事業承継補助金(経営革新・専門家活用)の活用法|現行の4枠と申請の注意点

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事業承継補助金の「経営革新」「専門家活用」は、承継を機にした投資や、M&Aで専門家に払う費用の一部を補助する枠です。2026年10月時点では事業承継・M&A補助金として、承継促進・専門家活用・PMI推進・廃業・再チャレンジの4枠で公募されています。後払いのため、立替資金の準備も欠かせません。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

承継やM&Aにかかるお金の負担は、事業承継・M&A補助金で軽くできる可能性があります。ただし採択が必要で、入金は費用を払った後になるため、承継の計画と資金繰りをセットで準備します。

  • 以前の「専門家活用」は現行の専門家活用枠に引き継がれ、M&Aの仲介・FA・デューデリジェンスの費用などが対象
  • 承継を機にした設備投資などは、承継の形と時期に応じて承継促進枠やPMI推進枠を確認する
  • 2026年10月時点の第16次公募は、申請の受付が2026年10月2日〜11月6日17時(予定)
  • 原則として交付決定より前に契約・発注した費用は対象外。GビズIDプライムの取得も早めに
  • 補助金は課税される収入。設備に充てた分は圧縮記帳を検討する
目次

事業承継補助金とは?2026年10月時点の名前と全体像

事業承継には、想像以上にお金がかかります。後継者への引継ぎに伴う設備の更新や新たな取り組み、第三者へのM&Aで専門家に依頼する費用など、承継を前に進めようとするほど資金の負担が見えてきます。こうした負担を軽くする手立てが事業承継補助金です。

事業承継補助金は、事業承継やM&Aを契機に新たな取り組みや経営資源の引継ぎを行う中小企業を支援する補助金です。承継そのものではなく、承継をきっかけとした前向きな投資や、引継ぎに必要な費用を支援する点に特徴があります。以前は「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」の枠で公募されていましたが、2026年10月時点では「事業承継・M&A補助金」という名前で公募されています。

4枠承継促進・専門家活用・PMI推進・廃業・再チャレンジ(第16次)
11/6第16次の申請締切(2026年11月6日17時・予定)
後払い費用を支払い、実績報告と検査を経てから入金

補助金は融資と違い、原則として返済が不要です。ただし、申請すれば受け取れるものではなく、要件を満たし、事業計画を示して採択される必要があります。公募の時期や内容は回ごとに変わるため、最新の公募要領を確認することが前提になります。申請はJグランツ(国の補助金の電子申請システム)で行います。

経営革新と専門家活用の枠はどうなった?現行の4枠との対応

2026年10月時点の第16次公募の枠と、以前の枠との関係を整理します。補助上限は類型や条件によって幅があり、補助率と対象経費も枠ごとに異なります。

枠主な対象補助上限以前の枠との関係(目安)
事業承継促進枠親族内承継や従業員承継を予定している会社が、承継に向けて行う設備投資など800万〜1,000万円承継を機にした投資という点で、以前の経営革新に近い
専門家活用枠M&Aで使う仲介・FA・デューデリジェンスなどの専門家費用(買い手側・売り手側)450万〜2,000万円以前の専門家活用を引き継ぐ
PMI推進枠M&A後の経営統合(PMI)のための専門家費用や投資など150万〜1,000万円M&A後の投資という点で、以前の経営革新の一部に近い
廃業・再チャレンジ枠承継やM&Aに伴う既存事業の廃業や、再チャレンジにかかる費用150万〜300万円以前の廃業・再チャレンジを引き継ぐ
事業承継・M&A補助金(第16次)の枠の概要(2026年10月時点。補助率・対象経費・要件は公募要領で確認)

承継を機にした投資(以前の経営革新)を考える場合

以前の経営革新の枠は、承継を機に新商品の開発や販路開拓、設備の導入などに取り組む費用が対象で、先代から引き継いだ事業を後継者が一歩前へ進めるための投資を後押しするものでした。現行の枠では、承継の形(親族内・従業員・M&A)と投資の時期(承継の前か後か)によって、確認する枠が変わります。親族や従業員への承継を予定している会社の投資なら事業承継促進枠、M&Aの後に統合を進めるための投資ならPMI推進枠が候補になります。

M&Aの専門家費用(専門家活用)を考える場合

専門家活用の枠は、M&Aを進めるうえで欠かせない仲介手数料やFA(フィナンシャル・アドバイザー)の報酬、財務デューデリジェンスなどの調査費用が対象です。たとえば後継者がいない年商6,000万円の会社が第三者への譲渡を進める場合、その過程で生じる専門家費用の一部を補助で賄える可能性があります。財務デューデリジェンスで調べる内容は財務デューデリジェンスの進め方と調査項目で解説しています。

専門家活用枠で先に確認したい2つの点

  • FA・仲介の費用は、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された支援機関への支払いが対象になる扱いです。依頼先が登録されているかを、契約の前に確認します。
  • 原則として、交付決定より前に契約・発注した費用は対象になりません。仲介会社やFAとの契約の時期は、公募要領で補助の対象期間を確かめてから決めます。

活用するための準備とポイント|申請から入金までの流れ

補助金は原則として後払いです。対象経費を支払った後に補助されるため、いったんは自己資金や借入で立て替える必要があります。申請から入金までは、おおむね次の流れで進みます。

  1. 公募要領を読み、枠と対象経費を決める承継の形と時期から使う枠を決め、対象になる経費と補助率、上限を確認します。
  2. GビズIDプライムを取得するJグランツでの電子申請に必要なアカウントです。取得に日数がかかることがあるため、公募の前に準備します。
  3. 事業計画を作って申請する見積書をそろえ、承継の計画と補助事業の内容を事業計画にまとめて申請します。
  4. 採択・交付決定を受ける交付決定の通知を受けてから、原則として契約・発注に進みます。
  5. 補助事業を実施して支払う計画どおりに事業を行い、費用を支払います。見積書・契約書・請求書・振込の記録を保管します。
  6. 実績報告と検査を経て入金実績報告の内容が確認され、補助金の額が確定した後に入金されます。
  7. 事後の義務を守る補助事業の終了後も、一定期間の報告や、補助金で取得した設備を勝手に処分しないといった制限が求められることがあります。

計算例:専門家費用を補助で賄う場合の立替額

例えば、M&Aの専門家費用として600万円(税抜)を支払い、補助率を仮に2分の1とした場合です(実際の補助率は枠・類型・事業者の規模で異なります)。

補助金の額:600万円×1/2=300万円

支払いの時点では600万円の全額を立て替え、実績報告と検査を経て300万円が入金されます。

最終的な自己負担:600万円−300万円=300万円

交付決定から入金まで時間がかかるため、立て替える期間の資金繰りを先に確認しておきます。

立替資金を融資で用意する場合(札幌市・北海道)

札幌市の融資制度は、2026年10月1日以降に実行される分から利率が0.3%上乗せされています。北海道の制度融資を含め、借入の時期と利率は金融機関や窓口で最新の条件を確認してから、資金繰り表に反映してください。

申請の準備には手間がかかるため、認定経営革新等支援機関(国が認定した支援機関)や、承継・M&Aに詳しい公認会計士・税理士の支援を受けると進めやすくなります。承継の全体計画と補助金の活用をセットで考えることで、資金面の不安を抑えながら承継を実行できます。資金調達の全体像は融資・資金調達ガイドで整理しています。

どの枠に当たるか、契約をいつ結ぶかで、補助の対象になるかが変わります。初回無料で、承継の計画とあわせて確認できます。

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採択に向けた事業計画では何を書く?

申請では事業計画の提出が求められ、その内容が採択を左右します。審査する側に「なぜ今、この費用が必要で、承継によって会社がどう変わるか」が伝わるように組み立てます。

  • 承継の計画(いつ、誰に、どの方法で引き継ぐか)
  • 補助事業の内容と、承継との関係
  • 費用の内訳と見積書(相見積もりが求められる場合もある)
  • 実施のスケジュール(交付決定後に契約・発注する前提で組む)
  • 期待する効果(売上・利益・雇用・賃上げなどの見通し)
  • 立替資金の手当て(自己資金・借入の内訳)

補助上限が引き上がる条件として賃上げなどの目標が設けられている類型では、目標を達成できなかった場合の扱いも公募要領で確認しておきます。数字の根拠を示せる計画の作り方は融資・補助金に強い経営計画の作り方で解説しています。

補助金を受け取ったら?会計処理と税金の注意点

補助金は返済が不要な分、税金の面では収入として扱われます。決算で慌てないよう、受け取る前に処理の方針を決めておきます。

項目取扱い注意点
補助金の収入法人は益金、個人事業は事業所得の収入として課税の対象どの事業年度の収益にするかは、交付の決定や額の確定の時期によって判断する
補助金で取得した設備要件を満たせば、法人は圧縮記帳、個人事業は総収入金額に算入しない特例で、受け取った年の課税を将来に繰り延べられる圧縮した分だけ取得価額が下がり、以後の減価償却費が小さくなる
消費税補助金そのものは消費税の課税対象外(不課税)補助対象経費に消費税を含められるかは公募要領で確認する
M&Aの専門家費用買い手が株式を取得するための仲介手数料などは、株式の取得価額に含めるのが原則個人の株主が株式を売る場合の仲介手数料は、譲渡所得の計算で譲渡費用として差し引く
補助金と承継の費用の会計・税務の主な論点(2026年10月時点の一般的な整理)

圧縮記帳とは、補助金で取得した設備の帳簿上の取得価額を、補助金の分だけ減らして損金に計上する処理です。補助金の収入と圧縮の損金が相殺されるため、受け取った年に一度に課税されることを避けられます。その代わりに毎年の減価償却費が小さくなるため、課税の時期が後にずれる仕組みです。

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ツール
補助金で取得した設備の減価償却費を計算する圧縮記帳の後の取得価額と耐用年数を入れると、定額法による毎年の減価償却費の目安を確認できます。計算する

補助金とあわせて検討したい承継の支援策

補助金は承継にかかる費用の一部を賄う手段の一つです。株式の承継にかかる税金や、承継前の経営改善には、別の制度を組み合わせて考えます。

支援策向いている場面確認したいこと
事業承継税制(特例措置)親族などの後継者に自社株を贈与・相続するときの税負担を抑えたい特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、贈与・相続の期限は2027年12月31日
経営改善計画策定支援事業承継の前に、借入や収益の立て直しの計画を作りたい認定支援機関の支援を受けて計画を作り、金融機関と共有・調整する
事業承継・引継ぎ支援センター後継者探しやM&Aの進め方を、公的な窓口に相談したい国が各都道府県に設置している相談窓口
金融機関の融資株式の買取りや承継後の投資の資金、補助金の立替資金を用意したい補助金の入金時期と、返済の計画の整合
事業承継で組み合わせを検討したい主な支援策(2026年10月時点)

事業承継税制の要件と手続きは事業承継税制の要件と期限の解説で、承継の前に経営改善の計画を作る方法は経営改善計画策定支援事業の使い方と専門家費用の補助で紹介しています。

よくある質問

不採択になった場合、次の公募で申請し直せますか?

次の公募が行われれば、計画を見直して申請し直せる場合があります。不採択の理由が開示されるとは限らないため、事業計画の書き方、費用の必要性の説明、承継との関係の示し方を見直します。公募の回によって枠や要件が変わることがあるため、前回の計画をそのまま出し直すのではなく、新しい公募要領に合わせて作り直します。

採択されれば、申請した金額をそのまま受け取れますか?

採択は、補助の対象になる候補に選ばれたという段階です。交付決定、事業の実施、実績報告と検査を経て、対象と認められた経費に補助率を掛けた額(上限の範囲内)が支払われます。対象外の支払いや、計画と違う実施があると減額されることがあります。

会社を売る側でも専門家活用枠は使えますか?

専門家活用枠には、買い手側と売り手側のそれぞれの専門家費用を対象とする類型があります。売り手の場合も、依頼する仲介会社やFAが登録された支援機関か、契約の時期が補助の対象期間に入るかを、契約の前に確認することが大切です。

申請の準備はいつから始めればよいですか?

公募が始まる前から、GビズIDプライムの取得、見積書の取り寄せ、承継の計画づくりを進めておくと、受付期間内に余裕を持って申請できます。2026年10月時点の第16次公募は、受付が2026年11月6日17時までの予定です。次の公募の日程は、中小企業庁や事務局の発表で確認してください。

まとめ

事業承継補助金は、2026年10月時点では事業承継・M&A補助金として、承継促進・専門家活用・PMI推進・廃業・再チャレンジの4枠で公募されています。以前の専門家活用は専門家活用枠に、承継を機にした投資は承継の形と時期に応じて承継促進枠やPMI推進枠に当てはめて考えます。後払いの立替資金、交付決定前の契約の扱い、受け取った後の税金まで含めて、承継の計画とセットで準備を進めましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(2026年10月時点の公募内容を反映)

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