休眠会社の費用は、休眠中も続く法人住民税の均等割と毎年の申告、休眠前後の届出・登記、税理士に依頼する場合の報酬で構成されます。解散・清算より手続きは少ないものの、税務・法務上の義務が続くため、休眠しても費用がゼロになるわけではありません。
この記事の結論
休眠中も申告義務は続き、均等割がかかる場合は毎年の固定費になります。再開の見込みが低いなら、休眠を続ける累計の費用と、解散・清算の費用を比べて選びます。
- 休眠中も法人税などの申告は毎年必要で、2026年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税の申告も税額0で必要
- 均等割は事務所等の実態と自治体の取扱いで判断され、札幌市内の小規模な法人にかかる場合は年7万円
- 休眠前に、税務署・北海道・市町村への異動届や、給与・社会保険の廃止の手続きをする
- 税理士の報酬は、休眠前の決算の状況や休眠中の取引の有無で変わる(当事務所は顧問契約でご支援)
- 役員の任期が切れたまま変更登記をしないと、過料のリスクがある
休眠会社とは?解散・清算との違い
一般に「休眠会社」とは、法人登記上は存続しているものの、事業活動を停止している状態の会社を指します。解散・清算と異なり、将来の事業再開を想定して法人格を維持するケースが多く、この記事ではこの意味で使います。なお会社法にも「休眠会社」という用語があり、長期間登記がされていない株式会社を指します。この意味の休眠会社は、法務大臣の公告などの手続きを経て解散したものとみなされる(みなし解散)ことがあるため、役員の変更登記などを放置しないことが大切です。
| 項目 | 休眠 | 解散・清算 |
|---|---|---|
| 法人格 | 残る(いつでも再開できる) | 清算が終わると消滅し、清算結了の登記をする。再開には改めて設立手続きが必要 |
| 手続き | 税務署・北海道・市町村への異動届が中心で、休眠自体の登記はない | 解散・清算人の登記、債権者への公告、清算結了の登記など |
| 税務申告 | 毎年の申告が続く | 解散の事業年度と清算中の事業年度の申告をして終わる |
| 続く費用 | 均等割(かかる場合)、申告の手間、役員の変更登記 | 手続きの期間中の費用が中心で、終われば発生しない |
- 法人格は維持されるため、登記・税務申告の義務は続く
- 解散・清算した場合は清算結了で会社が消滅するため、再開には改めて設立手続きが必要になる
- 休眠の届出自体に法定の書式はなく、税務署・都道府県・市区町村へ「異動届」を出して休業を知らせるのが実務上の慣行
休眠中もかかり続ける費用は?
休眠状態でも、最低限の費用と申告が必要です。これを理解せずに休眠に入ると、後で延滞金や青色申告の取消しなどの不利益が生じるリスクがあります。
| 費用の種類 | 内容 |
|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 赤字でもかかる税金。休眠中にかかるかは、事務所等の実態と自治体の取扱いで判断される。札幌市内に本店がある資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の法人にかかる場合は、北海道2万円+札幌市5万円=年7万円 |
| 法人税・地方税の申告 | 所得がゼロでも申告義務がある(納める法人税・事業税は0円のことが多い)。2026年4月1日以後に開始する事業年度からは、防衛特別法人税も税額0で申告が必要(期限は法人税と同じ) |
| 消費税の申告 | 課税事業者に当たる期間は確認が必要。課税売上がなく納める税額もない課税期間は、申告を要しないとされている |
| 税理士への依頼費用 | 休眠中の申告は書類が簡素なことが多いが、休眠前の決算の状況や休眠中の取引の有無で作業量が変わる |
| 登記関係費用 | 役員の任期満了による変更登記や本店移転の登記には、登録免許税と、司法書士に依頼する場合はその報酬がかかる |
| 保有資産の税金など | 不動産・償却資産の固定資産税、車両の自動車税、口座や事務所の維持費は休眠中もかかる |
均等割の免除・減額の取扱いは自治体によって異なり、全自治体共通ではありません。主たる事務所の所在地の都道府県・市区町村について、休業の届出をした場合の取扱いを確認してください。資本金等や従業者数が大きい法人ほど均等割は高くなり、北海道の均等割は資本金等に応じて2万円から80万円までの段階があります。
休眠前に必要な手続きと費用は?
休眠状態に入る前に、税務署・都道府県・市区町村へ異動届出書を提出して休業を知らせるのが一般的です。書類自体の手数料は無料ですが、税理士に依頼する場合は別途費用が発生します。従業員や役員への給与の支払いをやめる場合は、給与や社会保険の手続きも必要です。
- 休眠か解散かを決める再開の見込み、休眠を続ける累計の費用、借入金や取引先との契約の状況を整理して判断します。
- 債権・債務と在庫を整理する売掛金の回収、買掛金の支払い、在庫や設備の処分を進め、休眠に入る事業年度の決算に反映します。
- 給与・社会保険の手続き給与の支払いをやめる場合は、税務署に給与支払事務所等の廃止の届出をし、健康保険・厚生年金は年金事務所で適用事業所の全喪の届出をします。
- 税務署・北海道・市町村への異動届税務署には異動届出書で休業の旨と時期を届け出ます。北海道(道税事務所)と市町村にも休業した旨を届け出ます(様式はそれぞれの案内で確認)。
- 消費税の届出を見直す簡易課税や課税事業者の選択、インボイスの登録の状況を確認します。登録をやめるなら、取消しの届出書を翌課税期間の初日から数えて15日前の日までに出します。
札幌市内の会社の場合
本店が市内にある会社が書面の異動届出書を郵送する場合、2026年7月10日からは送付先が札幌業務センター(中央区大通西10丁目の合同庁舎内、〒060-8510)に変わっています。e-Taxで提出するか、所轄の税務署の窓口に持参する方法もあります。届出書の税務署長の欄は、所轄の税務署のままにします。
役員の任期や本店の住所にも注意が必要です。役員の任期が満了したのに変更(重任)の登記を怠ると、過料(行政上の罰金)が科されることがあります。登記にかかる登録免許税は登記の種類で決まるため、事前に試算しておくと休眠のコストを把握しやすくなります。
無料ツール登記の種類別に登録免許税を計算する役員変更や本店移転、解散など、登記の種類を選んで登録免許税の目安を確認できます。計算する
税理士に依頼する費用はどう決まる?
休眠会社の申告・届出を税理士に依頼した場合の費用は、通常稼働している法人の申告より低くなることが多いものの、事務所によって料金体系が異なります。金額を比べる前に、次の要素で作業量がどう変わるかを確認しましょう。
| 費用が決まる要素 | 作業が増えやすいケース |
|---|---|
| 休眠に入る事業年度の決算 | 帳簿が整っていない、債権・債務や在庫の整理が終わっていない |
| 休眠中の取引の有無 | 預金利息、会費や口座の手数料、役員からの借入金の動きなどがある |
| 申告書の種類 | 法人税・地方税に加え、消費税の申告や、事業所のある自治体が複数ある |
| 届出書の数 | 給与・社会保険・消費税・インボイスなど、休眠前に出す届出が多い |
| 過去の申告の状況 | 申告していない年があり、期限後申告から始める必要がある |
| 再開時の支援 | 再開の届出、記帳と申告の再開、融資や許認可の準備を含めるか |
見積りを取るときは、休眠前の届出・休眠中の年次申告・再開時の手続きのどこまでが含まれるかをそろえて比べると、契約後のずれを防げます。当事務所では、決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしておらず、休眠前後の届出、休眠中の申告、再開の支援を継続的な顧問契約の中でご支援しています。料金とご契約の流れは料金・契約・業務フローでご確認いただけます。手続きの進め方と所要の流れは休眠会社の手続き:依頼から完了までの流れで紹介しています。
具体例|数年休眠を続けた場合の費用感
計算例:均等割がかかる会社が3年休眠した場合
例えば、札幌市内に本店がある資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の会社で、休眠中も均等割が課される前提とします。均等割だけで7万円×3年=21万円になり、これに毎年の申告にかかる費用、役員の変更登記の費用、口座や事務所の維持費が加わります。
単年で見ると小さな金額でも、休眠期間が長くなるほど累計の費用は積み上がっていきます。将来的に事業を再開する見込みが低い場合は、休眠を続けるコストと、解散・清算の手続き費用(登記、債権者への公告、清算中の申告など)を比較したうえで、どちらが総合的に負担が軽いかを検討することをおすすめします。
一方で、休眠前の事業年度に赤字(欠損金)がある会社は、休眠を選ぶ価値が生まれることがあります。欠損金は、生じた事業年度に青色申告書を提出し、その後も毎期続けて確定申告書を出していれば、再開後の黒字と相殺できます。繰越期間は10年(2018年4月1日以後に開始した事業年度に生じたもの)で、休眠中も期間は進む点に注意が必要です。
見落としやすいポイントは?
| ポイント | 起こりやすいこと | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 申告を止めてしまう | 期限内の申告を続けて怠ると、青色申告の承認が取り消され、欠損金の繰越しも使えなくなるおそれがある | 取引がなくても毎年、期限内に申告する |
| 消費税の申告義務 | 休眠前の課税期間の売上や届出の状況によっては、課税事業者の期間が続く | 休眠に入る前に、基準期間の課税売上高と届出の状況を確認する |
| 銀行口座の維持 | 取引のない期間が長くなると、金融機関によっては口座の休眠扱いや手数料が発生する | 事業用口座を残すか、まとめるかを休眠前に決める |
| 許認可の有効期限 | 建設業許可など更新が必要な許認可が、休眠中に失効する | 更新時期を確認し、維持するかどうかを判断する |
| 役員の任期 | 任期切れのまま放置し、過料や、長期間登記がない場合のみなし解散の対象になる | 任期の満了時期を一覧にし、重任の登記を忘れない |
| 再開時の手続き漏れ | 休眠開始時とは逆の手続き(異動届・給与・社会保険など)が漏れる | 再開の見込み時期を念頭に、必要な届出を一覧にしておく |
申告を怠って均等割などに納付の遅れがあると、延滞金がかかります。法人税などで納める税額が出る年に無申告になると、無申告加算税(原則15%、50万円超の部分は20%)や延滞税の対象にもなります。
無料ツール延滞税・加算税を概算する申告や納付が遅れた場合に、本税に加えてかかる延滞税と加算税の目安を計算できます。計算する
実務ワンポイント|休眠前に相談しておきたいこと
休眠にするかどうかを迷っている段階でも、税理士に現状の財務状況や今後の見通しを伝えて相談すると、休眠と解散・清算のどちらが適しているかを整理しやすくなります。判断を先延ばしにするほど、任期切れの登記漏れなど別の問題が重なりやすくなるため、早めの相談が安心につながります。
- 直近の決算書・申告書と、繰り越している欠損金の額
- 借入金・リース・賃貸借契約など、休眠中も続く契約
- 役員の任期の満了時期と、本店の所在地を今後も維持できるか
- 消費税・インボイスの届出の控えと、許認可の更新時期
- 再開の見込みと、そのときに必要になる資金や人員
休眠と解散・清算のどちらが負担が軽いかは、欠損金や契約の状況で変わります。現状の決算書をもとに、初回無料で整理します。
無料で相談するよくある質問
休眠中も決算書は作る必要がありますか?
必要です。法人税の申告書には貸借対照表や損益計算書などの決算書を添付するため、取引がほとんどない年でも決算書を作ります。預金利息や口座の手数料など、わずかな動きも記録しておきます。
休眠中に何年か申告していなかった場合は、どうすればよいですか?
申告していない事業年度について、期限後申告を進めます。納める税額がなければ加算税はかからないことが多いものの、青色申告の承認や欠損金の扱いに影響が出ている場合があるため、まず過去の申告の状況を確認します。期限後申告の費用の考え方は期限後申告の費用が決まる要素で整理しています。
休眠中に役員報酬を払わない場合、役員の健康保険や年金はどうなりますか?
報酬の支払いがなくなると、会社の健康保険・厚生年金の資格を失うため、役員本人は国民健康保険と国民年金(または家族の扶養など)に切り替えます。会社の社会保険の手続きと、本人の切替えを同じ時期に進めましょう。
休眠会社を再開するときは、何をすればよいですか?
税務署・北海道・市町村に事業を再開した旨の異動届を出し、給与を支払うなら給与支払事務所等の開設の届出、健康保険・厚生年金の新規適用の手続きをします。取引先が事業者ならインボイスの登録、業種によっては許認可の再取得や更新も確認します。
まとめ
休眠会社は、解散・清算より手続きが少ない半面、毎年の申告と、かかる場合の均等割、役員の変更登記といった義務と費用が続きます。休眠前に異動届や給与・社会保険・消費税の届出を整え、欠損金がある場合は申告を途切れさせないことが大切です。再開の見込みが低いなら、休眠を続ける累計の費用と解散・清算の費用を比べて判断しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(防衛特別法人税の申告などを反映)
