創業時の資金計画は、必要な資金を設備資金と運転資金に分けて見積もり、自己資金と融資でどう賄うかを組み立てるのが基本です。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を使う場合も、自己資金の準備と根拠のある事業計画書が審査の土台になります。
この記事の結論
創業時の資金計画は「いくら必要か」を設備資金と運転資金に分けて積み上げ、「どう用意するか」を自己資金・公庫の融資・制度融資の組み合わせで考えます。
- 運転資金は、売上が安定するまでの数か月分の固定費と返済額を見込んで確保する
- 公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、開業前からおおむね7年以内が対象で、融資限度額は7,200万円
- 自己資金は審査の重要な要素。公庫のFAQでは、創業時の自己資金は平均で2割程度とされている
- 事業計画書では、売上の根拠と返済の原資(利益と減価償却費)を数字で示す
- 融資後は資金繰り表で返済と納税の予定を管理し、計画とのずれを早めに修正する
創業時の資金計画で考えること
資金計画では、まず「いくら必要か」と「どう用意するか」の二つを整理します。必要な資金は、大きく設備資金と運転資金に分けて考えます。設備資金は店舗の内装や機械、備品など開業時に一度かかるお金で、運転資金は仕入れや家賃、人件費など事業を回し続けるためにかかるお金です。
| 資金の区分 | 主な内容 | 見積もりのポイント |
|---|---|---|
| 設備資金 | 店舗・事務所の内装工事、機械・設備、車両、備品、店舗の保証金 | 見積書をとって税込みで計上する。中古品やリースも比べる |
| 開業前の諸費用 | 法人設立の費用、広告宣伝、採用・研修、開業前の家賃 | 法人で始める場合は、会社の形態で設立費用が変わる |
| 運転資金 | 仕入れ、家賃、人件費、広告費、借入の返済 | 売上が安定するまでの数か月分と、入金が遅れる期間の分を見込む |
見落としがちなのが、開業してすぐは売上が安定しないことです。軌道に乗るまでの数か月分の運転資金を見込んでおかないと、資金が足りなくなります。事業者向けの取引では、売上の入金が請求の翌月以降になることが多く、その間の仕入れや給与は先に払う必要があります。
計算例:必要資金を積み上げて借入額を決める
例えば、内装工事400万円、設備150万円、店舗の保証金50万円で開業し、毎月の固定費が80万円かかる店舗の場合です。運転資金は3か月分を見込むとします。
- 設備資金:400万円+150万円+50万円=600万円
- 運転資金:80万円×3か月=240万円
- 必要資金の合計:600万円+240万円=840万円
- 自己資金を200万円用意した場合の借入額:840万円−200万円=640万円
この場合、自己資金は必要資金の約24%です。借入額が決まったら、毎月の返済額が事業の利益で賄えるかを次に確認します。
日本政策金融公庫の創業融資とは
日本政策金融公庫(公庫)は国が出資する政策金融機関で、創業期の事業者への融資に力を入れています。実績のない創業時は、民間の金融機関から融資を受けるのが難しいこともあり、開業時の資金調達先として広く利用されています。中心になる制度が「新規開業・スタートアップ支援資金」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方、または事業を始めておおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金は20年以内、運転資金は10年以内(いずれも据置期間5年以内) |
| 担保・保証人 | 税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人で利用できる |
| 利率 | 創業時の融資は利率を0.65%(雇用を拡大する場合は0.9%)引き下げる措置がある。経営者保証を免除する特例は上乗せの利率なし |
融資を受けるまでの流れは、事業計画書(公庫の書式では創業計画書)を提出し、面談を経て審査を受けるのが一般的です。審査では、事業の見通しに根拠があるか、自己資金がどれだけ準備されているか、返済の計画が現実的かといった点が見られます。制度の名称や条件は見直されることがあるため、申込みの前に公庫の公式サイトで最新の内容を確認してください。
- 資金計画と創業計画書を準備する必要資金の見積書、自己資金が分かる通帳、創業計画書をそろえます。
- 公庫に申し込む支店の窓口かインターネットで、申込書と計画書を提出します。
- 面談を受ける創業の動機や経験、売上の見込みの根拠、自己資金の貯め方などを本人が説明します。
- 審査・融資の決定必要に応じて店舗の確認や追加資料の提出を求められ、融資の可否と金額が決まります。
- 契約・融資の実行契約の手続きを経て入金されます。設備の発注や契約の時期と合わせておきます。
面談で聞かれやすい質問と準備のしかたは、公庫の創業融資の流れと面談対策で詳しく整理しています。
自己資金と事業計画が審査の土台
創業融資の審査で重視されやすいのが、自己資金の準備です。自己資金は、事業に向けてこつこつ準備してきた姿勢を示すものとして見られる傾向があり、全額を借入で賄おうとすると計画の現実味が問われやすくなります。公庫は自己資金を「重要な要素」と位置づけており、FAQでは創業時の自己資金は平均で2割程度と紹介されています。
自己資金として説明しやすいもの
- 本人名義の口座に、時間をかけて積み立ててきた記録がある預金
- 開業のためにすでに支払った設備代や保証金(領収書がある)
- 親族からの援助で、贈与契約書などで経緯を示せるもの
説明を求められやすいもの
- 申込みの直前にまとめて入金されたお金
- 返済が必要な借入金(親族からの借入も含む)
- 出どころを説明できない現金
親族からの援助を自己資金に充てる場合は、贈与税にも注意が必要です。贈与税の基礎控除は年110万円で、これを超える贈与を受けると申告と納税が必要になることがあります。
もう一つの土台が事業計画書です。売上の見込みに根拠があり、経費を現実的に見積もり、返済の原資が確保できることを数字で示します。売上は「客単価×客数×営業日数」のように分解し、開業後の収支がどう推移し、いつ頃から返済が回るのかを描けると説得力が増します。創業時は過去の実績がないぶん、計画の質が評価を大きく左右します。
計算例:毎月の返済額と、必要な返済の原資
例えば、1,000万円を元利均等返済で借りる場合の試算です(概算。保証料や手数料は含みません)。
- 金利2.5%・5年(60回):毎月約177,500円、利息の合計は約65万円
- 金利1.5%・5年(60回):毎月約173,100円、利息の合計は約39万円
- 金利2.5%・7年(84回):毎月約129,900円、利息の合計は約91万円
金利が1%違っても毎月の差は約4,400円ですが、返済期間を5年から7年に延ばすと、177,500円−129,900円=47,600円も軽くなります(利息の合計は増えます)。
金利2.5%・5年の場合、年間の返済額は177,500円×12か月=2,130,000円です。返済の原資は「税引後の利益+減価償却費」なので、減価償却費が年80万円なら、税引後の利益で年2,130,000円−800,000円=1,330,000円以上が必要になります。
計画書には、創業の動機、経営者の略歴、取り扱う商品・サービス、取引先、従業員、借入の状況、必要な資金と調達方法、事業の見通しを記入します。数字の組み立てに不安がある場合は、専門家の助言を受けながら準備すると、面談での説明にも自信を持てます。書き方の具体例は創業計画書の作り方と融資のポイントを参考にしてください。
必要資金の見積もりと返済計画が合っているかは、業種と開業の形で変わります。創業計画書の数字の組み立てから、初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する札幌・北海道で開業するときに比べたい制度
公庫のほかに、自治体と信用保証協会、金融機関が連携する「制度融資」も創業時の選択肢です。信用保証協会の保証料がかかる一方、民間の金融機関との取引の実績を早くから作れる利点があります。札幌市内で開業する場合は、次の制度を公庫とあわせて比べます。
| 制度 | 主な内容 |
|---|---|
| 札幌市 創業・雇用創出支援資金 | 2026年4月1日時点の表記で融資限度額5,000万円・利率1.70%以内、保証料の1/4以内を補給。2026年10月1日以降に実行される融資は、利率が0.3%上乗せされる |
| 北海道 中小企業総合振興資金(創業貸付) | 創業貸付(1)〜(3)は融資限度額3,500万円、期間1〜10年、固定金利1.8〜2.4%。創業貸付【スタートアップ】は経営者の個人保証が不要(2026年10月1日現在) |
| 創業関連保証(北海道信用保証協会) | 保証限度額3,500万円、保証料率0.86% |
| 特定創業支援等事業 | 札幌中小企業支援センターや札幌商工会議所で、1か月以上・4回以上の支援を受けると証明書が出る。公庫の利率の引下げ、創業関連保証を開業の6か月前から使える、会社設立の登録免許税が半分になる(市内での設立のみ)などの効果がある。証明書の有効期限は2027年3月31日 |
補助金は後払い。資金計画では当てにしない
小規模事業者持続化補助金〈創業型〉(補助上限200万円、インボイス特例で50万円上乗せ。補助率2/3。特定創業支援等事業の証明が要件の一つ)のように、創業時に使える補助金もあります。ただし補助金は、採択された後に事業を実施し、実績を報告してから入金される後払いです。採択されても入金までの資金は自分で用意する必要があるため、融資の返済計画に補助金の入金を組み込まないのが安全です。公募の時期と要件は、最新の公募要領で確認してください。
創業の相談は、さっぽろ創業支援プラザ(011-200-5511)、札幌商工会議所(011-231-1768)、北海道よろず支援拠点(011-232-2402)でも受け付けています(2025年12月25日現在の案内)。
融資後の資金管理も見据える
融資を受けて開業した後は、計画どおりに資金を管理していくことが大切です。借りたお金は返済義務を伴うため、毎月の返済を見込んだうえで資金繰りを回す必要があります。開業直後は想定外の出費も起こりやすいので、手元資金に一定の余裕を持たせ、こまめに収支を把握する習慣をつけておくと安心です。
据置期間(利息だけを払い、元金の返済を待ってもらう期間)を設けた場合は、期間が終わると元金の返済が始まり、毎月の支払いが一気に増えます。据置期間中に売上を伸ばせなかった場合の資金繰りも、あらかじめ考えておきます。
- 毎月の試算表で、売上と経費を計画と比べる
- 数か月先までの資金繰り表を作り、返済日と残高を確認する
- 据置期間が終わる月と、そこからの返済額を把握しておく
- 確定申告・消費税・住民税など、税金を払う月を資金繰り表に入れておく
- 計画とのずれが続くときは、早めに金融機関へ相談する
開業後に資金が詰まりやすいのは、税金の支払いが重なる時期です。インボイスの登録をすると、開業直後でも消費税の申告と納税が必要になります。個人事業主の1年の税金の流れは個人事業主の年間スケジュールで確認できます。計画と実績のずれを定期的に確認し、必要に応じて軌道修正していくことが、事業を安定させる近道です。
よくある質問
自己資金がほとんどなくても創業融資は受けられますか?
公庫は自己資金を審査の重要な要素としているため、確認できる自己資金が少ないと、借りられる金額が抑えられたり、計画の裏付けを詳しく求められたりします。開業の時期を少し遅らせて自己資金を貯めるのも、現実的な選択肢です。
公庫と制度融資は併用できますか?
必要資金が大きい場合は、公庫と金融機関(制度融資を含む)から分けて借りる方法もあります。借入の合計で毎月の返済がいくらになり、利益で返せる範囲に収まるかを確認したうえで、どちらに先に相談するかを決めます。
融資の相談は、開業前と開業後のどちらがよいですか?
公庫の創業融資は開業前から申し込めます。設備の発注や店舗の契約の前に相談しておくと、資金計画を組み立てやすくなります。すでに支払いを終えた設備代は、融資の対象として扱われにくい点に注意してください。
借入金の返済は経費になりますか?
経費になるのは利息の部分だけで、元金の返済は経費になりません。利益が出ていても手元のお金が増えない原因になるため、返済の原資は「税引後の利益+減価償却費」で考えます。融資で買った設備は、減価償却を通じて経費になります。
まとめ
創業時の資金計画は、設備資金と運転資金を積み上げて必要額を出し、自己資金と日本政策金融公庫の融資、自治体の制度融資の組み合わせで調達を考えます。審査の土台は自己資金の準備と、売上と返済の原資を数字で示した事業計画書です。融資後は資金繰り表で返済と納税を管理し、計画とのずれを早めに修正していきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
創業時の資金計画・創業融資のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
