造園業で独立開業するときは、開業届を開業の日から1か月以内に、青色申告承認申請書を原則として開業から2か月以内に税務署へ出します。人を雇うなら給与支払事務所等の開設届も必要で、1件の請負代金が税込500万円以上の造園工事を受けるなら建設業許可も要ります。
この記事の結論
造園業の開業では、税務署への届出を期限内に出したうえで、建設業許可の要否とインボイス登録を、受ける工事の金額と取引先の構成から判断します。
- 開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は1月16日以後の開業なら開業の日から2か月以内
- 1件の請負代金が税込500万円以上(施主支給の材料費を含む)の造園工事には建設業許可が必要。剪定・草刈りだけの作業は建設工事に含まれない
- 造園会社やゼネコンの下請けが中心ならインボイス登録を検討し、個人宅が中心なら急がなくてよい場合もある
- 冬期の売上減を前提に、繁忙期の利益を閑散期に回す資金計画を開業時から立てる
造園業の開業で税務署に出す届出は?
個人で造園業を始めるときに税務署へ出す主な届出は、次の表のとおりです。開業届と青色申告承認申請書は同時に出しておくと、期限の管理が楽になります。
| 届出 | 提出期限 | 必要な人 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 開業の日から1か月以内 | すべての人 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内) | 青色申告をしたい人 |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 原則その年の3月15日まで(1月16日以後の開業や、新たに専従者ができた場合はその日から2か月以内) | 家族に給与を払いたい人 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の日から1か月以内 | 職人やスタッフを雇う人 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時(提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から特例を適用) | 常時10人未満で、源泉所得税の納付を年2回にまとめたい人 |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 新たに事業を始めた課税期間は、その課税期間中 | 課税事業者で簡易課税を選ぶ人 |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | 任意(期中の登録は、提出日から15日以降の日を登録希望日にできる) | インボイスを発行したい人 |
届出書は、住所地(事業所を納税地にする場合はその所在地)を管轄する税務署に、e-Tax・郵送・窓口のいずれかで出します。北海道にも個人事業の開始を申告します。造園業は多くの場合、個人事業税の「請負業」(税率5%、事業主控除290万円)にあたります。
青色申告を選ぶと何が変わる?
青色申告を選ぶと、青色申告特別控除、赤字(純損失)の翌年以後への繰越し、家族に払う給与の経費算入などの特典を受けられます。造園業はトラックや機械への支出が先行しやすく、開業した年が赤字になることもあるため、最初の年から青色申告にしておく意味は大きくなります。
| 区分 | 令和8年分まで | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 最も大きい控除 | 65万円(正規の簿記+期限内申告+電子帳簿保存かe-Tax) | 75万円(65万円の要件+仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件で保存など) |
| 中間の控除 | 55万円(正規の簿記+貸借対照表・損益計算書の添付+期限内申告) | 65万円(旧55万円の要件+期限内のe-Tax) |
| 簡易な帳簿の場合 | 10万円 | 10万円(簡易簿記で前々年の収入が1,000万円を超える人は対象外) |
具体例:開業日と青色申告承認申請書の期限
例えば5月10日に開業した場合は、2か月後の7月9日までに提出すれば、その年分から青色申告ができます。1月10日に開業した場合は、その年の3月15日が期限です。
青色申告の65万円(令和9年分以後は75万円)の控除を受けるには、日々の取引を複式簿記で記帳し、期限内に申告する必要があります。開業初年度から会計ソフトで記帳しておくと、要件を満たしやすくなります。申告・納付の年間の予定は、個人事業主の年間スケジュールで確認できます。
職人やスタッフを雇うときの手続きは?
職人や季節雇用のスタッフに給与を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書を開設の日から1か月以内に出し、毎月の給与から源泉所得税を差し引いて納めます。納付は原則として翌月10日までですが、常時10人未満なら納期の特例で年2回(1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日)にまとめられます。
造園業では、繁忙期だけ職人に手伝ってもらう働き方がよくあります。作業の指示や時間の拘束を受け、道具を支給されて働くなら給与、仕事の完成を請け負って自分の道具で働くなら外注費というように、名目ではなく実態で区分されます。区分を誤ると源泉徴収や消費税の計算に影響するため、契約書や請求書の形をそろえておきます。
- 雇う前に、労働条件通知書(雇用契約書)で賃金・労働時間・雇用期間を明示する
- 時給は北海道の最低賃金(2026年10月1日から1,131円)を下回らないようにする
- 労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きを、労働基準監督署・ハローワークで行う
- 常時5人以上を雇う場合は、個人事業でも社会保険の強制適用になる業種にあたるかを年金事務所で確認する
最低賃金や社会保険の改正は毎年のように動きます。人を雇う段階では、人事労務・最低賃金・社会保険の最新情報もあわせて確認してください。
造園業に建設業許可は必要?500万円の判定
造園工事は、建設業法上の29業種のうち「造園工事業」に区分されます。整地、樹木の植栽、景石のすえ付けなどにより庭園・公園・緑地などをつくる工事や、建物の屋上などを緑化する工事が該当し、植栽工事・公園設備工事・屋上等緑化工事などが含まれます。一方、剪定・枝打ち・草刈りだけの作業は建設工事には含まれません。
許可がなくても請け負える「軽微な建設工事」は、造園工事の場合、1件の請負代金が税込500万円未満の工事です。500万円ちょうどは許可が必要で、判定には発注者が提供する材料費も含めます。契約を分割しても、正当な理由がなければ合算して判定されます。
| 区分 | 許可が不要な範囲(税込) |
|---|---|
| 造園工事(建築一式工事以外) | 1件500万円未満 |
| 建築一式工事 | 1件1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅 |
具体例:施主支給の樹木がある植栽工事
例えば請負代金150万円の植栽工事で、施主が樹木・資材400万円分を用意した場合、150万円+400万円=550万円となり、建設業許可が必要です。請負代金だけを見て判断しないように注意します。
個人庭の手入れや小規模な植栽が中心なら、許可なしで始められます。公共の緑地工事や造成を伴う大型の案件を狙う場合や、元請から許可を求められる場合は、早めに取得を検討します。
許可を取るときの要件と窓口
営業所が北海道内だけなら北海道知事の許可、2つ以上の都道府県に営業所を置くなら国土交通大臣の許可です。許可には、建設業の経営経験などの経営業務の管理体制、営業所ごとに置く技術者(造園施工管理技士などの資格者や、一定の実務経験がある人)、財産的基礎(一般建設業なら自己資本500万円以上など)といった要件があります。
要件の細かな判定や必要書類は、北海道の建設業許可の窓口で確認してください。許可を受けると、事業年度が終わるたびに決算の内容を届け出る義務(いわゆる決算変更届)も生じるため、帳簿は許可の書類にも使える形で付けておきます。
建設業許可の要否やインボイス登録の判断は、受ける工事の金額や取引先によって変わります。開業前の段階から、初回無料で確認できます。
無料で相談する消費税とインボイス登録はどう判断する?
個人事業者の消費税は、基準期間(前々年)の課税売上高で納税義務を判定します。開業した年と翌年は基準期間がないため原則として免税ですが、開業1年目の1〜6月(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額がどちらも1,000万円を超えると、2年目から課税事業者になります。
インボイス(適格請求書)を出すには登録が必要で、登録すると免税の期間中でも消費税の申告・納付が生じます。造園業は造園会社やゼネコンの下請けも多いため、取引先の構成で判断します。
登録を検討したい場合
- 造園会社・ゼネコン・ハウスメーカーなど課税事業者の下請けが中心
- 法人や公共施設の緑地管理を継続して受注する
- 元請からインボイスの発行を求められている
急がなくてよい場合
- 個人宅の庭づくり・手入れが中心
- 取引先が消費者や免税事業者
- 売上が小さく、当面は免税の範囲に収まる
登録していない下請けへの支払いでも、元請は経過措置で消費税の一定割合を控除できます。2026年10月1日〜2028年9月30日は70%、2028年10月1日〜2030年9月30日は50%と、割合は段階的に下がります。
無料ツールインボイス経過措置の控除額を計算する登録していない取引先への支払いで、元請が控除できる消費税額を期間ごとに確認できます。計算する
登録した場合の負担を軽くする特例もあります。2割特例は個人では令和8年分まで、令和9・10年分は登録しなければ免税事業者になる個人を対象に、売上税額の3割を納める3割特例が使えます(届出は不要)。制度の全体像はインボイス制度 完全実務ガイドにまとめています。
簡易課税を選ぶ場合、造園工事は建設業として第3種(みなし仕入率70%)です。ただし元請から材料の支給を受けて労務だけを提供する工事は第4種(60%)になり、剪定・草刈りなどの管理作業がどの区分になるかは作業の内容によって判断が分かれます。
無料ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比較する売上と経費を入れると、どの計算方法で消費税の納付額が少なくなるかを比べられます。計算する
札幌・北海道で造園業を開業する場合
届出の提出先は、住所地(事業所を納税地にする場合はその所在地)を管轄する税務署です。札幌市内は区ごとに5つの税務署に分かれています。
| 税務署 | 管轄 | 電話 |
|---|---|---|
| 札幌中税務署 | 中央区の一部(おおむね西10丁目以東) | 011-231-9311 |
| 札幌北税務署 | 北区・東区・石狩市・石狩郡 | 011-707-5111 |
| 札幌南税務署 | 豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市 | 011-555-3900 |
| 札幌西税務署 | 中央区の一部(大通西11丁目以西・円山・宮の森など)・西区・手稲区 | 011-666-5111 |
| 札幌東税務署 | 白石区・厚別区・江別市 | 011-897-6111 |
書面の届出書を郵送する場合、2026年7月10日からの送付先は札幌業務センター(〒060-8510 札幌市中央区大通西10丁目 札幌第2合同庁舎)です。e-Taxでの提出や窓口への持参は、所轄の税務署で扱います。
北海道の造園業は季節の波を前提に資金計画を
- 冬期は屋外の作業が減り、売上に季節変動が出やすい業種です。道内では、夏の植栽・手入れや、秋の冬囲い、春の撤去に仕事が集中することがあります。
- 冬の間も、車両の保険・リース料・倉庫の賃料などの固定費はかかります。繁忙期の利益から、冬の固定費と翌春の資材の仕入れ資金を先に取り分けておきます。
- 冬に除雪作業を請け負うなど、閑散期の仕事を組み合わせる造園業者もあります。売上の種類が増えたら帳簿で区分しておくと、消費税の判定や採算の把握に役立ちます。
札幌市内で創業する場合、開業前に札幌中小企業支援センターや札幌商工会議所の特定創業支援等事業(1か月以上・4回以上の支援)を受けると、日本政策金融公庫の利率の引下げや、創業関連保証を開業6か月前から使えるなどの効果があります。証明書の有効期限は2027年3月31日です。
開業前の支出と最初の1年の記帳は?
開業前に払った広告費や名刺代、打合せの交通費などは「開業費」として資産に計上し、開業後の好きな年に経費にできます。開業前に買ったトラックや刈払機などは、事業に使い始めた時点から減価償却の対象です。
青色申告の中小事業者は、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年300万円まで一括で経費にできます(2029年3月31日まで)。チェーンソーや高枝切りばさみ、小型の発電機など、造園業でよく使う道具はこの範囲に収まることが多いはずです。
- 事業用の口座とカードを分け、私的な支出と混ぜない
- 現場ごとに、樹木・資材の仕入れ、外注費、重機のリース料、燃料費を集計する
- 年をまたぐ工事は、原則として完成・引渡しの時に売上を計上し、年末に未完成の工事の原価は「未成工事支出金」として翌年に繰り越す
- 自社の畑で育てて販売する植木は、年末に棚卸資産として数量と金額を記録する
- メールやネットで受け取った請求書・領収書は、電子データのまま保存する(2024年1月1日以後は義務)
- 帳簿は7年間(書類の種類によっては5年間)保存する
造園業は、樹木・資材の仕入れ、外注費、現場ごとの経費の管理が利益を左右します。案件単位で収支をつかんでおくと、採算のよい仕事と、冬に向けて残すべき資金の額が見えてきます。
よくある質問
剪定や草刈りだけで開業する場合も、開業届は必要ですか?
必要です。建設業許可が要らない作業だけでも、事業として続けて行うなら開業届を出し、青色申告を選ぶなら承認申請書もあわせて出します。植栽工事などに広げる予定があれば、届出書の事業の内容にも書いておきます。
開業届を出し忘れていました。どうすればよいですか?
気づいた時点で提出します。開業届が遅れたことによる罰則はありませんが、青色申告承認申請書の期限を過ぎると、その年分は白色申告になります。開業日には実際に事業を始めた日を書きます。
元請から「インボイス登録をしないなら単価を下げる」と言われたら?
元請は経過措置により、登録していない下請けへの支払いでも一定割合の消費税を控除できます。取引条件の一方的な変更は、独占禁止法や下請法、建設業法上の問題になるおそれがあると国の資料でも示されているため、登録した場合の負担と単価をあわせて話し合います。
家族に手伝ってもらう場合、給与は経費になりますか?
青色申告なら、青色事業専従者給与に関する届出書を期限内に出し、届け出た範囲内で仕事の内容に見合った額であれば経費にできます。家族がその年を通じて6か月を超えて事業に専ら従事していることが要件です。白色申告では、事業専従者控除として一定額を差し引く仕組みになります。
まとめ
造園業の開業では、開業届(1か月以内)と青色申告承認申請書(原則3月15日、1月16日以後の開業は2か月以内)を同時に出し、人を雇うなら給与支払事務所等の開設届と納期の特例も準備します。建設業許可は1件税込500万円(施主支給の材料費を含む)で判定し、インボイス登録は取引先の構成で決めます。北海道では冬期の売上減を見込み、開業時から現場別の収支と資金計画を整えておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
造園業の開業・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁 タックスアンサー「個人事業者の税務」
- 札幌国税局「税務署の所在地・管轄区域」
- 国税庁「インボイス制度 令和8年度税制改正」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
