行政書士事務所の税務は、報酬に源泉徴収がないこと、登録免許税などの立替金を売上と分けること、インボイスの2割特例後の選択が主な論点です。税理士に頼むなら、こうした士業の実務を具体的に説明できるかで選び、顧問料は任せる範囲を決めたうえで年間総額で比べます。
この記事の結論
行政書士事務所の会計で押さえるべきは「源泉徴収のない報酬の納税資金」「立替金の区分」「消費税の計算方法の選択」の3つです。税理士はこの3点を具体的に説明できるかで見極め、料金は年間総額で比べましょう。
- 行政書士報酬は源泉徴収されないため、確定申告と予定納税の資金を自分で確保する
- 登録免許税や役所の手数料などの立替金は、報酬と分けて請求・記帳する
- 2割特例は個人なら令和8年分まで。令和9・10年分は3割特例、その後は簡易課税か本則課税
- 顧問料は記帳の方法・取引量・給与計算の有無などで決まる。年間総額で比較する
- 当事務所は継続的な顧問契約で支援しており、申告だけのスポット依頼は受けていない
行政書士事務所の税務はどこが特殊か
許認可申請や相続、在留資格の手続きと忙しい行政書士ほど、自分の事務所の経理と確定申告は後回しになりがちです。一般の事業と違う点は、大きく分けて次の3つです。
報酬は源泉徴収されない=納税資金は自分で確保
弁護士・税理士・司法書士などへの報酬は、支払う事業者が所得税を源泉徴収します。行政書士の報酬はこの対象に含まれていないため、例えば30万円の許認可案件なら、全額がそのまま入金されます。ただし、セミナーの講演料や原稿料として受け取る報酬は源泉徴収の対象です。
手元に多く残るぶん、確定申告で納める所得税・住民税・個人事業税の資金は自分で確保しておく必要があります。前年分をもとに計算した予定納税基準額が15万円以上になると、7月と11月に所得税の予定納税も求められます(令和8年分の第2期は2026年11月30日)。行政書士業は個人事業税の対象で、事業主控除290万円を超える所得に5%がかかります。
立替金・預り金は報酬と分ける
登録免許税・収入印紙・役所の手数料・住民票などの取得実費は、依頼者に代わって支払うお金です。売上にも経費にも含めず、立替金として扱うのが原則で、請求書でも報酬と分けて記載し、消費税をかけません。一方、出張の交通費や日当を請求する場合は、業務の対価の一部として課税売上になるのが一般的です。実費だからといって一律に立替金にしない点に注意が必要です。
具体例:立替金を売上に含めてしまった場合
例えば、報酬33万円(税込)と、依頼者に代わって支払った手数料15万円を一緒に入金処理し、33万円+15万円=48万円 をすべて売上にしたとします。手数料を経費にも入れれば所得税の利益は変わりませんが、消費税の計算では、本来は対象外の15万円が課税売上に含まれてしまいます。
手数料は消費税のかからない支出のため仕入税額控除もできず、消費税を多く納めることになります。年間で積み重なると、免税事業者かどうかを決める1,000万円の判定を誤る原因にもなります。
経費になるもの・ならないもの
経費にできる主なもの
- 行政書士会の会費・研修費・専門書
- 職印・名刺・事務用品
- 業務ソフトや電子証明書など電子申請の費用
- 賠償責任保険の保険料
- 役所や入管への出張の交通費
- 事務所の家賃・通信費(自宅兼用は按分)、個人事業税
経費にならない主なもの
- 依頼者に代わって支払った登録免許税・手数料(立替金)
- 本人の所得税・住民税
- 自宅の家賃・光熱費のうち私的に使う部分
- 家族旅行など私的な支出
着手金を受け取り、業務の完了が翌年になる案件もあります。どの時点で売上にするかは契約の内容(返金の有無や報酬の区切り)に合わせて決め、毎年同じ扱いにそろえます。開業時の届出や最初の年の準備は行政書士事務所の開業時の税務手続きと届出一覧にまとめています。
消費税とインボイスはどう判断する?
インボイスの登録は、依頼者の構成で考えます。建設業許可や会社設立など事業者からの依頼が多い事務所は、依頼者が仕入税額控除のためにインボイスを求めることがあり、登録の必要性が高くなります。相続・遺言や在留資格の手続きなど個人からの依頼が中心なら、登録しなくても取引への影響が小さい場合があります。
| 依頼者の構成 | 登録の考え方 |
|---|---|
| 事業者(法人・個人事業主)が中心 | 依頼者がインボイスを必要とするため、登録を前向きに検討する |
| 個人(相続・遺言・在留資格など)が中心 | 登録しなくても影響が小さい場合がある。売上高と事務負担で判断する |
| 両方が混在 | 事業者向けの売上の割合と、登録後の納税額を試算して判断する |
登録した場合の納税額は、計算方法の選択で大きく変わります。免税事業者から登録した個人の行政書士が使える方法は、時期によって次のように移り変わります。
| 年分 | 使える計算方法 | 納付税額の目安 |
|---|---|---|
| 令和8年分まで | 2割特例 | 売上税額×20% |
| 令和9・10年分 | 3割特例(登録しなければ免税事業者になる個人が対象、届出不要) | 売上税額×30% |
| 令和11年分以後 | 簡易課税(行政書士業は第5種・みなし仕入率50%)か本則課税 | 簡易課税なら売上税額×50% |
計算例:課税売上高600万円の行政書士の納税額
例えば、課税売上高が税抜600万円の個人の行政書士の場合、売上税額は 600万円×10%=60万円 です(地方消費税を含む概算)。納付税額の目安は、2割特例なら 60万円×20%=12万円、3割特例なら 60万円×30%=18万円、簡易課税なら 60万円×50%=30万円 です。
3割特例のあとに簡易課税へ切り替える場合、届出は翌課税期間の確定申告期限まで出せます。簡易課税は基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら選べ、選ぶと2年間は続ける必要があります。制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドで確認できます。
無料ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比較する売上と経費の金額から、計算方法ごとの消費税の納付額を並べて比較できます。計算する 無料
ツール課税事業者になるかを判定する基準期間や特定期間の売上から、消費税の納税義務があるかを確認できます。判定する
登録するか、どの計算方法が有利かは、依頼者の構成と売上で変わります。初回無料で試算をお手伝いします。
無料で相談する行政書士業務に詳しい税理士を見分けるポイント
面談では、立替金の処理方法・士業事務所の顧問経験・インボイスへの対応方針の3点を質問してみてください。具体的な答えがすぐ返ってくるかどうかで、士業の実務への理解がわかります。あわせて、次の点も確認しておくと安心です。
- 立替金と報酬を分けた請求書・記帳の方法を具体的に説明できるか
- 予定納税を含めた納税資金の計画を一緒に立ててくれるか
- 2割特例後の3割特例・簡易課税・本則課税の有利不利を試算してくれるか
- 案件管理や請求書のソフトと、会計ソフトの連携に対応しているか
- 補助者の給与計算・年末調整や、法人化の試算まで相談できるか
- 連絡手段と返信の目安、面談の頻度
- 料金に含まれる業務の範囲と、追加料金がかかる条件
会社設立や相続の案件では、行政書士と税理士が連携する場面もあります。申告の外注先としてだけでなく、案件の前後で相談し合える関係を築けるかどうかも、長く付き合ううえでの判断材料になります。クラウド会計への対応やレスポンスの速さも、日々の負担を左右します。
顧問料はどう決まる?任せる範囲と見積りの読み方
顧問料の金額は事務所ごとに違い、同じ事務所でも任せる範囲で大きく変わります。行政書士事務所は取引件数が少なく記帳の量が小さいことが多いため、記帳を自分で行えば、税理士にかかる工数を抑えやすい業種です。見積りでは、次の要素を伝えると比較がしやすくなります。
| 顧問料が決まる要素 | 料金への影響 | 見積りで伝えること |
|---|---|---|
| 記帳の方法 | 自分で入力するか、記帳代行に出すか | 使っている会計ソフトと入力の状況 |
| 取引の量 | 案件数・入出金・立替金の件数が多いほど工数が増える | 月の入出金件数の目安 |
| 申告の種類 | 個人か法人か、消費税の申告があるか | 前年の申告書の控え |
| 給与計算・年末調整 | 補助者の人数と、社会保険を含む手続きの範囲 | 雇用の予定も含めた人数 |
| 面談・相談の頻度 | 毎月・四半期・決算時のみなど | 希望する頻度と連絡手段 |
| 追加の相談 | 法人化の試算、融資、消費税の方式選択など | 顧問料に含まれるかどうか |
比較のコツは、年間総額に直すことです。月額顧問料の12か月分に、決算料とオプション料金を加えて並べれば、月額の安さだけで選んで後悔する失敗を避けられます。
当事務所の対応
当事務所は、記帳の確認から決算・確定申告、消費税の方式選択、補助者の給与計算までを、継続的な顧問契約で支援しています。確定申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。料金は、任せる範囲と取引量を伺ったうえでお見積りします。
法人化や事業拡大を見据えるなら
売上が伸びて補助者を雇うようになると、給与計算・年末調整・社会保険の手続きが加わります。行政書士法人への移行や消費税の課税事業者入りといった節目では、事前の試算が欠かせません。節目ごとに起きることを整理すると次のとおりです。
| 節目 | 税務・労務で起きること | 準備 |
|---|---|---|
| 補助者を雇う | 給与支払事務所等の開設届(開設から1か月以内)、毎月の源泉徴収、年末調整 | 常時10人未満なら、源泉所得税の納期の特例を検討する |
| 補助者が常時5人以上 | 士業の個人事務所も法定の業種に含まれ、健康保険・厚生年金の強制適用になる | 保険料の会社負担を資金計画に入れる |
| 他の士業に報酬を払う | 給与を払っている事業者は、司法書士・税理士などへの報酬から源泉徴収が必要 | 司法書士なら(支払額−1万円)×10.21%を差し引いて納付する |
| 行政書士法人にする | 役員報酬の設計、社会保険の加入、法人住民税の均等割(札幌市内なら最低年7万円で赤字でもかかる) | 所得の水準と社会保険料を含めて試算する |
| 課税売上高が1,000万円を超える | その年を基準期間とする2年後から消費税の納税義務 | 計算方法と届出の時期を確認する |
行政書士法人は社員が1人でも設立できるため、法人化は「人を増やしてから」に限らず検討できます。役員報酬は事業年度の開始から3か月以内に決めて毎月同じ額にするなど、個人事業にはないルールもあります。判断の軸は行政書士事務所の法人化のタイミングと判断基準で詳しく説明しています。
見落としやすいポイント
- 入金のたびに税金分を取り分ける/源泉徴収されない分、入金時点では納税分も含めて手元に残ります。案件ごとに税金分を別口座に移しておかないと、申告期や予定納税の時期にまとめて資金繰りが厳しくなることがあります。
- 複数の士業との共同受任時の按分/司法書士や弁護士と共同で受任する場合、報酬と経費の分け方を契約で明確にしておかないと、記帳や消費税の処理があいまいになります。受け取った報酬の一部を他の士業に支払うなら、外注費として処理し、源泉徴収の要否も確認します。
- 電子申請の利用料と手数料の区別/事務所として負担するシステムの利用料や電子証明書の発行手数料は経費です。依頼者の手続きのために支払った手数料は、立替金として請求します。
- 電子で受け取った領収書の保存/電子申請の手数料の受領データやネットで受け取った請求書は、2024年1月1日以後、電子データのまま保存する必要があります。
記帳を効率化するための準備
案件管理システムや請求書発行ソフトを使っている場合は、会計ソフトとデータを連携できるかを税理士に確認しておくと、二重入力の手間を減らせます。立替金と報酬を分けて記録できる仕組みを最初に作っておけば、月次の記帳がスムーズになります。
- 口座とカードを事業用に分ける依頼者からの入金と、立替金・経費の支払いを同じ事業用口座に集めます。
- 請求書の様式を決める報酬・消費税・立替金を分けて記載する様式にし、立替金には領収書の写しを添えます。
- 勘定科目を分ける報酬は売上高、立替金は立替金の科目で記帳し、案件番号を摘要に入れます。
- 月末に立替金の残高を確認する回収していない立替金を一覧にすると、請求漏れや入金の遅れに早く気づけます。
仕訳帳や総勘定元帳を電子のまま保存できる会計ソフトの設定にしておくと、青色申告特別控除の準備にもなります。控除は令和8年分まで最高65万円で、令和9年分からは電子帳簿の要件を満たすと75万円の区分が設けられます。
税理士に相談したいタイミングの目安
顧問契約を結んだあとも、事務所の状況が変わるタイミングでは対応内容を見直す価値があります。
- 補助者やスタッフを雇うとき/給与計算や社会保険の手続きが新たに発生するため、着任前に相談しておくと準備がスムーズです。
- 取扱業務の幅を広げるとき/新しい分野の許認可業務を始めると、立替金の内容や依頼者の構成が変わり、インボイスの判断に影響することがあります。
- 課税売上高が1,000万円に近づいたとき/2年後の納税義務と、計算方法の選択を早めに検討します。
- 行政書士法人への移行を考え始めたとき/個人と法人では、税務・社会保険の扱いが変わるため、早めの試算が安心です。
よくある質問
開業1年目から税理士に頼むべきですか?
取引が少ないうちは、会計ソフトで自分で記帳し、開業時の届出を期限内に出しておけば対応できることもあります。青色申告承認申請書は、1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内が期限です。補助者の雇用やインボイスの登録など、判断が必要な場面が来たら継続的に相談できる税理士を探すのが現実的です。
自宅を事務所にしている場合、家賃は経費になりますか?
事業に使っている面積や時間の割合など、合理的な基準で按分した部分を経費にできます。持ち家の場合は、家賃の代わりに建物の減価償却費や固定資産税、住宅ローンの利息のうち事業に使う部分が対象です。按分の根拠はメモに残しておきましょう。
依頼者から事前に預かったお金はどう管理すればよいですか?
手数料などに充てるために預かったお金は売上ではなく、預り金として記帳します。案件ごとに預かった額・支払った額・残額を台帳で管理し、業務の完了時に精算書を渡すと、依頼者への説明と記帳の両方がすっきりします。
顧問契約の途中で税理士を変えることはできますか?
変えることはできます。決算や確定申告の直前は避け、前の税理士から帳簿データ・申告書の控え・届出書の控えを受け取っておくと、引継ぎが円滑です。消費税の届出の状況は特に確認しておきましょう。
まとめ
行政書士報酬は源泉徴収されないため、確定申告と予定納税の資金を自分で確保し、登録免許税などの立替金は報酬と分けて記帳します。インボイスは依頼者の構成で登録を判断し、2割特例のあとは3割特例と簡易課税の有利不利を試算しましょう。税理士は士業の実務を具体的に説明できるかで見極め、料金は任せる範囲をそろえて年間総額で比べるのが後悔しない近道です。札幌で行政書士事務所の税務顧問をお探しの方は、お気軽にご相談ください。
札幌の公認会計士・税理士事務所
行政書士事務所の税務・顧問契約のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年8月 公開/2026年10月 改訂(インボイスの2割特例終了と3割特例、令和8年度税制改正を反映)
