信用保証協会の保証付き融資が返済できなくなると、保証協会が金融機関に代わって返済する「代位弁済」が行われ、協会は事業者に返済を求める「求償権」を取得します。借入れは消えず、遅延損害金も加わるため、通知を放置せず、内訳を確認したうえで分割弁済などの協議を早めに始めることが再起の可能性を残す近道です。
この記事の結論
代位弁済の後は、債権者が金融機関から保証協会に移るだけで、返済義務は残ります。放置すると損害金が増え、担保の処分や保証人への請求に進むため、早めに協会と協議することが大切です。
- 代位弁済後は、保証協会が求償権にもとづいて返済を求める
- 求償権には損害金(遅延損害金)が加わるため、放置は禁物
- まず金額と内訳(元本・利息・損害金)を確認し、返済能力を資料で示して協議する
- 分割弁済は、事業と生活の実情に応じて認められることがある
- 再建・整理の選択肢と税金への影響は、専門家と早い段階で検討する
代位弁済と求償権の仕組み|借入れは消えず、請求する相手が変わる
保証付き融資では、返済が滞って一定の期間が経過すると、金融機関は保証協会に保証の履行を請求します。保証協会が金融機関へ残債を支払うのが代位弁済です。これで金融機関の債権は消えますが、保証協会は支払った金額を事業者に請求できる権利、つまり求償権を取得します。
- 返済の延滞約定どおりの返済ができなくなり、金融機関から督促を受けます。
- 期限の利益の喪失延滞が続くと、分割で返す権利(期限の利益)を失い、残りの借入金を一括で返す義務が生じます。
- 保証協会への代位弁済の請求金融機関が保証協会に対し、保証にもとづく支払いを請求します。
- 代位弁済の実行保証協会が金融機関に残債を支払い、事業者には代位弁済の通知が届きます。
- 求償権にもとづく請求と協議以後は保証協会が債権者となり、返済方法の協議や回収が始まります。
代位弁済の前と後で何が変わるのかを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 代位弁済の前 | 代位弁済の後 |
|---|---|---|
| 債権者 | 融資をした金融機関 | 信用保証協会(保証の範囲の部分) |
| 返済の方法 | 契約で決めた分割返済 | 原則は一括の請求。協議により分割弁済 |
| 増えていくもの | 約定の利息 | 保証委託契約などで定める損害金(遅延損害金) |
| 担保・保証人 | 金融機関の担保・保証 | 保証協会が担保や保証人への権利を引き継ぐ |
| 新たな借入れ | 条件次第で可能 | 求償権が残る間、保証付き融資は原則として難しい |
求償権には損害金が日々加わるため、放置すると負担は膨らんでいきます。また、代位弁済の事実は保証協会や金融機関の記録に残ります。個人事業主や保証人の場合は個人の信用情報に登録されることもあり、新たな借入れは難しくなります。
保証の割合によっては、金融機関にも債務が残る
信用保証には、借入れの全額を保証する制度と、責任共有制度により80%を保証する制度があります。80%を保証する方式(部分保証方式)の融資では、代位弁済されるのは保証された部分で、残りは金融機関の債権として残ります。そのため、協議の相手が二つになることがあります。手元の保証書や通知で、どの部分が誰の債権になったかを確認しましょう。
連帯保証人や経営者個人には、どんな影響がある?
連帯保証人がいる場合、保証協会は事業者だけでなく保証人にも請求できます。法人の借入れに経営者保証が付いていれば、経営者個人も求償の対象になり得ます。会社の借入れであっても、経営者の自宅や預金に影響が及ぶ可能性がある点に注意が必要です。
経営者の保証債務を整理する方法として、「経営者保証に関するガイドライン」があります。金融機関と保証人の間の自主的なルールで、要件を満たせば、破産手続によらずに保証債務を整理し、一定の生活費などを手元に残せる可能性があります。ガイドラインに沿った整理では、債務整理をした事実を信用情報機関に登録しない取扱いとされています。
保証人に連絡が行く前に、状況を共有しておく
親族や知人が保証人になっている場合、突然の請求は関係を大きく損ないます。代位弁済の通知が届いた段階で、保証人に状況と今後の方針を伝えておくと、協議も進めやすくなります。
代位弁済の通知が届いたら、まず何をする?
代位弁済の通知が届いたら、まず求償権の金額と内訳(元本・利息・損害金)を確認します。そのうえで、保証協会の担当部署と早めに連絡を取り、現状の返済能力を率直に伝えることが大切です。回収を債権回収会社(サービサー)に委託している場合は、そちらから連絡が来ることもあります。
| 段階 | 主な対応 | 準備するもの |
|---|---|---|
| 通知受領後 | 求償権の金額・内訳を確認する | 代位弁済の通知、借入れの契約書、保証の内容がわかる書類 |
| 協議開始 | 返済能力を伝え、分割弁済を相談する | 直近の決算書・試算表、資金繰り表 |
| 計画策定 | 無理のない弁済計画を提示する | 事業の収支見通し、個人の場合は家計の収支 |
| 履行 | 合意した金額を継続して支払う | 支払いの記録、状況が変わったときの相談 |
保証協会は、一括での返済が難しい場合、分割弁済の協議に応じることが一般的です。たとえば求償権が2,000万円でも、事業や生活の実情に応じて、月々無理のない金額での分割が認められることがあります。重要なのは、支払える範囲を具体的な資料で示し、合意した金額を継続して支払っていくことです。
分割弁済の協議で示したいこと
- 事業を続けるのか、縮小・廃業するのかという方針
- 毎月の売上・経費・ほかの借入れの返済から見た、返済に回せる金額
- 延滞に至った原因と、それに対して打っている改善策
- 処分できる資産(不動産・保険・有価証券など)とその見込み額
- ほかの債権者(金融機関の残りの債権、税金・社会保険料の滞納など)の状況
合意できる金額を無理に大きくすると、途中で支払いが止まり、かえって信頼を失います。誠実に対応する姿勢を示しつつ、続けられる金額で合意することが、その後の協議を円滑にします。
事業を続ける・再起するには、どんな選択肢がある?
代位弁済が発生しても、事業を続ける道が完全に閉ざされるわけではありません。どの方法が適するかは、債務の規模と事業の見通しによって異なります。主な選択肢は次のとおりです。
| 選択肢 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 分割弁済を続けて事業を継続 | 本業で返済に回せる利益が出ている | 損害金の扱いも含めて協議し、計画どおりに払い続ける |
| 経営改善計画による再建 | 赤字の原因が特定でき、改善の見込みがある | 中小企業活性化協議会などの支援機関を交え、金融機関と計画を共有する |
| 求償権を新たな保証付き融資に切り替える仕組み | 再生計画などにもとづいて事業の立て直しを進めている | 「求償権消滅保証」と呼ばれる制度で、利用できるかは保証協会や支援機関に確認が必要 |
| 私的整理(話し合いによる整理) | 債務が過大で、通常の返済では立て直せない | 債権者全体の同意が必要。債務免除を受けると税金の検討も要る |
| 法的整理(民事再生・破産など) | 私的整理での合意が難しい、事業の継続が見込めない | 裁判所の手続きで、取引先や従業員への影響が大きい |
中小企業活性化協議会は、各都道府県に設置された公的な支援機関で、収益力の改善や再生計画づくりを金融機関との調整も含めて支援します。仕組みと流れは中小企業活性化協議会の収益力改善支援で解説しています。
判断を誤ると、再起の機会を狭めてしまうおそれがあります。早い段階で公認会計士・税理士などの専門家に相談し、財務の実態を整理したうえで方針を決めることが、最善の結果につながりやすくなります。
分割弁済で続けるか、再建や整理に進むかは、債務の規模と事業の見通しで変わります。財務の実態の整理から、初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する求償権は会計・税金ではどう扱う?決算書の表示と債務免除益
代位弁済が行われても、会社の利益は出ません。債権者が変わるだけなので、決算書では金融機関からの借入金を、保証協会に対する債務に振り替えて表示します。金融機関に説明するときも、借入れが残っていることがわかる形にしておくことが大切です。
| 場面 | 会計・税金の扱い | 確認すること |
|---|---|---|
| 代位弁済を受けた | 借入金を保証協会への債務に振り替える。損益は生じない | 保証された部分と、金融機関に残る部分の区分 |
| 損害金を支払った | 事業の借入れに関するものは、通常、支払利息と同様に経費として扱う | 元本・利息・損害金への充当の内訳 |
| 債務の一部を免除された | 免除額は会社の利益(債務免除益)として課税の対象になる | 繰越欠損金で相殺できるか、整理の手続きによって使える特例 |
| 経営者が資産を売って保証債務を払った | 会社から回収できない部分について、譲渡所得の課税をしない特例がある | 「保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の特例」の要件 |
債務の免除を受ける計画では、免除益に法人税がかからないかを事前に試算しておく必要があります。青色申告の法人の欠損金は、2018年4月1日以後に開始した事業年度の分なら10年間繰り越せ、中小法人等は所得の全額まで控除できます。私的整理や法的整理の手続きによっては、期限切れの欠損金も使える場合があるため、計画づくりの段階から税金の検討を組み込みます。
代位弁済になる前なら:借換えや条件変更で負担を軽くできる
まだ延滞していない段階なら、借換えや返済条件の変更で代位弁済を避けられる場合があります。ただし、金利を下げるだけでは毎月の負担はそれほど変わらないことも知っておきたいポイントです。
| 区分 | 毎月返済 | 総返済額 | 利息合計 |
|---|---|---|---|
| 金利2.5% | 約177,500円 | 約1,065万円 | 約65万円 |
| 金利1.5% | 約173,100円 | 約1,039万円 | 約39万円 |
| 差額 | 約4,400円/月 | 約26万円減 | 約26万円減 |
金利が1%下がれば総返済額は約26万円減りますが、毎月の返済額の差は約4,400円です。資金繰りが行き詰まりかけているときは、金利よりも返済期間や元金の返済の猶予のほうが、毎月の負担に大きく効きます。
計算例:返済期間を延ばした場合の毎月の返済額
例えば、上の表と同じ借入残高1,000万円・金利2.5%のまま、残り5年(60回)を10年(120回)の返済に変更できたとします。元利均等返済の概算で、毎月の返済額は約177,500円から約94,300円になり、毎月約83,200円の負担が軽くなります。
一方、返済期間が延びる分、総返済額は約1,131万円、利息合計は約131万円に増えます。毎月の負担を減らす効果と、利息が増える負担の両方を見て判断します。
返済条件の変更は、金融機関と保証協会の同意が必要で、変更している間は新たな融資を受けにくくなるのが一般的です。返済方法の基本は約定弁済と期限一括弁済の考え方、資金調達の全体像は融資・資金調達ガイドにまとめています。
札幌・北海道の制度融資を利用している場合
札幌市の融資制度(マル札資金・特別資金)や北海道の創業貸付などの制度融資は、北海道信用保証協会の保証を利用する仕組みです。返済が難しくなった場合は、融資を受けた金融機関とあわせて、早めに北海道信用保証協会にも相談します。代位弁済の後も、相手は同じ協会になります。
よくある質問
代位弁済の後に、新しい融資を受けることはできますか?
求償権が残っている間は、保証付きの新たな融資を受けるのは原則として難しくなります。完済した後の扱いや、再生計画にもとづく制度を使えるかどうかは、保証協会や金融機関に個別に確認が必要です。
保証協会からの通知を放置すると、どうなりますか?
損害金が増え続けるうえ、担保の処分や財産の差押えなどの法的な手続きに進むことがあります。連帯保証人にも請求が及ぶため、支払いが難しくても、まず連絡を取って現状を伝えることが大切です。
分割弁済の月額は、どのように決まりますか?
一律の基準はなく、事業と生活の収支から無理なく払い続けられる額を、資料をもとに協議して決めます。売上の減少などで状況が変わったときは、支払いが止まる前に見直しを相談します。
個人事業主の場合も、仕組みは同じですか?
仕組みは同じです。個人事業主の借入れは事業主本人の債務なので、求償権の請求も事業主個人に対して行われます。事業の資金繰りと生活費を一体で考え、続けられる弁済額を検討します。
事業をやめれば、求償権の返済はなくなりますか?
廃業しても、求償権の債務は残ります。会社の清算や法的整理、経営者保証に関するガイドラインによる保証債務の整理など、債務の規模と資産の状況に応じた方法を選ぶ必要があります。廃業を決める前に専門家に相談しましょう。
まとめ
代位弁済の後も返済義務は残り、債権者が保証協会に変わって損害金が加わります。通知を受けたら金額と内訳を確認し、返済能力を資料で示して分割弁済を協議しましょう。分割で続けるのか、再建や整理に進むのかは、税金への影響も含めて、専門家と早い段階で検討することが再起への近道です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
代位弁済・求償権への対応のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
