会社を解散清算する流れは、株主総会での解散決議から清算結了登記まで複数の段階に分かれます。債権者への官報公告に2か月以上かかるため最短でも3か月以上、税務申告まで含めると半年〜1年程度を見込むのが現実的です。各ステップの所要日数、申告の期限、早めに準備したいことを整理します。
この記事の結論
解散清算は「解散フェーズ」と「清算フェーズ」に分かれ、官報公告の2か月の待機期間が工程の核心です。税務申告は複数回あり、残余財産の確定後は1か月以内と期限が短いため、解散を決めた段階で税理士・司法書士に相談して段取りを組みます。
- 解散から清算結了まで、最短でも3か月以上、半年〜1年程度が目安
- 官報公告は2か月以上。その間は残余財産を株主に分配できない
- 申告は解散事業年度・清算中の事業年度・残余財産確定時の複数回
- 財産で債務を払いきれない場合は、通常の清算ではなく特別清算や破産を検討する
- 社長からの借入金の免除など、清算に特有の税金の論点は解散前に試算する
解散清算の全体の流れと所要日数は?
会社の解散清算は、大きく「解散フェーズ」と「清算フェーズ」に分かれます。解散によって営業活動を終え、清算人が財産を換金して債務を払い、残った財産を株主に分配したうえで、法人格を消滅させます。全体の流れと所要日数の目安は次のとおりです。
| ステップ | 主な作業 | 所要日数の目安 |
|---|---|---|
| ①株主総会で解散決議 | 解散決議・清算人の選任 | 1日(議事録作成を含め数日) |
| ②解散登記・清算人選任登記 | 司法書士に依頼し法務局へ申請 | 解散の日から2週間以内(本店所在地) |
| ③官報公告・催告 | 債権者に申し出るよう官報に公告し、知れている債権者には個別に催告 | 公告から2か月以上の待機期間が必要 |
| ④財産目録・貸借対照表の作成 | 清算開始時点の財産・債務を確定し、株主総会の承認を受ける | 解散後速やかに(官報公告期間中に並行) |
| ⑤解散事業年度の確定申告 | 税理士が法人税・消費税・地方税を申告 | 解散日の翌日から2か月以内 |
| ⑥債務の弁済・残余財産の確定 | 未払いの税金・社会保険料・買掛金等を整理 | 官報公告期間の終了後に実施 |
| ⑦残余財産確定時の申告 | 最終の残余財産が確定した段階で申告 | 残余財産の確定日の翌日から1か月以内 |
| ⑧清算結了登記 | 決算報告の承認を受け、清算の完了を法務局に登記 | 決算報告の承認から2週間以内(残余財産の確定から2か月以内が目安) |
この流れは、会社の財産で債務をすべて払える「通常の清算」を前提にしています。財産より債務が多い場合の進め方は、後半の「財産で債務を払いきれないときは?」で整理します。
いちばん時間がかかる「官報公告」の2か月とは?
解散清算の手続きで最も時間を要するのが、官報による債権者保護の公告期間です。会社法により、官報に公告して2か月以上の申出期間を設け、知れている債権者には個別に催告する必要があります。この期間中は、原則として債務の弁済ができず、残余財産を株主に分配することもできません。
官報への掲載の申込みから実際の掲載まで、数日〜1週間程度かかることもあります。解散決議の直後に申込みを進め、公告期間の2か月が終わり次第すぐ次のステップへ移れるよう準備しておくと、全体の期間を短くできます。
公告期間中に並行して進めること
- 財産目録・清算開始時の貸借対照表の作成と、株主総会での承認
- 在庫・設備・不動産などの売却(換価)の段取り
- 解散事業年度の確定申告と納付
- 従業員の退職、社会保険・雇用保険の手続き
- リース・賃貸借・保守などの契約の解約と精算
税務申告はいつ、何回必要?期限と注意点
解散清算では、通常よりも申告書の提出回数が増えます。解散した日で事業年度がいったん終わり、その後は清算中の事業年度、最後に残余財産が確定した時点の事業年度と、段階ごとに申告が必要です。
| 申告 | 対象の期間 | 期限 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 解散事業年度 | 事業年度の開始日から解散日まで | 解散日の翌日から2か月以内 | 延長の特例を受けていない場合。解散日を本来の決算日に合わせると、短い事業年度が増えずに済む |
| 清算中の事業年度 | 解散日の翌日から1年ごとの期間 | 各期間の終了の翌日から2か月以内 | 清算が長引くと、毎年申告が必要になる |
| 残余財産確定の事業年度 | 清算中の事業年度の開始日から残余財産の確定日まで | 確定日の翌日から1か月以内(その間に最後の分配をする場合は分配の日の前日まで) | 通常の2か月より短い。分配の前に税額を確定させる |
消費税の課税事業者であれば、各事業年度で消費税の申告も必要です。建物や設備を売却すると課税売上になり、清算の段階で消費税の負担が増えることがあります。
社長からの借入金を免除すると、利益が出ることがある
中小企業の清算では、社長などからの借入金を返さずに免除してもらうことがよくあります。免除を受けた金額は会社の利益(債務免除益)になり、法人税がかかる可能性があります。
残余財産がないと見込まれるときは、期限切れの欠損金も損金に算入できる特例がありますが、それを説明する書類の添付などの要件があります。免除の時期と金額は、解散前に税額を試算してから決めましょう。
残余財産を株主に分配したとき、株主が出資した額(資本金等の額)を超えて受け取る部分は、配当とみなされます。会社は配当として源泉徴収を行い、株主個人は配当所得として課税されるため、分配の前に株主の税金もあわせて確認しておきます。
札幌市内の会社の届出と均等割
解散したときと清算が結了したときは、税務署・北海道・札幌市に異動の届出をします。札幌市内の税務署あての書面は、2026年7月10日から札幌業務センターへ郵送します(e-Taxや窓口への持参は所轄の税務署)。
法人住民税の均等割は、清算中も事務所等があった月数に応じてかかります。資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の会社なら、北海道2万円と札幌市5万円の年7万円を月割りした額が、清算結了まで続きます。
税理士・司法書士にはいつ依頼する?早めに準備したい書類
解散清算を円滑に進めるには、解散決議の前、遅くとも解散を決意した段階で税理士・司法書士に相談することをおすすめします。登記と申告の期限が重なるため、役割分担とスケジュールを最初に共有しておくことが大切です。
| 相談先 | 主に担うこと |
|---|---|
| 税理士 | 未払いの税金・社会保険料の整理、清算できるかの確認、解散事業年度から残余財産確定までの各申告、消費税の納税義務の確認、債務免除やみなし配当の試算 |
| 司法書士 | 解散登記・清算人選任登記・清算結了登記の申請。官報公告の申込みを含めてまとめて行うことも多い |
| 社会保険労務士など | 従業員の退職に伴う社会保険・雇用保険の手続き(社内で行う場合もある) |
解散を決めたら、まず整理しておく書類
- 直近の決算書・申告書と、最新の試算表
- 固定資産台帳と、在庫の一覧
- 借入金・リース・未払いの税金や社会保険料の一覧
- リース契約書・賃貸借契約書・保守契約書など、継続中の契約書
- 株主名簿と、役員・社長からの借入金の残高がわかる資料
- 許認可の一覧と、それぞれの届出先
会計帳簿が整っていないと財産目録の作成が遅れ、全体のスケジュールが後ろ倒しになります。特に固定資産や在庫の処分方針は解散事業年度の所得に影響するため、早い段階で方向性を決めておきましょう。当事務所では、解散の検討段階から清算結了まで、継続的な会計・税務顧問の中で各申告と帳簿の整理を支援しています。申告書の作成だけをスポットでお受けすることはしていません。
解散日の決め方や債務免除の扱いで、申告の回数と税額は変わります。清算できるかどうかの確認から、初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する具体例:解散決議から清算結了までのスケジュール
解散決議を行った日を基準にすると、解散事業年度の申告期限はその翌日から2か月以内、残余財産が確定すればその翌日から1か月以内に申告が必要です。官報公告には2か月以上を要するため、公告のスケジュールと税務申告の期限を並行して管理します。清算が1年以内に終わる場合の進め方は、次のとおりです。
- 解散を決めたとき(決議の前)税理士・司法書士に相談し、財産と債務を洗い出して通常の清算ができるかを確認します。準備物は決算書・試算表・固定資産台帳・契約書の一覧です。
- 解散日(株主総会)解散決議と清算人の選任を行い、議事録を作成します。
- 解散日から2週間以内解散登記・清算人選任登記を申請します。あわせて、官報公告の申込みと、知れている債権者への催告を速やかに行います。
- 解散日の翌日から2か月以内解散事業年度の申告・納付を済ませ、財産目録・貸借対照表について株主総会の承認を受けます。
- 公告期間の満了後債務の弁済と資産の換価を終え、残余財産を確定させます。
- 残余財産の確定日の翌日から1か月以内残余財産確定の事業年度の申告・納付をして、残余財産を株主に分配します。
- 決算報告の承認から2週間以内清算結了登記を申請し、税務署・道・市に清算結了の届出をします。
清算が半年〜1年程度で収まる場合でも、申告のタイミングを一つでも見落とすと期限を過ぎてしまいます。全体のスケジュール表を早めに作り、登記と申告の担当者で共有しておくと安心です。
見落としやすいポイントは?資産・従業員・許認可・契約
解散清算では、登記と税務のほかにも、並行して片付ける手続きが多くあります。後から気づくと清算結了が遅れるものを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 見落としやすい点 | 対応 |
|---|---|---|
| 在庫・固定資産の処分 | 処分・売却の譲渡損益は所得に含まれ、処分の時期によってどの事業年度の所得になるかが変わる | 処分の時期と方法を、申告のスケジュールとあわせて決める |
| 従業員の退職 | 社会保険・雇用保険の資格喪失、離職票の発行など、税務とは別の手続きが並行して発生する | 年金事務所への適用事業所の全喪届、ハローワークでの手続きを進める |
| 給与の源泉徴収 | 最後の給与の源泉所得税の納付と、給与を払わなくなった後の届出 | 給与支払事務所等の廃止届出書を、廃止の日から1か月以内に出す |
| 許認可の廃止届出 | 建設業や飲食業などの許認可は、解散にあわせて廃止の届出が必要になることがある | 業種ごとの窓口と期限を確認する |
| 取引先・リース契約 | 継続中の契約やリースが残っていると、清算結了までに解約や精算が必要になる | 契約書を洗い出し、解約条件を早めに確認する |
従業員の社会保険や雇用保険の手続きの基本は、人事労務・社会保険の最新情報でも確認できます。
財産で債務を払いきれないときは?特別清算・破産・休眠との違い
ここまでの流れは、会社の財産で債務をすべて払える場合の「通常の清算」です。財産より債務が多い債務超過の状態では、そのままでは清算を結了できません。中小企業では、社長からの借入金を免除して債務超過を解消し、通常の清算を進めることもあります。
| 方法 | 向いている状況 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 通常の清算 | 財産で債務をすべて払える | この記事の流れで進める。裁判所は関与しない |
| 特別清算 | 債務超過の疑いがあり、債権者の協力が得られる | 裁判所の監督のもとで、債権者の同意を得て清算する |
| 破産 | 債務超過で、債権者との合意が難しい | 裁判所が選んだ破産管財人が財産を換価・配当する |
| 休眠 | いずれ事業を再開する可能性がある | 法人格は残るため、申告や登記などの義務は続く |
経営者が会社の借入金の保証人になっている場合は、会社の整理とあわせて保証債務の扱いも検討が必要です。すぐに解散せず休眠させる場合の手続きは、休眠会社の手続きの流れで解説しています。
よくある質問
解散清算の手続きは、自分で進められますか?
登記や公告は自分で申請することもできます。ただし、申告は解散事業年度から残余財産確定時まで複数回あり、残余財産の確定後は1か月以内と期限が短くなります。税務は専門家と段取りを組むほうが安全です。
清算中の会社にも、法人住民税の均等割はかかりますか?
かかります。清算中も法人は存続しているため、清算結了までの期間に応じて均等割の負担が続きます。清算が長引くほど負担が増えるため、手続きは計画的に進めましょう。
解散日はいつにするのがよいですか?
本来の決算日に合わせると、解散事業年度が通常の1年と一致し、短い事業年度の申告が増えずに済みます。在庫や設備の処分の時期、従業員の退職日、契約の解約日とあわせて決めるのが実務的です。
清算結了の後に、税務調査を受けることはありますか?
清算結了の後も、過去の申告について調査を受けることがあります。清算結了の登記の後も一定の期間、帳簿と重要な資料を保存する義務があるため、保存する人と場所を決めておきましょう。
まとめ
会社の解散清算は、官報公告の2か月を軸に、最短でも3か月以上、税務申告まで含めると半年〜1年程度かかります。申告は複数回あり、残余財産の確定後は1か月以内と期限が短いうえ、社長借入金の免除やみなし配当など清算に特有の税金の論点もあります。解散を決めた段階で税理士・司法書士に相談し、全体のスケジュールを先に組むことが、期限切れと想定外の税負担を防ぐ近道です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
