融資審査のポイントは「きちんと返せるか」に集約されます。金融機関は、年間のキャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)が返済額を上回るか、資金使途と金額の根拠が具体的か、自己資金と信用情報に問題がないかを見ています。申込み前にこの3点を点検しておくと、審査の通りやすさと条件が変わります。
この記事の結論
審査の核は返済余力の確認です。キャッシュフローで返せる計画か、資金使途が具体的か、自己資金と信用に問題がないかを、数字と資料で示せるように準備します。
- 年間キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)が年間の元金返済額を上回るかが判断の軸
- 資金使途は、見積書や資金繰り表など具体的な数字で説明する
- 日本政策金融公庫は、自己資金を審査の重要な要素としている(平均は2割程度)
- 税金・社会保険料の滞納やカードの延滞は、申込みの前に解消しておく
- 借りた後の試算表の提出と返済実績が、次の融資の評価につながる
融資審査で金融機関は何を見る?4つの評価ポイント
金融機関が融資審査で最も重視するのは、「この事業者はきちんと返せるか」という返済余力の確認です。そのうえで、資金の使い道、自己資金、経営者と事業の信用を総合的に見ています。審査の前に、それぞれを資料で説明できるかを確かめておきます。
| 評価ポイント | 金融機関が見ること | 準備する資料 |
|---|---|---|
| 返済余力 | キャッシュフローで年間の返済額をまかなえるか。借入金の総額が利益に比べて重すぎないか | 決算書・確定申告書、直近の試算表、資金繰り表、借入金の一覧 |
| 資金使途 | 何に・いくら使うかが具体的で、金額に根拠があるか | 設備の見積書、運転資金の計算の根拠、事業計画書 |
| 自己資金・財務の安定性 | 自己資金をどれだけ入れているか。純資産や手元の資金の水準 | 通帳(資金を貯めてきた履歴)、貸借対照表 |
| 信用 | 税金・社会保険料の納付状況、個人の信用情報、過去の返済の履歴、経営者の経験 | 納税証明書、経歴書、既存の借入の返済予定表 |
事業計画が具体性に欠ける場合も、将来の収益が見込みにくいと判断されることがあります。現実的で詳細な事業計画を用意し、必要な情報を過不足なく伝えることが、融資を受けるうえでの基本です。
金融機関ごとに重視するポイントや得意分野には違いがあります。自社の事業内容と相性の良い金融機関を見極めてアプローチすることも、選択肢の一つです。
返済できるかはどう判断される?キャッシュフローと返済額の関係
返済の原資は、利益そのものではなくキャッシュフローです。借入金の元金の返済は経費にならないため、税金を払った後の利益から返します。減価償却費は経費でも現金が出ていかない費用なので、税引後利益に減価償却費を足した額が、おおまかな返済の原資になります。
個人事業主の場合は、事業の利益から生活費(事業主貸)と所得税・住民税も払うため、それを差し引いた残りが返済の原資です。法人よりも、家計を含めたお金の流れで見られる点に注意します。
| 項目 | 自己資金20% | 自己資金30% |
|---|---|---|
| 物件・設備費用 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 自己資金 | 200万円 | 300万円 |
| 融資額 | 800万円 | 700万円 |
| 必要な年間返済余力の目安(10年で返す元金) | 約80万円以上 | 約70万円以上 |
計算例:返済余力の確かめ方
例えば、税引後利益が年60万円、減価償却費が年40万円の法人が、800万円を10年返済で借りる場合です。
- キャッシュフロー:60万円+40万円=100万円
- 年間の元金返済:800万円÷10年=80万円
- 返済後の余裕:100万円−80万円=20万円
利息は経費として税引後利益の計算に含まれています。新しく買う設備の減価償却費が増える場合は、その分も見込んで計画を作ります。
ツール減価償却費を定額法で計算する設備の取得価額と耐用年数から、返済の原資に足し戻す毎年の減価償却費を確認できます。計算する
金融機関は、借入金の総額をキャッシュフローで返すと何年かかるか(債務償還年数)も見ています。目安は業種によって違うため、業種別の財務指標の目安で同業の水準を確認すると、説明の準備になります。
自己資金はいくら必要?割合の目安と見せ金の注意
自己資金は、返済の負担を軽くするだけでなく、計画的に準備してきたことを示す材料になります。日本政策金融公庫のよくある質問では、自己資金は審査の重要な要素とされ、平均は2割程度と案内されています。
自己資金が多いほど融資額を抑えられ、返済の負担も軽くなります。前の節の表のように、同じ1,000万円の設備でも自己資金を300万円入れれば、融資額は700万円、10年で返す元金は年約70万円に下がります。審査では、事業への本気度を示す材料としても評価されることがあります。
見せ金は通帳の履歴で分かる
申込みの直前に親族などから借りて一時的に口座に入れたお金(見せ金)は、自己資金として扱われません。通帳の入出金の履歴で、少しずつ貯めてきた資金かどうかが確認されます。親から援助を受ける場合は、贈与か借入れかを書面で明確にしておきます。贈与なら、年110万円の基礎控除を超える部分に贈与税がかかります。
自己資金が少ない場合でも、日本政策金融公庫の創業者向けの融資制度など、比較的柔軟な条件で利用できる制度があります。この場合も、具体的な事業内容と収益見込みを示した事業計画が重要な判断材料です。創業時の計画の立て方は、創業計画と融資の準備のポイントで紹介しています。
資金使途と事業計画書はどう示す?審査で伝わる数字の作り方
資金使途は「設備資金」と「運転資金」に分けて説明します。設備資金は見積書で金額を示し、運転資金は、売上が入金されるまでに立て替えるお金を計算で示します。
| 資金の種類 | 説明のしかた | 添える資料 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 何を・いくらで・いつ買うか。その設備で売上や利益がどれだけ増えるか | 見積書、カタログ、設置場所の資料 |
| 運転資金 | 売上が入金されるまでに立て替える仕入代金・人件費・経費の額 | 資金繰り表、取引条件(締め日・支払日・入金日)の一覧 |
| つなぎ資金 | 補助金や大口の売上が入金されるまでの一時的な不足 | 補助金の交付決定通知、入金予定の資料 |
売上の計画は「客単価×客数×営業日数」や「受注件数×平均単価」のように分解し、それぞれの数字に実績・見積り・商圏などの根拠を添えます。経費は、家賃や人件費などの固定費と、売上に比例する変動費に分けると、損益の見通しを説明しやすくなります。
融資の目的を明確にし、必要な額・期間・条件を自社の状況に合わせて検討することが出発点になります。資金繰り表を作成して資金の流れを見える化し、返済計画を具体的に立てておくと、金融機関への説明もしやすくなります。
借りたお金を申込みと違う目的に使わない
設備資金として借りたお金を運転資金や別の支払いに回すと、資金使途の違反として、残りの一括返済を求められることがあります。次の融資の審査でも不利になるため、計画を変えるときは事前に金融機関に相談します。
融資の流れは?申込みから実行までと準備する書類
- 相談・申込み金融機関の窓口で資金の使い道と金額を伝え、必要な書類を確認します。
- 書類の提出決算書・確定申告書、試算表、事業計画書、見積書などを提出します。
- 面談・審査事業の内容、計画の根拠、返済の見通しを説明します。店舗や設備の現地確認がある場合もあります。
- 融資条件の提示金額・金利・返済期間・据置期間・保証や担保の有無が示されます。
- 契約の締結提示された返済条件と金利をよく確認し、自分の事業計画に合っているかを判断して契約します。
- 融資の実行と報告入金されたら計画どおりに使い、領収書などで使い道を説明できるようにしておきます。
- 直近の決算書・確定申告書(複数期分)と、今期の試算表
- 資金繰り表と、借りた後の返済計画
- 売上・経費の根拠を付けた事業計画書
- 設備の見積書と、運転資金の計算の根拠
- 既存の借入金の一覧と返済予定表
- 納税証明書など、税金を納めていることが分かる書類
信用情報に延滞などの問題があると、金融機関がリスクを感じて融資に慎重になる場合があります。クレジットカードや携帯電話の分割払いの延滞も信用情報に記録されるため、申込みの前に、信用情報機関への開示請求で自分の記録を確認しておくと安心です。
どこから借りる?日本政策金融公庫・制度融資・保証協会の使い分け
| 借入先 | 特徴 | 主な内容(2026年10月時点) |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫(新規開業・スタートアップ支援資金) | 創業期から使いやすい政府系の融資 | 開業前からおおむね7年以内。限度7,200万円、設備資金20年以内・運転資金10年以内(据置5年以内)。申告2期未了は原則無担保・無保証人 |
| 信用保証協会付きの融資(銀行・信用金庫) | 保証協会の保証を付けて民間の金融機関から借りる | 責任共有制度で保証割合は原則80%。創業関連保証は保証協会が全額を保証し、北海道の協会では限度3,500万円・保証料率0.86% |
| 札幌市の融資制度(マル札資金・特別資金) | 市が利率や保証料の一部を支援する制度融資 | 2026年10月1日以降の実行分は利率が0.3%上乗せ。創業・雇用創出支援資金は限度5,000万円で、保証料の1/4以内を補給 |
| 北海道中小企業総合振興資金 | 北海道の制度融資 | 創業貸付は限度3,500万円・期間1〜10年・固定1.8〜2.4%(2026年10月1日現在)。創業貸付【スタートアップ】は経営者の個人保証が不要 |
経営者保証を付けずに借りる方法も広がっています。保証協会の「事業者選択型経営者保証非提供制度」(2024年3月15日開始)は、上乗せの保証料(0.25%または0.45%)を払うことで経営者保証を外せる制度です。公庫の創業融資の経営者保証免除特例は、上乗せの利率がかかりません(2026年10月3日閲覧)。
札幌市内で創業する場合に使える支援
札幌中小企業支援センターや札幌商工会議所で特定創業支援等事業の支援を受けて証明書をもらうと、公庫の利率の引下げや、創業関連保証を開業の6か月前から使えるなどの効果があります。証明書の有効期限は2027年3月31日です。
公庫と制度融資を組み合わせる、創業時は公庫で借りて実績ができてから銀行との取引を広げるなど、順番の組み立て方で条件が変わります。借入先ごとの特徴は融資・資金調達ガイドで借入先の選び方を確認すると整理できます。
どの制度が合うかは、創業の時期・業種・必要額・保証の条件で変わります。初回無料で、申込みの順番から一緒に整理できます。
無料で相談する補助金を使う設備投資は、後払いの資金繰りを先に組む
補助金は、交付決定の後に事業を実施し、実績報告と検査を経てから入金される後払いが原則です。採択は入金の約束ではないため、事業を実施する間の支払いは、自己資金かつなぎの融資でまかないます。補助金を前提にした設備投資は、融資の申込みと日程を合わせて計画します。
| 補助金(2026年度の名称) | 主な内容 | 受付の時期 |
|---|---|---|
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 革新的な新製品・サービスや新事業への設備投資など | 第1回の受付は2026年9月30日〜10月30日18時 |
| デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) | ITツールの導入。通常枠は5万〜450万円・補助率1/2 | 第6次の締切は2026年10月30日17時 |
| 小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠/創業型) | 販路開拓の取組み。通常枠は上限50万円・補助率2/3 | 通常枠第20回と創業型第4回の受付は2026年11月5日〜12月15日17時 |
補助金で取得した設備は、圧縮記帳を使うと、受け取った年に補助金の全額が課税される負担を将来に繰り延べられます。その分だけ設備の取得価額が下がり、毎年の減価償却費が少なくなる仕組みです。融資の返済計画を作るときは、補助金の入金時期と、圧縮記帳後の償却費の両方を織り込みます。
審査で不利になりやすいことと、借りた後に評価を上げる方法
| 不利になりやすいこと | 理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 税金・社会保険料の滞納 | 納税証明書などで確認され、資金繰りの悪化とみなされる | 申込みの前に納付するか、分納の手続きを済ませて説明できるようにする |
| 個人の信用情報の延滞 | 返済への姿勢が問われる | 延滞を解消し、開示請求で記録を確認しておく |
| 事業と家計のお金の混在 | 本当の利益と資金の流れが分からない | 事業用の口座とカードを分ける |
| 決算書の役員貸付金・仮払金 | 会社のお金が社長個人に流れていると見られる | 精算や返済の計画を立て、内容を説明できるようにする |
| 根拠のない売上計画 | 返済の見通しが信用されない | 実績・見積り・商圏などの根拠を添える |
融資後も返済実績を積み重ね、金融機関と日頃からコミュニケーションを取っておくことは、次回以降の資金調達にもつながります。決算書の提出に加えて、半期や四半期ごとに試算表を届けておくと、業績の変化を早く共有できます。事業の短期・長期の目標を事業計画書で示すことも、融資の判断材料の一つです。
借換えで返済の負担を軽くできるか確かめる
返済実績を積んで業績が安定すると、より低い金利への借換えを相談できる場合があります。借換えは、毎月の返済額だけでなく、手数料や保証料を含めた総額で比べます。
計算例:借換えで総返済額はどれだけ変わる?
例えば、借入残高1,000万円・残り5年(60回)を、金利2.5%から1.5%へ借り換える場合です(元利均等返済の概算)。
- 金利2.5%:毎月の返済は約177,500円、総返済額は約1,065万円、利息の合計は約65万円
- 金利1.5%:毎月の返済は約173,100円、総返済額は約1,039万円、利息の合計は約39万円
- 差額:毎月177,500円−173,100円=4,400円、総返済額では1,065万円−1,039万円=26万円の減少
実際は、借換え時の手数料・保証料・印紙代などで実質的なメリットは変わります。
よくある質問
赤字の決算でも融資は受けられますか?
赤字の理由が一時的な要因によるもので、改善の見通しと資金繰り表を示せる場合は、検討の対象になることがあります。赤字が続いている場合や、負債が資産を上回っている場合は、改善策の具体性と返済の見通しがより厳しく問われます。
個人事業主と法人で、審査の見られ方は違いますか?
個人事業主は確定申告書(青色申告決算書)で審査され、事業の利益から生活費を払う前提で返済余力が見られます。住宅ローンなど個人の借入れや家族の収入も確認されます。法人は決算書に加えて、代表者個人の資産や借入れの状況もあわせて見られます。
融資を断られた後、すぐに別の金融機関に申し込んでもよいですか?
申込み自体は可能ですが、断られた理由(資金使途・返済余力・信用など)を確かめずに申込みを重ねても、結果は変わりにくいものです。理由に合わせて計画や資料を見直し、自己資金を増やす、借入額を見直すなどしてから申し込みます。
融資の準備を税理士に相談するメリットはありますか?
決算書・試算表・資金繰り表・事業計画書の数字が互いに整合しているかを確認でき、金融機関に説明しやすい資料を作れます。当事務所では、顧問契約の中で月次の試算表と資金繰りを整え、融資の相談に使える形にする支援をしています。
まとめ
融資審査のポイントは、キャッシュフローで返せる計画か、資金使途と金額に根拠があるか、自己資金と信用に問題がないかの3点です。公庫・保証協会付きの融資・札幌市や北海道の制度融資の特徴を知り、補助金を使う場合は後払いの資金繰りまで組んでおくと、希望する条件に近づけます。借りた後も試算表の提出と返済実績で信頼を積み重ねることが、次の資金調達につながります。
札幌の公認会計士・税理士事務所
融資・資金繰りのご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
