ABL(動産・債権担保融資)とは|在庫・売掛金で運転資金を確保する方法

公認会計士・税理士 監修

この記事は、公認会計士・税理士が代表を務める札幌の会計事務所「ジェイスタート会計事務所」が監修しています。

  • URLをコピーしました!

ABL(動産・債権担保融資)は、在庫や売掛金、機械設備など事業の資産を担保に資金を借りる方法です。不動産の担保がない会社でも運転資金を確保できる可能性がある一方、担保の評価には掛け目がかかり、借入後も在庫や売掛金の状況を定期的に報告することが求められます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

ABLは、不動産に頼らず「事業が日々回している資産」を裏付けに運転資金を借りる手段です。借入可能額は資産の評価額に掛け目をかけて決まるため、報告の手間や処分の制限も含めて、他の調達手段と比べて選ぶのが基本です。

  • 在庫・売掛金・機械設備など、事業の資産を担保に資金を借りる仕組み
  • 不動産担保に頼れない会社の資金調達の幅を広げられる
  • 担保資産は掛け目をかけて評価され、実行後は定期的な報告を伴うことがある
  • 在庫・売掛金が大きい卸売・製造・小売などで活きやすい
  • 手続きの負担や処分の制限を確認し、保証付き融資やファクタリングなど他の手段と比較する
目次

ABLとはどんな融資か

ABLは、英語のアセット・ベースト・レンディングの略で、日本語では動産・債権担保融資と呼ばれます。一般的な融資が不動産や経営者の保証を担保にすることが多いのに対し、ABLは在庫・機械設備・売掛金といった、事業活動の中で生まれる資産を担保にします。商品や売掛債権そのものを裏付けに資金を借りる方法です。

不動産を持たない会社や、すでに不動産を担保に入れていて追加の担保余力がない会社にとって、ABLは資金調達の幅を広げる手段になります。ただし、担保とする資産の管理や評価に関する取り決めが伴うため、通常の融資とは進め方が異なる点を理解しておく必要があります。

法律上は、倉庫にある在庫をまとめて担保にする「集合動産譲渡担保」や、将来発生する売掛金も含めて担保にする「集合債権譲渡担保」という形をとるのが一般的です。在庫が売れて入れ替わったり、売掛金が回収されて新しく発生したりしても、担保の効力が続く点が特徴です。

担保を第三者に主張できるようにするため、動産譲渡登記・債権譲渡登記(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律にもとづく登記)を使います。この登記は、担保を差し入れる側が法人の場合に利用できる制度です。

在庫や売掛金が担保になる仕組み

ABLでは、まず担保にできる資産を評価します。在庫であれば、どれだけの価値があり、売却したときにいくらで現金化できそうかを見ます。売掛金であれば、取引先の信用力や回収の確実性を踏まえて評価します。

評価額のすべてが融資枠になるわけではなく、価値の変動リスクを考慮して一定の掛け目を設けるのが一般的です。たとえば、評価額1,000万円の在庫があっても、担保として認められるのはその一部にとどまることがあります。在庫は売れ行きによって価値が変わり、売掛金は回収できないリスクもあるためです。

担保にする資産評価で見られる点評価が下がりやすいもの
在庫(商品・原材料・製品)換金のしやすさ、売れ行き、保管の状態と場所長く売れ残っている品、季節を過ぎた品、型落ちの品
売掛金取引先の信用力、回収の期日、これまでの回収の実績期日を過ぎた売掛金、グループ会社向けの売掛金
機械設備中古市場での売りやすさ、汎用性自社専用に作った特注の設備
農畜産物・水産物など鮮度や相場の変動、保管の方法価値の変動が大きく、評価や管理の方法を個別に決める必要があるもの
ABLで担保にする主な資産と評価のポイント(評価の方法は金融機関によって異なります)

借入可能額の決まり方(掛け目とボローイングベース)

担保の評価額に掛け目をかけた金額を合計したものを、借入可能額(ボローイングベース)と呼ぶことがあります。在庫や売掛金が増えれば借入可能額も増え、減れば下がる仕組みのため、事業の規模に合わせて資金を借りやすいのが特徴です。

計算例:借入可能額の考え方

例えば、在庫の評価額1,000万円に掛け目50%、条件を満たす売掛金800万円に掛け目80%をかけると仮定した場合です。掛け目は説明のための仮の数字で、実際は金融機関や資産の内容によって異なります。

  • 在庫:1,000万円×50%=500万円
  • 売掛金:800万円×80%=640万円
  • 借入可能額の目安:500万円+640万円=1,140万円

期末に在庫を絞り込んだり、大口の売掛金を回収したりすると、その分だけ借入可能額が下がる点に注意します。

融資の実行後は、担保となる在庫や売掛金の状況を定期的に報告することが求められる場合があります。資産の動きを金融機関と共有しながら進めるのが、ABLの一つの特徴です。

どんな会社に向いているか

ABLが活きやすいのは、在庫や売掛金を多く抱える事業です。卸売業や製造業、小売業のように、商品在庫や取引先への売掛が大きい業種では、これらを担保にまとまった運転資金を確保しやすくなります。仕入れから販売、回収までに時間がかかり、その間の資金需要が大きい会社にとっては、実態に合った調達手段になり得ます。

また、不動産担保に頼れない局面で、追加の資金を確保したい会社にも選択肢となります。たとえば成長に伴って仕入れを増やしたいが、運転資金が追いつかないといったケースです。担保となる資産の実態が明確で、きちんと管理されているほど評価もしやすくなるため、日頃から在庫や売掛金の管理を整えておくことは、ABLを検討するうえでも有利に働きます。

検討しやすい会社

  • 在庫や売掛金が売上に比べて大きい
  • 仕入れの時期が集中し、一時的に運転資金が膨らむ
  • 在庫を品目・数量・場所ごとに管理できている
  • 売掛金を取引先別・期日別に把握している

慎重に検討したい会社

  • 在庫が少なく、売上の多くが現金や前受けで入る
  • 在庫の数や価値を帳簿と現物で確かめていない
  • 売掛金の多くが期日を過ぎている
  • 定期的な報告に対応できる人手がない

北海道の事業者が検討するときの視点

道内には、収穫期や漁期に合わせて仕入れが集中し、在庫が一時的に大きく膨らむ事業があります。こうした季節的な運転資金は、在庫そのものを裏付けにするABLの考え方となじみやすい場合があります。ただし、鮮度や相場で価値が変わる在庫は、評価や管理の方法を個別に決める必要があるため、取引金融機関に早めに相談しましょう。

札幌市の制度融資と比べる場合は、2026年10月1日以降に実行される分から利率が0.3%上がっている点もあわせて確認しておきます。

検討する際の注意点

ABLにはいくつか留意点があります。まず、担保資産の評価や管理に関する手続きが伴うため、通常の融資より準備に手間がかかることがあります。定期的な報告が求められる場合は、その体制も必要です。

次に、担保にした在庫や売掛金は、勝手に処分や譲渡ができなくなることがあります。在庫をまとめて安売りする、主要な取引先を変えるといった判断の前に、金融機関への連絡や承諾が必要になる契約もあります。事業運営に制約が生じないか、条件をよく確認することが大切です。

  • 報告の内容と頻度(在庫表・売掛金の明細・試算表など)と、提出の期限
  • 担保にした資産を処分・移動するときに、事前の連絡や承諾が必要か
  • 評価や登記にかかる費用を、誰がどれだけ負担するか
  • 担保の評価額が下がったときに、返済や追加の担保を求められる条件
  • 売掛金の取引先に、担保に入れたことを知らせる時期と方法

売掛金を担保にする場合、取引先との契約に譲渡を禁止・制限する特約があっても、2020年4月1日に施行された改正民法により、譲渡そのものの効力は妨げられないとされています。ただし、取引先との関係に配慮し、契約書の内容は事前に確認しておきましょう。

ABLが自社に合うかどうかは、保有する資産の内容や資金需要の性質によって変わります。金利や条件、報告の負担なども含めて、他の調達手段と比較しながら検討するのがよいでしょう。具体的な条件は金融機関や時期により変わるため、最新の情報を確認してください。

ABLが合うかどうかは、在庫・売掛金の管理の状態と資金需要の波で判断が分かれます。資金繰りの見通しづくりから、初回無料でご相談いただけます。

無料で相談する

ほかの資金調達手段と比べると?

運転資金の調達手段は、ABLのほかにもいくつかあります。担保や保証の考え方と、向いている場面を並べると次のとおりです。

手段担保・保証の考え方向いている場面注意点
不動産担保融資土地・建物に抵当権や根抵当権を設定する不動産を持ち、長期の資金が必要担保の余力がないと追加が難しい
信用保証協会の保証付き融資保証協会が保証し、保証料がかかる担保が少ない中小企業の運転資金保証の限度額と保証料を確認する
ABL在庫・売掛金・機械設備を担保にする在庫・売掛金が大きく、増減する事業評価と報告の手間、処分の制限
ファクタリング売掛金を売却して現金化する(借入ではない)入金日までの一時的なつなぎ手数料の水準と、契約の条件を確認する
企業価値担保権無形資産を含む事業全体を担保にする(2026年5月25日施行)成長のための資金など新しい制度のため、取り扱う金融機関を確認する
運転資金の主な調達手段の比較(条件は金融機関・時期によって異なります)

信用保証協会には、売掛債権や棚卸資産を担保とする融資を保証する制度(流動資産担保融資保証制度)もあり、ABLと保証を組み合わせる方法もあります。北海道信用保証協会での取扱いや条件は、取引金融機関を通じて確認しましょう。不動産を担保にする場合の仕組みは根抵当権と担保設定の基本で、調達手段の全体像は融資・資金調達ガイドで整理しています。

手段を比べるときは、表面の金利だけでなく、手数料・保証料・印紙代、ABLなら評価や報告にかかる手間まで含めた総コストで判断します。金利の差がどれくらい効くかは、次の計算例が目安になります。

計算例:金利の差で総返済額はどれだけ変わる?

例えば、借入残高1,000万円・残り5年(60回)の元利均等返済を、金利2.5%と1.5%で比べた場合の概算です。

  • 金利2.5%:毎月の返済約177,500円、総返済額約1,065万円、利息合計約65万円
  • 金利1.5%:毎月の返済約173,100円、総返済額約1,039万円、利息合計約39万円
  • 差額:毎月約4,400円、総返済額で約26万円

実際には、借換えや新規の借入にかかる手数料・保証料・印紙代などで、実質的な差は変わります。

申込みから実行後までの流れ

ABLは、担保にする資産の評価と、実行後の報告の仕組みづくりがセットになります。おおむね次の流れで進みます。

  1. 担保にできる資産を洗い出す在庫の一覧(品目・数量・保管場所・売れる速さ)と、売掛金の一覧(取引先別・期日別)を作ります。
  2. 金融機関に相談し、評価を受ける金融機関や評価を行う会社が在庫・設備を確認し、掛け目と借入枠の案が示されます。
  3. 契約を結び、登記する融資契約と担保の契約を結び、動産譲渡登記・債権譲渡登記で担保を第三者に主張できるようにします。
  4. 実行後に定期的に報告する在庫表や売掛金の明細を提出し、評価の変化に応じて借入枠の見直しを受けます。

実行後の報告は、月次の試算表と同じ締め日で作れるようにしておくと負担が軽くなります。在庫管理と売掛金管理の仕組みを、申込みの前に整えておくことが近道です。

会計・税務と決算書で気をつけること

ABLで借りたお金は、通常の融資と同じく借入金として負債に計上し、利息は支払利息として期間に応じて費用にします。売掛金を売って現金化するファクタリングは、借入ではなく売掛金の譲渡として処理するため、決算書の見え方が異なります。

ABLでは、決算書や月次の数字が担保の評価に直結します。帳簿上の在庫と現物が合っていない、長く売れ残った在庫がそのまま残っているといった状態では、評価が下がるだけでなく、金融機関の信頼も損ないます。

  • 期末だけでなく、定期的に実地棚卸をして帳簿の在庫と照らし合わせている
  • 売掛金を取引先別・期日別に一覧にし、期日を過ぎたものを把握している
  • 長く売れ残っている在庫の扱いを、評価の方針として決めている
  • 担保に差し入れている資産の内容を、金融機関に説明できるよう整理している

なお、売れ残った在庫の評価損を税務上の損金にできるのは、災害による損傷や著しい陳腐化など、一定の事実がある場合に限られます。在庫の評価を下げる判断は、会計と税務の両方の扱いを確認してから行いましょう。月次決算と在庫管理の体制づくりは、会計・税務顧問の支援内容で紹介しています。

よくある質問

個人事業主でもABLを使えますか?

動産譲渡登記・債権譲渡登記は、担保を差し入れる側が法人の場合に利用できる制度です。個人事業主の場合は、登記以外の方法で担保を主張できるようにする必要があり、取り扱う金融機関も限られることがあります。まずは取引金融機関に相談してみましょう。

ABLを使うと、売掛金の取引先に知られますか?

債権譲渡登記を使うと、取引先への通知は、担保を実行するときまで行わない形にもできます。ただし、登記の概要は第三者も確認できる仕組みのため、まったく知られないとは限りません。取引先との関係を踏まえて、通知の時期と方法を契約で確認しておきましょう。

赤字の会社でもABLで借りられますか?

担保資産の価値に着目する分、決算の数字だけで判断されにくい面はありますが、返済の見通しの審査は行われます。在庫や売掛金の管理が整っているか、改善の計画があるかが判断の材料になります。

在庫の評価が下がったら、すぐに返済を求められますか?

契約の内容によります。借入枠が担保の評価額と連動している場合、評価が下がって枠を超えた部分について、返済や追加の担保を求められることがあります。季節によって在庫が大きく変わる事業は、評価が下がる時期の資金繰りも前もって考えておきましょう。

まとめ

ABLは、在庫や売掛金など自社の資産を活かして運転資金を確保する有効な選択肢になり得ます。借入可能額は評価額に掛け目をかけて決まり、実行後は報告や処分の制限が伴うため、保証付き融資やファクタリングなど他の手段と総コストで比べて選びましょう。在庫と売掛金の管理を整えておくことが、ABLを使う場合にも、使わない場合にも資金繰りの土台になります。

札幌の公認会計士・税理士事務所

ABL・運転資金の調達のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ

  • 初回相談は無料(オンライン対応可)
  • フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
  • その場でご契約を迫ることはありません

対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 改訂(借入可能額の考え方、他の調達手段との比較、手続きの流れ、会計・税務の注意点を追加)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次