一人親方の開業届と税務の届出一覧|労災の特別加入・インボイスも確認

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一人親方として独立するときは、税務署へ開業届と青色申告承認申請書を出し、家族や職人に給与を払うなら給与支払事務所等の開設届も出します。あわせて労災保険の特別加入、元請から求められやすいインボイス登録の判断、請負と雇用の区分を最初に整理しておくと、開業後の申告や取引で迷いません。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

一人親方の開業手続きは、税務署への届出と労災保険の特別加入が柱です。そのうえで、元請との契約が「請負」として説明できるか、インボイスに登録するかを開業時に決めておきます。

  • 開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書はその年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)
  • 家族や職人に給与を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)と源泉所得税の納付が必要
  • 建設業の一人親方は通常の労災保険に入れないため、特別加入団体を通じて特別加入を検討する
  • 指揮監督や時間の拘束を受ける働き方は給与とみなされやすく、税金と消費税の扱いが変わる
  • 登録した個人は令和8年分まで2割特例、令和9・10年分は3割特例を使え、簡易課税なら建設業は第3種(70%)
目次

一人親方とはどんな立場?請負か雇用かで税金が変わる

一人親方とは、従業員を雇わず自分一人(または家族のみ)で事業を営む個人事業主のことです。大工・左官・塗装・内装・電気工事など建設関連の職種に多く、元請や上位の下請から工事を請負契約で受けるのが一般的です。

注意したいのは、「請負か雇用か」の区分が税務と社会保険の両面で問われる点です。実質的に指揮命令を受けて働いていると、受け取る報酬は事業所得ではなく給与所得とみなされることがあります。その場合、支払う側では外注費ではなく給与になり、源泉徴収が必要になるうえ、給与には消費税がかからないため仕入税額控除もできません。

判断の視点請負(事業所得)と判断されやすい雇用(給与所得)と判断されやすい
代わりの人が作業できるか自分の判断で他の職人に任せられる本人が作業することが前提
時間の拘束作業の時間配分を自分で決める作業時間を指定され、報酬が時間単位で計算される
指揮監督仕上がりの指示を受けるだけ作業の内容や方法を細かく指示される
完成前に壊れた場合すでに行った作業の報酬を請求できる働いた時間分の報酬が支払われる
材料・用具材料や工具を自分で用意する材料や工具を支払う側から渡される
国税庁の通達「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」の視点をもとに整理。実際は契約と働き方の実態を総合して判断します

判断は一つの要素ではなく、全体の実態で行われます。開業前に元請との契約の形を確認し、工事ごとに注文書・請書や請求書を残しておくと、税務調査でも請負であることを説明しやすくなります。釘などの軽微な材料や手持ちの電動工具程度の用具を渡されることは、それだけで雇用とされる要素にはなりません。

開業時に税務署へ出す届出は?期限と必要になる人

個人事業主として開業するときに提出が必要な届出、または出しておくと有利な届出は次のとおりです。提出先は、原則として住所地を管轄する税務署で、e-Taxでも提出できます。

届出書類提出の期限必要な人・ポイント
個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)開業の日から1か月以内全員。青色申告承認申請書と同時に出すのが一般的
所得税の青色申告承認申請書その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)青色申告特別控除(令和8年分までは最大65万円)を使いたい人
青色事業専従者給与に関する届出書専従者給与を経費にしたい年の3月15日まで(1月16日以後の開業や、新たに専従者がいることになった場合は、その日から2か月以内)家族に給与を払う人
給与支払事務所等の開設届出書開設の日から1か月以内家族(専従者)や手伝いの職人に給与を払う人
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書随時。提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から特例給与を払う人が常時10人未満なら、源泉所得税の納付を年2回(1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日)にできる
適格請求書発行事業者の登録申請書任意。年の途中の登録は、提出日から15日以降の日を登録希望日にできる元請からインボイスを求められる人
消費税簡易課税制度選択届出書適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(開業した課税期間は、その課税期間中)登録した人が簡易課税で計算したい場合
一人親方の開業時の主な届出(2026年10月時点の法令に基づく)

青色申告承認申請書は、1月16日以後に開業した場合、開業の日から2か月以内に提出しないと、その年は白色申告になり特別控除を受けられません。開業届とあわせて早めに出しておきます。税務署とは別に、北海道(道税事務所)への個人事業の開始の申告も必要です。

専従者給与にも源泉徴収が必要

家族に払う青色事業専従者給与も給与なので、毎月の支払いから源泉所得税を差し引いて納付します。家族だけを雇う一人親方でも、給与支払事務所等の開設届出書と納期の特例の申請を出しておくと、納付の手間を減らせます。

労災保険の特別加入:一人親方に特有の手続き

一人親方は原則として労働者に当たらないため、通常の労災保険には加入できません。ただし、建設業の一人親方は特別加入制度を使うことで、労災保険の補償を受けられます。特別加入は、都道府県労働局長の承認を受けた「一人親方等の団体(特別加入団体)」を通じて手続きします。

  • 特別加入すると、業務中・通勤中のけがや病気に労災保険が適用される
  • 保険料は、自分で選ぶ「給付基礎日額」(3,500円〜25,000円の範囲)をもとに計算され、高い日額ほど補償も保険料も大きくなる
  • 元請から加入の証明を求められることがあるため、現場に出る前に加入を済ませておく
  • 団体に払う金額は、保険料と入会金・会費・事務手数料に分けて記録する

特別加入は法律上の義務ではありませんが、元請や現場のルールで加入を求められることがあります。確定申告では、本人の特別加入の保険料と、団体の会費・事務手数料で扱いが変わることがあるため、団体の領収書を保管し、申告の前に内訳を確認しておきます。

健康保険と年金は、国民健康保険(または建設業の国民健康保険組合)と国民年金に加入します。老後に備える制度として、iDeCo(個人型確定拠出年金)の第1号の掛金の上限は、2026年11月拠出分まで月6.8万円、12月拠出分から月7.5万円(国民年金基金などと合算)に上がります。最新の動きは「人事労務・社会保険の最新情報」でまとめています。

インボイスは登録すべき?元請との取引で判断する

一人親方の取引先は、元請や上位の下請などの事業者がほとんどです。事業者は仕入税額控除のためにインボイスを求めるため、登録を求められる場面は少なくありません。一方、個人の施主から直接リフォームを請け負う仕事が中心なら、インボイスを求められることはほとんどありません。

開業から2年間は、判定に使う基準期間(前々年)の売上がないため、原則として消費税の免税事業者です。ただし、インボイスに登録すると売上の額にかかわらず消費税の申告と納税が必要になります。登録しない場合も、元請は経過措置によって、2026年10月1日〜2028年9月30日の取引なら消費税相当額の70%を控除でき、2028年10月1日以後は50%に下がります。

計算例:売上の消費税が50万円の一人親方が登録した場合

例えば、売上が税抜500万円で、売上にかかる消費税が500万円×10%=50万円の一人親方が登録した場合の納付税額です。

  • 2割特例(令和8年分まで):50万円×20%=10万円
  • 3割特例(令和9・10年分):50万円×30%=15万円
  • 簡易課税・第3種(建設業、みなし仕入率70%):50万円×30%=15万円
  • 簡易課税・第4種(材料の無償支給を受けて労務だけを提供する工事、みなし仕入率60%):50万円×40%=20万円

※税額は国税と地方消費税の合計で、端数処理は省略しています。

2割特例・3割特例は、登録しなければ免税事業者になる個人が使える特例で、届出は不要です。3割特例は個人事業者だけが対象で、法人には後継の特例がありません。材料を元請から支給される「手間請け」が中心の一人親方は、簡易課税では第4種になる点に注意します。登録の判断と実務の全体は「インボイス制度の実務ガイド」で確認できます。

登録するか、どの計算方法を選ぶかは、元請の構成と手間請けの割合で変わります。開業前に初回無料で確認できます。

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建設業許可など、仕事の内容で必要になる手続きは?

軽微な建設工事(請負代金が一定額未満の工事)だけを請け負う場合は、建設業許可は不要です。それを超える工事を請け負うには、建設業の許可が必要になります。営業所が北海道内だけにある個人は北海道知事の許可となり、金額の基準は工事の種類で異なるため、受注の見込みがあれば早めに許可の窓口で確認します。

電気工事や解体工事など、工事の種類によっては資格や別の登録が必要になることもあります。元請から許可や登録の有無、労災の特別加入、インボイスの登録番号をまとめて確認されることもあるため、書類をそろえておくと取引の開始がスムーズです。

開業前の支出と、最初の1年の経費・記帳はどうする?

開業前に使った名刺・チラシの作成費や、開業の準備のための交通費などは「開業費」として資産に計上し、開業後の好きな年に経費にできます。開業前に買った工具や車両は、事業に使い始めたときから資産として扱います。

主な経費注意点
材料費・消耗品元請の材料を立て替えた分は、自分の経費と分けて記録する
工具・機械10万円未満はその年の経費。20万円未満は3年で均等に経費にでき、青色申告なら2026年4月1日以後の取得は40万円未満まで年300万円の範囲で一括して経費にできる(2029年3月31日まで)
車両(軽トラック・ワゴンなど)減価償却する。私用にも使うなら走行距離などで按分する
現場までの交通費・駐車場代・高速代現場名と日付を記録しておく
外注費(応援の職人への支払い)相手の働き方によっては給与とされ、源泉徴収が必要になる
携帯電話・作業着・安全靴私用と兼ねるものは使用割合で按分する
一人親方の主な経費と注意点(2026年10月時点)
無料
ツール
40万円未満の工具を一括で経費にできるか計算する少額減価償却資産の特例を使った場合の経費の額と、年300万円の枠の残りを確認できます。計算する
  • 事業用の口座とカードを分け、元請からの入金と材料・燃料の支払いをそこに集める
  • 請求書の控えと入金を毎月照らし合わせ、未入金や差引き(協力会費・振込手数料)を確認する
  • 現金で払った経費のレシートは月ごとにまとめ、ネットで受け取った領収書は電子データのまま保存する
  • 会計ソフトで記帳し、青色申告特別控除の要件(e-Taxでの申告など)を満たせるようにする

青色申告特別控除は、令和8年分までは正規の簿記で記帳し期限内にe-Taxで申告するなどの要件で65万円、令和9年分からは仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件で保存するなどの要件を満たすと75万円になります。令和8年分の確定申告は2027年2月16日〜3月15日です。前年の所得税額をもとにした予定納税(基準額15万円以上)や、北海道から届く個人事業税(請負業の場合は税率5%、事業主控除290万円)の納付も見込んで、毎月の入金から納税資金を分けておきます。年間の流れは「個人事業主の年間スケジュール」で確認できます。

売上が伸びて所得税の負担が重くなってきたら、法人にした場合との差も早めに確かめておくと、次の一手を考えやすくなります。

無料
ツール
個人事業と法人の負担を比べる個人事業のまま・法人化・併用の場合の税金と社会保険料を、所得の水準ごとに比べられます。計算する

北海道で一人親方として開業する場合の注意点

開業届などの提出先は、住所地を管轄する税務署です。市内の住所なら区によって提出先が分かれます。

住所地所轄の税務署
北区・東区・石狩市・石狩郡札幌北税務署
豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市札幌南税務署
白石区・厚別区・江別市札幌東税務署
西区・手稲区・中央区の一部(大通西11丁目以西、円山・宮の森・伏見・旭ケ丘・中島公園など)札幌西税務署
中央区の一部(おおむね西10丁目以東)札幌中税務署
市内の税務署の管轄(2026年10月時点。中央区の個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認してください)

書面の提出先と冬の資金管理

2026年7月10日からは、市内の5つの税務署に書面で出す届出書や申告書は、札幌業務センター(中央区大通西10丁目 札幌第2合同庁舎)へ郵送します。e-Taxでの提出や窓口への持参は、これまでどおり所轄の税務署です。

道内の屋外工事は冬に減りやすく、除雪作業の請負などに仕事が変わる人もいます。除雪を請負で受けた収入も、事業所得に含めて申告します。冬に入金が細る前提で、春から秋の入金から国民健康保険料や予定納税の資金を分けておくと、資金繰りが安定します。

よくある質問

開業届を出さずに働いていても問題ありませんか?

開業届を出していなくても、一定以上の所得があれば確定申告は必要です。開業届は青色申告承認申請書と同時に出すのが一般的で、事業を営んでいることを示す書類として、口座の開設や融資の場面で求められることもあります。開業の日から1か月以内を目安に提出しておきましょう。

元請から「インボイスに登録しないなら単価を下げる」と言われました。どうすればよいですか?

免税事業者であることを理由にした一方的な単価の引下げは、建設業法や独占禁止法上の問題になり得ます。元請も経過措置で一定割合(2026年10月1日〜2028年9月30日の取引は70%)を控除できるため、負担の増え方を数字で示して協議するのが基本です。登録した場合の納税額とあわせて比べて判断します。

家族に手伝ってもらう場合、給与は経費になりますか?

青色申告で「青色事業専従者給与に関する届出書」を出していれば、届け出た範囲で、実際の仕事に見合う額を経費にできます。専従者給与を受ける家族は、配偶者控除や扶養控除の対象にはなりません。白色申告の場合は、一定額の事業専従者控除を差し引く仕組みです。

一人親方が法人化を考えるのはどんなときですか?

所得が増えて所得税の税率が高くなったとき、元請から法人との取引を求められたとき、職人を雇って事業を広げるときなどが検討のきっかけです。法人は役員1人でも健康保険・厚生年金の強制適用になり、赤字でも法人住民税の均等割がかかるため、税金と社会保険料の合計で比べます。

まとめ

一人親方の開業では、開業届と青色申告承認申請書を期限内に出し、家族や職人に給与を払うなら給与支払事務所等の開設届と源泉所得税の準備もします。建設業なら労災保険の特別加入を現場に出る前に済ませ、元請との契約が請負として説明できるかを確認しておきましょう。インボイスは元請の構成と手間請けの割合で判断し、登録するなら2割特例・3割特例・簡易課税を比べて計算方法を選びます。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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