塗装業で独立するときは、開業から1か月以内の開業届と、原則2か月以内の青色申告承認申請書をまず税務署に出します。あわせて、1件の請負金額が税込500万円以上の塗装工事を受けるなら建設業許可(塗装工事業)が必要で、インボイス登録は元請や取引先の構成で判断します。
この記事の結論
開業時に出す書類は数点に絞られ、期限を押さえれば難しくありません。塗装業ならではの論点は、建設業許可の500万円基準、元請からのインボイス登録の要請、一人親方の労災の備えの3つです。
- 開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は原則2か月以内(1月15日以前の開業はその年の3月15日まで)
- 塗装工事は建設業法の「塗装工事業」。1件の請負金額が税込500万円以上なら許可が必要(500万円ちょうども必要)
- 元請が法人の下請工事は登録を求められやすく、個人宅の塗装が中心なら登録しない選択もある
- 2割特例は個人では令和8年分まで。令和9・10年分は個人事業者向けの3割特例がある
- 一人親方は労災保険の特別加入を検討し、材料費・外注費の管理と帳簿づけの体制を開業時に整える
塗装業の開業で税務署に出す届出は?期限の一覧
個人で塗装業を始めるとき、まず提出するのが「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)です。提出先は納税地を所轄する税務署で、開業の日から1か月以内が期限です。届出に費用はかからず、税務署の窓口・郵送・e-Taxのいずれでも提出できます。
節税の面で重要なのが「所得税の青色申告承認申請書」です。青色申告特別控除や赤字の繰越しなどのメリットがあり、開業届と一緒に出しておくと手間が省けます。そのほかの届出は、家族や従業員に給与を払うか、消費税の課税事業者になるかで必要かどうかが決まります。
| 届出書 | 提出期限 | 出す人・ポイント |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 開業の日から1か月以内 | 個人で開業するすべての人 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は、開業の日から2か月以内) | 青色申告をする人。期限を過ぎるとその年は白色申告になる |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 専従者給与を経費にしたい年の3月15日まで(1月16日以後の開業や、新たに専従者ができた場合は2か月以内) | 一緒に働く家族に給与を払い、経費にしたい人 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 給与支払事務所等を開設した日から1か月以内 | 従業員や家族に給与を払う人 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時。提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から特例が適用 | 給与の支払いを受ける人が常時10人未満の場合。源泉税の納付が、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日の年2回になる |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | 登録したい時期に合わせて提出。課税期間の途中の登録は、提出日から15日以降の希望日を登録日にできる | インボイスを発行する人 |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 適用したい課税期間の初日の前日まで(事業を始めた課税期間は、その課税期間中) | 課税事業者で、簡易課税を選ぶ人 |
個人事業税は北海道の税のため、北海道への開業の申告(事業開始等の申告)も求められます。提出先と様式は北海道の案内で確認してください。塗装工事は多くの場合、請負業として税率5%の区分に当たり、事業主控除290万円を超える所得に個人事業税がかかります。
建設業許可は必要?500万円の判定方法
塗装工事は、建設業法上の29業種のうち「塗装工事業」に区分されます。塗料や塗材の吹付け・塗付けのほか、鋼構造物塗装工事や路面標示工事なども含まれます。一定規模以上の工事を請け負うには、この区分での建設業許可が必要です。
許可が要らないのは「軽微な建設工事」に限られます。塗装工事の場合、1件の請負金額が税込500万円未満であれば、原則として許可なく請け負えます。税込500万円ちょうど、またはそれ以上になると許可が必要です。
具体例:許可が必要かどうかの判定
例えば、戸建ての外壁塗装で請負金額が税込480万円なら、許可は不要です。一方、マンション1棟の塗装を税込600万円で請け負うなら、塗装工事業の許可を受けていることが前提になります。
| 間違えやすい点 | 判定の考え方 |
|---|---|
| 税込か税抜か | 消費税を含めた請負金額で判定する |
| 注文者が材料を支給する場合 | 支給された材料の市場価格と運送費を、請負金額に加えて判定する |
| 工事を分けて契約した場合 | 正当な理由なく契約を分けても、合計額で判定する |
| 追加工事・変更工事 | 当初の工事と一体のものは、合計で500万円以上にならないかを確認する |
営業所が北海道内だけにある場合は北海道知事の許可、2つ以上の都道府県に営業所を置く場合は国土交通大臣の許可になります。許可には、経営業務の管理体制や営業所ごとの技術者などの要件があります。一般建設業の許可では、財産的基礎として自己資本500万円以上か、500万円以上の資金調達能力などが求められます。
元請会社から「許可業者であること」を取引条件にされる場面も増えています。開業時点で許可がなくても、受注の見込みに合わせて許可を取る時期を決め、開業資金の計画にも組み込んでおくと、仕事の幅を広げやすくなります。
消費税とインボイス登録はどう判断する?
開業当初は、原則として消費税の納税義務が免除される免税事業者になるのが一般的です。消費税の納税義務は、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら免除されます。ただし、前年の1〜6月の売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります(この判定は給与等の支払額で行うこともできます)。
一方で、取引先がインボイス(適格請求書)を求める場合は、登録して課税事業者になるかの検討が必要です。元請が法人で、こちらが下請という関係では、特に判断が分かれます。
登録を検討しやすいケース
- 法人の元請からの下請工事が中心
- 工務店・リフォーム会社・管理会社からの受注が多い
- 取引先から登録番号の提示を求められている
登録しない選択も考えられるケース
- 個人宅の外壁・屋根の塗装が中心(施主が消費者)
- 主な取引先がインボイスなしでも困らないと確認できた
- 売上の規模が小さく、登録後の納税負担が重い
免税事業者のまま取引を続ける場合、元請が支払った消費税のうち控除できる割合は、経過措置によって段階的に下がります。元請の負担が増えるため、単価の交渉や登録の要請につながることがあります。
| 課税仕入れの時期 | 免税事業者からの仕入れで元請が控除できる割合 |
|---|---|
| 2026年9月30日まで | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | 控除できない |
登録した場合の負担を抑える制度として「2割特例」があります。免税事業者が登録して課税事業者になった場合に、納める消費税を売上にかかる消費税の2割にできる特例です。対象は2026年9月30日を含む課税期間までで、個人では令和8年分が最後です。令和9・10年分は、個人事業者だけを対象に、納める消費税を売上の消費税の3割にできる「3割特例」が設けられ、届出は不要です。
簡易課税を選ぶ場合、塗装工事は建設業として第3種(みなし仕入率70%)に当たります。ただし、元請から材料の無償支給を受けて施工だけを行う、いわゆる手間請けの工事は第4種(60%)になる点に注意が必要です。制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドで確認できます。
無料ツールインボイス経過措置の影響を計算する免税事業者からの仕入れで、取引先が控除できる消費税の額を時期別に確認できます。計算する 無料
ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比較する売上と経費を入れると、どの計算方法で納める消費税が少なくなるかの目安が分かります。計算する
インボイス登録の要否と、2割特例・3割特例・簡易課税のどれが有利かは、取引先と売上の構成で変わります。初回無料で試算できます。
無料で相談する塗装業の経理で開業時から整えたいことは?
材料費や外注費が多い塗装業では、経費の管理体制づくりが利益確保の鍵です。開業当初から帳簿づけの仕組みを整えると、確定申告や資金繰りの把握が楽になります。塗装業で特に押さえたい論点は次のとおりです。
| 論点 | 塗装業でよくある場面 | 処理と注意点 |
|---|---|---|
| 塗料・材料の在庫 | 年末に使いかけの塗料や未使用の材料が残る | 年末に棚卸しをして、残った分は売上原価から除き、翌年の経費にする |
| 年をまたぐ工事 | 12月に着工し、翌年1月に完成・引渡しをする | 売上は原則として引渡しの日に計上する。それまでにかかった材料費・外注費は未成工事支出金として翌年に回す |
| 着手金・前受金 | 着工前に着手金を受け取る | 受け取った時点では売上にせず、引渡しの時点で売上にする |
| 外注費と給与の区分 | 職人に日当で支払っている | 指揮命令や時間の拘束、道具の負担などから、外注(請負)か給与(雇用)かを判断する。給与なら源泉徴収が必要 |
| 足場・機械の購入 | 足場材、エアレス塗装機、高圧洗浄機を買う | 10万円未満は経費、20万円未満は3年で均等に経費化も可。青色申告なら40万円未満(2026年4月1日以後の取得)を年300万円まで一括で経費にできる |
| 車両 | 軽トラックやワンボックス車を使う | 事業用は減価償却する。家事と兼用なら、使用の割合で按分する |
開業準備のために支出したチラシ・名刺の作成費や、打合せの交通費などは「開業費」として資産に計上し、開業後の好きな時期に経費にできます。開業前に買った車両や機械は、事業に使い始めた時点から減価償却します。
青色申告特別控除は、令和8年分までは最大65万円(正規の簿記・期限内の申告・電子帳簿保存かe-Taxでの提出)で、令和9年分からは要件を満たすと75万円になります。会計ソフトでの記帳とe-Taxでの申告を最初の年から習慣にしておくと、控除を取りこぼしません。経費や控除の使い方は節税の一覧(法人・個人)も参考になります。
労災・社会保険・国民健康保険の手続きは?
税務以外にも、事業用の銀行口座の開設、国民健康保険・国民年金への切り替え、労災保険の検討など、開業時にやるべきことは複数あります。塗装業は足場や高所での作業を伴うため、労災の備えは特に重要です。
- 会社を辞めて独立する場合は、国民健康保険・国民年金への切り替えを、退職の翌日から14日以内を目安に住所地の市区町村で行う(健康保険の任意継続を選ぶ方法もある)
- 一人親方は、労災保険の特別加入を特別加入団体を通じて検討する。元請の現場に入る際に、加入の確認を求められることがある
- 従業員を雇ったら、労災保険と雇用保険の手続きを行う。雇用保険料率は、建設の事業で16.5/1000(2026年4月1日〜2027年3月31日)
- 個人事業でも、建設業など法定の業種で常時5人以上を使用する場合は、健康保険・厚生年金保険の強制適用になる
- 事業用の口座とクレジットカードを分け、売上の入金と材料・外注の支払いを事業用に集約する
札幌で塗装業を開業するときの窓口と資金
開業届などの提出先は、住所地(納税地)を所轄する税務署です。札幌市内は区によって管轄の税務署が分かれます。
| 税務署 | 主な管轄区域 |
|---|---|
| 札幌中税務署 | 中央区の一部(おおむね西10丁目以東) |
| 札幌北税務署 | 北区・東区・石狩市・石狩郡 |
| 札幌南税務署 | 豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市 |
| 札幌西税務署 | 中央区の一部(大通西11丁目以西・円山・宮の森など)・西区・手稲区 |
| 札幌東税務署 | 白石区・厚別区・江別市 |
札幌・北海道で開業する場合のポイント
2026年7月10日から、札幌市内5署の内部事務は札幌業務センターに集約されました。書面を郵送する場合の送付先は、〒060-8510 札幌市中央区大通西10丁目 札幌第2合同庁舎内の同センターです。e-Taxでの提出や窓口への持参は、これまでどおり所轄の税務署です。
北海道では、低温や降雪の時期は外装の塗装工事がしにくく、売上が春から秋に偏りやすくなります。冬の間の仕事の確保(内装の塗装など)と、繁忙期の利益から納税資金を取り分けておく資金繰りを、開業時から計画しておきましょう。人を雇う場合、北海道の最低賃金は2026年10月1日から1,131円です。
開業資金は、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(限度7,200万円)や、札幌市・北海道の制度融資が選択肢です。札幌市の融資は2026年10月1日以降の実行分から利率が0.3%上がっています。札幌中小企業支援センターや札幌商工会議所の特定創業支援等事業を受けると、公庫の利率の引下げや創業関連保証の特例を受けられます。法人を札幌市内で設立する場合は、登録免許税が半分(株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円)になります。
創業の相談窓口には、さっぽろ創業支援プラザ(011-200-5511)や札幌商工会議所(011-231-1768)があります(2025年12月25日現在の案内)。届出の期限管理や許可取得の見通しまで含め、開業前に全体像を整理しておくとつまずきにくくなります。
よくある質問
開業届を出す前に、仕事を始めてしまいました。どうすればよいですか?
期限を過ぎても開業届は提出できます。開業日には、実際に事業を始めた日を記入します。青色申告承認申請書の期限を過ぎた場合、その年は白色申告になり、翌年の3月15日までに申請すれば翌年分から青色申告にできます。
自動車の板金塗装で独立する場合も同じですか?
税務署への届出は同じです。ただし、自動車の板金塗装は建設工事に当たらないため、建設業許可は関係しません。消費税の簡易課税では、自動車の修理はサービス業として第5種(みなし仕入率50%)に当たるのが一般的です。
最初の確定申告はいつですか?
開業した年の分を、翌年の2月16日から3月15日までに申告します。令和8年分は2027年2月16日(火)〜3月15日(月)です。インボイス登録などで消費税の課税事業者になった場合、令和8年分の消費税の申告・納付期限は2027年3月31日(水)です。
個人で始めるのと、法人で始めるのはどちらがよいですか?
売上と利益の見込み、元請から法人であることを求められるか、社会保険の負担で判断します。法人は役員1人でも健康保険・厚生年金保険の強制適用になります。札幌市内で資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の法人は、赤字でも法人住民税の均等割が年7万円かかります。まず個人で始め、利益が安定してから法人化を検討する方法もあります。
まとめ
塗装業で独立するときは、開業届(1か月以内)と青色申告承認申請書(原則2か月以内)を起点に、給与や消費税に関する届出を必要に応じて出します。税込500万円以上の塗装工事を受けるなら建設業許可が必要で、インボイス登録は取引先の構成と2割特例・3割特例・簡易課税の有利不利で判断します。労災の特別加入や材料・外注費の管理、冬季の資金繰りも、開業前に計画しておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
塗装業の開業・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。建設業許可の要件・手続きは北海道などの許可行政庁の案内で確認してください。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
