不動産賃貸オーナーの開業手続きと届出一覧|青色申告・5棟10室・消費税

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不動産賃貸オーナーが開業するときは、家賃収入を不動産所得として申告する準備として、開業届と青色申告承認申請書などの届出を期限内に出すのが基本です。5棟10室などの事業的規模かどうかで青色申告特別控除の額が変わり、店舗の賃料や設備のある駐車場は消費税の課税売上になる点にも注意が要ります。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

賃貸経営を始めたら、事業的規模なら開業の日から1か月以内に開業届を出し、青色申告を使うなら承認申請書を期限内に出します。「規模」「減価償却」「消費税」の3点を最初に整理しておくと、初年度の申告で迷いません。

  • 家賃収入は不動産所得。会社員でも給与以外の所得が20万円を超えれば確定申告が必要
  • 青色申告承認申請書は、その年の3月15日まで(1月16日以後に始めた場合は開始から2か月以内)
  • 65万円・55万円の青色申告特別控除と専従者給与は、5棟10室などの事業的規模が条件(それ以外は10万円)
  • 建物は定額法で減価償却。中古物件は簡便法で耐用年数を短くできる
  • 住宅の家賃は非課税、店舗・事務所の賃料と設備のある駐車場は消費税の課税売上
目次

不動産賃貸収入の税務上の取扱いは?

個人が賃貸物件から得る家賃収入は、不動産所得に分類されます。不動産所得は給与所得などほかの所得と合算して総合課税され、確定申告が必要です。

  • 不動産所得=総収入金額(家賃・礼金・共益費等)-必要経費(固定資産税・修繕費・減価償却費・借入金の利息等)
  • 減価償却費(建物の取得費を耐用年数にわたって費用計上する制度)は、現金の支出を伴わない大きな経費になる
  • 年末調整を受けている会社員でも、不動産所得など給与以外の所得の合計が20万円を超える場合は確定申告が必要(20万円以下でも住民税の申告は必要)

借入金で物件を買うと、初年度は減価償却費や諸費用で不動産所得が赤字になることがあります。不動産所得の赤字は給与所得などと損益通算できますが、土地を取得するための借入金の利子に相当する部分は通算できません。借入金は元本の返済額ではなく、利息だけが必要経費になる点も押さえておきます。

5棟10室の「事業的規模」で何が変わる?

貸室10室以上、または独立家屋5棟以上(5棟10室基準)を満たすと、事業的規模とみなされます。この基準は形式的な目安で、規模に満たなくても実態から事業として判断される場合があります。事業的規模かどうかで、次のように取扱いが変わります。

項目事業的規模(5棟10室など)事業的規模でない
青色申告特別控除(令和8年分まで)65万円(正規の簿記+期限内申告+e-Taxか電子帳簿保存)、55万円(e-Taxなどの要件なし)10万円
青色申告特別控除(令和9年分以後)要件に応じて75万円・65万円10万円
青色事業専従者給与届出をすれば必要経費にできる必要経費にできない
建物の取壊し・除却などの損失全額を必要経費にできるその年の不動産所得の金額が限度
事業的規模かどうかによる主な違い(2026年10月時点)

開業時に提出すべき届出書一覧

不動産賃貸を始めた際に、所轄税務署へ提出が必要、または提出をおすすめする届出書を整理します。提出先は物件の所在地ではなく、原則としてオーナーの住所地を所轄する税務署です。

届出書の種類提出期限提出のポイント
個人事業の開業・廃業等届出書開業の日から1か月以内事業的規模の賃貸を始めたら提出する。小規模でも、青色申告とあわせて出しておくと手続きを整理しやすい
所得税の青色申告承認申請書その年の3月15日まで(1月16日以後に開始した場合は開始の日から2か月以内)青色申告特別控除・純損失の繰越を使うために必要。事業的規模でなくても申請できる
青色事業専従者給与に関する届出書その年の3月15日まで(1月16日以後の開業や新たに専従者がいる場合は2か月以内)事業的規模で、配偶者等を従事させ給与を必要経費にしたい場合
給与支払事務所等の開設届出書開設の日から1か月以内管理人などを雇って給与を支払う場合のみ
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書随時(提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から特例)給与の支払人数が常時10人未満なら、源泉所得税の納付を年2回にまとめられる
適格請求書発行事業者の登録申請書登録を希望するとき事業用テナントからインボイスを求められる場合に検討
不動産賃貸の開業時に検討する国税の届出(2026年10月時点)

青色申告承認申請書の期限には特に注意

期限を過ぎると、その年の確定申告では青色申告を適用できず、青色申告特別控除や純損失の繰越が使えなくなります。会社員が副業として賃貸を始める場合も、貸付けを始めた日から期限を数えます。

国税のほか、一定規模以上の不動産貸付業や駐車場業は個人事業税の対象になり、北海道への事業開始の申告が必要になることがあります。対象となる規模は道税の窓口で確認してください。なお、自ら所有する物件を貸すだけなら、宅地建物取引業の免許は不要です。減価償却の方法は、建物は定額法に限られるため、通常は償却方法の届出も要りません。

物件の購入費用や開業前の支出はどう処理する?

物件を買うときの諸費用は、建物や土地の取得価額に含めるものと、その年の必要経費にできるものに分かれます。ここを誤ると、減価償却費と経費の両方がずれてしまいます。

支出処理注意点
仲介手数料取得価額に含める土地と建物に按分する
売主に払う固定資産税の精算金取得価額に含める租税公課にはならない(よくある誤り)
登録免許税・司法書士報酬・不動産取得税必要経費にできる不動産取得税は取得から数か月後に納税通知書が届く
借入金の利息・融資手数料必要経費元本の返済額は経費にならない
貸付け開始前の入居者募集の広告費など開業費(繰延資産)開業後、任意の時期に経費にできる
物件取得時・開業前の主な支出の処理

土地は減価償却できないため、購入代金を土地と建物に分ける作業が欠かせません。契約書に建物価格の内訳があればそれに従い、なければ契約書の消費税額から建物価格を逆算するか、固定資産税評価額の比率で按分します。

計算例:消費税額から建物価格を逆算する

例えば、土地付きアパートの契約書に、建物の消費税額として200万円が記載されている場合です(土地は非課税なので消費税はかかりません)。

建物の税抜価格は、200万円÷10%=2,000万円です。

建物の税込価格は、2,000万円+200万円=2,200万円となり、売買代金の残りが土地の取得価額になります。

減価償却費と修繕費の基本

不動産賃貸オーナーの税務で特に重要なのが、建物の減価償却費と修繕費の取扱いです。いずれも節税と申告の適正性に直結します。建物は定額法で、取得費を法定耐用年数にわたって毎年費用計上します。

住宅用建物の構造法定耐用年数
木造22年
鉄筋コンクリート造47年
法定耐用年数の例(その他の構造は国税庁の耐用年数表で確認)

中古物件は、残りの使用可能期間を見積もる代わりに、簡便法で耐用年数を短くできます。法定耐用年数の一部を経過した建物は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」、全部を経過した建物は「法定耐用年数×20%」で計算し、1年未満は切り捨てます。給排水や電気などの建物附属設備は、建物と分けてより短い耐用年数で償却できる場合があります。

計算例:中古の木造アパートの耐用年数

例えば、築15年の木造アパート(法定耐用年数22年)を買った場合です。

22年−15年=7年、15年×20%=3年で、7年+3年=10年が耐用年数になります。

築25年で法定耐用年数を全部経過していれば、22年×20%=4.4年で、1年未満を切り捨てて4年です。

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建物の減価償却費を定額法で計算する取得価額と耐用年数を入れると、毎年の減価償却費の目安を計算できます。計算する

修繕のための支出は、物件の現状維持・原状回復なら修繕費としてその年の経費に、物件の価値を高める改良なら資本的支出として資産計上し減価償却します。

支出の例扱い
退去後の壁紙の張替え・原状回復、設備の部分的な修理修繕費(その年の経費)
間取りの変更、設備のグレードアップ、耐用年数を延ばす改良資本的支出(資産計上して減価償却)
給湯器・エアコンなどの買替え1台ごとの金額で判断。10万円未満は経費、青色申告の中小事業者は要件を満たせば40万円未満を年300万円まで一括で経費にできる(2026年4月1日以後の取得)
修繕費と資本的支出の区分の目安

修繕費か資本的支出かの判断は実務上悩ましいケースもあります。見積書や請求書に工事の内容と目的が分かる記載があると、判断と説明がしやすくなります。

土地と建物の按分や、修繕費か資本的支出かの判断は、契約書と見積書の内容で変わります。初回無料で確認できます。

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消費税の課税判定と注意点

住宅の家賃収入は消費税が非課税ですが、事業用物件の賃料や礼金、設備のある駐車場の収入などは課税売上となります。同じ物件の中に住宅と店舗がある場合は、収入を分けて管理します。

収入の種類消費税
住宅の家賃・共益費・礼金・更新料非課税(貸付期間が1か月未満の場合などを除く)
事業用テナント・店舗・事務所の賃料、礼金、共益費課税
月極駐車場(舗装・区画・フェンスなどの設備があるもの)課税
設備のない更地のまま貸す駐車場非課税(土地の貸付け)
返還する敷金対象外(預り金)
賃貸収入の消費税の扱い(2026年10月時点)

個人は、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下なら原則として消費税の免税事業者です。この判定に住宅の家賃は含めず、店舗の賃料や駐車場収入などの課税売上だけで判断します。開業1年目・2年目は基準期間の売上がないため原則として免税事業者ですが、前年1〜6月(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合や、インボイスの登録をした場合は課税事業者になります。

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消費税の課税事業者かどうかを判定する基準期間と特定期間の売上を入れると、納税義務があるかを確認できます。判定する

事業用テナントがいる場合、借主は家賃の消費税を控除するためにインボイスを求めることがあります。家賃のように毎月請求書を出さない取引は、契約書に登録番号などを記載し、振込の記録とあわせて保存する方法も認められています。登録すると課税事業者になり、2割特例(個人は令和8年分まで)、条件を満たす個人の3割特例(令和9・10年分)、簡易課税(不動産業は第6種・みなし仕入率40%)から計算方法を選べます。判断の流れは「インボイス制度の実務ガイド」で確認できます。

札幌・北海道で賃貸経営を始める場合の注意点

届出や申告書の提出先は、オーナーの住所地を所轄する税務署です。札幌市内の管轄は次のとおりで、個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認します。

オーナーの住所所轄の税務署
中央区(おおむね西10丁目以東)札幌中税務署
中央区(大通西11丁目以西・円山・宮の森など)、西区、手稲区札幌西税務署
北区、東区、石狩市、石狩郡札幌北税務署
豊平区、南区、清田区、千歳市、恵庭市、北広島市札幌南税務署
白石区、厚別区、江別市札幌東税務署
市内の税務署の管轄(2026年10月時点)

2026年7月10日から、5つの税務署の内部事務は札幌業務センターに集約されました。書面の届出書を郵送する場合は同センター(〒060-8510)あてに送り、e-Taxでの提出や窓口への持参は所轄の税務署で行います。

物件を取得すると、北海道の不動産取得税がかかります。税率は土地・住宅が3%、住宅以外の家屋が4%で、宅地は2027年3月31日までの取得なら課税標準が2分の1になります。2026年4月1日以後の取得では、免税点が土地16万円、新築等の家屋66万円、売買等の家屋34万円です。

保有中は市の固定資産税(1.4%)と都市計画税(0.3%)がかかり、アパートの敷地は住宅用地の特例で200㎡以下の部分の固定資産税の課税標準が6分の1になります。駐車場の舗装やフェンスなどは償却資産として、毎年1月31日までの申告が必要です。償却資産の免税点は、令和9年度分(2027年1月1日の賦課期日)から150万円が180万円に上がります。

冬の除排雪費用と資金計画

共用部や駐車場の除排雪、屋根の雪下ろしの費用は、賃貸物件の維持管理に必要な支出として必要経費に含めて処理するのが一般的です。自宅と兼用の部分があれば、合理的な基準で按分します。冬季の費用を見込んで、共益費の設定や資金計画を立てておくと安心です。

最初の1年の記帳と申告スケジュール

初年度は、取得時の処理と日々の記帳の仕組みづくりが中心です。開業前にそろえておくことを確認し、次の順で準備します。

  • 事業計画と収支の見通し(空室・修繕・除雪の費用も含めて)
  • 開業資金と自己資金の額、借入金の返済予定表
  • 開業届・青色申告承認申請の準備
  • 会計ソフト・記帳の体制
  • 屋号・事業用口座の確認
  1. 口座を分ける家賃の入金と経費の支払いを、生活用とは別の口座にまとめます。
  2. 固定資産台帳をつくる土地・建物・設備ごとに取得価額と耐用年数を記録し、毎年の減価償却費を計算します。
  3. 毎月記帳する65万円・55万円の控除を受けるなら複式簿記で記帳します。管理会社の送金明細は、差し引かれた管理料を含めて総額で記録します。
  4. 年末に書類をそろえる管理会社の年間収支報告書、固定資産税の納税通知書、借入金の利息の内訳、火災保険や修繕の請求書を集めます。
  5. 確定申告をする令和8年分は2027年2月16日〜3月15日、消費税の課税事業者は3月31日までに申告します。

前年分の所得や税額をもとに計算した予定納税基準額が15万円以上になると、7月と11月に所得税の予定納税があります。帳簿と決算関係書類は原則として7年間保存します。管理会社からPDFで届く報告書などの電子取引データは、電子データのまま保存する必要があります。具体的な仕訳は「不動産賃貸業の仕訳事例集」が参考になります。

よくある質問

相続で賃貸物件を引き継いだ場合も届出は必要ですか?

相続人が新たに貸付けを始めたことになるため、事業的規模なら開業届を出し、青色申告を使うなら承認申請書を出します。亡くなった方が青色申告をしていた場合は、相続開始の時期に応じた特別な提出期限があります。建物の減価償却は、亡くなった方の取得価額と未償却残高を引き継いで続けます。

管理会社から管理料を差し引いた金額が振り込まれます。収入はいくらで計上しますか?

差し引かれる前の家賃の総額を収入に、管理料を必要経費に計上します。振込額だけを収入にすると、収入と経費の両方が少なく計上され、課税売上の集計にも影響します。管理会社の収支報告書をもとに総額で記帳します。

敷金・礼金・更新料は、いつの収入になりますか?

礼金・更新料は返還しないものなので、受け取る権利が確定した年の収入です。敷金は返還するものなので収入ではありませんが、契約で返還しないと決まっている部分(敷引き)はその決まった時点、退去時に原状回復費に充てて返還しない部分は退去時の収入になります。

夫婦の共有名義の物件はどう申告しますか?

持分の割合に応じて収入と経費を分け、共有者それぞれが不動産所得として申告します。事業的規模かどうかは、持分ではなく物件全体の規模で判定するのが一般的です。

法人化したほうが有利になるのはどんなときですか?

不動産所得が増えて所得税・住民税の負担が重くなった場合や、家族に所得を分けたい場合に検討します。法人は赤字でも住民税の均等割がかかるなど固定の負担もあるため、判断基準は「不動産賃貸オーナーの法人化のタイミングと判断基準」で確認してください。

まとめ

不動産賃貸収入は不動産所得として確定申告が必要で、会社員でも給与以外の所得が20万円を超えれば申告義務があります。青色申告承認申請書の期限、5棟10室の事業的規模、建物の減価償却と修繕費、住宅と店舗・駐車場で異なる消費税の扱いを開業時に整理しておくと、初年度から正確で有利な申告ができます。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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