最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、電子部品・電気機器の製造・実装を手がける経営者の方に向けて、2026年(令和8年)時点の制度動向を税理士事務所の視点で整理したものです。半導体・データセンター向け投資の拡大と部品の長期調達難、EMS(電子機器受託製造サービス)受託の採算改善、RoHSなど化学物質規制への対応、試験研究費の税額控除など、電子部品・電気機器製造業ならではの実務論点を中心にまとめています。自動車・産業機械・情報通信機器など幅広い業界に部品を供給する企業の経営に役立つ情報です。
- 結論を最初に:半導体・データセンター需要は拡大していますが、部品の長期調達難と在庫評価損のリスクは続きます。安全在庫の水準を見直しましょう。
- EMSは提案型受注へ:量産一辺倒の受託は価格競争が厳しいままです。設計段階から関わる提案型の受注にシフトすることが採算改善の近道です。
- 研究開発税制を使い倒す:中小企業技術基盤強化税制は令和8年度改正で3年延長・繰越控除も新設されました。試験研究費を年間集計しましょう。
- RoHS・化管法は対象が年々拡大:化学物質規制の対象物質は増え続けています。取引先からの含有調査に備える体制が必要です。
- 2026年10月に負担増が重なる:社会保険適用拡大とカスハラ対策義務化が同時に来ます。早めの準備を。
1. 業界の今|2026年の電子部品・電気機器製造業動向
ひとことで言うと半導体・データセンター需要は伸びていますが、恩恵は一様ではなく、部品の調達難と商社の在庫調整が同時に進んでいます。
電子部品・電気機器製造業は、自動車・産業機械・情報通信機器など幅広い業界に部品を供給する裾野の広い業種です。基板の実装から検査まで請け負うEMS(電子機器受託製造サービス)企業も含まれます。
調査統計を手がける日本半導体製造装置協会(SEAJ)によると、2026年度の半導体製造装置の国内向け販売高は前年比5%増の1兆3,805億円と予測されています。データセンター・AI向け投資の拡大が押し上げ要因です。
世界半導体市場統計(WSTS)は2026年の世界半導体市場を前年比26.3%増の9,755億ドルと予測しており、1兆ドルの大台が視野に入っています。生成AI向けのGPUやHBM(高性能な積層型メモリー)需要が牽引役です。
電子情報技術産業協会(JEITA)の見通しでは、2026年の電子情報産業の世界生産額は前年比10%増の4兆5,103億ドルと過去最高を更新する見込みです。日本企業の世界生産額(国内外計)も3%増の43兆1,450億円と堅調です。
一方で、半導体・電子部品商社では在庫調整が続いています。過去の品不足時に先行発注した在庫の消化に時間がかかっており、大手商社でも部品事業の売上が前年割れする例が出ています。
EMS(電子機器受託製造サービス)の国内市場規模は2026年時点で世界の約7.4%を占めるとされ、量産だけでなく設計提案型の受託にシフトする動きが広がっています。
帝国データバンクによると、倒産危険度の高い製造業は2025年12月時点で3万1,035社と前年比8.6%増加しました。部品の調達難や価格転嫁の遅れが資金繰りに影響しているとみられます。
2. 経営のポイント|電子部品・電気機器製造業が今やるべきこと
ひとことで言うと部品の安全在庫を見直し、EMSは提案型受注へ、化学物質規制は先回りで対応することが2026年の実務の要です。
2-1. 部品の長期調達難と安全在庫の評価損対策
半導体・電子部品は品目によって納期が長期化しやすく、必要量以上に発注する動きが調達現場に根強く残っています。過剰在庫は資金繰りと評価損の両面でリスクになります。
品目ごとに納期・価格変動・代替可否を整理し、安全在庫の水準を定期的に見直すことが重要です。長期間動きのない部品在庫は、実地棚卸のたびに評価損の要否を確認しましょう。
調達先を複数化し、BCP(事業継続計画=取引先が被災・供給停止した場合の対応方針)の観点から代替調達ルートを確保しておくことも、供給網の混乱に備える手段になります。
2-2. EMS受託の低採算脱却
EMSは価格競争が厳しく、量産だけに頼ると採算が低下しやすい構造です。設計段階から関わる提案型の受託にシフトする企業が増えています。
原材料費・エネルギーコストの上昇分を数値で示し、価格交渉の場を早めに設けることも欠かせません。中小企業庁の調査では2026年3月時点の価格転嫁率は54.2%にとどまっています。
2-3. RoHS・化学物質規制への対応
EU向け製品はRoHS指令(電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限する規制)の対象です。銅合金中の鉛含有量に関する適用除外は2026年7月21日に期限を迎えます。
国内でも化管法(化学物質排出把握管理促進法)の対象物質が拡大しており、第一種指定化学物質は462物質から515物質に増えました。取引先からの含有調査への対応体制を整えておきましょう。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
ひとことで言うと研究開発税制と経営強化税制をフル活用しつつ、滞留部品の評価損と輸出免税の実務を押さえましょう。
電子部品・電気機器製造業は試験研究費が多い業種です。研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)を使えば、試験研究費の一定割合を法人税額から控除できます。
令和8年度改正で適用期限が3年延長(令和8年4月1日〜令和11年3月31日)されたほか、控除限度超過額の3年間繰越しも新設されました。試験研究費を年間で集計する体制がカギになります。
設備投資には中小企業経営強化税制も活用できます。令和8年度改正により器具備品の対象は取得価額40万円以上に引き上げられ、従業員400人超の法人は対象外になりました。
少額減価償却資産の特例(令和8年4月1日以後取得分は40万円未満に拡充・年合計300万円まで)を使えば、検査治具や測定機器などを取得年度に一括費用計上できます。
長期間動きのない部品在庫は、時価が帳簿価額を下回っていれば評価損の計上を検討します。相場変動が大きい品目は、期末ごとに評価の要否を確認する体制が欠かせません。
輸出取引には消費税の輸出免税が適用されますが、直接輸出か国内商社経由かで適用の可否が変わります。輸出許可書などの証明書類の保存が要件になる点にも注意しましょう。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制) | 試験研究費の一定割合を税額控除。令和8年度改正で適用期限3年延長、繰越税額控除制度を新設 | 試験研究費に該当する費用を年間集計する体制を整備 |
| 中小企業経営強化税制 | 即時償却または税額控除10%(7%)。令和8年度改正で器具備品は40万円以上、従業員400人超法人は対象外 | 経営力向上計画を設備取得前に認定申請 |
| 少額減価償却資産の特例 | 令和8年4月1日以後取得分は40万円未満に拡充(年合計300万円まで) | 検査治具・測定機器の更新に活用 |
| 滞留部品在庫の評価 | 長期間動きのない在庫は時価下落時に評価損の計上を検討 | 期末棚卸で品目ごとの動きを確認する体制を整備 |
| 輸出免税 | 輸出取引は消費税が免税。証明書類の保存が要件 | 直接輸出か商社経由かで適用可否を事前確認 |
| インボイス2割特例の終了 | R8.9.30を含む課税期間で終了。個人は3割特例(R9・R10年分) | 簡易課税・本則課税との税負担比較を決算前に実施 |
| 免税事業者からの仕入税額控除 | R8.10.1以後は80%控除から70%控除に縮小 | 外注先・仕入先の適格請求書発行事業者登録を一覧化 |
| 防衛特別法人税 | R8.4.1以後開始事業年度から(基準法人税額-500万円)×4% | 基準法人税額500万円超かを事前に試算 |
- 2026年4月1日中小企業技術基盤強化税制の延長・繰越税額控除制度がスタート。中小企業経営強化税制の器具備品要件が40万円以上に
- 2026年7月21日RoHS指令の銅合金中の鉛含有量に関する適用除外が期限を迎える
- 2026年9月30日インボイス2割特例の対象課税期間が終了
- 2026年10月「106万円の壁」撤廃・カスハラ対策義務化。免税事業者からの仕入税額控除は70%に
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
ひとことで言うと研究開発税制と組み合わせやすい設備投資系の補助金を優先的に検討しましょう。
補助金の多くは、設備投資を実施し実績報告を行った後に交付される後払いです。採択から入金までの資金繰りを見込んだうえで投資を進めましょう。
| 制度 | 上限・補助率 | 直近スケジュール | 電子部品・電気機器製造業での使い方 |
|---|---|---|---|
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 補助上限4,000万円級 | 第1回締切:R8.9.30 18:00 | 新製品開発、検査工程の自動化 |
| 中小企業省力化投資補助金【一般型】 | 750万〜8,000万円(賃上げ特例で最大1億円) | 第7回:R8.6.5要領公開、7月受付、採択11月頃 | 実装・検査ラインの自動化設備導入 |
| 中小企業省力化投資補助金【カタログ注文型】 | 最大1,500万円 | 随時受付(2027年3月末頃まで) | 汎用性の高い検査・搬送装置の短期間導入 |
| 事業承継・M&A補助金 | 最大2,000万円 | 15次公募:R8.5.22要領公開、受付6月中旬〜7月下旬 | 後継者不在の部品メーカーのM&A |
5. 労務・人材の最新論点
ひとことで言うと設計・研究開発人材の確保と、外国人材の活用が採用競争力を左右します。
電子部品・電気機器製造業では、設計・研究開発を担う技術者の採用競争が激しく、賃上げだけでなく研究開発予算や裁量のある働き方も採用の決め手になっています。
特定技能制度による外国人材の受け入れは、実装・検査工程の人手不足対策として現実的な選択肢の一つです。受け入れ体制の整備とあわせて検討しましょう。
2026年10月には「106万円の壁」が撤廃され、パート従業員も社会保険の加入対象が広がります。同時にカスタマーハラスメント対策も事業主の義務になります。
クリーンルームなど空調管理された工場でも、令和7年6月施行の熱中症対策の罰則付き義務化(WBGT28度・気温31度以上等での対応)は搬入出作業などで対象になり得ます。
2026年春闘でも中小企業の平均賃上げ率は高水準が続いており、技術者の処遇改善は採用競争力に直結します。北海道の最低賃金は令和7年10月時点で1,075円です。
6. 資金繰り・銀行融資対策|電子部品・電気機器製造業
ひとことで言うと部品の先行手配と研究開発投資が運転資金を圧迫します。税制優遇と融資を組み合わせましょう。
6-1. 部品の先行手配が生む運転資金圧迫
長納期部品を確保するための先行発注は、入金より先に支払いが発生するため運転資金需要を増やします。半導体は価格変動が大きく、必要運転資金の見積りが難しくなりがちです。
円安局面が続けば輸入部材のコストはさらに上振れする可能性があり、為替動向を踏まえた複数シナリオでの資金繰り計画が求められます。
6-2. 研究開発投資と税制優遇の組み合わせ
試験研究費は先行投資の性格が強く、成果が出るまで資金が固定化されやすい費用です。研究開発税制の税額控除を資金計画に織り込み、実質負担を把握しておきましょう。
設備投資は中小企業経営強化税制の即時償却・税額控除とあわせて、公庫の設備資金融資や信用保証協会の保証付き融資を組み合わせるのが基本です。
6-3. 金融機関への説明資料
経営力向上計画の認定は金融機関への説明資料としても活用でき、融資審査を進めやすくします。滞留部品在庫の評価が適切かどうかも、決算書の信頼性を測る材料として見られます。
7. 経営指標の目安(KPIベンチマーク)
ひとことで言うと試験研究費率と歩留まりをあわせて見ることで、投資の効率と原価管理の精度が分かります。
以下は電子部品・電気機器製造業の経営判断で参考にしたい指標の目安です。製品分野(受動部品・実装・機構部品等)により水準が異なる点にご留意ください。
| 指標 | 目安 | 見方 |
|---|---|---|
| 売上高経常利益率 | 目安 約5.3%(令和4年度) | 製造業中小企業平均。全産業平均4.3%をやや上回る水準 |
| 試験研究費率(対売上高) | 自社の過去実績と比較 | 研究開発税制の控除額試算の基礎になる |
| 不良率・歩留まり | 自社の過去実績と比較 | 検査工程の自動化投資の効果測定に活用 |
| 棚卸資産回転期間 | 自社の過去実績と比較 | 部品の長期調達難で悪化しやすく月次確認が必須 |
| 労働分配率 | 目安50%台前半 | 全産業平均52.8%(令和8年版TKC経営指標) |
| 自己資本比率 | 目安40%前後 | 中小企業全産業平均41.7%(令和4年度) |
| 借入金月商倍率 | 目安3〜4倍以内 | 部品の先行手配で一時的に上昇しやすい |
| 設備投資を行った法人企業の割合 | 30.1%(令和4年度) | 全11産業中で最高水準。更新投資のペースを比較する目安に |
出典:中小企業実態基本調査(令和4年度決算実績)、TKC経営指標(BAST)令和8年版
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|電子部品・電気機器製造業
ひとことで言うと安全在庫の仕組み化と設計提案型への転換ができているかが、2026年の分かれ目です。
実際の現場で繰り返し見られるパターンを、守秘義務に配慮して一般化したモデルケースとして紹介します。
成功事例
失敗事例
※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後12か月のアクションチェックリスト
ひとことで言うと2026年10月の制度変更ラッシュに向けて、7〜9月のうちに在庫・研究開発費・化学物質対応を点検しましょう。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 部品の安全在庫水準の点検、試験研究費の年間集計体制の整備、インボイス2割特例終了に向けた検討 | 研究開発税制/インボイス制度 |
| 2026年10〜12月 | 106万円の壁撤廃・カスハラ対策義務化への対応、免税事業者からの仕入税額控除70%への移行確認 | 社会保険適用拡大/労働施策総合推進法 |
| 2027年1〜3月 | 確定申告・決算対応、滞留部品在庫の評価損の要否確認、少額減価償却資産特例の活用状況確認 | 棚卸資産評価/少額減価償却資産の特例 |
| 2027年4〜6月 | 中小企業経営強化税制の適用確認、RoHS・化管法の対象物質の最新リストを確認、次年度の設備投資計画 | 中小企業経営強化税制/化学物質規制 |
制度改正は複数が同時期に重なりやすいため、最新情報を都度確認しながら優先順位を柔軟に調整することをおすすめします。判断に迷う項目があれば、早めに顧問税理士へご相談ください。
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと製造業全体の動向や税制改正・補助金情報もあわせて確認すると、経営判断の視野が広がります。
電子部品・電気機器製造業の税務は、実務に強い税理士へ
研究開発税制の活用、部品在庫の評価、資金繰りまで、御社の生産体制に応じた具体策をご提案します。
対象:電子部品・電気機器製造業を営む法人・個人事業主の方(オンライン対応可・初回相談無料)
無料相談を申し込む 料金・契約の流れを見る※本ページは2026年7月時点の公表情報に基づく一般的な情報提供です。制度・金額・期限は今後の改正等により変更される場合があります。個別の適用可否や税務判断については、顧問税理士または当事務所にご確認ください。
