事業承継税制 完全ガイド|法人版・個人版の全要件と実務上の留意点【令和8年度改正対応】

令和8年度税制改正 反映済み / 2026年7月26日 現在

事業承継税制 完全ガイド
法人版・個人版のすべてと、動かせない2つの期限

自社株や事業用資産にかかる贈与税・相続税を100%猶予できる制度です。ただし特例措置は期限つきで、令和8年度税制改正で延長されたのは「計画の提出期限」だけ。贈与・相続そのものの期限は1日も動いていません

本ページは、法人版(特例措置・一般措置)と個人版のすべての要件・手続き・取消事由・免除・出口までを、中小企業庁と国税庁の一次情報にもとづいて1ページにまとめた特設ガイドです。第7部では、自社株の評価実務、株価引下げの線引き、組織再編・持株会社との併用、親族外承継まで踏み込み、実務でつまずく留意点を各章に埋め込みました。

全46章比較表・図解 60点超実務上の留意点を全章に診断ツール猶予額シミュレーター期限カウンター取消事由チェック質疑応答事例35問FAQ 24問
公開:2026年7月26日/北海道札幌市・ジェイスタート会計事務所(税理士・公認会計士)。最終更新:2026年7月26日。数値・期限は中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」および同各申請マニュアル(令和8年6月改訂版)、国税庁「事業承継税制特集」「質疑応答事例集(令和7年7月7日)」「財産評価基本通達」「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」資料、財務省「令和8年度税制改正の大綱」で確認しています。
このページの対象:自社株の承継をこれから考える中小企業の経営者・後継者、個人事業の承継を控えた事業主、そして「うちは事業承継税制を使えるのか」を先に知りたい方。専門用語は都度かみくだいて説明します。

動かせない期限 ― 今日からの残り日数

ひとことで言うと令和8年度改正で延びたのは「計画の提出期限」だけ。株や事業用資産を実際に渡す期限(法人版=令和9年12月31日、個人版=令和10年12月31日)は据え置きです。計画の期限ぎりぎりに出すと、実行までの猶予は法人版でわずか3か月しか残りません。

※ 残り日数はこのページを開いた日を起点に自動計算しています。期限日が土日・祝日にあたる場合、計画の提出期限は翌開庁日となる取扱いです(提出先の都道府県にご確認ください)。

よくある誤解:「2年延びたから、まだ余裕がある」

延長されたのは都道府県に出す承継計画の提出期限だけです。法人版の特例措置は令和9年12月31日までに贈与または相続が発生していることが絶対条件で、この日付は令和8年度改正でも変わっていません。計画を令和9年9月末に出しても、そこから株価算定・株主構成の整理・遺産分割・認定申請まで走らせる時間はほとんど残りません。逆算すると、実質的な着手期限は令和9年の春先と考えるのが安全です。

目次

  1. 第1部 全体像と期限
  2. 事業承継税制とはどんな制度か
  3. 3つの制度の全体マップ
  4. 令和8年度税制改正で何が変わったか
  5. 適用できるか、まず診断してみる
  6. 第2部 法人版の要件
  7. 特例措置と一般措置はどこが違うのか
  8. 会社の要件
  9. 資産保有型会社という落とし穴
  10. 先代経営者(贈与者・被相続人)の要件
  11. 後継者の要件(贈与の場合)
  12. 後継者の要件(相続の場合)
  13. 後継者が2人・3人のときのルール
  14. 先代経営者以外の株主からの承継
  15. 第3部 手続きとお金
  16. 贈与で承継する場合のスケジュール
  17. 相続で承継する場合のスケジュール
  18. 特例承継計画の書き方と注意点
  19. 何株を贈与すればよいか(3分の2ルール)
  20. 猶予される税額の計算方法
  21. 納税猶予額シミュレーター
  22. 相続時精算課税との組み合わせ
  23. 担保の提供
  24. 第4部 適用後の維持と出口
  25. 5年間の年次報告と継続届出
  26. 雇用8割要件はどう変わったか
  27. 取消事由の全体像
  28. 取消事由セルフチェック
  29. 取り消されたときにいくら払うのか
  30. 猶予税額が免除される場合
  31. 経営環境が悪化したときの減免
  32. 贈与者が亡くなったとき(切替確認)
  33. 第5部 個人版事業承継税制
  34. 個人版の全体像
  35. 特定事業用資産の範囲
  36. 個人版の要件と手続き
  37. 小規模宅地等の特例との選択
  38. 法人版と個人版の比較
  39. 第6部 使う前に考えること
  40. あえて「使わない」判断もある
  41. 事業承継税制以外の選択肢
  42. 周辺制度と補助金
  43. 自社株評価の見直し議論
  44. よくある失敗5パターン
  45. 第7部 実務編(株価評価・組織再編・親族外承継)
  46. 自社株はどう評価されるのか
  47. 類似業種比準価額と純資産価額の中身
  48. 特定の評価会社という地雷
  49. 株価を下げる実務と、否認されない線引き
  50. 組織再編・持株会社と事業承継税制
  51. 親族外承継・MBO・従業員承継
  52. 質疑応答事例で押さえる35の論点
  53. 実務でつまずく留意点50
  54. 資料編
  55. よくある質問 24問
  56. 用語集
  57. 出典一覧

1事業承継税制とはどんな制度か

ひとことで言うと後継者が引き継いだ自社株や事業用資産にかかる贈与税・相続税を、払わずに先送りできる制度です。そして後継者が亡くなるか、次の後継者へ渡すかすれば、その税金はそのまま消えます

会社を引き継ぐとき、後継者の前に立ちはだかるのが自社株にかかる税金です。上場していない会社の株式には市場価格がありません。しかし相続税・贈与税の計算では、財産評価基本通達にもとづいて「取引相場のない株式」として評価額が算定されます。長年利益を積み上げてきた会社ほど、この評価額は大きくなります。

ここに、中小企業の事業承継特有のねじれがあります。株の評価額は数億円になっても、その株は売れません。売ってしまえば会社の支配権を失うからです。換金できない財産に、現金で納める税金がかかる。この構造が、日本の中小企業の世代交代を止めてきました。

事業承継税制は、この問題に正面から手を当てた制度です。中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)にもとづく都道府県知事の認定を受けたうえで、租税特別措置法の規定により、対象となる株式等・事業用資産にかかる贈与税・相続税の納税を猶予します。そして一定の事由が生じたときには、猶予されていた税額がそのまま免除されます。

「猶予」と「免除」は別のもの

制度を理解するうえで最初に押さえるべきは、納税猶予はゴールではないということです。

段階何が起きるか後継者の状態
①申告・猶予開始要件を満たして申告し、担保を提供すると、対象株式等に対応する税額の納付が猶予される税金は「消えて」いない。国に対する債務が残っている状態
②5年間の事業継続期間代表者であり続ける、株を持ち続けるなどの要件を満たしながら、毎年報告する要件を1つでも外すと、猶予された税額+利子税を一括で納付
③5年経過後報告は3年に1度に軽くなるが、株の保有義務などは続く実質的に「終身」で持ち続けることが前提
④免除後継者が死亡した場合、次の後継者へ制度を使って贈与した場合などに、猶予税額が免除されるここで初めて税負担が確定的にゼロになる

出典:国税庁「法人版事業承継税制のあらまし」、中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」

制度の本質は「次の世代まで会社を続ける約束」

猶予された税額が免除されるのは、原則として後継者が亡くなるか、さらに次の後継者へバトンを渡したときです。つまりこの制度を選ぶということは、後継者本人の代で会社を売却・廃業しない前提に立つということです。「とりあえず税金を安くする方法」として選ぶと、10年後・20年後に身動きが取れなくなります。第34章で、あえて使わない判断についても正面から書いています。

どれくらいの効果があるのか

効果の大きさを具体的な数字で見てみます。自社株の評価額3億円、その他の相続財産5,000万円、相続人は配偶者と子2人、後継者である長男が自社株3億円を相続するケースです。

項目制度を使わない特例措置一般措置
課税価格の合計額3億5,000万円3億5,000万円3億5,000万円
相続税の総額7,470万円7,470万円7,470万円
後継者の相続税額6,403万円6,403万円6,403万円
納税猶予される額0円6,403万円2,963万円
実際に現金で納める額6,403万円0円3,440万円
猶予される割合0%100%約46%

※ 基礎控除4,800万円(3,000万円+600万円×3人)、法定相続分課税方式で計算。配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例は考慮していません。一般措置は対象株式を3分の2(2億円)に制限し、その20%相当を取得したと仮定した税額を控除する法定の計算方法によっています。ご自身のケースは第18章のシミュレーターで試算できます。

23つの制度の全体マップ

ひとことで言うと事業承継税制には法人版の特例措置・法人版の一般措置・個人版の3つがあります。中小企業のほとんどが目指すのは法人版の特例措置です。

「事業承継税制」とひとことで呼ばれますが、中身は制度が3本あります。それぞれ対象も期限も猶予割合も違うので、まずこの地図を頭に入れてください。

制度対象事前の計画贈与・相続の期限猶予割合
法人版
特例措置
非上場会社の株式等(全株式)特例承継計画
令和9年9月30日まで
令和9年12月31日まで贈与100%
相続100%
法人版
一般措置
非上場会社の株式等(総株式数の3分の2まで)不要期限なし(恒久措置)贈与100%
相続80%
個人版個人事業の特定事業用資産個人事業承継計画
令和10年9月30日まで
令和10年12月31日まで贈与100%
相続100%

出典:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」同「個人版事業承継税制の前提となる認定」国税庁「事業承継税制特集」

どれを使うべきかの分かれ道

Q1
会社(法人)ですか、個人事業ですか

法人なら第2部以降の「法人版」へ。個人事業(青色申告)なら第29章以降の「個人版」へ進んでください。医療法人・社会福祉法人・士業法人・外国会社は法人版の対象外です。

Q2
令和9年12月31日までに贈与または相続が起きますか(法人の場合)

「起こす」と決められるのが贈与の強みです。相続はタイミングを選べません。だからこそ、贈与での承継を軸に組み立てるのが実務の定石です。

Q3
令和9年9月30日までに特例承継計画を出せますか

出せるなら特例措置。間に合わないなら一般措置しか残りません。一般措置は相続の猶予割合が80%で、対象は総株式数の3分の2まで。効果は特例措置よりかなり小さくなります。

A
迷ったら「とりあえず特例承継計画を出しておく」が正解になりやすい

特例承継計画は提出しても、実際に贈与・相続をする義務は生じません。計画を出したうえで使わないという選択も自由です。出しておかないと、いざというときに選択肢そのものが消えます。この非対称性が重要です。

3令和8年度税制改正で何が変わったか

ひとことで言うと変わったのは承継計画の提出期限だけです。法人版は1年6か月、個人版は2年6か月延びました。それ以外の要件・割合・適用期限は一切変わっていません。

令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」の資産課税の項には、事業承継税制について次の2つだけが記載されています。

令和8年度税制改正の大綱(二 資産課税/租税特別措置等〔延長・拡充等〕)

  • 個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、個人事業承継計画の提出期限を2年6月延長する。
  • 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度について、特例承継計画の提出期限を1年6月延長する。

出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」二 資産課税

項目改正前改正後延長幅
特例承継計画(法人版)令和8年3月31日令和9年9月30日1年6か月
個人事業承継計画(個人版)令和8年3月31日令和10年9月30日2年6か月
法人版の贈与・相続の期限令和9年12月31日令和9年12月31日据え置き
個人版の贈与・相続の期限令和10年12月31日令和10年12月31日据え置き

なぜ計画の期限だけを延ばしたのか

経済産業省の「令和8年度 経済産業関係税制改正について」には、延長の趣旨がこう書かれています。物価高や関税等により経営環境の不確実性が高まるなかでも、特例措置の適用期限が到来するまでの間に本税制を最大限活用できるようにするため、承継計画の確認申請期限を延長する、というものです。あわせて「事業承継のあり方については引き続き検討を行う」とも記されています。

この一文が示す実務上の意味

「引き続き検討」という言い回しは、特例措置そのものの延長・恒久化について結論が出ていないことを意味します。延長される前提で動くのは危険です。現時点で確定している法律上の期限は令和9年12月31日であり、これを前提に逆算するのが唯一の安全な立て方です。

直近の他の改正 ― 令和7年に役員就任要件が緩和されている

令和8年度改正とは別に、令和7年1月1日以後の贈与から、特例措置における後継者の役員就任要件が大きく緩和されています。従来は「贈与の日まで引き続き3年以上役員であること」が必要でしたが、これが「贈与の直前において役員であること」に変わりました。

制度後継者の役員要件(贈与の場合)
特例措置贈与の直前において役員であること(3年要件は廃止)
一般措置贈与の日まで引き続き3年以上役員であること(3年要件は存置)

※ この緩和により、「後継者を3年前に役員にしていなかったから間に合わない」という詰みが解消されました。今からでも役員に就任させれば、直前要件は満たせます。ただし相続の場合の役員要件は別ルールです(第10章)。

国税庁の資料はまだ旧期限のまま(2026年7月時点)

国税庁のタックスアンサーNo.4148・No.4439や「あらまし」PDFは「令和7年4月1日現在法令等」を基準としており、特例承継計画の提出期限が「令和8年3月31日まで」と旧記載のままです。都道府県のホームページにも旧記載が残っている例があります。最新の期限は、中小企業庁のページ(令和8年6月改訂版マニュアル)で確認してください。

実務でつまずく点 ― 資料によって期限の記載が違う
  • 国税庁のタックスアンサーNo.4148・No.4439、「あらまし」PDF、質疑応答事例集(令和7年7月7日)はいずれも「令和7年4月1日現在の法令」ベースで、特例承継計画の提出期限を令和8年3月31日と記載したままです。都道府県のホームページにも旧記載が残っている例があります。
  • 最新は中小企業庁の令和8年6月改訂版マニュアル(提出期限:令和9年9月30日)です。申請マニュアル第1章には「令和8年4月1日施行の改正施行規則により、特例承継計画の提出期限は1年6ヶ月延長」と注記されています。
  • 一方で、期限以外の実務論点については国税庁の質疑応答事例集が圧倒的に詳しいため、期限は中小企業庁、解釈は国税庁、という使い分けが必要です。
  • 期限日が土日・祝日にあたる場合、計画の提出期限は翌開庁日となる取扱いです。ただし提出先の都道府県によって運用が異なる可能性があるため、直前になる場合は必ず窓口に確認してください。

4適用できるか、まず診断してみる

ひとことで言うと10問に答えると、特例措置・一般措置・個人版・対象外のどれに当たりそうかと、次に確認すべき論点が出ます。厳密な判定ではなく、方向づけのための道具です。
事業承継税制 適用可否かんたん診断10問・約2分。回答はこの端末の中だけで処理され、どこにも送信されません。

※ この診断は、中小企業庁の認定要件のうち代表的なものだけを簡略化して判定しています。実際の適用可否は、株主構成・議決権の内訳・特定資産の保有状況・過去の役員歴など、より細かい事実関係で決まります。判定結果は目安としてお使いください。

5特例措置と一般措置はどこが違うのか

ひとことで言うと特例措置は全株式・100%猶予・後継者3人まで・雇用要件が実質免除・出口の救済あり。一般措置は3分の2まで・相続は80%・後継者1人・雇用8割必須・出口の救済なし。差は決定的です。

平成30年度税制改正で創設された特例措置は、それまでの一般措置の使いにくさを一つずつ潰した設計になっています。両者を全項目で並べます。

項目特例措置一般措置
事前の計画特例承継計画の提出が必要
(平成30年4月1日〜令和9年9月30日)
不要
適用期限平成30年1月1日〜令和9年12月31日の贈与・相続等なし(恒久措置)
対象株数全株式(議決権に制限のない株式等)総株式数の最大3分の2まで
納税猶予割合贈与100%/相続100%贈与100%/相続80%
承継パターン複数の株主から最大3人の後継者へ複数の株主から1人の後継者へ
後継者の役員要件
(贈与)
贈与の直前において役員
(令和7年1月1日以後の贈与)
贈与の日まで引き続き3年以上役員
雇用確保要件5年平均8割を下回っても取消しにならない
(理由を都道府県に報告し、認定支援機関の所見が必要)
承継後5年間平均で8割維持が必須
(下回れば猶予打切り)
経営環境変化に
応じた減免
あり。譲渡・合併・解散時に、そのときの価額で再計算し差額を免除なし
相続時精算課税60歳以上の贈与者から18歳以上の者
(推定相続人・孫でなくても可)
60歳以上の贈与者から18歳以上の推定相続人・孫
破産等による免除ありあり

出典:国税庁 タックスアンサー No.4148同 No.4439/中小企業庁 申請マニュアル第1章(令和8年6月改訂版)。※計画の提出期限は中小企業庁の記載が最新です。

「相続80%」がどれだけ痛いか

一般措置の最大の弱点は、相続の猶予割合が80%であることと、対象が総株式数の3分の2までであることの二重の絞りです。この2つが重なると、効果は特例措置の半分以下になります。

前提:自社株3億円、他の財産5,000万円、相続人は配偶者と子2人特例措置一般措置
納税猶予の対象となる株式3億円(全株式)2億円(3分の2まで)
後継者の相続税額6,403万円6,403万円
納税猶予される額6,403万円2,963万円
現金で用意する額0円3,440万円
猶予される割合100%約46%

※ 一般措置は「対象株式のすべてを取得したと仮定した税額」から「対象株式の20%相当を取得したと仮定した税額」を控除する方法で猶予額を計算します。相続税は超過累進税率なので、単純に「3分の2×80%=約53%」とはならず、実際の猶予割合はそれより低くなるのが通常です。

一般措置は「間に合わなかったときの受け皿」

一般措置は恒久措置なので、令和9年12月31日を過ぎても使えます。ただし上の表のとおり、相続時の効果は特例措置の約半分です。「特例が終わっても一般措置があるから大丈夫」という説明は、数字を見れば楽観的すぎます。特例措置を使えるうちに使うのが原則です。

実務でつまずく点 ― 一般措置から特例措置への乗り換えはできない

「まず一般措置で3分の2を贈与し、あとで特例措置に切り替える」という設計は成立しません。国税庁の質疑応答事例に明記されています。

  • 同じ後継者に残り3分の1を渡す場合:その後継者は既に一般措置の適用を受けているため、特例措置の要件(一般措置の適用を受けていないこと)を満たしません。一般措置も、先代が既に適用に係る贈与をしているため使えません。
  • 別の子に残り3分の1を渡す場合:先代の持株は3分の1、既に贈与を受けた子は3分の2。先代は同族筆頭要件を満たせず、特例措置・一般措置のいずれも使えません。
  • 逆に、特例措置の適用を受けている者が、その会社の株式について一般措置を受けることもできません
  • ただし免除対象贈与(次の後継者への贈与)は、一般措置と特例措置の相互乗り入れが可能です。一般措置の適用を受けている後継者が次の後継者へ贈与する場合、次の後継者は特例措置を使えます。

この「残り3分の1問題」は事業承継税制の代表的な落とし穴です。最初にどちらを選ぶかで、その会社の承継の型が固定されると考えてください。

6会社の要件

ひとことで言うと中小企業者であること、上場していないこと、性風俗関連特殊営業でないこと、従業員が1人以上いること、そして資産保有型会社・資産運用型会社でないこと。最後の1つが実務で最も引っかかります。

中小企業者の範囲

経営承継円滑化法上の中小企業者に該当する必要があります。判定は資本金の額または常時使用従業員数の「いずれか」を満たせばよく、両方を満たす必要はありません。

業種資本金・出資金常時使用従業員数
製造業その他3億円以下300人以下
 うちゴム製品製造業※13億円以下900人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
 うちソフトウェア業・情報処理サービス業3億円以下300人以下
 うち旅館業5,000万円以下200人以下

※1 自動車・航空機用タイヤ及びチューブ製造業、工業用ベルト製造業を除きます。
※ 医療法人・社会福祉法人・外国会社・士業法人(税理士法人、弁護士法人など)は対象外です。
出典:中小企業庁 申請マニュアル第7章(用語・定義)

そのほかの会社要件

要件内容と実務上の注意
上場会社等でないこと金融商品取引所に上場されている株式等を発行する会社は対象外です。
風俗営業会社でないことここでいう風俗営業会社は、風営法第2条第5項の性風俗関連特殊営業を営む会社に限られます。バー・パチンコ店・ゲームセンターは該当せず、要件を満たします。誤解が非常に多い論点です。
従業員が1人以上いること常時使用従業員数が1人以上必要です。ただし、申請者またはその支配関係法人が特別子会社の株式等を保有し、かつその特別子会社が外国会社に該当する場合は5人以上必要になります。
総収入金額がゼロでないこと認定申請基準事業年度の損益計算書上の総収入金額。営業外収益と特別利益は除いて判定します。売上ゼロで受取利息だけ、という会社は要件を満たしません。
資産保有型会社・
資産運用型会社でないこと
次章で詳述します。実務上の最大の関門です。
後継者以外が黄金株を
持っていないこと
拒否権付種類株式(いわゆる黄金株)を後継者以外の者が保有していると認定を受けられません。特例承継計画に記載された後継者であっても、まだ贈与を受けていない者は「経営承継受贈者」に当たらないため、その者が黄金株を持っていると認定不可となります。
特定特別子会社の要件特定特別子会社が大会社・上場会社・性風俗関連特殊営業を営む会社に該当しないこと。
資本金や従業員が増えても、それだけでは取り消されません

認定後に会社が成長して中小企業者の範囲を超えた場合でも、それ自体は認定の取消事由になりません。制度が成長を罰する設計にはなっていません。

常時使用従業員の数え方

厚生年金保険・健康保険の標準報酬月額決定通知書等で証明します。数える際の注意点は次のとおりです。

  • 平均的な従業員と比べて労働時間が4分の3に満たない短時間労働者は除外します。
  • 役員は除外します(使用人兼務役員は含めます)。
  • 後述の「事業実態要件」の5人カウントでは、さらに後継者と生計を一にする親族を除外します。ここだけ数え方が違うので注意が必要です。
実務でつまずく点 ― 会社要件で見落とされやすいこと
  • 中小企業者の判定は資本金「または」従業員数。資本金が大きくても従業員数で該当することがあります。逆に、減資して資本金要件を満たそうとする場合、減資そのものが認定後の取消事由でもあるため、必ず贈与前に整理してください。
  • 特定特別子会社の要件は「贈与・相続の時以後、認定を受けるまでの間」に及びます。贈与後に子会社の状況が変わると認定を受けられません。
  • 従業員1人以上の要件は、特別子会社が外国会社の場合に5人以上に上がります。正確には、申請者またはその支配関係法人が特別子会社の株式等を保有し、かつその特別子会社が外国会社に該当する場合です。
  • 従業員数の証明は社会保険の資料で行います。70歳未満は厚生年金保険の標準報酬月額決定通知書または被保険者縦覧照会回答票、70歳以上75歳未満は健康保険の資料。そこから短時間労働者と役員を除きます。日雇労働者や短期間で臨時に使用される従業員は含みません。出向・派遣は、その適用事業所の被保険者として扱うかで判断します。
  • 贈与等の日時点の人数は、決定通知書の発行後の増減を「被保険者資格取得(喪失)確認通知書」等で別途証明する必要があります。

7資産保有型会社という落とし穴

ひとことで言うと会社の資産のうち現預金・有価証券・自己使用でない不動産などが70%以上を占めると、原則として制度を使えません。ただし従業員5人以上・事務所あり・3年以上の営業という3条件をすべて満たせば救済されます。

事業承継税制は「事業を承継する」ための制度なので、実質的に資産の器でしかない会社は対象から外されています。ところが、堅実に内部留保を積み上げてきた優良な中小企業ほど、この判定に引っかかりやすいという皮肉があります。

2つの判定式

区分判定式基準
資産保有型会社(特定資産の帳簿価額の合計+本人・同族関係者に支払われた配当および損金不算入の役員給与)÷(総資産の帳簿価額+同左)70%以上で該当
資産運用型会社特定資産の運用収入 ÷ 総収入金額75%以上で該当

※ 判定は帳簿価額ベースです(時価ではありません)。配当・過大役員給与の加算対象期間は原則として判定日以前5年間ですが、贈与の日・相続開始の日より前に支払われたものは含みません。

特定資産とは何か ― 5つの類型

類型具体例と実務上の注意
①有価証券等株式、投資信託、公社債など。ただし特別子会社の株式で一定のものは除かれます。
②現に自ら使用
していない不動産
第三者に賃貸している不動産、遊休地など。従業員用社宅は自己使用で該当せず、役員用住宅は第三者賃貸として該当します。この区別が実務で頻出します。
③ゴルフ会員権等接待用であっても該当します。「業務で使っているから大丈夫」は通りません。
④絵画・貴金属等絵画、彫刻、工芸品、貴金属、宝石など。
⑤現預金その他
これらに類する資産
現金・預金に加え、保険積立金、代表者や同族関係者への貸付金・未収金・預け金・差入保証金を含みます。役員貸付金が残っている会社は要注意です。

救済ルート ― 事業実態要件

上の式で70%(75%)を超えても、次の①②③のすべてを満たせば、資産保有型会社・資産運用型会社に該当しないものとみなされます。

常時使用する従業員が5人以上いること

ここでは後継者と生計を一にする親族を人数に含めることができません。家族経営の会社は、この時点で満たせないケースが多くあります。

事務所・店舗・工場等を所有または賃借していること

自社所有でも賃借でも構いませんが、実体のある事業拠点が必要です。

贈与の日(相続開始の日)まで引き続き3年以上、商品販売等をしていること

商品の販売、資産の貸付け、役務の提供で継続して対価を得ているもの(開発・生産を含む)です。ただし貸付けの相手方が後継者またはその同族関係者である場合は該当しません

設立3年未満の会社は事業実態要件を満たせません

③の「3年以上」がネックとなり、新設会社は事業実態要件による救済を受けられません。また、組織再編があった場合、旧会社の業務期間は原則として通算されません(組織変更・種類変更は例外)。持株会社化と事業承継税制を同時に進めようとして、この点で行き詰まる事例が繰り返し起きています。

やむを得ない事由による一時的な除外

事業活動のために必要な資金の借入れ、事業用資産の譲渡、その他これらに類する事由(2019年4月1日以後のもの)により一時的に基準を超えた場合には、資産保有型会社は事由発生日から6か月経過日まで、資産運用型会社はその事業年度から事業年度終了日の翌日以後6か月経過日の属する事業年度まで、該当しないものとみなされます。ただし、この救済は事業実態要件には及びません

実務チェック ― この会社は危ないか

  • 直近3期の決算書で、現預金+有価証券+保険積立金+役員貸付金+賃貸不動産が総資産の何%か
  • その比率が60%を超えているなら、贈与のタイミングまでに設備投資・借入返済・役員貸付金の整理などで下げられるか
  • 従業員数が5人(後継者と生計一の親族を除く)に届いているか
  • 直近5年間の役員給与のうち、損金不算入額があるか(あれば分母・分子に加算されます)
実務でつまずく点 ― 判定の時期と、帳簿価額の作り方
  • 資産保有型会社は「一の日」において該当したら取消し、資産運用型会社は「各事業年度終了の時点」で判定。判定の粒度が違います。資産保有型は、決算日でなくても期中のある1日に70%を超えれば該当します。
  • 認定時の判定期間も違います。資産保有型は「贈与の日の属する事業年度の直前事業年度の開始の日以後」、資産運用型は「認定申請基準事業年度」で、後者は2以上の事業年度になることがあります
  • 帳簿価額の作り方に決まりがあります。減価償却資産・特別償却適用資産・圧縮記帳適用資産は、減価償却累計額・特別償却準備金・圧縮積立金を控除した後の金額。一方、貸倒引当金・投資損失引当金などの評価性引当金は控除しません
  • 配当・損金不算入役員給与の加算は分母にも分子にも入ります。加算対象期間は原則として判定日以前5年間ですが、贈与の日・相続開始の日より前に支払われたものは含みません
  • 建物に自己使用部分とそれ以外がある場合は、床面積割合その他合理的と認められる割合であん分します。全部を自己使用として扱うと判定を誤ります。
  • 資産保有型会社に該当しても、必ず打ち切られるとは限りません。条文は「政令で定めるもの」に限定しており、その会社自身が「該当日に商品販売等を行い、後継者と生計を一にする親族以外の従業員5人以上、その従業員の勤務する事務所等を所有・賃借」の要件をすべて満たしていれば確定事由になりません。

8先代経営者(贈与者・被相続人)の要件

ひとことで言うと過去に代表者だったこと、同族で議決権の過半数を持ち後継者を除けば筆頭だったこと、そして贈与の場合は代表を退くこと。この3点です。

贈与の場合

要件内容
代表者だったこと会社の代表者であったこと。現に代表者である必要はありません。
議決権の保有代表者であった期間内のいずれかの時および贈与の直前において、同族関係者と合わせて総議決権数の過半数を保有し、かつ後継者を除いた同族関係者の中で最も多くの議決権を有していたこと(同率でも筆頭株主として扱われます)。
代表者の退任贈与の時に代表者を退任していること。ただし代表権のない役員として残ることは可能で、役員報酬を受け取っても差し支えありません。「引退=会社を去る」ではありません。
重複適用の禁止すでに事業承継税制の適用に係る贈与をしていないこと。ただし後継者が複数の場合、同じ年の別の日に贈与することは可能です(認定申請書は一括提出)。
計画への記載特例承継計画に記載された先代経営者であること。
「代表権を返上する」だけでよい

先代が会社から完全に離れる必要はありません。代表取締役を退任して取締役会長として残り、役員報酬を受け取り続けることは制度上まったく問題ありません。実務では、金融機関との関係や取引先への説明のため、しばらく先代が役員として残るケースが一般的です。ただし再び代表者に就任すると、事業継続期間中は認定が取り消されます(第23章)。

相続の場合

被相続人の状況必要な議決権要件
死亡の直前に代表者である場合相続開始の直前において、同族で過半数かつ後継者を除き筆頭
死亡の直前に代表者でない場合代表者であった期間内のいずれかの時および相続開始の直前いずれにおいても、同族で過半数かつ後継者を除き筆頭

※ すでに特例措置の適用に係る贈与をした先代経営者に相続が発生した場合、その保有株式について第一種特例相続の認定を受けることはできません。

実務でつまずく点 ― 先代経営者の要件
  • 同族筆頭要件は「同率」でも満たします。後継者を除いた同族関係者の中で最も多い議決権を持っていればよく、同数の株主がいても構いません。
  • 会社全体の筆頭株主である必要はありません。同族関係者以外の第三者が最も多くの議決権を持っていても、同族内で最多であれば要件を満たします。
  • 組織変更・種類変更をしていても、代表権を有していた期間は通算されます。持分会社から株式会社に組織変更した場合、組織変更前に代表権を有していた期間も算入されます(会社は組織変更の前後を通じて同一人格であるため)。
  • 先代が代表を退任する日と贈与日の前後関係に注意してください。要件は「贈与の時に代表者を退任していること」です。同日中に処理する場合は、議事録の時刻や登記申請の順序を含めて整合させる必要があります。
  • すでに特例措置の適用に係る贈与をした先代に相続が発生した場合、その保有株式について第一種特例相続の認定は受けられません。贈与しきれなかった株式の扱いは、贈与の設計時点で決めておく必要があります。

9後継者の要件(贈与の場合)

ひとことで言うと贈与時に18歳以上贈与の直前に役員、贈与後に代表者、そして同族で過半数かつ筆頭。令和7年から3年役員要件が消えたので、今から準備しても間に合います。
要件内容と実務上の注意
年齢贈与の時において18歳以上(令和4年3月31日以前の贈与は20歳以上)。
役員就任贈与の直前において役員であること。特例措置では令和7年1月1日以後の贈与から3年要件が廃止されました。なお、経営承継円滑化法の認定側はもともと「贈与の直前」で3年要件はありませんでした。
代表者就任贈与の時以後、会社の代表者であること。定款等で代表権を制限されている場合は要件を満たしません。
議決権同族関係者と合わせて総議決権数の過半数を保有すること。
・後継者が1人:同族関係者の中で最も多くの議決権同率でも可
・後継者が複数:各人10%以上かつ同族関係者のいずれの者の議決権をも下回らないこと
議決権の数え方直接保有分のみで判定します。子会社を通じた間接保有は算入しません
同族外の大株主同族関係者以外の者が最も多くの議決権を持っていても構いません。判定はあくまで同族関係者内での順位です。
取得の方法贈与により取得していること。売買は対象外です。また法人からの贈与は所得税の対象となるため使えません。
納税見込み贈与税を納付することが見込まれること。相続時精算課税の特別控除の範囲内で贈与税額がゼロになる場合、認定を受けられません(第19章)。
継続保有取得した株式等を継続して保有していること。
制度の重複一般措置の適用を受けていないこと。
計画への記載特例承継計画に記載された後継者であること。
「同族で過半数」が最初の壁になる会社は少なくありません

創業から時間が経ち、分散した株式が親族外の元役員・取引先・従業員持株会に散らばっている会社では、そもそも同族関係者の議決権が過半数に届かないことがあります。この場合は、贈与の前に自己株式の取得や相対での買い集めによって同族の議決権を過半数まで戻す作業が必要です。これには時間と資金がかかるため、逆算のいちばん外側に置いてください。

実務でつまずく点 ― 後継者の要件(贈与)
  • 議決権の判定は直接保有分のみ。後継者が100%出資する会社が株式を持っていても、その分は算入されません。
  • 売買では要件を満たしません。株式は「贈与により取得していること」が要件です。役員・従業員が買い取るMBOには使えません(第44章)。
  • 法人からの贈与も使えません。後継者には所得税が課され贈与税は課されないためです。
  • 議決権制限株式・無議決権株式は猶予の対象になりません。ただし同族過半要件・同族筆頭要件の判定では、一部制限株式も判定対象に含めます。「猶予の対象になるか」と「議決権要件の判定に入るか」でルールが違うので、株主名簿と定款の両方を確認してください。
  • 「贈与の直前において役員」の要件は、実体上の地位で判断されます。贈与日前に就任決議と就任承諾を了しておき、登記も速やかに行うのが安全です。
  • 同じ会社の株式を複数年に分けて贈与することはできません。例外は特例措置で後継者が2人・3人ある場合に「同一年中」に各後継者へ贈与するときだけです。「別の子に来年」はできません。

10後継者の要件(相続の場合)

ひとことで言うと相続には年齢要件がありません。ただし相続開始の直前に役員であることが原則必要で、5か月以内に代表者に就く必要があります。この5か月が最初の関門です。
要件内容
役員就任相続開始の直前において役員であること。
ただし次のいずれかに該当する場合はこの要件は不要です。
・先代経営者が60歳未満で死亡した場合
・(令和3年4月1日以後の相続)先代経営者が70歳未満で死亡した場合
・(同)相続開始前に確認を受けた特例承継計画に特例後継者として記載されている場合
代表者就任相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において代表者であること。
議決権同族関係者と合わせて総議決権数の過半数を保有し、同族内で筆頭(複数の場合は各10%以上かつ下回らない)。
年齢要件なし(18歳未満でも適用可能)。
遺産分割認定申請時までに、適用を受ける株式等の遺産分割が済んでいる必要があります。
特例承継計画を出しておくことが、相続時の保険になる

3つ目の除外事由に注目してください。相続開始前に特例承継計画の確認を受けていれば、後継者が役員でなくても相続時の役員要件を満たせます。先代が何歳であってもです。「まだ息子は他社に勤めていて役員にしていない」という段階でも、計画を出しておくだけで不意の相続に備えられる。これが第2章で「とりあえず計画を出しておく」ことを勧めた最大の理由です。

遺産分割が5か月〜8か月で終わらないと詰みます

認定申請の期限は相続開始の日の翌日から8か月以内で、しかもその時点で対象株式の遺産分割が完了している必要があります。相続人間で争いがあると、この期限を守れません。遺言書の作成、あるいは経営承継円滑化法の民法特例(除外合意・固定合意)(第36章)で、あらかじめ株式の行き先を確定させておくことが実質的な必須条件です。

実務でつまずく点 ― 相続で間に合わせるための逆算

相続の場合、実務は次の順で詰まります。どれか一つでも遅れると、その時点で特例措置は使えなくなります。

  • 相続開始〜5か月:後継者の代表取締役就任(取締役会・株主総会の決議と登記)。ここまでに後継者が決まっていないケースが実際にあります。
  • 〜8か月:遺産分割協議の成立と認定申請。認定申請できるのは5か月経過後からなので、実質3か月しかありません。株価算定、会社の決算書一式、株主名簿、従業員数の証明資料をこの間にそろえます。
  • 〜10か月:相続税の申告と担保提供。担保は株券発行や供託に時間がかかるため、間に合わない場合は「速やかに担保関係書類の提出を行う旨の確約書」を提出したうえで所轄税務署に相談します。
  • 相続開始前に特例承継計画の確認を受けていれば、後継者が相続開始の直前に役員でなくても役員要件を満たせます(先代の年齢を問わず)。これが計画を先に出しておく最大の実利です。

11後継者が2人・3人のときのルール

ひとことで言うと特例措置なら後継者は最大3人まで。ただし各人が10%以上持ち、かつ同族の誰よりも少なくないことが必要です。共同経営は制度上できますが、実務では慎重に。
ルール内容
人数会社ごとに最大3人。特例承継計画への記載が必須です。
議決権の下限各後継者が総議決権数の10%以上を保有すること。
順位各後継者が同族関係者のいずれの者の議決権をも下回らないこと。
贈与順2人目・3人目への贈与後に、各後継者が贈与者より多くの議決権を持つこと(同率は不可)。
変更計画確認後も後継者の変更・追加は可能ですが、特例措置の適用を受けた後はその者を変更できません

判定の具体例(中小企業庁マニュアルの設例)

  • NG例:長女10%、配偶者20% → 長女は「同族関係者のいずれの者をも下回らない」を満たさないため不可。
  • NG例:長女が直接10%、長女が100%保有する子会社が20% → 間接保有は算入しないため10%で判定。配偶者が20%なら不可。
共同経営は「制度上は可能」だが「実務上は難しい」

兄弟2人に株を分けて共同経営にすると、10年後・20年後にどちらかが会社を離れたいと考えたとき、株を売った瞬間に納税猶予が打ち切られます。しかも次の世代では、いとこ同士で株が分散します。制度が3人まで認めているのは選択肢を広げるためであって、分散を推奨しているわけではありません。議決権は1人に集約し、他の子には別の財産で報いるのが、事業承継の基本形であることは変わりません。

実務でつまずく点 ― 「後継者の数」はどう数えるか
  • 10%要件か筆頭要件かは、実際に制度の適用を受ける人数で判定します。甲の全株100株を長男95株・二男5株が相続し、長男だけが適用を受ける場合は「1人の場合」の基準(同族筆頭要件)で判定します。
  • 「受贈者の数」は、同一年中に同一の贈与者から同一の会社の株式を取得した者の数で数えます。甲がA・Bに同じ会社の株式を贈与すれば「2人」、甲がAにX社株・BにY社株を贈与すればそれぞれ「1人」、甲がAにX社株・乙がBにX社株を贈与すればそれぞれ「1人」です。
  • 2人目・3人目への贈与後に、各後継者が贈与者より多くの議決権を持つ必要があります(同率は不可)。贈与の順序と株数の設計を誤ると、後から修正できません。
  • 後継者のうち1人でも特例措置の適用を受けた後は、その者を計画から変更できません。まだ贈与・相続を受けていない者だけが変更可能です。

12先代経営者以外の株主からの承継

ひとことで言うと特例措置では、先代経営者だけでなく親族や少数株主が持つ株も、後継者に集約して納税猶予の対象にできます。ただし先代からの贈与・相続が先で、しかも期限があります

特例措置の大きな拡充点の一つが、複数の株主から後継者へ株式を集約できるようになったことです。これを「第二種」と呼びます(先代経営者からの承継が「第一種」)。

項目第二種の要件
前提第二種の認定前に、その会社が第一種特例贈与・相続の認定を受けていること。かつ第二種の贈与時(相続開始時)に、その会社の代表者が第一種特例贈与・相続を受けていること。
贈与者会社の代表者でないこと(代表権のない役員として報酬を受けるのは可)。先代経営者からの贈与・相続以後に贈与を行った者であること。
不要な要件第一種で必要な「代表権を持っていたこと」「同族過半数」「同族内筆頭」「特例承継計画への記載」の4つは不要です。少数株主でも贈与者になれます。
期限先代経営者からの贈与・相続に係る認定の有効期限(=最初の適用に係る申告期限の翌日から5年を経過する日)までに、第二種に係る申告期限(延長前)が到来すること。

期限の具体例(中小企業庁マニュアルの設例)

平成30年4月1日に先代から贈与 → 申告期限は平成31年3月15日 → 認定の有効期間は令和6年3月15日まで。この場合、

  • 第二種贈与:令和5年12月31日までの贈与が対象(申告期限が令和6年3月15日に到来するため)
  • 第二種相続:令和5年5月15日までの相続が対象(申告期限が令和6年3月15日に到来するため)

※ 第一種と第二種は同じ日でも可能ですが、先代経営者からの贈与・相続が先に行われている必要があります。順序を逆にすると第二種の認定を受けられません。

実務でつまずく点 ― 第二種の期限は「1年」ではない

第二種の期限を「第一種の申告期限から1年」と説明している資料がありますが、正確には「先代経営者からの贈与・相続に係る認定の有効期限(=最初の適用に係る申告期限の翌日から5年を経過する日)までに、第二種に係る申告期限(延長前)が到来すること」です。

  • 第一種と第二種は同じ日でも可能ですが、先代経営者からの贈与・相続が先に行われている必要があります。順序を逆にすると認定を受けられません。
  • 第二種では、第一種で必要な「代表権を持っていたこと」「同族過半」「同族内筆頭」「特例承継計画への記載」の4要件が不要です。少数株主でも贈与者になれます。
  • ただし第二種の贈与者は「会社の代表者でないこと」が必要です(代表権のない役員として報酬を受けるのは可)。
  • 親族に分散した株式を後継者に集約する最後のチャンスが、この5年間です。第一種の贈与を実行したら、すぐに第二種の設計に着手してください。

13贈与で承継する場合のスケジュール

ひとことで言うと計画提出(〜令和9年9月30日)→ 贈与(〜令和9年12月31日)→ 認定申請(翌年1月15日)→ 贈与税申告(翌年3月15日)。逆算すると、株価算定や株主整理は令和8年内に着手すべきです。
現状把握・株価算定
株主構成の整理
令和8年7月〜令和9年3月
後継者の役員就任
経営体制づくり
早いほどよい
特例承継計画の作成
(認定支援機関の指導)
2〜3か月みる
計画を都道府県へ提出
〜R9.9.30
贈与の実行
〜R9.12.31
都道府県へ認定申請
R9.10.15〜R10.1.15
贈与税の申告
担保の提供
〜R10.3.15
年次報告・継続届出
(5年間)
開始
令和8年7月令和9年1月令和9年7月令和10年1月令和10年6月

※ 上図は令和9年10月に贈与を実行する想定での例です。贈与の時期によって認定申請・申告の期限が動きます。

1
期限:令和9年9月30日特例承継計画を都道府県へ提出する

後継者の氏名、承継の予定時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画を記載し、認定経営革新等支援機関(税理士・公認会計士・金融機関・商工会議所など)の指導および助言を受けた旨を記載します。贈与の後でも、円滑化法の認定申請時までであれば提出は間に合います

2
期限:令和9年12月31日贈与を実行する

贈与契約書を作成し、株主名簿を書き換えます。同時に先代経営者は代表取締役を退任し、後継者が代表取締役に就任します。この登記も必要です。

3
贈与年10月15日〜翌年1月15日都道府県へ認定申請する

贈与認定申請基準日は贈与年の10月15日です。この日から、贈与日の属する年の翌年1月15日までに申請します。年末に贈与すると申請期間が2週間ほどしか残りません。書類の準備を先に終えておくべき理由です。

4
期限:贈与年の翌年3月15日贈与税を申告し、担保を提供する

認定書の写しを添付して申告します。猶予税額と利子税に見合う担保の提供が必要ですが、対象株式等の全部を担保として提供すれば要件を満たしたものとみなす取扱いがあります(第20章)。

5
5年間の報告義務が始まる

申告期限の翌日から1年を経過するごとの日が「報告基準日」となり、そこから起算して都道府県には3か月以内、税務署には5か月以内に書類を提出します(第21章)。

実務でつまずく点 ― 贈与の時期が手続きを左右する
  • 年末に贈与すると認定申請の期間がほとんど残りません。贈与認定申請基準日は贈与年の10月15日で、申請期限は翌年1月15日。12月末に贈与すると、書類作成に使えるのは実質2週間です。
  • 特例承継計画は贈与の後でも、認定申請時までなら提出できます。ただし提出期間(令和9年9月30日まで)内であることが前提です。
  • 贈与日と代表交代日の整合を取ってください。先代は贈与の時に代表者を退任し、後継者は贈与の時以後に代表者である必要があります。株主名簿の書換え、議事録、登記の日付をそろえます。
  • 担保関係書類は申告期限までに提出が必要です。株券発行会社なら供託、株券不発行会社なら質権設定の承諾書と印鑑証明書、質権設定後の株主名簿記載事項証明書。2以上の認定承継会社がある場合は、会社ごとに手続きが必要です。
  • 報告基準日の起点は「申告期限」です。贈与日でも決算期でもありません。申告期限の翌日から1年を経過するごとの日が報告基準日になります。

14相続で承継する場合のスケジュール

ひとことで言うと相続は10か月がすべてです。5か月以内に後継者が代表者に就き、8か月以内に遺産分割を終えて認定申請、10か月以内に申告。ここに株価算定も入ります。
相続の開始
後継者が代表者に就任
〜5か月
株価算定・財産評価
早期着手が必須
遺産分割協議の成立
認定申請までに完了
特例承継計画の提出
認定申請時までに提出可
都道府県へ認定申請
5か月経過後〜8か月
相続税の申告
担保の提供
〜10か月
年次報告・継続届出
開始
相続開始3か月6か月9か月12か月
認定申請は「5か月経過後」から「8か月以内」の3か月間だけ

相続の認定申請は、相続開始の日の翌日から8か月以内ですが、5か月を経過する日以後の期間に限られます。つまり実質的な申請可能期間は約3か月です。この期間内に、後継者の代表者就任登記、遺産分割協議書、株式の評価資料、会社の決算書一式をそろえる必要があります。相続開始直後から動かないと間に合いません。

相続開始後でも特例承継計画は出せる

特例承継計画は、円滑化法の認定申請時までに提出すれば足ります(国税庁 質疑応答事例)。ただしこれは令和9年9月30日という提出期限内であることが前提です。令和9年10月以降に相続が発生した場合、計画を出していなければ特例措置は使えず、一般措置しか残りません。ここが「先に計画を出しておくべき」最大の理由です。

15特例承継計画の書き方と注意点

ひとことで言うと様式21に、後継者の氏名・承継予定時期・経営見通し・承継後5年間の事業計画を書き、認定支援機関の指導助言を受けた旨を記載して都道府県に出します。書式はA4で数枚、事業計画の分量も大きくありません。
記載項目書き方のポイント
会社について主たる事業内容、資本金、常時使用する従業員数。
特例代表者先代経営者の氏名と代表者への就任日。すでに退任している場合は退任日も記載。
特例後継者最大3人まで氏名を記載。ここに書かなかった人は後継者になれません(変更申請は可能)。迷う場合は候補を広めに書いておく判断もあります。
承継の時期「令和○年○月頃」程度で構いません。実際の贈与時期が計画とずれても、それ自体は問題になりません。
承継時までの
経営見通し
いつ誰に何をどう引き継ぐか、後継者の育成方針、株式の集約方針などを記載します。
承継後5年間の
事業計画
年度ごとの具体的な取組内容。売上目標そのものよりも、取組の中身を書きます。この計画の達成が認定の条件になるわけではありません。
認定支援機関の
指導助言
認定経営革新等支援機関が、所見を記載します。顧問税理士が認定支援機関であれば、そのまま依頼できます。

様式・記載例:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定に関する申請手続関係書類」特例承継計画記載マニュアル(PDF)

計画は「出す義務」であって「守る義務」ではありません

特例承継計画に書いた事業計画を達成できなくても、それだけで認定が取り消されることはありません。取消事由は第23章に列挙したもので、事業計画の未達は含まれていません。提出のハードルは低く、提出しないリスクだけが大きい。この非対称性を理解してください。

また、計画確認後に内容が変わった場合は変更申請書を出して再度確認を受けられます。会社が消滅する等の組織再編があった場合は報告書を提出します。いずれも改めて認定支援機関の指導・助言が必要です。

実務でつまずく点 ― 特例承継計画の書き方
  • 特例後継者は最大3人まで書けます。迷うなら候補を広めに書いておく判断があります。後から変更・追加もできますが、その者が特例措置の適用を受けた後は変更できません
  • 事業計画の未達は取消事由ではありません。取消事由は第23章に列挙したものに限られ、計画の内容を達成する義務はありません。「書いたとおりにできるか不安だから出さない」というのは、リスクの評価を誤っています。
  • 認定支援機関の指導助言が必須です。顧問税理士が認定経営革新等支援機関であればそのまま依頼できます。認定を受けていない場合は、認定支援機関検索システムで探すか、金融機関・商工会議所に相談してください。
  • 先代経営者(特例代表者)も計画に記載されている必要があります。後継者だけ書けばよいわけではありません。
  • 確認後に会社が消滅する等の組織再編があった場合は、報告書を提出して再度確認を受けます。この場合も改めて認定支援機関の指導・助言が必要です。

16何株を贈与すればよいか(3分の2ルール)

ひとことで言うと贈与者と後継者の持ち株を合わせて3分の2以上あるなら、贈与後に後継者が3分の2以上になるように贈与。3分の2未満なら、贈与者の持ち株を全部贈与します。端数は切り上げです。
ケース贈与すべき株数
贈与者と後継者の議決権の合計が
総議決権の3分の2以上
贈与後に後継者の議決権が総議決権の3分の2以上となるよう贈与する
贈与者と後継者の議決権の合計が
総議決権の3分の2未満
贈与者が保有する株式等の全部を贈与する

計算例

  • 例1:発行済株式100株、贈与者80株・後継者0株 → 合計80株は3分の2(67株)以上。後継者が67株以上になるよう贈与するので、67株以上を贈与すればよい(3分の2の端数は切り上げ)。
  • 例2:発行済株式100株、贈与者50株・後継者10株 → 合計60株で3分の2未満。したがって贈与者の50株全部を贈与する。
  • 例3:発行済株式300株、贈与者200株・後継者0株 → 3分の2は200株。200株全部を贈与。
特例措置なら「全部贈与」が実務の標準解

特例措置は対象株数に上限がないため、3分の2ルールは「最低限これだけは贈与しなさい」という下限を定めているにすぎません。中途半端に残した株式は、将来その先代に相続が発生したときに通常の相続税の対象になります。先代の持ち株は全部贈与するのが、後の処理を単純にする観点から標準的な組み立てです。

実務でつまずく点 ― 3分の2ルールの落とし穴
  • 端数は切り上げ。発行済100株なら3分の2は67株。66株では要件を満たしません。
  • 自己株式は分母から除きます。発行済1,000株のうち自己株式200株なら分母は800株。3分の2は534株(533.3…の切り上げ)です。
  • 議決権制限株式を混在発行している場合は、議決権に制限のない株式だけで判定します。先代700株(うち無制限500株)・別の株主300株(全て無制限)で合計1,000株(無制限800株)なら、分母は800株。先代と後継者の無制限株が500株で3分の2(534株)に届かないため、先代は無制限株500株全部を贈与する必要があります。
  • 一般措置では3分の2を超えた部分は猶予対象になりません。特例措置では超過分も全て対象です。
  • 後継者がすでに3分の2以上を持っている場合は、1株以上の贈与で要件を満たします(特例措置)。

17猶予される税額の計算方法

ひとことで言うと「全部の財産で計算した税額」と「自社株だけを取得したと仮定して計算した税額」を出し、後者が猶予されるという2段階(一般措置は3段階)の計算です。

相続税の場合

1
ステップ1 通常どおり相続税を計算する

後継者を含む相続人全員の取得財産にもとづき、通常の方法で相続税の総額と各人の税額を計算します。ここで出た後継者の税額をとします。

2
ステップ2 後継者が「自社株だけ」を相続したと仮定して計算する

他の相続人の取得財産はそのままに、後継者だけが対象株式等のみを取得したものとして相続税の総額を計算し直し、後継者の税額を求めます。これをとします。

3
ステップ3(一般措置のみ) 対象株式等の20%だけを相続したと仮定して計算する

一般措置は猶予割合が80%なので、対象株式等の20%相当だけを取得したと仮定した税額を求め、②−③が猶予税額になります。特例措置ではこのステップは不要で、②の全額が猶予されます。

4
納付する額は「①−猶予税額」

特例措置なら①−②、一般措置なら①−(②−③)を、申告期限までに現金で納付します。

贈与税の場合

ステップ内容
ステップ1その年に贈与を受けた全財産の価額の合計にもとづいて贈与税を計算(=①)
ステップ2贈与財産が対象株式等のみであると仮定して贈与税を計算(=②)。これが猶予税額
納付額①−②を申告期限までに納付

※ 対象株式等とともに引き受けた債務がある場合は、株式等の価額からその債務(事業に関するもの以外であることが明らかなものを除く)を控除します。
出典:国税庁「法人版事業承継税制のあらまし」

実務でつまずく点 ― 申告後に間違いに気づいたら
  • 納税猶予は期限内申告が要件です。期限後申告・修正申告・更正の請求に係る税額は原則として猶予の対象外になります。
  • ただし例外があります。修正申告や更正が、期限内申告で猶予の適用を受けた株式の評価または税額計算の誤りのみに基づくときは、増加した税額(附帯税を除く)も当初から納税猶予の適用があるものとして取り扱われます。株価評価を間違えて後から直すケースは救済されます。
  • 一方、期限内申告で選択した株式の数を、修正申告で変更することはできません。「もっと多く(少なく)猶予対象にすればよかった」は後戻りできません。贈与株数と猶予対象株数の決定は、申告期限までが勝負です。
  • 対象株式とともに引き受けた債務がある場合は、株式等の価額からその債務を控除します(事業に関するもの以外であることが明らかなものを除く)。負担付贈与にする場合は猶予税額が減る点に注意してください。

18納税猶予額シミュレーター

ひとことで言うと自社株の評価額と家族構成を入れると、猶予される税額それでも現金で払う額、そして制度を使わない場合との差が出ます。
納税猶予額シミュレーター相続・贈与(暦年課税)・贈与(相続時精算課税)の3モード。入力値は端末内でのみ計算され、送信されません。

単位はすべて万円です。

この試算の前提と限界
  • 相続税は法定相続分課税方式で計算し、配偶者の税額軽減・未成年者控除・障害者控除・相次相続控除は反映していません(これらは後継者本人の税額計算には通常影響しないため)。
  • 小規模宅地等の特例、生命保険金・退職金の非課税枠は反映していません。反映する場合は「自社株以外の相続財産」の欄を減額後の金額で入力してください。
  • 贈与税は直系尊属から18歳以上の者への贈与(特例贈与財産)の税率で計算しています。
  • 一般措置は対象株式を発行済議決権株式の3分の2までに制限し、相続は猶予割合80%で計算しています。
  • 暦年課税の生前贈与加算、相続時精算課税で贈与した株式の相続時の持ち戻しは反映していません。
  • 実際の税額は財産の内訳・分割方法・各種特例の適用で変わります。意思決定の前に必ず個別の試算を行ってください。

19相続時精算課税との組み合わせ

ひとことで言うと納税猶予が万一取り消されたとき、暦年課税なら最高55%、相続時精算課税なら20%。この差が保険になります。特例措置では推定相続人でない後継者にも精算課税を使えます。

事業承継税制で贈与を行う場合、贈与税の課税方式として暦年課税と相続時精算課税のどちらも選べます。実務では相続時精算課税との併用がほぼ標準になっています。理由は「取り消されたときの被害の大きさ」が桁違いだからです。

項目暦年課税相続時精算課税
基礎控除年110万円年110万円(令和6年1月1日以後の贈与)
特別控除なし累計2,500万円
税率10〜55%の超過累進一律20%
猶予が取り消されたとき
(株式のみ3億円を贈与した場合)
約1億5,800万円約5,478万円
贈与者の要件なし贈与の年の1月1日に60歳以上
受贈者の要件なし18歳以上の推定相続人・孫
特例措置の適用を受ける贈与なら、推定相続人・孫でなくてもよい
ただし「贈与税が発生しない」と認定を受けられません

円滑化法の認定要件に「贈与税を納付することが見込まれること」があります。相続時精算課税を選択した結果、特別控除2,500万円と基礎控除110万円の枠内に収まって贈与税額がゼロになる場合、認定を受けられません。株式評価額が2,610万円以下の小規模な会社では、この点が実務上の障害になります。

特例措置ならではの拡張 ― 親族外承継にも精算課税が使える

通常、相続時精算課税は直系卑属である推定相続人または孫にしか使えません。しかし特例措置の適用を受ける贈与では、贈与者が贈与年1月1日に60歳以上であれば、受贈者が推定相続人・孫でなくても(18歳以上であれば)相続時精算課税を選択できます。役員や従業員への承継(親族外承継)で、この拡張が効いてきます。個人版事業承継税制についても同様の特例があります。

実務でつまずく点 ― 相続時精算課税の細かい罠
  • 贈与税額がゼロだと認定を受けられません。特別控除2,500万円と基礎控除110万円の枠内に収まると「贈与税を納付することが見込まれる」という要件を満たせません。株式評価額が2,610万円以下の会社では特に注意。暦年課税で計算すれば猶予税額が算出される場合は、暦年課税で適用を受けることができます。
  • その株式取得の時より「前」に同じ贈与者から贈与を受けた財産には、精算課税は適用されません。年初に別の財産の贈与を受けている場合、その分は暦年課税のままです。
  • 猶予税額の全部について期限確定・免除があった後も、その贈与者からの贈与財産には引き続き精算課税が適用されます。一度選択したら戻れません。
  • 親族外の後継者に使う場合、後継者は先代の相続に巻き込まれます。相続人以外の者は「遺贈により取得したものとみなされる」ため、遺産を一切もらっていなくても相続税の申告義務が生じ、2割加算の対象にもなります(第44章)。

20担保の提供

ひとことで言うと猶予税額と利子税に見合う担保が必要ですが、対象株式の全部を担保に出せば足りたものとみなす取扱いがあるため、実務上のハードルは高くありません。

納税猶予を受けるには、猶予される税額および利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。担保として提供できるのは、国債・地方債、税務署長が確実と認める有価証券、土地、建物、保証人の保証などです。

「みなす充足」の取扱い

納税猶予の対象となる非上場株式等の全部を担保として提供した場合には、担保の額が猶予税額と利子税の額に満たないときであっても、担保の提供があったものとみなされます。したがって、実務では対象株式そのものを担保に供するのが通常です。株券不発行会社の場合は、質権設定の承諾書等の手続きが必要になります。

※ 担保の提供手続きは税務署ごとに運用の細部が異なることがあります。申告期限の直前に慌てないよう、事前に所轄税務署へ確認しておくことをおすすめします。

実務でつまずく点 ― 「みなす充足」が外れる場面

対象株式の全部を担保提供すれば「みなす充足」により増担保を求められませんが、担保として提供された株式に変更があると、この扱いが外れます。次のような場面です。

  • 認定承継会社が合併により消滅した、株式交換等で完全子会社になった、組織変更した
  • 株式の併合・分割、株式無償割当てがあった
  • 名称変更等により株券の差替えが必要となった
  • 担保財産の変更等で対象株式の全部が担保提供されていない状態になった
  • 株式に質権設定・差押え等の処分制限がされた

また、株式以外(不動産・国債・保証人の保証など)を担保にする場合はみなす充足の適用がなく、猶予税額+猶予期間中の利子税に見合う担保が必要です。利子税は相続なら相続人の、贈与なら贈与者の平均余命年数を猶予期間として計算します。長期にわたるため、必要担保額は相当な金額になります。

215年間の年次報告と継続届出

ひとことで言うと最初の5年は毎年2通(都道府県に年次報告書、税務署に継続届出書)。6年目からは税務署に3年に1度だけ出し忘れると全額打切りです。
年次報告書
(都道府県知事あて)
継続届出書
(税務署長あて)
様式様式第11国税庁指定様式
最初の5年間
(事業継続期間)
年1回
報告基準日の翌日から3か月以内
年1回
報告基準日の翌日から5か月以内
6年目以降提出不要3年に1回
第2種基準日の翌日から3か月以内

報告基準日という考え方

報告基準日とは、最初に事業承継税制の適用を受ける贈与税・相続税の申告期限の翌日から1年を経過するごとの日です。決算期や贈与日ではなく申告期限が起点である点に注意してください。

具体例(贈与税の申告期限が令和10年3月15日の場合)

  • 第1回報告基準日:令和11年3月15日 → 都道府県は令和11年6月15日まで、税務署は令和11年8月15日まで
  • 第2回報告基準日:令和12年3月15日 → 以下同様
  • 第5回報告基準日:令和15年3月15日 → ここまでが「第1種基準日」
  • 以後は「第2種基準日」として、3年ごとに税務署へ継続届出書のみ提出
申告期限を延長した場合は、報告基準日もずれます

災害等で申告期限が延長された場合、延長後の申告期限にもとづく報告基準日で年次報告書を作成する必要があります。延長前の日付で作成した年次報告書が受理済みであっても、再作成・再提出が必要です(税務署に提出済みなら再提出分の写しも提出)。継続届出書自体や認定申請書の再提出は不要です。

年次報告書で報告する8項目

#報告項目
1代表者の氏名
2常時使用する従業員の数
3株主・社員の氏名と議決権の数
4上場会社等・風俗営業会社に該当しないこと
5資産保有型会社に該当しないこと
6資産運用型会社に該当しないこと
7総収入金額
8特定特別子会社が風俗営業会社に該当しないこと

※ 取消事由に該当しないことが確認されると、都道府県知事から確認書(様式第16)が交付されます。これを継続届出書に添付して税務署へ提出します。

その他の報告書

書類提出が必要な場面と期限
随時報告書
(様式第12)
事業継続期間中に取消事由に該当したとき。該当した日の翌日から1か月以内(後継者の死亡、およびやむを得ない事情で代表を退任し3代目へ贈与した場合は4か月以内)。事業継続期間経過後は提出不要です。
臨時報告書
(様式第15)
事業継続期間中に贈与者の相続が開始したとき。相続開始の日の翌日から8か月以内。切替確認を受ける場合、および事業継続期間経過後は不要です。
合併報告書(様式第13)
株式交換等報告書(様式第14)
効力発生日等の後、遅滞なく提出します(「◯か月以内」という定めはありません)。
雇用に関する報告
(様式第27)
5年間の従業員数の平均が8割を下回った場合。特例経営(贈与)承継期間の末日の翌日から4か月以内
実務でつまずく点 ― 提出漏れの救済と、その限界
  • 継続届出書・年次報告書の提出漏れには宥恕規定があります。税務署長が期限内に提出がなかったことについてやむを得ない事情があると認める場合において、提出できなかった事情の詳細等を記載した継続届出書が提出されたときは、期限内提出とみなされます。免除の「届出書」にも同様の宥恕があります。
  • しかし、免除の「申請書」には宥恕規定がありません。破産等免除・差額免除・追加免除・再計算免除は、いずれも該当日から2か月という期限を過ぎたら受けられません。この差は決定的です。
  • 猶予期限が税務署長の職権で繰り上げられることもあります。①増担保命令に応じない場合 ②継続届出書の記載事項と相違する事実が判明した場合 ③後継者・会社の行為または計算により相続税・贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合。
  • 随時報告書は事業継続期間中のみ必要です。取消事由に該当した日の翌日から1か月以内(後継者の死亡等は4か月以内)。5年経過後は随時報告は不要です。
  • 合併報告書・株式交換等報告書は「遅滞なく」提出します。「◯か月以内」という定めがないため、かえって放置されがちです。

22雇用8割要件はどう変わったか

ひとことで言うと特例措置では、8割を下回っても報告さえすれば猶予は続きます。ただし報告を怠れば全額打切り。要件が消えたのではなく、報告義務に置き換わったと理解してください。

一般措置では、承継後5年間の従業員数の平均が贈与・相続時の8割を下回ると納税猶予が打ち切られます。これが制度の使いにくさの最大の原因でした。従業員10人の会社なら、5年平均で8人を切った瞬間に数千万円の税金が発生する。景気変動や人手不足でいくらでも起こりうる事態です。

特例措置ではこれが抜本的に見直されました。8割を下回っても、その理由を都道府県に報告すれば納税猶予は継続します。

1
5年間の従業員数の平均が8割を下回った

判定は5年間の平均です。単年で下回っても、平均で8割を維持していれば報告は不要です。

2
様式第27で理由を都道府県に報告する

期限は特例経営(贈与)承継期間の末日の翌日から4か月以内。認定経営革新等支援機関が、雇用が減少した理由について所見を記載します。

3
理由が経営悪化等の場合は、指導・助言を受ける

従業員数の減少理由が経営悪化あるいは正当ではない理由によるものである場合、認定支援機関から経営改善のための指導および助言を受け、その旨を記載する必要があります。

4
納税猶予は継続する

報告と所見の記載が適正になされていれば、認定は取り消されません。

「報告しなかった」場合は全額打切り

雇用が8割を下回ったこと自体は取消事由ではありませんが、「雇用8割維持要件を満たせず、かつ実績報告を行わなかったとき」は取消事由です。猶予されていた税額の全額と利子税を納付することになります。要件が緩和されたのは事実ですが、手続きの負担がゼロになったわけではありません。

23取消事由の全体像

ひとことで言うと取消事由は贈与で全25、相続で23あります。5年以内なら全額納付、5年経過後は事由によって一部納付で済むものと全額納付のままのものに分かれます。

中小企業庁の申請マニュアル第4章では、猶予税額の扱いが次の3つに区分されています。この記号で全体を整理します。

記号意味
A猶予されていた税額の全額および利子税を納付
B猶予されていた税額の一部および利子税を納付
C猶予されていた税額が免除される
事由5年以内
(事業継続期間内)
5年経過後
後継者が代表者を退任(やむを得ない理由を除く)A
同族関係者と合わせた議決権が過半数を割ったA
同族内で筆頭でなくなったA
後継者の代表権・議決権を制限したA
後継者以外の者が黄金株を保有したA
先代経営者が再び代表者になった(贈与のみ)A
上場会社・性風俗関連特殊営業に該当したA
特定特別子会社が風俗営業会社に該当したA
雇用8割を満たせず、かつ実績報告をしなかったA
納税猶予対象株式を譲渡したAB
会社分割(一定の配当があった場合に限る)AB
組織変更(株式等以外の財産の交付があった場合に限る)AB
合併により消滅したAB
株式交換・株式移転により完全子会社となったAB
解散したAA
資産保有型会社・資産運用型会社に該当したAA
総収入金額がゼロになったAA
資本金・準備金を減少させた(欠損填補目的等を除く)AA
年次報告書・継続届出書の未提出・虚偽報告AA
自ら猶予の取消しを申請したAA
後継者が死亡したCC
贈与者が死亡した(贈与税の場合)CC
次の後継者への免除対象贈与CC

※ 5年以内の免除対象贈与は、やむを得ない理由により贈与した場合に限られます。
出典:中小企業庁 申請マニュアル第4章「認定の取消について」

「1株でも売ったら取消し」

納税猶予の対象となっている株式は、1株でも譲渡すると事業継続期間中は認定が取り消されます。5年経過後は譲渡した株数に対応する部分だけの納付(B)で済みますが、それでも相応の負担です。なお譲渡の順序は、まず税制の適用を受けていない株式から譲渡したものとみなす取扱いです。

「やむを得ない理由」による代表退任は取消しにならない

後継者が代表者を退任しても、次のいずれかに該当する場合は取消事由になりません。
・精神障害者保健福祉手帳(障害等級1級)の交付を受けた
・身体障害者手帳(障害の程度1級または2級)の交付を受けた
・介護保険法の要介護認定(要介護5)を受けた
・これらに類すると認められること

減資でも取り消されない場合がある

資本金・準備金の減少のうち、減少額の全額を準備金(資本金)とする場合および欠損の填補を目的とする場合は取消事由になりません。会社法第309条第2項第9号イ・ロ、第449条第1項ただし書に該当するものです。

実務でつまずく点 ― 取消事由をめぐる誤解
  • 代表権に「制限が加えられた」だけでも取消しになります。条文上「代表権」から「制限が加えられた代表権」が除かれているため、代表権を失った場合だけでなく、共同代表にした・手形の振出を制限したといった場合も該当します。
  • 「全部取消・一部取消」という用語は中小企業庁のマニュアルにありません。認定の取消しは常に認定そのものの取消しであり、「全部・一部」は納付する猶予税額の区分です(A=全額、B=一部、C=免除)。
  • 中小企業者に該当しなくなっただけでは取消事由になりません。会社が成長して資本金・従業員数が範囲を超えても、それ自体では取り消されません。
  • 上場申請は、会社自身なら期間内は取消事由、特定特別子会社なら取消事由になりません。また5年経過後は会社自身の上場申請も取消事由になりません。
  • 減資でも取り消されない場合があります。減少額の全額を準備金(資本金)とする場合、および欠損填補を目的とする場合は除かれます。
  • 株式譲渡の順序にルールがあります。まず制度の適用を受けていない株式から譲渡したものとみなされます(ただし免除対象贈与の場合は逆に、猶予対象株式から先に贈与したものとみなされます)。
  • 複数の人から承継した場合でも、5年間の起算点は「最初」の申告期限で統一されます。1年目に父から、4年目に叔父から贈与を受けた場合、叔父分の事業継続期間は実質2年間です。

24取消事由セルフチェック

ひとことで言うとこれから起こりそうなことにチェックを入れると、それが取消事由に当たるか、当たるとしたら全額か一部かが分かります。適用を検討している段階でも、すでに適用中でも使えます。
取消事由セルフチェック今後5年以内、または5年経過後に起こりうることをチェックしてください。

    25取り消されたときにいくら払うのか

    ひとことで言うと猶予されていた税額に加えて利子税がつきます。令和8年の利率は年0.6%。ただし5年以内に打ち切られると、その5年分にも利子税がかかります

    利子税の計算

    項目内容
    本則の割合3.6%
    軽減後の割合各年の利子税特例基準割合が7.3%に満たない場合
    3.6% × 利子税特例基準割合 ÷ 7.3%(0.1%未満切捨て、下限は年0.1%)
    令和8年の割合利子税特例基準割合が年1.3%のため
    3.6% × 1.3% ÷ 7.3% = 0.641…% → 年0.6%
    参考:令和7年利子税特例基準割合0.9% → 年0.4%
    計算期間申告書の提出期限の翌日から、猶予期限として定める日まで
    納付期限原則として確定事由に該当した日から2か月を経過する日

    出典:国税庁「延滞税の割合」財務省「延滞税・利子税・還付加算金について」

    5年経過後の免除の特例

    租税特別措置法には、経営(贈与)承継期間を経過した後に猶予税額を納付する場合、その5年間に対応する利子税の割合を年0%とする読替規定があります。

    いつ確定したか利子税がかかる期間
    5年以内に確定した場合申告期限の翌日から納付期限まで全期間(最初の5年分も含む)
    5年経過後に確定した場合最初の5年間は年0%。5年経過後の期間のみ利子税がかかる

    負担額のイメージ(猶予税額1億円の場合)

    • 3年目に取り消された:1億円+利子税(3年分・年0.6%で約180万円)= 約1億180万円
    • 7年目に取り消された:1億円+利子税(最初の5年は0%、残り2年分で約120万円)= 約1億120万円

    ※ 利率は各年の特例基準割合で変動するため、上記は現行利率で単純計算した概算です。

    利子税より怖いのは「本税を現金で用意できるか」

    利子税の負担は現在の低金利下では限定的です。本当の問題は、猶予されていた本税を一括で、しかも2か月以内に納めなければならない点にあります。株を売って納税しようにも、その譲渡自体が取消事由です。取消事由に触れないよう5年間・そしてその後も運営を続けること自体が、この制度の実質的なコストです。

    実務でつまずく点 ― 納付期限は「2か月」
    • 納付期限は原則として「確定事由に該当した日から2か月を経過する日」です。「相続税の申告期限から2か月」ではありません。継続届出書の不提出の場合は「その提出期限の翌日から2か月を経過する日」です。
    • 期限到来前2か月以内に後継者が死亡した場合は、相続人が相続開始を知った日の翌日から6か月を経過する日まで延びます。
    • 5年経過後の利子税0%の読替えは、すべての事由に及ぶわけではありません。5年以内の確定事由による全額確定には適用がなく、その5年分にも利子税がかかります。継続届出書の不提出・期限の繰上げについても、5年経過後に該当した場合に限り0%の対象です。
    • 本当の問題は利子税ではなく、本税を2か月で現金調達できるかです。株を売って納税しようにも、その譲渡自体が取消事由。金融機関からの借入も、猶予税額が数千万円〜数億円になると簡単ではありません。制度を使う以上、「打ち切られたときにどう払うか」を最初に考えておく必要があります。

    26猶予税額が免除される場合

    ひとことで言うと免除には届出だけでよいもの申請して認めてもらうものの2種類があります。いずれも期限が短いので、事由が生じたらすぐ動く必要があります。

    届出による免除

    事由免除される額届出期限
    贈与者の死亡の時以前に
    後継者が死亡した
    猶予中贈与税額の全額死亡の日から6か月を経過する日
    贈与者(先代経営者)が死亡したその贈与者が贈与した株式に対応する部分死亡の日から10か月を経過する日
    次の後継者への免除対象贈与その贈与に係る部分贈与税申告書を提出した日以後6か月を経過する日

    ※ 免除対象贈与は原則として経営贈与承継期間(5年)の末日の翌日以後に行うものですが、期間内でもやむを得ない理由で代表権を有しないこととなった日以後であれば可能です。
    ※ 期限を過ぎた場合でも、やむを得ない事情があると税務署長が認めたときの宥恕規定があります。

    申請による免除(破産等免除)― 一般措置にもあります

    次の事由は5年経過後に限られ、申請期限は該当日から2か月を経過する日です(その間に後継者が死亡した場合は、相続人が相続開始を知った日の翌日から6か月)。

    事由免除の内容
    株式等の全部の譲渡等
    (同族関係者以外の1人に対して行う場合等に限る)
    「譲渡等の時の時価相当額(対価がそれより大きければ対価の額)」+「譲渡等の日以前5年以内に後継者・生計一の者が会社から受けた配当等および損金不算入の給与」の合計が猶予中税額に満たないとき、その差額を免除
    会社の破産手続開始の決定または特別清算開始の命令解散直前の猶予中税額から、解散前5年以内の配当等・過大給与を控除した額を免除(実質的に全部免除)
    合併により消滅
    (存続会社等が同族関係者以外で、かつ合併に際して株式等の交付がない場合に限る)
    同様に差額を免除
    株式交換等で完全子会社等となった
    (相手が同族関係者以外で、かつ株式等の交付がない場合に限る)
    同様に差額を免除
    民事再生・会社更生による再計算免除

    経営(贈与)承継期間の末日の翌日以後に、再生計画・更生計画の認可決定等があり資産の評定が行われた場合には、猶予税額を再計算して差額を免除し、納税猶予を継続することができます。申請期限は認可決定日から2か月以内です。

    実務でつまずく点 ― 免除の申請には宥恕がない
    • 破産等免除・差額免除・追加免除・再計算免除の各申請書には宥恕規定がありません。該当日から2か月(再計算免除は認可決定日から2か月、追加免除は2年経過日から2か月)を過ぎたら、免除は受けられません。
    • 破産等免除の「全部の譲渡等」は、猶予対象株式だけでなく保有する当該会社の全株式(議決権制限株式を含む)が対象です。一部でも残すと要件を満たしません。しかも譲渡先は同族関係者以外の1人の者である必要があります。
    • 贈与者が複数いる場合、免除は贈与者ごとに計算されます。甲から4,000万円・乙から1,000万円の贈与を受け(贈与税2,049.5万円)、甲が死亡した場合は2,049.5×4,000/5,000=1,639.6万円が免除されます。乙が死亡するまで残りは猶予のままです。
    • すでに次の後継者へ免除対象贈与をした部分は、今回の贈与者の死亡では免除されません。その部分は「前の贈与者」が死亡したときに免除されます。
    • 破産等免除と差額免除の両方の要件を満たす場合、どちらを適用するかは納税者の選択です。適用順序の規定はありません。

    27経営環境が悪化したときの減免

    ひとことで言うと会社の業績が悪くなり、承継時より株価が下がった状態で会社を手放すことになった場合、そのときの価額で税額を計算し直し、差額を免除してくれる仕組みです。特例措置にしかありません。

    これが特例措置と一般措置の最も大きな差です。承継時の高い株価で計算された税額をそのまま背負い続けるのではなく、実際に会社を手放すときの価額に引き直してくれます。「将来の不安を軽減する」という制度趣旨がここに表れています。

    「事業の継続が困難な一定の事由」とは

    #事由
    1経常赤字:直前事業年度およびその直前の3事業年度(計4事業年度)のうち2以上の事業年度で、収益の額が費用の額を下回ること。ただし直前事業年度終了の日の翌日以後6か月を経過する日後に該当した場合は、計3事業年度で判定
    2売上減少:同じ判定期間のうち2以上の事業年度で、各事業年度の平均総収入金額(総収入金額を月数で除した額)が、その前事業年度の平均総収入金額を下回ること
    3有利子負債の過大:直前事業年度終了の日における負債(利子の支払の基因となるものに限り、特別関係者に対するものを除く)の帳簿価額が、その事業年度の平均総収入金額に6を乗じた金額以上であること(前事業年度についても同様であること。6か月経過日後の場合は直前期のみ)
    4業種平均株価の下落:判定期間の業種平均株価が前判定期間を下回り、かつ前判定期間が前々判定期間を下回ること
    5後継者の心身の故障等:後継者による事業の継続が困難となった事由(解散の場合はこの号を使えません)

    ※ 一般に「過去3年間のうち2年以上」と説明されることがありますが、条文上は原則として計4事業年度のうち2以上です(6か月経過日後は計3事業年度)。

    再計算のしくみ

    出口再計算のベース(イ)
    株式等の全部または一部の譲渡等
    (同族関係者以外への譲渡に限る)
    譲渡等の対価の額。ただしその額が譲渡等時の時価相当額(相続税評価額)の2分の1以下である場合は、その2分の1に相当する金額を贈与時(相続時)の価額とみなして再計算
    合併により消滅
    (存続会社等が同族関係者以外の場合)
    合併対価の額(時価の2分の1以下なら2分の1)
    株式交換等で完全子会社等となった
    (相手が同族関係者以外の場合)
    交換等対価の額(時価の2分の1以下なら2分の1)
    解散解散の直前における時価相当額(2分の1の下限は適用されません)

    これに、譲渡等の日(効力発生日・解散の日)以前5年以内に後継者および特別の関係がある者が会社から受けた剰余金の配当等+損金不算入の給与(ロ)を加え、「イ+ロ」が猶予中税額に満たない場合に、その差額が免除されます。

    2年後の追加免除 ― 買い手が事業を続けていれば、さらに減る

    対価が時価の2分の1以下だったために2分の1ベースで再計算した場合、その再計算額は引き続き猶予されます。そして該当日から2年を経過する日において、譲渡先の会社等が次のすべてを満たして事業を継続している場合には、実際の対価の額ベースで再計算した税額を納付し、残額が追加で免除されます。

    • 財務省令で定める業務を行っていること
    • 該当時直前の常時使用従業員の総数の2分の1以上の者が、2年経過日まで引き続き常時使用従業員であること
    • その従業員が勤務する事務所・店舗・工場等を所有または賃借していること

    事業を継続していない場合は、猶予中とされた金額の全額が確定します。なお解散はこの追加免除の対象外です。

    手続期限
    差額免除申請書譲渡等の事由が生じた日から2か月以内
    追加免除申請書2年を経過する日から2か月以内

    ※ 再計算後の納付すべき税額は、いずれも申請期限までに納付が必要です。申請書提出の日の翌日から6か月以内に免除・却下が通知されます。

    実務でつまずく点 ― 減免を使うための実務
    • 5年以内の譲渡には減免がありません。差額免除・破産等免除はいずれも5年経過後の措置です。M&Aの打診があったら、まず自分が事業継続期間内か経過後かを確認してください。
    • 業績が好調なまま高値で売る場合、減免は使えません。減免には赤字・売上減・有利子負債過大・業種平均株価の下落・後継者の心身の故障のいずれかが必要です。
    • 心身の故障の事由は、該当時に会社の役員または業務執行社員であった者に限られます。5年経過後に役員を退任してから入院しても対象外です。
    • 業種平均株価の判定に使う「業種」は、譲渡等の時における会社の事業が該当する業種です。過去に別業種だったとしても遡って変えません。
    • 差額免除で「どの株式を譲渡したか」は、後継者が選択できます。通常は猶予対象外の株式から先に譲渡したものとみなされますが、差額免除の適用を受ける場合はこの規定を準用しません。
    • 2年後の追加免除の要件は「者」としての雇用継続です。譲渡直前の従業員のうち2年経過日まで在籍している者が半数以上(1人未満切捨て、直前が1人なら1人)。直前20人で2年後に25人いても、継続者が8人なら要件を満たしません。
    • 解散の場合は、時価の2分の1という下限が適用されず、また2年後の追加免除の対象にもなりません。

    28贈与者が亡くなったとき(切替確認)

    ひとことで言うと贈与で猶予を受けていた後に先代が亡くなると、贈与税は免除されますが、代わりにその株式を贈与時の価額で相続したとみなして相続税がかかります。ここで切替確認を受ければ、今度は相続税の納税猶予に乗り換えられます。
    1
    贈与税が免除される

    贈与者の死亡により、猶予されていた贈与税のうちその贈与者が贈与した株式に対応する部分が免除されます。届出期限は死亡の日から10か月を経過する日です。

    2
    贈与時の価額で相続財産に加算される

    猶予対象だった株式は、贈与の時の価額で相続または遺贈により取得したものとみなして相続税の課税価格に算入されます。株価が上がっていても、贈与時の低い価額で固定されるのが大きな利点です。

    3
    相続開始後8か月以内都道府県知事の「切替確認」を受ける

    切替確認申請書(様式第17)を提出します。これを受けることで、相続税の納税猶予へ移行できます。

    4
    相続税の納税猶予が始まる

    以後は相続税の納税猶予として、継続届出書の提出などの義務が続きます。

    切替確認を受けなければ、それ自体が取消事由

    贈与者の死亡時に切替確認を受けなかった場合、認定の取消事由に該当します。相続開始後8か月以内という期限は相続税の申告期限(10か月)より短いので、先代の相続が起きたら真っ先に確認すべき手続きです。

    「贈与時の価額で固定される」ことの意味

    会社が順調に成長して株価が上がっていくケースを考えてください。株価が低いうちに贈与して納税猶予を受けておけば、その後どれだけ株価が上がっても、相続時に加算されるのは贈与時の低い株価です。これは事業承継税制を「早く始める」ことの、税負担面での最大のメリットです。逆に、業績が下がって株価が下落した場合には不利に働きます。

    実務でつまずく点 ― 切替確認の落とし穴
    • 期限は相続開始の日の翌日から8か月以内。相続税の申告期限(10か月)より短いので、先代の相続が起きたら真っ先に着手してください。
    • 申請は「贈与者に係る認定ごと・後継者ごと」に必要です。先代が長男・次男の2人に贈与していれば2通です。
    • 特例承継計画の再提出は不要です。
    • 贈与者死亡後の相続税の納税猶予(措置法70条の7の8)には適用期限がありません。「令和9年12月31日まで」という規定がないため、2030年でも2040年でも特例措置が適用されます。早めに贈与しておくことの、もう一つの大きな意味がここにあります。
    • 上場していても切替確認を受けられる場合があります。「上場会社等に該当しないこと」が必要なのは認定の有効期間中だけです。有効期間後に贈与者の相続が発生した場合は、上場していても切替確認を受けられます(会社の成長を阻害しないため)。
    • 事業継続期間中に贈与者の相続が開始し、切替確認を受けない場合は、相続開始後8か月以内に臨時報告(様式15)が必要です。切替確認を受ける場合、および事業継続期間経過後は不要です。
    • 切替確認をしないと、それ自体が認定の取消事由になります。

    29個人版事業承継税制の全体像

    ひとことで言うと個人事業主が使える制度です。事業用の土地400㎡・建物800㎡・機械などの100%が納税猶予されます。計画は令和10年9月30日まで、贈与・相続は令和10年12月31日まで。

    令和元年度税制改正で、10年間限定の措置として創設されました。法人版が「株式」を対象にするのに対し、個人版は「特定事業用資産」という現物の事業資産を対象にします。

    項目内容
    個人事業承継計画の提出平成31年4月1日〜令和10年9月30日(都道府県へ)
    贈与・相続の適用期限平成31年1月1日〜令和10年12月31日
    対象特定事業用資産(宅地等400㎡・建物800㎡・その他の減価償却資産)
    猶予割合贈与・相続とも100%
    承継者原則として1人(一定の場合、生計を一にする親族等からの取得も可)
    雇用確保要件なし
    都道府県への年次報告原則不要
    税務署への継続届出3年に1回
    認定の有効期限最初の認定の翌日から2年間(法人版は申告期限の翌日から5年間)

    出典:中小企業庁「個人版事業承継税制の前提となる経営承継円滑化法の手続マニュアル(令和8年6月改訂版・PDF)」国税庁「個人版事業承継税制」

    対象外の業種があります

    不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業は個人版事業承継税制の対象外です。アパート経営や月極駐車場は使えません。ただし、下宿のように部屋を使用させるとともに食事を供する事業は不動産貸付業に該当せず、対象になり得ます。

    実務でつまずく点 ― 個人版の特徴を法人版と混同しない
    • 認定の有効期限が「最初の認定の翌日から2年間」。法人版の「申告期限の翌日から5年間」とは起点も長さも違います。
    • 都道府県への年次報告は原則不要。税務署への継続届出書を3年に1回出すだけです。維持コストは法人版よりはるかに軽くなります。
    • 雇用確保要件がありません。従業員数の増減を気にする必要はありません。
    • ただし事業の継続は「終身」が前提です。この点は法人版と同じで、後継者が事業をやめれば猶予は打ち切られます。
    • 不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業は対象外です。これらの事業が主である個人事業主は使えません。ただし下宿のように部屋を使用させるとともに食事を供する事業は不動産貸付業に該当せず、対象になり得ます。
    • 第二種(生計一親族等からの取得)は、先代事業者からの最初の贈与・相続等の日から1年を経過する日までに限られます。法人版の第二種(5年)より短いので注意してください。

    30特定事業用資産の範囲

    ひとことで言うと前年分の青色申告の貸借対照表に載っている事業用資産が対象です。売掛金・預貯金・棚卸資産は対象外。ここが法人版(株式まるごと)との決定的な違いです。
    #資産上限
    宅地等(土地または土地の上に存する権利で、建物・構築物の敷地の用に供されているもの。棚卸資産に該当するものを除く)400㎡まで
    建物(棚卸資産に該当するものを除く)床面積800㎡まで
    ②以外の減価償却資産:固定資産税が課税される償却資産(構築物・機械装置・器具備品・船舶等)、自動車税・軽自動車税で営業用の標準税率が適用される自動車等、貨物運送用の一定の自動車、取得価額500万円以下の乗用自動車、生物(乳牛・果樹等)、特許権等の無形減価償却資産上限なし

    対象になるもの

    • 店舗・工場・事務所の土地と建物
    • 機械装置、器具備品、構築物
    • 営業用の車両(一定のもの)
    • 乳牛・果樹などの生物
    • 特許権などの無形固定資産
    • 使用人の寄宿舎等の建物・敷地(先代の親族のみが使用していたものを除く)
    • 先代と生計を一にする親族が所有し、先代が事業の用に供していた資産

    対象にならないもの

    • 自宅の宅地・自宅の建物
    • 預貯金、事業用の預貯金
    • 売掛金、有価証券、金品
    • 棚卸資産(商品・製品・原材料)
    • 不動産貸付用の宅地・建物
    • 前年分の青色申告の貸借対照表に計上されていない資産
    「貸借対照表に載っていること」が絶対条件

    対象となるのは、贈与または相続開始の年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されているものに限られます。減価償却が終わって帳簿価額1円になっていても、計上されていれば対象です。逆に、簿外資産や個人名義のまま事業に使っている資産は対象外です。承継の前年までに、資産の名義と帳簿を整理しておく必要があります

    ※ 事業以外の用に供されていた部分があるときは、事業供用部分に限られます。後継者が複数人の場合、①②の面積は各後継者が取得した面積の合計で判定します。なお、経営承継円滑化法の認定上は面積制限がありません(400㎡・800㎡は税制側の制限です)。

    実務でつまずく点 ― 帳簿と名義を先に整える
    • 前年分の青色申告の貸借対照表に計上されていることが絶対条件です。減価償却が終わって帳簿価額1円でも計上されていれば対象ですが、簿外資産や個人名義のまま事業に使っている資産は対象外です。承継の前年までに整理してください。
    • 青色申告は「正規の簿記の原則」によるもの(55万円または65万円控除)である必要があります。10万円控除の簡易帳簿では要件を満たしません。しかも贈与の年・前年・前々年の3年分が必要です。今から準備しても3年かかります。
    • 生計を一にする親族が所有し、先代事業者が事業の用に供していた資産も対象になります。配偶者名義の土地の上に先代が建物を建てて事業を行っている、といったケースです。ただし第二種として1年以内という期限があります。
    • 面積制限(宅地400㎡・建物800㎡)は税制側の制限で、円滑化法の認定上は面積制限がありません。認定は取れても税制で切れる、という状態が起こり得ます。
    • 後継者が複数の場合、面積は各後継者が取得した面積の合計で判定します。分けても枠は増えません。
    • 使用人の寄宿舎等の建物・敷地は対象になります(先代事業者の親族のみが使用していたものを除く)。

    31個人版の要件と手続き

    ひとことで言うと先代は3年分の青色申告と(贈与なら)廃業届。後継者は直前に事業に従事していて、開業届と青色申告の承認を取り、資産を全部引き継ぐこと。

    先代事業者(贈与者・被相続人)の要件

    要件内容
    青色申告贈与(相続)の日の属する年、その前年およびその前々年の確定申告書を、正規の簿記の原則(複式簿記)による青色申告書で提出していること(55万円または65万円の青色申告特別控除の適用に係るもの)
    廃業届
    (贈与の場合のみ)
    認定申請時までに事業を廃止した旨の届出書を所轄税務署長へ提出していること。相続の場合は不要
    前年の状況贈与(相続)の日の属する年の前年において、①資産保有型事業に該当しない ②資産運用型事業に該当しない ③総収入金額がゼロを超える ④性風俗関連特殊営業に該当しない
    重複適用の禁止すでに個人版事業承継税制の適用に係る贈与をしていないこと(ただし同一年中に限り、事業ごとに複数の後継者へ贈与可能

    後継者(受贈者・相続人等)の要件

    要件内容
    認定個人事業承継計画の確認を受け、都道府県知事の認定を受けていること
    年齢贈与の日において18歳以上(相続には年齢要件なし)
    事業従事贈与(相続開始)の直前において、その事業(同種・類似の事業を含む)に従事していたこと。法人版のような3年要件はありません。相続の場合、先代事業者が60歳未満で死亡したときはこの要件は不要
    開業届認定申請時までに開業届出書を提出(通常は贈与の日から1か月以内)
    青色申告の承認承認を受けている、または受ける見込みであること
    ・贈与:原則、業務開始日(贈与日)から2か月以内に申請。すでに他の業務を行っている場合は贈与年の3月15日まで
    ・相続:死亡の日が1月1日〜8月31日なら相続開始の日から4か月以内、9月1日〜10月31日ならその年12月31日、11月1日〜12月31日なら翌年2月15日
    資産の全部取得先代事業者が営んでいたその事業に係る特定事業用資産の全部を取得すること(共有の場合は共有持分の全部)。帳簿書類の備付けも必要で、認定支援機関の確認書が必要
    資産管理事業でないこと資産保有型事業(特定資産の保有割合が総資産の70%以上)・資産運用型事業(特定資産からの運用収入が総収入金額の75%以上)および性風俗関連特殊営業に該当しないこと
    小規模宅地との関係
    (相続の場合)
    先代事業者等から相続等により財産を取得した者が、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けていないこと
    納税見込み贈与税・相続税を納付することが見込まれること

    生計を一にする親族からの取得(第二種)

    先代事業者が事業の用に供し、かつ先代事業者の青色申告書に記載されていた生計一親族等が所有する特定事業用資産も対象にできます。ただし、先代事業者からの贈与・相続が先に行われている必要があり、しかも先代事業者からの最初の贈与・相続等の日から1年を経過する日までに行われたものに限られます。

    取消事由と免除事由

    全額+利子税を納付

    • 事業を廃止した(やむを得ない理由・破産等を除く)
    • 資産管理事業または性風俗関連特殊営業に該当した
    • その年の事業所得の総収入金額がゼロになった
    • 青色申告の承認が取り消された
    • (相続の場合)青色申告の承認申請が却下された
    • 継続届出書を提出しなかった

    免除される

    • 後継者が死亡した
    • 先代事業者(贈与者)が死亡した(相続税へ移行)
    • 特定申告期限の翌日から5年経過後の、次の後継者への免除対象贈与
    • やむを得ない理由(精神障害者保健福祉手帳1級、身体障害者手帳1級・2級、要介護5)
    • 破産手続開始の決定等
    • 事業の継続が困難な一定の事由が生じ、資産の全部を譲渡等または事業廃止したとき
    一部だけ納付で済む場合と、猶予が続く場合

    特例(受贈)事業用資産が事業の用に供されなくなった場合は一部納付となりますが、次のときは納税猶予が継続します。
    ①陳腐化等の事由による廃棄で税務署に書類を提出したとき
    ②譲渡日から1年以内にその対価で新たな事業用資産を取得する見込みにつき税務署長の承認を受けたとき(取得に充てられた対価相当部分に限る)
    特定申告期限の翌日から5年を経過する日後の会社設立に伴う現物出資により、すべての特例事業用資産を移転し、税務署長の承認を受けたとき(=法人成り)

    法人成りしても猶予は続けられます

    個人事業を法人化する場合でも、上記③により納税猶予を継続できます。「特定申告期限」とは、後継者の最初の贈与税の申告期限または最初の相続税の申告期限のいずれか早い日です。適用後の確定事由は、原則として法人版の経営承継期間経過後の確定事由と同様になります。ただし、適用後は「やむを得ない理由」による免除は使えなくなります

    実務でつまずく点 ― 個人版の手続きは期限が細かい
    • 贈与の場合、先代事業者は認定申請時までに廃業届出書を提出している必要があります。相続の場合は不要です。
    • 後継者の青色申告の承認申請は期限が細分化されています。贈与なら原則、業務開始日(贈与日)から2か月以内。ただしすでに他の業務を行っている場合は贈与年の3月15日まで。相続なら、死亡の日が1月1日〜8月31日なら相続開始の日から4か月以内、9月1日〜10月31日ならその年12月31日、11月1日〜12月31日なら翌年2月15日です。
    • 後継者の事業従事要件に「3年」はありません。贈与(相続開始)の直前において事業に従事していればよく、法人版の役員3年要件と混同しないでください。なお同種・類似の事業に従事していた期間には、大学等での就学期間や、会社勤務者が繁忙期・休祭日に従事していた期間を含めて差し支えないとされています。
    • その事業に係る特定事業用資産の「全部」を取得する必要があります。一部を他の相続人に分けると要件を満たしません。共有の場合は共有持分の全部です。
    • 認定支援機関に、その資産が特定事業用資産に該当すること等の確認を受ける必要があります。確認書のひな型が中小企業庁から公表されています。
    • 法人成りは「特定申告期限の翌日から5年を経過する日後」でなければできません。それより前に法人化すると猶予は打ち切られます。また法人成り後は「やむを得ない理由」による免除が使えなくなります。

    32小規模宅地等の特例との選択

    ひとことで言うと特定事業用宅地等(80%減額)とは併用できません。どちらか一方の選択です。ただし自宅の特定居住用宅地等とは併用できます
    適用を受ける小規模宅地等の区分個人版事業承継税制の適用
    特定事業用宅地等適用を受けることができません(完全な選択適用)
    特定同族会社事業用宅地等「400㎡−特定同族会社事業用宅地等の面積」が限度面積
    貸付事業用宅地等「400㎡−2×(A×200/330+B×200/400+C)」が限度面積
    A=特定居住用宅地等の面積、B=特定同族会社事業用宅地等の面積、C=貸付事業用宅地等の面積
    特定居住用宅地等適用制限はありません(400㎡をフルに使えます)

    出典:国税庁「個人版事業承継税制のあらまし」/タックスアンサー No.4153

    どちらを選ぶべきか

    比較項目個人版事業承継税制小規模宅地等の特例
    (特定事業用宅地等)
    事前の計画個人事業承継計画の提出が必要
    (〜令和10年9月30日)
    不要
    適用期限令和10年12月31日までの贈与・相続等なし
    承継パターン贈与・相続の両方相続等のみ
    対象資産宅地等400㎡+建物800㎡+一定の減価償却資産宅地等400㎡のみ
    効果100%の納税猶予課税価格の80%減額
    事業の継続終身申告期限まで
    手続きの負担計画提出、認定申請、3年ごとの継続届出申告書への記載のみ
    判断の分かれ目は「建物と機械の重さ」と「縛りを受け入れられるか」

    宅地しか事業用資産がない場合、小規模宅地等の特例(80%減額)を選ぶほうが手続きが圧倒的に軽く、申告期限まで事業を続ければ終わりです。一方、大きな工場・店舗の建物や高額な機械装置がある業種では、宅地しか対象にならない小規模宅地等の特例では足りず、個人版事業承継税制の効果が大きくなります。

    ただし個人版は終身の事業継続が前提です。「80%減額で十分か、100%猶予のために一生縛られるか」。この比較を必ず数字にしてから決めてください。

    実務でつまずく点 ― どちらが有利かは必ず数字で比べる
    • 宅地しか事業用資産がないなら、小規模宅地等の特例のほうが有利なことが多い。400㎡まで80%減額で、事業継続は申告期限まで。計画提出も継続届出も不要です。
    • 大きな建物や高額な機械装置がある業種では、個人版の効果が大きくなります。製造業・運送業・農業・整備業などです。宅地しか対象にならない小規模宅地等の特例では足りません。
    • 限度面積の調整計算に注意。特定同族会社事業用宅地等や貸付事業用宅地等について小規模宅地等の特例を使う場合、個人版の400㎡から一定の面積を差し引く調整が入ります。特定居住用宅地等(自宅)とは調整なしで併用できます
    • 比較は「今」だけでなく「終身」で行ってください。個人版は事業を続けることが前提です。後継者が5年後に廃業する可能性があるなら、小規模宅地等の特例のほうが安全です。

    33法人版と個人版の比較

    項目法人版(特例措置)個人版
    事前の計画特例承継計画
    平成30年4月1日〜令和9年9月30日
    個人事業承継計画
    平成31年4月1日〜令和10年9月30日
    適用期限平成30年1月1日〜令和9年12月31日平成31年1月1日〜令和10年12月31日
    対象資産非上場株式等(全株式)特定事業用資産
    (宅地400㎡・建物800㎡・減価償却資産)
    猶予割合100%100%
    承継パターン複数の株主から最大3人の後継者へ原則、先代1人から後継者1人
    (一定の場合、生計一親族等からも可)
    贈与の要件一定数以上の株式等
    (後継者1人の場合、原則3分の2以上)
    その事業に係る特定事業用資産のすべて
    雇用確保要件あり(特例措置は弾力化)なし
    経営環境変化に
    対応した減免
    ありあり(後継者が重度障害等の場合は免除)
    認定の有効期限最初の申告期限の翌日から5年間最初の認定の翌日から2年間
    都道府県への年次報告5年間必要原則不要
    税務署への継続届出5年間は毎年、以後3年に1回3年に1回
    後継者の役員・従事要件贈与の直前に役員(令和7年1月1日以後)贈与の直前に事業に従事

    出典:中小企業庁「個人版事業承継税制の前提となる経営承継円滑化法の手続マニュアル(令和8年6月改訂版)」比較表

    個人版のほうが手続きは軽い

    個人版は雇用確保要件がなく、都道府県への年次報告も原則不要、税務署への継続届出も3年に1回です。法人版に比べて維持コストが明確に軽い。一方で、対象が現物の事業用資産に限られるため、事業に必要な運転資金(預貯金・売掛金)や在庫は一切カバーされません。資産の重い業種(製造業・運送業・農業など)に向き、資産の軽い業種(サービス業・士業)では効果が限定的という傾向があります。

    34あえて「使わない」判断もある

    ひとことで言うとこの制度は会社を続けることと引き換えに税を猶予する仕組みです。将来M&Aで売る可能性が高い、後継者の適性がまだ見えない、株価がもともと低い。こうした場合は使わない判断が合理的なこともあります。

    使わないほうがよいことがある5つの場合

    #状況理由
    1そもそも株価が低い純資産が小さい、赤字が続いている会社では、株式にかかる相続税自体が大きくありません。基礎控除の範囲に収まるなら、制度の維持コスト(報告義務・取消リスク)だけが残ります。
    2将来M&Aで売却する可能性が高い同族関係者以外への譲渡には第27章の減免がありますが、5年以内の譲渡は全額打切りです。売却の意思が固まっているなら、素直に納税して身軽にしておくほうが選択肢は広く保てます。
    3後継者の適性がまだ見えない制度の適用後に後継者が代表を退くと、事業継続期間中は全額打切りです。「とりあえず息子に」で始めると、方向転換のコストが跳ね上がります。
    4資産保有型会社に該当しそう不動産賃貸の比率が高い、役員貸付金が大きい、内部留保が現預金として厚い。判定を毎年クリアし続ける自信がなければ、途中で全額打切りになるリスクを抱え続けることになります。
    5相続人間で争いがある後継者以外の相続人の遺留分を侵害すると、株式が分散して議決権要件を満たせなくなります。まずは遺留分の民法特例(第36章)や生命保険による代償金の準備が先です。
    「猶予」は「消滅」ではないことを、後継者本人が理解しているか

    実務でいちばん怖いのは、先代と税理士だけで話が進み、後継者本人が「自分は数千万円の潜在債務を抱えた」という自覚を持たないまま制度が始まってしまうことです。10年後に「会社を辞めたい」「株を売りたい」と後継者が言い出したとき、初めて縛りの重さに気づく。この制度は後継者本人の同意と理解が出発点でなければなりません。

    それでも使うべき典型的なケース

    制度が効く会社

    • 株価が高く、後継者に納税資金がない
    • 後継者が決まっており、本人に継ぐ意思がある
    • 事業実態がしっかりあり、従業員も5人以上いる
    • 3代目以降まで続ける前提が共有されている
    • 会社に自社株を買い取る余力がない

    他の手を先に考えるべき会社

    • 株価が低く、相続税がもともと小さい
    • M&Aの可能性を残したい
    • 資産保有型会社の判定が際どい
    • 後継者が未定、または複数候補で割れている
    • 会社に十分な現預金があり、金庫株で対応できる

    35事業承継税制以外の選択肢

    ひとことで言うと納税猶予は手段の一つです。株価を下げる、買い取る、分ける、売る。それぞれに向き不向きがあり、多くの場合は組み合わせで解決します。
    手法内容向いている場面/注意点
    株価対策
    (類似業種比準価額の引下げ)
    役員退職金の支給、不良債権・不良資産の処理、含み損のある資産の売却などにより、利益・配当・純資産の比準要素を下げてから贈与する効果が大きく、実行しやすい。先代の退職金支給は、代表退任が要件である事業承継税制と自然に組み合わせられます。ただし過大役員退職給与とされない範囲に収める必要があります
    持株会社化後継者が設立した会社が、金融機関からの借入で先代から株式を買い取る先代に現金が入り、後継者は借入を会社の利益で返済していく。ただし持株会社は設立3年未満だと事業実態要件を満たせないため、事業承継税制との併用には設計上の注意が必要です
    金庫株
    (自己株式の取得)
    会社が先代(または相続人)から自社株を買い取る納税資金の確保に有効。相続により取得した株式を相続税の申告期限の翌日から3年以内に発行会社へ譲渡した場合、みなし配当課税の特例により譲渡所得課税となります。会社に買取資金と分配可能額が必要です
    種類株式の活用議決権制限株式を後継者以外に、普通株式を後継者に配分する財産価値は分けつつ経営権は集中できる。ただし黄金株(拒否権付株式)を後継者以外が持つと事業承継税制の認定を受けられません
    生命保険先代を被保険者とする保険で、納税資金や他の相続人への代償金を準備する相続税の非課税枠(500万円×法定相続人数)も使える。事業承継税制を使わない場合の王道。ただし会社契約の保険積立金は特定資産となる点に注意
    M&A(第三者承継)後継者がいない場合に、外部へ事業を譲渡する従業員の雇用と取引先を守る選択肢。事業承継・M&A補助金の対象になります(第36章)
    従業員承継(MBO)役員・従業員へ承継する特例措置なら親族外でも適用可能で、相続時精算課税も使えます。ただし後継者の買取資金の確保が課題
    実務では「株価を下げてから、事業承継税制で残りを猶予する」が定石

    先代への役員退職金の支給は、株価を下げる効果と、代表退任という制度要件の充足を同時に達成します。退職金支給によって純資産と利益が下がった直後の決算をもとに株価を算定し、その低い株価で贈与して納税猶予を受ける。この順序が、実務でもっとも使われる組み立てです。

    実務でつまずく点 ― 他の手法との組み合わせで注意すること
    • 持株会社化と事業承継税制は、相性がよいとは限りません。設立3年未満の持株会社は事業実態要件を満たせず、資産保有型会社に該当したときの逃げ道がありません(第43章)。
    • 金庫株(自己株式の取得)は納税資金の確保に有効ですが、猶予対象株式を売却すれば取消事由です。使うなら、猶予の対象にしていない株式で行うか、そもそも制度を使わない設計にするかの判断が要ります。なお相続により取得した株式を相続税の申告期限の翌日から3年以内に発行会社へ譲渡した場合、みなし配当課税の特例により譲渡所得課税となります。
    • 種類株式の活用は黄金株に注意。拒否権付株式を後継者以外が持つと認定を受けられません。特例承継計画に名前があるだけで、まだ株式を受けていない者が持っている場合も同様です。
    • 従業員持株会は「同族関係者」の判定に影響します。代表者の使用人は同族関係者に含まれるため、想定と違う判定になることがあります(第44章)。
    • 役員退職金は、事業承継税制の「代表退任」要件と自然に組み合わせられます。ただし株価への反映時期にずれがあるため、決算期と決議時期からの逆算が必要です(第42章)。

    36周辺制度と補助金

    ひとことで言うと事業承継は税制だけでは完結しません。遺留分の民法特例で株式の行き先を守り、暦年贈与・精算課税で財産を移し、補助金で費用を軽くする。この3つを押さえてください。

    遺留分に関する民法特例(経営承継円滑化法)

    後継者に株式を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害することがあります。この特例は、その侵害リスクをあらかじめ封じるための制度です。

    合意の種類効果
    除外合意後継者が先代から贈与等により取得した自社株式・事業用資産を、遺留分算定の基礎財産から除外する
    固定合意贈与等の時点の価額で固定し、後継者の貢献による価値上昇分を遺留分侵害額請求の対象外とする(会社の経営承継の場合のみ。個人版は除外合意のみ)
    1
    推定相続人全員の書面による合意

    1人でも反対すると成立しません。だからこそ、関係が良好なうちに進める必要があります。

    2
    経済産業大臣の確認

    合意の日から1か月以内に申請します。

    3
    家庭裁判所の許可

    確認を受けた日から1か月以内に申立てをします。この許可により合意の効力が生じます。

    贈与に関する制度の現在地

    制度令和8年7月時点の内容
    相続時精算課税贈与者は贈与年1月1日に60歳以上、受贈者は18歳以上の推定相続人・孫。年110万円の基礎控除(令和6年1月1日以後の贈与)+累計2,500万円の特別控除、超過部分は一律20%。基礎控除110万円以下の部分は相続財産に加算されません
    暦年課税の
    生前贈与加算
    相続開始日が令和8年12月31日まで=相続開始前3年以内
    相続開始日が令和9年1月1日〜令和12年12月31日=令和6年1月1日から死亡の日まで
    相続開始日が令和13年1月1日以後=相続開始前7年以内
    ※令和9年1月2日以後の相続では、3年超の部分について総額100万円まで加算されません
    令和9年から生前贈与加算の実質的な延長が始まります

    令和8年中に相続が発生する場合はまだ3年加算ですが、令和9年1月1日以後は加算期間が段階的に伸びていきます。暦年贈与で株式を少しずつ動かす手法は、年々効きにくくなる方向です。相続時精算課税(基礎控除110万円は加算対象外)の相対的な有利さが増しています。

    事業承継・M&A補助金

    事業承継やM&Aにかかる費用を補助する制度です。令和8年度は次の枠組みで運用されています(十五次公募の内容)。

    補助率補助上限
    事業承継促進枠
    (5年以内に親族内・従業員承継を予定)
    1/2(小規模事業者は2/3)800万円〜1,000万円
    (一定の賃上げで1,000万円)
    専門家活用枠
    買い手支援類型
    1/3・1/2・2/3600〜800万円
    (DD費用の申請で200万円加算)
    専門家活用枠
    売り手支援類型
    1/2・2/3600〜800万円
    (同上)
    専門家活用枠
    小規模売り手支援類型(令和8年度新設)
    2/3450万円
    PMI推進枠1/2(小規模事業者は2/3)150万円〜1,000万円
    廃業・再チャレンジ枠2/3または1/2300万円

    ※ 専門家活用枠の補助対象経費には、FA・M&A仲介費用(M&A支援機関登録制度に登録された事業者によるものに限る)、デュー・ディリジェンス費用、セカンド・オピニオン費用、表明保証保険料などが含まれます。
    ※ 公募は年度内に複数回行われ、締切と要件が回ごとに変わります。申請を検討する場合は事業承継・M&A補助金 公式サイトで最新の公募要領を必ず確認してください。

    不動産取得税の特例

    中小事業者等が中小企業等経営強化法の認定経営力向上計画に従って行う事業の譲受けにより取得した一定の不動産について、不動産取得税の課税標準の特例があります。令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、令和10年3月31日までとなりました。合併や一定の会社分割の場合は非課税です。

    実務でつまずく点 ― 民法特例と補助金の期限
    • 民法特例は推定相続人全員の合意が必要です。1人でも反対すると成立しません。関係が良好なうちに進めるしかありません。
    • 民法特例には二段構えの期限があります。合意の日から1か月以内に経済産業大臣の確認申請、確認を受けた日から1か月以内に家庭裁判所への申立て。この2つの1か月を逃すと最初からやり直しです。
    • 個人版の民法特例は除外合意のみで、固定合意は使えません。固定合意は会社の経営承継の場合に限られます。
    • 事業承継・M&A補助金の公募は年度内に複数回あり、締切と要件が回ごとに変わります。令和8年度の十五次公募は令和8年6月19日〜7月24日でした。次回公募の要件は公式サイトで確認してください。
    • 専門家活用枠のFA・M&A仲介費用は、M&A支援機関登録制度に登録された事業者によるものに限られます。登録のない仲介業者に依頼すると補助対象外です。
    • 暦年贈与の加算期間は令和9年から段階的に伸びます。相続開始日が令和8年12月31日までなら3年、令和9年1月1日以後は令和6年1月1日から死亡の日まで、令和13年1月1日以後は7年。暦年贈与で株式を少しずつ動かす手法は年々効きにくくなります

    37自社株評価の見直し議論

    ひとことで言うと国税庁が取引相場のない株式の評価方法そのものの見直しに着手しています。類似業種比準価額が純資産価額に比べて低すぎる、というのが問題意識です。結論は出ていませんが、評価が上がる方向の議論です。

    令和8年度税制改正そのものには取引相場のない株式の評価に関する改正はありませんが、その背後で通達レベルの大きな動きが進んでいます。

    1
    会計検査院の指摘(令和5年度決算検査報告)

    令和2・3年分の申告から1,600件を抽出した結果、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の27.2%にとどまり、純資産価額に対する申告評価額の割合の中央値は大会社0.32倍・中会社0.50倍・小会社0.61倍規模区分間で評価の公平性が必ずしも確保されているとはいえないと指摘されました。さらに、配当金額の比準割合が0だった会社が79.4%にのぼり、配当が比準要素として機能していないことも示されました。

    2
    配当還元方式の還元率10%も俎上に

    同院は、還元率10%が昭和39年から約60年にわたって見直されていないと指摘。試算では、還元率を5%にすると評価額は約2倍になります。

    3
    令和8年4月20日〜国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」

    座長は佐藤英明・慶應義塾大学大学院教授。委員には学者のほか、日本税理士会連合会、日本商工会議所、日本M&Aセンター、野村資産承継研究所などが参加しています。第1回(4月20日)・第2回(5月11日)・第3回(6月4日)・第4回(7月3日)と、すでに4回開催されました。

    4
    示された「見直しの4つの観点」

    ①評価額の恣意性・操作性の排除(会社規模等の操作による圧縮スキーム、配当還元方式の適用株主を作出するスキームの排除) ②今日的観点からの見直し(適正な還元率への見直し、収益力を反映できる評価方法) ③第三者への事業承継の動向も踏まえた評価 ④評価額の「崖」の解消(規模区分間の公平性、純資産価額方式における引当金の取扱いを含む)。

    5
    令和8年7月3日第4回で濫用スキーム8事例を公表

    国税庁は、会社規模の操作、無議決権株式による配当還元方式の濫用、グループ内の循環貸付、オペレーティングリース、株主構成の操作、第三者の一時的介在、貸付用不動産の3年超保有といった具体的スキームを、効果額とともに図解で提示しました。同資料には「評価通達6項の適用ではなく評価通達改正による納税者の予測可能性の確保の必要性」と明記されています(第42章)。

    6
    議論の主な対立軸

    実務側(日本商工会議所・日本税理士会連合会)は、純資産価額方式は在庫の換価コストや退職金が加味されず過大であり、会社規模が小さいほど相対的に評価額が高くなる点、特定の評価会社に該当した瞬間に株価が跳ね上がる不合理を指摘。「円滑な事業承継に資する評価」を5つ目の観点に加えるべきだと主張しています。一方、事務局は「円滑な事業承継という観点を見直し枠組みの一つの柱に立てて検討するのは中々難しい」と述べており、税負担への配慮は評価方法ではなく特別措置で行うべきだという学説側の意見も出ています。

    実務でつまずく点 ― 「まだ決まっていない」ことの意味

    2026年7月26日時点で、還元率の具体的な変更率も、純資産価額方式の見直し内容も、適用時期もいずれも未確定です。一方で、議論の方向は少なくとも一部の会社について評価額が上がる方向にあります。

    事業承継税制で贈与した株式は贈与時の価額で固定されます(第28章)。しかも贈与者死亡後の相続税の納税猶予には適用期限がありません。評価方法が変わる前の株価で承継を済ませられるかどうかは、令和9年12月31日という期限とは別の意味で、時間との勝負になっています。

    ただし、注意すべき点が2つあります。第一に、評価が上がる会社と下がる会社の両方があり得ることです。事務局は「近年の類似業種のBCDの数値はAを上回る上昇傾向にあり、業績が一定と仮定すると類似業種比準価額は逆に下がるケースもある」と述べています。第二に、「改正前に駆け込む」という動機だけで設計した承継は、それ自体が否認の材料になり得ることです(第42章)。

    「株価が上がる前に贈与しておく」ことの意味が変わりつつある

    適用時期は現時点で確定していません。しかし議論の方向は、少なくとも一部の会社について評価額が上がる方向です。事業承継税制で贈与した株式は贈与時の価額で固定されます(第28章)。評価方法が変わる前の株価で承継を済ませられるかどうかは、令和9年12月31日という期限とは別の意味で、時間との勝負になっています。

    あわせて、令和8年度税制改正では貸付用不動産の評価の適正化が新設されました。①被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得・新築した一定の貸付用不動産は、通常の取引価額により評価する(課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価変動等を考慮して計算した価額の80%で評価可)。②不動産特定共同事業契約・信託受益権に係る一定の権利の目的となっている貸付用不動産は、取得の時期にかかわらず通常の取引価額により評価する。適用は令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産からです。

    現行の財産評価基本通達185は「課税時期前3年以内に取得した土地建物」を通常の取引価額で評価すると定めており、改正後は3年と5年の2つの期間基準が併存することになります。法人が保有する貸付用不動産も、純資産価額の計算を通じて影響を受け得ます。実際、有識者会議の第4回資料には「法人が貸付用不動産を購入し、3年超経過後に株式を移転するスキーム」が濫用事例として挙げられており、この改正はまさにその穴を塞ぐものです。ただし具体的な適用範囲は今後の通達で定められるため、現時点では未確定です。

    出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)資料」(2026年4月20日)財務省「令和8年度税制改正の大綱」二 資産課税

    38よくある失敗5パターン

    #失敗何が起きたか/どうすべきだったか
    1計画を出さないまま相続が起きた令和9年9月30日を過ぎると、特例承継計画は出せません。相続はタイミングを選べないため、計画未提出のまま相続が発生すると一般措置(相続80%・3分の2まで)しか残りません。→ 使うかどうかは後で決められるので、先に計画だけ出しておく
    2資産保有型会社の判定を見落とした贈与時は基準を満たしていたが、その後、社宅を役員用に転用したり、保険積立金が増えたりして70%を超え、認定取消し。→ 毎期の決算で特定資産比率を計算し、年次報告の前に確認する運用を作る。
    3報告書・届出書を出し忘れた年次報告書(3か月以内)と継続届出書(5か月以内)は期限が異なります。5年経過後は3年に1回に減るため、かえって忘れやすい。→ 報告基準日をカレンダーに登録し、顧問税理士と二重で管理する
    4後継者が代表を退いた体調不良や家庭の事情で後継者が代表を退任し、事業継続期間中だったため全額打切り。→ 精神障害者保健福祉手帳1級、身体障害者手帳1級・2級、要介護5に該当すれば「やむを得ない理由」として取消しを免れます。該当しそうな場合は、退任前に必ず確認する
    5他の相続人の遺留分を侵害した後継者に株式を集中させた結果、他の相続人から遺留分侵害額請求を受け、株式を売却して支払わざるを得なくなり猶予打切り。→ 民法特例(除外合意・固定合意)、遺言、生命保険による代償金の準備を先に済ませる。

    39自社株はどう評価されるのか

    ひとことで言うと事業承継税制の猶予税額は株価の関数です。株価は「誰が取得するか(同族株主か)」と「会社の規模」の2つでほぼ決まります。この2段構えを理解しないと、対策の入口を間違えます。

    ここから第7部は実務編です。事業承継税制を実際に使う場面で必ずぶつかる論点を、一次情報にあたって整理しました。まず取り上げるのは自社株の評価です。第17章で見たとおり、猶予される税額は「対象株式の評価額」から機械的に導かれます。評価額が2倍になれば猶予税額も概ね2倍になり、取り消されたときの負担も2倍になります。

    2026年(令和8年)に押さえておくべき評価まわりの変更
    • 純資産価額の「法人税額等相当額」が37%→38%に(令和8年3月25日付 課評2-28)。防衛特別法人税の創設に伴うもので、令和8年4月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した株式から適用されます。判定は取得した日であって会社の事業年度ではありません。
    • 評価明細書が「令和8年4月1日以降用」に全面改訂。第4表が第4表の1・第4表の2に、第7表・第8表が第7表の1〜3に再編され、第8表は廃止されました。
    • 国税庁が評価通達そのものの抜本見直しに着手(第41章・第37章)。
    • 令和8年度改正で貸付用不動産の「5年ルール」が創設(令和9年1月1日以後の相続等から)。

    第1段階:誰が取得するかで方式が変わる

    同じ会社の株式でも、取得する人が支配株主グループに属するかどうかで評価方法がまったく違います。支配側なら原則的評価方式(類似業種比準価額・純資産価額・その併用)、少数株主なら配当還元方式です。多くの場合、配当還元価額は原則的評価額の数%〜十数%にとどまります。

    筆頭株主グループの議決権割合取得者グループの議決権割合判定
    50%超50%超同族株主等 → 第2段階へ
    50%以下配当還元方式
    30%以上50%以下30%以上同族株主等 → 第2段階へ
    30%未満配当還元方式
    30%未満
    (=同族株主のいない会社)
    15%以上同族株主等 → 第2段階へ
    15%未満配当還元方式

    第2段階は、第1段階で同族株主等となった人のうち議決権割合が5%未満の人だけが対象です(5%以上なら無条件で原則的評価方式)。

    判定順内容結論
    取得者が役員である(課税時期において、または課税時期の翌日から法定申告期限までに役員となった)原則的評価方式
    取得者自身が中心的な同族株主である原則的評価方式
    取得者以外に中心的な同族株主(または中心的な株主)がいる配当還元方式
    ③がいない原則的評価方式
    用語定義
    同族株主株主の1人とその同族関係者の議決権合計が30%以上(筆頭株主グループが50%超の会社では50%超)である場合のその株主グループ
    中心的な同族株主同族株主の1人と、その配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族(これらが25%以上を有する同族関係会社を含む)の議決権合計が25%以上である場合のその株主。おじ・おば・甥・姪・いとこは含まれません
    中心的な株主同族株主のいない会社で、15%以上の株主グループのうち、単独で10%以上を有する株主
    役員(評価上)代表取締役、副社長・専務・常務等、指名委員会等設置会社の取締役・監査等委員である取締役、会計参与、監査役、監事。平取締役は原則として含まれません
    実務でつまずく点
    • 「中心的な同族株主」の親族の範囲は同族関係者より狭い。同族関係者は6親等内の血族・3親等内の姻族まで及びますが、中心的な同族株主の判定は配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族に限られます。いとこや甥・姪を数えて「25%以上だから中心的な同族株主だ」と判定すると誤りです。
    • 議決権割合の端数処理に例外がある。評価明細書では1%未満切捨てが原則ですが、50%超から51%未満の範囲にある場合だけは切り上げて「51%」と記載します。50.4%を切り捨てて「50%」とすると、次に述べる純資産価額の80%評価の判定を誤ります。
    • 自己株式と相互保有株式の議決権はゼロで数える。発行済株式数だけを見て割合を出すと判定を誤ります。
    • 完全無議決権株式は議決権数に含めないが、「一部の事項について議決権を行使できない株式」は含める。種類株式を発行している会社では、株主名簿だけでなく定款の確認が必須です。

    第2段階:会社規模で評価方式が決まる

    原則的評価方式になった場合、次は会社の規模を判定します。従業員数70人以上なら、業種・総資産・取引金額を問わず無条件で大会社です。70人未満の場合は下の2つの表で判定します。

    区分卸売業小売・サービス業それ以外の業種従業員数
    大会社20億円以上15億円以上15億円以上35人超
    中会社 L=0.904億円以上20億円未満5億円以上15億円未満5億円以上15億円未満35人超
    中会社 L=0.752億円以上4億円未満2億5,000万円以上5億円未満2億5,000万円以上5億円未満20人超35人以下
    中会社 L=0.607,000万円以上2億円未満4,000万円以上2億5,000万円未満5,000万円以上2億5,000万円未満5人超20人以下
    小会社7,000万円未満4,000万円未満5,000万円未満5人以下

    ①総資産価額(帳簿価額)および従業員数による区分。総資産価額と従業員数のうち下位の区分を採ります。

    区分卸売業小売・サービス業それ以外の業種
    大会社30億円以上20億円以上15億円以上
    中会社 L=0.907億円以上30億円未満5億円以上20億円未満4億円以上15億円未満
    中会社 L=0.753億5,000万円以上7億円未満2億5,000万円以上5億円未満2億円以上4億円未満
    中会社 L=0.602億円以上3億5,000万円未満6,000万円以上2億5,000万円未満8,000万円以上2億円未満
    小会社2億円未満6,000万円未満8,000万円未満

    ②直前期末以前1年間の取引金額による区分。

    1. 従業員数70人以上かを見る。YESなら無条件で大会社。
    2. ①の表で「総資産価額の区分」と「従業員数の区分」の下位(小さい方)を採る。
    3. ②の表の区分と、ステップ2の区分の上位(大きい方)で最終判定する。
    実務でつまずく点
    • 従業員数は①の側にしか効かない。従業員が少なくても取引金額が大きければ大会社になります。たとえば卸売業・従業員30人・総資産1億円・取引金額31億円の会社は、①の区分が中会社0.60でも、②が大会社なので大会社です。
    • 従業員数の数え方が独特。「継続勤務従業員(週30時間以上・直前期末以前1年間継続勤務)の数」+「それ以外の従業員の1年間の総労働時間 ÷ 1,800時間」。端数処理はしませんので、5.1人なら「5人超」、4.9人なら「5人以下」です。役員は含めず、使用人兼務役員は含めます。
    • 会社規模判定の総資産価額と、純資産価額の計算とで資産の扱いが逆になる。会社規模判定(第1表の2)では繰延資産・繰延税金資産・前払費用を含め、貸倒引当金は控除しません。一方、純資産価額の計算(第5表)では財産性のない繰延資産・繰延税金資産は計上しません。同じ「総資産」という言葉でも中身が違います。
    • 業種区分は「取引金額が最も多い業種」で判定する。後述する類似業種比準価額の業種目判定(50%超ルール)とは別のルールです。

    会社規模ごとの評価方式

    区分1株当たりの価額
    大会社①類似業種比準価額②純資産価額のいずれか低い方(②の記載がないときは①)。80%評価は使えません
    中会社(①と②のいずれか低い方)× L +(②または③)×(1−L)
    L=0.90/0.75/0.60
    小会社次のいずれか低い方
    イ ②(③があるときは③)/ロ ①×0.50 + イ×0.50
    配当還元配当還元価額。ただし原則的評価方式による価額が上限

    ③=純資産価額の80%相当額。取得者とその同族関係者の議決権が50%以下である場合に、中会社・小会社の純資産価額に適用されます。大会社が純資産価額を選択する場合には適用されません。

    なぜ大会社ほど株価が低く出るのか

    会計検査院の令和5年度決算検査報告によれば、純資産価額に対する申告評価額の割合の中央値は大会社0.32倍・中会社0.50倍・小会社0.61倍でした。類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の27.2%にすぎません。つまり類似業種比準方式のウエイトが大きい会社ほど株価が低く出るという構造があります。会社規模の「崖」を意図的に操作するスキームが問題視されているのは、この構造が背景にあります(第41章・第42章)。

    40類似業種比準価額と純資産価額の中身

    ひとことで言うと類似業種比準価額は配当・利益・簿価純資産の3つを同業上場会社と比べる方式。純資産価額は資産を相続税評価額に置き換えて含み益に38%を控除する方式です。前者は下げやすく、後者は下がりにくい。

    類似業種比準価額

    算式(現行) Ⓑ Ⓒ Ⓓ ─ + ─ + ─ B C D 1株当たりの資本金等の額 類似業種比準価額 = A × ────────── × 斟酌率 × ────────────── 3 50円
    A=類似業種の株価/Ⓑ Ⓒ Ⓓ=評価会社の1株当たりの配当金額・利益金額・簿価純資産価額/B C D=類似業種の同項目。斟酌率は大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5。
    よく見かける「÷5」「利益を3倍」の算式は平成28年分以前のものです

    平成29年4月27日付の通達改正により、配当・利益・簿価純資産の比重が1:3:1から1:1:1へ、分母が5から3へ変わりました。古い解説書やウェブ記事には旧算式が残っているので注意してください。国税庁は改正理由を「1:1:1という比重が最も実際の株価と評価額との乖離が少なく、適正に時価が算出されると認められた」と説明しています。

    要素計算方法
    A(類似業種の株価)①課税時期の属する月 ②その前月 ③その前々月 ④前年平均株価 ⑤課税時期の属する月以前2年間の平均株価のうち、最も低いもの
    Ⓑ 配当金額直前期末以前2年間の剰余金の配当金額の合計の2分の1。特別配当・記念配当など将来毎期継続することが予想できない金額は除きます
    Ⓒ 利益金額法人税の課税所得金額 − 非経常的な利益 + 受取配当等の益金不算入額 − その所得税額 + 損金算入した繰越欠損金の控除額。直前期末以前1年間または2年間の平均を選択。負数のときは0
    Ⓓ 簿価純資産価額直前期末の資本金等の額 + 利益積立金額(法人税申告書 別表五(一)の差引合計額)。負数のときは0
    実務でつまずく点
    • 受取配当等の益金不算入額は加算、その所得税額は減算。「どちらも加算」と覚えていると利益金額が過大になります。
    • 非経常的な利益は控除するのに、非経常的な損失は加算されない。ここに恣意性の余地があるとして、日本税理士会連合会が有識者会議で問題提起しています。逆に言えば、臨時の損失を出しても利益金額は下がったままになるため、この非対称性が株価操作の温床にもなっています。
    • 業種目の判定は取引金額の50%超で決まる。50%超の業種目がない場合は、中分類内の類似する小分類の合計が50%超なら「その他の◯◯業」、類似しない小分類なら中分類……という段階的なルールに従います。納税者の選択で1段階だけ上位の業種目に上げられます(小分類→中分類、中分類→大分類)が、小分類から一気に大分類へは飛べません。
    • 評価会社は「資本金等の額」(法人税ベース)、類似業種は「資本金の額等」(資本金+資本剰余金−自己株式、財務諸表ベース)。用語が1文字違いで中身が違います。
    • 令和8年分の業種目別株価等は課評2-41(令和8年6月5日)とその一部改正 課評2-48(同6月26日)で公表され、4月分まで掲載されています。後の月分は順次追加されるため、贈与の直前に最新版を必ず確認してください。

    純資産価額

    算式1株当たりの純資産価額 = { 相続税評価額による総資産価額 − 負債の合計額 − 評価差額に対する法人税額等相当額 } ÷ 課税時期における発行済株式数 評価差額に対する法人税額等相当額 = { 相続税評価額による純資産価額 − 帳簿価額による純資産価額 } × 38%
    38%は令和8年4月1日以後に取得した株式に適用。令和8年3月31日以前の取得は37%。評価差額がマイナスなら0。
    38%の内訳(令和8年4月1日以後開始事業年度ベース)割合
    法人税23.2%
    地方法人税(法人税額×10.3%)2.3896%
    防衛特別法人税(法人税額×4.0%)0.928%
    事業税7.0%
    特別法人事業税(事業税額×37.0%)2.59%
    道府県民税(法人税額×1.0%)0.232%
    市町村民税(法人税額×6.0%)1.392%
    合計37.7316% ≒ 38%
    実務でつまずく点
    • 37%か38%かの判定基準は「株式を取得した日」であって、会社の事業年度ではありません。12月決算の会社で令和8年5月に相続が発生した場合、その会社はまだ防衛特別法人税の適用前の事業年度中でも、株式の評価では38%を使います。
    • 課税時期前3年以内に取得・新築した土地建物は「通常の取引価額」で評価する。取得・新築のいずれも対象で、附属設備・構築物・借地権等も含みます。この結果、含み益が出ないため法人税額等相当額の控除も生じにくくなります。「不動産を買って純資産価額を下げる」手法が3年間効かない理由がここにあります。
    • 令和6年1月1日以後に取得した株式では、会社が保有する区分所有マンションにもマンション通達が適用される。タワーマンションを法人に買わせて純資産価額を圧縮する手法は、圧縮効果が大幅に縮小しました。
    • 80%評価が使えるのは中会社・小会社だけ。大会社が純資産価額方式を選択する場合、および開業前・休業中の会社、清算中の会社には適用されません。
    • 負債に入れられるもの・入れられないものが決まっている。引当金(貸倒引当金・退職給与引当金・納税引当金)・準備金・繰延税金負債は負債に含めません。一方、帳簿に記載がなくても、未納公租公課、課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税・都市計画税、死亡により支給が確定した退職手当金、事業年度開始から課税時期までに対応する法人税等は負債に計上します
    • 会社が受け取った生命保険金は資産に計上し、資産計上されていた保険積立金は資産から除外する。そのうえで支払った死亡退職金と保険差益に対する法人税額等を負債に計上します。二重計上・計上漏れがどちらも起きやすい論点です。
    • 評価会社が他の取引相場のない株式を持っている場合、その株式の純資産価額の計算では法人税額等相当額を控除しない。二重控除を防ぐためのルールです(通達186-3)。持株会社の評価で必ず出てきます。

    配当還元価額

    算式 その株式に係る年配当金額 1株当たりの資本金等の額 配当還元価額 = ────────────── × ──────────────── 10% 50円
    年配当金額が2円50銭未満または無配の場合は2円50銭とします。したがって配当還元価額の下限は「1株当たりの資本金等の額の2分の1」になります。計算結果が原則的評価方式による価額を超える場合は、原則的評価方式による価額が上限です。
    還元率10%は昭和39年から一度も見直されていません

    会計検査院は、還元率10%が「昭和39年の評価通達制定当時の金利水準に安全率等を考慮して定めたもの」であり、約60年にわたって見直されていないと指摘しました。同院の試算では、還元率を5%にすると評価額は約2倍になります。国税庁の有識者会議でも「10%より下げるべきというのはそのとおり」という意見が出ている一方、引き下げると従業員持株会が事実上設立できなくなったり、少数株主の整理がより難しくなりかねないという懸念も示されています。

    41特定の評価会社という地雷

    ひとことで言うと株式や土地の保有割合が高い会社、赤字が続いて比準要素が消えた会社、設立3年未満の会社は、類似業種比準方式が使えなくなり純資産価額で評価されます。株価が突然跳ね上がる最大の原因です。
    種類判定基準評価方法
    (1)比準要素数1の会社配当・利益・簿価純資産のうちいずれか2つが0で、かつ直前々期末を基準にしても2つ以上が0純資産価額。ただし選択によりL=0.25の併用可
    (2)株式等保有特定会社株式・出資・新株予約権付社債の相続税評価額の合計 ÷ 総資産価額(相続税評価額)が50%以上純資産価額。ただし選択によりS1+S2方式
    (3)土地保有特定会社土地等の相続税評価額の合計 ÷ 総資産価額(相続税評価額)が、大会社70%以上/中会社90%以上/小会社は総資産規模により70%または90%以上純資産価額のみ(併用の選択なし)
    (4)開業後3年未満の会社等開業後3年未満、または配当・利益・簿価純資産がいずれも0(比準要素数0の会社)純資産価額のみ
    (5)開業前・休業中の会社純資産価額(80%評価も配当還元も適用なし
    (6)清算中の会社分配見込金額の複利現価

    判定の優先順位は(6)>(5)>(4)>(3)>(2)>(1)。後順位が優先します。ただし記載(作成)は(1)から(6)の順です。

    実務でつまずく点
    • 株式等保有特定会社に該当しても、比準要素数1の判定は依然として必要。S1+S2方式を選んだ場合、比準要素数1にも該当するときはS1の計算でL=0.25等を使う必要があるためです。
    • 土地保有特定会社と開業後3年未満の会社は、純資産価額一本で併用の選択肢がありません。比準要素数1(L=0.25)や株式等保有特定会社(S1+S2)のような救済がなく、影響がもっとも大きい類型です。
    • 「株式等」には所有目的・所有期間を問わずすべてが入る。証券会社が商品として保有する株式、外国株式、株式制のゴルフ会員権も含まれます。逆に匿名組合の出資と証券投資信託の受益証券は含まれません
    • 土地保有特定会社の判定では、たな卸資産である土地も基礎に含まれます。不動産販売会社は該当しやすい類型です。
    • 判定に使う基準がバラバラ。会社規模判定の総資産価額は帳簿価額、株式等保有割合・土地保有割合は相続税評価額。同じ「総資産」という言葉でも中身が違います。
    • 「比準要素数1」は業績が悪い会社を直撃する。赤字が続いて利益がゼロ、無配で配当もゼロとなれば、簿価純資産だけが残って比準要素数1に該当します。業績が悪いのに株価が上がるという不合理は、日本税理士会連合会も有識者会議で問題提起しています。

    「株特外し」を封じる規定が通達本文にある

    財産評価基本通達189 柱書 なお書き

    なお、評価会社が、次の(2)又は(3)に該当する評価会社かどうかを判定する場合において、課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が次の(2)又は(3)に該当する評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして当該判定を行うものとする。

    つまり、株式等保有特定会社や土地保有特定会社に該当しないようにするために資産構成をいじった場合、その操作はなかったものとして判定されるということです。これはいわゆる総則6項(この通達の定めにより難い場合の評価)とは別の、個別の否認規定です。

    「株特外し」をめぐる裁判は、地裁と高裁で判断が割れました

    被相続人が上場株式を売却して得た約37億円で、相続開始の約2か月前に自社の定款目的を投資業に変更したうえで、設立後初の配当を実施し、第三者割当増資(約36億円)を引き受けた事案があります。これにより、その会社は「比準要素数1の会社」にも「株式等保有特定会社」にも該当しなくなり、株式保有割合は約89.2%から約26.1%に下がりました。

    評価方法1株当たり評価額主張者
    併用方式1,853円相続人(当初申告)
    S1+S2方式2,263円相続人(修正申告)
    純資産価額方式3,443円課税庁(更正処分)

    国税不服審判所は令和3年8月27日裁決で課税庁を支持、東京地裁は令和7年1月17日判決で納税者勝訴としましたが、東京高裁は令和7年6月19日判決でこれを覆し、課税処分を適法としました。乖離の大きさそのものではなく、評価通達の要件事実を意図的に操作したかどうかが分水嶺になりつつあります。

    一方で、乖離だけでは総則6項は使えないという判決も出ています

    調剤薬局会社と大手企業のM&A基本合意後、株式譲渡の実行前にオーナーが死亡した事案では、相続人が類似業種比準方式で申告したのに対し、課税庁が総則6項と鑑定評価で更正処分を行いました。東京地裁令和6年1月18日判決・東京高裁令和6年8月28日判決はいずれも納税者勝訴で、国が上告受理申立てをせず確定しています。有識者会議に提出された委員資料によれば、この事案の通達評価額は買収額の約8%でした。最高裁令和4年4月19日判決の後、裁判で総則6項の適用が認められなかった初めてのケースです。

    事業承継税制との関係でとくに注意すべきこと

    資産保有型会社と株式等保有特定会社は、名前が似ていますがまったく別の概念です。実務でもっとも混同されやすい論点なので、必ず区別してください。

    比較軸資産保有型会社/資産運用型会社株式等保有特定会社/土地保有特定会社
    根拠租税特別措置法・経営承継円滑化法施行規則財産評価基本通達189
    目的納税猶予が使えるかどうか株式の評価方法の決定
    判定の基礎貸借対照表の帳簿価額/損益計算書相続税評価額
    対象資産特定資産(現預金・有価証券・自己使用でない不動産・ゴルフ会員権・保険積立金・役員貸付金など)株式等のみ/土地等のみ
    閾値70%(保有型)/75%(運用型)50%(株式等)/70%・90%(土地)
    判定時期直前事業年度開始日以後のいずれかの日。猶予期間中も継続判定課税時期の一時点
    加算調整分母・分子に配当・損金不算入役員給与を加算なし
    救済事業実態要件/やむを得ない事由(6か月ルール)189柱書なお書きの否認規定のみ
    該当したら納税猶予が受けられない/全額取消評価方法が純資産価額ベースになる

    両方に同時に該当することもあります。たとえば株式等を多く持つ持株会社は、株式等保有特定会社として純資産価額で評価される(株価が上がる)一方、資産保有型会社として納税猶予そのものが使えない、という二重の不利益を受けることがあります。

    42株価を下げる実務と、否認されないための線引き

    ひとことで言うと役員退職金・不良資産の処理といった本業の実態に根ざした手法と、通達の形式基準の境界線を狙う操作型のスキームは分けて考えるべきです。後者は国税庁がすでに構造を把握し、通達改正で封じにかかっています。
    前提:国税庁は令和8年7月3日、濫用スキーム8事例を図解付きで公表しました

    有識者会議(第4回)に提出された資料には、現行の評価方法を濫用したスキームが具体的な効果額とともに列挙されています。同じ資料には「評価通達6項の適用ではなく評価通達改正による納税者の予測可能性の確保の必要性」と明記されており、今後は個別の総則6項発動よりも通達本体での封じ込めが本流になる方向です。株価引下げ手法は「使える技術」ではなく「近い将来使えなくなる手法」という前提で考える局面に入っています。

    #国税庁が示したスキーム資料記載の効果
    従業員を転籍させて子会社の会社規模を中会社(併用)から大会社(類似)へ変更し、株価を圧縮評価額 ▲100億円/税額 ▲55億円
    持株会社設立時に無議決権株式を大量発行し、孫を「中心的な同族株主以外の同族株主」として作出。世代飛ばしで配当還元価額により贈与評価額 ▲19億円/税額 ▲10億円
    (原則的評価方式の2.2%)
    純粋持株会社を設立し、子会社から多額借入で株式等保有特定会社を外し、吸収分割で管理部門と従業員を移して小会社から大会社へ評価額 ▲20億円/税額 ▲10億円
    持株会社と子会社の間で現金寄附と貸付を循環反復させ、純資産価額を圧縮評価額 ▲65億円/税額 ▲35億円
    オペレーティングリース(中古航空機の定率法償却)で翌期に多額の損金を計上し、株価が下がったところで株式を移転評価額 ▲10億円/税額 ▲5億円
    資産管理会社の株主構成を「どのグループも15%以上を持たない」ように構成し、全株式を配当還元方式で評価評価額 約98%減
    第三者を一時的に介在させ、配当還元価額で売却→原則的評価で贈与→一定期間後に自己株式として買戻し評価額 約60%減
    法人が借入で貸付用不動産を購入し、3年超保有して通達185の「3年以内取得」を回避してから株式を移転取得価額約10億円に対し評価額約4.6億円

    出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第4回)」資料(令和8年7月3日・PDF)

    当事務所の立場

    上記8事例に挙がっている手法は、いずれも通達の形式基準(会社規模区分、議決権割合、株式等保有割合、3年以内取得の判定時期など)の境界線を意図的に操作するものです。国税庁が構造を把握して図解できる段階にある以上、今後の通達改正または総則6項の発動対象となる蓋然性が高く、当事務所ではこれらの手法をご提案していません。承継のタイミングが数年先である以上、「今の通達では合法」という理由だけで組んだ設計は、実行時点で無効化されているリスクを常に抱えます。

    本業に根ざした手法 ― 役員退職金

    もっとも王道で、事業承継税制とも相性がよいのが役員退職金です。先代が代表権を返上することは事業承継税制の要件でもあるため、要件充足と株価引下げを同時に達成できます

    功績倍率法適正な役員退職給与の額 = 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率(+ 功労加算金)
    法人税基本通達9-2-27の3の注書きにある考え方。ただし「功績倍率」という語は法令の条文には存在しません。
    法人税法施行令70条2号が定める判定要素
    ①その役員が業務に従事した期間 ②退職の事情 ③同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等
    実務でつまずく点
    • 「社長は功績倍率3.0倍まで大丈夫」は誤解です。3.0倍という数字は、東京地裁昭和55年5月26日判決で課税庁が根拠とした昭和47年当時の上場企業調査の平均値に由来する一つの目安にすぎず、法令にも通達にも規定はありません。
    • 争点になるのは倍率より「最終報酬月額」であることが多い。いわゆる残波事件(東京地裁平成28年4月22日・東京高裁平成29年2月23日)では、課税庁自身も功績倍率3.0倍を用いており、争いは最終報酬月額の水準でした。功績倍率が3.0以内でも、報酬月額が過大とされれば退職金は否認されます
    • 分掌変更による退職金は「実質的に退職したと同様の事情」が必要。法人税基本通達9-2-32は、非常勤役員になった場合・監査役になった場合・報酬がおおむね50%以上減少した場合を例示しますが、いずれにも「経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く」という除外がかかっています。形式的に代表権を外して報酬を半分にしても、実質的に経営を握り続けていれば退職給与として認められません。
    • 未払計上は原則として認められません。同通達の注書きが明示しています。分割払いにする設計は要注意です。
    • 損金算入時期は株主総会決議で確定した日の属する事業年度。支払日基準も認められますが、いずれにせよその期が「直前期」になるまで類似業種比準価額には反映されません(次項)。

    もっとも間違えられる論点 ― 退職金は「いつ」株価に効くのか

    純資産価額方式類似業種比準方式
    生前退職金支給(未払計上)により即反映支給した事業年度が「直前期」になるまで反映されない
    死亡退職金通達186(3)により負債に計上でき即反映原則として反映されない
    「死亡退職金を出せば株価が下がる」は、会社によっては成り立ちません

    類似業種比準価額のⒷⒸⒹはいずれも直前期末を基準にします。相続開始日の直前期末には死亡退職金は当然計上されていないため、類似業種比準価額はまったく動きません。したがって、

    • 大会社(類似業種比準価額100%)では、死亡退職金を支給しても株価はほぼ動かない
    • 中会社では(1−L)の割合の分しか効かない
    • 純資産価額方式で評価される会社でこそ効く

    生前退職金も同様です。3月決算法人が令和8年6月の定時株主総会で退職金を決議すると、損金算入は令和9年3月期。その期が「直前期」となるのは令和9年4月1日以後の課税時期です。さらに、利益金額について直前期末以前2年間の平均を選択している場合は、2期の平均で希釈されます。贈与の時期は、決算期と退職金の決議時期から逆算する必要があります。

    そのほかの手法と、法令上の限界

    手法根拠と限界
    不良債権の貸倒処理法基通9-6-1(法律上の貸倒れ)/9-6-2(事実上の貸倒れ)/9-6-3(形式上の貸倒れ)。9-6-2は「全額が回収できないことが明らか」でなければ使えず、一部回収不能では不可。担保物があるときは処分後でなければ計上できません。9-6-3は売掛債権に限られ、貸付金には使えません。同族関係者への債権を株価引下げ目的で貸倒処理すると、寄附金認定・役員給与認定に直結します。
    不良在庫の評価損法基通9-1-4。「著しく陳腐化した」とは、物質的な欠陥がないのに経済的環境の変化により価値が著しく減少し、今後回復しないと認められる状態。単に「売れ行きが悪い」「過剰在庫」では認められません。評価損より、実際に廃棄して廃棄損を計上する方が立証は容易です(廃棄証明・マニフェスト等の保存が前提)。
    含み損資産の売却第三者への売却は実現損として損金算入できますが、完全支配関係のあるグループ内法人への売却は、グループ法人税制により譲渡損が繰り延べられ損金になりません
    オペレーティングリース令和7年度税制改正(新リース会計基準対応)により法人税法53条が新設され、借手のオペレーティング・リースは会計と税務が乖離して申告調整が必要になりました(令和7年4月1日以後開始事業年度)。措置法67条の12により、任意組合・匿名組合を通じた損失は出資の価額を超える部分が損金不算入です。国税庁の有識者会議資料で名指しされた手法でもあります
    生命保険法基通9-3-5の2により、保険期間3年以上で最高解約返戻率50%超のものは資産計上が必要です。また所得税基本通達36-37の改正(令和3年7月1日以後の支給)により、低解約返戻期間に法人から役員へ名義変更する「名義変更プラン」は封じられました。会社契約の保険積立金は事業承継税制の特定資産にも該当します。

    否認の3ルート ― 総則6項・相続税法64条1項・同64条4項

    財産評価基本通達 総則6項

    この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する

    総則6項の適用範囲を示した最重要判例が、最高裁令和4年4月19日判決(令和2年(行ヒ)第283号)です。不動産の事案ですが、判断枠組みは非上場株式にも及びます。

    判旨内容
    評価通達は通達にすぎず、国民に対し直接の法的効力を有するというべき根拠は見当たらない
    特定の者についてのみ通達評価額を上回る価額によることは、合理的な理由がない限り平等原則に違反する
    通達による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には合理的な理由がある
    通達評価額と鑑定評価額に大きな乖離があること「のみ」では、その事情があるとはいえない

    この事案で決め手になったのは、客観面(相続税の総額が2億4,000万円から0円になる著しい軽減)と主観面(近い将来の相続で負担を減じることを知り、かつ期待して、あえて企画して実行した)の組み合わせでした。なお本件では不動産取得から相続開始まで3年5か月が経過していましたが、それでも総則6項が適用されています。「3年空ければ安全」という保証はありません。

    組織再編を伴う場合は、相続税法64条4項という第3のルートがある

    相続税法64条1項は、同族会社等の行為または計算で相続税・贈与税の負担を不当に減少させる結果となるものについて、税務署長が課税価格を計算し直すことができると定めています。そして同条4項は、合併・分割・現物出資・現物分配・株式交換等・株式移転をした法人の行為または計算を明示的に対象に加えています

    つまり、持株会社化・組織再編を使った株価引下げは、総則6項・相続税法64条1項・同64条4項の3ルートで否認され得ます。「通達の要件は形式的に満たしている」という説明だけでは足りません。

    実行前に自問すべきこと

    論点確認すべきこと
    経済合理性「なぜその時期に、その手法で行ったのか」を税負担の軽減以外の理由で説明できるか。説明できない行為は「純粋経済人の行為として不自然・不合理」と評価され得ます
    役員退職金実際に退職しているか。経営上主要な地位を占め続けていないか
    貸倒処理本当に全額が回収不能か。担保物の処分は済んでいるか
    持株会社化グループ経営上の必要性があるか。承継のためだけの器になっていないか
    従業員持株会規約はあるか。配当は実際に支払われているか。退会時の買戻価額は妥当か
    記録提案書・議事録・メールはすべて証拠になります。実際、令和3年8月27日裁決では、相続開始の3か月前から証券会社担当者に複数回相談していた事実が認定され、「相続税の負担を大きく軽減することを直接の主たる目的として行われたことは否定し難い」と判断されました

    43組織再編・持株会社と事業承継税制

    ひとことで言うと合併と株式交換・株式移転は都道府県知事の確認を受ければ認定を承継できます。一方、株式移転で新設した持株会社は事業実態要件を満たせないため、資産保有型会社に該当したときの逃げ道がありません。

    認定後に合併した場合

    認定を受けた会社が合併により消滅すると、認定は原則として当然に効力を失います。ただし存続会社(新設合併なら設立会社)が、合併効力発生日において次のすべてを満たすことにつき都道府県知事の確認を受けたときは、その日に認定中小企業者たる地位を承継したものとみなされます。報告は様式第13です。

    1. 後継者が存続会社の代表者であること
      代表権を制限されている者は該当しません。新設合併では設立会社の成立と同時に代表者へ就任する必要があります。
    2. 存続会社の株式等以外の財産が交付されていないこと
      ただし合併比率調整のための交付金と、後継者以外の反対株主の株式買取請求に基づく金銭は除かれます。
    3. 後継者が同族関係者と合わせて存続会社の議決権の50%超を有し、同族内で最多であること
    4. 存続会社が上場会社等・風俗営業会社・資産保有型会社のいずれにも該当しないこと
    5. 吸収合併の場合、効力発生日の翌日の属する事業年度の直前事業年度において資産運用型会社に該当しないこと
    6. 存続会社の特定特別子会社が風俗営業会社に該当しないこと

    認定後に株式交換・株式移転で完全子会社になった場合

    認定会社が他の会社の完全子会社になると、株式の全部を完全親会社が持つことになるため原則として認定が取り消されます。ただし完全親会社が次のすべてを満たすことにつき都道府県知事の確認を受けたときは、地位を承継したものとみなされます。報告は様式第14です。

    #要件
    1後継者が完全親会社「および」認定会社の双方の代表者であること(代表権を制限されている者を除く)。株式移転では設立会社の成立と同時に代表者就任が必要
    2完全親会社の株式等以外の財産が交付されていないこと(比率調整金銭・反対株主の買取請求金銭を除く)
    3後継者が同族関係者と合わせて完全親会社の議決権の50%超を有し、同族内で最多であること
    4完全親会社が上場会社等・風俗営業会社・資産保有型会社のいずれにも該当しないこと
    5株式交換の場合、効力発生日の翌日の属する事業年度の直前事業年度において資産運用型会社に該当しないこと
    6完全親会社の特定特別子会社(認定会社を含む)が風俗営業会社に該当しないこと
    実務でつまずく点 ― 持株会社化の落とし穴
    • 持株会社が資産保有型会社に該当すると、そもそも認定を承継できません。持株会社の資産はほぼ子会社株式ですから、これが最大の障壁です。
    • 子会社株式が特定資産から除外されるのは、その子会社が「資産保有型子会社」「資産運用型子会社」に該当しない場合に限られます。事業子会社が実体を伴っていれば除外され、持株会社が資産保有型会社に該当しない余地が生まれます。逆に、子会社自体が資産を溜め込んでいると、その株式は特定資産となり持株会社も資産保有型会社になります。
    • 株式移転で新設した持株会社は、事業実態要件による救済が使えません。事業実態要件の3つ目は「贈与の日(相続開始の日)まで引き続き3年以上、商品販売等をしていること」です。中小企業庁の申請マニュアルは「設立後3年未満の新設会社の場合にあっては、当該要件を充足することはできない」「組織再編があった場合における業務継続期間の算定上、旧会社における業務期間は通算されません(株式移転完全親会社・株式交換完全親会社を含む)」と明記しています。
    • ただし組織変更・種類変更は法人格の同一性が維持されるため通算されます。合同会社から株式会社への組織変更、合名会社から合資会社への種類変更などは、旧会社の業務期間・配当等の支払額を引き継ぎます。
    • 猶予対象株式を現物出資すると、譲渡として確定事由に当たると解されます。現物出資による持株会社化を検討する場合は、事前に慎重な確認が必要です。

    会社分割・組織変更はどこで取消しになるのか

    行為取消し・確定になる場合理由
    会社分割吸収分割承継会社等の株式等を配当財産とする剰余金の配当があった場合に限る分割により認定会社の株式価値が下がる引換えに承継会社株式を取得することになり、経済的には株式譲渡と同視できるため
    組織変更組織変更に際して認定会社の株式等以外の財産(金銭等)の交付があった場合に限る単なる組織変更は法人格の同一性が維持されるため取消事由にならない

    いずれも事業継続期間内は全額確定、5年経過後は交付された財産の価額に対応する部分のみの一部確定です。

    適用を受けた後に持株会社化することは可能です

    株式交換・株式移転による方法であれば、上記の要件をすべて満たして都道府県知事の確認を受けることで、納税猶予を継続したまま持株会社体制に移行できます。ただし持株会社が形式的に資産保有型会社に該当してしまうと事業実態要件で救済できないため、事業子会社が資産保有型子会社・資産運用型子会社に該当しないことを担保する設計が前提になります。

    また税務上も、確定事由から適格合併・適格交換等は除外されています(適格合併で存続会社株式以外の金銭等の交付を受けた場合はその部分のみ一部確定)。円滑化法上の確認と税務上の適格性は別々に検討が必要です。

    持株会社化の効果と副作用(株価の観点)

    効果

    • 株式交換・株式移転により、その後の子会社株価の上昇額のうち38%(評価差額に対する法人税額等相当額)が持株会社の株価上昇を抑制する
    • グループ全体の意思決定を後継者に集約できる
    • 事業ごとの分社化により、承継しやすい単位に分けられる

    副作用

    • 持株会社が株式等保有特定会社(子会社株式が総資産の50%以上)に該当すると、類似業種比準方式が使えなくなる
    • 持株会社が資産保有型会社に該当すると、事業承継税制そのものが使えない
    • 設立3年未満は事業実態要件による救済が効かない
    • 資産構成の操作は通達189柱書なお書き・相続税法64条4項の射程に入る
    • 借入で株式を買い取る場合、返済原資は配当となり子会社の利益に依存する

    44親族外承継・MBO・従業員承継

    ひとことで言うと特例措置は親族外の後継者にも使えます。ただし対象は贈与と相続だけで、買取り(MBO)は対象外です。そして相続時精算課税を使うと、後継者は他人でありながら先代の相続に巻き込まれます

    議決権要件は親族外でも満たせる

    同族過半要件は「後継者とその同族関係者」で判定するため、親族外の後継者でも自分自身の保有分で満たすことができます。

    ケース判定
    先代が100%保有し、その全部を第三者である後継者に贈与後継者は100%保有となり同族過半要件を満たす
    先代の100%を長男70%・第三者30%に贈与第三者(30%)は同族過半要件を満たさない(長男は第三者の同族関係者ではないため)
    実務でつまずく点 ― 「同族関係者」に使用人が含まれる

    経営承継円滑化法施行規則上の同族関係者には、①親族 ②事実婚の配偶者 ③使用人 ④代表者から受ける金銭等で生計を維持する者 ⑤②〜④と生計を一にする親族 ⑥これらが議決権の過半数を有する会社等が含まれます。

    代表者の使用人(従業員)が同族関係者に含まれるという点は、従業員承継の設計で必ず効いてきます。従業員持株会や複数の従業員に株式を分散させると、議決権の判定が想定と変わることがあります。

    買取り(MBO)は事業承継税制の対象外

    株式は「贈与により取得していること」が要件です

    中小企業庁の申請マニュアルは明記しています。売買で取得した場合には要件を満たしません。また、後継者が法人からの贈与により株式を取得した場合、後継者には所得税が課され贈与税は課されないため、これも要件を満たしません。

    したがって、役員・従業員が株式を買い取る形のMBOでは事業承継税制は使えません。この場合は、経営承継円滑化法の金融支援措置(中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法の特例。後継者個人も対象)や、事業承継・M&A補助金の活用が別線になります。

    相続時精算課税は親族外でも使えるが、副作用がある

    項目内容
    適用できる条件①受贈者がその年1月1日に18歳以上 ②贈与者が同日に60歳以上贈与税の納税猶予の特例措置の適用を受けること。一般措置にこの特例はありません
    注意①その株式取得の時よりに同じ贈与者から贈与を受けた財産には、精算課税は適用されません
    注意②猶予税額の全部について期限確定・免除があった後も、その贈与者からの贈与財産には引き続き精算課税が適用されます
    注意③相続時精算課税適用者は、特定贈与者の死亡時に精算課税適用財産を相続税の課税価格に加算します。相続人以外の者は「遺贈により取得したものとみなされる」ため、相続財産を一切取得していなくても相続税の申告義務が生じ得ます
    注意④被相続人の一親等の血族および配偶者以外の者は、相続税額の2割加算の対象です
    後継者本人への説明が欠かせません

    従業員承継・親族外承継で相続時精算課税を使う場合、後継者は他人でありながら先代の相続に巻き込まれます。先代が亡くなったときに、遺産を一切もらっていないのに相続税の申告義務が生じ、しかも2割加算の対象になる。この構造を後継者本人が理解しないまま制度を選ぶと、10年後・20年後に深刻なトラブルになります。

    暦年課税を選べばこの問題は生じませんが、今度は猶予が取り消されたときの税率が最高55%になります。どちらを選ぶかは、税額の大小だけでなく、後継者の立場と将来の関係性を含めて決めるべき論点です。

    経営者保証の解除

    事業承継で見落とされがちなのが個人保証です。「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(令和2年4月1日適用、令和5年4月改定)は、次の考え方を示しています。

    論点内容
    原則前経営者・後継者の双方から二重には保証を求めない。例外的に必要な場合は、理由や保証が提供されない場合の融資条件を双方に十分説明し理解を得る
    二重徴求の定義同一の金融債権に対して前経営者と後継者の双方から保証を徴求している場合。交代前の既存債権は前経営者、交代後の新規債権は後継者からのみ、という形は二重徴求に該当しません
    拡大解釈の禁止単に単独代表から複数代表になったことや、代表権は後継者に移転したものの株式の大半は前経営者が保有していることのみで二重徴求を判断することのないよう留意する、と明記されています
    前経営者との保証前経営者は実質的な経営権・支配権を保有する特別の事情がない限りいわゆる第三者に該当する可能性があり、改正民法の第三者保証制限を踏まえ保証解除に向けて適切に見直すこととされています
    使える制度停止条件付・解除条件付保証契約、事業承継特別保証制度(3年以内に事業承継を予定する具体的計画があり資産超過等の財務要件を満たす中小企業が対象)、日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金」
    事業承継税制と経営者保証は、実は緊張関係にあります

    事業承継税制では、先代が代表権のない役員として残り、役員報酬を受け取ることは可能です(第8章)。しかし経営者保証の観点では、前経営者が「実質的な経営権・支配権」を保有しているかどうかが判断材料になります。「税制上は残ってよい」ことと「保証を外せる」ことは別の話です。金融機関との交渉は、承継の設計と同時並行で進めてください。

    45質疑応答事例で押さえる35の論点

    ひとことで言うと国税庁は令和7年7月7日、5年ぶりに全面改訂した約100問の質疑応答事例集を公表しました。ここには、条文とマニュアルだけでは読み取れない実務の分岐が詰まっています。そのうち特に重要な35項目を整理します。
    質疑応答事例集も期限の記載は古いままです

    国税庁の質疑応答事例集(資産課税課情報第9号、令和7年7月7日)は「令和7年4月1日現在の法令」に基づいており、特例承継計画の提出期限を「令和8年3月31日」と記載しています。期限については中小企業庁の令和8年6月改訂版マニュアル(令和9年9月30日)が最新です。以下では期限以外の実務論点を扱います。

    特例承継計画は、贈与や相続の前に出していないとダメですか。
    いいえ。相続開始後・贈与後でも、円滑化法の認定申請時までに提出すれば足ります。円滑化省令は「相続開始前に提出すること」までは要件としていません。ただし提出期間(令和9年9月30日まで)内であることが前提です。質疑応答事例集 問1-3・問1-4
    特例承継計画に書かなかった人を後継者にできますか。
    そのままではできません。計画に記載された特例後継者でなければ認定を受けられないためです。ただし確認後でも変更・追加は可能で、様式24の変更届を提出し、改めて認定支援機関の指導・助言を受けます。決定的な限界は「その特例後継者が特例措置の適用を受けた後は変更できない」点です。円滑化法施行規則6条1項11号/申請マニュアル第2章第1節
    議決権制限株式や無議決権株式も納税猶予の対象になりますか。
    なりません。条文が「議決権に制限のないものに限る」と規定しています。ここでいう議決権に制限のある株式には、自己株式、定款で議決権を制限された株主の株式、議決権制限株式、単元未満株式、相互保有株式が含まれます。定款変更で議決権制限を外してから贈与すれば対象になります質疑応答事例集 問2-16
    では、同族で過半数という要件の判定でも、議決権制限株式は除くのですか。
    いいえ、ここは逆です。同族過半要件・同族筆頭要件・特別関係者の判定では、一部制限株式も判定対象に含めます。「猶予対象になるか」と「議決権要件の判定に入るか」は別のルールです。質疑応答事例集 問2-6、措置法通達70の7-12ほか
    会社が自己株式を持っている場合、3分の2の分母はどうなりますか。
    会社法により自己株式に議決権はないため、発行済株式等の総数から自己株式を除外して判定します。発行済1,000株のうち自己株式200株なら分母は800株。先代600株・後継者0株の場合、800×2/3=533.3…→534株以上の贈与が必要です。質疑応答事例集 問3-6
    3分の2の端数はどう処理しますか。
    切り上げです。発行済株式総数が100株なら3分の2は66株ではなく67株。先代が100株全部を持っている場合、66株の贈与では要件を満たしません。申請マニュアル第2章第1節
    同族筆頭要件は、会社全体の筆頭株主である必要がありますか。
    不要です。贈与者本人とその特別関係者の中で最多であればよく、後継者となる者は判定から除外されます。したがって、同族関係者以外の第三者が最も多くの議決権を持っていても構いません。質疑応答事例集 問2-7
    同じ会社の株式を、何年かに分けて贈与できますか。
    原則としてできません。贈与者は「既にこの規定の適用に係る贈与をしているもの」から除かれるため、一括贈与が原則です。例外は特例措置で後継者が2人・3人ある場合に同一年中に各後継者へ贈与するときだけ。同じ会社・別の者へ「異なる年」に贈与することもできません質疑応答事例集 問2-4
    受贈者がすでに3分の2以上持っている場合は、何株贈与すればよいですか。
    計算式がマイナスになりますが、この場合は1株以上の贈与で要件を満たします(特例措置)。質疑応答事例集 問3-2
    一般措置で必要株数を超えて贈与したら、超過分はどうなりますか。
    一般措置では超過分は納税猶予の対象になりません(上限が3分の2のため)。特例措置では超過分も全て猶予対象になります。質疑応答事例集 問3-1・問3-2
    一般措置の「役員3年以上」は、通算でよいですか。
    いけません。贈与の日の直近3年間の連続性が必要です。実際に、通算4年超の役員歴があっても直近3年に空白があるため一般措置を使えなかった事例が示されています。なお「役員」には取締役・会計参与・監査役が含まれ、直近3年のうち1年が監査役、2年が取締役でも要件を満たします質疑応答事例集 問2-9
    先代は代表権を「一部だけ」残せますか。共同代表ではどうですか。
    できません。贈与の時に「代表者(代表権に一部制限がある者も含む)」を退任している必要があります。中小企業庁は代表権の制限の例として「複数の代表者が共同して会社を代表すべき旨」「代表者は手形を振り出してはならない旨」を挙げています。共同代表は制限された代表権にあたります。申請マニュアル第2章第1節
    会社が持分会社から株式会社に組織変更している場合、代表権を有していた期間はどう見ますか。
    組織変更の前後を通じて会社は同一人格ですから、組織変更前に代表権を有していた期間も算入されます。質疑応答事例集 問2-5
    後継者が複数の場合、議決権の判定に子会社経由の間接保有は含められますか。
    含められません。直接保有のみで判定します。長女が直接10%、長女が100%出資する関係会社が20%を持っていても、判定は10%で行うため、配偶者が20%持っていれば要件を満たしません。質疑応答事例集 問2-8
    黄金株は、後継者3人のうち1人だけが持っていればよいですか。
    特例措置ではそれで足ります。ただし致命的な落とし穴があります。特例承継計画に記載された特例後継者であっても、まだ株式の贈与・相続を受けていない者は「経営承継受贈者」に当たらないため、その者が黄金株を保有していると株式を受けた他の後継者の認定まで通りません質疑応答事例集 問2-15/申請マニュアル第2章第1節
    従業員用の社宅は特定資産になりますか。
    従業員用社宅は「自己使用」で特定資産に当たりません。役員用住宅は「第三者に賃貸」として特定資産に当たります。またゴルフ会員権・リゾート会員権は接待用でも特定資産、保険積立金も原則として特定資産、代表者・同族関係者に対する貸付金・未収金・預け金・差入保証金も特定資産です。申請マニュアル第7章
    建物に自己使用部分とそれ以外がある場合はどうしますか。
    床面積割合その他合理的と認められる割合であん分します。円滑化省令にあん分方法の定めがないためです。質疑応答事例集 問2-13
    資産保有型会社に該当したら、必ず猶予が打ち切られますか。
    そうとは限りません。条文は「資産保有型会社又は資産運用型会社のうち政令で定めるものに該当することとなった場合」と規定しており、その会社自身が「該当日に商品販売等を行い、親族外従業員5人以上、その従業員の勤務する事務所等を所有・賃借」の要件をすべて満たす会社であれば確定事由になりません。質疑応答事例集 問7-9
    総収入金額がゼロかどうかは、どう判定しますか。
    認定要件・取消事由の判定では、営業外収益と特別利益を除いた額(主たる事業活動から生ずる収入)で判定します。売上ゼロで受取利息だけの会社は要件を満たしません。申請マニュアル第7章・第4章
    代表権に「制限が加えられた」だけでも取消しになりますか。
    なります。条文上「代表権」から「制限が加えられた代表権」が除かれているため、①制限のない代表権を有しないこととなった場合と②制限が加えられた場合の双方が「代表権を有しないこととなった場合」に当たります。質疑応答事例集 問7-3
    「やむを得ない理由」は、手帳の交付を受けていないと使えませんか。
    使える場合があります。手帳の交付をまだ受けていなくても、交付申請を行い、添付した医師の診断書で障害の程度が2級とされていれば、「これらに類すると認められること」に該当し、猶予は継続します。質疑応答事例集 問7-4
    複数の人から株式を承継した場合、それぞれ5年間の事業継続が必要ですか。
    不要です。特例経営承継期間の末日は「最初」の申告期限の翌日から5年を経過する日に統一されます。1年目に父から、4年目に叔父から贈与を受けた場合、叔父分の期間は実質2年間です。質疑応答事例集 問7-2
    上場申請をしたら取消しになりますか。
    期間内に認定承継会社自身が上場申請をすると取消しになりますが、特定特別子会社の上場申請は確定事由に当たりません。また5年経過後は、会社自身の上場申請も確定事由になりません質疑応答事例集 問7-10
    継続届出書を出し忘れたら、絶対に打ち切られますか。
    宥恕規定があります。税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において、提出できなかった事情の詳細等を記載した継続届出書が提出されたときは、期限内提出とみなされます。ただし免除の「申請書」(破産等免除・差額免除・追加免除・再計算免除)には宥恕規定がありません。この差は極めて重要です。措置法70条の7第11項・第26項ほか
    担保として株式を出すと、株価が下がったら追加担保を求められますか。
    求められません。対象非上場株式等の全部を担保提供すると「みなす充足」が適用され、必要担保額に見合う担保提供があったものとみなされます。譲渡制限付きの株式でも担保として認められます。国税庁「担保の提供に関するQ&A」
    株券不発行会社の場合、担保提供の手続はどうなりますか。
    税務署長が質権を設定することを承諾した旨の書類(様式306)と納税者の印鑑証明書を提出し、質権設定後に株主名簿記載事項証明書と代表取締役の印鑑証明書を提出します。株券発行会社なら法務局への供託です。担保関係書類は申告期限までに提出が必要で、間に合わない場合は「速やかに担保関係書類の提出を行う旨の確約書」を提出します。国税庁「担保の提供に関するQ&A」
    贈与者が複数いる場合、免除はどう計算されますか。
    贈与者ごとに納税猶予分の贈与税額が算出され、死亡した贈与者が贈与した株式に対応する部分だけが免除されます。甲から4,000万円・乙から1,000万円の贈与(贈与税2,049.5万円)で甲が死亡した場合、2,049.5×4,000/5,000=1,639.6万円が免除されます。質疑応答事例集 問8-2
    免除対象贈与を5年以内に行えるのはどんな場合ですか。
    期間内に後継者にやむを得ない理由(障害等)が生じて代表権を有しないこととなった場合に限り、その日以後に免除対象贈与ができ、認定も取り消されません。同族過半要件・同族筆頭要件・株式譲渡の各確定事由も、この場合は適用除外です。質疑応答事例集 問8-1
    差額免除の「2年後の追加免除」で、雇用はどう判定しますか。
    「者」としての継続が必要です。譲渡等の直前の常時使用従業員のうち、2年経過日まで引き続き常時使用従業員である者の数が、直前の従業員総数の2分の1以上であることが要件。直前20人の場合、2年後に25人いても継続者が8人しかいなければ要件を満たしません。単なる人数の確保では足りない点が、一般措置の雇用確保要件と決定的に違います。質疑応答事例集 問8-16
    役員を退任した後に病気になった場合、事業継続困難事由になりますか。
    なりません。心身の故障の事由が使えるのは、該当することとなった時に会社の役員または業務執行社員であった者に限られます。5年経過後に役員を退任してから入院しても対象外です。質疑応答事例集 問8-15
    一般措置で3分の2を贈与済みです。残りの3分の1を特例措置で承継できますか。
    できません(贈与・相続いずれも)。同じ後継者に渡す場合、その後継者は既に一般措置の適用を受けているため特例措置の要件を満たしません。別の子に渡す場合も、先代が同族筆頭要件を満たさないため不可です。この「残り3分の1問題」は事業承継税制の代表的な落とし穴です。質疑応答事例集 問6-3・問6-4
    切替確認を受けなかったらどうなりますか。
    みなし相続取得した株式について相続税の納税猶予の特例措置を受けられません。さらに、認定の有効期限までに贈与者の相続が開始し、その相続税の申告期限までに切替確認を受けていないと認定が取り消されます。なお、贈与者の相続が認定の有効期間後に発生した場合は、会社が上場していても切替確認を受けられます申請マニュアル第6章
    贈与者死亡後の相続税の納税猶予には、適用期限がありますか。
    ありません。措置法70条の7の8には「令和9年12月31日まで」という規定がなく、2030年でも2040年でも切替確認を経て特例措置が適用されます。特例承継計画の再提出も不要です。早めに贈与しておくことの、もう一つの大きな意味がここにあります。質疑応答事例集 問5-7/申請マニュアル第6章
    代償分割をした場合、代償金はどの財産から控除しますか。
    原則はそれぞれの相続財産の価額の割合であん分しますが、代償財産の価額を納税猶予の適用を受けない財産から優先的に控除し、残額を株式の価額から控除して差し支えないとされています。土地2,000万円と株式1億2,000万円を取得し代償金7,000万円を支払う場合、まず土地2,000万円から控除し、残る5,000万円を株式から控除できます。質疑応答事例集 問4-7
    遺留分侵害額請求を受けたら、納税猶予の対象株数は減りますか。
    減りません。改正民法により遺留分権の行使は金銭債権を生じさせるだけで、遺贈が無効になることはないためです。ただし猶予税額の計算では、株式の価額から「遺留分侵害額に相当する価額」を控除します。質疑応答事例集 問4-8

    46実務でつまずく留意点50

    ひとことで言うとこの章は総まとめです。検討段階・実行段階・維持段階・出口段階の4つに分けて、実務で実際に問題になる論点を並べました。赤色の項目は、間違えると納税猶予が全額打ち切られるものです。

    検討段階(贈与・相続の前)

    1. 特例承継計画を出していない。令和9年9月30日を過ぎると特例措置は永久に使えません。計画を出しても使う義務は生じないので、迷っている段階でも提出しておくのが合理的です。相続開始前に確認を受けていれば、後継者が相続開始の直前に役員でなくても相続時の役員要件を満たせます。
    2. 「令和9年12月31日」から逆算していない。計画の期限だけを見て動くと、株価算定・株主整理・登記の時間が足りません。実質的な着手期限は令和9年の春先です。
    3. 資産保有型会社の判定をしていない。特定資産(現預金・有価証券・保険積立金・役員貸付金・自己使用でない不動産・ゴルフ会員権)が総資産の70%以上なら原則として使えません。直近3期の決算書で必ず計算してください。
    4. 事業実態要件の従業員5人を、生計一親族を含めて数えている。後継者と生計を一にする親族は人数に含められません。家族経営の会社はここで落ちます。
    5. 設立3年未満の持株会社で使おうとしている。事業実態要件の「3年以上の商品販売等」を満たせず、資産保有型会社に該当したときの逃げ道がありません。旧会社の業務期間は通算されません。
    6. 同族関係者の議決権が過半数に届いていない。株式が親族外に分散している場合、自己株式の取得や相対での買い集めが先です。時間と資金がかかるため、逆算のいちばん外側に置いてください。
    7. 黄金株を後継者以外が持っている。特例承継計画に名前があるだけで、まだ株式を受けていない者が黄金株を持っていると、他の後継者の認定まで通りません。
    8. 医療法人・士業法人で使えると思っている。医療法人・社会福祉法人・外国会社・士業法人は中小企業者に該当せず対象外です。
    9. 「パチンコ店だから使えない」と誤解している。除外されるのは風営法第2条第5項の性風俗関連特殊営業のみ。バー・パチンコ店・ゲームセンターは対象になります。
    10. 後継者本人が制度の縛りを理解していない。猶予は免除ではありません。後継者が「自分は数千万円の潜在債務を抱えた」と自覚しないまま制度が始まると、10年後に必ず問題になります。
    11. 将来のM&Aの可能性を検討していない。5年以内の譲渡は全額打切り。業績好調のまま高値で売る場合は経営環境変化の減免も使えません。売却の意思があるなら、素直に納税して身軽にしておく方が選択肢は広く保てます。
    12. 他の相続人の遺留分を検討していない。遺留分侵害額請求を受けて株式を売却すると猶予が打ち切られます。民法特例(除外合意・固定合意)、遺言、生命保険による代償金の準備を先に済ませてください。
    13. 株価対策と贈与時期の関係を逆算していない。役員退職金は、支給した事業年度が「直前期」になるまで類似業種比準価額に反映されません。決算期と決議時期から逆算が必要です。
    14. 大会社なのに死亡退職金で株価が下がると思っている。類似業種比準価額100%で評価される会社では、死亡退職金を出しても株価はほぼ動きません。
    15. 「一般措置で3分の2を贈与済み」の状態から特例措置に乗り換えようとしている。残り3分の1を特例措置で承継することはできません。別の子に渡す場合も先代が同族筆頭要件を満たせず不可です。

    実行段階(贈与・相続から申告まで)

    1. 贈与株数の3分の2を切り捨てている。端数は切り上げです。100株なら67株。66株では要件を満たしません。
    2. 自己株式を分母に入れて3分の2を計算している。自己株式に議決権はないため、発行済株式総数から除外して判定します。
    3. 先代が共同代表として残っている。共同代表は「制限された代表権」に当たり、退任していないものとして扱われます。代表権のない役員として残るのは可能です。
    4. 相続で5か月以内に代表者に就任していない。相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において代表者である必要があります。登記も含めて動いてください。
    5. 相続の認定申請期限を10か月と勘違いしている。認定申請は5か月経過後から8か月以内。実質的な申請可能期間は約3か月です。しかもその時点で遺産分割が完了している必要があります。
    6. 年末に贈与して認定申請の期間が足りなくなる。贈与認定申請基準日は贈与年の10月15日。年末贈与だと申請できる期間が2週間ほどしか残りません。
    7. 相続時精算課税を選んだ結果、贈与税額がゼロになった。「贈与税を納付することが見込まれること」という認定要件を満たせなくなります。株式評価額が2,610万円以下の会社では特に注意。暦年課税なら猶予税額が算出される場合は暦年課税で適用できます。
    8. 親族外後継者に精算課税を使うリスクを説明していない。相続人以外の者は「遺贈により取得したものとみなされる」ため、遺産を一切もらっていなくても相続税の申告義務が生じ、2割加算の対象にもなります。
    9. 議決権制限株式を贈与している。納税猶予の対象になりません。定款変更で制限を外してから贈与してください。
    10. 同じ会社の株式を複数年に分けて贈与しようとしている。原則として一括贈与です。例外は特例措置で後継者が複数の場合に「同一年中」に贈与するときだけ。
    11. 担保関係書類が申告期限に間に合わない。株券発行や供託に時間がかかります。間に合わない場合は「速やかに担保関係書類の提出を行う旨の確約書」を提出したうえで、事前に所轄税務署へ相談してください。
    12. 認定申請時に遺産分割が終わっていない。対象株式について遺産分割が完了していないと認定申請できません。遺言書の準備が実質的な必須条件です。

    維持段階(申告後5年間と、その後)

    1. 年次報告書と継続届出書の期限を同じだと思っている。都道府県は報告基準日の翌日から3か月以内、税務署は5か月以内。別々です。
    2. 6年目以降の3年に1回の継続届出を忘れる。頻度が下がるので、かえって忘れやすくなります。出し忘れは5年経過後でも全額納付です。
    3. 報告基準日を決算期や贈与日から数えている。起点は「最初の申告期限の翌日から1年を経過するごとの日」です。申告期限を延長した場合は、延長後の申告期限にもとづく報告基準日で作り直す必要があります。
    4. 資産保有型会社の判定を毎期していない。猶予期間中も継続判定されます。社宅を役員用に転用した、保険積立金が増えた、役員貸付金が膨らんだ ― これだけで70%を超えることがあります。5年経過後も全額納付の取消事由のままです。
    5. 総収入金額がゼロになった。営業外収益と特別利益を除いて判定します。休眠状態にすると全額納付です。
    6. 雇用8割を下回ったのに報告していない。下回ること自体は取消事由ではありません。報告しないことが取消事由です。期限は特例経営承継期間の末日の翌日から4か月以内。
    7. 後継者が代表を退任した。事業継続期間中は全額打切り。ただし精神障害者保健福祉手帳1級・身体障害者手帳1級または2級・要介護5に該当すれば「やむを得ない理由」となり、手帳未交付でも医師の診断書で2級相当とされていれば救済され得ます。退任前に必ず確認を。
    8. 欠損填補以外の目的で減資した。資本金・準備金の減少は全額納付の取消事由です。減少額の全額を準備金(資本金)とする場合と欠損填補目的の場合だけが除かれます。
    9. 先代が再び代表者に就任した。贈与の場合、事業継続期間中は取消事由です。後継者の体調不良で先代が復帰するケースが実際にあります。
    10. 従業員持株会に株式を売却した。譲渡は5年以内なら1株でも全額打切り、5年経過後も対応部分は納付です。
    11. 会社分割で承継会社株式を配当した。会社分割そのものは取消事由ではありませんが、承継会社株式を配当財産とする剰余金の配当があった場合は取消事由です。
    12. 合併・株式交換の前に都道府県知事の確認を検討していない。確認を受ければ認定を承継できます。受けなければ取消しです。適格性の判定(税務)とは別に、円滑化法上の確認が必要です。
    13. 贈与者が亡くなったのに切替確認をしていない。相続開始後8か月以内。相続税の申告期限(10か月)より短いので、真っ先に着手すべき手続きです。
    14. 年次報告書の8項目を確認せずに提出している。代表者・従業員数・株主と議決権・上場や風俗営業への非該当・資産保有型・資産運用型・総収入金額・特定特別子会社。この8項目が取消事由のチェックリストそのものです。

    出口段階(免除・減免・M&A)

    1. 免除の「申請書」には宥恕規定がない。継続届出書には「やむを得ない事情」による宥恕がありますが、破産等免除・差額免除・追加免除・再計算免除の各申請書にはありません。2か月の期限を過ぎたら免除は受けられません。
    2. 5年以内にM&Aの話を進めてしまう。期間内の譲渡は一部でも全額確定。差額免除・破産等免除はいずれも5年経過後の措置です。
    3. 事業継続困難事由の判定期間を「過去3年」と思っている。条文は原則として直前事業年度+その直前3事業年度の計4事業年度のうち2以上です(6か月経過日後は計3事業年度)。
    4. 「業績好調なのに減免が使える」と思っている。経営環境変化の減免は、赤字・売上減・有利子負債過大・業種平均株価の下落・後継者の心身の故障のいずれかが必要です。高値で売れる会社は対象外です。
    5. 差額免除の「2年後の追加免除」で人数さえ確保すればよいと思っている。「者」としての継続が必要です。譲渡直前の従業員のうち2年経過日まで在籍している者が半数以上でなければなりません。
    6. 破産等免除で一部の株式だけ譲渡している。同族関係者以外の1人の者に対して、議決権制限株式を含む全株式を譲渡する必要があります。
    7. 免除対象贈与を5年以内にできると思っている。原則は5年経過後。例外は後継者にやむを得ない理由が生じて代表権を有しないこととなった場合だけです。
    8. 贈与者死亡後の相続税の納税猶予にも期限があると思っている。措置法70条の7の8には適用期限がありません。切替確認を経れば、2030年でも2040年でも特例措置が適用されます。
    9. 5年経てば自由になると思っている。解散・資産保有型会社該当・総収入金額ゼロ・減資・報告書の未提出は5年経過後も全額納付のままです。制度は実質的に終身です。
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    事業承継税制の事故は、制度を知らないから起きるのではなく、「5年目・10年目に誰も見ていなかった」から起きます。適用を始めたら、報告基準日をカレンダーに登録し、毎期の決算で資産保有型会社の判定を行い、大きな意思決定(減資・組織再編・株式譲渡・代表交代)の前には必ず確認する。この運用を仕組みとして作ることが、制度を使う側の責任です。

    よくある質問 24問

    Q1. 特例承継計画は、いつまでに出せばよいですか。

    令和9年9月30日までです。令和8年度税制改正で、従来の令和8年3月31日から1年6か月延長されました。個人版の個人事業承継計画は令和10年9月30日までです。なお国税庁のタックスアンサーやパンフレットは2026年7月時点で旧期限のままなので、中小企業庁の記載で確認してください。

    Q2. 計画の期限が延びたので、贈与も遅らせて大丈夫ですか。

    いいえ。延長されたのは計画の提出期限だけで、贈与・相続の期限(法人版は令和9年12月31日、個人版は令和10年12月31日)は据え置きです。計画を令和9年9月末に出すと、贈与までの猶予は3か月しか残りません。株価算定・株主整理・登記を考えると、実質的な着手期限は令和9年の春先です。

    Q3. 計画を出したら、必ず贈与しなければなりませんか。

    いいえ。特例承継計画を提出しても、実際に贈与・相続をする義務はありません。使わないという選択も自由です。逆に、出していなければ将来の選択肢そのものが消えます。この非対称性があるため、迷っている段階でも提出しておくことをおすすめしています。

    Q4. 後継者を3年前に役員にしていません。もう間に合いませんか。

    特例措置なら間に合います。令和7年1月1日以後の贈与から、後継者の役員要件は「贈与の直前において役員であること」に緩和されました。従来の「3年以上」要件は廃止されています(一般措置は3年要件が残っています)。ただし相続の場合は別ルールで、相続開始の直前に役員であることが原則必要です。

    Q5. 先代は会社を完全に辞めなければなりませんか。

    いいえ。必要なのは代表権を返上することだけです。代表取締役を退任して取締役会長として残り、役員報酬を受け取り続けることは制度上まったく問題ありません。ただし、事業継続期間中に再び代表者に就任すると認定が取り消されます

    Q6. 猶予された税金は、いつ「消える」のですか。

    主に、①後継者が死亡したとき、②次の後継者へ制度を使って贈与したとき、③会社が破産・特別清算したとき、④先代(贈与者)が死亡したとき(贈与税の場合)です。つまり原則として後継者一代を通じて会社を保有し続けることが前提の制度です。

    Q7. 株を1株だけ売ったらどうなりますか。

    事業継続期間(5年)中であれば、1株でも譲渡すると認定が取り消され、猶予税額の全額と利子税を納付することになります。5年経過後は、譲渡した株数に対応する部分だけの納付で済みます。なお譲渡の順序は、まず制度の適用を受けていない株式から譲渡したものとみなす取扱いです。

    Q8. パチンコ店やバーを経営していますが、対象になりますか。

    なります。制度が除外しているのは風営法第2条第5項の性風俗関連特殊営業を営む会社に限られます。バー、パチンコ店、ゲームセンターは該当せず、他の要件を満たせば適用できます。誤解が非常に多い論点です。

    Q9. 現預金が多い会社ですが、使えますか。

    特定資産(現預金・有価証券・自己使用でない不動産・ゴルフ会員権・保険積立金・役員貸付金など)が総資産の70%以上を占めると資産保有型会社に該当し、原則として使えません。ただし、①従業員5人以上(後継者と生計を一にする親族を除く)②事務所等の所有または賃借 ③3年以上の商品販売等、の3つをすべて満たせば救済されます。

    Q10. 設立してまだ2年の会社です。使えますか。

    資産保有型会社に該当しなければ使えますが、該当してしまった場合の救済(事業実態要件)は「3年以上」の商品販売等が条件のため、設立3年未満では使えません。持株会社を新設して事業承継税制を適用しようとする設計で、しばしばここで行き詰まります。

    Q11. 後継者が複数いる場合、どう分ければよいですか。

    特例措置なら最大3人まで可能で、各人が総議決権の10%以上を持ち、かつ同族関係者のいずれの者の議決権をも下回らないことが必要です。ただし制度上できることと、実務上望ましいことは別です。将来の分散リスクを考えると、議決権は1人に集約し、他の子には別の財産で報いるのが基本形です。

    Q12. 親族外の役員に承継したいのですが、使えますか。

    使えます。特例措置は親族外の後継者も対象です。さらに、贈与者が贈与年1月1日に60歳以上であれば、受贈者が推定相続人・孫でなくても相続時精算課税を選択できるという拡張もあります。ただし議決権の要件(同族関係者と合わせて過半数など)は満たす必要があります。

    Q13. 相続時精算課税と暦年課税、どちらを選ぶべきですか。

    実務では相続時精算課税との併用がほぼ標準です。理由は、万一納税猶予が取り消されたときの税率が暦年課税なら最高55%、相続時精算課税なら一律20%と大きく違うためです。ただし特別控除2,500万円と基礎控除110万円の枠内に収まって贈与税額がゼロになると、「贈与税を納付することが見込まれる」という認定要件を満たせなくなる点に注意が必要です。

    Q14. 5年経てば、もう何をしても大丈夫ですか。

    いいえ。5年経過後も、解散・資産保有型会社への該当・総収入金額ゼロ・減資・報告書の未提出は全額納付の取消事由のままです。株式の譲渡や合併・株式交換は一部納付に軽くなりますが、義務が消えるわけではありません。継続届出書も3年に1回、提出し続ける必要があります。

    Q15. 報告書を出し忘れたら、猶予されていた税金はどうなりますか。

    年次報告書・継続届出書の未提出は、5年以内でも5年経過後でも全額納付の取消事由です。納付期限は継続届出書の提出期限の翌日から2か月を経過する日です。制度の運用でもっとも多いミスの一つなので、報告基準日のカレンダー管理を必ず行ってください。

    Q16. 猶予が取り消されたとき、利子税はいくらですか。

    本則は年3.6%ですが、利子税特例基準割合が7.3%未満の場合は「3.6%×利子税特例基準割合÷7.3%」に軽減されます。令和8年は利子税特例基準割合が年1.3%なので、年0.6%です(令和7年は0.4%)。なお、5年経過後に納付する場合は、最初の5年間分の利子税の割合が年0%になります。5年以内に打ち切られた場合はこの軽減がありません。

    Q17. 業績が悪化して会社を売ることになりました。全額払うのですか。

    特例措置であれば、経営環境変化に応じた減免があります。経常赤字・売上減少・有利子負債の過大・業種平均株価の下落・後継者の心身の故障等といった「事業の継続が困難な一定の事由」に該当し、同族関係者以外へ譲渡する場合には、譲渡対価にもとづいて税額を再計算し、差額が免除されます。一般措置にはこの措置はありません。

    Q18. 個人事業でも使えますか。

    使えます。個人版事業承継税制です。事業用の宅地400㎡・建物800㎡・機械などの減価償却資産にかかる贈与税・相続税が100%猶予されます。ただし不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業は対象外で、預貯金・売掛金・棚卸資産も対象になりません。

    Q19. 個人版と小規模宅地等の特例は、両方使えますか。

    特定事業用宅地等(80%減額)とは併用できません。どちらか一方の選択です。ただし自宅の特定居住用宅地等とは併用できます。特定同族会社事業用宅地等・貸付事業用宅地等については、それぞれ限度面積の調整計算が入ります。

    Q20. 個人版で法人成りしたら、猶予は打ち切られますか。

    いいえ。特定申告期限の翌日から5年を経過する日に、会社の設立に伴う現物出資によりすべての特例事業用資産を移転し、税務署長の承認を受けたときは、納税猶予が継続します。ただし適用後は「やむを得ない理由」による免除が使えなくなります。

    Q21. 相続が起きてから慌てて動いて間に合いますか。

    かなり厳しいです。後継者は相続開始の日の翌日から5か月以内に代表者に就く必要があり、認定申請は5か月経過後から8か月以内の約3か月間、相続税の申告は10か月以内。しかも認定申請時までに対象株式の遺産分割が完了している必要があります。遺言書がなく相続人間で争いがあると、まず間に合いません。

    Q22. 一般措置は特例措置が終わっても使えますか。

    使えます。一般措置は恒久措置で期限がありません。ただし対象は総株式数の3分の2まで、相続の猶予割合は80%なので、株式にかかる相続税のうち猶予されるのは半分以下にとどまることが多くなります(自社株3億円・他の財産5,000万円・相続人が配偶者と子2人のモデルケースで約46%)。さらに雇用8割維持が必須で、経営環境変化に応じた減免もありません。効果は特例措置の約半分と考えてください。

    Q23. この制度を使うと、会社を売れなくなるのですか。

    売れなくなるわけではありませんが、事業継続期間(5年)中の譲渡は全額打切り、5年経過後も譲渡分に対応する税額の納付が必要です。事業の継続が困難な事由に該当すれば減免がありますが、業績が好調なまま高値で売る場合には減免は使えません。将来のM&Aを視野に入れているなら、制度の採用そのものを慎重に検討すべきです。

    Q24. 顧問税理士が「使わないほうがいい」と言います。どう考えればよいですか。

    まっとうな助言である可能性が高いです。この制度は、税負担を軽くする代わりに会社の出口の自由度を長期にわたって制約します。株価がもともと低い、M&Aの可能性を残したい、資産保有型会社の判定が際どい、後継者が未定といった場合には、使わない判断のほうが合理的です。ただし、判断の根拠が「手続きが面倒だから」なのか「御社にとって不利益だから」なのかは、確認する価値があります。第34章に判断軸をまとめています。

    Q25. 自社株の評価額は、どうすれば下げられますか。

    本業の実態に根ざした方法としては、①先代への役員退職金の支給 ②不良債権・不良在庫の処理 ③含み損資産の第三者への売却 があります。とくに役員退職金は、事業承継税制の「代表退任」要件と同時に達成できるため相性がよい方法です。ただし効き方は評価方式によってまったく違います。類似業種比準価額は支給した事業年度が「直前期」になるまで反映されないため、大会社(類似業種比準価額100%)では死亡退職金を出しても株価はほぼ動きません。詳しくは第42章をご覧ください。

    Q26. 純資産価額の「法人税額等相当額」が変わったと聞きました。

    令和8年3月25日付の通達改正により、37%から38%に引き上げられました。防衛特別法人税の創設に伴うものです。適用は令和8年4月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した株式から。判定基準は株式を取得した日であって会社の事業年度ではないため、12月決算の会社で令和8年5月に相続が発生した場合、会社はまだ防衛特別法人税の適用前の事業年度中でも、株式の評価では38%を使います。あわせて評価明細書も「令和8年4月1日以降用」に全面改訂されています。

    Q27. 「株特外し」や持株会社化で株価を下げるのは、今も有効ですか。

    おすすめしていません。国税庁は令和8年7月3日の有識者会議に、現行の評価方法を濫用したスキーム8事例を図解付きで提示しました。会社規模の操作、無議決権株式による配当還元方式の濫用、グループ内の循環貸付、オペレーティングリース、株主構成の操作、貸付用不動産の3年超保有などです。同資料には「評価通達6項の適用ではなく評価通達改正による納税者の予測可能性の確保の必要性」と明記されており、通達本体での封じ込めが進む方向です。加えて、財産評価基本通達189の柱書には「株特外し」を封じる個別の否認規定があり、組織再編を伴う場合は相続税法64条4項の射程にも入ります。

    Q28. 持株会社をつくってから事業承継税制を使えますか。

    設立直後は難しいです。持株会社の資産はほぼ子会社株式なので資産保有型会社に該当しやすく、しかも設立3年未満の会社は事業実態要件(3年以上の商品販売等)を満たせないため救済されません。組織再編があった場合、旧会社の業務期間は通算されません。ただし、事業子会社が資産保有型子会社・資産運用型子会社に該当しなければ、その株式は特定資産から除外されるため、持株会社が資産保有型会社に該当しない余地はあります。すでに適用を受けた後に持株会社化することは、株式交換・株式移転で都道府県知事の確認を受ければ可能です(第43章)。

    Q29. 会社を合併したら、納税猶予は打ち切られますか。

    原則として認定は効力を失いますが、存続会社が一定の要件を満たすことにつき都道府県知事の確認を受ければ、認定を承継できます。要件は、①後継者が存続会社の代表者であること ②存続会社の株式等以外の財産が交付されていないこと ③後継者が同族で50%超かつ同族内最多 ④存続会社が上場会社等・風俗営業会社・資産保有型会社に該当しないこと など。株式交換・株式移転で完全子会社になる場合も同様の仕組みがあり、この場合は後継者が完全親会社と認定会社の双方の代表者である必要があります。円滑化法上の確認と税務上の適格性は別々に検討が必要です。

    Q30. 従業員に会社を継がせたいのですが、買い取らせる形でも使えますか。

    買取り(MBO)では使えません。事業承継税制は贈与と相続(遺贈・死因贈与を含む)だけが対象で、売買で取得した場合は要件を満たしません。また法人からの贈与も、後継者に所得税が課され贈与税が課されないため対象外です。買い取らせる場合は、経営承継円滑化法の金融支援措置(後継者個人も対象)や事業承継・M&A補助金の活用が別線になります。一方、贈与するのであれば親族外の従業員でも特例措置を使え、贈与者が60歳以上・受贈者が18歳以上であれば推定相続人でなくても相続時精算課税を選択できます。ただしその場合、後継者は先代の相続時に申告義務が生じ、2割加算の対象にもなる点を必ず事前に説明してください。

    用語集

    経営承継円滑化法正式名称は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」。事業承継税制の前提となる都道府県知事の認定、遺留分の民法特例、金融支援を定めています。
    特例承継計画法人版事業承継税制の特例措置を使うために、令和9年9月30日までに都道府県へ提出する計画書(様式21)。後継者名・承継予定時期・承継後5年間の事業計画を記載し、認定支援機関の指導助言を受けた旨を記載します。
    認定経営革新等支援機関専門知識や実務経験が一定水準以上の者として国が認定した公的な支援機関。税理士・公認会計士・弁護士・金融機関・商工会議所などが認定されています。
    事業継続期間
    (経営承継期間・経営贈与承継期間)
    最初に適用を受ける贈与税・相続税の申告期限の翌日から5年を経過する日までの期間。この間の取消事由は原則として全額納付です。
    報告基準日最初に適用を受ける申告期限の翌日から1年を経過するごとの日。ここを起点に、都道府県へ3か月以内、税務署へ5か月以内に報告します。
    資産保有型会社特定資産(現預金・有価証券・自己使用でない不動産等)と一定の配当・過大役員給与の合計が、総資産等の70%以上を占める会社。原則として制度の対象外です。
    資産運用型会社特定資産の運用収入が総収入金額の75%以上を占める会社。同じく原則として対象外です。
    事業実態要件資産保有型・資産運用型に該当しても救済される3条件。①従業員5人以上(後継者と生計一の親族を除く)②事務所等の所有・賃借 ③3年以上の商品販売等。
    特定特別子会社会社、代表者、代表者の同族関係者等が総株主等議決権数の過半数を有する会社。大会社・上場会社・性風俗関連特殊営業を営む会社に該当しないことが要件です。
    黄金株拒否権付種類株式のこと。後継者以外の者がこれを保有していると、事業承継税制の認定を受けられません。
    第一種・第二種先代経営者からの贈与・相続が第一種、先代経営者以外の株主からのものが第二種。第二種は第一種の後に行う必要があり、期限もあります。
    切替確認贈与税の納税猶予中に贈与者が死亡した場合、相続税の納税猶予へ移行するために都道府県知事から受ける確認。相続開始後8か月以内に申請します。
    免除対象贈与後継者がさらに次の後継者へ、納税猶予を使って株式を贈与すること。これにより自分の猶予税額が免除されます。
    特定事業用資産個人版事業承継税制の対象資産。宅地等400㎡・建物800㎡・それ以外の減価償却資産で、前年分の青色申告の貸借対照表に計上されているもの。
    利子税特例基準割合平均貸付割合に年0.5%を加算した割合。令和8年分は年1.3%で、事業承継税制の利子税は年0.6%となります。
    類似業種比準価額同業種の上場会社の株価を基準に、配当・利益・簿価純資産の3要素を比準して評価する方法。平成29年改正で3要素の比重が1:3:1から1:1:1になりました。斟酌率は大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5。
    純資産価額会社の資産を相続税評価額に置き換えて負債を控除し、含み益(評価差額)に対する法人税額等相当額を控除して算出する方法。法人税額等相当額の割合は令和8年4月1日以後の取得分から38%(それ以前は37%)。
    特定の評価会社比準要素数1の会社、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社等、開業前・休業中の会社、清算中の会社。原則として純資産価額で評価され、株価が跳ね上がる原因になります。
    総則6項財産評価基本通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる場合に、国税庁長官の指示を受けて評価するという規定。最高裁令和4年4月19日判決は「乖離があることのみでは適用できない」としつつ、税負担の著しい軽減と、それを知り期待して企画・実行したという主観面を重視しました。
    功績倍率法役員退職給与の適正額を「最終報酬月額×勤続年数×功績倍率」で算定する考え方。法人税基本通達9-2-27の3の注書きにある定義で、法令の算式ではありません。「社長は3.0倍まで」という数字も法令にはなく、昭和47年当時の上場企業調査に由来する目安です。
    みなす充足納税猶予の対象となる非上場株式等の全部を担保として提供した場合に、担保額が猶予税額と利子税に満たなくても担保の提供があったものとみなされる取扱い。株価が下落しても増担保を求められません。

    出典一覧

    本ページの数値・期限・要件は、次の一次情報にもとづいて作成しています(2026年7月26日確認)。

    1. 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」(特例承継計画の提出期限:令和9年9月30日)
    2. 中小企業庁「申請マニュアル 第1章 事業承継税制(特例措置)の概要」(令和8年6月改訂版・PDF)
    3. 同「第3章 都道府県知事への報告について」(PDF)
    4. 同「第4章 認定の取消について」(PDF)
    5. 同「第7章 用語・定義」(PDF)
    6. 中小企業庁「事業承継税制(一般措置)の前提となる認定」
    7. 中小企業庁「個人版事業承継税制の前提となる認定」
    8. 同「個人版事業承継税制の前提となる経営承継円滑化法の手続マニュアル」(令和8年6月改訂版・PDF)
    9. 国税庁「事業承継税制特集」
    10. 国税庁 タックスアンサー No.4148「事業承継税制(相続税)」
    11. 同 No.4439「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除」
    12. 同 No.4153「個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除」
    13. 同 No.4103「相続時精算課税の選択」
    14. 同 No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
    15. 財務省「令和8年度税制改正の大綱」二 資産課税
    16. 財務省「延滞税・利子税・還付加算金について」(PDF)
    17. 経済産業省「令和8年度 経済産業関係税制改正について」(PDF)
    18. 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)資料」(PDF)
    19. 事業承継・M&A補助金 公式サイト
    20. 国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例措置等に関する質疑応答事例について(情報)」(資産課税課情報第9号・令和7年7月7日・PDF)
    21. 中小企業庁「申請マニュアル 第5章 認定後の組織再編行為について」(PDF)
    22. 同「第6章 贈与者に相続が開始した場合」(PDF)
    23. 国税庁「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予(担保の提供に関するQ&A)」
    24. 国税庁「財産評価基本通達」(178〜189-7 株式及び出資/総則6項)
    25. 国税庁「『財産評価基本通達の一部改正について』通達等のあらましについて(情報)」(令和8年3月25日 課評2-28・法人税額等相当額37%→38%)
    26. 国税庁「類似業種比準方式の見直しについて」(平成29年改正・比重1:3:1→1:1:1・PDF)
    27. 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」(第1回〜第4回の議事要旨・資料)
    28. 同 第4回資料(令和8年7月3日・濫用スキーム8事例・PDF)
    29. 会計検査院「令和5年度決算検査報告」(取引相場のない株式の評価に関する検査結果)
    30. 最高裁判所第三小法廷 令和4年4月19日判決(令和2年(行ヒ)第283号・総則6項)
    31. 国税庁「法人税基本通達 第9章第2節第7款 退職給与」(9-2-27の3・9-2-28・9-2-32)
    32. 中小企業庁「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」
    33. 中小企業庁「事業承継等に係る不動産取得税の特例」

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    事業承継税制は、決算書と株主名簿を拝見すれば、使えるかどうかの大枠は短時間で判定できます。
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    本ページは、事業承継税制に関する一般的な情報提供を目的として、2026年7月26日時点の法令・通達・行政資料にもとづき作成しています。個別の事案に対する税務判断・法律判断を行うものではありません。

    掲載している数値・期限・要件は上記の出典で確認していますが、法令改正や通達の変更、運用の変更により内容が変わる可能性があります。とくに取引相場のない株式の評価方法については、国税庁の有識者会議で見直しが議論されており、今後変更される可能性があります

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    作成:ジェイスタート会計事務所(北海道札幌市/公認会計士・税理士)。本ページの作成にあたっては、原稿の構成・下書きの生成にAI(Claude)を利用し、掲載内容は当事務所が一次情報と照合して確認しています。