最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、整骨院・治療院(柔道整復師の施術所)を経営する院長・経理担当の方に向けて、2026年(令和8年)時点の制度動向を税理士事務所の視点で整理したものです。今月施行された柔道整復療養費の令和8年度改定、多部位施術の逓減ルール強化、広告ガイドラインへの対応、自費メニューや交通事故施術にまつわる資金繰りなど、整骨院・治療院ならではの実務論点を中心にまとめています。受領委任を扱う院の経営にお役立てください。
- 結論を最初に:柔道整復療養費は令和8年7月1日に改定率+0.60%で施行されました。初検料は1,550円から1,560円に上がっています。
- 多部位逓減ルールが強化:2部位目は80%、3部位目は60%算定という新ルールが導入され、複数部位の保険施術に頼る経営はより厳しくなります。
- 広告ガイドラインは3要件で判断:「誘引性・特定性・認知性」の3要件に該当すればホームページやSNSも広告規制の対象になります。
- 施術所数はほぼ頭打ち:令和6年度末で50,924か所。令和4年度末の50,916か所からわずか8か所の増加にとどまります。
- インボイス2割特例はR8.9.30で終了:法人は対象外のため、簡易課税への切替えや自費売上の管理体制を早めに整えておきましょう。
1. 業界の今|2026年の整骨院・治療院動向
ひとことで言うと今月施行された療養費改定と多部位逓減の強化にどう対応するかが、2026年の整骨院・治療院経営を左右します。
2026年7月1日、柔道整復療養費の令和8年度改定が施行されました。今月始まったばかりの新ルールです。
改定率は+0.60%で、初検料は1,550円から1,560円に、後療料(打撲・捻挫)は550円になりました。
今回の改定で最も影響が大きいのは、多部位施術の逓減(=複数部位を施術すると算定額が段階的に下がる仕組み)強化です。
2部位目は80%算定、3部位目は60%算定という新ルールが導入されました。複数部位を保険施術中心で診てきた院ほど、収入への影響が大きくなります。
あわせて、自己施術・自家施術(=自分自身への施術)は支給対象外と明記され、明細書には負傷名または施術部位の記載が新たに必須化されました。
施術所数は令和6年度末で50,924か所です。令和4年度末の50,916か所からわずか8か所の増加にとどまり、増加はほぼ止まっています。
2020年度末までの急拡大期を経て、新規開業ラッシュは一段落しました。既存院同士の競争と制度対応力が経営を分けるフェーズです。
2. 経営のポイント|整骨院・治療院が今やるべきこと
ひとことで言うと広告ガイドラインへの対応と自費メニューの拡充を両輪で進めることが、増収と規制対応の両立につながります。
2-1. 広告ガイドライン対応(誘引性・特定性・認知性)
令和7年2月に公布された新しい広告ガイドラインでは、「誘引性・特定性・認知性」の3要件で広告該当性を判断します。
誘引性(=患者を集める意図があるか)、特定性(=院名や連絡先が特定できるか)、認知性(=一般人が見られる状態か)の3つです。
ホームページやポータルサイト掲載、SNS広告は認知性要件を満たしやすく、優先的な点検対象になっています。
「業界No.1」といった比較優良広告や、効果を保証するような誇大広告は、虚偽広告とあわせて監視が強化されています。
自院のホームページ・チラシ・SNS投稿を、開設者自身が定期的に点検する体制を整えておきましょう。
2-2. 自費メニュー・自賠責診療で収入の複線化
保険施術(受領委任)に偏った経営は、逓減ルールの強化や個別指導のたびに収入が振れやすくなります。
骨盤矯正・姿勢改善・スポーツケアといった自費メニューを併設し、保険収入への依存度を下げる院が増えています。
交通事故(自賠責保険)による自由診療は、保険施術より診療単価が高くなる一方、入金までの期間が長くなりやすい点に注意が必要です。
自費メニューは施術内容と料金体系を明確にし、広告ガイドラインに沿った表現で案内することが欠かせません。
経済産業省の価格交渉促進月間フォローアップ調査(2026年3月)でも、コスト上昇分を価格転嫁できているかの点検が呼びかけられています。自費メニューの単価も見直しの余地がないか確認しましょう。
2-3. 電子カルテ・予約システムによる業務効率化
明細書への負傷名・施術部位の記載が新たに必須化され、記録の正確性がこれまで以上に重要になりました。
電子カルテを導入すれば、施術録・同意書・明細書の記載もれを防ぎやすくなります。
予約システムと連携すれば受付業務の負担も軽くなり、限られたスタッフでの運営がしやすくなります。
中小企業省力化投資補助金は、こうした電子カルテ・予約システムの導入費用にも活用できます(詳細は次章)。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
ひとことで言うと受領委任の入金サイトと自費・自賠責売上の区分経理を丁寧に行うことが、決算精度を左右します。
整骨院・治療院の売上は、保険施術(受領委任払い)、患者の一部負担金、自費メニュー、自賠責保険(交通事故)の4つに分かれます。
受領委任払いは、施術月の翌々月頃に国保連・社保基金から入金される仕組みで、現金化までにタイムラグが生じます。
自費メニューや自賠責診療は窓口収入・保険会社への直接請求が中心で、入金サイトが異なるため区分経理が欠かせません。
令和8年7月の改定で明細書への負傷名・施術部位の記載が必須化されました。記載不備は返戻や査定減額の原因になりやすい点に注意しましょう。
少額減価償却資産の特例は、R8.4.1以後取得分から40万円未満に拡充されました(年合計300万円まで、R11.3.31まで延長)。
施術ベッドや物理療法機器の入替え時に活用できますが、償却資産税の対象になる点は変わりません。
インボイスの2割特例はR8.9.30を含む課税期間で終了します。個人事業者はR9・R10年分のみ3割特例が使えますが、法人は対象外です。
法人は簡易課税(課税売上高5,000万円以下・事前届出が必要)への切替えを検討し、自費・自賠責収入の消費税区分も確認しておきましょう。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 柔道整復療養費 令和8年度改定 | 改定率+0.60%、R8.7.1施行。初検料1,550円→1,560円 | 新単価を会計・請求ソフトに反映 |
| 多部位逓減ルールの強化 | 2部位目80%算定、3部位目60%算定 | 保険収入の減少見込みを月次予算に織り込む |
| 明細書の記載必須化 | 負傷名または施術部位の記載が新たに必須 | 施術録・明細書の記載チェック体制を整備 |
| インボイス2割特例の終了 | R8.9.30を含む課税期間で終了(個人はR9・R10年分のみ3割特例) | 法人は簡易課税等への切替えを検討 |
| 免税事業者からの仕入税額控除 | R8.10.1以後は70%控除に縮小 | 清掃・広告制作等の外部委託先の登録状況を確認 |
| 少額減価償却資産の特例 | R8.4.1以後取得分は40万円未満に拡充(年300万円まで) | 施術ベッド・物理療法機器の入替えに活用 |
- 2026年4月1日以後開始事業年度防衛特別法人税の課税対象(基準法人税額500万円超の部分)
- 2026年7月1日柔道整復療養費の令和8年度改定が施行(改定率+0.60%)
- 2026年9月30日インボイス2割特例の対象課税期間が終了
- 2026年10月1日免税事業者からの仕入税額控除が70%に縮小。106万円の壁撤廃も同時期
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
ひとことで言うと電子カルテ導入から賃上げ対応まで、投資段階に応じて使える補助金がそろっています。
整骨院・治療院では、電子カルテ・予約システムの導入や待合室の改装に使える補助金の活用余地が大きく、要件整理や資金計画づくりを税理士がサポートできます。
| 制度 | 上限・補助率 | 直近スケジュール | 整骨院・治療院での使い方 |
|---|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金【一般型】 | 750万〜8,000万円(大幅賃上げ特例最大1億円)、補助率中小1/2(賃上げ時2/3)・小規模2/3 | 第7回:R8.6.5要領公開→7月受付開始→採択11月頃 | 電子カルテ・予約システム・物理療法機器の自動化 |
| 同【カタログ注文型】 | 最大1,500万円 | 随時受付(2027年3月末頃まで) | 券売機・自動受付機・物理療法機器の導入 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 通常枠上限50万円+インボイス特例50万円+賃金引上げ特例150万円で最大250万円、補助率2/3(赤字3/4) | 第20回受付:R8.11.5〜12.15 | HP・広告物刷新(ガイドライン準拠表現)、待合室改装 |
| デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) | 通常枠最大450万円、補助率1/2 | 2026年から名称変更、複数回公募予定 | 予約・会計・カルテ・給与計算ITツールの導入 |
| 業務改善助成金 | 賃上げ額別3コース(50/70/90円)、最大600万円 | 受付R8.9.1開始 | 最低賃金に近い時給スタッフの賃上げと機器導入 |
| キャリアアップ助成金 | 正社員化コース拡充、情報開示加算(1事業所20万円)新設 | 計画書届出のみに簡素化 | 非常勤柔道整復師・受付スタッフの正社員登用 |
5. 労務・人材の最新論点
ひとことで言うと非常勤スタッフの社会保険適用拡大とカスタマーハラスメント対策が、2026年10月に向けた労務対応の焦点です。
「106万円の壁」はR8.10.1に賃金要件(月8.8万円)が撤廃される見込みです。企業規模要件(51人以上)はR9.10から段階的に撤廃されます。
非常勤の柔道整復師や受付スタッフも社会保険加入の対象が広がる可能性があるため、雇用契約の労働時間・賃金を早めに棚卸ししておきましょう。
カスタマーハラスメント対策の事業主義務化がR8.10.1に始まります。患者対応でのハラスメントも対象になるため、相談窓口の整備が必要です。
北海道の最低賃金は1,075円(R7.10.4発効)です。令和8年度の改定は2026年8月に目安が示され、10月頃の発効が見込まれます。
2026年春闘の賃上げ率は5.01%、中小企業でも4.69%と高水準でした。非常勤スタッフの時給見直しも避けられない状況です。
賃上げ促進税制は、給与総額の増加率に応じて法人税額から控除できる制度です。要件を満たせば賃上げの負担を一部相殺できます。
施術スタッフは柔道整復師の資格保有者に限られ採用競争が激しいため、キャリアアップ助成金による正社員化・待遇改善が定着策として有効です。
全国の企業倒産は2025年度で10,505件と2年連続で1万件を超えました。中小企業の後継者不在率も50.1%と高水準で、事業承継の検討も早めに進めておきましょう。
6. 資金繰り・銀行融資対策|整骨院・治療院
ひとことで言うと受領委任の入金サイトと自費・自賠責の即金収入を組み合わせ、資金繰り表で先読みすることが安定経営の土台です。
6-1. 療養費(受領委任)の入金サイトと自費・自賠責の即金収入のミックス管理
保険施術(受領委任払い)は施術月の翌々月頃にまとめて入金される仕組みで、人件費・家賃の支払いが先行しやすい構造です。
自費メニューは施術当日に窓口で回収できるため即金性が高く、資金繰りを安定させる役割を果たします。
保険・自費・自賠責それぞれの入金サイトを資金繰り表に落とし込み、月ごとの入金予定を可視化しておくことが大切です。
6-2. 多部位逓減強化(R8.7改定)による収入減少への備えと自費シフトの資金インパクト
2部位目80%・3部位目60%算定という逓減ルールの強化で、複数部位の保険施術中心だった院は療養費収入が目減りする可能性があります。
減収分をどこまで自費メニューでカバーできるか、施術単価と患者数から試算し、資金計画に反映しておきましょう。
自費シフトを進める初期は広告・設備投資が先行し、回収まで数か月かかることもあるため、運転資金の余裕を持たせておく必要があります。
6-3. 交通事故施術の未収金対策と資金調達(日本政策金融公庫・信用保証協会付き融資)
自賠責保険による自由診療は保険会社への直接請求が中心で、示談成立までの期間が長期化すると売掛金が数か月〜半年以上滞留することもあります。
未収金の年齢調べ(=いつの請求がいくら残っているかの一覧)を月次で確認し、長期滞留分は早めに保険会社へ督促しましょう。
資金が不足する場合は、日本政策金融公庫の融資や信用保証協会付き融資の活用を検討してください。運転資金枠を事前に確保しておくと安心です。
7. 経営指標の目安(KPIベンチマーク)
ひとことで言うと自費比率と人件費率のバランスを目安と比べることで、自院の伸びしろが見えてきます。
以下は当事務所が実務でよく見る傾向を整理したモデルケースです。院の規模や地域によって水準は異なりますが、自院の位置づけを考える目安にしてください。
| 指標 | 目安 | 見方 |
|---|---|---|
| 自費売上比率 | 2〜3割程度(モデルケース) | 保険収入への依存度を示す。逓減ルール強化の影響を受けにくくする目安 |
| 保険:自費の売上構成 | 7:3〜6:4程度(モデルケース) | 自費比率が高いほど、査定減額・制度改正の影響を受けにくい |
| 人件費率(売上高比) | 45〜55%程度(モデルケース) | 柔道整復師は有資格者採用のため他業種より高めに出やすい |
| 現預金月商倍率 | 1.5〜3か月分程度(モデルケース) | 受領委任の入金タイムラグに耐えられるかの目安 |
| 損益分岐点比率 | 80%台前半程度(モデルケース) | 低いほど収入減少に対する耐性が高い |
| 1施術あたり単価 | 保険1,500〜2,500円・自費3,000〜6,000円程度(モデルケース) | 自費メニューの単価設計が収益力を左右する |
| 未収金回収期間(自賠責) | 1.5〜4か月程度(モデルケース) | 専任担当を置くと短縮しやすい。半年超は要注意 |
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|整骨院・治療院
ひとことで言うと自費メニューの拡充と記録の徹底ができているか、未収金管理を仕組み化できているかが分かれ目です。
実際の現場で繰り返し見られるパターンを、守秘義務に配慮して一般化したモデルケースとして紹介します。自院の管理体制と照らし合わせてご覧ください。
成功事例
失敗事例
※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後12か月のアクションチェックリスト
ひとことで言うと2026年7〜9月のうちに療養費改定への対応と明細書記載の徹底を終わらせておきましょう。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 療養費改定(R8.7.1施行)への請求ソフト反映、明細書の負傷名記載を徹底 | 柔道整復療養費改定、受領委任制度 |
| 2026年10〜12月 | インボイス2割特例終了後の消費税区分を確認、106万円の壁撤廃・カスハラ対策義務化への対応 | インボイス制度、社会保険適用拡大 |
| 2027年1〜3月 | 決算に向けて自費・自賠責・保険の区分経理を総点検、少額減価償却資産特例の活用状況を確認 | 少額減価償却資産の特例 |
| 2027年4〜6月 | 広告表現の年次点検、賃上げ促進税制の適用判定、自費メニューの単価見直し | 広告ガイドライン、賃上げ促進税制 |
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと整骨院・治療院の制度は業種横断の税制・補助金情報ともつながるため、あわせて確認しておくと理解が深まります。
整骨院・治療院の経営・税務は、実務に強い税理士へ
療養費改定への対応や自費・自賠責の区分経理から、補助金活用・資金繰りのご相談まで、貴院の規模・診療内容に応じた具体策をご提案します。
対象:整骨院・治療院を経営する法人・個人事業主の方(オンライン対応可・初回相談無料)
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