倒産防止共済(経営セーフティ共済)のメリットは、掛金を損金・必要経費にできる節税効果と、取引先が倒産したときに無担保・無保証人で借りられる共済金貸付です。デメリットは短期の解約で元本割れすることと、解約手当金に課税されることで、節税は課税の繰延べと理解して出口まで計画することが大切です。
この記事の結論
倒産防止共済は「利益が出ている時期に損金を作り、解約する年に益金として戻す」制度です。メリットを生かすには、解約する時期(出口)を加入するときから決めておくことが鍵になります。
- 掛金は法人なら損金、個人事業主なら事業所得の必要経費になる
- 取引先が倒産したら、掛金総額の10倍を上限に共済金の貸付を受けられる(貸付額の上限あり)
- 納付期間が短いうちに解約すると、解約手当金が掛金総額を下回る
- 解約手当金は益金・事業所得の収入になるため、赤字の年や退職金を払う年に合わせて解約する
- 解約した後に再加入すると、一定期間は掛金を損金にできない
倒産防止共済(経営セーフティ共済)とはどんな制度?
倒産防止共済と経営セーフティ共済は同じ制度の呼び方の違いで、正式名称は中小企業倒産防止共済制度です。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営し、取引先の倒産によって自社まで資金繰りに行き詰まる「連鎖倒産」を防ぐことを目的としています。
仕組みは、毎月の掛金を積み立てておき、取引先が倒産して売掛金などが回収できなくなったときに共済金の貸付を受けるというものです。不要になって解約すれば、納付した期間に応じて解約手当金が戻ります。掛金の月額は一定の範囲から選べ、積み立てられる掛金総額にも上限があります。具体的な金額は、中小機構の最新の案内で確認してください。
主なメリット
- 掛金を損金・必要経費にでき、利益が出た年の税負担を抑えられる
- 取引先の倒産時に、無担保・無保証人・無利子で共済金を借りられる
- 自社の急な資金需要にも、解約手当金の範囲内で一時貸付金を借りられる
主なデメリット
- 短期で解約すると元本割れし、ごく短期なら掛け捨てになる
- 解約手当金は益金・事業所得の収入として課税される
- 掛金の分だけ手元資金が減り、再加入には税務上の制限がある
メリット:節税効果と、いざというときの借入れ
掛金が損金・必要経費になる
法人が払う掛金は損金に、個人事業主が払う掛金は事業所得の必要経費に算入できます。積立てでありながら経費になるため、利益が出ている時期の税負担を抑えつつ、将来に備えた資金を社外に確保できます。掛金はまとめて前納することもでき、前納した掛金も支払った事業年度の損金に算入できる扱いがあります(前納できる期間の範囲は中小機構の案内で確認してください)。
計算例:掛金を月10万円払った場合の税負担の変化
例えば、法人が掛金を月10万円払う場合、年間の掛金は10万円×12か月=120万円で、全額を損金に算入できます。税率を仮に25%とすると、120万円×25%=30万円だけ、その年の税負担が減ります。
ただし、解約した年度には解約手当金が益金になるため、税金がなくなるわけではありません。課税の時期を先に延ばす効果(課税の繰延べ)だと考えてください。
ツール経営セーフティ共済の節税効果を計算する掛金の額を入れると、損金算入による税負担の変化を試算できます。計算する
取引先が倒産したときは、掛金総額の10倍まで借りられる
取引先が倒産して売掛金などの回収が難しくなったときは、共済金の貸付を受けられます。無担保・無保証人で利息もかかりませんが、貸付を受けると、その額に応じて積み立てた掛金の一部が差し引かれます。加入してから一定期間以上、掛金を納めていることが条件です。
計算例:借りられる額の考え方
例えば掛金総額が100万円の時点で、取引先の倒産により売掛金200万円が回収できなくなったとします。貸付の上限は計算上100万円×10=1,000万円ですが、実際に借りられるのは回収が難しくなった売掛金などの額、つまり200万円までです。
借りられる額は「掛金総額の10倍」「回収が難しくなった売掛金などの額」「制度の貸付上限額」のうち最も少ない額になります。
「掛金総額の5倍まで」は誤り
共済金の貸付の上限を「掛金総額の5倍」と説明する情報がありますが、制度上の上限は掛金総額の10倍です(別に貸付額そのものの上限があります)。それ以上の資金が必要な場合は、金融機関の融資や制度融資と組み合わせて検討します。
自社の急な資金需要には一時貸付金
取引先が倒産していなくても、自社の一時的な資金需要に対して、解約手当金の一定割合を上限とする一時貸付金を借りられます。審査で時間がかかりやすい金融機関の融資と比べて、手続きが比較的早く進む点が安心材料です。返済は利息とあわせて行うため、キャッシュフローに合わせた返済計画を立てておきます。
デメリット:元本割れ・解約時の課税・再加入の制限
倒産防止共済のデメリットは、主に解約するときに表れます。加入前に次の三点を理解しておくと、思わぬ損や税負担を避けられます。
| デメリット | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 短期解約の元本割れ | 納付期間が短いと、解約手当金が掛金総額を下回る。ごく短期なら受け取れない(掛け捨て) | 全額が戻る納付期間まで続けられる掛金額にする |
| 解約手当金への課税 | 法人は益金、個人事業主は事業所得の収入になり、解約した年度の税負担が増える | 赤字の年や退職金を払う年など、損金と相殺できる年に解約する |
| 再加入の制限 | 解約した後に再加入すると、一定期間に払う掛金は損金・必要経費にできない | 解約・再加入をくり返す前提の計画は立てない |
| 手元資金の減少 | 掛金の分だけ現預金が社外に出る | 資金繰り表で、掛金を払っても運転資金が足りるか確かめる |
節税目的だけでの加入・解約のくり返しに注意
税制改正により、共済契約を解約した後に再加入した場合、一定期間に支払う掛金は損金(必要経費)に算入できない取扱いが設けられています。利益が出た年に加入し、赤字の年に解約して、また加入するといった使い方は想定どおりの効果が出ません。適用の時期や期間は、中小機構と国税庁の最新の案内で確認してください。
解約はいつがよい?出口のタイミングの考え方
解約手当金は益金(個人事業主は事業所得の収入)になるため、解約する年度に大きな損金が出るタイミングに合わせると、税負担を抑えられます。手続きは解約の申出書などの所定の書類を窓口に出す形で進み、入金までに日数がかかります。期末の直前に手続きすると、どの年度の益金になるかが想定とずれることもあるため、時間に余裕を持って動きましょう。
| 解約のタイミング | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 役員退職金を支給する年度 | 退職金の損金と解約手当金の益金が相殺される | 退職金の額は役員の在任期間や職務に照らして適正な範囲にする |
| 赤字が見込まれる年度 | 赤字と相殺され、税負担が生じないか小さくなる | 赤字の原因への対策と資金繰りもあわせて確認する |
| 大規模な修繕・設備の入替えをする年度 | 修繕費や除却損と相殺できる | 修繕費になるか資産計上になるかの判定が必要 |
| 事業をやめるとき(廃業・解散) | 廃業時の資金に充てられる | 解約した年の所得になるため、その年の税負担を試算しておく |
必要な資金の分だけを解約する一部解約という方法もあります。益金になる額を調整したい年度や、一部の資金だけを使いたいときに検討します。
加入する掛金額と解約する年度の組み合わせは、利益の見通しと退職金の予定で変わります。初回無料で試算できます。
無料で相談する加入条件と手続き、会計処理のポイント
加入できるのは、中小企業倒産防止共済法で定める中小企業者(業種ごとに定められた資本金・従業員数の要件に当てはまる会社や個人事業主など)で、一定期間以上継続して事業を行っていることが条件です。申込みは、商工会・商工会議所などの委託団体や、取扱いのある金融機関の窓口で行います。札幌市内であれば札幌商工会議所などの商工団体や、取引のある金融機関で相談できる場合があります(取扱いの有無は窓口で確認してください)。
| 場面 | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 掛金を払ったとき | 損金に算入(保険料などの科目)。申告書に「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」を添付 | 事業所得の必要経費に算入。「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を添付 |
| 共済金・一時貸付金を借りたとき | 借入金(負債)として計上。一時貸付金の利息は支払利息 | 同左 |
| 解約手当金を受け取ったとき | 益金(雑収入など) | 事業を続けている場合は事業所得の収入 |
借りたお金は「借入金」、不動産所得だけの人は必要経費にできない
共済金の貸付や一時貸付金を受けたときは、会社がお金を借りたことになるため「借入金」として負債に計上します。「貸付金」と記帳してしまう誤りが見られるので注意してください。また個人の場合、掛金を必要経費にできるのは事業所得の計算だけで、不動産所得の計算では必要経費になりません。
損金算入には明細書の添付が必要で、添付を忘れると申告で認められないおそれがあります。ほかの節税策と組み合わせて検討する場合は、法人・個人の節税策の一覧で全体を見渡しておくと優先順位を決めやすくなります。
無料ツール法人税等の実効負担を計算する所得の額から法人税・住民税・事業税をまとめて試算し、掛金の損金算入の効果を確かめられます。計算する
小規模企業共済とは何が違う?使い分けと併用
名前が似ている小規模企業共済は、経営者自身の退職金や廃業後の生活資金を準備する制度で、取引先の倒産に備える倒産防止共済とは目的が異なります。掛金の税務上の扱いも、受け取るときの扱いも違います。
| 項目 | 倒産防止共済(経営セーフティ共済) | 小規模企業共済 |
|---|---|---|
| 目的 | 取引先の倒産に備える | 経営者の退職金・廃業後の生活資金の準備 |
| 加入するのは | 中小企業者(法人・個人事業主) | 小規模企業の個人事業主や会社の役員など |
| 掛金の扱い | 法人は損金、個人は事業所得の必要経費 | 経営者個人の所得控除(小規模企業共済等掛金控除) |
| 受け取るとき | 解約手当金は益金・事業所得の収入 | 共済金は受け取り方に応じて退職所得などとして扱われる |
| 借入れ | 共済金貸付・一時貸付金 | 契約者貸付制度 |
会社の利益を平準化したいなら倒産防止共済、経営者個人の老後資金と所得税・住民税の負担軽減を図りたいなら小規模企業共済が向いています。両方の要件を満たせば併用もできます。小規模企業共済の詳しい仕組みは、小規模企業共済のメリット・デメリットで解説しています。
よくある質問
掛金を払うのが苦しくなったらどうなりますか?
掛金の月額を減らす手続きができる場合があります。払込みが一定期間滞ると中小機構から契約を解除されることがあり、戻る額の扱いも自分で解約する場合と異なることがあるため、払えなくなる前に窓口へ相談しましょう。
掛金総額が上限に達したらどうなりますか?
それ以上は掛金を払い込めませんが、契約はそのまま続きます。取引先が倒産したときの共済金の貸付や一時貸付金は引き続き利用でき、解約すれば解約手当金を受け取れます。上限額は中小機構の案内で確認してください。
個人事業主が法人成りしたら、共済契約はどうなりますか?
一定の要件を満たせば、個人の契約を新しい法人に引き継げる場合があります。引き継がずに解約すると、解約手当金は個人の事業所得の収入として課税されるため、法人成りの前に手続きと税金の扱いを確認しておきましょう。
取引先が倒産していなくても、共済金の貸付は受けられますか?
受けられません。共済金の貸付は、取引先の倒産で売掛金などの回収が難しくなった場合に限られます。自社の資金需要には、解約手当金の範囲内で借りられる一時貸付金を使います。
まとめ
倒産防止共済は、掛金の損金算入による節税効果と、取引先の倒産時や自社の資金需要時に借りやすいことが主なメリットです。一方で、短期の解約による元本割れ、解約手当金への課税、再加入の制限というデメリットがあります。利益の見通しと退職金や設備投資の予定から解約する年度を先に決め、資金繰りに無理のない掛金で加入しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
倒産防止共済の加入・解約のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
