「仕訳の入力が終わらない」「freeeやマネーフォワードはAI連携が進んでいるのに、うちは弥生会計だから…」。そんな声を最近よく聞きます。結論からお伝えすると、デスクトップ版の弥生会計でも、AIに仕訳登録の大部分を任せることは可能です。公式のAI連携(MCP)がなくても、「AIが作った仕訳データを取り込む」「AIがパソコンごと操作する」という2つのルートがあるからです。本記事では、税理士・公認会計士の事務所として実際に検証している手順を、コピペで使えるプロンプト例と図解つきで解説します。

弥生会計(デスクトップ版)とAIはつなげられる?【全体像】
まず前提の整理です。弥生会計 26は、27年連続売上実績No.1をうたうデスクトップ型の会計ソフトです(弥生公式サイトより。全国主要家電量販店等2,350店のPOS実売統計)。Windowsパソコンにインストールして使う「買い切り+保守サポート」型で、多くの中小企業と会計事務所が今も現役で使っています。
一方、AI連携の世界では2026年8月時点で明暗が分かれています。クラウド会計のマネーフォワードやfreeeは、AIと直接つながる公式の連携窓口(MCP=AIがソフトを操作するための接続規格)を提供済みです。これに対して、デスクトップ版の弥生会計には公式のAI連携窓口がありません。
「では弥生ユーザーはAI活用をあきらめるしかないのか」というと、そうではありません。次の2つのルートを使えば、仕訳登録の実務はAIに任せられます。
- ルートA(データ連携):AIが仕訳データ(CSV)を作成し、弥生会計の標準機能「スマート取引取込」または「インポート」で取り込む
- ルートB(画面操作):Claude CoworkのPC操作機能で、AIが弥生会計の画面そのものを操作する
ここで登場する「Claude Cowork(クロード・コワーク)」は、AI開発企業Anthropic(アンソロピック)が提供する、パソコン上の実務をAIに任せるための機能です。デスクトップアプリでフォルダを接続すると、AIがファイルの読み書き・資料作成・ブラウザ操作などを代行します(Anthropic公式ヘルプ)。有料プラン(Pro以上)で利用でき、Windows・Mac両対応です。

導入前後の変化はシンプルです。これまで人が行っていた「資料を見る→科目を考える→入力する→検算する」のうち、入力と下書き作成をAIが担当し、人は確認と判断に集中する形になります。入力担当が一人増えるイメージに近く、月次の作業構成が変わります。
なお、マネーフォワード クラウド会計をお使いの方は、公式連携(MCP)を使ったマネーフォワード×Claude連携ガイドを先にご覧ください。本記事はその弥生会計(デスクトップ版)編です。
3つの方法、どれを選ぶ?

ルートAはさらに2つに分かれます。それぞれの特徴と向き不向きを整理すると、次のとおりです。
| 方法 | 難易度 | 向いているケース |
|---|---|---|
| A-1:スマート取引取込のCSVファイル取込 | 低い | 銀行・カード明細が中心。科目の推測は弥生に任せたい |
| A-2:仕訳日記帳インポート(弥生形式) | 中程度 | 科目・税区分までAIに指定させたい。複合仕訳も扱いたい |
| B:CoworkのPC操作 | 中程度 | 取込操作や月次の定型作業ごと任せたい。複数社を回したい |
初めての方はA-1から試すのがおすすめです。慣れてきたらA-2で精度を上げ、Bで操作ごと自動化する、という段階的な進め方が定着しやすいと感じています。
事前準備:弥生会計側とClaude側のチェックリスト
準備は難しくありません。弥生会計側とClaude側で、それぞれ次の点を確認してください。
弥生会計側の準備(3項目)
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品・グレード | 弥生会計 26 スタンダード/プロフェッショナルのいずれも可。A-2のインポートは標準機能 |
| あんしん保守サポート | A-1・Bで使う「スマート取引取込」は、あんしん保守サポート(無料導入サポートを含む)への加入が利用条件(弥生公式サポート情報) |
| バックアップ | 事業所データのバックアップ方法を事前に確認。インポートした仕訳は「元に戻す」ができないため、取込前のバックアップが前提(弥生公式サポート情報) |
Claude側の準備(3ステップ)
- Claudeの有料プラン(Pro以上)に登録し、パソコンにデスクトップアプリをインストールする
- 入力欄で「Cowork」を選び、明細や証憑を入れたフォルダを接続する(接続したフォルダの中だけをAIが読み書きします)
- ルートBまで使う場合は、設定からPC操作(コンピュータ操作)を有効にする。この機能はPro・Maxプラン向けのリサーチプレビュー(試験提供)です(Anthropic公式ヘルプ)
なお、会計データという機密情報を扱う以上、「どのフォルダ・どのアプリへのアクセスを許可するか」は最小限に絞るのが原則です。この点は記事後半の安全ルールで詳しく説明します。
実践①:Claudeが仕訳データを作成→弥生会計へ取り込む【ルートA】
ルートAの本質は「AIが弥生会計の読める形式でデータを書き、弥生会計の標準機能で受け取る」ことです。手作業のコピー&ペーストは発生しません。ここではA-1とA-2を順に、実際の手順書として解説します。
A-1:スマート取引取込「CSVファイル取込」を使う(まずはここから)

スマート取引取込は、銀行明細やレシートなどの取引データを自動で仕訳に変換する弥生の公式サービスです。取り込んだデータは「YAYOI SMART ENGINE」が科目を推測し、使うほど精度が上がる学習機能を備えています(弥生公式サイト)。このサービスには手元のCSVファイルを読ませる「CSVファイル取込」があり、ここにClaudeが作ったデータを渡します。
Claudeに作らせるCSVは、次のシンプルな形式です(弥生公式のファイル形式仕様を基に主要項目を抜粋)。
| 列 | 項目 | 書き方のルール |
|---|---|---|
| 1 | 日付 | 「2026/04/01」など西暦4桁で。和暦(R08/04/01等)も可 |
| 2 | 入金 | 金額を整数で。該当しない行は空欄 |
| 3 | 出金 | 金額を整数で。該当しない行は空欄 |
| 4 | 摘要 | 取引先名・内容。科目はここから推測されるため省略しない(80文字まで) |
手順は次の6ステップです。
- 通帳コピー(PDF)やカード明細をフォルダに入れ、Coworkでそのフォルダを接続する
- 下のプロンプト例①を貼り付けて実行し、CSVを作らせる
- Claudeが報告する「件数・入金合計・出金合計」を、原本の資料と突き合わせる
- 弥生会計のクイックナビゲータ「取引」→「スマート取引取込」からWeb画面を開き、「CSVファイル取込」にファイルをドラッグ&ドロップする(列の割り当ては初回のみ設定。最大10パターン保存可)
- 「未確定の取引」画面で科目の推測結果を確認・修正し、登録を確定する
- 弥生会計側で再度スマート取引取込を実行し、「◯件の仕訳を取得しました」→バックアップ→取込完了、と進める(弥生公式運用ガイドPDF)
コピペで使えるプロンプト例①です。金額を触らせない指示と、検算報告の指示がポイントです。
あなたは経理担当です。添付の通帳コピー(PDF)を読み取り、
弥生会計「スマート取引取込」のCSVファイル取込用データを
作成してください。
■出力形式(CSV/Shift-JIS/ヘッダー行なし)
日付,入金,出金,摘要
・日付は「2026/04/01」形式(西暦4桁)
・入金・出金は整数。カンマや円マークは付けない。該当しない側は空欄
・摘要には通帳の記載内容をそのまま残す(科目の推測に使われるため)
■ルール
・金額と日付は原本の記載どおり。推測で補わない
・読み取りに自信がない行はCSVに入れず、最後に「要確認リスト」として別掲
・出力後、件数・入金合計・出金合計を報告する
実務上のコツを1つ。明細の件数が多い場合、1回のアップロードを欲張らないことです。当事務所の検証では、150件前後を目安にファイルを分割すると安定して取り込めています。プロンプトに「150件ごとにファイルを分けて」と一言添えれば、分割もAIがやってくれます。
A-2:仕訳日記帳インポート(弥生形式)を使う(科目までAIに任せる)

A-1では科目の推測を弥生側のエンジンに任せました。A-2では、勘定科目・税区分まで指定した「完成形の仕訳」をClaudeに作らせ、仕訳日記帳へ直接インポートします。振替伝票形式の複合仕訳にも対応でき、会計事務所や経理経験者に向くルートです。
弥生会計の仕訳インポート形式は、1行=1仕訳を25項目のカンマ区切りで表すテキストデータです。主要な項目だけ押さえれば十分です(弥生公式「仕訳データの項目と記述形式」を基に抜粋)。
| 位置 | 項目 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 識別フラグ | 仕訳日記帳なら「2000」。振替伝票は1行目2110・中間行2100・最終行2101、1行伝票は2111 |
| 4 | 取引日付 | 「2026/04/01」など。会計期間内であること |
| 5〜10 | 借方(科目・補助・部門・税区分・金額・税金額) | 科目名・税区分は弥生会計の登録名と同じ表記にする。金額は税込の整数 |
| 11〜16 | 貸方(同上) | 借方と同じルール |
| 17 | 摘要 | 64文字まで。取引内容を残す |
| 20 | タイプ | 通常仕訳は「0」 |
| 25 | 調整 | 通常は「no」 |
ここで最大のコツをお伝えします。仕様書をゼロからAIに説明するのではなく、自社の弥生会計から仕訳を数行「エクスポート」して、見本として渡すことです。仕訳日記帳を開き「ファイル」→「エクスポート」で書き出したテキストには、識別フラグも科目名も税区分も、自社の正しい表記で全項目が入っています。AIはこの見本の形式をまねるため、「科目名が1文字違って取り込めない」「税区分の表記が合わない」という失敗が激減します。
コピペで使えるプロンプト例②です。
添付の「見本.txt」は、当社の弥生会計からエクスポートした
仕訳データです。勘定科目・補助科目・税区分は、この見本に
登場する表記だけを使ってください。
見本と同じ形式(識別フラグ2000・25項目・カンマ区切り)で、
添付のクレジットカード明細から仕訳データを作成してください。
■条件
・日付は「2026/04/01」形式、金額は税込の整数
・貸方はすべて「未払金」、借方科目は明細の内容から判断
・科目に迷う明細は借方「仮払金」とし、摘要末尾に【要確認】を付ける
・出力はShift-JISのテキストファイルとして保存する
・出力後、件数と借方・貸方の合計金額を報告する
取込は、仕訳日記帳を開いて「ファイル」→「インポート」から実行します。科目名がデータと一致しない場合は「勘定科目マッチングリスト」が表示されるので、対応する科目を選べば取り込めます(弥生公式サポート情報)。注意点は2つ。インポート後にデータを取込前の状態へ戻すことはできないため、直前のバックアップを習慣にすること。同じファイルを2回インポートしても警告が出ず重複登録されるため、取込済みファイルはフォルダを分けて管理することです。
取込後の検算は「人の仕事」として残す

どちらの方法でも、取込後のチェックは人が行います。といっても全件見直しではなく、ポイントを絞った検算です。具体的には、①件数が資料と一致しているか、②入出金・借方貸方の合計が原本と一致しているか、③試算表で残高に違和感がないか(普通預金残高が通帳と合うか等)、④【要確認】を付けた仕訳の科目判断、の4点です。AIに合計を報告させ、人が原本と突き合わせる二重チェックにすると、確認は数分で終わります。
実践②:CoworkのPC操作で弥生会計を直接動かす【ルートB】

ルートBは、Claude Coworkの「PC操作(コンピュータ操作)」機能を使い、AIが人と同じように画面をクリック・入力して弥生会計を操作する方法です。Anthropicの公式ヘルプでは、クリック・文字入力・アプリの起動を人と同じように行い、アプリごとにユーザーの許可を得てから操作する仕組みと説明されています(Anthropic公式ヘルプ)。
データ連携の窓口がないデスクトップソフトでも、画面操作なら任せられる。これがルートBの価値です。弥生会計まわりでは、次のような使い方が考えられます。
- スマート取引取込の実行(確定済み取引の会計データへの取込)を任せる
- A-1・A-2で作ったCSVのアップロードや取込操作まで、通しで任せる
- 月次の定型操作(起動→取込→結果の記録→終了)を繰り返し任せる
当事務所でも、複数の法人データについて「弥生会計を起動→スマート取引取込を実行→取得件数を記録→終了」というサイクルをCoworkに任せる運用を検証しています。ポイントは、金額の修正はAIに行わせず、取込の実行と結果の記録に役割を絞ることです。
依頼文はシンプルで構いません。コピペで使える例を挙げます。
弥生会計 26 を起動して、スマート取引取込を実行してください。
・期間などの設定は既定のまま変更しない
・「◯件の仕訳を取得しました」と表示されたら、バックアップを
取ったうえで取込を完了する
・取得件数と、修正が必要な取引の有無を最後に報告する
・金額や科目の修正はしない(気づいた点は報告のみ)
実行中、弥生会計へのアクセス許可を求めるダイアログが表示されるので承認します。制約も正直にお伝えします。この機能はリサーチプレビュー段階で、対象はPro・Maxプランのみ。パソコンをスリープさせず起動したままにする必要があり、操作速度は人より遅めです。また、Anthropic自身が「財務データを扱うアプリへの許可は慎重に」と注意喚起しています。会計データを扱う以上、後述の安全ルールとセットで使うことが前提です。
安全に使うための5ルールとよくある質問

AI×会計データの組み合わせは、便利さと同じだけ慎重さが求められます。当事務所が運用で守っている5つのルールです。
- 取込前バックアップを省略しない:インポートは取込前の状態に戻せません。「バックアップ→取込」を1セットの動作にします
- 少量でテストしてから本番:初回は5〜10件で形式・科目・税区分を確認し、問題なければ当月分に広げます
- 金額はAIに直させない:読み取った金額の「修正」を指示せず、合計の検算報告だけさせ、原本との照合は人が行います
- 渡すデータと許可は最小限:接続フォルダは作業用に分け、不要な個人情報はマスキング。PC操作のアプリ許可も業務に必要な範囲に絞ります
- 最終判断は人:科目・税区分の判断や決算整理は、試算表を見ながら人が確定します。AIは「下書き担当」と位置づけます
Q1. 弥生会計 オンラインや弥生会計 Nextでも同じことができますか?
本記事の手順はデスクトップ版向けですが、考え方は共通です。クラウド製品にもCSV取込機能があるため、ルートAの応用が可能です。なお2026年8月時点で、弥生製品には各AIとの公式連携(MCP)は提供されていません(当事務所調べ)。今後の対応に期待したいところです。
Q2. 費用はどのくらいかかりますか?
弥生側は、スマート取引取込を使う場合にあんしん保守サポートへの加入が条件です(プラン・料金は弥生公式の価格表参照)。A-2のインポートだけならソフトの標準機能で追加費用はありません。Claude側は有料プラン(Pro以上)が必要です。
Q3. AIが作った仕訳はどこまで信用できますか?
「日付・金額の転記」は見本方式なら高い精度が期待できますが、「科目の判断」には誤りが混ざる前提で運用します。だからこそ、迷う仕訳に【要確認】を付けさせるプロンプト設計と、人の検算・試算表チェックをセットにしています。精度は見本の質(過去仕訳の蓄積)で大きく変わります。
Q4. 顧問税理士がいる場合、勝手に進めて大丈夫ですか?
事前に一声かけることをおすすめします。科目や税区分のルールは事務所ごとに運用があり、見本データの選び方にも関わるためです。取込ルールを共有しておけば、月次チェックもスムーズになります。当事務所のように、税理士側がAI取込の仕組みづくりごと支援するケースも増えています。
Q5. インボイスや電子帳簿保存法への対応はどうなりますか?
取り込んだ後の仕訳がインボイス制度・電子帳簿保存法に対応する点は、通常の手入力と同じです。一方、適格請求書の有無による税区分の判定や証憑の保存要件は、AI取込でも省略できません。迷う場合は要件を整理したうえで運用ルールを決めましょう。
まとめ:デスクトップ版でも「AIに仕訳登録を任せる」は現実的
- 公式のAI連携(MCP)がないデスクトップ版弥生会計でも、「データ連携(ルートA)」と「画面操作(ルートB)」でAI活用は可能
- 入門はA-1(スマート取引取込のCSVファイル取込)。慣れたらA-2(弥生形式インポート)で科目指定まで任せる
- A-2成功のカギは、自社仕訳をエクスポートした「見本」をAIに渡すこと
- 取込前バックアップ・少量テスト・人の検算という安全ルールをセットで運用する
ジェイスタート会計事務所では、弥生会計・クラウド会計を問わず、AIを組み込んだ経理体制づくりを支援しています。「自社の場合はどのルートが合うか」など、個別のご相談もお気軽にどうぞ。
参考(一次情報)
- 弥生会計 26 製品ページ(弥生株式会社)
- スマート取引取込(YAYOI SMART CONNECT)紹介ページ(弥生株式会社)
- CSVファイル取込のファイル形式(弥生株式会社サポート情報)
- 仕訳データの項目と記述形式(弥生株式会社サポート情報)
- スマート取引取込「CSVファイル取込」運用ガイド(弥生株式会社・PDF)
- Get started with Claude Cowork(Anthropic)
- Let Claude use your computer in Cowork(Anthropic)
※本記事は2026年8月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。
