最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、資産管理会社・持株会社を経営するオーナー・後継者の方に向けて、2026年(令和8年)時点の事業承継・株価対策・税務の実務論点を税理士事務所の視点で整理したものです。株価評価・事業承継税制・グループ法人税制に的を絞ってまとめています。保有する収益不動産の活用や土地の相続そのものを検討中の方は「地主・土地オーナー」のページもあわせてご覧ください。札幌市内はもちろん、北海道全域どこからでもオンラインでご相談いただけます。
- 結論を最初に:後継者不在率は50.1%(2025年)。ただし「内部昇格」が36.1%で「同族承継」を初めて上回りました。
- 計画提出期限は延長、実行期限は不変:特例承継計画は法人2027年9月30日まで提出可。ただし株式の贈与・相続は2027年12月31日までに実行が必要です。
- 留保金課税に注意:資本金1億円超の特定同族会社(全国約4,500社)は、利益の社内留保に追加課税されるリスクがあります。
- 株価対策は早いほど有利:業績が良いほど株価は上がるため、対策を先送りするほど納税額が膨らみやすい構造です。
- 防衛特別法人税に注意:R8.4.1以後開始事業年度から課税されますが、基準法人税額500万円以下なら影響はほぼありません。
1. 業界の今|2026年の事業承継動向
ひとことで言うと後継者不在率は改善傾向ですが、承継の主役は血縁から「内部昇格」へ移っています。株価と税務の設計は所有者自身が主導すべきテーマです。
帝国データバンクの2025年調査によると、全国企業の後継者不在率は50.1%と7年連続で改善しました。依然として2社に1社が後継者未定です。
注目すべきは承継方法の内訳です。「内部昇格」が36.1%となり、「同族承継」32.3%を初めて上回りました。
血縁に頼らない承継が主流になりつつある一方、株式や持分をどう引き継ぐかという税務・資金面の課題は変わらず残ります。
持株会社を経由した株式承継では、後継者個人の資金負担が生じにくい一方、グループ全体のガバナンス設計を誤ると意思決定が遅れるリスクもあります。
令和8年度税制改正では、法人版事業承継税制(特例措置)の「特例承継計画」の提出期限が1年6か月延長されました。
法人版は2027年9月30日、個人版は2028年9月30日までの提出が可能になりました。
ただし、納税猶予の対象となる株式等の贈与・相続そのものの実行期限は延長されておらず、2027年12月31日までに行う必要があります。
計画提出の余裕はできましたが、実際の株式移転はこれまでどおり計画的に進める必要がある点に注意してください。
資産管理会社・持株会社ならではの税務論点も見逃せません。総資産に占める株式等の割合が50%以上だと「株式保有特定会社」に該当し、株価評価が上がりやすくなります。
資本金1億円超の特定同族会社(全国でおおむね4,500社程度)には、利益を過度に社内留保すると追加課税される「留保金課税」のリスクもあります。
後継者不在への対応としては、親族内承継や内部昇格だけでなく、第三者への株式譲渡(M&A)も現実的な選択肢として広がっています。
2. 経営のポイント|資産管理会社・持株会社が今やるべきこと
ひとことで言うと持株会社化・株価対策・不動産の管理方式・経営者保証の4点を、承継後の体制まで見据えて設計することが重要です。
2-1. 持株会社化のメリットと留意点
事業会社の株式を持株会社に集約すると、受取配当等の益金不算入制度を使った資金の還流、グループ法人税制による譲渡損益の繰延べが可能になります。
後継者への株式集中による議決権の分散防止も期待できます。一方で、持株会社自体の株価が上昇しやすい、設立・移転コストがかかる点には注意が必要です。
持株会社化はゴールではなく手段です。グループ内に資金を集約しすぎると事業会社側の設備投資が不足するため、資金配分のルールを取り決めておきましょう。
2-2. 株価評価と株特外しの検討
非上場株式の相続税評価は、類似業種比準方式・純資産価額方式(またはその併用)で行われます。資産管理会社は評価方式で株価が大きく変動しやすい特徴があります。
株式保有特定会社に該当すると、原則として純資産価額方式に近い評価となり株価が高くなりやすくなります。
資産構成の見直し(=株特外し)や、役員退職金の支給による純資産圧縮など、複数の対策を組み合わせて計画的に検討することが一般的です。
2-3. 不動産管理方式の選択
資産管理会社が保有する不動産の活用は、管理料方式・一括借上げ(サブリース)方式・不動産所有方式の3つに大別されます。
管理料方式は個人所有不動産の管理業務のみを会社が受託する形で、所得移転効果は限定的です。
不動産所有方式は会社が不動産そのものを所有する形で、所得移転効果は最も大きい一方、不動産取得税・登録免許税等の移転コストがかかります。
不動産所有方式を選ぶ場合、複数年に分けて売却する、収益力の高い物件から優先するなど、税負担を平準化する工夫が検討されます。
2-4. 経営者保証・種類株式の活用
金融機関からの借入に経営者保証を付けている場合、事業承継のタイミングで後継者に保証も引き継がれ、承継をためらう一因になります。
「経営者保証に関するガイドライン」の特則では、事業承継時に前経営者・後継者の双方から二重に保証を徴求することを原則禁止するなど、見直しが進んでいます。
株式を後継者以外の親族にも分散させたい場合は、議決権制限株式や拒否権付株式(いわゆる黄金株)などの種類株式の活用も検討の余地があります。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
ひとことで言うと留保金課税・防衛特別法人税・事業承継税制の適用要件の3つを、毎期の試算で確認する習慣が節税につながります。
持株会社・資産管理会社が特に留意すべきなのが「特定同族会社の留保金課税」です。
株主3人以下(同族関係者を含む)で発行済株式の50%超を保有する「特定同族会社」が利益を過剰に社内留保すると、通常の法人税に追加課税されます。
資本金1億円以下の中小法人は原則不適用の特例があり、実務で対象となるのは資本金1億円超の特定同族会社(全国約4,500社程度)に限られます。
持株会社を資本金1億円超で設立・増資する場合は、留保金課税の対象になり得る点を事前に確認しておく必要があります。
留保金課税の計算では、配当金支出や役員賞与など社外流出額を留保金額から控除できます。無理のない範囲で配当や役員報酬に振り向けることも有効です。
令和8年度税制改正で新設される防衛特別法人税は、R8.4.1以後開始事業年度から、基準法人税額から500万円を控除した金額に4%を乗じて課税されます。
持株会社は事業実態の小さい会社も多く、基準法人税額自体が小さいケースでは負担は限定的です。配当収入や不動産所得が多い持株会社は事業年度ごとの試算をおすすめします。
受取配当等の益金不算入制度は、完全子法人株式等・関連法人株式等・その他株式等で益金不算入の割合が異なります。グループ内の株式保有比率を正しく把握しておきましょう。
完全支配関係(100%グループ)内では資産の譲渡損益が繰り延べられる一方、寄附金は全額損金不算入・受贈益は全額益金不算入という特有のルールがあります。
法人版事業承継税制(特例措置)は、非上場株式の贈与税・相続税の納税を100%猶予できる制度です。
資産管理会社は「資産保有型会社」「資産運用型会社」に該当すると原則対象外ですが、常時使用従業員5人以上等の事業実態要件を満たせば例外的に適用対象になります。
創業から年数が経過した会社では、設立時の出資者やその相続人が実態のない「名義株」として株主名簿に残っているケースも少なくありません。
名義株・少数株主の放置は事業承継税制の認定申請にも影響するため、早めに株主名簿と実際の権利関係を突き合わせておきましょう。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 特定同族会社の留保金課税 | 資本金1億円超の特定同族会社が対象。超過留保金に特別税率で追加課税 | 資本金水準・利益留保方針を確認し、配当や役員報酬で調整 |
| 防衛特別法人税 | R8.4.1以後開始事業年度から課税。(基準法人税額-500万円)×4% | 配当収入等が多い持株会社は事業年度ごとに試算 |
| 事業承継税制と資産保有型会社 | 資産管理会社は原則対象外(事業実態要件を満たせば例外) | 常時使用従業員数・事務所実態等を事前に確認 |
| 受取配当等の益金不算入 | 株式区分により益金不算入割合が異なる | グループ内の株式保有比率を整理し区分を確認 |
| グループ法人税制(完全支配関係) | 資産譲渡損益の繰延べ、寄附金は全額損金不算入 | グループ内取引の前に対象資産・金額を確認 |
- 2026年4月1日以後開始事業年度防衛特別法人税の課税対象(基準法人税額500万円超の部分)
- 2027年9月30日特例承継計画の提出期限(法人版)
- 2027年12月31日特例措置による株式の贈与・相続の実行期限
- 2028年9月30日特例承継計画の提出期限(個人版)
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
ひとことで言うと資産管理会社・持株会社は設備投資型の補助金より、事業承継・M&Aや専門家活用の支援策と相性がよい業種です。
資産管理会社・持株会社では、大型の設備投資を伴う補助金よりも、事業承継・M&Aや専門家活用に関する支援策との相性がよい点が特徴です。
| 制度・支援策 | 内容 | 直近スケジュール | 資産管理会社・持株会社での使い方 |
|---|---|---|---|
| 事業承継・M&A補助金 | 最大2,000万円。小規模売り手支援類型が新設 | 15次公募:R8.5.22要領公開、受付6月中旬〜7月下旬 | グループ内M&A・株式取得資金の一部、専門家活用費用への充当 |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 公的機関による事業承継・M&Aの無料相談窓口 | 通年相談受付 | 後継者マッチング、株式承継スキームの初期相談 |
| 認定支援機関(税理士等)の活用 | 経営革新等支援機関による経営改善計画策定支援 | 通年 | 持株会社化・組織再編計画の策定、金融機関との調整 |
| 早期経営改善計画策定支援事業 | 専門家活用費用の一部を国が補助 | 通年受付(金融機関経由) | 持株会社化・組織再編前の資金計画策定費用への活用 |
5. 労務・人材の最新論点
ひとことで言うと持株会社の労務管理の中心は役員報酬・退職金の設計です。金額の根拠を議事録で残すことが調査対応の備えになります。
持株会社・資産管理会社では従業員を雇用しないケースも多く、労務管理の中心は役員報酬・退職金の設計になります。
役員退職金は、最終月額報酬×役員在任年数×功績倍率で計算されるのが一般的です。功績倍率の目安(社長は3.0倍程度とされる例が多い)を踏まえた設定が重要です。
支給額が過大と認定されると損金不算入となるリスクがあるため、類似法人比較を踏まえた金額設定をおすすめします。
退職金支給は持株会社の純資産を圧縮し株価を引き下げる効果もあり、事業承継のタイミングと合わせて検討する事例が多く見られます。
役員報酬の改定や自己株式の取得を行う際は、株主総会・取締役会の議事録を必ず作成し、決議の日付と内容を明確に残しておきましょう。
これは税務調査や金融機関の与信審査への備えにもなります。
傘下に事業会社を持つグループの場合、2026年10月施行の「106万円の壁」撤廃やカスタマーハラスメント対策義務化は、グループ全体の労務対応に影響します。
2026年の春闘では中小企業(組合員300人未満)でも平均4.69%の賃上げが実現しています。グループ全体の人件費計画と役員報酬のバランスを踏まえた資金計画が必要です。
急激な役員報酬の増減は、過大役員給与として損金不算入となるリスクや社会保険料の等級変更への影響もあるため、複数年単位でバランスの取れた設計をおすすめします。
6. 資金繰り・銀行融資対策|資産管理会社・持株会社
ひとことで言うと配当・役員報酬のバランス設計と、株式取得資金の調達手段の確保が持株会社の資金繰りの土台です。
6-1. 配当と役員報酬のキャッシュフロー設計
持株会社は事業会社からの配当が主な資金源になることが多く、配当方針次第でグループ全体の資金繰りが変わります。
役員報酬は毎期見直しが可能ですが、配当は株主総会決議が必要です。両者のバランスを毎期の決算前に試算しておくと安心です。
6-2. 株式取得資金・自己株式取得の調達手段
後継者が株式を買い取る資金が必要な場合、持株会社を経由した配当還流のほか、金融機関からの融資、自己株式(金庫株)の取得も選択肢です。
自己株式の取得はみなし配当が生じる場合があり、税務上の影響を事前にシミュレーションしておく必要があります。
6-3. 金融機関への説明資料(株価・含み益の見える化)
持株会社は保有資産の含み損益が財務諸表からは見えにくいため、金融機関への説明時には株価試算や資産の時価情報を補足資料として用意すると理解を得やすくなります。
7. 経営指標の目安(KPIベンチマーク)
ひとことで言うと持株会社は売上高より、株式保有割合・自己資本比率・配当性向など株価と税務に直結する指標を重視します。
持株会社・資産管理会社は事業会社と異なり、売上高や利益率だけでは経営状態を測りにくい業態です。以下は実務でよく確認する指標の目安です。
| 指標 | 目安 | 見方 |
|---|---|---|
| 総資産に占める株式等の割合 | 50%が分岐点 | 50%以上で株式保有特定会社に該当し株価評価が上がりやすい |
| 自己資本比率 | 50%以上が多い | 借入が少なく資産保有中心のため高めに出やすい |
| 配当性向(事業会社からの受取配当割合) | 30〜50%程度 | 持株会社の資金繰りの主要な原資となる水準の目安 |
| 役員退職金の功績倍率 | 社長3.0倍程度が目安 | 類似法人比較を踏まえた設定が過大役員給与認定の回避に重要 |
| 常時使用従業員数 | 5人以上が事業承継税制の目安の一つ | 資産保有型会社の例外要件の判定に直結 |
| 留保金課税の対象留保金額 | ゼロに近いほど望ましい | 配当・役員報酬による社外流出額を毎期確認 |
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|資産管理会社・持株会社
ひとことで言うと株価対策のタイミングと留保金課税・配当設計への目配りが、承継コストを大きく左右します。
資産管理会社・持株会社の経営では、株価対策のタイミングと留保金課税・配当設計への目配りが承継コストを左右します。守秘義務に配慮したモデルケースを紹介します。
成功事例
失敗事例
※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後12か月のアクションチェックリスト
ひとことで言うと2026年7〜9月のうちに特例承継計画の提出要否と株式保有特定会社の判定を確認しておきましょう。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 特例承継計画の提出要否判断、株式保有特定会社の判定・株特外しの検討 | 事業承継税制(特例措置) |
| 2026年10〜12月 | 防衛特別法人税・留保金課税の試算、役員退職金支給による株価圧縮効果の検証 | 防衛特別法人税/留保金課税 |
| 2027年1〜3月 | 受取配当等の益金不算入・グループ法人税制を踏まえたグループ内資金移動の点検 | グループ法人税制 |
| 2027年4〜6月 | 株式贈与・相続の実行(2027年12月末期限)に向けた資金計画・認定申請スケジュールの最終確認 | 事業承継税制の適用手続き |
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと保有不動産の活用や土地の相続そのものは専門ページに分かれています。あわせてご覧いただくと理解が深まります。
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