土木工事業に強い税理士を選ぶときは、建設業会計(完成工事高・未成工事支出金など)、工事ごとの原価管理、経営事項審査(経審)を見据えた決算への対応経験があるかを確認します。顧問料は金額だけでなく、経審用の決算対応や給与計算が範囲に含まれるかをそろえて比べると、依頼後のずれを防げます。
この記事の結論
土木工事業の税理士選びは「建設業会計・原価管理・経審」の3つに対応できるかが軸です。顧問料は業務の範囲で決まるため、範囲をそろえて比べます。
- 完成工事高・未成工事支出金など建設業独自の科目と、期をまたぐ工事の処理に慣れているか
- 工事台帳と会計を連動させ、現場ごとの粗利を毎月確認できる仕組みをつくれるか
- 経審の評点や建設業許可の決算変更届を見据えた決算に対応できるか
- 重機の税制、償却資産の申告、外注費と給与の区分など、土木特有の税務を説明できるか
- 顧問料は規模・記帳の分担・経審対応の有無で決まる。金額は範囲をそろえた見積もりで比べる
札幌で税理士をお探しの方は、札幌市10区の税務の窓口や顧問料の決まり方、ご相談から契約までの流れをまとめた「札幌の税理士|公認会計士・税理士が対応する会計事務所」もご覧ください。
土木工事業に強い税理士はどう見分ける?
土木工事業の経理は、工事ごとの原価管理や公共工事への対応など、一般の業種にはない論点が多くあります。税理士にはそれぞれ得意分野があるため、面談では次の経験があるかを具体的に確かめます。
| 確認したい経験 | 土木工事業で重要な理由 | 面談での聞き方の例 |
|---|---|---|
| 建設業会計 | 決算書の様式や科目が一般の業種と異なり、許可申請や経審でそのまま使う | 「完成工事原価報告書を含む建設業の決算書を、どの程度作成していますか」 |
| 工事別の原価管理 | 赤字現場の早期発見と、見積りの精度に直結する | 「工事台帳と会計をどのように連動させていますか」 |
| 経審・許可を見据えた決算 | 決算の数字が評点や許可の手続きに影響する | 「経審の評点を意識した決算の進め方を教えてください」 |
| JV・公共工事 | 出資割合に応じた取り込みや、構成員間の精算が必要になる | 「JVの会計処理を扱ったことはありますか」 |
| 土木特有の税務 | 重機の取得、償却資産の申告、外注費と給与の区分など論点が多い | 「重機を買うときに使える税制を教えてください」 |
建設業会計は、一般の商業簿記とは勘定科目の呼び方が異なり、決算書の様式も建設業独自です。この様式に慣れていない税理士だと、許可申請や経審の場面で手間取ることがあります。答えが抽象的なときは、実際の決算書の様式を見せてもらいながら説明を受けると判断しやすくなります。
建設業会計は何が違う?科目と売上の計上時期
建設業会計では、売上を「完成工事高」、原価を「完成工事原価」と表現するなど、科目の名前が変わります。完成工事原価は、材料費・労務費・外注費・経費の4つに分けて報告するのが特徴です。
| 一般の会計 | 建設業会計 | 内容 |
|---|---|---|
| 売上高 | 完成工事高 | 完成して引き渡した工事の請負代金 |
| 売上原価 | 完成工事原価 | 完成した工事の材料費・労務費・外注費・経費 |
| 仕掛品 | 未成工事支出金 | 期末に完成していない工事に使った原価 |
| 前受金 | 未成工事受入金 | 完成していない工事について受け取った前払金・中間金 |
| 売掛金 | 完成工事未収入金 | 完成した工事の未回収の代金 |
| 買掛金 | 工事未払金 | 工事の材料費・外注費などの未払い |
工事完成基準と工事進行基準
中小の土木工事業では、工事が完成して引き渡した期に売上を計上する工事完成基準が一般的です。法人税では、工期が1年以上で請負の対価が10億円以上などの要件を満たす長期大規模工事は工事進行基準が強制され、それ以外の期をまたぐ工事も進行基準で経理することを選べます。
期末の工事は税務調査で見られやすい
決算日の直前に完成・引渡しを終えた工事を未成工事として翌期に回すと、売上の計上漏れとして指摘されます。逆に、未完成の工事の原価を完成工事原価に入れると、利益が過少になります。完成日を引渡書や検査の記録で確認できるようにしておくことが大切です。
具体例:3月決算の会社の期末の工事
例えば、3月決算の会社が次の2つの工事を抱えている場合です。
- 3月25日に完成・引渡しを終え、代金の入金は4月末の工事:当期の完成工事高に計上し、未回収の代金は完成工事未収入金にする
- 3月末時点で施工中の工事:使った材料費・外注費などは未成工事支出金、受け取った前払金は未成工事受入金とし、完成した期に売上と原価を計上する
原価管理とJV対応はなぜ差が出る?
土木工事業の利益は、現場ごとの原価管理で決まると言っても過言ではありません。材料費・外注費・労務費・経費を工事別に集計できる体制があれば、赤字現場を早く把握でき、見積りの精度も上がります。
複数の現場を同時に動かしている会社では、どの工事で利益が出て、どの工事で持ち出しになっているかが見えにくくなりがちです。工事台帳と会計を連動させ、現場ごとの粗利を毎月確認できるようにすると、経営判断の材料になります。仕組みづくりでは、次の点を決めておきます。
- 工事番号(現場コード)を決め、請求書・領収書・外注先の請求書に記入してもらう
- 材料費・労務費・外注費・経費の4区分で、工事別に原価を集計する
- 重機の燃料費や回送費など、複数の現場に共通する費用の配賦ルールを決める
- 実行予算と実績を毎月比べ、赤字の兆しがある現場を早めに把握する
JV(共同企業体)で工事を受注する場合は、出資割合に応じた収益・費用の取り込みや、構成員間の精算など、通常より複雑な処理が発生します。JVの決算と自社の決算の時期がずれる場合の取り込み方も含めて、処理の経験があるかを確認しておきたいポイントです。
外注費と給与の区分も原価管理の一部
一人親方への支払いを外注費として処理していても、作業時間の拘束や指揮監督の実態から給与と判断されると、源泉所得税の納付漏れと、消費税の仕入税額控除の否認が同時に起こります。契約書・請求書・材料や道具の負担の状況をそろえ、実態に合った区分にしておくことが大切です。
経営事項審査(経審)と決算はどう関係する?
公共工事を直接請け負うには、経営事項審査(経審)を受ける必要があります。経審は、国や地方公共団体などが発注する公共工事を直接請け負う建設業者が受ける客観的な評価です(国土交通省)。対象となるのは、おおむね工事1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の公共工事を直接請け負う場合です。
| 評価の項目 | 主な内容 | 決算・会計との関係 |
|---|---|---|
| X1(完成工事高) | 工事の種類別の完成工事高 | 土木一式・とび・土工などの工事の種類ごとに完成工事高を集計しておく |
| X2(自己資本額・利益額) | 自己資本の額と、利払前税引前償却前利益 | 自己資本の充実と、利益の計上の仕方が影響する |
| Y(経営状況) | 負債・収益性・キャッシュフローなどの財務指標 | 登録経営状況分析機関の分析を受け、決算書の数字がそのまま使われる |
| Z(技術力) | 技術職員の数、元請の完成工事高 | 元請と下請の工事を区分して集計しておく |
| W(社会性等) | 社会保険の加入、建設機械の保有、防災活動への協力など | 社会保険の加入状況や機械の保有状況を示す資料をそろえる |
経審の結果には決算書の数値が大きく影響するため、日頃の決算の組み方が評点を左右します。自己資本の充実や利益の計上の仕方など、決算を意識した助言ができる税理士だと、評点対策の面で心強い存在になります。
評点のために事実と異なる処理はしない
架空の完成工事高の計上や、未成工事と完成工事の付け替えは、虚偽の申請として許可や入札に重大な影響を与えるおそれがあります。評点の対策は、自己資本の積み上げ、工事の種類別の正確な集計、社会保険の加入など、実態を伴う方法で進めます。
北海道では、経営事項審査は建設部の所管窓口で扱われます。毎年、決算後速やかに審査を受け、有効期間(審査基準日からおおむね1年7か月)が切れ目なく続くよう手続きする必要があります。建設業許可を持つ会社は、毎事業年度の終了後に決算変更届も提出し、これが経審の前提になります。具体的な窓口と受付の流れは、北海道の担当窓口で確認してください。
経審を見据えた決算の組み方や、工事の種類別の集計方法は、会社の工事の内容によって変わります。初回無料で現状を確認できます。
無料で相談する土木工事業で多い税務の論点は?
土木工事業は、重機などの設備投資が大きく、外注や現場の経費も多い業種です。顧問の税理士には、次のような論点で具体的な提案や確認ができるかを求めたいところです。
| 論点 | 押さえたいポイント |
|---|---|
| 重機・車両の取得 | 中小企業経営強化税制(即時償却か税額控除10%、資本金3,000万円超は7%)、中小企業投資促進税制(特別償却30%か税額控除7%)。いずれも2027年3月31日までの取得・事業供用が対象で、事前の手続きが必要なものもある |
| 少額の工具・機器 | 2026年4月1日以後の取得は、40万円未満なら少額減価償却資産の特例で一括経費(年300万円まで) |
| 重機の固定資産税 | 大型特殊自動車に当たる建設機械やナンバーのない建設機械は、自動車税ではなく償却資産として市町村に申告する |
| 消費税 | 簡易課税では建設業は第3種(70%)、材料の無償支給を受けて労務だけを提供する工事は第4種(60%) |
| 免税の一人親方への外注 | 課税仕入れの日が2026年10月1日〜2028年9月30日のものは、仕入税額の70%が控除の対象 |
| 交際費 | 中小法人は年800万円までの損金算入か、接待飲食費の50%損金算入の選択(2027年3月31日までに開始する事業年度)。1人10,000円以下の飲食は交際費から除外できる |
| 防衛特別法人税 | 2026年4月1日以後に開始する事業年度から、(基準法人税額−500万円)×4%。税額が0でも申告が必要 |
公共工事の受注には年ごとの波があり、赤字の期が出ることもあります。法人税の欠損金は10年繰り越すことができ、中小法人は翌期以後の所得の全額まで控除できます。黒字の期と赤字の期の見通しを決算前に立てておくと、設備投資のタイミングも判断しやすくなります。
無料ツール繰越欠損金の控除限度を自動計算する欠損金の残高と所得の見込みを入れるだけで、その期に控除できる金額の目安を確認できます。計算する
札幌・北海道の土木工事業者が押さえたい地域の事情は?
札幌市内に本店がある土木工事業者の場合、申告先や地方税の税率、保険料率は次のとおりです。税理士を選ぶときも、こうした地域の手続きに慣れているかが実務のスムーズさにつながります。
| 項目 | 札幌・北海道での扱い |
|---|---|
| 法人税・消費税の申告先 | 本店所在地を管轄する税務署(例:北区・東区は札幌北、白石区・厚別区は札幌東、豊平区・南区・清田区は札幌南、西区・手稲区は札幌西。中央区はおおむね西10丁目以東が札幌中、それより西側は札幌西) |
| 書面の申告書の郵送先 | 2026年7月10日から、市内5署の内部事務を集約した札幌業務センター(e-Taxや窓口への持参は所轄の税務署) |
| 法人道民税・法人市民税の法人税割 | 道民税1.0%・市民税6.0%(資本金1億円以下かつ法人税額1,000万円以下の法人)、それ以外は1.8%・8.2% |
| 均等割(資本金等1,000万円以下・従業者50人以下) | 北海道2万円+札幌市5万円=年7万円(赤字でもかかる) |
| 償却資産の申告(札幌市) | 毎年1月31日まで(休日は翌開庁日)。免税点は令和9年度分から180万円(令和8年度分までは150万円) |
| 雇用保険料率(建設の事業) | 2026年4月1日〜2027年3月31日は16.5/1000(令和7年度は17.5/1000) |
| 北海道の最低賃金 | 2026年10月1日から1,131円 |
| 札幌市の制度融資 | 2026年10月1日以降の実行分は、利率が0.3%上乗せ |
冬の施工減と年度末の集中に備える
道内の土木工事は冬に施工が減り、公共工事は年度末に完成・引渡しが集中しやすい傾向があります。冬場の人件費や重機のリース料は売上が少ない時期にも出ていくため、運転資金の手当てを秋のうちに検討しておくと安心です。
決算月が完成の集中する時期と重なると、期末の未成工事の確認や決算作業が繁忙期とぶつかります。決算月の変更も含めて、事務の負担と納税資金の準備のしやすさで検討する方法があります。
労務費の上昇は原価にも直結します。人事労務や保険料の動きは人事労務・最低賃金・社会保険の情報のまとめで、財務の目安は業種別の財務指標の目安で確認できます。
顧問料はどう決まる?依頼前に確認したいこと
顧問料は事業規模や依頼の範囲で大きく変わります。金額だけで比べると、後から「この作業は別料金」と判明することもあるため、何によって金額が決まるかを理解したうえで見積もりを比べます。
| 費用が決まる要素 | 土木工事業での考え方 |
|---|---|
| 売上規模・工事件数 | 工事件数が多いほど、工事別の集計と期末の未成工事の確認に手間がかかる |
| 記帳の分担 | 自社で会計ソフトに入力するか、記帳代行まで含めるか |
| 月次の面談の頻度 | 毎月の試算表と現場ごとの粗利の確認を、どこまで一緒に行うか |
| 経審・許可への対応 | 経審を意識した決算や、決算変更届に使う財務諸表の準備を範囲に含めるか |
| 給与計算・年末調整 | 現場作業員の給与計算や源泉所得税、年末調整まで依頼するか |
| JV・関係会社 | JVの処理や、関係会社の申告まで含めるか |
依頼前に次の点を確認しておくと、認識のずれを防げます。
- 月次の訪問・面談の頻度と、記帳代行の有無
- 決算申告料が顧問料に含まれるか、別途か
- 建設業許可の更新資料や経審用の決算対応が範囲に入るか、行政書士とどう連携するか
- 年末調整や給与計算など、付随業務の料金
- 工事台帳や会計ソフトの運用の支援を含むか
- 税務調査の立会いの扱い
当事務所は、土木工事業を含む建設業のご相談に対応しています。継続的な顧問契約で記帳・決算・申告と原価管理の体制づくりを支援しており、決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。支援の範囲は会計・税務顧問のサービス内容でご確認いただけます。
よくある質問
建設業許可の決算変更届や経審の申請も、税理士に頼めますか?
届出書や経審の申請書を作成して提出する手続きは、行政書士の業務です。税理士は、届出や申請の基礎になる決算書の数字を整え、行政書士と連携して進めるのが一般的です。依頼する前に、どこまでを誰が担当するかを確認しておきます。
下請の工事が中心で公共工事を受けない場合も、建設業会計は必要ですか?
建設業許可を持っていれば、毎年の決算変更届で建設業の様式の財務諸表が必要になります。また、工事別の原価管理は下請中心の会社でも利益を守る基本です。将来、元請や公共工事に広げる可能性があるなら、早めに建設業会計で整えておくと移行がスムーズです。
公共工事の前払金を受け取ったら、売上に計上してよいですか?
工事が完成していない段階で受け取った前払金は、売上ではなく未成工事受入金として処理し、完成・引渡しの期に売上へ振り替えます。公共工事の前払金は使い道が工事の費用に限られ、専用の口座で管理するのが一般的なため、入出金の記録も工事ごとに整理しておきます。
インボイスのない一人親方への外注費は、経費になりませんか?
法人税の計算では、実際に支払った外注費であれば損金になります。インボイスが関係するのは消費税の仕入税額控除で、免税事業者からの仕入れは、課税仕入れの日が2026年10月1日〜2028年9月30日なら70%が控除の対象です。帳簿には経過措置の適用分であることを記載します。
今の税理士が建設業に詳しくない場合、途中で変更できますか?
変更はいつでも可能ですが、決算と申告が終わった後のタイミングが引継ぎをしやすい時期です。過去の申告書、総勘定元帳、固定資産台帳、工事台帳、未成工事の明細を新しい税理士に引き継げるよう準備しておきます。
まとめ
土木工事業の税理士選びは、建設業会計、工事別の原価管理、経審を見据えた決算の3つに対応できるかが軸です。重機の税制や償却資産、外注費と給与の区分など土木特有の税務も、面談で具体的に確認しましょう。顧問料は業務の範囲で決まるため、経審対応や給与計算の有無をそろえて比べることが、依頼後のずれを防ぐ近道です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
土木工事業の会計・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
