プロパー融資と保証協会付き融資は、貸し倒れのリスクを誰が負うかが違い、再生局面では金融機関の対応も変わります。業績が悪化したら、まず既存融資の条件変更(リスケ)で資金の流出を抑え、経営改善計画で再建の見通しを示してから新規の調達を検討する順番が現実的です。
この記事の結論
再生局面では、新たに借りるより先に、既存融資の返済条件を変えて資金の流出を止めることが先決です。プロパー融資は金融機関、保証付き融資は金融機関と保証協会の同意が必要で、新規の調達は改善を数字で示せる段階で検討します。
- 出発点は、金融機関ごと・プロパーと保証付きの別に借入れを一覧にすること
- リスケは特定の金融機関だけでなく、取引のある全金融機関に同じ基準で申し入れる
- 保証付き融資の条件変更には、保証協会の同意も関わる
- 新規の調達は保証付きが選択肢になりやすいが、保証協会も再建の実現性を厳しく見る
- 金利を下げる借換えより、返済期間の延長や元金の据置のほうが毎月の負担に効く
プロパー融資と保証協会付き融資の違いは?
プロパー融資は、金融機関が信用保証協会を介さず、自らリスクを負って貸す融資です。保証協会付き融資(保証付き融資)は、信用保証協会が返済を保証することで、金融機関のリスクを軽くする融資です。
| 比べる点 | プロパー融資 | 保証協会付き融資 |
|---|---|---|
| 貸し倒れのリスク | 金融機関がすべて負う | 保証協会が保証する。多くは責任共有制度で80%を保証し、残りは金融機関が負う(セーフティネット保証1〜4号・6号や創業関連の保証などは全額を保証) |
| 費用 | 金利(担保や保証人を求められることがある) | 金利に加えて信用保証料 |
| 返済条件の変更 | 金融機関の同意 | 金融機関と保証協会の同意 |
| 返済が滞ったとき | 金融機関が担保の処分や保証人への請求で回収する | 保証協会が代わりに返済(代位弁済)し、事業者に返済を求める(求償) |
| 平常時の新規融資 | 信用力のある会社ほど受けやすい | 実績の浅い会社や担保の少ない会社でも受けやすい |
| 再生局面の新規融資 | 収益力の回復を数字で示せるまでは難しい | 選択肢になりやすいが、保証協会も再建の実現性を厳しく見る |
平常時は、信用力のある企業ほどプロパーの比率が高まる傾向があります。一方、業績が悪化すると、金融機関はプロパーでの新規融資に慎重になり、保証付きの活用や条件変更が中心になりやすくなります。平常時の使い分けは制度融資・プロパー・保証協会付き融資の使い分けで整理しています。
再生局面で重要なのは、すでに借りている融資がプロパーなのか保証付きなのか、その構成を正確に把握することです。条件変更や追加の支援の交渉は、この構成を前提に進みます。
再生局面では、まず条件変更を検討する
再生の初期段階では、新たに借りるよりも、既存融資の返済条件を変更して資金の流出を抑えることが先決です。元金の据置やリスケジュールで毎月の返済負担を軽くし、その間に経営改善を進めます。保証付き融資の場合、条件変更には金融機関だけでなく保証協会の同意も関わるため、両者への丁寧な説明が求められます。
- 借入れを一覧にする金融機関ごとに、プロパーか保証付きか、制度融資かを分け、残高・金利・毎月の返済額・担保と保証人を整理します。
- 資金繰り表で不足額をつかむ月ごとの入出金を12か月分見通し、返済を続けた場合に、いつ・いくら不足するかを示します。
- 全金融機関に同じ基準で申し入れるメインバンクだけでなく、取引のある全金融機関に、返済額を残高の割合で配分するなど同じ基準で条件変更を依頼します。
- 保証協会の同意を得る保証付き融資は、金融機関を通じて保証協会の同意を得ます。保証の期間が延びる場合は、追加の保証料がかかることがあります。
- 経営改善計画を出し、進捗を報告する条件変更の期間中に改善の具体策と数値計画を示し、定期的に実績を報告して信頼を取り戻します。
| 再生の段階 | 融資面の主な対応 | 金融機関に示すもの |
|---|---|---|
| 初期 | 既存融資のリスケ・元金据置で資金流出を抑制 | 借入れの一覧、資金繰り表、条件変更の依頼書 |
| 改善期 | 経営改善計画を実行し信頼を回復 | 経営改善計画、月次の試算表、計画との差の説明 |
| 再建期 | 見通しが立てば新規調達を検討 | 計画の達成状況、新たな資金の使い道と返済の原資 |
計算例:保証付き5,000万円・プロパー2,000万円の会社がリスケする場合
例えば、保証付き融資5,000万円とプロパー融資2,000万円を抱え、年間の元金返済が1,200万円、返済に回せる資金が年600万円しかない会社です(金額は仮定)。
- 借入れの合計:5,000万円+2,000万円=7,000万円
- 返済の不足:1,200万円−600万円=600万円
- 元金の返済を止めた間の利息:平均金利を年2.5%とすると、7,000万円×2.5%÷12か月=約14.6万円(毎月)
まず全体の元金返済を一時的に止めるか減らして資金の流出を抑え、改善計画の進捗を金融機関に示しながら信頼を取り戻していく、という流れが考えられます。
条件変更の期間中は、新たな融資を受けにくくなるのが一般的です。金融機関の内部の格付け(債務者区分)が下がることもあり、実抜計画・合実計画と呼ばれる要件を満たす経営改善計画を示せるかどうかで、金融機関の扱いが変わります。
新規調達は再建の見通しが前提
再生局面で新たな資金が必要な場合、保証付き融資が選択肢になりやすい傾向があります。金融機関のリスクが軽くなるためです。ただし、保証協会も業況が悪化した先への保証には慎重で、再建の実現性を厳しく見ます。プロパーでの新規融資は、改善計画が着実に進み、収益力の回復が数字で示せる段階にならなければ難しいのが実情です。
| 調達の方法 | 検討しやすい場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 経営改善計画にもとづく保証付きの借換え | 計画が金融機関に受け入れられ、返済の一本化や期間の延長で資金繰りを安定させたい | 使える保証制度と要件は、保証協会・金融機関で確認する |
| セーフティネット保証 | 取引先の倒産や業況の悪化など、外部の要因で売上が減っている | 市区町村の認定が必要。一般の保証とは別枠(普通保証2億円・無担保8,000万円・無担保無保証人2,000万円)。指定の状況は窓口で確認する |
| 協調支援型特別保証 | 金融機関がプロパー融資もあわせて出せる段階 | 2025年3月14日〜2028年3月31日の制度。保証限度額2億8,000万円、プロパー融資1割以上の併用が条件 |
| プロパーの新規融資 | 改善計画を達成し、収益力の回復を数字で示せる | 実績の積み上げが前提。短期の運転資金を継続して借りる方法もある |
短期の運転資金を継続して借りる方法は短期継続融資(短コロ)と当座貸越の使い分けで解説しています。いずれの方法でも、説得力のある経営改善計画と資金繰りの裏付けが土台になります。再生の段階を見誤って無理な調達を急ぐと、かえって資金繰りを悪化させかねません。
札幌市・北海道の制度融資を利用している場合
札幌市の融資制度(マル札資金・特別資金)や北海道中小企業総合振興資金は、原則として北海道信用保証協会の保証を利用する仕組みです。返済が難しくなったら、取扱金融機関とあわせて、早めに北海道信用保証協会にも相談します。
札幌市の融資制度は、2026年10月1日以降に実行する分から利率が0.3%上がっています。借換えや新規の調達を検討するときは、実行時点の利率を窓口で確認しましょう。
借換えと返済期間の延長、毎月の負担に効くのはどちら?
金利の低い融資への借換えは総返済額を減らしますが、毎月の返済額はそれほど変わらないことがあります。借入残高1,000万円・残り5年(60回)を、金利2.5%から1.5%へ借り換えた場合の試算は次のとおりです。
| 区分 | 毎月返済 | 総返済額 | 利息合計 |
|---|---|---|---|
| 金利2.5% | 約177,500円 | 約1,065万円 | 約65万円 |
| 金利1.5% | 約173,100円 | 約1,039万円 | 約39万円 |
| 差額 | 約4,400円/月 | 約26万円減 | 約26万円減 |
計算例:返済期間を延ばした場合と、元金を据え置いた場合
例えば、上の表と同じ借入残高1,000万円・金利2.5%のまま、返済の条件を変える場合です(元利均等返済の概算)。
- 残り5年(60回)を10年(120回)に延ばす:毎月の返済額は約177,500円から約94,300円になり、毎月約83,200円軽くなる。一方で総返済額は約1,131万円、利息合計は約131万円に増える
- 元金の返済を据え置く:据置の間は利息だけを払い、1,000万円×2.5%÷12か月=約20,833円(毎月)
金利が1%下がっても毎月の差は約4,400円ですが、期間の延長や据置は毎月の負担を大きく減らします。その分だけ利息の総額は増えるため、改善計画の期間とあわせて判断します。
実際の借換えでは、手数料・保証料・印紙代などがかかり、実質のメリットは変わります。資金繰りが行き詰まりかけているときは、金利よりも返済期間や元金の据置を優先して交渉するほうが、毎月の資金の流出を抑えられます。
金融機関・保証協会に何を示す?計画と資料の準備
条件変更でも新規の調達でも、判断の土台になるのは経営改善計画と資金繰りの裏付けです。次の資料をそろえておくと、金融機関・保証協会との対話を進めやすくなります。
- 金融機関別の借入れの一覧(プロパー・保証付き・制度融資の別、残高、金利、返済額、担保・保証)
- 12か月分の資金繰り表(返済を続けた場合と、条件変更後の両方)
- 直近の決算書と月次の試算表
- 業績が悪化した原因の分析と、売上・粗利・固定費・人件費の具体的な改善策
- 数値計画と返済計画(いつから、いくら返済を再開できるか)
- 経営者個人の資産と、保証の状況
計画づくりでは、認定経営革新等支援機関の支援を受けると、策定費用の一部を国が補助する経営改善計画策定支援事業を使える場合があります。中小企業活性化協議会は、金融機関との調整も含めて、収益力の改善や再生の計画づくりを支援する公的な機関です。人件費の見直しの進め方は再生局面の労務・雇用維持と人件費適正化も参考になります。
どの融資から条件変更を申し入れるか、新規の調達をいつ検討するかは、借入れの構成と資金繰りで判断が分かれます。借入れの一覧と直近の決算書をもとに、初回無料で整理できます。
無料で相談する再生局面で税金・会計に注意することは?
融資の交渉と並行して、税金と会計の扱いも確認しておきます。対応を誤ると、資金繰りの計画そのものが崩れることがあります。
| 場面 | 扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 返済条件の変更 | 損益は生じない。利息は引き続き経費になる | 期末に未払いの利息があれば計上する |
| 税金・社会保険料の滞納 | 延滞税・延滞金がかかり、保証の審査でも不利になりやすい | 国税は納税の猶予・換価の猶予、社会保険料も猶予や分割納付の相談ができる場合がある |
| 債務の免除を受ける | 免除された額は利益(債務免除益)として課税の対象になる | 青色申告の法人は欠損金(2018年4月1日以後に開始した事業年度の分は10年繰越し)と相殺でき、中小法人等は所得の全額まで控除できる。法的整理や一定の私的整理では、期限切れの欠損金を使える場合がある |
| 資産を売って返済する | 含み損益が実現する | 売却益が出れば税負担が生じる。担保権者との調整も必要 |
専門家が関与し、金融機関・保証協会との対話と税金の見通しを一体で整理することで、現実的な選択につながります。資金調達の全体像は融資・資金調達ガイド、財務の立て直しの考え方は中小企業の財務コンサルティング完全ガイドにまとめています。
よくある質問
リスケ中でも、新しい融資は受けられますか?
一般には難しくなります。ただし、計画どおりに改善が進み、実績が数字で確認できれば、計画にもとづく借換えや新たな保証付き融資が検討されることもあります。毎月の実績報告を続けることが、次の調達への近道です。
プロパー融資だけ、または保証付き融資だけをリスケできますか?
特定の金融機関や融資だけを優遇すると、ほかの金融機関の理解を得にくくなります。取引のある全金融機関に、残高の割合など同じ基準で条件変更を申し入れるのが一般的です。
条件変更をすると、代位弁済になりますか?
なりません。条件変更は、金融機関と保証協会の同意のもとで返済を続ける方法です。約定どおりに返せないまま延滞が続くと代位弁済に進むおそれがあり、その後の流れは信用保証協会の求償権と代位弁済後の対応で解説しています。
個人事業主でも、同じ考え方でよいですか?
考え方は同じです。個人事業主の借入れは事業主本人の債務なので、事業の資金繰りと生活費を一体で見て、続けられる返済額を計画に落とし込みます。
まとめ
再生局面では、既存融資の構成を把握したうえで、リスケや元金据置で資金の流出を抑えることが出発点です。保証付き融資の条件変更には保証協会の同意も関わり、新規の調達は再建の見通しが立ってから検討します。説得力のある経営改善計画と資金繰りの裏付けを土台に、金融機関・保証協会と段階を追って対話を進めましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
