法人成りの費用は、設立時の法定費用が株式会社で約18〜24万円、合同会社で約6〜10万円が目安です。これに専門家への報酬と、赤字でもかかる住民税の均等割(札幌市内なら最低年7万円)や社会保険料などの継続費用が加わります。設立時と設立後に分けて、何にいくらかかるかを整理します。
この記事の結論
法人成りの費用は「設立時の一時費用」と「設立後の継続費用」に分けて考えます。判断の分かれ目は設立費用よりも、毎年かかる均等割・社会保険料・税理士報酬と、法人化で減る税金との比較です。
- 法定費用は株式会社で約18〜24万円、合同会社で約6〜10万円(電子定款なら印紙代4万円が不要)
- 札幌市内での設立は、特定創業支援等事業の証明書があれば登録免許税が半分になる
- 設立後は、赤字でも住民税の均等割(最低年7万円)がかかり、社長1人でも社会保険への加入が必要
- 資本金1,000万円未満なら原則1期目の消費税は免税。ただし個人向けの3割特例は法人には使えない
- 専門家の報酬は依頼範囲で変わるため、設立と設立後の顧問を分けて見積りを取る
設立時にかかる法定費用はいくら?株式会社と合同会社の比較
法人成りとは、個人事業を会社組織にすることです。まずかかるのが、国に納める登録免許税などの法定費用で、会社の形態によって金額が大きく変わります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証の手数料 | 3万〜5万円(資本金の額などによる。一定の要件を満たす場合は1.5万円) | 不要 |
| 登録免許税 | 資本金×0.7%(最低15万円) | 資本金×0.7%(最低6万円) |
| 定款の収入印紙代 | 4万円(電子定款は0円) | 4万円(電子定款は0円) |
| 法定費用の合計の目安 | 約18〜24万円 | 約6〜10万円 |
計算例:資本金300万円で設立する場合
例えば資本金300万円の株式会社を電子定款で設立する場合、登録免許税は300万円×0.7%=2.1万円が最低額15万円を下回るため15万円です。定款認証の手数料5万円を足すと、15万円+5万円=20万円になります。
同じ資本金の合同会社なら、定款認証が不要で登録免許税は最低額の6万円です。電子定款を使えば、法定費用は6万円で済みます。
コストだけを見れば合同会社が有利ですが、取引先や金融機関からの見られ方、将来の出資の受け入れ方まで見据えて選ぶことが大切です。株式会社の費用の内訳と手続きは株式会社設立の法定費用の内訳で詳しく確認できます。
札幌市内で設立するなら登録免許税を半分にできる
市内の支援機関で1か月以上・4回以上にわたり経営・財務・人材育成・販路開拓の支援を受けると、札幌市の特定創業支援等事業の証明書が発行されます。証明書を添えて市内で設立すると、登録免許税が0.7%から0.35%になり、最低額も株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円に下がります。
証明書の有効期限は、2026年10月時点の案内では2027年3月31日までです。設立後に申請する市の「さっぽろ新規創業促進補助金」(株式会社75,000円・合同会社30,000円、設立から90日以内か2027年3月31日の早い日までに申請)もあわせて確認しておきましょう。
専門家へ依頼する場合の報酬は何で決まる?
設立の手続きや税務を専門家に頼むと、法定費用とは別に報酬がかかります。報酬は事務所ごとに異なり、依頼する範囲によって大きく変わるため、まず「誰に何を頼むか」を整理します。
| 専門家 | 主に頼めること | 報酬が変わる主な要素 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 会社の設立登記の申請の代理 | 機関設計、出資者の人数、現物出資の有無 |
| 行政書士 | 定款などの書類の作成(登記の申請は除く) | 電子定款への対応、書類の数 |
| 税理士 | 資本金・決算月・役員報酬の設計、設立後の税務の届出、法人成りの損得の試算 | 試算の範囲、設立後の顧問契約の有無、記帳や給与計算を任せるか |
法人成りでは、設立そのものよりも「税務上の有利・不利」の判断が重要です。資本金の額や決算月、役員報酬の決め方を誤ると、法人化の効果が薄れることがあります。税理士に設立の前から相談する価値は、まさにこの設計の部分にあります。
- 商号(会社名)・本店所在地・事業目的
- 資本金の額と出資者の構成
- 決算月(繁忙期を避けると決算・申告の負担が軽くなる)
- 役員の構成と任期、役員報酬の額
- 設立日と、個人事業から引き継ぐ資産・契約の範囲
上の項目を決めてから見積りを依頼すると、各事務所の金額を同じ条件で比べられます。当事務所は、法人成りの損得の試算から設立の準備、設立後の顧問契約まで一貫して対応しています。設立後の決算・申告だけを単発でお受けすることはしておらず、継続的な顧問契約の中で支援しています。
設立後にかかる継続費用は?赤字でも出ていくお金
法人成りで見落としがちなのが、設立後に毎年かかる費用です。会社は赤字でも一定の負担が生じるため、売上が安定する前に法人化すると、この固定費が重く感じられます。
| 費用 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 北海道2万円+札幌市5万円=年7万円(資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の場合) | 赤字の年もかかる |
| 社会保険料 | 健康保険・厚生年金の会社負担分と本人負担分 | 法人は社長1人だけでも強制適用 |
| 税理士の顧問料・決算申告の報酬 | 記帳の支援、月次の確認、決算書と法人税などの申告書の作成 | 取引の量と依頼範囲で金額が変わる |
| 申告の手間 | 法人税・消費税・道民税・市民税の申告。防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から、税額が0でも申告が必要 | 申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月 |
社会保険料は、法人成りの損得を左右する大きな費用です。2026年10月時点の料率は、協会けんぽ北海道の健康保険が10.28%(40歳以上65歳未満は介護保険1.62%が加わる)、厚生年金が18.3%、子ども・子育て支援金が0.23%です。いずれも会社と本人が半分ずつ負担します。
計算例:役員報酬が月30万円の社長1人の会社
例えば標準報酬月額が30万円で、介護保険の対象ではない社長の場合、毎月の保険料(会社と本人の合計)は次のとおりです。健康保険は30万円×10.28%=30,840円、厚生年金は30万円×18.3%=54,900円、子ども・子育て支援金は30万円×0.23%=690円です。
合計は30,840円+54,900円+690円=86,430円で、会社負担と本人負担はその半分の43,215円ずつです。社長1人の会社では実質的に両方を負担するため、年間では86,430円×12か月=1,037,160円になります。個人事業のときの国民健康保険料・国民年金保険料と比べて判断します。
ツール法人成りした場合の税金と手取りを試算する事業の利益を入れると、個人事業のままの場合と法人成りした場合の税金・社会保険料の差を比べられます。計算する
個人事業をたたむときにかかるお金と手続きは?
法人成りでは、会社を作る費用だけでなく、個人事業を終える側の手続きと税金も発生します。設立と同じ年に個人の確定申告もあるため、1年目は申告が二重になる点を資金と時間の計画に入れておきます。
- 税務署に個人事業の廃業届を出し、給与を払っていたなら給与支払事務所等の廃止の届出もする
- 在庫や車両・備品を会社に引き継ぐときは、売買か賃貸かを決める。売れば個人側で売上や譲渡の所得になり、消費税の課税事業者なら消費税もかかる
- 取引先との契約、事業用口座、賃貸借契約、許認可は会社名義への切替えが必要か確認する
- 廃業した年の分も、翌年に個人の確定申告をする(年の途中までの事業所得と、会社からの役員報酬を合わせて申告)
会社を設立したら、設立の日以後2か月以内に法人設立届出書を、設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のうち早い日の前日までに青色申告の承認申請書を出します。道と市への設立の届出もあわせて行います。
トータルの費用感と、法人成りの損得の考え方
設立の法定費用と専門家の報酬、設立後の継続費用を合計すると、初年度の負担が個人事業のときより重くなるかどうかは、利益の水準と役員報酬の設計で変わります。大切なのは、ご自身の事業規模で「いつ法人成りすると得か」を数字で見極めることです。
| 法人化で有利になりやすい点 | 法人化で不利になりやすい点 |
|---|---|
| 中小法人の所得年800万円以下の部分は法人税率15%(本則19%。2027年3月31日までに開始する事業年度) | 赤字でも均等割(最低年7万円)がかかる |
| 社長への役員報酬に給与所得控除が使える | 社長1人でも社会保険に加入し、会社負担が生じる |
| 資本金1,000万円未満なら、原則として1期目の消費税は免税 | 個人の3割特例(令和9・10年分)のような負担軽減の特例が法人にはない |
| 取引先や金融機関からの信用を得やすい場面がある | 決算・申告の手間と専門家の報酬が増える |
消費税は、設立1期目の免税だけで判断しないことが大切です。前期の最初の6か月(特定期間)の売上と給与がともに1,000万円を超えると2期目から課税になり、インボイス登録をすれば1期目から申告が必要です。2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わり、令和9年分・令和10年分の3割特例は個人事業者だけの制度のため、個人のままの方が消費税が軽くなる場合もあります。インボイスの判断はインボイス制度の実務ガイドで確認できます。
無料ツール個人事業・法人・併用の税負担を比べる個人事業のまま、法人成り、個人事業と小さな法人の併用の3つで、税金と社会保険料の合計を比較できます。計算する
法人成りで得をするかは、利益の水準・家族の働き方・消費税の状況で変わります。設立費用を含めた損得の試算は、初回無料のご相談で確認できます。
無料で相談する具体的な顧問料や決算の報酬は、当事務所の料金・契約・業務フローのページに明記しています。費用の総額が気になる方は、まず資本金や役員報酬の考え方を含めてご相談ください。見積りは無理な勧誘なしでお出しします。
よくある質問
資本金はいくらにすればよいですか?
資本金1,000万円未満なら原則として1期目の消費税が免税になり、資本金等1,000万円以下なら住民税の均等割も最低額(年7万円)で済みます。一方で、運転資金の余裕や金融機関からの見られ方も考え、数か月分の運転資金を目安に決める方法がよく検討されます。
会社の設立費用は経費になりますか?
登録免許税や定款認証の手数料、設立登記の報酬など、会社の設立のために払った費用は「創立費」になります。設立後に営業を始めるまでの準備費用は「開業費」です。どちらも資産に計上し、任意の時期に経費(損金)にできます。個人事業の側で払った費用と混ざらないよう、領収書の宛名と日付を確認しておきます。
法人成りは年の途中でもできますか?
年の途中でもできます。その年は、個人事業の所得と会社からの役員報酬の両方を個人の確定申告で申告します。役員報酬は原則として事業年度の開始から3か月以内に決めた額を毎月同じ額で払う必要があるため、設立日と決算月はあわせて検討します。
あとから合同会社を株式会社に変えられますか?
組織変更の手続きで株式会社に変えることはできます。ただし債権者への公告などの手続きと、登記のための費用があらためてかかります。将来の出資の受け入れや上場の予定がはっきりしているなら、最初から株式会社を選ぶ方が手間はかかりません。
まとめ
法人成りの法定費用は株式会社で約18〜24万円、合同会社で約6〜10万円が目安で、札幌市内なら特定創業支援等事業で登録免許税を半分にできます。判断の分かれ目は、毎年かかる均等割・社会保険料・税理士報酬と、法人化で減る税金との比較です。消費税の特例の違いも含めて、設立前に損得を試算しておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
