ホテル・旅館の開業時の税務手続きと届出一覧|旅館業の許可・消費税も確認

  • URLをコピーしました!

ホテル・旅館の開業時の税務手続きは、保健所で旅館業の許可を受けることを前提に、税務署への開業届や青色申告承認申請、道・市町村への届出を期限内に進めることです。消費税はインボイス登録と建築費の還付を開業前に検討します。届出の一覧と宿泊業特有の注意点をまとめました。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

ホテル・旅館の開業は、旅館業の許可(保健所)を受けたうえで、税務署・道・市町村への届出を期限内に行います。消費税は、インボイス登録の要否と建築費の還付を受けるかを開業前に決めておくことが大切です。

  • 個人は開業届を開業日から1か月以内、青色申告承認申請は原則その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業日から2か月以内)
  • 法人は設立届出書を設立日から2か月以内。青色申告承認申請は設立から3か月を経過した日と最初の事業年度終了日の早い日の前日まで
  • 建物・設備の消費税の還付を受けるには、本則課税の課税事業者であることが条件
  • 宿泊税・入湯税は施設のある自治体ごとに扱いが異なるため、道や市町村の案内で確認する
  • 事前決済の宿泊料は前受金、OTA経由の予約は総額を売上・手数料を費用として記帳する
目次

ホテル・旅館の許可は?旅館業法の区分と保健所への申請

旅館業法の改正(2018年施行)で、それまでの「ホテル営業」と「旅館営業」は「旅館・ホテル営業」という一つの区分に統合されました。簡易宿所(ゲストハウスなど)や、住宅宿泊事業法による民泊とは区分や要件が異なるため、まず自分の業態がどれに当たるかを確認します。

許可申請は開業の前提条件で、許可を受けずに宿泊サービスを提供すると旅館業法違反になります。窓口は施設のある地域を管轄する保健所で、保健所を設置している政令市などでは市の保健所が担当します。客室の面積や衛生設備などの施設基準は、設計の段階で保健所に事前相談しておくと手戻りを防げます。

許可・届出窓口必要になる場面
旅館業の許可(旅館・ホテル営業)保健所宿泊サービスを提供するすべての施設
飲食店営業の許可保健所レストランや宴会場、朝食・夕食を館内で調理して出す場合
消防の届出・検査消防署防火設備の設置や、建物の使用開始の届出
建築基準法の用途変更建築確認の窓口既存の建物を宿泊施設に転用する場合(規模による)
酒類の販売業免許税務署売店で未開栓の酒類を持ち帰り用に販売する場合(館内で開栓して提供する場合は不要)
旅館業の許可とあわせて確認する主な許認可

税務署への届出は何をいつまでに?一覧と期限

ホテル・旅館を個人事業として開業する場合と、法人として開業する場合とで、提出する書類が変わります。期限を過ぎると青色申告の特典を初年から使えないなど不利になるものがあるため、開業日を決めたら逆算して準備します。

届出名対象提出の期限
個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)個人開業の日から1か月以内
所得税の青色申告承認申請書個人その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)
法人設立届出書法人設立の日以後2か月以内(道・市町村にも別途届出)
青色申告の承認申請書(法人)法人設立の日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで
給与支払事務所等の開設届出書従業員を雇う場合給与支払事務所等を開設した日から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書常時雇用する人が10人未満の場合任意。提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から特例を適用
適格請求書発行事業者の登録申請書インボイスを発行する場合登録を受けたい時期に合わせて提出
消費税課税事業者選択届出書免税事業者が還付を受けたい場合など適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(事業を始めた課税期間は、その課税期間中)
消費税簡易課税制度選択届出書簡易課税を選ぶ場合適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(事業を始めた課税期間は、その課税期間中)
ホテル・旅館の開業時に税務署へ出す主な届出(提出先はいずれも所轄税務署)

納期の特例を受けると、源泉所得税を1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日にまとめて納付できます。パート・アルバイトの入れ替わりが多い宿泊業では、毎月の納付の手間を減らせます。

札幌市内で開業する場合の提出先

所轄の税務署は、法人は本店の所在地、個人は原則として住所地で決まります。定山渓温泉のある南区を含め、区ごとの管轄は次のとおりです。

  • 札幌中税務署:中央区の一部(おおむね西10丁目以東)
  • 札幌西税務署:中央区の一部(大通西11丁目以西・円山など)、西区、手稲区
  • 札幌北税務署:北区、東区
  • 札幌南税務署:豊平区、南区、清田区
  • 札幌東税務署:白石区、厚別区

2026年7月10日から、5署の内部事務は札幌業務センターに集約されています。書面は同センターへ郵送し、e-Taxや窓口への持参は所轄の税務署です。個別の住所の管轄は国税庁の管轄区域表で確認してください。

消費税とインボイス:登録の判断と建築費の還付

出張で泊まる会社員や団体旅行を手配する会社など、宿泊料を経費にする事業者の客が多い施設では、インボイスの発行を求められやすくなります。登録すると課税事業者になるため、売上の見込みと客層から判断します。

登録しない場合、新たに開業した個人や資本金1,000万円未満で設立した法人は、原則として最初の2年(法人は2期)は免税事業者です。ただし、2年目は前年(前期)の前半6か月の売上と給与がともに1,000万円を超えると課税事業者になり、資本金1,000万円以上の法人は1期目から課税事業者です。

ホテル・旅館で特に大きいのが、建物や設備にかかった消費税の還付です。還付を受けられるのは本則課税(実際の仕入れの消費税を差し引く方法)の課税事業者だけで、免税事業者のままや簡易課税、2割特例では還付を受けられません。開業した課税期間から還付を受けたい場合は、その課税期間中に課税事業者選択届出書やインボイスの登録申請を出す必要があります。

還付を受けると、3年間は方式を変えにくくなる

本則課税の期間に、1件税抜1,000万円以上の建物や設備など(高額特定資産)を取得すると、取得した課税期間の初日から3年を経過する日を含む課税期間までは、免税事業者にも簡易課税にも戻れません。

課税事業者を選択した場合も2年間は継続が必要で、その間に税抜100万円以上の固定資産を取得すると同様の制限がかかります。還付額だけで決めず、その後の数年間の納税額まで比べて判断します。

方式宿泊業での扱い(2026年10月時点)
本則課税建築費・設備費の消費税の還付を受けられる唯一の方式
簡易課税基準期間の課税売上高5,000万円以下で選択できる。宿泊は第5種(みなし仕入率50%)、宿泊料と区分して料金を受け取る館内の飲食は第4種(60%)、売店の物品販売は第2種(80%)
2割特例2026年9月30日を含む課税期間で終了。個人は令和8年分まで、法人は同日を含む事業年度までで、2026年10月1日以後に設立した法人は使えない
3割特例個人事業者のみ、令和9年分・令和10年分。登録しなければ免税事業者になる人が対象で、届出は不要
消費税の計算方式と宿泊業での扱い

簡易課税では、1泊2食の料金を区分せずに受け取ると全体が第5種になります。食事代を請求書で区分するかどうかで税額が変わるため、料金表と請求書の書き方を開業前に決めておきます。インボイス制度全体の実務はインボイス制度の実務ガイドで整理しています。

無料
ツール
課税事業者かどうかを判定する基準期間・特定期間の売上などから、消費税の納税義務があるかを確認できます。計算する
無料
ツール
簡易課税・本則課税・2割特例を比較計算する売上と仕入れの見込みから、方式ごとの消費税の納税額を比べられます。計算する

還付を受けるか、簡易課税を選ぶかは、建築費と開業後の売上の見込みで変わります。初回無料で試算の進め方を確認できます。

無料で相談する

道・市町村への届出は?事業税・償却資産・宿泊税など

税務署以外にも、道税事務所や市町村への届出・申告が必要です。宿泊業では、宿泊者から税金を預かって納める手続きがある点が、ほかの業種と大きく違います。

届出・申告提出先ポイント
個人事業の開始の届出道税事務所・市町村旅館業は個人事業税の対象業種で、税率5%・事業主控除290万円。期限は各窓口の案内で確認
法人の設立の届出道税事務所・市町村法人道民税・法人市町村民税・法人事業税のため。赤字でも均等割がかかる
償却資産の申告施設のある市町村毎年1月31日(休日は翌開庁日)まで。ベッド・家具・厨房機器・看板なども対象。免税点は令和9年度分から180万円(それまでは150万円)
宿泊税道・宿泊税を課す市町村宿泊者から預かって納める特別徴収の手続きが必要になる場合がある
入湯税施設のある市町村温泉(鉱泉浴場)がある施設は、入湯客から預かって納める
道・市町村への主な届出と申告

宿泊税は自治体ごとに確認する

北海道内では、道や市町村が宿泊税を導入している、または導入を予定している場合があります。税率や開始時期、宿泊料金による区分、申告・納入の方法は自治体ごとに異なります。施設のある道・市町村の最新の案内で確認し、料金表や予約システムに反映させてください。

開業後の税務管理で押さえるポイントは?売上の時期・修繕・備品

ホテル・旅館業は固定費が大きく、季節変動も大きい業種です。開業後の会計では、売上を計上する時期、修繕の扱い、客室の備品の扱いで誤りが起きやすくなります。

  • 客室稼働率と売上を月次で記録し、課税売上の集計漏れを防ぐ
  • 宿泊前に事前決済で受け取った代金は前受金とし、宿泊した日に売上にする(決算日をまたぐ予約に注意)
  • キャンセル料は、逸失利益の補てんなら消費税の対象外、事務手数料なら課税と、性格で扱いを分ける
  • 大規模な修繕は、原状回復なら修繕費、価値を高めたり使える期間を延ばしたりする部分は資本的支出として資産に計上する
  • 客室の家具・備品は、ベッドと寝具のように通常一組で使うものは一組ごとに取得価額を判定する

家具・備品は、取得価額が10万円未満ならその年の経費、20万円未満なら3年で均等に経費にする一括償却も選べます。青色申告の中小事業者は、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を年300万円まで一括で経費にできる特例があります(2026年3月31日までの取得は30万円未満)。

OTA経由の予約はどう記帳する?1件の数字の流れ

OTA(旅行予約サイト)の手数料は、Booking.com・じゃらんなどの予約経由の手数料として、販売促進費や支払手数料で処理します。入金額だけを売上にすると、売上と手数料の両方が実態より小さく記録されてしまうため、総額と手数料を分けて記帳するのが基本です。

計算例:OTA予約1件の数字の流れ

例えば、1泊10,000円の客室がOTA経由で1室予約され、OTA手数料を仮に15%とした場合です。

  • OTA手数料:10,000円×15%=1,500円
  • 宿泊者からの実際の入金額:10,000円−1,500円=8,500円

会計上は総額の10,000円を売上に計上し、手数料1,500円を販売促進費または支払手数料として別に費用計上するのが一般的です。

総額と手数料を分けて記録しておくと、稼働率や客室単価、販売経路ごとの手数料率の推移も把握しやすくなります。OTAから届く精算書を月ごとに保存し、予約サイトの管理画面の数字と帳簿の売上が合っているかを照合しておくと、計上漏れや二重計上を防げます。

見落としやすいポイントは?消費税の方式・保険・社会保険・外貨

論点見落とすと起きること確認すること
消費税の申告方式還付を受け損ねる、または簡易課税に戻れず納税が増える建築費の還付と簡易課税は両立しない。開業前に数年分を比較する
損害保険火災や什器の損傷、宿泊者のけがで大きな損失が出る建物・什器の補償と、施設の賠償責任の補償範囲
社会保険加入漏れで、さかのぼって保険料を納めることになる法人は役員1人でも強制適用。個人経営の宿泊業は常時5人以上でも強制適用の対象外の業種(2029年10月以後に見直しあり)
パートの加入要件扶養内のつもりで働いた人が加入対象になる週20時間以上・企業規模51人以上・学生でない等。賃金要件(月8.8万円)は2026年10月1日に撤廃
最低賃金繁忙期の短期アルバイトの時給が基準を下回る北海道は2026年10月1日から1,131円
外貨決済為替差損益の記帳がばらばらになる換算に使うレートと記帳のルールを決めておく
ホテル・旅館の開業で見落としやすいポイント(2026年10月時点)

パートやアルバイトの比率が高くなりやすい宿泊業では、労働時間によって社会保険の加入対象かどうかが変わります。雇用形態とシフトの組み方は、開業前に人件費の試算とあわせて決めておきましょう。

繁忙期と閑散期の資金はどう回す?開業1年目の資金計画

宿泊業は観光シーズンや連休に売上が集中しやすく、閑散期との差が大きくなりがちです。年間の予約状況や見込みをもとに月ごとの資金繰り表を作っておくと、閑散期の運転資金不足に早めに気づけます。設備の修繕や人員体制の見直しも、繁忙期を避けた時期に計画すると売上の機会を逃しにくくなります。

開業準備のために使った広告宣伝費や打合せの交通費、従業員の研修費などは、開業費として資産に計上し、開業後の好きな年に経費にできます。開業1年目は利益が出にくいことも多いため、開業費をどの年に経費にするかも資金計画と合わせて考えます。

開業前にそろえておくこと

  • 事業計画と収支の見通し(月ごとの稼働率の想定を含む)
  • 開業資金と自己資金の額
  • 開業届・青色申告承認申請の準備
  • 会計ソフト・記帳の体制(OTAの精算書や予約システムとの連携)
  • 屋号・事業用口座・許認可の確認

よくある質問

旅館業の許可が下りる前に、開業届を出してもよいですか?

開業届は事業を始めた日から1か月以内に出す書類で、開業日は実際に営業を始めた日を記載するのが基本です。許可を待つ間の準備のための支出は、開業費として扱えます。個人の青色申告承認申請の期限は開業日から数えることがあるため、開業日をいつにするかを先に決めておきましょう。

個人で始めるのと法人で始めるのは、どちらがよいですか?

見込みの利益、従業員の人数、借入れの規模で変わります。法人は社会保険が強制適用になり、赤字でも住民税の均等割がかかる一方、信用力や役員報酬による所得の分散といった利点があります。個人は消費税の2割特例・3割特例を使える年があるなど、開業時期によって有利不利が分かれます。

宿泊料や館内の飲食には、どの消費税率がかかりますか?

宿泊料と、レストランや宴会場など館内で提供する飲食は標準税率の10%です。売店で販売する飲食料品(酒類を除く)は、持ち帰りの販売なので軽減税率の8%になります。同じレシートで両方を扱う場合は、税率ごとに区分して記載します。

開業前に買った客室の家具や備品は経費になりますか?

事業に使い始めた日から経費化の対象になります。取得価額が10万円未満のものは消耗品費、それ以上は金額に応じて一括償却や少額減価償却資産の特例、通常の減価償却で処理します。開業前の購入でも開業費ではなく、資産の種類ごとに扱う点に注意してください。

まとめ

ホテル・旅館の開業は、旅館業の許可を前提に、税務署への開業届・青色申告承認申請(法人は設立届出書)と、道・市町村への届出、償却資産の申告を期限内に進めます。消費税はインボイス登録と建築費の還付の判断を開業前に行い、宿泊税・入湯税は施設のある自治体の案内で確認しましょう。開業後は前受金・OTA手数料・修繕の処理と、季節変動に備えた資金計画が経営の安定につながります。

札幌の公認会計士・税理士事務所

ホテル・旅館の開業と税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ

  • 初回相談は無料(オンライン対応可)
  • フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
  • その場でご契約を迫ることはありません

対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次