令和9年度の税制改正、税理士会は何を求めたか|中小企業に効く5つの論点

  • URLをコピーしました!

2026年8月27日、日本税理士会連合会が「令和9年度税制改正に関する建議書」を財務大臣・国税庁長官・経済産業大臣・中小企業庁長官などの関係省庁に提出しました。建議書は税理士の実務目線でまとめた要望書です。この記事では、そのうち中小企業・個人事業主の手取りと事務負担に直結する5つの論点を取り上げます。結論から言えば、注目は「中小法人の軽減税率15%の維持」と「少額減価償却資産の基準を60万円未満へ」の2点です。いずれも決定事項ではなく要望の段階ですが、来年度の改正論議の出発点になります。

目次

何が起きたか(3行まとめ)

  • 日本税理士会連合会が2026年8月27日、令和9年度税制改正に関する建議書を関係省庁へ提出しました。
  • 建議書本体は令和8年6月25日付で、重要建議項目9本を含む構成です。
  • 中小企業に関係するのは、法人税率・少額減価償却資産・インボイス特例・申告期限・役員給与などの論点です。

出典:日本税理士会連合会「令和9年度税制改正に関する建議書等を関係省庁に提出」(2026年8月28日掲載)https://www.nichizeiren.or.jp/whats-new/20260828b//同「令和9年度税制改正に関する建議書」(令和8年6月25日)PDF

論点1:中小法人の軽減税率15%は維持を求めている

建議書は、中小法人に適用される法人税の軽減税率15%を維持すべきとしています。この特例は期限を区切って延長を繰り返してきた制度で、延長されるかどうかが毎年の関心事になっています。

国税庁タックスアンサーNo.5759によると、資本金1億円以下の普通法人などの年800万円以下の所得金額に対する税率は15%です。ただし令和7年4月1日以後に開始する事業年度のうち、所得金額が年10億円を超える事業年度は17%になります。本則の税率は19%です。

影響は小さくありません。年800万円以下の部分に15%と19%のどちらが適用されるかで、単純計算の差額は年32万円です。利益が安定して出ている法人ほど、この一行の行方が資金繰り計画に響きます。

出典:国税庁タックスアンサー「No.5759 法人税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm(令和7年4月1日現在の法令等による)

論点2:少額減価償却資産の基準を「60万円未満」に統一

建議書のなかでも実務インパクトが大きいのがこの項目です。現行10万円未満とされている少額減価償却資産の取得価額基準を、60万円未満に統一すべきとしています。理由として、物価上昇と設備投資の促進が挙げられています。

少額減価償却資産とは、取得価額が一定額未満で、買った年に全額を経費にできる資産のことです。仮に基準が60万円未満になれば、たとえば1台40万円の業務用パソコンや厨房機器を、耐用年数にわたって配分せずその期の経費にできます。固定資産台帳の管理点数も、償却資産税の申告対象も減ります。

ただし、これはあくまで要望です。現時点で40万円の資産を一括経費にできるわけではありません。実際の取扱いは、その時点の法令に従います。

論点3:インボイスの2割特例・少額特例の継続

建議書は、消費税の2割特例と、小規模事業者のインボイス保存不要特例(少額特例)について、令和11年以降も継続すべきとしています。

2割特例は、免税事業者からインボイス発行事業者になった方が、納付税額を売上税額の2割に抑えられる負担軽減措置です。少額特例は、一定規模以下の事業者について少額の取引でインボイスの保存を不要とするものです。どちらも期間を限った措置として設けられており、期限後の扱いが小規模事業者の関心事になっています。

建議書にはこのほか、消費税の複数税率を廃止して単一税率に戻すべきという項目や、簡易課税のみなし仕入率を実態に合わせて見直すべきという項目も含まれています。

論点4:申告期限を延ばしてほしいという要望

期限まわりでは、次の2つが挙げられています。

  • 法人税:電子申告を行う場合、申告期限を事業年度終了から3か月以内とすること(決算の確定時期との整合が理由)
  • 所得税:確定申告期限を3月15日から3月31日へ延長すること

3月決算法人であれば、申告期限が2か月以内から3か月以内になると、株主総会・決算確定・申告のスケジュールに余裕が生まれます。個人事業主にとっても、3月末までの2週間は繁忙期の負担を左右します。

論点5:役員給与と事業承継

役員給与については、業績悪化による減額改定の要件緩和、新設法人の定期同額給与の判定の柔軟化、事前確定届出給与の支給日に数日の幅を認めることが挙げられています。いずれも「実務では起きるのに、税務上は認められにくい」場面への手当てです。

事業承継では、法人版事業承継税制の一般措置に代えて、対象資産を事業用に限定し、一定年数の要件充足で免除する新たな贈与税・相続税の猶予制度を創設すべきとしています。取引相場のない株式の評価方法の適正化も、重要建議項目の筆頭に置かれています。

中小企業・個人事業主への影響

建議書は要望であって、決定でも予告でもありません。ここに書かれた内容がそのまま制度になるとは限らず、実際の改正は年末の税制改正大綱を経て、翌年の法案審議で固まります。

それでも読む価値があるのは、論点の所在がわかるからです。設備投資の時期、役員報酬の決め方、事業承継の準備といった中期の意思決定は、制度が動く方向を知っているかどうかで組み立て方が変わります。とくに少額減価償却資産の基準と中小法人の軽減税率は、変わった場合の影響が金額で見えやすい項目です。

今やるべきこと

  • 設備投資の予定がある場合、現行制度での取扱い(10万円・20万円・30万円の各基準と、中小企業者等の少額減価償却資産の特例)を前提に、いま損金にできる金額を確認しておく
  • 2割特例を使っている場合、適用できる期間と、その後の納税額の見込みを試算しておく
  • 今期の役員報酬の設定と、業績が想定を下回った場合の対応方針を、期首の段階で整理しておく
  • 年末の税制改正大綱の公表を待ち、確定した内容で計画を見直す

まとめ

  • 日本税理士会連合会が2026年8月27日、令和9年度税制改正の建議書を関係省庁へ提出しました。
  • 中小法人の軽減税率15%の維持、少額減価償却資産の基準を60万円未満に統一することが盛り込まれています。
  • インボイスの2割特例と少額特例は、令和11年以降の継続を求めています。
  • 法人税の申告期限3か月、所得税の申告期限3月31日への延長も挙げられています。
  • いずれも要望の段階です。確定するのは年末の税制改正大綱以降です。

設備投資の時期や役員報酬の設計など、制度の動きを踏まえた個別のご相談は、ジェイスタート会計事務所へお気軽にお問い合わせください。

※本記事は2026年9月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次