旅行業(旅行会社・ツアー事業)の経営に役立つ最新情報【2026年版】

最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)

このページは、旅行会社・ツアー事業を営む方に向けて、2026年(令和8年)時点の業界動向・税制・支援策・労務の最新情報を税理士事務所の視点で整理したものです。旅行業登録制度と保証金、企画旅行の前受金・収益認識、標準旅行業約款の改正を中心にまとめています。

✓ 2026年の業界動向 ✓ 前受金・取消料の会計 ✓ 保証金制度の実務 ✓ 労務・人材の新ルール ✓ 12か月アクション表
3分でわかる要点
  1. 結論を先に:2025年度の主要旅行業者の総取扱額は前年比5.3%増の3兆9,750億円。インバウンドが12.9%増と特に好調です。
  2. 前受金は預り金の性格:企画旅行の前受金は旅行終了まで負債として計上し、実施日にあわせて売上に振り替えるのが原則です。
  3. 総額・純額処理の区分に注意:企画旅行は総額処理、手配旅行は純額処理。判定を誤ると消費税申告の修正リスクがあります。
  4. 保証金は固定資金と心得る:営業保証金・弁済業務保証金分担金は事業中は原則引き出せません。実質的な運転資金から除いて考えましょう。
  5. 標準旅行業約款が改正:令和8年3月9日改正、同年4月1日適用開始。取消料等の最新版を確認してください。
目次

1. 業界の今|2026年の旅行業動向

ひとことで言うとインバウンド・アウトバウンドともに回復基調です。前受金・取消料の管理体制を強化できるかが経営を左右します。

3.98兆円2025年度 主要旅行業者44社の総取扱額(前年比+5.3%・観光庁速報)
4,268万人2025年 訪日外客数(過去最高・JNTO)
1,343万人2025年1〜11月 日本人出国者数累計(前年比113.6%)

観光庁の速報によると、2025年度の主要旅行業者44社・グループの総取扱額は前年度比5.3%増の3兆9,750億円でした。国内旅行3.5%増、海外旅行7.1%増、インバウンド12.9%増と、いずれも前年を上回っています。

とくに訪日インバウンドの伸びが際立ち、体験型・着地型の旅行商品を扱う旅行会社にとって収益機会が広がっています。為替相場は海外旅行の仕入コストにも直結するため、円安局面の動向を注視する必要があります。

アウトバウンドも回復基調です。2025年1〜11月の日本人出国者数は前年同期比113.6%まで回復しました。もっとも円安・現地物価高で海外旅行の平均単価は上昇傾向にあります。

近距離のアジア方面へのシフトが強まっている点も特徴です。仕入コストの変動を早めに販売価格へ反映できる体制づくりが求められます。

標準旅行業約款は令和8年3月9日に改正され、同年4月1日から適用されています。取消料や契約条項の実務を扱う旅行会社は、最新版の約款内容を確認しておく必要があります。

一方で、旅行業界を含む中小企業全体の経営環境は楽観できません。2025年の企業倒産は全国で1万261件と4年連続で増加し、12年ぶりに年間1万件を超えました。

ポイントインバウンド・アウトバウンド双方の回復という追い風を、前受金・取消料・BSP精算といった旅行業特有のお金の流れの管理体制強化につなげられるかが、2026年の経営を左右します。
総取扱額3兆9,750億円の内訳(2025年度・前年度比)
国内58海外36訪日6
国内旅行 2兆2,939億円(+3.5%)海外旅行 1兆4,309億円(+7.1%)訪日インバウンド 2,501億円(+12.9%)
出典:観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況」令和7年度速報

2. 経営のポイント|旅行会社経営者が今やるべきこと

ひとことで言うと商品構成の見直し、前受金・取消料の管理、BSP精算の与信管理がこれからの重点課題です。

2-1. インバウンド需要の取り込みと商品構成の見直し

第2種・第3種旅行業者であっても、地域限定旅行業への切り替えや、他社企画旅行の受託販売という形での参入余地があります。自社の登録区分にあった商品戦略を検討しましょう。

訪日インバウンドの取扱額が前年比12.9%増と伸びるなか、団体パッケージ中心から体験型・着地型の企画旅行へシフトする旅行会社が増えています。地域資源を生かした着地型旅行は単価と粗利率を確保しやすい傾向があります。

2-2. 前受金・取消料の管理体制の適正化

標準旅行業約款で定められた取消料は、目安として20%・30%・50%など旅行開始日までの日数に応じて段階的に上昇します。契約管理の徹底がトラブル防止に直結します。

企画旅行の前受金は、旅行実施が完了するまでは預り金的な性格を持ちます。収益計上のタイミングを誤ると期間損益がゆがみます。取消料も規定どおり収受できているか、契約管理システムで一元管理しましょう。

2-3. BSP精算・仕入先との与信管理

仕入先が増えるほど管理は煩雑になります。繁忙期の資金繰り確認に時間を取られないよう、支払サイトを一覧化しておくことをおすすめします。

航空券のBSP精算を利用する旅行会社では、航空会社への送金と顧客からの入金のタイミングがずれるため、資金繰りに直結する重要な管理ポイントになります。主要な仕入先ごとに支払条件を一覧化しておきましょう。

前受金・取消料を一元管理する手順
STEP1 契約ごとに前受金を記録予約管理システムで残高を可視化する
STEP2 取消料の基準を統一約款の日数区分に沿った料率を徹底する
STEP3 返金・相殺処理を記録担当者の裁量に任せず記録を残す
STEP4 月次で残高を確認前受金残高と収益計上のタイミングを点検する
※実務でよく使う進め方を整理したものです
旅行会社経営者が今やるべき打ち手の優先順位
すぐやる(効果大・コスト小)取消料規定の統一運用、前受金残高の可視化
計画してやる(効果大・コスト大)着地型旅行の商品造成、予約管理システムの刷新
余力があれば多言語対応・SNS発信の強化
優先度は低い総額・純額処理の区分をあいまいにしたままの運用
※実務でよく使われる整理の型です

3. 税務・会計の留意点(令和8年度)

ひとことで言うと企画旅行は総額処理、手配旅行は純額処理が原則です。前受金は旅行終了まで負債として管理します。

旅行業の売上計上でまず押さえるべきは、総額処理と純額処理の区分です。企画旅行は旅行会社が「本人」として旅行代金の総額を売上計上し、宿泊費・運送費等を仕入計上する総額処理が原則です。

他社が主催する旅行を取り次ぐ手配旅行では、旅行会社は「代理人」の立場で、受け取る手数料相当額のみを収益認識する純額処理になります。契約の実態で消費税の課税売上高も変わります。

企画旅行の前受金は、出発前に収受しても役務提供が完了していないため、原則として旅行終了日等の実現時点まで負債として計上し、旅行終了にあわせて売上に振り替えます。

取消料は損害賠償的な性格を持つ収入であり、消費税の課税対象外(不課税)として扱われる点に注意が必要です。旅行代金と区分して経理しましょう。

BSP精算を通じた航空券販売では、航空会社への送金額と顧客からの収受額の差額が旅行会社の収益(手数料等)です。証憑の突合と月次での残高確認を徹底し、期ずれを防ぐ必要があります。

項目内容実務対応
企画旅行の収益認識本人取引として旅行代金総額を売上計上(総額処理)手配旅行(純額処理)との区分を商品ごとに整理する
前受金の計上時期収受時点では負債計上し、旅行終了等の実現時点で売上に振替期をまたぐ旅行の前受金残高を月次で確認する
取消料の消費税区分損害賠償的性格のため消費税は不課税取消料明細を旅行代金と区分して経理する
営業保証金・弁済業務保証金分担金供託額は資産計上(保証金)。分担金は協会加入時に納付登録区分変更時の追加供託・還付手続きを確認する
インボイス2割特例の終了R8.9.30の属する課税期間で終了。個人はR9・R10年分のみ3割特例手配旅行中心の免税事業者は課税転換の要否を検討する
少額減価償却資産の特例R8.4.1以後取得分は40万円未満に拡充(年合計300万円まで)予約システム端末等の更新をこの範囲でまとめて実施する
防衛特別法人税R8.4.1以後開始事業年度から課税。(基準法人税額−基礎控除500万円)×4%法人化している旅行会社は基準法人税額500万円超かを確認する
企画旅行の前受金の会計処理の流れ
STEP1 契約・入金旅行代金を「前受金(負債)」として計上する
STEP2 出発前は負債のまま管理役務提供が未完了のため売上計上しない
STEP3 旅行終了時に売上へ振替実施日を基準に前受金を取り崩す
STEP4 取消時は不課税で処理取消料は旅行代金と区分し消費税の対象外とする
出典:観光庁「標準旅行業約款」等をもとに整理

4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)

ひとことで言うと予約システム刷新から着地型旅行の新規開発まで、投資段階に応じた補助金を活用できます。

制度上限・補助率直近スケジュール旅行業での使い方
中小企業省力化投資補助金【一般型】750万〜8,000万円(賃上げ特例で最大1億円)第7回:R8.6.5要領公開、7月受付、採択11月頃予約管理・顧客管理システムの刷新
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金上限4,000万円級(最低賃金引上げ特例あり)第1回締切:R8.9.30 18:00着地型旅行・体験プログラムの新規開発
小規模事業者持続化補助金通常枠上限50万円+各種上乗せで最大250万円第20回:受付R8.11.5〜12.15多言語サイト整備・SNS集客・パンフレット制作
業務改善助成金賃上げ額別3コース、最大600万円R8年度:受付R8.9.1開始添乗員・カウンタースタッフの賃上げ原資
ご注意補助金の申請代行は行政書士等、雇用関係助成金の申請代行は社会保険労務士の専門分野です。当事務所は税務・財務の観点から、採択後の会計処理・圧縮記帳・資金繰り計画を支援します。

5. 労務・人材の最新論点

ひとことで言うと添乗員・カウンター業務の人手不足が続くなか、賃上げと労働時間管理の両立が課題です。

旅行業もコロナ禍で離職した人材が戻りきらず、添乗員・カウンター業務ともに人手不足が続いています。2026年春闘の平均賃上げ率は5.01%、中小企業でも4.69%と高水準です。

R8.10.1の「106万円の壁」撤廃で、パート・アルバイトのカウンタースタッフを抱える旅行会社は社会保険料負担増を見込んだ人件費シミュレーションが必要です。

添乗業務は繁忙期に長時間・不規則勤務になりやすく、労働時間管理の適正化が課題です。フリーランスの添乗員・通訳ガイドへの業務委託では、フリーランス保護法にもとづく契約条件の明示が求められます。

北海道の最低賃金は令和7年10月に1,075円となりました。令和8年度の改定額は審議中で、答申は7月下旬が予定されています。

通訳ガイドの確保が難しい地域では、複数社で人材を融通し合う動きも見られます。繁忙期の稼働を安定させる工夫として参考になります。

6. 資金繰り・銀行融資対策

ひとことで言うと営業保証金は事業中は引き出せない固定資金です。これを除いた実質手元流動性で資金繰りを管理しましょう。

6-1. 旅行業特有の資金繰り課題

宿泊施設・バス会社など主要な仕入先についても、支払サイトと入金サイトの差を把握し、繁忙期に運転資金が不足しないよう与信枠や短期融資枠をあらかじめ確保しておくことが望まれます。

企画旅行の前受金が先に入る一方、宿泊・運送機関等への支払いやBSP精算にともなう送金は別のタイミングで発生します。見かけの手元資金と実際に自由に使える資金がずれやすい業態です。

旅行業登録の区分に応じて、営業保証金(第1種7,000万円・第2種1,100万円・第3種300万円)または弁済業務保証金分担金(保証金の5分の1相当)を供託・納付する必要があり、事業中は原則引き出せません。

6-2. 使える融資メニュー

商工会議所の経営指導を6か月以上受けている小規模事業者であれば、マル経融資は無担保・無保証で利用できる点が実務上のメリットです。

旅行業は生活衛生関係営業の18業種に含まれないため、日本政策金融公庫の生活衛生貸付の対象にはなりません。一般の各種融資に加え、マル経融資(上限2,000万円、無担保・無保証)が選択肢になります。

売上減少などで一時的に業況が悪化している場合は、セーフティネット貸付や信用保証協会の保証付き融資もあわせて検討できます。

6-3. 金融機関の見方と決算書のポイント

取扱額の伸びだけでなく、実際に手元資金がどれだけ増えているかという実感値もあわせて説明できると、融資審査での納得感が高まります。

金融機関は、総取扱額に対する粗利率(受注型企画旅行はおおむね12%台が目安)と、前受金の管理状況を重視する傾向があります。

前受金が正しく負債計上され、旅行終了にあわせて売上に振り替えられているか、決算書上で収益認識のルールが一貫しているかも確認されるポイントです。

実務ポイント営業保証金・弁済業務保証金分担金は実質的に固定化される資金であることを踏まえ、運転資金の計画はこれを除いた手元流動性で立てましょう。BSP精算のサイトと前受金の入金サイトのズレは、月次の資金繰り表で可視化することをおすすめします。
保証金相当額を除いた実質運転資金のイメージ(モデル)
帳簿上の現預金(保証金含む)100
実際に自由に使える運転資金65程度
※営業保証金・弁済業務保証金分担金は事業中は原則引き出せない資金であるため、運転資金として使える金額は帳簿上の現預金より少なくなる、という考え方を示したモデルです

7. 経営指標の目安(KPIベンチマーク)

ひとことで言うと企画旅行と手配旅行では粗利率の水準が違います。自社の商品構成にあわせた目安で比較しましょう。

以下は業界紙・公表統計等をもとにした一般的な目安です。企画旅行中心か手配旅行中心か、法人営業比率などによって水準は大きく異なります。

指標目安見方
受注型企画旅行の粗利率12%台が目安とされる募集型(やや低め)との構成比で全体の粗利を把握する
人件費率粗利益の50〜60%程度が目安添乗員・カウンター要員の稼働配分とあわせて確認する
現預金月商倍率1〜1.5か月分が目安営業保証金相当を除いた実質手元資金で計算する
借入金月商倍率業種平均は数か月分とされる季節性の強い繁忙期前の借入を含めて確認する
損益分岐点比率低いほど需要変動への耐性が高い閑散期の売上でも固定費を賄えるかを試算する
ベンチマーク利用の注意上記は公表資料にもとづく「目安」であり、業界平均を保証するものではありません。企画旅行・手配旅行の構成比が近い会社のデータかを確認し、単年でなく複数年の推移で判断することをおすすめします。
総取扱額の伸び率比較(2025年度・前年度比)
訪日インバウンド+12.9%
海外旅行+7.1%
国内旅行+3.5%
出典:観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況」令和7年度速報

8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|旅行業経営

ひとことで言うと前受金・取消料をシステムで一元管理できているかどうかが、旅行業経営の分かれ目です。

成功事例

実際の現場で繰り返し見られるパターンを、守秘義務に配慮して一般化したモデルケースとして紹介します。ご自身の経営判断の参考としてご活用ください。

成功事例①|着地型旅行への商品転換で粗利率を約3ポイント改善団体パッケージ中心だった旅行会社が地域の体験プログラムを組み合わせた着地型企画旅行の造成に注力。価格競争に巻き込まれにくい商品構成となり、全体の粗利率が改善しました。
成功事例②|前受金・取消料の一元管理で回収漏れをゼロに紙台帳で管理していた前受金と取消料を予約管理システムに一元化。収受漏れ・振替漏れがなくなり、月次決算の前受金残高が常に正確に把握できるようになりました。
成功事例③|資金繰り表の整備でBSP送金と繁忙期の資金不足を回避BSP精算の送金サイトと入金サイトのズレを月次資金繰り表で可視化した旅行会社は、繁忙期前に短期融資枠をあらかじめ確保でき、資金ショートを未然に防げました。

失敗事例

失敗事例①|総額・純額処理の判定を誤り消費税申告を修正手配旅行の一部を企画旅行と同様に総額処理していた旅行会社が、税務調査を機に契約実態にもとづく区分の誤りを指摘され、消費税の申告を修正することになりました。
失敗事例②|取消料規定の運用が曖昧で未収とクレームが増加取消料の収受基準を担当者の裁量に任せていた旅行会社では、顧客ごとに対応がぶれてクレームが増え、規定どおりに収受できない未収も発生しました。
失敗事例③|登録区分変更にともなう追加供託を資金計画に織り込まず資金繰りが悪化第3種から第2種への登録区分変更にともなう営業保証金の追加供託額を軽視していた旅行会社は、供託直後に運転資金が不足し、金融機関への急な相談を迫られました。
事例から見える「分かれ目」3点①前受金・取消料をシステムで一元管理し収益認識のルールを徹底できているか②契約類型ごとに総額・純額処理を正しく区分できているか③保証金・BSP精算など旅行業特有の資金の固定化を織り込んだ資金計画があるか

※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。

9. 今後12か月のアクションチェックリスト

ひとことで言うと2026年7〜9月のうちに標準旅行業約款の改正内容を反映し、前受金の管理体制を点検しましょう。

時期やること関連制度
2026年7〜9月標準旅行業約款の改正内容の反映確認、前受金・取消料の管理体制点検標準旅行業約款(R8.3.9改正)
2026年10〜12月106万円の壁撤廃への対応、免税事業者からの仕入税額控除70%移行の確認106万円の壁撤廃/インボイス経過措置
2027年1〜3月総額・純額処理の区分見直し、少額減価償却資産の特例を使ったシステム更新少額減価償却資産の特例
2027年4〜6月次年度資金繰り計画の策定、繁忙期に向けたBSP送金・与信枠の確認セーフティネット貸付/マル経融資

10. 関連情報・よくある質問

ひとことで言うと旅行業の制度は宿泊業など隣接業種や税制改正全体ともつながるため、あわせて確認すると理解が深まります。

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※本ページは2026年7月時点の公表情報に基づく一般的な情報提供です。制度・金額・期限は今後の改正等により変更される場合があります。個別の適用可否や税務判断については、顧問税理士または当事務所にご確認ください。

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