、業界全体の指標の目安です。
| 指標 | 目安 | 見方 |
|---|---|---|
| 人件費比率(生産費比) | 7割前後 | 清掃業の原価構造を象徴する比率。最低賃金・社会保険料の変動が直接利益に響く |
| 官公庁契約の改定率 | 6.2%程度(2025年度実績) | 民間より低めに出やすい。積算根拠を明確にして交渉する材料に |
| 民間契約の改定率 | 10.0%程度(2025年度実績) | 官公庁より改定が進みやすい。価格転嫁の目安として参照 |
| 一般清掃の受注比率 | 94.6%程度(最頻受注業務) | 業務の中核。複合受注(設備管理・警備等)の比率も確認したい指標 |
| 60歳以上就業者比率(一般清掃) | 46.7%程度 | 担い手の高齢化度合い。若手・多様な人材の採用計画に直結 |
| 売上高前年度比伸び率 | 6.3%程度(2025年度見通し) | 業界全体の成長ペース。自社の伸び率と比較する目安に |
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|清掃業・ビルメンテナンス
ひとことで言うと省力化投資や資格者の計画的な育成を味方につけられるか、積算根拠にコスト増を織り込めているかどうかが、経営の分かれ目になります。
実際の現場で繰り返し見られるパターンを、守秘義務に配慮して一般化したモデルケースとして紹介します。自社の管理体制と照らし合わせてご覧ください。
成功事例
失敗事例
※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後12か月のアクションチェックリスト
ひとことで言うと2026年7〜9月のうちに官公庁契約の単価改定交渉を進め、社会保険の適用拡大や少額減価償却資産特例への備えを整えておきましょう。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 官公庁契約の単価改定交渉を進め、省力化投資補助金の活用を検討 | 契約改定率、中小企業省力化投資補助金 |
| 2026年10〜12月 | 106万円の壁撤廃を踏まえパート従業員の社会保険加入対象を再確認、少額減価償却資産特例の活用状況を確認 | 社会保険適用拡大、少額減価償却資産の特例 |
| 2027年1〜3月 | 決算に向けて資格者の配置・年齢構成を総点検、賃上げ促進税制の適用判定 | 特定建築物の資格者選任、賃上げ促進税制 |
| 2027年4〜6月 | 次年度の官公庁入札スケジュールを確認し積算体制を整備、防衛特別法人税の影響を試算 | 最低制限価格制度、防衛特別法人税 |
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと清掃業・ビルメンテナンス業に関わる制度は、税制改正や補助金の最新情報、不動産オーナー向けの動向ともつながるため、あわせて確認してみてください。
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