事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者探しや承継の進め方を無料・秘密厳守で相談できる公的な窓口です。使い方は、窓口相談で現状を話し、課題を整理したうえで、必要に応じて専門家の紹介や後継者・買い手候補とのマッチングへ進む段階的な流れです。相談の流れ、準備する資料、専門家との使い分けをまとめました。
この記事の結論
事業承継・引継ぎ支援センターは、親族内・社内・第三者のどの承継でも使える公的な相談の入口です。方向性の整理は無料のセンターで、株価・税金・契約は専門家と組み合わせて進めるのが安心です。
- 国の事業として各都道府県に設置され、北海道にも窓口がある
- 窓口相談は無料・秘密厳守。まだ社内に知られたくない段階でも相談できる
- 流れは窓口相談→課題の整理→専門家の紹介→マッチング→成約・引継ぎ
- 後継者がいない場合は、買い手候補や後継者候補とのマッチング支援を受けられる
- 事業承継税制の特例承継計画は2027年9月30日が提出期限。早めの相談が選択肢を広げる
事業承継・引継ぎ支援センターとは?相談できる内容と費用
事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業や個人事業主の事業承継を支援する公的な相談窓口です。国の事業として各都道府県に設置され、北海道にも窓口があります。親族や従業員への承継だけでなく、後継者がいない場合の第三者への引継ぎ(M&A)や、後継者を探すマッチングまで幅広く対応しています。
公的機関なので、特定の仲介会社の利益に偏らず、中立的な立場で相談に乗ってもらえます。「まだ具体的に決まっていないけれど、将来が不安」という段階でも相談できるため、早めに利用しておくと選択肢が広がります。
| 承継の形 | 相談できる主な内容 |
|---|---|
| 親族内の承継 | 後継者への引継ぎの進め方、株式や事業用資産の移し方の方向性、承継の計画づくり |
| 従業員・役員への承継 | 社内の後継者候補への引継ぎ方、株式を買い取る資金の考え方 |
| 第三者への引継ぎ(M&A) | 譲渡先探しの進め方、譲り受けたい側(買い手)の相談、民間の支援機関との連携 |
| 後継者探し | 起業や事業の引継ぎを希望する個人とのマッチング(後継者人材バンク) |
費用:センターへの相談は無料
センターでの相談は無料で、相談内容の秘密は守られます。一方、株価の算定や税金の試算、契約書の作成、民間の仲介会社による買い手探しなど、専門家に依頼する部分には費用がかかります。どこまでを無料の窓口で進め、どこから専門家に頼むかを最初に整理しておくと、費用の見通しが立ちます。
相談の流れは?窓口相談から成約・引継ぎまでの5段階
センターの利用は、おおむね次の5段階で進みます。段階ごとに相談者が準備することを知っておくと、手戻りなく進められます。
| 段階 | 主な内容 | 相談者が準備すること |
|---|---|---|
| 窓口相談 | 承継の希望や現状をヒアリング(無料・秘密厳守) | 決算書と、承継の希望(いつまでに・誰に)のメモ |
| 課題の整理 | 親族内・社内・第三者などの方向性を検討 | 株主の構成、借入金と個人保証の状況 |
| 専門家の紹介 | 必要に応じて税理士・公認会計士等を案内 | 顧問税理士がいれば、資料の共有や同席を依頼 |
| マッチング支援 | 後継者や買い手候補とのつなぎを支援 | 会社の強み・主な取引先・従業員の情報を整理 |
| 成約・引継ぎ | 条件交渉や契約を経て承継を実行 | 株価算定・税金の試算・契約書の確認 |
最初は窓口相談からです。電話などで予約のうえ、会社の状況や承継への希望を伝えます。相談内容は秘密が守られるので、まだ社内に知られたくない段階でも安心です。
方向性が見えてきたら、専門家の紹介や、後継者・買い手とのマッチング支援へと進みます。たとえば年商5,000万円の飲食業で後継者がいない場合、第三者への引継ぎを軸に候補探しを進める、といった流れになります。案件によっては、センターと連携する民間のM&A支援機関や金融機関に引き継がれることもあります。
許認可と契約は承継の形で扱いが変わる
株式譲渡なら会社がそのまま許認可や契約を持ち続けるのが原則ですが、事業譲渡では許認可の取り直しや、取引先・貸主の承諾が必要になる場合があります。株式譲渡でも、オーナーが変わったときの通知や解除を定めた条項が契約書にないか確認しておきましょう。
飲食業の店舗の賃貸借や営業許可のように、業種ごとに確認先が異なります。所管の窓口や契約の相手方に早めに確認しておくと、成約の直前で慌てずに済みます。
北海道で相談する場合
北海道にも事業承継・引継ぎ支援センターの窓口があります。道内は地域が広いため、オンラインでの相談や出張相談に対応しているかを予約の際に確認しておくとよいでしょう。所在地や受付時間は、センターの案内で最新の情報を確認してください。
冬に売上が落ちる業種や観光の繁忙期がある業種は、月ごとの売上の波を資料で説明できるようにしておくと、譲渡先との話し合いが進めやすくなります。
相談前に何を準備する?持っていく資料と整理しておくこと
窓口相談は資料がなくても受けられますが、資料があるほど具体的な助言をもらえます。次のものを用意しておくと、初回から話が進みます。
- 直近3期分の決算書(個人事業主は確定申告書と青色申告決算書)
- 株主名簿(誰が何株を持っているか。名義だけ借りた「名義株」がないか)
- 借入金の一覧と、社長の個人保証・担保の状況
- 事業に使っている土地・建物の一覧(会社名義か社長個人の名義か)
- 従業員の人数・年齢構成と、引継ぎの鍵になる人
- 主な取引先と、取引の継続性がわかる契約書
- 承継の希望(いつまでに、誰に、どんな形で、どのくらいの条件で)
社長個人の名義の土地を会社が使っている場合や、社長が会社にお金を貸している場合は、承継の形によって扱いが大きく変わります。会社の資料だけでなく、社長個人の財産と借入れもあわせて整理しておくと、方向性を決めやすくなります。
親族への承継なら、相続の準備も並行して進める
相続で早めに確認しておくこと
- 財産の一覧(不動産・預貯金・有価証券・保険)
- 借入金・未払金などの債務
- 法定相続人の確認
- 遺言の有無
- 自社株がある場合の評価と承継方針
親族への承継では、社長が持つ自社株は相続財産になります。相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。自社株の評価が高い会社では、ほかの相続人との公平や納税資金が課題になりやすいため、早めに評価額を把握しておきます。
センターと民間の仲介会社・専門家はどう違う?使い分けの目安
センターは入口として優れていますが、承継の実務はセンターだけでは完結しません。相談先ごとの役割を知っておくと、誰に何を頼むかを決めやすくなります。
| 相談先 | 主な役割 | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 中立的な立場での相談、方向性の整理、マッチングの支援 | 相談は無料 | 何から始めればよいか分からない段階、中立的な意見がほしいとき |
| 民間のM&A仲介会社・FA | 買い手探し、条件交渉の支援、契約までの進行管理 | 契約に応じた手数料(着手金・成功報酬など) | 第三者への譲渡を本格的に進める段階 |
| 税理士・公認会計士 | 株価の算定、税負担の試算、承継の形の比較、事業承継税制の手続き | 依頼内容に応じた報酬 | 株価・税金・納税資金の見通しを立てるとき |
| 弁護士 | 契約書の作成・確認、株主や親族との調整、紛争の予防 | 依頼内容に応じた報酬 | 契約条件の確認や、株主間の調整が必要なとき |
| 金融機関 | 承継に必要な資金の融資、経営者保証の扱いの相談 | 融資の利息・保証料 | 株式の買取資金や個人保証の扱いを相談するとき |
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、売り手か買い手の一方の立場で助言する専門家です。これに対して仲介会社は、売り手と買い手の双方と契約するのが一般的です。民間の会社と契約する前にセンターで中立的な意見を聞いておくと、手数料の体系や契約の条件を冷静に比べられます。
専門家と組み合わせると何が変わる?株価・税金・契約の確認
実際の承継では、株式の評価、税負担の検討、契約書の確認など、専門的な作業が多く発生します。センターで方向性を固めつつ、自社の数字を理解している専門家と並行して進めると、手続きが滞りなく運びます。
とくに株価の算定や税金の見通しは、承継の形によって大きく変わります。公認会計士・税理士が関わることで、想定外の税負担を避け、納税資金の準備まで含めた現実的な計画を立てられます。
| 承継の形 | 株価の基準 | 主な税金 | 専門家に確認したいこと |
|---|---|---|---|
| 親族への承継(贈与・相続) | 財産評価基本通達に基づく評価額(類似業種比準価額・純資産価額など) | 贈与税・相続税 | 自社株の評価額、納税資金、事業承継税制を使うか |
| 従業員・役員への承継(株式の売買) | 当事者の合意。ただし税務上の時価との差に注意 | 売り手の譲渡所得税など | 買取資金の調達、時価より著しく低い価額で譲渡したときの課税 |
| 第三者への引継ぎ(M&A) | 交渉で決まる売買価格 | 株式譲渡なら売り手の譲渡所得税、事業譲渡なら会社の法人税等 | 株価算定、買収前の調査(DD)への対応、手取りの試算、契約条件 |
親族への承継で自社株を少しずつ贈与する場合は、相続開始前の贈与が相続財産に加算される点も踏まえて計画します。加算の期間は、2026年12月31日までの相続開始は3年、2027年1月1日〜2030年12月31日は2024年1月1日以後の贈与、2031年1月1日以後は7年と段階的に延びます。
無料ツール自社株の評価額(原則的評価)を自動計算する類似業種比準価額と純資産価額から、非上場株式の原則的評価額の目安を計算できます。計算する 無料
ツール会社規模の判定(Lの割合)を確認する従業員数・総資産価額・取引金額から会社規模を判定し、自社株の評価方式の目安を確認できます。計算する
贈与税・相続税の負担が大きい場合は、納税を猶予する事業承継税制を検討します。要件と手続きは事業承継税制の要件と手続きの流れで、第三者への引継ぎで行われる買収前の調査は財務デューデリジェンスで確認される項目で詳しく解説しています。
自社株の評価額や承継の形による税金は、会社ごとに大きく変わります。初回無料で現状を伺い、進め方を整理します。
無料で相談する費用や税金の負担を軽くする制度は?補助金と事業承継税制の期限
承継やM&Aにかかる専門家の費用には国の補助金が、自社株の贈与・相続には事業承継税制が使える場合があります。2026年10月時点の主な制度と期限は次のとおりです。
| 制度 | 内容(2026年10月時点) | 注意点 |
|---|---|---|
| 事業承継・M&A補助金(16次) | 公募期間は2026年10月2日〜11月6日17時(予定)。承継促進・専門家活用・PMI・廃業・再チャレンジの区分があり、専門家活用の補助上限は450万〜2,000万円 | 申請はJグランツ。採択されても入金は事業の後のため、支払いの資金は先に用意する |
| 事業承継税制(法人・特例措置) | 特例承継計画の提出期限は2027年9月30日。特例措置による贈与・相続の期限は2027年12月31日 | 延長されたのは計画の提出期限だけで、贈与・相続の期限は変わっていない |
| 事業承継税制(個人版) | 個人事業者の事業用資産が対象。計画の提出期限は2028年9月30日、対象となる贈与・相続は2028年12月31日まで | 計画は認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成する |
補助金は公募の回ごとに期間や要件、対象になる経費・支援機関の条件が変わります。申請を考える場合は、最新の公募要領で確認してください。事業承継税制は、計画の提出期限を過ぎると特例措置を使えなくなるため、親族への承継を考えている場合は期限から逆算して準備を始めます。
よくある質問
相談したことが、取引先や従業員に知られることはありませんか?
窓口での相談内容は秘密が守られます。マッチングの段階で候補先に会社の情報を出すときも、一般的には社名を伏せた概要から開示します。どの情報を、どの段階で、誰に出すかを確認しながら進めましょう。
個人事業主や小さな会社でも相談できますか?
相談できます。センターは中小企業だけでなく個人事業主も対象です。民間の仲介会社では手数料の最低額が設けられていることがあるため、規模の小さい事業ほど、公的な窓口が相談の入口になりやすいといえます。
顧問税理士がいても、センターに相談してよいですか?
問題ありません。センターでは中立的な立場で方向性を整理し、顧問税理士には自社の数字に基づく株価や税金の検証を任せる、という分担ができます。センターで聞いた内容を顧問税理士と共有しておくと、話が早く進みます。
センターに相談したら、M&Aを勧められるのではと不安です。
相談したからといって、M&Aを進める義務が生じるわけではありません。センターは親族内や社内での承継も含めて方向性を一緒に整理する窓口です。方向性が決まらないうちは、情報収集の場として使っても構いません。
相談を始めてから承継が終わるまで、どのくらいかかりますか?
承継の形や相手探しの状況で大きく変わります。親族内の承継では後継者の育成に年単位の時間がかかることが多く、第三者への引継ぎでも相手探しから成約まで時間を要します。希望する引退の時期から逆算し、早めに相談を始めることが大切です。
まとめ
事業承継・引継ぎ支援センターは、親族内・社内・第三者のどの承継でも無料・秘密厳守で相談できる公的な入口です。窓口相談から成約・引継ぎまでの流れの中で、株価・税金・契約は専門家と組み合わせて進めると、想定外の税負担を避けられます。事業承継税制の計画提出期限なども踏まえ、方向性が決まっていない段階から早めに相談しておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
