会社経営者が亡くなったとき:会社と相続の手続き

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会社経営者が亡くなった場合、一般的な相続手続きに加えて会社に関する手続きが同時に発生します。代表取締役の変更登記・自社株式の評価と承継・死亡退職金の処理など、対応を誤ると税務・法務の両面でトラブルになりかねません。本記事では、優先して対応すべき手続きの全体像を整理します。

この記事は、こんな方に役立ちます

  • 相続・贈与の対策を早めに考えたい方
  • 事業承継の進め方を知りたい経営者
  • 何から手をつければよいか整理したい方
①財産の把握②評価③遺産分割の検討④申告書作成⑤申告・納税
相続税の申告期限は相続開始から10か月以内
図:相続の手続きの流れ
この記事のポイント
  • 代表取締役変更登記は速やかに行う。金融機関・取引先への連絡も優先事項。
  • 非上場株式は財産評価基本通達に基づく評価が必要。評価額が高くなりやすい点に注意。
  • 死亡退職金は500万円×法定相続人数の非課税枠あり。金額設定は慎重に。
  • 事業承継税制の活用は要件が複雑なため、早期に専門家へ相談を。
目次

会社側で優先して行う手続き

代表取締役が死亡した場合、まず会社として速やかに対応すべき事項があります。

  • 後継の代表取締役の選定と登記:取締役会設置会社は取締役会、取締役会非設置会社は株主総会で新代表を選定し、法務局への変更登記を行います。登記の申請は一般的に変更が生じた日から2週間以内が目安とされています(会社法第915条)。
  • 金融機関・取引先への連絡:代表変更を関係先に通知し、金融機関では口座の届出変更等が必要です。
  • 各種契約・保険の確認:代表者の個人保証がついた借入や、生命保険の死亡保険金受取手続きを速やかに行います。

自社株式(非上場株式)の評価と承継

非上場会社(中小企業の多く)の自社株式は、相続財産として相続税の対象になります。評価方法は、国税庁が定める「取引相場のない株式の評価」(財産評価基本通達)に従います。

評価方法は主に「類似業種比準方式」「純資産価額方式」またはその併用で、会社の規模・業種・純資産などによって決まります。業績が好調な会社ほど株価評価が高くなり、相続税が多額になることがあります。事前の株価対策(役員退職金の活用など)が有効な場合もありますが、その有効性は個別の状況によります。

死亡退職金・弔慰金の税務上の扱い

会社が遺族に支給する死亡退職金と弔慰金は、税務上それぞれ異なる扱いとなります。

支給の種類相続税の扱い非課税枠
死亡退職金みなし相続財産として相続税の対象500万円×法定相続人数が非課税
弔慰金(業務上死亡)一定額まで相続税非課税死亡当時の普通給与×36か月分が目安(業務上)
弔慰金(業務外死亡)一定額まで相続税非課税死亡当時の普通給与×6か月分が目安(業務外)

死亡退職金は会社の損金に計上できるため、適切な金額で支給すれば法人税の節税にもなります。ただし、不相当に高額な退職金は損金算入が認められない場合があるため、在任期間・報酬額・同規模他社との比較を踏まえた金額設定が重要です。

事業承継と相続税の関係

後継者が自社株式を相続・贈与で取得する際には、「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除の特例」(事業承継税制)を利用できる場合があります。

  • 一般措置:相続税・贈与税の一定割合を納税猶予。
  • 特例措置:2018年度税制改正で創設。対象株式の全部について全額の猶予が可能(特例承継計画の提出が必要で、計画提出の期限等の要件あり)。

特例措置の適用要件や手続きは複雑です。事前に税理士・中小企業診断士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

具体例|代表者死亡直後の初動対応の順序

たとえば代表取締役が急逝した場合、まず社内では新しい代表者を誰にするかの意思決定を優先し、並行して金融機関への連絡と生命保険の請求手続きを進めるのが一般的な流れです。登記の変更は株主総会や取締役会での正式な選定を経てから行うため、社内合意の形成が遅れると、2週間以内という登記の目安にも影響します。取引先への連絡は、代表者変更の登記が完了してから行う会社もあれば、混乱を避けるため先に一報を入れる会社もあり、対応方針を早めに決めておくことが望まれます。

見落としやすいポイント

  • 経営者保証の承継確認/亡くなった経営者が会社の借入に個人保証をしていた場合、その保証人としての地位が相続人にどう引き継がれるかを金融機関に確認する必要があります。相続放棄を検討する場合は特に早めの確認が欠かせません。
  • 準確定申告の準備/経営者本人の所得税について、相続人が準確定申告を行う必要があります。会社の代表者変更の手続きと並行して準備を進めることになるため、税理士への早めの相談が有効です。
  • 弔慰金と死亡退職金の区分/弔慰金と死亡退職金は税務上の取り扱いが異なるため、支給する際にどちらの名目でいくら支払うかを明確に分けて議事録・規程に残しておくことが重要です。
  • 役員退職慰労金規程の有無/退職金の金額を「不相当に高額」と判断されないためには、あらかじめ役員退職慰労金規程を整備しておくことが有効です。規程がない場合は、支給額の根拠をどう説明するかを検討します。

実務ワンポイント|相談先の整理

会社経営者の相続は、法務局への登記手続きは司法書士、相続税・自社株評価は税理士というように、複数の専門家が関わります。顧問税理士がいる場合は、まず状況を共有し、必要な専門家を紹介してもらう形で進めると、初動の混乱を抑えやすくなります。

まとめ

この記事のまとめ
代表取締役変更登記は速やかに行う。金融機関・取引先への連絡も優先事項。
非上場株式は財産評価基本通達に基づく評価が必要。評価額が高くなりやすい点に注意。
死亡退職金は500万円×法定相続人数の非課税枠あり。金額設定は慎重に。
事業承継税制の活用は要件が複雑なため、早期に専門家へ相談を。

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相続で早めに確認しておくこと

  • 財産の一覧(不動産・預貯金・有価証券・保険)
  • 借入金・未払金などの債務
  • 法定相続人の確認
  • 遺言の有無
  • 自社株がある場合の評価と承継方針
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※本記事は2026年9月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。

出典・参考情報(公的機関)

本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の税務判断・アドバイスを行うものではありません。税制・法令は改正される場合があります。実際の申告・手続の際は、上記の公的機関が公表する最新情報をご確認のうえ、税理士など専門家へご相談ください。

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