クリーニング店の開業では、営業開始前に保健所へ開設の届出をして施設の確認を受け、税務署には開業届と青色申告承認申請書をセットで出します。従業員を雇うなら給与関係の届出が加わります。期限と届出先の一覧に加え、機材の償却や回数券の売上など、開業時に決めておく経理も押さえます。
この記事の結論
届出は「保健所(衛生関係)」と「税務署(税金関係)」の二系統です。青色申告承認申請書は期限を過ぎると初年度が白色申告になるため、開業届と同時に出すのが安全です。
- 保健所:営業開始前に開設の届出をして施設の確認を受ける。洗濯機を置く一般クリーニング所はクリーニング師が必要
- 税務署:開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は1月16日以後の開業なら開業の日から2か月以内
- 従業員を雇うなら給与支払事務所等の開設届(1か月以内)と、常時10人未満なら源泉所得税の納期の特例
- 機材は減価償却。定率法を使うなら償却方法の届出が要る。回数券・プリペイドは利用された時に売上にする
- お客様の大半が個人ならインボイス登録は急がなくてよい。ホテルや飲食店のリネン、制服など法人取引を狙うなら検討する
クリーニング店の開業に必要な届出は?全体を一覧で確認
開業準備では店舗探しや機材の手配、保健所の手続きに気を取られ、税務署への届出が後回しになりがちです。しかし届出には期限があり、過ぎてしまうと青色申告の特典のように、本来受けられたはずのメリットを逃すことがあります。まず全体像を一覧でつかみます。
| 届出先 | 主な届出 | 期限・時期 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 保健所 | クリーニング所の開設の届出(施設の確認を受ける) | 営業開始前 | 一般クリーニング所・取次所とも |
| 税務署 | 個人事業の開業届出書 | 開業の日から1か月以内 | すべての個人事業主 |
| 税務署 | 所得税の青色申告承認申請書 | その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内) | 青色申告をする人 |
| 税務署 | 青色事業専従者給与に関する届出書 | 適用したい年の3月15日まで(年の途中の開業は開業の日から2か月以内) | 家族に給与を払う人 |
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の日から1か月以内 | 従業員を雇う人 |
| 税務署 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時。翌月末日までに通知がなければ翌々月の納付分から適用 | 給与の支払を受ける人が常時10人未満の店 |
| 税務署 | 所得税の減価償却資産の償却方法の届出書 | 開業した年の確定申告期限まで | 機材を定率法で償却したい人 |
| 道税事務所 | 個人事業税の事業開始の申告 | 開業後すみやかに(期限は道の案内で確認) | 個人事業主 |
| 労働基準監督署・ハローワーク | 労働保険・雇用保険の手続き | 従業員を雇ったとき | 従業員を雇う人 |
このほか、店舗の設備や立地によっては、建築・消防・排水に関する届出が必要になることがあります。次の節で、保健所の届出とあわせて確認します。
保健所の届出は?一般クリーニング所と取次所の違い
クリーニング業はクリーニング業法に基づく届出制で、営業開始前に施設の所在地を管轄する保健所へ開設の届出を行い、施設の確認を受ける必要があります。店で洗濯まで行う一般クリーニング所か、受け渡しだけを行う取次所かで要件が異なります。店舗を持たずに車で集配する営業(無店舗取次店)も届出の対象です。
一般クリーニング所(店で洗濯まで行う)
- 洗濯機を置くクリーニング所には、クリーニング師を1人以上置く
- 洗濯機・乾燥機・プレス機などの設備が施設の基準に合っているかを確認される
- 機材の投資が大きく、減価償却の金額も大きくなる
取次所(受付と引渡しだけ)
- 洗濯は契約先の工場に任せる
- クリーニング師の設置は求められない
- 工場との契約の形(取次の手数料か、加工の外注か)で売上と経費の計上が変わる
設備の基準や届出の様式の案内は、自治体ごとに異なります。店舗の所在地を管轄する保健所の公式サイトで最新の情報を確認し、内装工事の前に相談しておくと手戻りを防げます。
物件を契約する前に、設備の規制も確かめる
ドライクリーニングに石油系の溶剤を使う場合、建物の用途地域によって建築基準法上の制限を受けることがあり、溶剤の保管量によっては消防署への届出や許可が必要です。洗濯の排水についても、水質汚濁防止法や下水道法の届出が必要になる場合があります。
開業してから設備を手直しすると、内装と機材の両方に追加の費用がかかります。物件の契約前に、建築・消防・環境(下水道)の各窓口へ確認しておきます。
税務署に出す届出と期限は?青色申告で差がつく
個人でクリーニング店を開業する場合、税務の届出の核になるのは「開業届」と「青色申告承認申請書」の2枚で、従業員を雇う場合に給与関係の届出が加わるという構造です。
このうち青色申告承認申請書は、期限を過ぎると初年度が白色申告になり、青色申告特別控除や赤字の3年繰越が使えません。開業届と同時に提出してしまうのが安全です。控除額は帳簿のつけ方と申告の方法で変わり、令和9年分から区分が見直されます。
| 区分 | 令和8年分まで | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 最も大きい控除 | 65万円:正規の簿記+期限内申告+電子帳簿保存かe-Tax | 75万円:65万円の要件+仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の電磁的記録で保存など |
| 中間の控除 | 55万円:正規の簿記+貸借対照表・損益計算書の添付+期限内申告 | 65万円:旧55万円の区分の要件+期限内のe-Tax |
| 簡易な控除 | 10万円 | 10万円(簡易な簿記で前々年の収入が1,000万円超の人は除外) |
開業の時点で会計ソフトを選ぶなら、e-Taxでの申告と帳簿の電子保存に対応しているかを確認しておくと、令和9年分以後の75万円の控除にもつなげやすくなります。
給与の支払を受ける人が常時10人未満なら、源泉所得税を年2回(1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日)にまとめて納められる納期の特例があります。申請書を出した月の翌月末日までに承認・却下の通知がなければ、翌々月の納付分から特例が適用されるため、従業員を雇う時期にあわせて出しておくと、毎月の納付事務から解放されます。
機材を定率法で償却するなら届出を忘れずに
個人の減価償却は、届出をしなければ定額法です。洗濯機や乾燥機、プレス機を定率法で早めに経費にしたい場合は、開業した年の確定申告期限までに「減価償却資産の償却方法の届出書」を出します。なお、内装工事のうち建物附属設備に当たるものは定額法しか選べません。
開業前の支出と機材はどう経費にする?
業務用の洗濯機・乾燥機・プレス機を合計400万円で導入した場合、支払った年に全額が経費になるわけではなく、耐用年数に応じた減価償却で数年に分けて経費化します。お金の支出と経費計上のタイミングがずれるため、開業初年度の損益と資金繰りは分けて考えます。
計算例:400万円の機材を7月に使い始めた場合の初年度の償却費
例えば、400万円の機材を7月に使い始めた場合です。耐用年数は設備の種類ごとに省令で決まるため、ここでは仮に10年(定額法の償却率0.100、200%定率法の償却率0.200)として計算します。
- 定額法:400万円×0.100=40万円。初年度は6か月分で 40万円×6÷12=20万円
- 定率法:400万円×0.200=80万円。初年度は6か月分で 80万円×6÷12=40万円
定率法のほうが開業初年度の経費は大きくなりますが、後の年の償却費は小さくなり、経費の総額は変わりません。開業時の赤字を繰り越すのか、利益が出る年に経費を厚くしたいのかで選びます。
ツール定率法(200%)の減価償却費を計算する取得価額と耐用年数を入れると、機材の年ごとの償却費を定率法で計算できます。計算する
ハンガーラックや受付のカウンター、小型の機器など金額の小さい備品は、取得価額によって処理を選べます。
| 取得価額 | 処理 | ポイント |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費などとして全額をその年の経費にする | 青色・白色を問わない |
| 20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等に経費にすることもできる | 償却資産の申告の対象外 |
| 40万円未満 | 少額減価償却資産の特例で全額をその年の経費にできる(年300万円まで) | 青色申告の中小事業者が対象。2026年3月31日までの取得は30万円未満 |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて減価償却する | 機材・内装など資産の種類で耐用年数が異なる |
ツール少額資産の処理方法を3択で比較する即時の経費化・一括償却・少額減価償却資産の特例のどれが有利か、金額を入れて比べられます。計算する
開業前に支出したチラシや看板の広告費、物件の下見や打合せの交通費、開業前の研修費などは「開業費」として資産に計上し、開業後の任意の時期に経費にできます。機材や内装は開業費ではなく、事業に使い始めた時から減価償却します。開業前の領収書は、開業後の分と混ざらないよう一つにまとめておきます。
回数券・現金売上・預り品の経理はどうする?
回数券やプリペイドカードの代金は、受け取った時点ではなく、実際にクリーニングを提供した時点で売上にするのが原則です。未使用残高の管理方法を開業時に決めておくと、決算で慌てずに済みます。
具体例:年末をまたぐプリペイドカードの売上
例えば、12月に1万円分のプリペイドカードを販売し、年末までに3,000円分が利用された場合です。
- その年の売上:利用された3,000円
- 年末の前受金(未使用残高):10,000円−3,000円=7,000円
- 翌年に利用された分を、利用のたびに売上に振り替える
販売額と利用額を月ごとに集計しておくと、年末の未使用残高をすぐに確定できます。長く使われない残高の扱いは、毎年同じルールで処理します。
現金商売であるだけに、レジの日計と通帳の入金を毎日突き合わせる習慣が、正確な申告と将来の税務調査への備えの両方になります。キャッシュレス決済は入金額が手数料を差し引いた後の金額になるため、売上の総額と決済手数料を分けて記帳します。
取次所として始める場合は、工場との契約を確かめます。工場から取次の手数料を受け取る契約なら手数料が売上になり、自店で注文を受けて工場に加工を外注する契約なら、お客様から受け取った代金の全額が売上で、工場への支払いが外注費になります。預かった衣類の事故で支払う賠償金や、賠償責任保険の保険料は経費です。
- 事業用の口座とカードを分け、売上の入金と経費の支払いを集約する
- レジの日計表を毎日つけ、現金の入金と通帳を突き合わせる
- 回数券・プリペイドの販売額と利用額、未使用残高を月ごとに集計する
- 衣替えの時期の繁忙と閑散期の差を見込み、税金と支払いの資金を残しておく
- 帳簿と書類を7年間保存する(前々年分の所得が300万円以下なら、現金預金取引等関係書類は5年)
開業した年の確定申告は翌年に行い、令和8年分(2026年分)なら2027年2月16日から3月15日までです。クリーニング業は個人事業税の対象業種で、所得から事業主控除290万円を差し引いた額に税率がかかります。年間の申告と納付の予定は個人事業主の年間スケジュールで確認できます。
消費税とインボイスは?登録が必要になる取引先
開業当初は原則として免税事業者ですが、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。前年1〜6月の課税売上高と給与の支払額がどちらも1,000万円を超えた場合も、翌年から課税事業者になります。
| 主な取引先 | インボイス登録の必要性 | 理由 |
|---|---|---|
| 近隣の個人のお客様 | 低い | 消費者は仕入税額控除をしないため、インボイスを求めない |
| ホテル・旅館・飲食店のリネン、介護施設の寝具 | 求められることがある | 相手が仕入税額控除をするためにインボイスが要る |
| 企業の制服・作業着 | 求められることがある | 登録しないと相手の控除が制限される(2026年10月1日〜2028年9月30日は70%控除) |
お客様のほとんどが一般消費者の店は、インボイス(適格請求書)発行事業者への登録を急ぐ必要性は低いのが一般的です。一方、法人取引を取り込みたい場合は、取引先から登録を求められることがあるため、売上に占める法人の割合と単価から判断します。
登録した個人は、令和8年分までは売上税額の2割を納める2割特例を使える場合があります。令和9・10年分は、売上税額の3割を納める3割特例が新たに設けられています(登録しなければ免税事業者だった人が対象で、届出は不要)。簡易課税を選ぶと、クリーニング業はサービス業の第5種(みなし仕入率50%)です。登録の判断と手続きはインボイス制度の実務ガイドで整理しています。
開業の年に多額の機材を買う場合、課税事業者を選べば機材にかかった消費税の還付を受けられることがあります。ただし、選んだ後は一定期間免税に戻れない制約があるため、数年分の売上の見込みとあわせて判断します。
インボイスの登録や課税事業者の選択は、取引先の構成と機材の投資額で有利不利が変わります。開業前に初回無料で確認できます。
無料で相談する札幌市内で開業する場合の届出先は?
税務署への届出は、住所地を所轄する税務署に出します。店舗の所在地を納税地にすることもでき、その場合は店舗の所在地の税務署が届出先です。保健所の届出は、市内の店なら札幌市保健所が窓口です。
| 税務署 | 主な管轄区域 |
|---|---|
| 札幌中税務署 | 中央区の一部(おおむね西10丁目以東) |
| 札幌北税務署 | 北区・東区・石狩市・石狩郡 |
| 札幌南税務署 | 豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市 |
| 札幌西税務署 | 中央区の一部(大通西11丁目以西・円山・宮の森など)・西区・手稲区 |
| 札幌東税務署 | 白石区・厚別区・江別市 |
2026年7月10日から、市内5署の内部事務は札幌業務センターに集約され、書面で出す届出は同センターへ郵送します。e-Taxでの提出や窓口への持参は、これまでどおり所轄の税務署です。
よくある質問
開業届を出し忘れたら、どうなりますか?
開業届は開業の日から1か月以内が期限ですが、過ぎても提出できます。影響が大きいのは青色申告の承認申請書で、期限を過ぎるとその年は白色申告になり、翌年分から青色申告をするには翌年の3月15日までに申請します。気づいた時点で両方をまとめて提出します。
家族に店を手伝ってもらう場合、給与は経費になりますか?
青色申告で、もっぱら事業に従事する家族(青色事業専従者)に払う給与は、届出書に記載した範囲内で、仕事の内容に見合う金額なら経費になります。届出は適用したい年の3月15日まで(年の途中の開業は開業の日から2か月以内)です。専従者になった家族は、配偶者控除や扶養控除の対象から外れます。
コインランドリーを併設する場合、届出は変わりますか?
お客様が自分で洗濯機を使うコインランドリーは、クリーニング業法の届出の対象ではありません。ただし、自治体の指導要領などで届出や衛生管理を求められることがあるため、保健所に確認します。税務では、硬貨の回収額を回収のたびに記録して売上に計上し、洗濯機や乾燥機は減価償却します。
法人で開業する場合は、何が変わりますか?
税務署には法人設立届出書(設立の日以後2か月以内)と、青色申告の承認申請書(設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで)を出します。法人は役員1人でも社会保険の強制適用で、赤字でも法人住民税の均等割がかかります。判断の目安はクリーニング店の法人化のタイミングと判断基準で整理しています。
まとめ
クリーニング店の開業届出は、保健所への開設の届出と、税務署への開業届・青色申告承認申請書が軸で、従業員を雇えば給与関係の届出が加わります。届出の書類を出すこと自体よりも、青色申告や専従者給与、償却方法、インボイスと消費税の扱いをどう選ぶかで、その後の税負担が変わります。機材の償却と回数券の管理は、開業の時点でルールを決めておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
クリーニング店の開業・届出のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」
- 札幌国税局「税務署の所在地・管轄区域」
- 国税庁「インボイス制度(令和8年度改正)」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
